原作を大きく改稿した文章になっちゃってますのでお気を付けください。普通にやってくとリザドギルティ戦は意外と長すぎる!
ただ、折角途中まで書いたのでトゥアールが初登場する喫茶店内のシーンも下の方に乗せておきました。良ければどーぞ☆ ・・・彼女のエロネタだけでも相当の尺を取るので厄介なのですよ。いやマジで(真剣に)
「な、何なんだこれは!?」
俺は驚愕に目を見開いて、その光景を凝視させられた。
店で出会った謎の少女『トゥアール』に連れられて俺たちが向かった先、地元最大のコンベンションセンター『マクシーム宙果』が今、怪物が闊歩する地獄に変わり果てていた。
特撮映画とかでしか見ることのない全身黒タイツみたいな格好した兵士たちを引き連れて、辺りを破壊しまくっているのは怪人―――爬虫類にごちゃごちゃと角を装飾したような頭部と、厳かな甲冑を纏った人型の二足歩行する大蜥蜴。
そんなバケモノが、燃え上がる駐車場に止めてあった車の炎を背景に暴れ回っている姿は到底現実に起きてることとは信じられなかった。
だけど・・・車の燃える炎の暑さが俺に教えてくれている。
この光景は映画なんかじゃない。現実に俺たち地球人類は、襲われてるんだって事実を!
「アレはエレメリアン。地球のツインテールを奪い尽くすために異世界より襲来した恐ろしい力を持った怪物たちです。現状の人類には奴らと対等に渡り合える技術はありません。
ですが! 先ほど私が総二様に手渡したブレスレット―――テイルギアを使って変身すれば彼らと互角以上に戦えるようになるはずです! どうか、それを使って世界とツインテールを守ってください!」
「・・・わかったよ、トゥアール! 俺、行ってくる!」
あまりにも唐突すぎる展開に頭が追いついていかないが、目の前にツインテールを奪おうとしてる奴らがいて、俺にはツインテールを守れるだけの力がある。十分だ。俺が戦うのにこれ以上の理由はいらない。俺が命をかけて戦うのにツインテールを守ることが出来る以上の理由は必要ないから。
「ちょ、ちょっと待ってよ。変身はともかく、なんでそーじがそんな危ないことしないといけないのよ!
・・・あと、あんたが戦う理由の部分で、女の子が誘拐されそうになってるからとか言えないわけ・・・?」
「いや、一応女の子を助けたいって思ってはいるんだけど・・・・・・」
単に『ツインテールを守ること』=『女の子を救うこと』に直結しているだけであって、別々のものと捉える気は最初から無かったぞ俺は?
「・・・ですが、相手は初戦から侮れない強敵が出張ってきているようです。ここは出し惜しみしようとはせずに、最初から多少のリスクは承知のうえで奥の手を使って参りましょう」
そう言ってトゥアールが胸の谷間から取り出したのは、先ほど店内にいたときに俺の腕へと無理矢理装着させてきたのとは色違いのブレスレット。
それを竜姫に差し出してからトゥアールは、厳かな口調で静かに諭すように説明を始めようとする。
「よろしいですか? 竜姫ちゃん。これは本来、あり得べからざるテイルギア。今ここにあるはずのない存在。
そこに無いはずのものが有るということは、それ自体が世界を乱す歪みそのものにもなり得ると言うこと。これを身につけてしまったが最後、貴女は死ぬよりも恐ろしい運命という名の敵と生涯戦い続けなければならなくなることでしょう。ですから――」
「了解した! ていっ!(ガチャンッ!!)」
「ああっ!? まだ台詞の途中だったのにーっ!? せっかく夜なべして考えた脚本が短時間のうちに二冊も無駄になるなんて!!」
トゥアールが何かについて嘆いているみたいだけど、俺には分かっていたぜ! 竜姫だったらそこで迷うことは決してないってな! なぜなら!
「友と供に歩める道が有るならば! 戦友と供に征ける道が選べるというならば! 友のため、世界のため、ツインテールを守り抜くため選ばぬ理由がどこにあろうか!?
もし仮に我が世界を乱す遠因となる未来があるとするならば、その乱れを解きほぐして必ずや新たなツインテールを結んで見せるまでのこと!
一は全、全は一! 全ての髪型は一人の人間からはじまり、世界中全ての人々と髪と言う名の縁を結ぶことが出来る可能性!
絶望の未来だけを見て、可能性の光を見ようとせぬは愚か者のすることぞーっ!!」
――そうだ! その通りだ竜姫! 世界の歪みなんかに負けたりなんかするものか! 俺とお前が供に戦い続ける限り!
俺たちのツインテールは・・・・・・友情だ!!
「総二! 捕まった人たちが!」
愛香の声。指さした先では、恐ろしい光景が展開されていた。
魔境・・・この世の地獄を思わせる惨劇――シャボン玉の膜のように極彩色の光が張られた輪っかの中をツインテールの女の子たちが通り抜けさせられてゆき、通り過ぎた女の子の髪からはツインテールと、ツインテールが持つ可能性が失わされてしまっていた。
直感的に理解する。
彼女のツインテールは、今・・・・・・死んだのだ、と。
「ふははははは!! この世界の生きとし生ける全てのツインテールを、我らの手中に納めるのだ――――っ!!」
侵略者たちの中心に立つ、蜥蜴怪人が銅鑼声で宣言するのが聞こえてきた。
「―――――あいつら」
俺は生まれて初めて、心の中で太い綱が切れる音を確かに聞いた。
きっと、隣でツインテールを逆立てている竜姫も同じ気持ちのはずだと俺に軽く触れた髪先が俺に確信させてくれている。二人で一人、二本で一本なのがツインテールなのだから。
・・・が。その後、ほんの少しだけボリュームを落として付け加えられた命令の方までは怒りに震えていたので俺は上手く聞き取れてなかった。
「だが! この俺も武人である前に一人の男・・・やはりぬいぐるみを持った幼女も見たいのだ! 見つけた者には褒美を遣わすぞ!」
「モケー?」
・・・怒っていて上手く聞こえなかったから、気のせいだよな?
なんかさっきのと同じ銅鑼声で、世迷い言を流暢な日本語でほざいているように聞こえた気がしたんだけども・・・・・・。
「総二様、竜姫様。落ち着いてください。まだ大丈夫です、間に合います。まだ彼女たちのツインテールは助けられます」
「教えてくれ、トゥアール! 俺は・・・俺たちはどうすればツインテールを助けられる!? どうしたら俺は、あいつらをブチのめすことが出来るようになるんだ!?」
「・・・我からも頼む。彼女たちの光を守るため取り戻すため、あの美しき光り輝く姿を今一度取り戻させてやるために、我が出来ることを何でもよい。教えてもらいたいのだ!」
俺たち二人の思いが伝わったのだろう。トゥアールはふざけること無く誠実な態度と口調で俺たちにブレスレットの使い方を教えてくれた。
「心の中で強く念じてください、変身したい、と。それでブレスレットが作動するはずです」
「それだけでいいのか? 具体的な何かを考えるんじゃなく? ――よし、それなら俺たちでも出来そうだ」
「そーじ!!」
愛香の声が聞こえてきたが、今の俺たちが止まるにはいささか以上に滾りすぎてしまってたらしい。意を決して右拳を握りしめて胸の前に構えたときには既に愛香の声は意識に上らなくなっていた。
目を閉じて、言われたとおりに強く念じる。
変身したい・・・会長を、あの子たちを助けたい。ツインテールを取り戻したい。
あいつらを倒せる強いものになりたい―――――と。
義憤なんかじゃない。眼前で自分の好きなものを土足で踏みにじられて、黙っていられる男がどこにいる!!
『『【テイル・オン】!!!』』
そして“変身”は、本当にあっさりと実現したのだった。
「ううむ、素晴らしいツインテール属性・・・・・・。だが、果たしてこれが、隊長殿が究極とまで讃えるこの星最強の力たり得るのか・・・・・・」
足下に倒れている金髪のツインテール幼女・・・いや、“元”ツインテール幼女から奪ったツインテール属性を眺めながら怪人、リザドギルティは小首をかしげていた。
確かに力は素晴らしいものがある。だが、これが『究極か』と問われたなら彼は一も二もなく首を振るであろう。縦ではなく、横にだ。
そもそも強いだけで、強力なと言うだけで『究極』と呼ぶのは、尊敬し敬愛する自分たちの隊長にして師でもある御方『ドラグギルティ』様の弟子として恥ずかしさを感じられてならないのだ。
「・・・だが、この者以上のツインテール反応は現時点で感知できておらぬのも確かな事実。上を見上げれば切りがないとも言う。今回はこれで手打ちにしよ―――――」
「やめろ――――――ッ!!」
「む!?」
背後から迫り来る猛烈なプレッシャー。目の前にある素晴らしいツインテール属性でさえ霞んで見えるほどの反応が“二つも”接近してきているではないか! これを僥倖と呼ばずしてなんと言う!?
喜び勇んで後ろを振り返ろうとしたリザドギルティの横を、赤い何かが猛スピードで過ぎ去っていった。
(・・・ッ! 速い!!)
間違いなく、自分よりも速い身のこなし。これほどの力を持った存在が、凄まじいまでのツインテール属性の持ち主でもあるという事実が彼をさらに喜び昂ぶらせてくれる。
尊敬に値する強敵と戦って勝ちを得るは戦士として無上の喜び! まして、勝利の後に待っている勝利の美酒が極上のものと判明しているなら尚のことだ。
だからこそ、彼は問う。敵の名を。尊敬し、敬意を持って打ち倒し、死ぬまでその名を己の胸に刻むつけてから倒さなければ、ドラグギルティ様の弟子を名乗る資格無し!と自らに誓った制約を果さんがために!!
「偉大なるツインテールの戦士よ! 貴様いったい何者だウオワァァッ!?」
通り過ぎていった小さき戦士と相対するため振り返って改めて仕切り直そうとしたリザドギルティは、突如として吹き上がってきたツインテール属性と“もう一つの力”に吹き飛ばされて最後まで言い切ることが許されなかった。
いったい何が起こったのか? 混乱しながら立ち上がりかけた彼の視界に“彼女”が写ったとき。
手に持つ剣を構えるでもなく、ただ無人の野を征く王者の如き威厳を持って歩んでくるその姿を見た瞬間に。
リザドギルティは己の『死』を覚悟せざるを得なくされていた。
圧倒的なまでのツインテール属性。
それと同じくらいに絶対的な幼力。
おそらくは先の戦士よりも潜在能力では下回っているであろうが、心・技・体、そしてツインテール愛。
戦士に必要なもの四つを極限まで鍛え上げて、凡人が到達できる最高峰まで上り詰めた戦士としての完成形。その究極の一つが“幼女”の形を取って現界している。
たとえ天地がひっくり返せたとしても、自分には決して敵うことのない相手。
その想定外の度が過ぎる敵と遭遇したとき、リザドギルティの心は晴れ渡る空のように澄み切っていた。
「・・・よかろう、本懐である」
拳を握り、構えを取ると拳を突き出す。
目の前には敵がいる。倒さねばならぬ敵。超えなければならぬ存在。それを倒さぬ限り、男は決して男になれぬ。いつまでも少年の心を持ったまま青春を抱え込み続ける大人を演じる子供にしかなり得ない。
少年が男になるため、超えなければならない最強の存在。―――『父親』。
その幼女は、リザドギルティをオーラだけで吹き飛ばす幼力を持ちながら、人の情念から生まれ出るゆえ親を持たぬエレメリアンである自分に“父親”を彷彿させるほどの『父性愛』にすら満たされていたのだ。
そう、それはまるで自分たちの師であり隊長でもある“ドラグギルティ様”本人であるかのように――――――。
「我が名はリザドギリティ。滅せられる前に教えていただきたい。俺を冥土へと誘う者の名を」
「―――我が名は【テイルドラゴン】・・・・・・」
静かな、よく通る声で名を名乗った敵『テイルドラゴン』は、リザドギルティの拳が届く間合いスレスレの所で立ち止まり、彼の顔を見上げながらハッキリと迷いない口調で告げてきた。
『彼の願いは叶わない』という事実と供に。
「リザドギルティとやら、最初に言っておこう。我は死を覚悟して受け入れた者とは戦わぬ。
我が剣は処刑具に非ず。己が決して敵わぬ強敵を打倒し、未来を勝ち取ることを切望する者達のみに向けられるべきもの。故に我と戦い負けることを望む貴様に死を賜わす暴君に我は成れぬ。
だからこそ、貴様に頼みたい。我に殺され捨てたその命、新たなる戦士を誕生させるため遣ってやってくれまいか?
貴様の拳は我に届くことは無く、貴様の願いは永久に叶うことはない。――だが、我が願いを聞き届けてくれるなら、我は貴様に永劫の感謝と賞賛を送ることを約束しよう。
『よくやった。お前は我にとって自慢の弟子だった』・・・・・・と」
我もまた、ツインテールになります!外伝『トゥアールと竜姫、出会いの章』
「「――!?」」
その瞬間、俺と竜姫は強烈な寒気に襲われた。
「ん? どうかしたの?」
会話中に突然動き出したことで愛香が不思議そうに問いかけてくる。
当然の反応だろう。なぜなら俺たちは今、ツインテールについて語り合っていたからだ。ツインテール談義の最中に会話を止めて立ち上がるなんて、そんな失礼なことはない。
そんな礼儀知らずな真似をよりにもよって俺と竜姫がするなんて並大抵のことではあり得ないんだが・・・
「いや・・・なんか寒気を感じた気がしてさ・・・・・・」
「・・・うむ。我にも理由はよく解らぬのだが、何故かこう『人として大切なナニカを事後承諾で奪われてしまいそう』な、そんな言いようのない恐怖心に襲われてしまってな・・・」
「はあ? なに言ってんのアンタたち? 竜姫だけならともかく総二まで変なこと言い出さないでよね、まったくもう」
俺たちの言葉に愛香は呆れたように首を振り、そして気づいたようだった。
皆帰ったと思っていた店内に、まだ客が残っていたことに。
「嘘、どうして・・・気配を感じなかったわよ・・・!?」
小声でことさら大袈裟に驚く愛香。
・・・お前は常日頃から周囲の人の気配を察知して生きてるのかと聞きたくなったけど黙っておく。それどころじゃ無いっぽいし。
「ああ・・・我のツインテールも反応できなかった・・・。此奴いったい何者・・・?」
小声だけど幼い声音だから響き易い声で竜姫も驚く。
彼女はツインテールを守るため『護ツインテール術』を編み出していて、雨上がりの通学路で道路を車が通り過ぎるとき等に使っては、泥で髪が汚れないよう守っている。
「ツインテールを守るためなら、ツインテール護身術の一つや二つ編み出さずしてなんとするか!」
幼い頃、そう喝破した幼馴染みの勇姿を俺は一瞬たりとも忘れない。
あの時の竜姫のツインテール愛は、本当に素晴らしいものだった・・・・・・。
「アンタ今、心の中でアタシと竜姫で対応に格差設けなかった!?」
愛香が、後背に位置する俺たちを振り返って、ツッコミを入れるフリで安心感をもたらしてくれた。
驚異かもしれない存在を前にしながら、この余裕・・・。相変わらず頼もしい限りだな、俺の自慢の幼馴染み二人は!
「・・・しかし、何なんだ? あの女の人は・・・」
不思議に思いながら俺はつぶやく。
何日か前の日付が書かれた新聞紙に指で穴を開けて、その隙間からこちらを眺め見ている。それ以外は特に何もしてきていないけど、妙にその視線が鋭いというか、肉食獣がおいしそうな獲物たちを前にして『ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な?』と、食べる順番を迷っているように見えるというか何というか・・・。
「ま、まぁ、もう目ェ合わせなければ大丈夫だろ」
「そうね」
「うむ・・・」
あまりにもあからさま過ぎる態度だったので、逆に本物の犯罪者だったりとかの危険性はなさそうだし、警戒を続けるよりかは関わらないようにすべきだと俺が結論を出すと、愛香も竜姫も賛成してくれた。
大人しくテーブルに戻って食事とツインテール談義を再開することで、極力意識を彼女から逸らそうと努力し始めてみる。
そんな矢先、女性は新聞紙を折りたたんで席を立ち、俺と竜姫の方へと歩いて近寄ってきた。
それぞれ反対側に位置し合う俺と竜姫の真横――合間に立たれてギクリとする俺たち。
「・・・相席よろしいですか?」
「待て待て待て待てぇ!!」
突然はじまったボケに対して耐えられなくなったらしい愛香が、客であるかもしれない微かな可能性を捨て去って、大声で相手にツッコミを入れた。
「はい?」
「誰よ、あなた!!」
「おかまいなく~」
「かまうわよ!」
「安心してください、こちらのお二人に用があるだけですから。
具体的には、私好みの美少年と美幼女がイチャらぶチュッチュッしてる美しい過去の回想シーンとかあったら夜のオカズに提供して欲しいなーとか思ってるだけですから」
「あたしのツレ二人を使って、何しようと考えてんのよアンタは!?」
「何って・・・ナニに決まってるでしょう? 他の何に使う気だったんですかあなた? 慎ましやかで大人しそうな胸してらっしゃる癖してイヤらしいですね~」
「アンタに言われたくないわー! 特に後半! 大人しそうな顔しておっぱい目立つ服着てムカつく奴ね! 谷間にストロー差し込まれたいの!?」
「まあまあ、落ち着け愛香。いや、マジで」
冷静を装い、世にも恐ろしい恫喝ならぬ明白な脅迫をする愛香をなだめながら、俺は目の前の少女の容姿に目を引かれていた。
普段、俺と竜姫は女の人を見かけたとき最初に目がいくのは髪型だったから気付くのが遅れたが、奇行が目立つ以外はとんでもない美人――美少女だったのだと今になって分かる。
なぜツインテールにしないのか不思議でならない銀髪のストレートヘア。
長い睫毛と、サファイアを思わせる透き通った碧眼。すっきり通った鼻筋。微笑みを湛えた桃色の唇。
そして何より、顔からほんの少し視線を落とすだけで自己主張を始める圧倒的ボリュームの胸。
「う゛。む、むむぅぅ・・・・・・」
思わず竜姫も普段は気にもしていない自分の胸部に付いてるモノとを比較してしまい、両手でその辺りをペタペタと撫でてしまうほど絶対的な存在感を持つモノ。
映画の中でしかお目にかかれないレベルの神秘的な妖精のごとき美少女がそこにいた。
そんな絶世の美少女が、俺たちのやりとりを見て笑う。
「・・・・・・(ニッタリ)」
「「・・・・・・(ゾッ)」」
・・・なぜだかその笑顔に言いようのない恐怖心を刺激される俺たち。
なんとなく先ほど竜姫が言っていた、『人として大切なナニカを事後承諾で奪われてしまいそう』と言う言葉が想起されて信じたくなってしまうほどの恐怖感だった。
まぁ――見間違いなんだろうけどな。
こんなに穏やかな雰囲気の人に限って、あんな邪悪そうな笑顔をするはずがない。俺はこの人を・・・人間を信じているぜ!
「えっと、“俺たち”に何か用があるの・・・?」
無意識に腰を引いて、竜姫を背中に庇う形で席の後ろに詰めながら訊く。
「はい、貴方たち“二人”に用があって」
しかし、少女はこの二人がけの長椅子に手をついて、俺と竜姫で満席になってるのをお構いなしに近づいてきた。
「・・・・・・・・・・・・大切な用?」
「ええ、とっても大切な用件です。貴方にとっても、私にとっても、貴方の後ろで私を見つめてドキドキしてくださっているカワイ子ちゃんにとっても、怯えるカワイ子ちゃんを見て悦に入り濡れてきている私にとっても重要で大切なとっても大事な案件なんです・・・」