今回のは『長門有希ちゃんの消失』と『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』のコラボ作品です。
『ハルヒちゃん』の有希の性格した『有希ちゃん』の有希が主役です。ややこしい!
・・・本当は交通事故で原作に近くなった有希が主役の『有希ちゃん』がやりたかったんですが・・・タイトルが思いつかなくて一先ずはこちらを先に書いて出した次第です。
出来ますなら記憶整理中の夢に過ぎない有希が主役の『有希ちゃん』二次創作にタイトル案を頂きたいですー!(ToT)/~~~
五月半ば、市立図書館。初めてだったので貸し出しカードというものの存在自体を知らなかった私の前に、
「ったく・・・しゃーねーな!」
「おい、本貸せ。貸し出しカードだろ? 俺が作ってきてやるよ」
その人は・・・・・・現れた。
「ありがとう・・・」
「・・・でも、18禁ゲームの攻略本だけど大丈夫?」
「うん、ごめん。やっぱり付いてきてもらえます? 俺一人で行くと絶対誤解されちゃうと思うから。ーーてゆーか、おい市立図書館! 市の税金使ってなんてモンを買ってやがるテメェッ!!」
ーーーこうして。
私は彼と出会ったーーー。
時は進み数ヶ月後の十二月、放課後の北高。
ガララ。
「失礼しまーす。・・・あれー? 寝てるみたい。まったくあの子は・・・」
放課後なので部活動の活動時間になったため、幼馴染みの朝倉さんが迎えに着てくれたんですけど、今日も長門さんはオネムで夢の中でした。
「ホントだな」
苦笑しながら首肯を返すのはキョンくん。本名不明な長門さんの部活仲間にして初恋の少年。性格は恋愛ものの世界観で主人公属性なのに『スゴくいい子』な心優しい男の子です。
「ごめん、キョン君。ちょっと待ってて、起こしてくる。痛い方法で☆」
「普通に起こしてやれよ・・・」
「ダメよ! 甘やかすのはあの子のためにならないわ! ーー昨日も『鉄ゲー三日目超過。でも頑張る・・・』とか言いながら四日以上寝てないんですからね!?
こんなところで昼寝するぐらいなら自宅の部屋でちゃんと寝た方が、健康的にも絶対いい!」
「お、おお。さすがは朝倉母さん・・・主婦力だじゃなくて知識もスゴいんだな・・・」
「じゃあ行ってくるわね。ーーあと、母さん言うな」
毎度のやりとりを交わしあってから朝倉さんはツカツカと言うかズカズカと言うべきなのか判定に迷う足取りで近づき、長門さんの後頭部に・・・・・・
「ーーえいっ! つむじっ!!!」
ドカン!と、チョップ叩き込んで起こしてあげました!
「・・・っ!? ・・・・・・に、にゃあっ?」
「いや、長門。別にシチュエーションがそれっぽいからって、ギャルゲーヒロインの真似しなくてもいいシチュエーションだったと思うぞ俺は」
長門さんはゲーマーなので、『萌え』にこだわりを持っています。『部活が始まる時間なのに遅いな部長、ちょっと見に行こうか?あれ寝てるし・・・』な、イベントを普通にスルーするなど有り得ません。彼女のキャラに関わりますから!
「うん、長門。おまえがキャラ性だと思ってるソレはたぶん違うものだから、見直しといた方が絶対いいと俺は思うぞ」
キョンからツッコまれましたが、やめません。ゲーマーにとって自分の趣味を貫き通すことだけが世界で唯一のジャスティスだから!
「バカなこと思ってないで、早く起きてください。部活の時間ですよ? お姫様」
「うう・・・痛い・・・身長止まったらあなたのせい・・・」
「じゃあ止まる方向で♪ 長門さんは小さい方がかわいいですし」
笑顔で断じて反論を封じる、子育てベテラン主婦の朝倉さん。バージンとは違うのだよ、バージンとは! ・・・いえ、朝倉さんもしょーーいいえぇ! なんでもないですよ! 忘れてください!by朝倉涼子
「じゃあ、胸の成長止まって合法ロリ属性を獲得したら、あなたのせい」
「それは長門さん自身の責任です。大きくしたいんだったら『ゲームやる時間が勿体ないから』って理由で、偏食するのはやめなさい。夜食とか間食もダメです。あと、それから夜も寝なさい。
寝ないでゲームしてバランス悪い食生活ばかり送っているから、いつまで経っても体が大きく育たないんです。それぐらいなら朝昼晩と決まった時間にキチンと食べた方が体の発育には絶対いいんですからね。
大きい胸がうらやましいと思うんでしたら、キチンと食べて寝ること。い・い・で・す・ね?」
「・・・・・・(ぷくー)」
襟首つかまれて引っ張られながら部室まで移動させられ中の長門さん。不機嫌そうに頬を膨らませて無言の反抗です。高校二年生の長門さんは反抗期。
そうして、反抗期の学生でゲーマーで、腐ったミカンじゃないけど脳は少しだけ腐り気味な今日この頃の長門さんに差し伸べられる王子様からの優しい手。
「よっ、長門。大丈夫か? ほら、手を貸せよ。立ち上がるの手伝ってやるからさ」
「!! ・・・・・・」
さわやか笑顔の、半端だけど割とイケメンな初恋相手から差し伸べられた手のひらが持つ攻撃力は絶大です。長門さんの乙女心MPは大ダメージを与えられてしまった。
「・・・ここは『お持ち帰りされる』ところ? それとも『赤面して恥じらいながら震える手を伸ばす』ところ?」
「うん、よく分からんけど後者の方で。18歳以下の学生にはやっちゃいけないゲームみたいな選択肢は選べない」
「と言うより、自分で言ってしまってる時点でいろいろ台無しなんじゃないかしらね。年齢制限はキチンと守る健全な学生の朝倉さんにはよく分からない会話でしたけど」
朝倉さんは策士だった。そして、微妙にあざとかった。
「さて・・・ありゃ? もうこんな時間。私もう帰らなきゃ」
「? 部室には行かないの?」
「うん、ごめんなさい。ちょっと用事があるんです。
あ、でも夕食はちゃんと作りに行きますから大丈夫ですよ?」
実は部室で「本当に、部長は部長のくせに役立たずですねー」とか、部員に言われてみたい長門さんは少しだけ残念そうに呼び止めましたが、ゲームやらない朝倉さんには通じませんでした。
代わりにスマイル100%のいい笑顔で片手を掲げて「行ってきます!」のポーズを見せてくれましたので、これはこれで!(グッジョブ!)
「じゃあ私、行きますねっ。いざ夕食の材料ゲッツ!!」
((今日は特売日なのかなー?))
パアァァァァッと、輝かんばかりの笑顔を実際に後光背負って背景を煌めかせながらルンルンスキップで去っていってしまった朝倉さん。残されたキョン君としては感想を言っていいのか悩ましいです。
対する長門さんはと言うと。
「世話焼き幼馴染みはすばらしい」
「本来、男が言わないといけないセリフを言ってくれて、ありがとう長門。でも、もう少しだけでも恥じらいは持とうぜ? 女としてと言うか、結構かわいい女子高生として」
「かわっ・・・!?」
ここでデレるか長門ちゃん・・・タイミング外しすぎてると思うぜぇぇぇっ!!(byラブコメの神様)
「ふう・・・ようやく部室に着いたぜ。なんか部活動の時間になってから随分とかかっちまった気がするなぁ。時計見るとほとんど経過していないってのに不思議なもんだぜ」
「・・・それがラブコメ時空の七不思議(ぽそっ)」
「あ? すまん、よく聞こえなかった。なんか言ってたのか長門?」
「・・・・・・別に(かぁ~~~)」
「??? まぁいいや。じゃあ部活始めるか」
「・・・うん」
こうして、ごく普通のゲーマー女子高生『長門有希ちゃん』が部長を務める文芸部を舞台にした部員のキョン君と朝倉さんたちによる愉快で楽しい、ごくごく普通だけどちょっとだけ普通じゃない恋の物語が幕を上げました。
果たして有希ちゃんは生まれて初めて意識した男の子であるキョン君に、学校を卒業するより先に告白することが出来るのでしょうか?
すべては有希ちゃんの勇気と心がけ次第で決めることが出来る未来の結末ですーー。
『いやぁ、だめぇ! もうイっちゃうーっ!!』
「ぶほっ!? 長門! ヘッドフォン付け忘れてるぞヘッドフォン! ほら、この前俺がプレゼントしたウサギ耳の奴!」
「・・・あ、忘れてた。生で視聴しながらプレイするのは家に帰ってからにする予定だったのに・・・」
「家でやってんの!? いつ行っても朝倉がいる長門の自宅でこれ音だしながらプレイしてんの!?」
「・・・大丈夫、問題ない。最近では監視の目もだいぶ薄くなってきてるから、少しだけなら大丈夫。イケる。
――興味深いゲームは、ヘッドフォンをかけずに生で聞きながらプレイするべき・・・」
「いかにも失敗する人の思考法だ!」
注:後ほど朝倉さんの罠にかかった長門さんは、コッテリ絞られて三日間のゲーム断ちを約束させられましたとさ。(そして一日半後に破りました)
登場人物
長門有希ちゃん
ふつうの地球人でゲーマーでオタクなインドア女子高生。サブカルチャー全般が趣味。キョンのことが好き。でも、その割にはテレたりとかの描写が少ない。
何か考えてるようには見えないし、実際ゲームのことしか考えていない。あとキョンのことを考えながらプレイしてる。主に18禁のいけないゲームを。
朝倉涼子
長門さんの幼馴染みで同じマンションに住んでいて部屋も近い。ただし一年のほとんどの時間を長門家で過ごしてる。長門さんちで長門さんを監視しながら餌付けして飼ってます。
ゲームでダメにならないよう長門さんの生活を管理するのが趣味になってきてる専業お母さん。
キョン
原作では長門の相手役。今作でも長門の相手役。その割には影が薄いけどね・・・。
『有希ちゃんの消失』に出てくる彼は恋愛ものの男キャラとして完璧すぎるほど完璧な人格と価値基準を併せ持った完璧超人でしたと、絶賛したくなるほど恋愛作品世界には理想的すぎるキャラでしたので今作世界だと基本ツッコミを担当する苦労人にならざるを得ません。
カオスな世界で常識人は、ひたすら苦労を強いられる宿命を背負わされた存在なのですよ。