桃水晶の六尾姫   作:ココスケ

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幻術・犀犬の記憶流しの術!

霧隠れとの戦闘区域へと向かう最中、ある違和感を覚えた。

ビーとのアイコンタクトで違和感を覚えているのが私だけでは無いことがわかった。

 

「…ユギト」

「あぁ…私達以外の(・・・・・)尾獣チャクラが空気中に拡散しているな。」

 

私の言葉に、周りの者達も最大限の警戒を顕にする。

私達以外の尾獣チャクラが拡散しているということは、敵に人柱力…それも、ある程度は尾獣の力をコントロール出来る忍がいるのだという証明だ。

 

警戒させて何がしたいのかは分からないが…今の所、何かを仕掛けてくる様子は無い。

 

暫くして、辺りに霧が立ち込め始めた。

 

「霧隠れの術か!風遁・大…っ!」

 

風遁の術で吹き飛ばそうとした忍が血を吐いて倒れ込んでしまった。

それを見た私達は毒ガスだと判断し、急いで霧の外へと向かう。

 

瞬身を使おうとしたのだろう、中忍がチャクラを練り始めた瞬間、先程と同じく血を吐いて倒れた。

 

練り上げたチャクラに反応する毒ガス…こんな芸当を出来るのは、毒などの攻撃が得意な尾獣である六尾しか居ない…だが、六尾の人柱力はまだ幼い子供だった筈だ。

 

「全員…チャクラを練るな!

…いるんだろう、出て来い!」

 

私が言い終えると、尾獣玉を撃ってくる気配を感じた。

私とビーは瞬時に尾獣化し、仲間を守るようにしてその攻撃に備える。

 

合成尾獣玉同士がぶつかり合い、かなりの爆風が吹いた。

それに伴って毒ガスも晴れ、後ろに爆風で気絶し、倒れてしまった忍と敵の姿を確認できた。

 

2人の体は赤黒いチャクラに覆われ、顔を見ることは叶わない。

尻尾を最大まで出しているが、暴走する様子は見られない。

 

『霧隠れ所有の尾獣の六尾と三尾♪厄介で面倒な人柱力♪』

『霧隠れの人柱力は2人共まだ子供だと聞いたんだがな。

特に、六尾の前任の人柱力であるモモカが亡くなってまだ3年も経って居ないのに…暴走していない。

…2人共和解しているというのか。』

 

信じられない、と思わず思ってしまう。

私だって、完全に二尾と和解している訳でもなく、私の理性で暴走を抑え込んでいるだけだ。

子供の人柱力は、平時でさえ暴走を抑える事が出来れば御の字だと言うのに。

 

『友達に力を貸してもらうのに、暴走もクソもないでしょう?馬鹿じゃないの?

大人なのにその程度の事も分からないの?』

『同感だな。尾獣を何だと思ってるんだ…そうやって尾獣を兵器としてしか見れない様なクズには負ける訳にはいかねぇな。』

 

返ってきた言葉は、私の予想以上だった。

尾獣と友達だと即答し、尾獣を兵器として見ていない。

私が目指したかった姿に、私より幼い子供が到達している。

 

その事実に軽くショックを受けながらも、戦闘が始まったため意識を集中させる。

 

猫火鉢を出すが、三尾の水に掻き消されて牽制にもならない。

 

相性が悪い上に、後ろには気を失った仲間がいる。

どうやってこの2人を退けるかと考えていると、突然頭が割れる様に痛み始めた。

ビーも頭を抱えている。

 

痛みがマシになったかと思えば、ある映像が流れはじめた。

 

モモカ…六尾の前任の人柱力が、同じ髪色をした赤ん坊を大切そうに抱き締める。

横では、空を切り取ったような髪色をした男性が2人を見守っていた。

 

これは…六尾の、記憶?

六尾も、相棒の子供が生まれた事に心から喜んでいる。

 

場面は流れ、何らかの血継限界を持つという理由で避けられて虐められ泣いている2、3歳の子供をモモカが抱き締める場面。

六尾も近寄って慰めたいと思いつつも、自分の身体を見て、彼女の前に姿を晒す事に不安を感じている。

 

その後、3歳で父が亡くなり、追うようにモモカも病に倒れた。

六尾は娘であるトウカに引き継がれ、彼女は益々孤立しただけでなく、暴力に晒され、満足に食事も食べられない日々。

 

幼い子供が毎日泣き続ける様子が映る。

自分が味方だと、君の事を2人の代わりに守ると伝えたいのに、強引に精神世界へ連れてくる勇気など持てない。

 

トウカが霧隠れの上忍に連れ去られ、無事な所が無いほどにボロボロにされるが、クナイが体に突き刺さり足の骨を折られて居るため逃げる事も叶わない。

 

両親の形見を破壊され、変化で両親に化けてお前等愛していない、面倒事を運んでくるお前を恨んでいると言い続けた。

 

代わる代わる幻術を見せられ、六尾が必死に解いているが…幼い人柱力の精神は追い詰められていく。

 

もう少しで性的暴行を加えられる、という所で助け出され、トウカは意識を手放した。

 

そして、目を覚ました時には…トウカは、全ての記憶を失っていた。

 

激しい後悔、守れなかったという悲しみ、自己嫌悪…六尾の苦しみ。

映像が終わると、いつの間にか尾獣化も解けていた。

 

体が何かに押さえられているかのように動かない…目の前に立つ4人組の内の1人、緑髪のトウカの目が桃と緑に光る。

 

先程の映像も含め、何らかの瞳術だろう。

周りの仲間は殺され、ビーと私だけが生き残った。私達はその様子を見ている事しか出来なかった。

 

体が何かに覆われ、意識を手放した。

 

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「幻術を見せたのか?」

「うん、尾獣でも解けない幻術。」

 

精神感応(テレパシー)で犀犬視点の私の半生を見せただけだが、人柱力で似たような境遇であった2人には効果抜群だ。

 

念動力(サイコキネシス)で動きを止め、目の前で雲隠れの忍を殺して無力感を味わわせておく。

 

晶遁の術で2人を捉えて連れていき、任務完了を先行部隊へ知らせ、そのまま里へと戻った。


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