衛宮さんちのメイドラゴン。   作:ギルス

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猛竜注意!


この作品は、何番煎じかもわからない…小林さんちのメイドラゴン、及びFate/staynight 、Fate/GrandOrderの2次創作です。

キャラ崩壊、捏造、曖昧設定などがありますまた、しばらくシリアスが続きます。
合間合間におバカな話は挟みそうですが。

それでも良いよ!
と言う勇者な方はドラゴンスレイヤーは持たずに身体を清潔にして塩を擦り込み、オリーブオイルを塗ってお待ちください。←

…ジョークですよ?w

それでは、思いつきの駄文ですが、お楽しみいただけたら幸いです。



第10話「ゲイボルク ── ドラタナティブ!」

 それは、随分と昔の話、ある月夜の晩。

 

縁側に腰掛けてまるで老人みたいに熱い茶をすする彼の、丸めた背中にため息をつく。

 

「……やめろよな、切嗣はシャンとしてたらカッコイイんだからさ、そんな爺さんみたいに背中を曲げるなよ。」

 

そう指摘すると切嗣は。

 

「ああ、これはいけないな…昔は世界中の戦地を転々として映画の主役もかくやというくらいにストイックな狙撃手だってこなしていたんだけどなあ、いつの間にか弱くなったね、僕も。」

 

なんてことを言うのだ。

 

「…まあたその手の法螺話かよ、切嗣が魔術師だってのはわかるけどさ、その性格で傭兵とか軍人なんてありえないだろ。」

 

と、返せば。

 

「二度と、こんな気持ちにはならないと思っていたんだが…なんだかいたたまれなくなるね、なんとも。」

 

はは、と力なく笑いそう零す切嗣の首には古いロケット型のペンダントがある。

カチリ、とそれを開けばそこには銀の髪に紅い眼をした浮世離れした美貌の女性の写真。

写真はモノクロだというのになぜわかるかといえば以前に切嗣がそう教えてくれたからだ。

 

「…なあ、士郎。」

 

「なんだよ、じいさん。」

 

「…じいさんは酷いな、まあいいや。」

 

「いいのかよ。」

 

「この写真のヒト…正確にはこれは似てはいるが別人、だとは思うんだがね…僕の、奥さんだった人…アイリスフィール、その先代ってとこかなあ、瓜二つさ。」

 

「…そんな美人だから自慢したいのはわかるけどよ、なんで写真一つ残ってないわけ?」

 

「……1枚くらい残しておけば良かったと、今になって思うけどね、そんな暇もなかったのさ、あの時は。今でもアイリの実家に行けば残ってるかもしれないが…」

 

そう言って月を見上げて。

切嗣はポツリと零したのだ。

 

「僕はね、士郎。──正義の味方になりたかったのさ。」

 

そう言った時の切嗣の顔を。

俺は今でも忘れられずにいる。

 

話に脈絡が無く、どうしてそうなったかわからない。

ただ、切嗣はきっと…救えなかったのだと理屈では無く理解した。

 

「なんだよ、なればいいじゃないか切嗣なら余裕だろ、だって魔ほ…魔術師じゃないか。」

 

「…残念ながら正義の味方には期限があるのさ、年老いた僕にはもうなれない。ヒーローになれる期限は有限なんだ。」

 

「…なら、俺がなるよ。」

 

だから、今より幼い俺は。

とっさに答えたのだ。

ただ、嘘偽りの無い真実を。

 

「俺が、切嗣の代わりに正義の味方になってやる!俺ならまだ若いし、なれるだろう?」

 

それを聞いた切嗣は、嬉しいのか悲しいのかわからない、とても複雑な顔をした後に破顔した。

 

嬉しそうに、本当に嬉しそうに──

あの時、俺を救ってくれた時の様に嬉しそうに、助けられたのは俺の方だった筈なのに、まるで自分が助けられたみたいな顔を見てしまったから。

 

その顔が、あまりに嬉しそうだったから憧れた。自分にはもうなくなってしまった本当の生の感情に強烈に惹きつけられた。

 

 

だから。

その願いは、俺の…希望/呪いとなってこの胸に居座り続けている。

 

 

───────────

 

 

 

 

「ふ、ふふふふ…あはははは、あーっはっはっはっはっ!!!」

 

 最早叫ぶように笑いながらトールが魔力弾を乱射する。恐るべきはその精度。

 

嵐のような勢いとは裏腹に、決して無用な破壊は生んでいない。

ランサーが避けた場所はやむなしだが、それ以外には一切の流れ弾はない。

 

「豚のようにお鳴きなさい!ふぇーっはっはっはっはっはっ!!」

 

「ぬおぉぉ!?」

 

割と必死な顔で魔弾の嵐を回避する為に八艘跳びもかくやの俊敏さで跳び、駆け回るランサー。

 

「て、てめえこら、ヒロイン (婦女子)があげる声じゃねえだろそれ!!」

 

「おまえの前でヒロイン (女の子)する理由がない!!」

 

「少しは慎みとかもてよ!?」

 

「そんなこと言う貴方にプレゼント、ドラゴンブレスプレミアム!!!」

 

ゴパア!

 

答えの代わりに特大の火炎をプレゼント。

 

「ぬおおっ、ア、アンサズ!!」

 

体表面に火のルーンを張り、炎熱をいなし、なんとか直撃をさけるランサー。

 

「……ち、しぶとい。」

 

「鏡見ろこの腹黒系竜娘!?」

 

…最早コントの様相を呈してきたわけだが、そんなことをしているトールは内心焦っていた。

 

(…まずいなあ…まずいですね、これ以上やると流石に気づかれ (探知され)ちゃうかも…それはよろしくない。)

 

そう、トールの身の上は実は家出娘同然なのである。

 

身内に察知されるわけには行かず、それ故に魔力はあまり大きく使わないようにはしていたのだがこのままでは遅かれ早かれ気づかれてしまうだろう、それはできれば避けたいトール。

しかし相手はそんな事は一切関係ないわけで。

 

「さて、こちらとしても長引かせるのは望みませんので幕引きと致しましょう──なぁ《《セタンタ》 》。」

 

「テメェ、その呼び名は…いやまさかだな、その口調。やけに馴染みがあるのはどういう事だ、あぁ?」

 

先ほどまでの半ば焦るような口調では無い…真剣で、それでいて何かを畏れるように語るランサー。

 

「…類縁憑依魔術…かかわりある存在をトレースし、人格、技術を模倣する高等魔術よ。」

 

答えと同時に宙空に顕現する数多の魔槍。

その形は見まごうはずもない、よく知ったものだった。

それは実体を持たぬ魔力光の塊ではあるが、真贋はともかくその形だけでランサーには深い意味を持っていた。

 

「ゲイ・ボルグ…魔槍を模倣し、そしてその眼、口調…テメェまさか──スカサハ(師匠)の縁者か?」

 

「如何にも、今我が人格を想起し使役するこの者は私に縁ある…一時期時空の狭間にて傷を癒していた際にたまたま放浪した我がオリジナルが気まぐれに手ほどきをしたのよ。」

 

ニヤ、と笑う口の釣り上げ方までがランサーが知るスカサハそのものだ。

声と見た目にギャップこそあるが概ねランサーの記憶通りの仕草。

 

 

「…と、言う訳だから死ねセタンタ。」

 

 

シリアスな会話もへったくれもなかった。

極上の(ドSな)笑顔とともに蹴り放たれたのは魔力光の槍。

それは原典には及ばない威力で、しかし確実に相手を穿つべく飛翔した。

 

「刺し穿ち、蹴り穿つ──ゲイボルク・ドラタナティヴ!!」

 

「ちょ、ま…どわああああ!?」

 

威力こそ原典の数十分の一であり、呪いもない、しかし、それはランサーの体を蜂の巣にするには充分すぎた。

 

影の国にて自分を鍛え上げた女傑、スカサハ。

時に師であり、女であり、そして生涯において誰より畏敬を抱く戦士。

 

その技能を模倣するなど本来万死に値する愚行である、生前の彼ならば怒り狂い、トールを殺すと牙を剥いた事だろう。

事によれば怪物と化すこともいとわない程に。

が。悲しいかな今の彼はどこまで行っても「ランサー」である。

狂戦士としての側面も、術師としての側面も全盛期ほどには発揮し得ない。

サーヴァントとはそういうものだった。

 

「ぐ、こっの…クソがああああ!?」

 

必死に光の槍を防ぎ、躱すが槍は軌道を変えてランサーを襲う。

幾百の礫と変じたそれを全ていなすには今の彼の力は限定的に過ぎた。

 

己が放つには溜めを必要とする宝具に匹敵する一撃を苦もなく放つ。

正に怖るべき師の姿を垣間見る技量。

 

「こ、んなもので…がああ!」

 

本物ではない、魔力で編まれた仮の槍である事、当然ながら幾分本来より落ちる威力が幸いしたのか、災いしたのか。

ランサーはまだ消滅には至らない。

霊核は依然として無事だった。

 

「…流石にしぶといなセタンタ。」

 

「…テメ、ぇ…その顔と声でスカサハを真似るんじゃねぇ…大体ドラタナティヴってなんだ巫山戯やがって必ず殺してやるぞこの、トカゲ娘!」

 

「ふん、わかるはずだろう…類感魔術の類ではあるが私は私、真実スカサハの残滓を再現している…決して偽物ではないと言うことを。」

 

「それが余計に腹立たしいんだよクソがっ触れちゃなんねぇところに触れやがって…」

 

わからないではない。

スカサハは…己が師は存外茶目っ気のある女なのだ、アレでも。

ヤンデレ気質でなければ…ヤンデレ気質で、なければ。

ふと、懐かしい想いに要らぬことまで思い出し、顰め面で睨めば。

 

「…巫山戯ているのはどちらでしょうね、シロウさんを一度殺した相手を私が許すと思いますか、あり得ませんね…いくらあの人、スカサハが楽しげに語った光の御子その人であっても──必ず殺す?それはこちらの台詞ですね。」

 

空に浮かんだままそう告げるトール。

地面には無数の穴が穿たれ、ランサー自身も肩、足、頬、脇腹と無数の裂傷、刺傷を負っていた。

 

「…さあ、まだギアは上がりますよ…いいや、まだまだ甘い、私を殺せると言うなら殺してみせよ、セタンタ!!」

 

「だからやめろってんだろうが、トカゲぇ!」

 

飛び退き、槍を振りかぶるランサー。

 

正体は知られていた。

さらには相手は劣化してはいるが己が師のコピー。

 

「加減は無しだ──全魔力、解放。」

 

トールにとっての誤算。

ランサーにとっての勝機。

 

それは、トールが決着を急ぐあまりによりによってスカサハを模倣した事。

槍と、ルーン魔術、体を癒していた10年の間に出会っていた女傑に聞いていた話。

そこからランサーの正体に気づいたトールは最も効果が高いであろうと、彼の師を模倣すると言うある種の愚行を犯した。

 

それはランサーになりふり構わぬ全力を出させる結果となり。

 

ランサーと言う一側面(型に嵌められた存在)故に特化した、先ほどまで決して切らせてはならないと危惧していた切り札を切らせてしまったのだ。

 

突き穿つ (ゲイ)──死翔の槍 (ボルグッ)!!!」

 

「っ、しまった…煽り過ぎた!?」

 

慌て、素にもどったトール。

紅い魔槍はとんでもない威力でカッ飛んできた。

ランサーは本当に全身全霊で投げたのだろう。

そして相手が師の力の一端を模倣した時点で怒りながらも冷静に、決して侮らなかった。

投擲と同時に全力で離脱して行くのが見えた。

 

つまり。

凌がれた場合も視野に入れての退避行動。

 

「逃してたま、はわあっ!?」

 

スカサハの残滓が頭の中で警告する。

このままでは死ぬぞ?、と。

 

パリンパリンと軽い音を鳴らして。

幾重にも張り巡らせたトールの防御結界をまるで飴細工をアイスピックで突いたみたいに貫通して槍が迫る。

 

速度にして音速の2倍──マッハ2のミサイルみたいな投槍。

 

「ぜ、全身半竜化ああ!?」

 

先までの威厳は何処へやら。

トールは涙目で身体を本気の戦闘形態に移行し、竜鱗に覆われ、魔法のフルプレートアーマーも凌ぐ防御を固める。

 

が。

 

ガキイイーン、バキャッ!!

 

と、嫌な音を立てて鱗が砕けた。

槍の穂先は肉に食い込み、交差した両腕を貫く。

 

「い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!?」

 

噴き出す血。

竜の血は高濃度の魔力の塊。

それが同じく神秘と魔力の塊であるランサーの宝具を濡らし、放電するほどの魔力を散らす。

 

「テ、て、テレポートぉ!!」

 

バシュン!

と、一瞬にして姿をくらましたのはトール。

 

遠く離れた空中、油断なくそれをみながらも魔力を使い果たしたランサーは悔しげに呻き、舌打ちした。

 

「チッ…瞬間転移だと?ますますキャスターみてえな真似しやがるあのドラ娘…クソがっ!」

 

目標を失い、槍が戻る中。

脱力したランサーは未遠川にまで飛翔していた。

そのままなすすべもなく水中へと落下する。

 

バシャン、と。

あっけないほどの音を最後に。

竜と光の御子の対決は見送りとなる。

互いに傷を、負いながら。

 

トールが消えた街中には、赤いパトランプの光と、サイレンの音が今更ながらに聞こえ始めて、いた。

 

 

───────────

 

 

ところは変わり、衛宮邸。

その庭先の土蔵の中では。

 

一方的な蹂躙が行われていた。

それは、もちろん暗殺者が士郎をでは、ない。

 

突如現れた金糸の様な美しい髪をした剣士による蹂躙劇。

先ほどまで士郎を追い詰めていた暗殺者は哀れ狩る側から狩られる側へと転落した。

 

「く、クハ…魔術師殿…これは分が悪すぎる…こやつおそらくセイバー、あ!?」

 

ザン、と。

外套の端を切り裂かれて身をよじる仮面の暗殺者。

 

『仕方あるまい、退け、アサシン。』

 

己がマスターの指示に従って逃げようとするアサシンだが。

不運は重なるものだった。

 

飛び退いた軒先き。

着地したその場に…巨大な魔力が顕現したのだ。

 

「いったあああああいーーー!!?」

 

ドガアァン!!

と、爆発する様に顕現したのは巨大なドラゴン。

 

ランサーの一撃に這々の体で逃げだしたトールは痛みのあまり完全に人化を解いてしまっていた。

 

莫大な魔力を伴う爆発じみた転移に、思わず叫んだ際に漏れ出したトールの竜の吐息 (ドラゴンブレス)は。

空中に吹き飛ばされた哀れな暗殺者を、その身に宿した「虫」ごと薙ぎ払った。

 

「「あ。」」

 

間抜けな主従の声が重なると同時。

空中に迸った灼熱の吐息が吹き飛ばす。

 

こうして、完全に妖怪は潰えたのである。

 

『ば、ばかな…ワシの扱い、酷すぎィ!?』

 

給料低すぎィ?みたいな言葉が断末魔だった。

 

「な、ど、ドラゴン!?」

 

驚愕するセイバー。

血だらけの両手を竜体のままふーふーするトール。

 

シュールな光景に、思わず士郎は土蔵からふらつきながら出て、腰砕けになる。

 

「は、はは…なんだかわかんないが助かった…それに、トール?…おかえり。」

 

「シロウざああん、痛いですぅー!」

 

涙を浮かべる竜を見て、絶句しているのはセイバー、一人だった。

 

 

間桐、否。

マキリ・ゾォルケン、死亡。

完膚なきまでに──リタイヤ!

 

 




【あとがきてきなモノリス】

はいみなさま、大変、大変にお久しぶりでございます…ライダー/ギルスです。

もうね、ほんまにね。
最近書いては消し、書いては消しを繰り返していました。

書きかけていたこの話をシブの方にコメント頂きなんとか気合いで書き上げました。

このシリーズ何ヶ月放置していたやら。
オルタニキのシリーズすら停止中ではアレですが。

兎にも角にも待ってくださる方がいらっしゃるのはとても嬉しく思います、ありがとう、ありがとう。

頑張るよ俺…

そんなわけでちょっと無理矢理な展開ですが他のシリーズと共通するため、このシリーズの時空には転生した鯖勢が多数います。
実は槍ニキもいますけど、冬木にはいません、ので今回川へ落ちた兄貴とは同一にして別存在となります。

スカサハ師匠とは実は過去に出会っていたトール。
魔術その他諸々師匠から吸収しています、ので本気の本気ならマジで化け物。
今回は何故類感魔術を用いたかといえば、自らの魔力波動を撒き散らせばお父様他に気取られるから、です。
家出娘は複雑なのです。

…まあ実はバレてますけどね!
終焉帝、親バカだと思う。
すくなくともうちの終焉帝は親バカ。

そんなこんなで、短めですが更新でした!
それでは次回更新でまたお会いしましょう!

しーゆー!

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