一般人の自称おっさん、アイドル助けたら生活が変わった?   作:Aりーす

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助けた後日、普通に再会しました

 

職を追われて三千里…なんで歩き回っちゃいないけど、おじさん怒涛のニート生活3日目ですよー!

…言ってて悲しみが深くなるな、おじさんって呼ばれる歳だって事も、仕事がない事も刺さって来ちゃうね…いやぁ、辛い辛い、どれくらいって生活費とかね。今は生きていけるけどねぇ…餓死は嫌だなぁ。

 

まぁ今日は働く場所探しも兼ねて外に出ようと思うんだ。あの…鷺沢って子を助けてから外に出てない…と言っても助けてから1日経っただけだけどねぇ…

 

「んー…さて、パジャマからは解放されるね、スーツからも解放されたけど」

 

なんて言うか、スーツを着なくていい日々ってのも悪くはないよねぇ。休みなんてあってない様な物だったし、有給とか使った記憶がないね。ま、仕事効率悪かったし。

 

あ、着替えシーンとか必要無いでしょ?誰がおじさんの半裸を見て喜ぶんだい?…あ、なんか思い当たる節がなくはないけど、あの子は気のせいだし例外だし…

 

もう見慣れたアパートの一室を出る。こんな時間に出るのも久しぶりって感じだ。このアパートも家賃が安いし職場から近いから選んだけど…思入れ深いなぁ、こっちに来てからずっとここ暮らしだし…

 

「…ふふっ、こんな風に思い出すなんて、走馬灯か何かかなぁ?まぁ、死ぬほど弱ってはいないけど」

 

不思議と、そこまで悪い気はしないのだ。生活が苦しくなるのは事実だし、いつか餓死を迎えたっておかしくはない。

 

ただ、今くらいは余韻に浸らせて欲しい。自由な1日とか、誰かを助けた後の外の空気とか。…なんて、似合わないねぇ。

 

俺はポケットにあるタバコを取り出す。体に悪いのは分かってるから、1日1本までと決めている。…あぁ、昨日は吸って無かったかな?

 

「この機会だし…タバコを止めるのもアリ、かな?…ま、ライターが切れたら止めよう。買うお金もないし」

 

生憎、ライターは買い換えたばかりだった。…決意が鈍っちゃうね、歳を取ると大人ぶっちゃうから人前では止める、なんて言うけどさ。もう見栄張る相手もいないってのも悪くはないねぇ…ま、逃避してるだけかなぁ?

 

近場のコンビニに行く。それだけの道のりだったが、不思議と独り言は多くなる。不思議と思う所が増えてくる。決して、働いていた頃の方が良かったなんてものは思っていない。

 

今の時代、仕事を辞める若者も多いさ。ゆとり、なんて呼ばれてるけど…なら大人が教えないでどうするのかな?いつも甘いなんて言われてたけど…見捨てる方がよっぽどさ。

 

歳を取ってからじゃ、出来るものも出来なくなる。なら、若者は今を楽しんで欲しいからねぇ。新人の子らは上手くやれてるかなぁ?…やっぱり、それなりに引きずってるみたいだ。タバコの煙が、久しぶりに煙たく感じたのか…少し目が潤む。

 

未練がましい男ってのは嫌われるのにねぇ。…結果自分は卑しい人間だったのかね、なんて思いながらもうコンビニの目の前に着く。…おや、この時間だと客がそれなりにいるんだ。いつも夜中だから知らなかった…はは、失礼かな?

 

 

 

 

「いらっしゃいませー」

 

いつも通り、入店すれば言われる言葉。何気ない言葉だが…自分に向けられてるものと思うと何か変わったりしない?…あ、おじさん臭いかな、こういうの。

 

手頃な価格の弁当を取り、飲み物のスペースへ行く。…どうやら少し話している人らがいるようだ。本のスペースの前にいる。…変わった家族みたいだね、あれ。いや、男の人はいないから…姉妹?とかかな。

 

お、新発売。目が惹かれるね、これにしよう。新発売ってのはどうしてこうも気になるのか、意外に話が広がりそうな議題だったりして。

 

「……あ、れ……?」

 

「どうしたんです?文香さんが本から目を離すなんて…ボクは初めて見ましたよ?」

 

「……すこし…」

 

「…変なことしちゃダメですよ?またあんな事になったら大変ですからね!また怒られちゃいますよ!?」

 

「…うっ……それは…」

 

「可愛いボクの言う事なんですから!間違いが存在するわけないじゃないですか!文香さんだってカワイイボクの事をしっかり見て、そして言葉を聞くべきです!」

 

…中々キャラが立っていらっしゃるようで。自分と話してないのに、とても印象深いねぇ。…あれ?どこか聞き覚えのある名前があったような…?

 

「……でも…その……」

 

ついつい、そっちの方を見てしまう。まぁコンビニ内でこんなに声出されて見ない方が変かな…するとそこには、見慣れた訳ではないけど、見覚えのある顔と雰囲気を携えた少女がいた。

 

「……あ…」

 

そして、しっかりと目が合う。神様ってのは偶然が大好きなのかなぁ…目が合った少女は見間違えようのない、俺が助けた少女。

 

「……相沢、さん……ですよね…?」

 

「…会わないと思ってたのに、こんな風に会えるとは思わなかったよ。…元気そうだね」

 

「……はい…」

 

「ぇ???ど、ど、どういうことなんですかこれ?可愛いボクが置いてけぼり?」

 

…名前も知らない子は慌てふためいているようだ。おそらく知り合い…もしくはアイドルだったりするのかもしれない。うーん、知らないってのは失礼だったりするよねぇ…

 

「……あの…少し、お時間ありますか…?…話したい、事があるんです……幸子さんも…一緒に…」

 

「ボクだって聞きたいことは山程ありますよ!ボクを持ってしても理解できないですからね!」

 

「…ここで断る事は出来ないね。別にこっちは構わないけど、そっちは大丈夫なのかい?見知らぬ男だよ、特にそちらの子からしてみれば」

 

「そうですけどー…聞かないといけないじゃないですか!カワイイボクが聞きたいって言ってるんですから、何も気にする事はないです!」

 

「……だそうです。…近くの、ファミレス行きましょう……」

 

アイドルとファミレス…ファンの人からすれば羨ましいってレベルじゃないのかなぁ?…もう1人は名前も知らないけど、とりあえずはついていく事にした。

 

 

 

 

 

入店したら若干怪訝な目で見られたのは仕方ない。だって2人とも美少女なのに、一緒にいるのは職なしのおじさんだからねぇ…かなり奥の方の席に行くようだ。…あ、お金ないんだけど…まぁ払うくらいなら良いかぁ。

 

2人は同じ側の席につく。俺はもう片方の席に座る。まるで入社の時の面接みたいだねぇ…懐かしい。

 

「……相沢さん……ほんとに、ありがとう…ございました…」

 

「別にわざわざ言わなくても良いよ?気まぐれなんだから…というより、そっちの子に説明してあげて?」

 

とにかく聞きたくて仕方ない顔をしてたからね。…どれくらいかな、中学生とかそれくらいかな?少し小さめな気もするけど…

 

鷺沢さんは早めに説明をしてる。…目まぐるしく表情が変わっていってるね、あっちの子。まるで芸人みたい。

 

「……すみません…少し…」

 

話し終えた所で席を外した鷺沢さん。…んー、察さない方が良かったのかな?というより初対面同士を置いていかないで欲しいのも本音かな。

 

「…あの、相沢さんでしたよね?」

 

「ん、相沢蓮二。別に堅苦しくする必要はないよ?」

 

「そうはいきませんよ!文香さんを助けて下さったんです!何かあったら、ほ、本当に心配で…ほ、本当にありがとうございます!」

 

「…良い子だねぇ。良いよ、お礼とか。そういうの求めて助けた訳でもないし、さ?」

 

「でも、そういう訳には…!」

 

「んー…じゃあ、名前教えてくれるかな?君もアイドルだったりするんでしょ?」

 

「はい、ボクも文香さんと同じアイドルです!カワイイ、が付くのがデフォルトですからね!」

 

「恥ずかしい話、アイドルとか知らなくてね。…ま、ナンパみたいだけど君の事教えてくれたら。それがお礼って事でどうかな?」

 

ま、おじさんナンパする勇気もないし、ナンパ成功なんてしないけどねぇ。

 

「そ、それくらいで良いんですか?ボクだって少しくらい何か出来ますよ?」

 

「可愛いんでしょ?その子の事知れるくらいで良いよ。…まぁ、おじさんなんかに教えたくないなら話は違うけどね?」

 

歳を考えてキザな事は言わないとねぇ…言ってて恥ずかしくなってきたよ、おじさんに似合わなすぎて恥ずかしい。

 

「…ふふん!そんな事、カワイイボクが言う訳ないじゃないですか!ボクは輿水幸子です!カワイイボクを知れたんですから、これからもっとアイドルのボク、そしてボク自身を見てくださいね!」

 

「…ふふ、忘れないよう肝に命じさせてもらうよ。カワイイ子として、まぁ忘れないと思うけどね」

 

どうやら、また俺は変わったアイドルと知り合ったらしい。…うん、帰ったら少しくらい見てみようかな、なんて事を思いながら、テーブルの上にある水を飲み始めた。目の前でカワイイ宣言をした、カワイイアイドルさんを眺めながら。

 

 

 


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