~渓流 昼~
ロウ「で、一応俺達はクエストに行くわけになったんだが……集会所で呼び掛けたのに誰一人見向きもしなかったな。」
マオ「ロウさんが必死にアクションで手を振るや掛け声で頑張ってたのに……。」
ロウ「まぁこのクエスト自体が下位のキークエストだからか……ほとんどの奴等が時間の無駄だと思ったんだろう。」
マオ「うぅ……なんか悲しいです。」
ロウ「誰だって最初はそんなもんだよ、特にパーティやギルドなんかでつるんでる奴はな。俺みたいに野良でやってるハンターは、下位クエは暇潰しがてら丁度良いんだ。」
マオ「そうですか……。」
ロウ「ほら、いつまで落ち込んでてもクエストは待っちゃくれねぇぞ?大抵のクエスト制限時間は50分で限られてるんだからよ。ちゃんと支給品ボックスに入ってる支給品は、しっかり取ったろうな?」
マオ「あ、はい!それは大丈夫です!」
ロウ「というか……マオは片手剣を使うのか?」
チャキン マオ「私の憧れのハンターさんが使ってたから、私もこれを使ってみようと思いまして……ダメですか?」
ロウ「まぁ王道っちゃ王道だが……まぁ良いか。」チャキン
マオ「ロウさんの持っている武器は……確か太刀というものですよね?」
ロウ「あぁ……俺は根っからの太刀使いだ。こいつで色んなモンスターを狩ってきた、今じゃ俺の相棒だ。」
マオ「そういうのって何か良いですよね、自分だけのマイ装備って感じで。」
ロウ「まぁな。さて……それじゃぼちぼち狩りに行くとするか。」ゴクッ
ロウ「うん、旨い!」ガッツポーズ
マオ「ロウさん、今飲んだのは何ですか?応急薬とも違う感じでしたし……。」
ロウ「ん……お前千里眼の薬も知らんのか?こいつを飲むと体中の神経が研ぎ澄まされ、どこに大型モンスターがいるのか大体解るようになるんだ。」
マオ「へぇ……そういう物もあるんですねぇ。」
ロウ「よけりゃ残りの2つやるよ。俺はもう解ってっから、後は現場でそいつにペイント玉をぶつけりゃいいだけだから。」スッ ピコーンピコーン
マオ「良いんですか!?ありがとうございます!」スッ
コトン 千里眼の薬 を 受け取った
ロウ「じゃあそろそろ行くぞ、この千里眼もあんまり長くは持たねぇ。効果が切れる前に大型のとこへ行かねぇと、最悪このマップ全域をぐるぐる回っちまうことになるからよ。そんな事になったら制限時間の関係で、クエスト成功率が大幅にダウンするしな。」スタスタ
マオ「了解です……!」スタスタ
~渓流 昼 大型エリア~
ザッ ロウ「!……マオ止まれ。」
ザッ マオ「はい。」
コソコソ コソコソ ロウ「……」
マオ「……どうしたんですかロウさん、何か物凄く怪しい人に見えますよ?」
ロウ「ばか野郎……!あそこにいるモンスターが見えねぇのか?」スッ
マオ「あそこ……?」チラッ
静かで綺麗な川が流れているその中央に、青色の体毛に覆われた熊がノシノシと四つん這いで歩いていた。他の小型モンスターのジャギイもいるが、そのモンスターに怯えているのか、距離を空けて様子を見ている状態だ。
マオ「あれは……。」
ロウ「あれが青熊獣アオアシラだ……どうだ?ほぼ初めて大型モンスターを見た感想は。」
マオ「私、あれと戦うんですか……?」
ロウ「あぁそうだ。まだ俺達の気配には気づいていないが……遅かれ早かれアイツと真っ正面からやりあうことになる。今回は仕方ねぇから俺が先導してやる、だからお前も後に続けよ?」
マオ「わ、解りました……。」
ロウ「よしっ……行くぞぉ!」バッ
ピクッ アオアシラ「!!」
ロウ「まずはペイント玉っ!」ブンッ
ロウが物陰から勢い良く飛び出し、ポーチからペイント玉を思いっきりアオアシラへ投げつけた。ペイント玉はアオアシラの顔に命中し、異物感を感じたアオアシラは2本の前足を横へ広げ、戦闘体勢をとる。
アオアシラ「グォォォォォン!」
ロウ「はっ……下位モンスターの癖に一丁前に吠えやがる。行くぞマオ!」ダンッ
マオ「はい!」ダッ
アオアシラ「グァァァ!」バッ
アオアシラは後ろ足を踏ん張り一直線に向かってくる2人に対し突進を仕掛ける。ロウとマオはアオアシラの予備動作をしっかりと見ていたため、お互い横に反対側へと避けた。ロウは起き上がってすぐに体勢を整えると、両手に持っていた太刀で素早くモンスターに斬りつけた。アオアシラの背中からは斬られた際の血が飛び交い、ロウは一歩も引かずに尚も斬り続けていく。
ロウ「おらぁぁぁ!!」ババババ
アオアシラ「グァウ!!」ブンッ
ロウ「よっと!」バッ
ロウに斬られていたアオアシラだったが、血が吹き出しているにも関わらず大して効いていないようで、その場でノソッと立ち上がると、ロウにすかさず大きな前足のうち片足を使って凪ぎ払った。基本的にアオアシラの行動は大振りな為、それを見切っていたロウは瞬時にかわし、少し距離をとる。
ロウ「へっ……もう少しで太刀ゲージが貯まるところだったんだがな。」スッ
アオアシラ「グォォォォン!」
アオアシラの口からは白い息が吹き出し、どうやら体力が減って怒り状態となったようだ。この状態になったモンスターは通常時より攻撃スピードなどが早くなり、その分攻撃力も上昇する。上位に入っているロウならばその程度大したことは無いだろうが、下位ハンターかつ初期装備のマオからすればかなりの驚異になるだろう。そしてあろうことか怒り状態になったアオアシラは、果敢に挑んできたロウから棒立ちで様子を見ていたマオへと標的を変え、マオに突進してきたのだ。
ロウ「ちっ……マオ避けろ!」
マオ「うわぁ!」バッ
ズザザザ アオアシラ「グルルル。」
間一髪でアオアシラの突進をかわしたマオ。だが怒り状態であるアオアシラの攻撃は止まらない。アオアシラは2本の前足を使って連続の大振り裂きを繰り出した。壁端に追い詰められたマオは逃げ切れないと判断し、危機感から右腕に着けていた盾で防ごうと構えた。
アオアシラ「ガァァッ!」ブォォン
ガキンッ マオ「うわっ!?」
盾で防いだがあまりの衝撃に、マオは盾を弾かれながらも体勢を整えつつ後ずさりする。その衝撃からか、マオの体力には少しダメージを負っていた。
ロウ「おらぁ!」ズバッ
アオアシラ「グォォン……!」ズザザザ
後ろからアオアシラを追いかけてきたロウがすかさず斬りつけ、不意を突かれたアオアシラは僅かに怯んだ。ロウはその隙にマオを連れてアオアシラから距離を取り、真っ向から迎え撃つ体勢をとる。
ロウ「マオ、大丈夫か?」
マオ「な、なんとか大丈夫です。ギリギリ盾で防ぎましたけど、かなりの衝撃が襲ってきて……。」
チラッ ロウ「……まぁその装備じゃ無理もねえな……仕方ねぇ。じゃあ俺が奴の隙を作ってやるから、マオはそこを狙え。」
マオ「はい……でもどうやって隙を?」
ロウ「お前も戦ってさすがに気づいていると思うが、奴の攻撃は基本的に大振りだ。奴から攻撃を仕掛けさせて俺が大技を放つ……そして奴が倒れた隙にマオが止めを刺すんだ。奴もモンスターとは言え生き物……学習能力があるから何度も同じ手は使えん……良いな!」チャキ
マオ「はい!」チャキ
アオアシラ「ガァァァァァ!」ダッ
再びアオアシラはロウ達に向かって突進を繰り出す。だが同じ行動パターンでロウとマオは見切っており、マオは盾を構えてロウはさける体勢をとる。アオアシラの体が触れる瞬間、ロウは素早くさけてモンスターの背後を取ると、大技の構えを取り一気に仕掛けていった。
バッ ロウ「狩技発動っ! 桜花気刃斬っ!!」
マオ「 桜花気刃斬……?」チラッ
盾で防いだマオをよそに、ロウはバックステップでアオアシラとの距離を計算して太刀に力を込め、再びアオアシラへ距離を縮めていく。その瞬間に太刀を用いて舞のような斬擊をお見舞いしそのままアオアシラの正面で太刀を納めた。一瞬の出来事で解らなかったアオアシラは、真正面にロウがいたため攻撃を仕掛けようとする……が。
ズババババ アオアシラ「グォア!?」
ロウ「甘いんだよ。」
突如アオアシラの体中を謎の斬擊が襲い、完全に油断していたアオアシラはその場で大きく転倒してしまった。その様子を見ていたマオは、何が起こったのか全く解らないような顔をしていた。
マオ(何故いきなりアオアシラの体が斬られて……まさかロウさんのさっきの技?)
ロウ「今だマオっ!」
マオ「!……はいっ!」ダッ
ロウが声を荒げてマオに指示し、マオはすかさず転倒しているアオアシラへ走って距離を詰めた。一方アオアシラは体が重いのか、4本の足をジタバタさせて思うように起き上がることは出来ない。
マオ「はぁぁぁぁ!!」カッ
ロウ「!」
マオの体からオレンジ色の光が迸りすかさず左手の剣でアオアシラの顔を斬りつけると、マオはその場で深く腰を落とし、右手に持っていた盾をアオアシラの顔目掛けて一気に突き上げた。
ズガァァァァ マオ「 昇竜撃ぃぃぃっ!」
アオアシラ「グォァァァ……!」グラッ
マオの放った狩技がアオアシラの顎を捕らえてクリーンヒットし、マオは突き上げたと同時に空へ舞う。小さな少女からは想像できないそのとてつもない力に、さすがの弱ったアオアシラもダウンから2本足で立った状態となり、顔は空を向けて白目を向いていた。そして……
スタッ マオ「わっとと……!」トットッ
ドザァァ アオアシラ「…。」
目的 を 達成しました
ロウ「おぉ……綺麗に決まったな……。」
マオ「はぁ……はぁ……狩った!」
あと 60秒 で 集会所に戻ります
マオ「よしっ!」グッ
これで5話は終わりになります。
グダグタと言いますか展開早いと言いますか……文才無くて申し訳ないです。今回はクエスト絡みの為あらすじはありません……。
ここまで見ていただき、ありがとうございましたぁ!