ただし、多すぎてしまって、前にも同じの出してるかどうか確認するのが困難です。
もし見つけた場合には連絡していただけると助かります。
――この作品は自分でもよく分からない理由で書いてたっぽい異世界戦記ものみたいですね~。
その大陸には死が満ちていた。
常にいずこかで戦が行われ、勝者は国を手に入れ村を焼き、敗者は国を失い野盗と化す。鳥が死肉を食らい、飢えた子供は子犬を食らう。そんな大地。
大陸の名は『アースガルズ』。元からあった名ではない。太古に生まれて文明を持った人間たちが、自分たちの今までを振り返って意味を持たせるために名付けただけの仮名である。
だが、その勝手な理由で付けられた大陸の名でさえ大昔には、土地の数と部族の数だけ存在していた。それが今は『アースガルズ』ひとつだけ。これはアースガルズが本来“大陸の名ではなかった”ことに起因している。
生まれたり、移り住んできた人間たちが大陸各所がそれぞれ勝手に占有権を主張して争い合っていた戦乱時代に一人の覇王が大陸を統一し、一つの大国へと作り替えた。
彼の大王の名がアースガルズ。
神帝とも呼ばれる大陸王朝最初の絶対的支配者である。
人徳によって仲間を集め、優れた人材に恵まれた神帝は自らの統治において『心』を重視した。「人を思う心こそ人を守り、平和を永続させうる」として自らの考えを民に押しつけるような『法』を作らず、人と人とが互いの心を慮る気持ちによって大陸を統治し、その平和で豊かな治世は十年にわたって続いたという。
ーーやがて、時が経ち。神帝の『心』にも黄昏が訪れる・・・・・・。
法に寄らない統治は、自らを律するのに自らの自制心と羞恥心を以てするしかない。
それゆえ神帝は常に自己を律して、傲慢に振る舞おうとはせず、権力の乱用も贅沢も自己神性化もしようとはしなかったが、それが己の内なる欲望との勝利しか許されない戦いであることを他人は理解しようとしなかった。
「神帝は神の子。それ故にこそ我ら無知で無学な民とでは、すべての物が違って見えておられるのですよ」
・・・城下町の私塾で働かせている教師が、賢しげに自分たちの主の苦労を一蹴するのが聞こえる。
彼だけではない。町の各所、国の各所、大陸の隅々まで見渡しても自分の努力と苦労と苦痛とを理解しようとしている民など一人もいないと理解したとき。
王は神であることを辞めて人に戻った。
横暴で欲深く、慈悲深くもない傲慢な神の似姿として生み出された醜い人間の本性の赴くままに好き放題やって、自らが仲間とともに築き上げた帝国を壊して回った。
最期に彼の凶行を止めたのは、かつての同士たちだった。
自分たちが帝位につけてしまった行為に責任を感じ、民のため、平和のためにと涙ながらに旧友であり仲間でもあった自分たちのリーダーでもある暴君の心臓を刺し貫いたとき。
かつて戦乱の大陸を旅した仲間の副リーダーは、こう尋ねた。
「王よ、何故こんな所まで来てしまわれたのですか?」ーーと。
王は最期に嗤いながらこう言った。
「私は知らん。民に聞け」ーーと。
王を討ち取った『旅の仲間』でもある重臣たちは暴政の責任をとって職を辞し、いずこかへと姿を消したことにより、大陸には小乱うずまく元の時代へと回帰した。
・・・これ以降、今に至るまで大陸が再び統一されたことはない。それが成るのは別の大陸から肌の色と目の色が異なる民族が上陸してきて侵略されて征服された後のことになる。
この物語がはじまるのは征服者たちが大陸を新たな名で呼ぶようになる600年以上前のこと、大陸中央部に位置する比較的温暖な気候を持つ『ヴァルハラ地方』に一人の王子が誕生した時代。
暴君として殺された王の治世を否定しながらも、未だ文化は王の時代と変わらぬまま使い続けられていた『旧弊の時代』。