当初「烈風のカリンがルイズの使い魔として召喚される」と言うアイデアとカリンの性格までは決めてあったのですが、それらを整合する為の理由付けに手間取ってしまい理屈倒れの中身なってしまった事を深く謝罪いたします。ごめんなさいでした。
今日の今朝方、死の損ないカリンを書いてて「どうも違うんだよなぁ~、でもどうすればいいのか分かんないしなぁ~」と思っていると急に閃いて、出社途中と昼休みと退社時と帰宅してから書き続けてました。
後半で余計なネタとしてHELLSINGネタを入れてしまってせいで少し失敗しましたが。大部分は望んでいた通りのカリンが書けたので嬉しいです。
今作のカリンはサンドリアンに強く影響を受けてる設定です。性格的にはカリンとサンドリアンの合いの子みたいな騎士姫です。
作風も私なりにですが原作に寄せてありますので明るめです。
普通にゼロ魔世界へカリンを投入した作品だと解釈してくださるとありがたいです。
注:なお、HELLSINGネタを入れたせいでカリンが戦争大好きな戦争屋になっちゃってる点はご容赦を。批判があった場合には連載時に変更いたしますね。
空に輝く二つの月を黒煙が覆い尽くし、大地を埋め尽くす死人の大軍を祝福するかのように世界を黒く染め上げていく。
勇猛果敢な雄叫びとともに切りかかっていく騎士団は、先ほどの一団を最後に品切れ。聞こえてきていた断末魔の叫びが途切れてから半時の時間が過ぎている。
人類最後の騎士団が華々しく終焉を迎え、ハルケギニアの大地に生きる人間も残すところは自分と、後一人だけ。
「酷い色の空だな・・・まるで世界が終わるみたいだ・・・」
世界に残された二人だけの人類、その片割れである男の方がサーベルの刃を磨く手を休め、雲の立ち籠める黒い空を見上げながらつぶやく声を耳にして、人類最後の少女のは相方の顔を振り仰ぐ。
それは、妙な男だった。顔立ちは若そうに見えるが、灰色に近い銀髪と物憂げな目にはめ込まれたモノクルが年齢不詳の怪しい雰囲気を漂わせている。
ただ、驚くほどに整った顔立ちがその怪しさを打ち消して、男に危うい魅力を与えている。女性なら、ほう、とため息をついて見とれてしまうような・・・・・・。
(ああ、だからか。こいつのこう言うところに影響されて、ボクまでこんな感じになってしまっていたわけか)
男の纏う、この世ならざる魅力を改めて分析してみた少女は、そう結論せざるを得なかった。
どうして“女”である自分が、こうも同姓に熱を上げられまくるのか。その答えをようやく得た彼女は、自分が行き遅れた元凶である相方を鋭い視線で睨み据え、吐き捨てるように短くするどく罵倒する。
「“まるで”、じゃない。“そのもの”だ。本当の意味で世界が終わる・・・いや、既に終わりを迎えた後なのか。
残された篝火の燃え滓であるボクたちが今更なにバカなこと言ってるんだバカ。そんなだからキミはバカだと、以前から言い続けてるんだよ大バカ野郎」
「ば、バカって・・・そんなにバカバカ連呼する程じゃないだろう!? ほら、あれだ。
おれだって以前のお前と出会ったあの頃よりかはずっとマシになってるはずだ! ・・・たぶん、少しくらいなら・・・」
威勢良く啖呵を切っておきながら途中で失速し、後へと続く言葉は言い訳じみた色を帯びていく。
出会った直後には見えなかったし、見せてくれなかった相方の人には決して見せない隠れた側面“自信の無さ”を存分に発揮しまくりながら、相方はそれでも剣を磨くことだけは忘れない。
癖だ。
長年戦場に根を張り続け身体の奥にある芯まで染み込ませ続けた、戦場で生き残るために必要な第二の本能。戦士の癖。
今でも、ついつい考えてしまう。
この戦局を打開する術を。敵を効率よく殺戮して、味方の犠牲を少しでも減らせる方策を。敵を殺し、味方を生かす。戦場で生きるために人が編み出した人殺しの術。鬼の道。戦術。
仕える国は滅び、報酬を支払う雇い主は死に絶えて、世界中で生き残っている生物は自分たち二人きり。
そんな窮状に陥ってもまだ諦めようとしない自分たちの心に、他の誰でもない彼女たち自身が心底から呆れ果てていた。
そして、思う。
戦って戦って、こんな最果ての地に来てまで戦って、戦場が無くなろうとしている今になってもまだ戦い足りないらしい自分たちは、どうやら正真正銘掛け値なしに本物の、戦争大好きな戦争屋に成り果てていたらしい、と。
「おかしな話だ。ついでに言えば、皮肉な話だ。職にあぶれた落ちこぼれ貧乏零細騎士団から始まったボクたちが、今や世界最強にして最後の騎士団になってる未来だと?
こんなバカな話があっていいのか? ボクはこれでも、幼いときに命の危機を救ってもらった騎士様にあこがれて騎士を目指していたんだぞ?
それが今や、敵を殺すのにはどうすれば良いかしか考えつかない、大量殺戮遂行者の典型だ。まったく、バカバカしくてやってられないな。これがボクの運命だって言うのなら、始祖ブリミルはとんでもないアバズレなのだろうさ。ふん」
相変わらずの口の悪さを遺憾なく発揮する相方の“少年”を微笑ましいものでも見つけたかのように柔らかい眼で見つめながら、灰色の男は、
「酷い言いぐさだ。仮にも女性相手に使って良い言葉じゃない。
せめてそうだな・・・『乳のデカい修道服着た金髪シスター』みたいな女だ、ぐらいに留めておけ。音便にな」
「・・・音便か? それ・・・。完全にキミの殺めた元恋人の事を指しているとしか思えない表現なんだが・・・」
「まぁ、俺のよく知る女の中では、一番性悪な女だったからな。アバズレだと男を騙してひっかける悪女をイメージするが、アイツがそんなに可愛い女だったか?
世界を滅ぼす元凶を生み、死者の王国を作るために生者を殺し尽くそうとした性悪と、自分を信じて祈りを捧げる人類が滅びようって時になっても降臨する気配のない始祖とは良い勝負だ。釣り合いがとれててバランスが良いだろう?」
「キミも存外、口が悪いな。『銀の酒樽』のターニャが泣くぞ?」
「とっくの昔に死んでるだろ。あと、滅びたしトリスタニアも。死んだ女に気を使いながら生きてる友達と楽しくおしゃべりが出来るほど、俺は器用な性格をしてないんだよ」
「それもそうか」
カリンは納得して立ち上がる。鞘に収めた剣を履き、近づいてくる死人の大軍を前に改めて感慨を抱く。
確かに、器用じゃない。もしもコイツに少しでも器用な世渡りが出来ていたならば、今ここに立っているのは自分一人だったはずなのだから。
「さっきより、敵の数が増えているな。7万ちょいぐらいか? たった二人の騎士相手に随分と大仰な数を投入したもんだ」
同じな仕草の後で隣に並んだ相棒が、片手をかざして敵の姿を観察しながらボヤくように伝えてきた敵の情報を、カリンは取るに足らぬことだと気にもかけない。
「大した違いじゃないだろう? もとより死人となったハルケギニア全住民一千万を相手取った負け戦を、負けること前提で戦い続けてきたボクらだ。
それが順当通りに負け越そうとしているだけで今更あわてる要素はどこにも見当たらないぞ?
いつも通りにボクたちは、ただ敵を切って撃って刺し貫いて殺し尽くして、死人の群を死体の山に変えればいい。それだけだろう? どこに不安要素があると言うんだ?」
「違いない。そして、それ故に度し難い。
俺たちは確か最初に旅にでたときに「ハルケギニアに生きるすべての人の命を救うために」と誓いをたてたはずなんだが・・・どこで道を間違えたのか、今や人を殺す術しか思いつかない戦争屋。生きていると退屈しなくて良いというのは本当だったな」
割り切ってサッパリとした表情で相棒の騎士サンドリアンは気にする様子も見せないままに今の自分たちを批判して、変質した現状にたいしては特にこれといって感想を口にしない。
言うまでもなく分かっていることを口に出す必要はない。それが必要な程度の関係はとっくの昔に終えている。
今の自分たちは仲間じゃない。『戦友』だ。命を掛け合い預け合い、互いの命を何度救い合ってきたか数えだしたら切りがない。
互いに相手のミスで自分が死ぬなら本望だ。心からそう思い合えるほど信頼し合った仲間たち最後の二人。
彼と彼女の間に、今更言葉にしなければ伝わらない思いなどなーーいや、あった。
たった一つだけ、サンドリアンには死ぬ前に彼女へ伝えておかなければならない言葉が残されていた。
それを言うには、今しかない。今が人生最期の友と過ごす時間なのだから、今を逃せば後はない。
だから言おう。はっきりと、正直に、自分の抱き続けた思いの丈を、この小さくて愛らしい同胞の少“年”騎士に。長年暖め続けてきた想いの全てをぶつけるのだ。
「カリン・・・今まで俺なんかの愚考に付き合ってくれてありがとう。感謝しているんだ、心から」
「・・・なんだよ気持ち悪い。お腹でもくだしたのか? 決戦を前に悠長なことだな。
見ないでいてやるから、その辺で適当に催してこい。手早くすませろよ」
「茶化すな。・・・本当はお前だって分かってるんだろう? 俺がこれからなんの話をしようとしているかをさ」
「・・・・・・」
図星を突かれたカリンは、そっぽを向いて黙り込む。
だってそれは、互いに秘めた想いだったはずだから。
自分は彼のことが好きだし、彼が自分を本当はどう思っているのか聞いていない。聞かせてくれる約束は交わしたが、もう何年も前の話であり、彼も自分も禄に内容を覚えてはいないだろう。
たぶん。きっと、そうだ。そうに違いない。忘れているから言わずに来たんだ。そうだ、そうに違いない。お願いだから、そうだと言ってよサンドリアン!?
混乱のあまり途中で思考に変な物が混ざった気もするが、とにかくカリンは内心おおいに慌てふためいていた。
(と言うか、なぜ今この時になって持ち出してきた!? 付き合い長いんだから分かるだろ!? ボクが土壇場で恋愛話を持ち出されると冷静さを保てずに心が子供帰りしちゃう性格の持ち主だったことくらいさぁ!?
本気でお願いだから、決戦を前にそういう話を振るのは遠慮して欲しかったぞアホドリアン!!)
心中にて盛大に罵声をぶつけまくりながらも、真っ赤になった顔をうつむく事でサンドリアンの視界から外すよう努力する。
沸騰しやすい性格と赤面症。何年経っても直らない悪癖が、今この時には心底恨めしくて苦々しい。いっそ“ストーム”を使って0に戻すことは出来ないだろうか?
大地をえぐり、岩を隆起させ、堅固な城壁で覆われた要塞さえも更地に変える今の自分が放つ“ストーム”ならば不可能ではないんじゃないだろうか?
たとえば自分を中心において周囲五百メトル四方を効果範囲とし、最大出力で詠唱さえすればあるいは・・・・・・
割とガチな命の危機がすぐ側で呪文を唱え始めていることに気づきもしないまま、サンドリアンは己のモノローグで語り出す。
こういう男なのだ。ちゃんと分かってる。ただし今のカリンはそれどころではないので、分かっている事でも分かっていない。
微妙に似たもの同士な二人の間には気づかぬうちに破滅が近づき、それを知覚したわけではないのだがサンドリアンは絶妙なタイミングで“言ってはならないことを”口にする。
「俺はお前に言わなくてはならないことがある。お前に聞いて欲しい想いがある。だからそれを今から言う。これが最初で最期の機会なんだ、どんなに嫌でも恥ずかしくても聞いてもらうぞ? これを済ませないと、俺は死んでも死にきれん」
「う、うん・・・・・・」
「おまえは俺が、本当の意味でカリーヌを殺したときから側にいて慰め続けてくれた。言葉で癒してくれたし、悪夢に魘されたときなんかは一緒のベッドで寝てくれたこともある。
立ち直れないほど衝撃を受けて引きこもっていた時には何からなにまで、それこそ入浴の世話さえしてもらった体たらくだ。男として不甲斐ない、猛烈に恥ずかしかったし反省もしている。許してくれなどと気軽に言っていい言葉じゃないことぐらい承知の上だ」
「い、いいよ、そんな昔のことは。もう終わった話なんだから今更蒸し返さなくても・・・」
「いいや、蒸し返すね。そうしないと俺の気が収まらないから無理矢理にでも蒸し返させてもらうね。いいな?いいよな?構わないよなカリン?」
「う、う、うん・・・・・・」
ーーダメだ。こうなった時のこいつにボクは逆らえない。
ベッドでうなされてるときに近づいて引っ張り込まれて愛撫される時と同じで、強気に出られたこいつを前にすると、自分が騎士でも男でもない恋に恋する少女であると思い知らされて身動きが取れなくなってしまうのだ。
「あんな夜を俺は何度も過ごした。おまえを押し倒して目覚める朝を何度も迎えた。
だから俺はもう、責任をとることを躊躇わない。男として果たすべき義務と責任のためなら何だってできる。何だって捨てられる。たとえそれがーー男として守るべき最低限の尊厳だろうとも!」
ーーーーーーーは?
「カリン!」
ひどく場違いな言葉を聞いた気がしてポカンとなるカリンの肩を抱き、サンドリアンは長年暖め続けてきた想いを、同僚で仲間で親友でかけがえのない相棒でもある“少年”にぶつけてぶつけてぶつけまくる!
「好きだ!愛している!たとえお前が男でオカマだろうと構わないぐらいにゾッコンなんだ! お前のために守ってきた男の純潔、貞操をお前のために捧げーー」
「死ね変態。尻の穴をバッカスの亡霊に掘られながら死ね。死んでからはナルシスも加えて互いの穴を掘りあって慰めあってろ。
ボクは一人で生き残って長生きして、ヨボヨボになってからお前たちの元に逝ってやる。逝ってから通り過ぎて、立て札に「ホモ地帯。危険。女性は立ち入りを禁止する」と書いて、永遠に隔離追放するために努力してやる」
「ヒドいことをおっしゃる!? なんでだよ! どうしてだよ!? お前あんなに俺のこと拒まなかったじゃないか! ずっとされるがままだったのに、何で最後の最期になって覚悟を決めた俺の告白だけは全力で拒絶するんだよ!?」
「知るか戯け。知りたかったら死ね。知りたくなくても死ね。尻だけにな」
「上手いこと言ったつもりか! ぜんぜん上手くねぇよ! むしろドン引きだよ! この状況下で下ネタ吐ける相棒の肝っ玉には昔からドン引きさせられ続きだよ!」
はぁはぁと息をあらげて顔を赤くしている色男のバカ話に、これ以上付き合ってやる義理はないと。
カリンはサーベルを抜いて、改めて敵へと向けて構えをとる。
一見不必要な行程だが、魔法は集中力がものを言う。慣れ親しんだ動作をこなすのも魔法戦闘に於いては必要不可欠な勝因であり、生還率を高める条件なのだ。
生還率。そう、彼女はこの期に及んでもまだ諦めてはいないのだ。
次なる戦場へ赴くため生き残ることを。
次の戦場ではより多くの敵が待ちかまえており、それを越えた先には更に多くの敵が待ちかまえていることは間違えようのない事実なのに。
それを想うとカリンは震えが止まらなくなるーー嬉しくて。楽しみすぎて。
次の戦場に行くために敵と戦い殺し尽くして、次の戦場についたら次の次の戦場に行くために敵と戦い殺し尽くす。
世界が滅びた今でも、まだどこかにあるはずなんだ。戦える場所が。戦場が。倒すべき敵が。自分が戦って死ぬに相応しい敵の存在が。
殺し甲斐のある敵が、死に甲斐のある敵が。殺し合って殺され合える最高の敵が、まだどこかに生き残っていたとしても不思議じゃないから。
だから彼女は赴くのだ、戦場へ。敵の待つ場所へ。敵が待っていてくれるかもしれない場所へ。待っていてほしい敵が、待っていてくれるかもしれない戦場へ。
サンドリアンの隣で死ぬのも悪くはない。
だが、ダメだ。彼には彼で果たしてほしい役割がある。それを果たす前に彼と死ぬのは勿体ない。
だって。
こんなにも多くの敵が、倒すべき敵が、殺すべき敵が、敵と殺し合える戦場が目の前に広がっているのだからーー
「さて、行こうかサンドリアン。地獄まで、地獄を創りにピクニックと洒落込もうじゃないか。男のケツを掘る暇があるんだったら、殺した敵の死骸の一つでも使ってシゴいてこい。その方がよっぽど建設的だ」
「阿呆かお前は。死体なんて物じゃないか。物に挿入れるくらいだったら、女みたいな生きてる男に挿入れたいと願うのがノーマルな男の生き様だ。
俺は健全な精神を持った正常な健康体だから、俺がお前を好きなのはお前だからで、男を好きなわけでは決してなくてだな?」
「わかったわかった。とりあえず行くぞ『女嫌い』。戦場がボクたちを待っている。
戦場でボクの隣にいてほしいのも、共に駆け抜けて欲しいのもキミだけだ。キミじゃないとダメなんだ。
ーーだからさ、サンドリアン。ボクはキミが“ホモ”だったとしても差別なんかしない。人の趣味は人それぞれだもんな? わかるよ、うん」
「だから違うって、誤解だって。本当に惚れてて好きなんだって。愛してるんだと何回言わせれば気が済むーー」
「うおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」
裂帛の気合いと共にカリンは駆け出し、置いて行かれまいとサンドリアンも半舜遅れて後に続く。
赴く先は戦場。向かう先は戦場。目指すべき場所も戦場であり、最終到達地点も戦場しか求めていない。
どうしようもないほどに度し難く、世界中から全ての人間が消え去った後まで戦場を求めて無限に彷徨い、歩き続ける。
自分たちが死ぬために戦場が必要なのではない。
生きるために必要なのだ。戦場が。
自分たちは戦場なくしては生きられない。戦場でしか生きたくない。戦場にしか行きたくない。
懐かしき戦場へ! 友と過ごした戦場へ! 友と駆け抜けた戦場へ! 友との思い出が全て詰まった懐かしき故郷(せんじょう)へ!
万感の思いを込めていざ逝かん! 戦場へ!死地へ!死すべき場所へ!殺すべき場所へ!殺して殺され殺し合い、死と生が踊り狂う愛しき舞踏会の会場へ!
もう戻れないところまで来てしまったカリンが、何度だって舞い戻りたくなる思い出の場所。
それがーー戦場!
「あんた誰?」
抜けるような青空をバックに、カリンの顔をまじまじと覗き込んでいる女の子が言って、
「キミこそ誰だい?
人に名を問う時には、まず自分から名乗るのが礼儀だと教わらなかったのかな?
まったく、苦労知らずで世間知らずな箱入りお嬢様の貴族娘はこれだから困る」
肩をすくめて宣う、自分が喚び出した少女の言葉に思わず頬をひきつらせた。
使い魔となっても変わらないし変えられない、無礼な奴に対する無礼な態度。
世界か、あるいは時代を変えても変わりようがない性格はそのままに、カリンは皮肉と嫌みをたっぷり含んだ毒入り口調で、自分の主になってしまった運のない女の子に問いを発し、
「初めまして、親の顔が見てみたくなるほど運の悪い、ハルケギニア一不幸なお嬢さん。
せっかくだし教えてもらえないか? キミとキミの母君の名を。
ボクを使い魔として召還してしまうほど不幸な女の子を娘に持ってしまった不幸すぎる母親の名は、いったい何と言うんだい?」
盛大に自分で自分の黒歴史という名の地雷を踏み抜いてしまった事実に気付くのは、もうしばらく後の事である。
つづく
戦場慣れしてカリンは下ネタも普通に言えるようになってます。
軍人さんは下が好き!(超偏見)