衛宮さんちのメイドラゴン。   作:ギルス

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トール「私の戦闘力は53万QPだ。」

ぐだ「…それじゃスキル一つすらマックスにならんよ?」

トール「なん、だ…と?」

筆者「ボックスガチャ、またやりやがれください。」



第9話「剣の英霊」

        猛竜注意!

 

 

 

この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

 

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがありますまた、しばらくシリアスが続きます。

合間合間におバカな話は挟みそうですが。

 

それでも良いよ!

と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

 

…ジョークですよ?w

 

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

望み

 

 素早く戦場を離れたランサーは、未遠川に架かる大橋の上、巨大な特殊繊維のワイヤー上に立ち、巨大な魔力が弾けるのを感じて舌打ちする。

 

「…チッ、なんだこりゃ…もう少し残れば楽しめたんじゃねえか…?」

 

だが、そんな彼の呟きを咎める声が聞こえてきた。

 

『…ランサー、私は全力を出さずに敵戦力を把握してこいと命じたはずだな?』

 

「…ハ、承りましたと答えた覚えもねぇぞ?」

 

しかし、事実上彼がそれを拒否しきることはできない、何せ令呪と言う縛りをチラつかせられれば否とは言えず。

 

「さっきは許可を取ったろうが、奴は明らかに俺の真名に気づいてやがった。だからこそ倒す必要があったし、その最中に目撃者の始末を優先してさせたのはテメエだろうが、マスター。」

 

『私が言っているのはそうではない、その後の不明勢力からの離脱を惜しむ様な発言を咎めた迄。』

 

「臆病者が。」

 

『不満か?』

 

「当たり前だろうが…まあ、それでも従っちゃやるさ、これでも俺は主人をたてるタイプでね?」

 

『心にもないことを…いや、喜べランサー。お前の望みは叶いそうだぞ?』

 

「あ"?」

 

『貴様が始末した少年、どうやら生きながらえた様だ…そこに先の不明勢力が居る。極力避けては貰うが…必要ならば全力を尽くしても構わん、殺せ。』

 

「…二言は無ぇな?」

 

『目撃者を始末したと言うのに新たにことを構えるは愚策と判断したまでだ、生きていたと言うなら…否はない。』

 

それを聞くが早いか、ランサーはワイヤーから身を踊らせて宙を舞う。

直ぐに鉄塔を蹴りつけて再度跳躍する。

 

その一跳びは、正に砲弾が如く。

夜の闇に青い流星が、跳んだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

竜に蹴られて死んじまえ?

 

 

「大丈夫ですか、シロウさん?」

 

「あ、ああ大丈夫、大丈夫だからちょっと身体離そう、な、な?」

 

少し慌てながらそう言う士郎にトールはますます身を寄せ、身体を押し付ける。

 

「駄目です、駄目なんです!もう二度と離しませんからね!?」

 

涙目で睨まれてはそれ以上は言えずに口を噤む士郎。

 

「…宜しい、私の困ったご主人様は私に黙って瀕死になるお馬鹿さんだとわかりましたので…どなたかはわかりませんがおそらくその宝石の持ち主が助けてくれなければ、シロウさん…死んで…死んでいたかもじれないんでずからね〜〜ズビズバズビッ!!」

 

「う、うわ、悪かった、は、反省してるから…トールには心配かけないよう努力するからっだから制服の袖で鼻をかむな!」

 

ポケットから取り出した血に浸らなかったティッシュを取り出し、トールの顔を拭ってやれば。

 

「…どうだか。」

 

そう言ってトールはツーン、とそっぽをむくものの依然として腕は離さないし尻尾は上機嫌な感じに地面をペシペシしている。

 

それを見た士郎が頬を緩ませる。

眼ざとく気づいたトールが戯けるようにして膨れてみせる。

 

…望外の喜びを感じている。

それは、確かな事だ、父母を喪い、養父を喪い…家族と言えるのは藤村の人達や、雷画の爺さんくらい。

 

それだって、「家族に等しい存在」であって「本当の家族」では無い。

血の繋がりだけを拘るつもりはないが、彼らはやはり他人なのだ。

同じ家に帰ってくるわけじゃない。

いつもおはようと言えるわけじゃない。

 

そんな。

僅かな「家族」の線引きを考えた時、浮かんでくるのはいつも…藤姉と、最近では何故か、この括りからは外れている筈の桜だった。

 

けれど。

そこにまた一人、大切な人が増えつつある。

 

いや、二人…かな。

カンナのあどけない表情が脳裏に浮かんだ。

 

「…なあ、トール。」

 

「何ですか、シロウさん。」

 

何故、今なのかはわからない。

けれど自然に言葉が口から出ていた。

 

「俺の家族になってくれないか?」

 

君は俺をご主人様だなんて言うけれど。

俺はそんな大した人間じゃあない、それでも。

 

同じ家に暮らして、同じ飯を食べて。

笑い声に囲まれていけるならそれは──

 

「…………ヒュー………」

 

トールが息してない。

 

「…え、あれ?…トールさん?」

 

密着していたから、トールの顔が酸欠でみるみる白くなっていくのが良くわかる。

 

「……カヒュッ。」

 

白眼剥いた。

 

「トールーーーー!?!?」

 

そのままパタリと倒れそうになったトールを必死に痛む身体で支えると。

次の瞬間ばね仕掛けみたいに起き上がってきた。

 

「シ、シシシシシシ、シロウサン!」

 

「は、ハイ!?」

 

うなじから耳まで真っ赤に染まった顔で士郎に向き直ると、改めてガバ、と抱きついてきた。

そして早口に──

 

「ふ、不束者れしゅが…、よろしくおねひゃいしみゃ…イタイっ!?」

 

舌噛んだ!あ、わ、わらひウェディングドレしゅが良いです!

 

なんて言葉が続いた。

 

「…え?」

 

そんな意味ではなく言っていた士郎には完全に不意打ちだった。

 

「ばっ、ち、違っ…そう言う意味じゃない!」

 

瞬間湯沸かし器みたいに沸騰した顔で叫ぶ士郎の言葉は完全に自分の世界に入ってしまったトールには届いていなかった。

 

「は、話聞いてくれ、トール!?」

 

「ふ、ふふふふ…ま、まさかシロウサンから告白飛び越えてプロポーズ受けちゃうなんて、うへ、うへへへへへ…!」

 

「おーい、戻ってこい、トールー!?」

 

ぎゅう。と。

幸せそうに士郎を抱きしめてだらけた笑顔を見せるトール。

すりすりしたりモジモジしたり、尻尾は上機嫌を通り越して先がぐるんぐるん回転していた。

 

「あー、もうっ、もう幸せすぎて死んでしまいそう…なん、です、というの、に!!!」

 

唐突に。

ギッ、と宙を睨んだかと思えば士郎を抱えたまま一息に飛び退くトール。

 

「な、わ、うわわっ!?」

 

急加速と浮遊感に慌てる士郎。

普段ならバリアを張り、慣性などは影響しないようにしてしまうのだが、あまりの緊急避難にその暇がなかった。

 

道路の真ん中に紅い槍が突き刺さって。

 

「…は、躱したか。そうこなくちゃあなあ?」

 

周囲を見渡せば旧市街の古い町並みの、塀の上から飛び降り槍を握り直す青い衣服の男。

 

「…お、おま…えはあの時の…槍使いッ…」

 

震えが止まらない。

確かに、あの、槍が。

己が心の臓を貫いたのだと、身体が理解していた。

 

「…そう、貴方が…貴方、が…シロウさんを…許さない──」

 

「…勘のいい奴は好きだぜお嬢ちゃん…見た所サーヴァント…にも見えねえが、それに比する神秘を感じるな…クク、楽しいなぁオイ?」

 

シュッ、と空を割いて振り回された槍の穂先が士郎の胸を指す。

 

「まあ、先ずは小僧…死に損ないの手前からだ。じゃねえと俺のプライドがズタボロなんでな…先にも言ったがよ、悪く思うなよ?」

 

にイイ、と。

獣が牙を剥く様に笑う。

 

「許すと、思いますか?」

 

トールから鬼気迫るものが立ち昇る。

魔力だ、魔力が可視化されるほどの密度を以って宙に放たれ始めた。

 

「…この気配、覚えがあるな、竜種の魔力…ああ、生前に幾度か感じたモノと同質だ。」

 

トン、と。

軽い力でトールが俺を押し出した。

 

「な、おい、トール?」

 

「シロウさんは逃げてください、それで警察に通報を。」

 

「…トール、馬鹿を言うなっ、彼奴は化け物だ、見たんだよ俺はっ、あの男が人知を超えた速さで真っ黒な男と殺し合ってたのを…っ警察なんか巻藁より簡単に斬り殺されちまう!」

 

必死に言い募る士郎だが、トールは引かない。

それどころか、士郎の瞳を覗きこむと暗示をかける。

 

「…貴方は、今から…逃げて、隠れます。余裕があるならば、警察に通報を…シロウさん──お願いします、生きてくださいね。」

 

ふっ、と。

瞳から光が失せた士郎は踵を返して逃げ、走り始めた。

 

「…小僧の言う通り、そんなもん呼ぶだけ無駄だぜ嬢ちゃん。」

 

士郎を殺すと宣言しながら、しかしソレを追いはせずにトールへと睨みを効かせるランサー。

 

「…どうでしょう。もし無駄ならば人目を避ける理由が判りません、少なからず目立ちたくはない、違いますか?」

 

既にこの一帯には人払いの効果を持つ沈黙と幻惑のルーンによる結界が敷かれていた。

 

今、周囲に活動する人間はいない。

野外は言うに及ばず屋内にいる人間は皆が無意識のうちに外を見ようと言う思考を持たぬ様誘導されていた。

 

「ルーン魔術…北欧の縁者ですか?」

 

「…そこまでお見通しか、ますます楽しみだ、行くぜえ!!」

 

ダンッ、と。

爆発する様な加速で飛び出したランサーは槍を瀑布の如くトールに向け、連続で突き入れる。

 

「ガァ!」

 

眼を赤く、爛々と輝かせて伸びた爪を振るい槍を払い、弾くトール。

 

その攻防は強い空気の流れと衝撃、火花を散らして続いていく。

 

「はははははっ!!これだ、これだよ!こんな熱さが欲しかった、感謝するぜお嬢ちゃん!」

 

「私は迷惑この上ないだけです、ね!!」

 

槍を弾く隙間に尾の一撃で足払いをかける。

 

「ぬわっ…尻癖の悪い嬢ちゃんだな!」

 

「レディに失礼ですね、貴方…でも、そんなことはどうでもいい──シロウさんを殺した事──絶対に許しません、死んでください。」

 

尾の足払いを避け、槍を支点に曲芸の様に飛び上がったランサーへ、数多の魔力弾が殺到した。

 

「…づっ!?」

 

魔槍を振るいそれを辛うじて迎撃するランサーだが、内心冷や汗ものだった。

 

(なんて威力だ…範囲こそ限定してやがるが…いや、あの高威力で範囲をあんな狭さに限定して操るたあ…この嬢ちゃん、下手なキャスターより腕が立つんじゃねえか…!?)

 

「…まだ、ギアは上がりますよ?」

 

ニコリ、と笑いながら穴だらけ、血塗れのメイド服のスカートを優雅に摘み上げるトール。

 

「カッ、抜かせ小娘!ケルトの男を、舐めんじゃねぇぞっ…おらぁ!!」

 

追い討ちの魔力弾を先よりも倍する速度で打ち払い、切り裂いてトールへと肉薄せんと走る。

 

だが、一瞬早くトールは空へ飛び上がり魔力弾が更に倍する数と威力でランサーへと迫る。

その数、三十三。

 

「だっ、と、ぬあ、おおぉ!?」

 

なんとか対応したものの、段々とランサーの手が足りなくなりつつあった。

何せランサーには対魔力があるが頼りにはならなかった、そのランクはそう高くは無い上、トールの放つ魔力弾は一撃一撃が致死の威力を備えた儀式魔術並みの大威力。

 

「…まだ、いきますよ?」

 

更に倍する数の魔力弾が宙に浮く。

 

「…嘘だろ、オイ…お前は影の国の女国主かよっ!!??」

 

とうとう、悲鳴みたいな非難の声を上げるランサー。

 

「…わたしはまだ、二回の変身を残している、この意味がわかるか槍男?」

 

底冷えする様な笑みを浮かべたトールを見て、ランサーは考えた。

 

あ、これヤバイ奴だ──、と。

 

「クソッッ、タレがあああ!!!」

 

半ば捨て鉢になりながら矢避けの加護と、魔槍を頼りに突撃するランサー。

 

一見トールが完全に押している様に見えたが、トールは内心焦っていた。

実力では相手と十分に渡り合える。

しかし、相手は英霊、その宝具を開帳させてはならない。

 

英雄と呼び名のつく者がいかに恐ろしいか。

それは個々の実力などでは無い。

諦めない心、その果てに伝承に至った逸話。

それにより彼らが手にした破格の武装、昇華された逸話の具現──

 

そう、そんな切り札 (ジョーカー)を切らせてはいけない。

 

それは、トールが長い生涯の中で培ってきた活きた教訓だった。

 

(私は、二度と無様は…晒さない…!)

 

聖杯戦争は、始まったばかり──

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

剣の英霊

 

 

ランサーから逃れ、やがて暗示が解けた士郎はいつの間にか自宅の庭に立っていた。

 

「…あれ、トール…あれ?」

 

記憶が僅かに混乱する、確かトールに見つめられて…

 

そう、走って、走って…我が家に転がり込んで、電話して…それで…訳も解らず安全な場所に行かなきゃ、って…それで俺は。

 

「そうだ、土蔵の中なら、って…違う、そんなことはどうでもいい!」

 

トールを助けに…警察が向かったからってどうなるかわからないじゃないか。

 

そんな事を考えて。

すわ、助けに…と足に力を入れた瞬間。

 

一度は黄泉路を見、そこから帰って来た余韻だっだのだろうか。

背筋に走ったのは死の予感。

ぞわりとした寒気と、二度とは感じたくない。

そう思った、あの昏い果てに沈んでいく虚無感…それが再び自身の背に追いついて来た感覚。

 

「──────ッ!」

 

ズザア、と。

反射的に飛び退いたその位置に。

 

ガキン!

 

真っ黒い短剣 (ダーク)が突き刺さった。

 

「な、短剣!?」

 

驚愕に目を見開く士郎。

だが、それ以上に狼狽したのは短剣の持ち主だった。

 

襤褸切れを巻きつけた異様に長く太い片腕。

全身を覆う黒い外套。

何より異様なのは顔を覆う…髑髏面。

 

節くれだった指をわなわなと震わせ、ソイツは呟いた。

 

「…馬鹿な、ただの人間に…我が気配を気取られた…と?」

 

世界的にも有名な暗殺教団の教主にしてその筆頭の実力者。

呪腕のハサン、彼はそう呼ばれた幾人も存在した教主の一人。

 

この冬木の聖杯戦争にて必ず呼びだされる確定した英霊、無数の暗殺者の一人 (ハサン・サッバーハ)。通常、歴代の教主の内の一人が召喚されることが確定した特殊なクラス、アサシン。

 

「なんだ、お前は…!」

 

「貴様こそ何者…否、貴様が死ぬに変わりは無し──シャ!!」

 

無数の短剣が、士郎に襲いかかる。

必死の思いでそれを転がり、躱す。

 

「だ、くあっ、痛っ、う!」

 

ゴロゴロと転倒しながら土蔵の中へと転がりこみ、扉を蹴りつけて半ば閉じる。

 

「──カ、ハ…な、何か武器になるもの!」

 

あたりに散らかった物をあさり、棒状の何かを握りしめる。

 

「これなら…って、ダメだ!」

 

硬く丸められてはいたがそれは、唯のポスターだった。

 

「くそっ、藤姉がくだらないものばかり持ち込むからっ…!」

 

そこで目に入ったのが、木刀。

京都土産か何かで貰ったものだが、ポスターよりはましな武器に…

 

「そこまでデス、魔術師殿──」

 

ふ、と。

音もなく眼前に現れたソイツはそう語りかけて来た、最初の事は偶然に過ぎないのだがどうやら向こうは自身の隠行は無意味と断じたらしく、その手に短剣を無数に握り、正面から構えを見せている。

 

逃げ場はない、木刀を手にする余裕も、無い。

やれる、か──?

 

「……」

 

手にしたポスターを、剣であるかのように構え

、そこに魔力を通す。

 

強化魔術。

はっきり言って成功率は高くない、が。

それでもやらなければ、死ぬ。

 

「…強化、開始(トレース・オン)―――。」

 

身体中が神経と化したかのように、魔力が通る、すんなりと成功したと言う実感。

これが鍛錬の最中ならば飛び上がって喜んでいたかもしれない。

 

しかし、今は己が命を賭した凌ぎ合い。

 

「…ああああ!!」

 

ビュッ!

ギャキーーン!

風をきる音、次いで響く硬質な金属同士が当たるような甲高い音。

 

投げ放たれた短剣があたりに転がる。

ボロボロになったポスターサーベルを魔力をありったけ尖らせるように通し、投擲する。

 

サーヴァントに通じるようなものではないが、髑髏面目掛けて放ったのを嫌がったのかそれを手にした短剣で切り払うアサシン。

 

「…ぅ、えゃああああ!」

 

その隙に手にした木刀を、瞬時に強化する。

会心の出来だ、先のポスターサーベルの比ではない。素材が硬質な樫の木だった為、木刀は今や鋼の刀並の威力を持った。

 

「…ふ、笑止也!」

 

斬りかかった木刀は顔をそらすだけで避けられ、さらには軽い様子で放たれた蹴りが士郎の脇腹を抉る。

 

全サーヴァント中最弱のステータスであるアサシンのそれではあるが、それでも人間からすれば十分に悶えるレベルの威力だった。

 

「が、ゲフゥ!」

 

悶絶しながら転がり、壁にしたたかに背を打ち付けられる。

 

「…く、そ…こん、な…俺はまだ…」

 

死ねない。

強く、強くそう思った。

 

「…素人が良くぞここまでと褒めて差し上げる、だが──終りよ。」

 

アサシンの目が、士郎の手の甲に向く。

そこには先ほどまではうっすらとした赤みでしかなかったものが。

 

くっきりと、剣のような、十字のような痣に変わっていた。

 

「……やはり、…令呪を得たか。」

 

アサシンの声が、急に先ほどまで以上に嗄れた声に変わる。

 

「──前回、アインツベルンの子飼いであった小僧の…義理とはいえ倅…宿すと思っておったぞ、衛宮、士郎。」

 

短剣の刃が、士郎の喉へ直に突きつけられた。

 

アサシンを操るその声。

それは──

 

「ワシはまだ死ねぬ、死ねぬのだよ…故に障害になる貴様は…死ね、小僧!」

 

五百年に至る妄念の魂塊だった。

アサシンと、ソレが抱くはともに不老不死。

 

あわや、士郎の喉が裂かれようかと言う刹那。

 

爆発するかのような光が、蔵の内部を蹂躙した。

 

「ガッ…な、何い!?」

 

光に眼を灼かれ、慌てて数歩下がるアサシン。

 

乱雑に散らかっていた品々が今の争いの最中、偶々敷かれていたブルーシートを翻し。

その下には、一つの陣が刻まれていた。

 

光はそこから放たれ、やがて。

 

「…問おう。」

 

そこに一人の存在を喚び出した。

 

「貴方が、私のマスターか?」

 

流れる、美しい金糸の髪。

翡翠のように美しい瞳。

 

銀の鎧と青の鎧下に包まれた、その身体。

衛宮士郎が。

二人目の運命と交わった瞬間だった。

 

「サーヴァント、セイバー…召喚に応じ、参上した──」

 

 

to be continued

 




【あとがき的なモノリス】

ハサン「…わたし、次回あっさり斬られそうなんですが、そこのとこどうですか魔術師殿。」

魔術師M「…ワシだって想定外じゃよ…」

士郎「しぶとかったけど、復活そうそうリタイヤフラグだな、乙。」

トール「一部読者様はもう消えたって喜んでませんでした?」

ランサー「そもそもリタイヤ、って書いたよな…嘘はいけねえな、嘘は。」

筆者「…う、わかってるよう、悪かったよ。」

トール「貴方は次回しっかりお仕置きしてあげますからね、槍男さん?(ニッゴリ)」

ランサー「ひい!師匠許してくれ、俺じゃない、師匠の酒を盗み飲みしたのは俺じゃないんだ!」

士郎「……ランサーがトラウマこじらせた…」

トール「失礼な人ですね、私そんなに怖いです?」

士郎「ところで二回の変身ってなんだ?」

トール「半竜化と、完全竜化です。」

士郎「すでに尻尾や爪出してないか?」

トール「ああ、武装形態というか、鱗や角を戦闘用に硬化したモードが半竜化です。」

カンナ「……フリー、zモゴモゴ」

トール「それ以上イケナイ。」

筆者「は、は、は、ではではまた、次回更新でお会いしましょう!!」

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