試作品集   作:ひきがやもとまち

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アニメ版1期を見て思いついてたゴブリン・スレイヤー二次創作を、実際に書いてみた作品、その序章です。
本来なら、主人公の本格登場と活躍まで書いてから出す予定だったのですけど、完成が予定より遅れ過ぎたので『プロローグ』ってことで出してみた次第。


ゴブリンスレイヤーと、ゴブリン・キラーなレディ・キラー

 

 町が、燃えていた。

 夜の空を赤々と照らし出しながら、町にあった建物は炎に包まれ、最後に一つ残っていた教会の尖塔も崩れ去ろうとしている。

 通りには異臭が漂っていた。道に転がる死骸から流れる血の臭いと、炎で焼ける焦げた肉の臭いだ。

 町の各所では未だ絶望的な抵抗と、逃走と、敗北と、失敗と、そして一方的な虐殺と殺戮と略奪と強姦が繰り広げられ続けている。

 

 一人の若者が勇気をふるって手にした鉈で襲撃者たちに襲いかかろうとして、弓で射られて倒れ伏す。

 殺された仲間を見て悲鳴を上げて背を向けた老婆が髪をつかまれ、苦痛の悲鳴は刺し殺された絶叫へと音階を変える。

 

 ・・・・・・辺境にある平凡な町は、いま滅ぼされようとしていた。

 

 やがて夜が明け、西の空が白み始め、建物に放火された火は燃やせるものを燃やし尽くして鎮火し始め、ようやく町を襲った悲劇の夜は終わりを迎える。

 

 そして、朝が始まる。彼らにとって不幸な人生の始まりとなる朝が。

 襲撃者たちは、瓦礫と化した町に住んでいた屈強な肉体の男たちを縄で縛り、傷ついた体にムチ打ちながら何処かへ向かって歩ませ始める。

 若い娘や子供たちは幾つかの馬車にまとめて押し込まれ、男たちが刃向かったときに殺される人質となる。

 

 悲劇の夜を生き残った彼らは、商品価値のある者だけが買い手のいる国へと送られ奴隷としての人生を歩まされることになる。

 女たちは娼館に売られる娼婦として、子供たちは変態趣味の金持ちか好き者の貴族に玩具として売り飛ばされる余生を、死ぬまでずっと送らされることになるのだ。

 馬車の中では、これからの人生に必要な教育として淫靡な悲鳴と下卑た笑い声とを響かせられ、それを聞かされた男たちは憎しみと憎悪に濁った眼差しで妻や娘を慰み者にする人でなしの襲撃者たちを、心底からの殺意を込めて無言のまま睨み続けていた。

 

 彼らの視線の先にいるのは、ゴブリンだった。

 人の皮を被った、ゴブリン共―――『盗賊』たちが悪徳に耽る姿がそこにある。

 

 辺境で暮らす者たちにとって、最も身近で最も危険で避けがたい脅威の一つである魔物たちの集団『ゴブリン』

 村を襲って人を殺し、物を奪い、女を浚って犯し尽くす。

 

 それは盗賊とやっていることは何も変わらない。だから彼らはゴブリンなのだ。

 決して、盗賊たちは――自分たちと同じ“人なんかじゃない”“ゴブリンだ”――と。

 

 よくある事だった。

 魔神王が復活してデーモンの軍勢を率いて、人間社会を攻め滅ぼすため攻め入り、軍隊は都を守るのに精一杯で辺境の治安は悪化する一方になっている現在の世界。

 そんな中では、よくある悲劇の一つが瓦礫と化した町の景色だった。

 そんな状況だと知っているからこそ実行される襲撃者たちと被害者たちの、よくある関係の一つが彼らだった。 

 

 やがて彼らは、それぞれの送られる場所へ歩かされ始める。いつの日かゴブリンの同類共を殺し尽くして仇を討つという憎しみだけを希望として胸に抱き。・・・・・・そのほとんどは二度と再会し合うことなく生涯を終えることになる場所へ向かって粛々と。

 

 

 ・・・そして加害者たちと被害者たちが去って行った後の崩れ落ちた町の中には、とどめを刺す価値もないと捨て置かれた病人や赤子、杖を折られた老人などが世の不条理を嘆き、嗚咽する声が鎮魂のように響いていたが―――彼らは廃墟と化した町で生きていけるほど強い者たちは一人もおらず、数日後には静かになって、町に音を戻してくれることは二度となかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 魔物たちと『人の姿をした魔物たち』によって、よくある悲劇が起こされ続ける辺境の町の一角に立つ建物に、一人の女神官が扉を開くことから物語は始まる。

 

 

 

 

 

「新規の冒険者登録の方ですね? 文字の読み書きは出来ますか?」

 

 冒険者ギルド内にあるホールで、受付嬢が若い女性神官に語りかけていた。

 ゆったりとした長衣と聖帽、金製の錫杖を手にした若い女性神官が、新たに冒険者として登録したいと申し込んできたので、そのための手続きを行うためだ。

 

「はい、神殿で習いましたから」

「では、こちらに記入をお願いします」

 

 神官らしい丁寧で綺麗な文字で、指示された通りに書類への記入を進めていく彼女。

 しばらくは彼女がペンを進める音だけが小さく響くだけで、周囲の喧噪だけが彼女たち2人にとっても聞こえてくる会話の全てになる。

 

 ホール内には朝からそれなりの賑わいと、人だかりが生じていた。

 夜の内に依頼を済ませてきた者がおり、長期の依頼を終えて帰ってきたばかりの者もいる。実入りのいい依頼をこなした為しばらくは休息に当てている者もそれなりに混じっているかもしれない。

 

「そういやぁ、都の方じゃ最近『魔神』だかが現れて稼ぎ時だって話だぜ?」

「へぇ~? 下級の悪魔ぐらいなら、オレでも何とかなるけどな。魔神じゃあ勝手が違うからなぁ~」

「なぁ~に言ってんだよ。そもそもお前、魔神がなにかなんてどーせ知らねぇんだろうが」

「バレたか? アッハッハッハ!」

 

 聞こえてくる会話内容は、やはり『都に現れだした魔神』の噂が多いようだ。

 最近になってから急激に増え始めた話題の一つで、ギルドの上層部でもなにやら王たちと話し合っているとのことではあったが、今のところ彼女たちがいる辺境の町にある冒険者ギルドにとっては「雲の上の都の話」以上のものにはなれていないようだった。

 

「・・・書き終わりました」

「ありがとうございます。年齢は15歳、職業は神官ですね?」

「はい。成人しましたので、冒険者さんのお役に立ちたいと思いまして」

「立派なお心がけですね。では、これが冒険者としての身分証となります」

 

 相手の“心意気は”賞賛しながら微笑みかけ、新人冒険者用の身分証となるプレートを手渡す若く美人な女性受付嬢。

 

(・・・最近、こういう理由で冒険者になりたがる人増えましたよね・・・・・・あんまり目的に合ってる職業じゃないと思うんですけど・・・)

 

 ――そして内心で苦笑を浮かべながら、相手の少女のような動機で冒険者を目指す若者たちへの危惧で、本心では溜息を吐く。

 魔神王に打ち勝った、偉大な至高神の信徒として知られる『剣の乙女』をはじめとして、冒険者パーティーの一人だった英雄的な聖職者に憧れを抱くようになった結果なのだと思われるが・・・・・・ああいう存在は本当に極少数の例外であって、大半の冒険者という仕事はイレギュラーなものが多いのが現実であり、人助け目的とは掛け離れているのが実情だった。

 

 とは言え、隊長の命令通りに仕事をして貴族たちに頭を下げる城の門番という職業が、サーガの中の英雄たちより若者の心に響かないのも事実ではある。

 チラリと、僅かに視線を落として相手の衣服に刻印された聖印を見下ろし、それが大地母神のものであることを確認すると、受付嬢は笑顔を浮かべ直して話を再開する。

 

「冒険者の等級は、十段階。最上位は《白金》で、その次は《金》

 ですが実質、在野の最上位は《銀》等級になっています。

 あなたは《白地》。最も初級からのスタートとなります」

「駆け出し・・・・・・という事なんですね?」

「はい。ギルドで受ける依頼内容は、等級を基準にして選べるようになっており、依頼内容から鑑みて相応しい実力を有していない、と判断されたときなどにはギルド側から拒否される事も希にあるのです。その為の判断材料とお受け取り下さい」

「なるほど、そういう事なら分かります」

 

 相手の少女は素直にうなずき、受付の女性は内心でも表面的にも穏やかな笑みを浮かべる。

 冒険者に夢を抱いて、人助け目的で登録を希望した者の多くは、使命感や自己犠牲精神で無謀な依頼に挑んだ挙げ句、早死にする率が高い。

 また、ギルドの方でも建前として等級による依頼受注の拒否をおこなう時もある、と言ってはいるものの実行されることは少ないのが実情だ。

 

 だが流石に、駆け出しの大地母神の神官でもある新人冒険者に、危険な依頼を任せるのは仲介業者としてギルドでさえ二の足を踏まざるを得ないだろう。

 大地母神は慈愛の教えを教義として、自己犠牲精神が尊ばれているため、人助けのためとなれば無謀な挑戦に挑んでしまう危険性を彼女は孕んでいたが、一方で大地母神は教義故の影響か『相手を攻撃する魔法』よりも『味方を守るための魔法』が数として多い。新人の駆け出しともなれば尚更だろう。

 

 要するに、当面は危険な討伐任務を一人で受けれるランクでも職業でもないのが彼女だった。

 しばらくの間は、町中か町の近くで受けれる簡単で比較的安全な依頼をこなしながら経験を積んでいくことになるだろう。

 

 それでいい・・・と受付嬢の女性は内心で思っていた。

 たしかに報酬は高くはないが、町中での神官を求める依頼はそれなりにあるのだ。その中で冒険者に必要な活動拠点としての人脈作りなどをしていけば、冒険仲間となってくれる人との出会いも得られるだろう。

 

 他の冒険者たちにしても、冒険者になったばかりで、駆け出しの新人でしかない彼女を頼って危険な依頼を引き受けたいと思う者は多くあるまい―――そう思っていたのだが。

 

「それと、怪我や負傷した状態で回収された時などの際には身元を照合するのにも使いますから、無くさないようにして下さいね?

 以上で登録は終わりです。依頼はアチラに張り出されていますので、等級に見合ったものを選んで下さい。

 あるいはベテランの方のパーティーに参加して――」

 

「なぁ、君。一緒に冒険に来てくれないか?」

 

『・・・・・・え?』

 

 突然そのとき、横合いから声がかかった。

 振り向くと、鼻の頭に絆創膏を貼った年若い青年剣士が気取った様子でカウンターにもたれかかりながら、だがイヤな印象を感じさせない声音と口調で登録したばかりの女性神官と言うより少女神官といった方が正しそうな彼女に勧誘の言葉を投げかけてくる。

 

 彼の背後には、赤毛の怜悧そうな少女魔術師と、武器を持たずに拳法着をまとった背の高いポニーテール少女の二人が佇んで控えてくれている。

 

 見覚えのあるパーティーだった。自分が担当したわけではないが、自分の同僚が登録手続きをしている姿を見たばかりの子供たちであり、等級は神官の少女と同じ《白地》

 

「君、神官だろ? オレのパーティー、聖職者がいなくって。だけど急ぎの依頼で、せめてもう一人欲しいんだ。頼めないかな?」

「急ぎの依頼、ですか? それは一体どのような・・・」

 

 剣士に魔術師、格闘家・・・ここに聖職者が加わるならバランスはいい。初級の依頼であれば大抵は、どうにかすることが可能な戦力になるだろう。

 だが、しかし――

 

「ゴブリン退治さ」

「――っ」

 

 その単語を聞かされた瞬間、受付嬢の心にイヤな予感が当たったとき特有の不快なしこりが沈殿し始めたのを微かに、だが確かに感じさせられてしまった。

 

 ―――ああ・・・・・・やっぱり、またなのか。

 という諦め切れない諦観の混じった苦みとともに。

 

「ゴブリン、ですか?」

「ああ。奴ら、村を襲って蓄えや家畜を奪い、挙げ句に女の子まで浚っていったんだ。早く助けてあげないと」

「あの・・・・・・」

 

 差し出口を承知してはいるし、大抵が制止の言葉を言っても聞き入れてもらえない場面だと経験則から理解していたが、それでも立場上許されている範囲内で言える言葉で、受付嬢は彼らに翻意を促す。

 

「皆さん、白地等級ですよね? もう少ししたら他の冒険者の方が来ると思いますが・・・」

 

 やめておけ、危険だ。お前たちでは危ない可能性が高い・・・・・・そう暗に告げた言葉だったのだが案の定、それは文章の表面をなぞるだけで裏に隠された意図があることまで相手に伝わることは滅多にない。この時も、それは同様だった。

 

「ゴブリンなんて4人もいれば十分ですよ。それより早く浚われた子を助けてあげないと。ゴブリン達にヒドい目に合わされてたら可愛そうじゃないですか。なぁ、みんな?」

「まっ、そうね。たとえアンタが切り損ねたときでも、アタシが殴り飛ばしてやれば問題ないんだし大丈夫でしょ。だからほら、一緒に行こう」

「・・・行くんだったらサッサとしてよ。敵も浚われた人も待ってくれないんだから」

 

 明るく、優しく、陰気なところや下心が感じさせられない爽やかな態度と声音を持つ、気持ちのいい性格の子供達。

 ――だからこそ受付嬢が感じさせられた危機感と不安は、増大せざるを得なかった。

 

 こういう冒険者という仕事には「全く向いていない」気質の持ち主達は、この手の依頼と相性が悪いことを経験則として知っていたからだ。思い知らされてきた経験があるからだ。

 

 一方で判断は微妙なところでもあった。

 もし依頼が届けられた通りの内容で、ゴブリンの数も大したことがなく、新たな住処にやって来たばかりというのであれば、彼らが言う通り自分たちの力だけで対処は可能だろう。少なくとも不可能ではない。それだけの戦力は持っていると言っていい。

 

 だが一方で、彼らが受けた依頼内容は『ゴブリン退治“ではない”』

 浚われた女の子の救出や、家畜を奪っていったなどの記述から見て、ゴブリン“たち”が巣穴として定めた拠点に対する襲撃―――攻城戦に近いのが、彼らが引き受けたゴブリン退治の実情である可能性は低くない。

 

 何匹いるか分からないゴブリンの群れが、集団で立てこもっている敵中に4人だけで攻め込む―――そういう流れになる危険性を持った依頼であることを、彼らは全く自覚していないのだ。

 

 おそらくは、故郷の村で腕自慢だった若者達が、都の窮状や各地の魔物被害などの話を聞かされ、『何とかしなければ』というような情熱を胸に秘めて、物語に描かれているような英雄達のように困っている人々を助けて回るため冒険者になりたがった―――最近では定番になってきてしまっている新人冒険者達の志望動機その典型をいくタイプこそが彼らなのだろう。

 

(・・・・・・そういう人は本来、都に行って正規軍の守備隊とかに志願入隊した方が本人達のためにもなるんですが・・・・・・どうしてか冒険者の方に来ちゃうんですよね、この人達のタイプって・・・)

 

 先程の少女のときと違って、心の中だけとは言えハッキリと盛大に受付嬢は溜息を漏らして、やっかいな風潮に感染してしまっていると思しき若者たちの身を案じて暗澹たる心地にさせられそうになる。

 

 人々を魔物被害から守るため戦い、正々堂々とした王道の戦い方で敵に挑む。

 ・・・それらは正規軍に入隊すれば基礎からベテランたちが叩き込んでくれる戦術であり、軍隊であれば訓練期間もそれなりに与えられるし、失敗しても大勢の味方がフォローしてくれることも可能になり、一応ながらも食事や寝る場所に困ることもない。

 

 彼らのような願いと戦い方を同時に叶えてくれる一番の場所は今の時代、やはり軍隊であり正規軍なのが現実だった。

 辺境の寒村まで軍を派遣して守ってくれない貴族たちや国王に失望して、冒険者という所属に囚われない身分で思う存分に人助けのための戦いを――志そのものは尊いだろうし理解もできるが、それ故に願いの内訳と冒険者という職業が一致しているようには到底思えない自分がいる。

 

 冒険者の戦い方というのは基本的に、『少数で多数を倒す』とかの変則的な条件で勝利を目指すようなものが多くなりやすく、それ故に『ルール無用の勝てばいい、殺せればいい、負けたヤツは負けたことが悪い』という王道とは縁のない結果論を尊ぶようなものが主流なのだ。

 

 サーガに描かれているような英雄的な剣士や聖職者のように、王道の戦い方で挑んでいる者たちも事実として存在しているものの、それは彼らが達人だからこその神業であり、彼らと同じ強さを持つに至ったなら別としても、そうなれる前の段階では不意打ち奇襲をされるのが当たり前の状況を少数のパーティーだけで突破しなければならないのである。真っ当なやり方などで生き残れる訳がない。

 

 それが冒険者だ。それが冒険者の戦い方というものなのだ。

 そのことを彼らが知った上で冒険者を目指していれば話は変わるかもしれないが・・・・・・もしそうなら、今のような話が口を吐いて出てくるとは到底思えない・・・。

 

 

「――分かりました、いきます! 私なんかで、よろしければ」

 

 そして神官の少女も結局は押し切られ、了承したことを声に出して宣言してしまう。

 ・・・・・・その時点で受付嬢には、これ以上なにも言えなくなってしまった。言う権利も資格もないからだ。

 

 冒険者はどこまで行っても『職業』であり『仕事』であり、彼らにとっての『収入源』『生活の糧』だ。

 成功して金を得るため引き受けた仕事を、『失敗して命を失う“かもしれない”』という理由で報酬もろとも撤回を求めて、自分はキャンセル料を払ってやる訳でもなく、普通にギルドから給料をもらい続ける――というのでは、ギルドの受付嬢はボッタクリ業者よりも性質が悪いナニカになってしまう。

 

 できれば腕のいい別の冒険者に同じ依頼を引き受けてもらって、彼らの助勢なり救助なりを担って欲しいところではあったものの、ゴブリンの討伐依頼は基本的に報酬が安いものが多く、引き受ける冒険者の数が増えれば1人頭の報酬は目減りしてしまう。

 わざわざ好きこのんで儲けは少なく、労力は大きいベテランにとっては面倒なだけの依頼を引き受けてくれそうな高ランク冒険者など滅多にいないのは理として当然のことだ。

 

 

 ―――彼だったら・・・・・・あるいは、“彼女”だったら、引き受けてくれると思うんですが・・・・・・

 

 受付嬢はそう思い、自分が知っている条件に見合った2人の凄腕冒険者たちを思い浮かべ、どちらだろうと先に帰ってきた順番で話を伝えて、すぐにでも後を追ってもらおうと心に決める。

 

 ・・・・・・とは言え、双方ともに何時ギルドへ顔を出してくれるかは不定期な者たちなので微妙なところ。

 

 片方は、ゴブリン退治の依頼なら何でも引き受けたがってしまい、今も幾つかの依頼を掛け持ちして同時にこなしている最中で、それ故に期間予定時間さえ未定の『ゴブリン殺し狂い』ときている。

 

 もう片方に至っては―――そこまで考えたとき、ギルドホールの扉が開く音がしたので顔を上げ、受付嬢がそちらを見ると――考える必要がなくなった。

 

 丁度、その人物が来てくれたばかりだったのだから。

 

 

 

「こんちは~♪ 受付さん、今日も相変わらず美人だね♡

 ゴブリン関連の依頼に、スレイヤ君に回されてないので残ってるのあーるー?

 あったらボクに、ちょ~だい☆

 殺すのでも救出でも盗掘でも全滅でも殲滅でも、ゴブリンに可愛い女の子が襲われてそうな依頼だったら何でも有りな銀級冒険者《ゴブリン・キラー》

 ただいま帰って参りました~。あはッ♪」


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