NEW GAME! 作:ぞい☆
「青葉ちゃん、渚くん、お昼どうする?私達はお弁当買って来るけど」
「全然終わりそうにないので、休憩できそうにないです~」
「弁当持ってきてるんで、ここで食べようかと」
仕事がひと段落した後のご飯っておいしいよね!!
今日もうちのオカンお手製の弁当を持参してきているので、お昼代はかからないのだー、なっはっはー!!
べ、別に、一緒に食べる奴がいないからいつもぼっち飯してるわけじゃ、無いんだからね!
たまーに篠田さん、飯島さん、青葉と一緒に食べるし…ボッチじゃねーし。
「仕方あらへんなぁ、せめてこれだけでも食べとき」
社畜御用達のバランス栄養食、カロリー〇イト!!
某蛇さんも言ってたな、カロリー〇イト、うますぎるぅ!って、ちなみに俺は、仕事中にあれに手を出したらもう終わりだと思っている。
延々に終わらない納期、作業…etc。あぁ、考えたくない…。
「この御恩はいつか必ず!」
「ははは、倍返しでええよ」
「おい」
サラッと倍返し要求してくるあたり飯島さんらしい…。
この人絶対バレンタインとかもお返しありきで周りに配るタイプだ、絶対…。
ひっ、目が合った…!毎度のことながら、何でおれの考えてることがわかるんですかここの人達…。
え?顔に出てる?わかりやすい?くっ…ポーカーフェイスを取得してやる!
「じゃあお昼休憩の渚くんは、青葉ちゃんが分からへんようになったら、教えてあげる事っ」
「さーて、俺も弁当買ってこよっと」
「持ってきてる言うたよねぇ?」
がしっと肩を掴まれ、にっこりと笑みを浮かべてらっしゃる飯島様。
助けて篠田さん!ヘルプ!へぇぇるぷ!
くっ、目をそらすな!俺の視線に気づいてるんだろ篠田さん!
逃げられないと悟った俺は、飯島さん命令で飯を食いながら青葉の作業をちょいちょい手助けすることとなった。
俺を尻に引くのやめませんかいい加減…。
「あはは…ごめんね、渚くん」
「知ってるか?魔王には勝てないんだぜ…」
あぁ、おかんの弁当美味しいよ…あれ、おかしいな、この煮物しょっぱいぞ?
もー、おかんったら、また味付け濃くしたわねぇ…くっ、目から汗が止まらねぇ…。
がつがつと弁当を食らっていると、青葉が栄養食をもぐもぐ食いながらじっと滝本さんを見ていた。
こいつはどうしてこんなに滝本さんを見つめるの好きなの?
あ、滝本さんが視線に気づいてびっくりしてる。
『わー!?』
滝本さんのイヤフォンが外れ、流していた音楽が社内に響き渡る。
結構大音量で聞いてるんですね滝本さん…耳可笑しくなりますよ?
「な…何か用…?」
「い、いえ。ひふみ先輩はお昼ご飯食べないのかなって」
「もう家で食べちゃったから…」
「へぇ凄い、私そんな余裕ないです」
「宗次郎と一緒に…食べたくて…」
「宗次郎!?」
あれ、滝本さんまさかの彼氏持ち宣言。
くっ、リア充め、そりゃ家でご飯食べたくもなりますな!とまぁ、勝手に爆発!とか考えていたけど、話を聞いていればどうやらハリネズミの名前が宗次郎というとの事。
ペットの名前かーなどと青葉がびっくりしたような笑い方をしながら、見せてもらっているハリネズミの画像を見て可愛いーっと呟いている。
俺も見せてもらったけど、可愛いから、第一印象はたわしだけど。
「何だ、宗次郎って言うからてっきり彼氏さんか何かと」
「かれ…し…?男の人がいると…気が休まらないから…」
「あ、分かります。ちょっと緊張しますよね」
「男に生まれてごめんなさい……」
まさか俺がいることによってこの二人にストレスを与えていたとは…なぎくぼは机の下にでも帰って出てこないようにしますね…。
なんてことを言えば、涼風と滝本さんが俺の顔をじーっと見てしばらくきょとんとしたかと思えば、ハッと何かを思い出したような表情を浮かべた。
「渚くん…男の人だったね…」
「素顔見てからあまり違和感なくて、忘れちゃってた」
「そもそもとして男と見られていなかった…だと…!?」
この顔が憎い!!
いや、でも青葉はいいとして、滝本さんが意識せずに仕事できるならよかったのか?
何だろう、超複雑なんだけど、嫌われたり距離置かれるよりかはましと思えば、何にも言えない…。
「他にもあるよ」
「わ、可愛い!」
「凄いしかめっ面ですね」
「でしょ…そこがまた可愛い…」
「ハリネズミって懐くんですか?」
「ううん…いつも巣穴に…隠れてる…凄く…臆病…」
ペットは飼い主に似るとはよく言うけど、ここまで性格が似るのも、ある意味凄いと思う。
いやでも、ハリネズミは臆病な性格って言われてるし、似てるのではなく、同じ性格だったというのが適切だろうか…。
まぁ、そんなこと考えても特に意味はないのだが。
「でも…素手で触れるくらいには…慣らしたよ…?」
背中らへんを摘ままれて持ち上げられてるハリネズミ事宗次郎は、どれも大体はしかめっ面な表情で写真に写っていた。
一体何が不満何だい宗次郎や…こんな綺麗な飼い主さんに買われてる時点で相当勝ち組なんだぜお前…。
そして次の写真に写ったのだが、宗次郎と一緒に映っているのが、今まで一度も見たことがなかった滝本さんの笑顔も一緒に映っていた、これは良い物が見れた。
「あ、ひふみ先輩が笑顔」
「……!忘れて…」
「お金!?」
「それあかん奴!」
ババッとカバンから財布を取り出して二千円を青葉と俺に差し出してくる滝本さん…。
人にお金渡すほど恥ずかしかったのか…とりあえず滝本さん、誰にも言わないんでお金締まってください。
他の人に見られたら物凄く誤解されるんで…。
特に八神さん、あの人に見られたらいろいろ言われそうで怖い、主に俺にばかり…。
たぶん青葉は注意で済むだろうが、俺に関しちゃ肉体言語も入ってきそうで怖い。
「いや…だって…こんな顔…」
「そんな!笑顔も素敵じゃないですか!」
「え…?」
「だって凄く優しそうで、これなら話しかけやすいのに」
「青葉はとりあえず、用があるときは社内メッセ使おうな?」
いつもじっと見ては滝本さんに驚かれてる気がるんだけどこいつ。
青葉は反省した様子もなくえへっと笑みを浮かべるだけだった、こいつは後でシバく、絶対にシバく…。
青葉にそう言われた滝本さんはカァァっと顔が真っ赤になっていき、もじもじそわそわし始める。
「おかしく…ないんだ…?」
「とんでもないです!」
「渚くん…も…?」
「うぇ…。いやまあ、初めて見ましたけど、綺麗でしたよ?」
「あ…う…」
あ、もっと真っ赤になった。
もう少し言葉を選ぶべきだったか、我ながら何とも似合わない言葉を言った気がする…俺もちょっと恥ずかしくなってきた。
穴があったら入りたい!!
じゃあ、と滝本さんが呟き、そろそろとこちらと向けば、ぎこちない笑みを浮か始めた。
だがそれも数秒と続かず、速攻顔を両手で覆って隠してしまった。
「う~~~~~~」
「いや!できつつありましたよ!」
「もう少し頑張りましょ!」
「無理…」
「うーん、じゃあ…私を見ずに宗次郎君を見ましょう!スマイル~、スマイル~」
「スマイル…」
宗次郎の写真を見ながらどうにか笑顔を作ろうとするが、それでもうまくいかず、青葉は滝本さんの口元を手で引っ張って無理やり口角を上げていく。
あ、顔が笑ってるのに目が笑ってないってこう言う事を言うんだ…。
所で、俺は一体何を見せられながら昼飯を食ってるんだろう…一体全体どうしてこうなったのか皆目見当もつかないんじゃが…。白米美味しい。
「何やってんだ…?」
昼飯を買いに行って、戻ってきたであろう八神さんに、バッチリその姿を見られてしまった。
まぁ俺はご飯食べてるだけだから何もしていないのでセーフ。
「青葉、昼飯は?」
「あ!そうでした、終わってなくて休憩なし何でした!」
「抜きかよ…じゃあおにぎり一個やる」
ぽいっとおにぎりを投げ渡し、それをわたわたとお手玉しながらもなんとかキャッチする。
八神さんがちゃんと上司してる、珍しい物を見た、明日は槍でも振るのかな…。
「何かすみません…ゆんさんにもスナック貰ってりでてん八神さんにも今度倍返ししますね!」
「あだで返す気か」
「え?」
やられたらやり返す…倍返しだ!!
良いぞもっとやれ青葉!そのまま本当に倍返ししてくれていいからな!
おっと、八神さんと目が合った、俺は何も考えてません、考えてませんよ八神さん…だからそのペンタブをそっとデスクに戻してください…話はそれからです…。
「それで?渚はここで昼飯か?」
「何処かに行って食べるより、ここで食べた方が楽でいいんですよ」
「まだ若いんだから、食堂に行くくらいしたら良いじゃん。すぐ老けるぞー?」
「いやー、重みが違いますね、言葉の」
「渚ぁ、一発いっとくか?」
「わ、わー、八神お姉さんわかーい!」
「分かれば良いんだ、分かれば」
そう言って満足気に振り上げたこぶしを下してくれた。
あぁ、今日も八神には勝てなかったよ…これで一体何回目の敗北だろう、そもそも上司を弄ろうとしてる俺が悪いと言われれば言い返せないや。
「忙しい時は出社前に何か買っとくんだね」
「はーい」
八神さんも仕事があるからか、いそいそと自分のデスクへと戻っていった。
あ、俺もさっさと昼めし食っちまわないと…、休憩終わっちまう。
半分食べ終わっていた弁当をそそくさと口に運んでいると、何故か滝本さんが青葉の事をちょんちょんと優しくなでていた。
しかもさっきの写真で見た時よりも数段優しい笑顔付きでだ。
わぁお、滝本さん凄い大人っぽーい。
青葉が面くらった表情浮かべて滝本さんを見つめていれば、それに少し驚いて手をばっと引いてしまった。
「あ…!ごめん…」
「い、いえ…」
今日は珍しい物をたくさん見れて、俺満足…。
って、そんな達成感なんかどうでもいい、俺は昼飯を食いきるんだー!
止まっていた手を再び動かして飯を食らう。
ちょんちょん…、っと不意に頭に優しい感触が当たったのに気づき、ちらっと見れば、何故か俺も滝本さんに撫でられてた…何を言ってるかわからねぇg(以下略)
「えっと…何で俺も…?」
「さっき…こっち見てた、から…撫でられたかったのかなって…」
「そんな事はないですけど…というか俺、男なんですから、危ないですよ?」
「……?渚くんは…渚くん…だよ…?」
ワッツ?
え、何これ、俺は俺って新手の言葉遊びですか?それとも何かのなぞなぞですか?
あ、ちょ、そのまま自分のデスクに戻らないで!?その言葉の真意が知りたいんで戻ってきて!滝本さん!滝本さーん!!
こうして、俺は昼ごはんが食べきれず、お昼休みが終わってしまったのだった。