衛宮さんちのメイドラゴン。   作:ギルス

8 / 11

猛竜注意!



この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがあります。

また、しばらくシリアスが続きます。
合間合間におバカな話は挟みそうですが。

それでも良いよ!
と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

…ジョークですよ?w

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。



第8話「涙」

 

逢魔ヶ刻・side士郎

 

 

 

夕闇に沈む校庭。

本来帰宅部である自分だったが、今日は一成の頼みを聞いていたら随分と遅くなってしまった、そもそも今日中に終わらせる必要も無い暖房器具の修理などここ最近の物騒な話を聞けば後回しにしておけば良かったのかもしれないが、どうにも半端に放り出すのは性に合わなかった。

 

部品を交換するだけで良いと高を括っていたのだが、肝心の交換部品が無いときた。

おかげで態々「裏技」を使う羽目になった。

 

投影魔術。

基礎すら落第レベルの俺が扱える数少ない魔術の一つ。

 

無から有を創り出す、等価交換の法則を無視した代物だ。

…とはいえ、魔術は万能では無い。

あまりに複雑なものや、自身にとって理解の及ばない物は投影できないし、リスクが上がる。

 

例えば複雑な機構は仮に丸ごとコピーした品物を作ろうとガワだけのハリボテにしかならない。その機構の本質を理解し、如何なる理由から、どの程度の強度が、厚みが、必要か否かが分からなければ一瞬にして自壊する不良品にしか成り得ない。

 

「…ま、幸い点火プラグ程度なら苦もなく再現できるんだが、なっ…と。」

 

周りの部品と規格を合わせ、最後に投影したプラグをはめ込み、改めて点火を試みれば暖かな火が灯る。

 

灯油が火と成り、埃が焼ける匂いが鼻をつく、すぐさま消火したことで灯油独特の匂いが室内に充満する。

 

「さて、帰るか。」

 

念のため点火プラグ用の乾電池を抜いて火事を引き起こさぬよう備えて、ひとりごちる。

 

消灯し、戸締りをした後外へ出ればひやりとした外気が背筋を撫でる。

 

「寒いなあ…早く帰ってトールの…ん?」

 

ふと、何気なくグラウンドを見ればそこには人影があった。

 

「…なんだ、まだ誰かいたのか?」

 

随分と遅くなり、教師すらも自分に鍵を預けて帰ってしまったと言うのに…誰が?

 

キィン、ガキン。

微かに耳に入ってきたのは金属に金属が当たる音、それに。

 

ガォン!!

 

「な…銃声!?」

 

いよいよもって放置できない。

夜間の学園に銃を持った輩が入り込み、あまつさえ発砲したなどと。

 

「…だれも、怪我なんかしてないでくれよ…!」

 

自然、恐怖を覚えることもなく足は動き出していた、それが。

衛宮士郎が衛宮士郎であると言う事だから。

 

夕暮れ刻には魔に出会う。

正に、魔は其処に居た。サーヴァントと呼ばれる他に類を見ない規格外の使い魔が。

 

「……っ、」

 

声にならない。

それは何故だか、胸を突く光景だった。

何より俺が嫌いな争い事だというのに。

 

野性味溢れる、牙を向くような表情で紅い槍を幾度も繰り出す青い衣服に、銀の肩当てをした男。

 

もう一人は黒人だろうか?

真っ黒な肌をして、同じく黒く、金色の柄に彩られた、まるで黒い虎のような印象を受ける、肌に張り付くような衣装を身につけた偉丈夫。

諸手に二丁の、あまりにも仰々しい形をした拳銃を振り回しては撃ち放つ。その拳銃の銃口の下には二振りの肉厚の刃が見えた。

 

銃剣?に、してもあまりに奇妙な形をしているし、何よりあれはただ仰々しいだけの銃ではあり得ないと己の中の勘が告げていた。

 

「なんて動きだよ…ほとんど見えない。」

 

かろうじてわかるのは片方が紅い槍を、もう片方は銃剣の様なものを二つ振り回して槍を受け流しながら時に発砲しているらしい、と言う事。

 

そんな事を考えている間にも争いは続く。

 

「ちいいっ、なんつー嫌らしい戦い方だ…そいつは…銃、とか言う武器だったか?」

 

槍を持った男が、合わせた刃を弾く様にした後わずかに距離を開けた、否。

開けざるを得なかった。

 

俺の目に動きは追えないものの、真っ黒な男が青い槍使いに銃口を向けているのだけは解る。先ほどの勢いのまま槍と刃を合わせていれば少なくともその弾丸は至近距離で弾けていた事は間違い無い。

 

「…ふ、どうしたランサー…この様な神秘の欠片も無い銃口など何するものでもなかろうが?」

 

「…どうにもな、そいつは…喰らっちゃ不味いもんな気がするんだよなあ。」

 

ランサーのそれは直感ですらない。

士郎は知る由もなかったが本来彼には飛び道具は通じない、そうした護りを常時纏っているのだから。

 

矢避けの加護。

ランサーが持つスキルは本来飛び道具を逸らすものだが、あの弾丸は逸れていかない。

 

考えられるとすればソレは弾丸自体が強力な呪いや、加護の類を纏う場合だろう。

 

「…ふ、怖気付いたかランサー…怯えた犬の様に尻尾を巻いて逃げてみるか?」

 

殊更に、挑発する真っ黒な男。

そして、それを聞いた青い槍使いは。

 

「…貴様今犬、と…言ったか?」

 

その眼に浮かぶ怒り。

そして、三日月の様に歪む銃使いの口。

 

「ああ言ったとも…犬なら犬らしく…大陸で捌かれて食われてくるといい、何…赤犬が美味いと聞いたが青犬も存外食えるのかもしれんぞ?」

 

「……何故解ったかはわからんが…いや、わかった上でソレを言っているのならば…」

 

「ああ、知っているとも、紅い魔槍、獣が如き俊敏さ、加えてそれ程の槍の使い手など…二人と居まい?」

 

答えた銃使いの言葉が起爆剤となる。

 

「抜かせ…ならば受けるか、我が必殺の一撃を……!!」

 

辺りから、熱が、消えた。

 

「…!!」

 

槍使いから立ち昇る鬼気迫る気配。

辺りの熱が全て槍の穂先に集まったかの様な錯覚を覚える。

いや、事実そうであるのかもしれない。

 

「止めはすまい、何れ殺さねばならぬ相手だろう…ならば何も問題は無い。」

 

もはや言葉はそこで終わりとばかり、男たちは構えた。

 

槍使いは、低く、低く…身を沈め、槍の穂先は敵ではなく、地面につくほどに下げられている。

 

銃使いは、二丁のうち片方を構えて何かを呟いた。

 

一瞬の後には双方が必殺の一撃を放たんとした刹那。

 

パキッ。

 

音が、響いた。

 

「しまっ…!」

 

「誰だ!!」

 

即座に槍の穂先がこちらを向いた。

 

そうして俺は。

ただ、ひたすらに逃げた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ぼんやりと。

意識が浮上していく。

 

やけに重い瞼がなかなか開いてくれなくて。

ああ、なんでこんなに疲れてるんだ?

なんて的はずれな事を考えた。

 

「……んで……あんたが…やめてよね、なんで、なんであんたなのよ!」

 

誰だったか。

聞いたことがある様な、声。

 

そういや、あの二人の他にも誰か居た様な…

そうだ、確かにあれは…

 

そうだ、あんな非常識なものは魔術師だとしか思えない。

なら、あの三人目は…

 

ぼやけた視界に映る、綺麗な瞳。

涙を浮かべたそれが宝石みたいに綺麗に見えて……。

 

「─── 何を、貴女は、何をぉ!!」

 

あれ、この、声?

 

ああ、…喧嘩は、やめような。

なあ?

 

トール?

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

逢魔ヶ刻〜トールside

 

 

逸る気持ちを抑え、ひたすらに夜空を駆ける。

物理法則を無視した速度で、しかし衝撃一つ漏らさずに静かに校庭に着地する。

 

「…なんですか、この異様に濃い魔力は?」

 

グラウンドに残る魔力の残滓。

はるか遠くへと飛ぶ様に離れて行く魔力の気配。

 

もう一つ。

校舎の中から感じる魔力。

 

一つは、見知らぬ鋭い魔力。

もう一つは、五色の魔力。

 

そして、今にも消えてしまいそうな…

見知った、魔力。

 

「あ、あ、あ!ウソ、ウソですよね?」

 

窓へと一息に飛び上がる。

見えたのは、蹲り、何事かつぶやきながら手を翳す少女。

 

そして。

一番当たって欲しくなかった、血の海に静かに沈む、少年の姿。

 

「─── 何…を、貴女は、何をぉ!」

 

視界が赤く染まる、怒りが、身体中の血を沸騰させる。

 

弾ける様に飛びかかる。

ゾロリと伸びた爪が、まるで刀の様に鋭く光を放つ。

 

「くっ…アーチャー、お願い!!」

 

ガキィ!!!

銃剣が爪を受け止め、腹を強かに蹴りつけると、同時にトールの胴へと銃口が向いた。

 

「承った、マスター。」

 

トールに視線を向けることすらせずに。

少女…魔術師、遠坂凛は叫ぶ。

 

「誰だか知らないけど邪魔しないで!」

 

かけらも余裕の無い、焦燥に満ちた声。

しかし、血に伏せた想い人を目にしたトールは冷静でなどいられなかった。

 

「オマエコソ…ジャマダ…ニンゲんんん!!」

 

ゴッ、と。

鈍い音がした。

 

発砲するより早く振り抜かれたトールの尾に、受け止めた銃剣毎吹き飛ばされ、壁に激突しかけ、身を捻って立て直すアーチャー。

 

「なんという膂力…!」

 

即座に陽銃干将・陰銃莫耶を抜き撃ちする。

ガガガ、と硝煙を吐き出しながら撒かれた弾丸はトールの胴を捉え、火花を散らした。

 

「ぐ、が、あ、あ、あ、ぁ゛あ゛、あ゛!!」

 

白いメイド服にあちこち穴が開くが、致命傷には至らない。

 

「カエセ、カエセェェーー!!」

 

返して。

私の、大切な人。

 

私の事を綺麗だと言ってくれた。

私の事を必要だと言ってくれた。

私の事を家族と扱ってくれた。

私に陽だまりの様な場所をくれた。

私が、怖くないと言ってくれた。

 

ワタシガ、ワタシガ、ワタシガ、ワタシガ、ワタシヲ、ワタシ、ヲ───

 

ワタシの、大切な人なんです。

 

「……かえして、シロウさん、ヲ…」

 

喉の奥から迫り上がる怒りと、哀しみ。

感情は魔力の渦となる。

 

「……これは、竜種の吐息 (ドラゴンブレス)」…ッ!?」

 

光が奔る。

熱が渦巻く。

 

「──────!!!」

 

声にならぬ叫びが、熱量を持って吐き出され。

アーチャーは咄嗟にそれを防ぎ得るモノを投影した。

 

熾天覆う、七つの円環 (ロー…アイアスッ)!!!」

 

双銃の銃口の先に展開された本来のソレと比べ幾分劣化した高位の防御宝具。

それでもそれは、幸いにも一瞬の怒りにより溜めも無く吐き出されたブレスを塞き止め、外へと流れを受け流した。

 

「……我が骨子は嘆き狂う──」

 

もう片方の銃口に宿る投影の輝き。

 

「少し頭を冷やせ…ペーネロペーの涙 (ペネロペイアダクリュオン )──!」

 

ペネロペイア、ギリシャ神話にて20年に及ぶ戦乱から夫が帰るまで待ち続けた、貞淑な女。

長き時を待ち続け、数多の男からの求婚を袖にし続け、夫に再会した時に流したその涙は、安堵故だったと言う。

その逸話を概念として練りこんだ魔術礼装を弾丸として加工した一発だ。

礼装の効果は、鎮静化。

 

荒ぶる神すら正気を取り戻すとの謳い文句の高価な礼装だったのだが…。

 

「…は、人生何が役に立つか判らんな…もはやどうして私がこの様なものを手に入れて弾丸に加工したかも思い出せんが…やってみるものだ。」

 

ブレスは直撃しなかったとはいえ、即座に展開した不完全なアイアスでは防ぎきれず、アーチャーの半身を焦がしていた。

 

だが、代償に放った魔弾は確かにトールを捉え、その激情を抑えてのけた。

 

「…あ、と、遠坂、さん?」

 

ようやく、トールは目の前で士郎の前に跪いているのが遠坂凛だと気づく。

 

 

「…まさか、貴女が本物だなんてね…いえ、今はどうでもいいわ、とにかく一刻一秒を争うの…士郎を救いたいなら黙って見てなさい。」

 

翳した宝石からは莫大な魔力が少しづつ、士郎へと流れ込んでいく。

 

「…良いのか、マスター?」

アーチャーが左肩を抑え、左脚を引きずりながら凛に近づき問いかける。

凛はアーチャーに「殺すな」と命じていた。

その結果がアーチャーの現状なのだが…

 

「…目の前で、死なれちゃ寝覚めが悪いのよ、第一…私の落ち度に違いはないんだもの。」

 

「いっだい、なにが、どうなっでるんでずがぁ〜〜〜う、うわあああん!」

 

ポロポロと大粒の涙を零しヘタリ込む。

もう感情のコントロールができなくなって子供みたいにしゃくりあげるトール。

それを見て肩をすくめてやれやれと壁に寄りかかるアーチャー。

 

「…死なせない、死なせないんだからね…この馬鹿…!」

 

引き攣れたような声を上げ、必死に魔術を制御する凛を見ながら。

 

トールはただ、見つめるより無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が助けた事はこの馬鹿には黙っててよね、トール。」

 

治療を終えて凛が発したのはそんな言葉だった。

 

トールも今は事情を聞いて何がどうなったかは理解している。

聖杯戦争、サーヴァント。

七騎の英霊、七人のマスター同士の殺し合い。

 

全ては万能の願望器、聖杯を求める魔術師達の行う儀式だと。

 

巻き込まれた士郎の命を凛は、大切な形見を使い潰してまで助けてくれた。

何も黙ってなくても良いのではないか?

 

「…その馬鹿が知ったら、絶対言い出すわよ。命には命をかけて返さなきゃいけない、なんてね、トールは…そいつがもう一度死ぬところが見たい?」

 

ふるふると、首を横に振る。

そんなものは嫌に決まっている。

 

「…大切なら、守りなさい。貴女なら例えサーヴァントと鉢合わせても防御に徹すれば人一人守るくらいはできるでしょ。」

 

「…でも…」

 

「…欲張らないの、貴女は確かに強いわ、本物の竜だなんてね、けどそれでも。」

 

願いを叶えるために死にものぐるいになった英霊に、覚悟もない者が挑めば…そこには敗北と死が待っている。

 

「…だから、今夜のことは悪い夢とでも割り切って。もう二度と士郎は関わらせちゃダメよ。」

 

そう語りかけ、凛は去っていった。

魔力を失った宝石を残して。

 

「ほんと、人間って勝手です…」

 

まだ整理のつかない胸中を静める為と言わんばかりに胸をきつく握りしめる、痛い。

 

「…う……ぁ…、トー、ル?」

 

膝の上で静かに横たわっていた士郎の眼が開く。

 

ああ、良かった……良かった!

 

「シロウさん…心配、させないでください…もう、絶対に、絶対…、こんな思いはしたくありません、から。」

 

ポロポロ、ポロポロと涙が次から次に溢れて士郎の顔に降りかかる。

 

「な、どうしたんだよトール、泣いて…」

 

がば、と。

胸で塞ぐようにして顔を抱きしめる。

 

「グズ、う、ううう〜〜!!」

 

「な、トール、ちょ、落ち着け、胸、胸が当たる、っもが、もがが!?」

 

何も言葉が出てこない。

嬉しいのに、ほっとしたのに、何も言葉が出てこない。

 

やがて、最初は暴れていた士郎も観念したかの様に腕を回し、トールを優しく抱きしめた。

 

「トール…なんだかわかんないけど泣くなよ、大丈夫…俺は大丈夫だから、な?」

 

床に伏せるように上半身を折り曲げ、膝に乗せた士郎の顔を胸にかき抱きながら。

トールは静かに涙した。

 

「はい、はい、う、ひっく、う〜〜!」

 

「な、なんだよ…泣くなって、クソッ」

 

二人は血塗れになりながら、それでも暫く抱き合って、泣いた。

 

トールは安堵から。

士郎は死の恐怖に今更に追いつかれ、そこにトールがいて、抱きしめられている事で気が緩んで。

 

 

月灯りに照らされ始めた校舎の廊下で。

竜と少年は…ただ、生きていることを噛み締めた。

 

 

 

 




【あとがき的なモノリス】

トール「シーリーアースーしーかーない!」

カンナ「でーばーんーがーないっ!!」

士郎「……余韻とか噛み締めさせてくれよ」

デミヤ「…あとがきと言うぐだぐだ粒子空間だ、諦めろ。」

冬木の虎「その通り!馬鹿士郎!よくぞ生き延びた、まずはおめでとう!!」

弟子一号「おめでとう!」

虎「しかぁし!油断すると即、Death!なバッドエンドが待っているので心するやうに!」

トール「…シロウさん、ファイ!」

カンナ「ふぁい!」

士郎「…はあ、なんだこの脱力感は…」

デミヤ「次回、セイバーはうどん粉で出来ていた、だそうだ。」

虎「こら、デトロイトなアーチャー!勝手に次回予告するな!?」

士郎「いや、ていうかうどん粉…?」

トール「サーヴァントってうどんなんです?」

士郎「リヨに聞いてくれ…」

弟子一号「あきらかなウソ予告、乙!」


そんなわけで、次回更新でまたお会いしましょう!

しーゆー!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。