無職無能の最強双剣士 ~圧倒的努力に勝る強さはない~   作:虎上 神依

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Chapter2-5 双剣士、ギルドに行く

「ふぅ……、美味しかった」

 

「それじゃ、改めてギルドを探すとしますか」

 

 俺らは通りにあったレストランで食事を取った後、始点の街の冒険者ギルドを探すことにした。

 冒険者、通称ギルドハンターはギルドでしか登録することは出来ない、それに現在金が圧倒的に少ないので素材を買い取ってもらって金を稼ぐという目的もある。

 因みに――この世界の通貨の単位はエンドど言う。

 1エンドの鉄貨、100エンドの銅貨、1万エンドの銀貨、100万エンドの金貨、1億エンドのダイヤ貨、この5種類の通貨でこの世界のお金は管理されている。

 ダイヤ貨とか値段から見て分かる通りどう考えたって需要が無いのだが――やっぱりどこにでもお金持ちは存在するという事だろうなのだろう。

 余談だが一般の村人が魔獣狩りをしないで普通に稼いで手に入るお金が3枚の金貨分、即ち300万エンドだ。で今の俺の所持金――10枚の銅貨、1000エンドだ。

 

 

 

 ――このままだと本当に『エンド』を迎えてしまうぞ。(通貨のエンドは決して『終了』という意味ではありません。)

 

 

 

 という訳で今回は取っておきの素材を用意致しましたっ!

 詳しくはまた後ほどでっ!

 

「……一人で何やってるのよ、怪しまれますよ」

 

「あ、はい」

 

 

 

 

 

 そんなこんなで俺達は街のハンターの流れだけを頼りにギルドを探した。どうせなら道行く人に訪ねても良かったのだが、俺のプライドが何故かそれを許さなかった。

 暫く歩くて目に見えて物々しい雰囲気のハンター達が出入りしている建物が一つ見つかる。

 入り口には前代勇者の像が飾られていてその容姿はどことなく師匠に似ていた。

 いや、そんな訳ないな――あんな白ひげ爺がこんなカッコイイわけないし。

 

 入り口の上には何か模様の描かれた赤色の旗と青色の旗が交差して飾られていて、剣が二本いい角度で飾られている。

 あの剣――中々味があるじゃねぇか、感心、感心。

 

 まあ、見た目からしてここが魔獣討伐ハンター育成・援助ギルド、通称冒険者ギルド、で――間違いないな。

 

「うわぁ――っ! すごい、すごいよゼルさんっ!」

 

 隣で紫色の頭髪をひょこひょこと弾ませながらウルナは目を輝かせて、そのギルドを眺めていた。

 ――だがその一方で俺達を眺めている冒険者も多数存在した。

 まあ、その殆どが俺ではなくウルナを見ているのだがな……。やっぱり美少女は辛かろうなぁ。

 ……もしかしたらこんな美少女ちゃんと旅できる俺も案外幸運だったりして。

 

「あれ……、どうかしました? 私の顔ジーっと見て――ハッ、もしかして卑猥なこと想像して……、何奴っ!」

 

「一人で勝手に話進めんな。単にいい夢持ってるやつは羨ましいなって思っただけだ」

 

「あっ、そ、そうなんだ……、えへへぇ――」

 

 ようやくはしゃぎ過ぎた自覚を持ったウルナは恥かしそうに頭をかく。

 

「でもウルナの気持ち、分からないこともないぞ。俺も認めがたいけどテンション上がってるみたいだし」

 

「そ、そこは認めるべきじゃないですかね……? これでも冒険者登録って人生で二度とない大イベントだと思いますよ」

 

「面倒な事に巻き込まれなければ俺もハッピーだ」

 

 そう言いつつも俺はその賑やかなギルドの中に足を踏み入れる。

 中では街中で見かけたハンターもとい冒険者達と似たり寄ったりの人々があちらこちらで話に花を咲かせていた。中にはテーブルに座って真剣に作戦を練っている者や、男三人で昼間から酒を飲んで馬鹿笑いしている者までいた。

 

「おいおい、見ろよ。あの子超可愛くね?」

 

「凄え、ちょう美人じゃん。あんな子もいるんだねぇ」

 

「隣の男は――なんかヒョロってしてて弱そうだな」

 

「おいおい、それは幾ら何でも失礼だろ」

 

 そうだぞ、見た目で判断する人はいつか酷い目に合うぞ。

 しかしコチラとしても失礼で申し訳ないが――始点の街とは言え、案外低ランクのハンターが多いんだな。俺の魔力感知がその現実を嫌というほど物語っている。

 ランクと言ってもギルドランクの事じゃなくてステータス的な意味でだがな。2桁がゾロゾロ、3桁ちらほら、200超えまさかのゼロ。

 

 

 ――レベル200以上どうしたッ!? しっかりしろぉ!!

 

 

「なぁなぁ、ウルナ」

 

「はいはい、お呼びでしょうかゼルさん?」

 

 俺はウルナに近づくと彼女の耳元で出来るだけ小さい声で言った。

 

「200以上がいないんですけどこれはどういう事でしょうか」

 

「……それは煽りと解釈しても宜しいですか?」

 

「えー? 別に煽ってないんだが」

 

「レベル200以上は1万人に1人いるかいないかの確率ですよ……? そんなにホイホイいる訳ないじゃないですか」

 

「なんだ、つまらん」

 

「はぁ……、レベル999は気楽でいいですねぇ」

 

 ウルナは呆れた様な表情を浮かべながら首を振った。

 なるほど、なるほど、つまりレベル999は変人扱いなんだな、いい勉強になったぞ。

 

「よし、行きますよ冒険者登録」

 

「うーす」

 

 俺達は受付のある方に進んだ。現在受付には4人のハンターが並んでいる。

 近づいてきた俺達に気づいた列、最後尾の男は、俺達の姿を見るやいなや鼻で笑った。

 

「子供かよ……。全く、最近よくいるんだよなぁ、調子に乗ってるガキ共……。世間知らずにも程があるぜ」

 

 聞こえない程度に小さく呟いているつもりなのかは知らないが生憎俺の耳は地獄耳――スキル補正によるもの――なのでな。

 そんな訳で今の会話、丸聞こえだぞ、レベル74のカスが。

 そもそも俺もう子供じゃねーし。

 

 俺は思念会話でそう言い返してやった。一方でウルナは全く気づいていないご様子だったが……。

 

 

 

 

 

 先程俺達の事で陰口を叩いていた暇人極まりない雑魚の男の用が終わり、遂に俺達の番が来る。

 

「あのー」

 

「初めての方ですね。登録ですか? それともご依頼ですか?」

 

 受付嬢は若干人見知りを発動しているウルナに対して営業スマイルで応接する。栗色の艶やかな長髪で、赤縁のちょっと派手な眼鏡を掛けている。

 見た目から相当仕事のできる雰囲気を醸し出しつつも、その白い肌とサファイアの様な綺麗な瞳による美人さを保っている。

 一見は一般的な受付嬢に見えるかもしれないが相当な美人である事には違いない。幼さと美しさのハーモニーを奏でているウルナには若干劣るけど。

 ふと胸に付けてあるギルド職員のプレートを見るとそこには『アイラ』と書いてあった。彼女の名前で間違いないだろう。

 

「俺とこの子の二人、ハンター登録をお願いします」

 

 出来るだけ無表情にせず、自然に言う。無論、ハンター登録の条件である15歳以上は見た目からもクリアしているのでアイラは断ること無く「かしこまりました」と言って書類とペンを渡してきた。

 そして慣れたような口調でハンターについて説明を始めた。如何にもマニュアルそのままのような説明だったが、噛み砕いて要約すると――

 

 第一にギルドは魔獣などの脅威を退ける為に全種族(無論魔族も含める)の同意の元設立された共同組合であり、魔獣を狩るハンター(冒険者とも言う)を育成、援助しているのだそうだ。

 まあ、要するに魔獣の脅威を退けたりハンターの為になるような武器や防具を作るための素材を集めるための依頼を受け、ハンターらに呼びかける事を主な仕事としている所だ。

 そしてハンターにはSSSからFまでランク付けされていてランクに応じて依頼や報酬なども変わっていくそうだ。

 

 ――こんな感じである。

 

「では、お名前と性別、職業、差し支えなければユニークスキルを書いて下さい。字を書けない場合は私が代筆します。また、この個人情報に関しては流出、漏洩等について適切な対策を講じていますのでご心配なく」

 

 

 ――えっ、職業も書くのかよ……。マジかぁ……。

 

 

 隣でウルナが心配そうに見つめる中俺はペンを握り静かに走らせた。


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