大分前から少しずつ書いてたのが、先程ようやっと完成できました~。
*投稿するデータに修正する前の文章が残ってたため調整に手間取り、再投稿し直しました。ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ございませんでした。
「出でよ炎! えいッ!!」
ポシュッ! お~~っ!!
パチパチパチッ。
見た目プリーストっぽい女の子が、大上段から振り下ろした杖の先から小さな火球が飛び出して的に命中させたのを見て、私たち新入生一同から体育座りしながら一斉に拍手が送られてます。
皆さん、こんにちは。引き続きハンター養成学校入学式で実力テスト中のマールディア・フォン・アルカトラズこと、罰則つき転生者のマールです。
最初の接近戦テストに続いて、次のは魔法の実力テストでっす。
・・・・・・なぜ私は、魔法剣士志望なんて目指しちゃったんでしょう・・・。
戦士志望だけなら、さっきのテストだけで終わって今はアイシスお兄姉様と一緒に、気楽な見学身分を満喫できてて楽だったってのに、チクソぅ・・・。
「うむ。よし次、レイナ」
「はいっ」
そして順番進んで次は私のルームメイトになったらしい、他人呼んで赤のレイナさん。
この前の昼に出会って、その日の夜には一時的に戦友となり、そして今日は私の秘密を一端だけでも知ってしまった恐るべき脅迫者になるかもしれない合法ロリ魔術師さん。
まさに、『昨日の友は今日の被害者』というサスペンスの諺を体現するかもしれないような存在ですね。
年来の友人とか幼馴染みこそ、親友を殺した真犯人になりやすい。サスペンス世界は地獄だぜ~イェイ。
「《燃えさかれ! 地獄の業火ッ! 骨まで焼き尽くせ》――――ッッ!!!」
ゴォォォォォォッ!!!
おおぉぉ――ッ!? パチパチパチパチィィッ!!!
そして相変わらずの格好いい決めポーズと呪文と共に放たれる、レイナさんの得意属性っぽい炎魔法。
とは言え、さすがは赤“髪”のレイナさんと人から呼ばれてるだけのことはあり、的を完全に焼き尽くして炭にしちゃう威力は相当なもの。ハッキリ言って他の同学年な新入生たちとじゃ比べものになりません。
・・・・・・って言うか、こんだけ威力出せて『Eランク魔術師』で、さっきのプリースト魔術師ちゃんが半年間この学校に通って卒業できさえすれば『Dランク魔術師』になれるって事なんですよね? この国の冒険者システムって・・・。
今更ですけど、本当に大丈夫なんでしょうか? この学校って・・・。
なんか美味しい餌で釣って、頭数集めてるだけのヤバい塾とかだったりしたらイヤなんですけど・・・・・・。
『卒業生が語る!コレさえやれば半年で合格できる必勝マニュアル』とか、日本でも昔から流行ってる売り文句の業者さん関係だったらイヤ過ぎるんだけどなぁー・・・。
「なかなかの魔力だな」
「どうも」
「よし。では次、マール」
「はぁーい・・・・・・」
そして今度は私の番。お受験戦争に乗っかった悪徳商法について思いを馳せてた直後もあって、まったくテンション上がりません。さっき呪い発動したばかりですし。
躁鬱の人がなる、鬱状態のときです。躁状態のときハイになりまくった後だから一気に落ちまくってるのですよ、仕方がない。
・・・・・・さて、テスト内容の方はどーしましょう・・・?
レベル的にも魔力的にも合格するのは前提として、どの程度の力で合格するのが目的に叶っているかが重要な場面。
異世界転生のパターンで行くなら、『厄介事に巻き込まれないため平均より少し上の無難な威力で』ってのが定番な場面ですが・・・・・・上手くいった成功例を聞いたことない方法論だしなぁー・・・・・・。
もともと容疑者圏内から外れようとして、全く関係ない赤の他人を演じようとした真犯人ほど、しょうもない矛盾から整合性が取れなくなって急転直下で容疑が深まってくのがミステリーの常識というもの。
最有力容疑者として如何にもな発言しまくって、捜査員たちから序盤の時点で疑われまくってる、『こんなヤツが本当に真犯人なはずねぇのに警察バカだなー』とか視聴者たちに見下される関係者こそ、真に怪しまれたくない真犯人というもの。
ここは敢えて、レイナさんと同じ魔法を少し弱めで使って、「あなたも同じ魔法を!?」「フッ・・・実は私の正体は――」とかの、どこの仮面ヒーローだ的な怪しさ爆発しまくり展開で誤魔化すとしましょ。
ギャグだったら何でも有りにできるもの。私はサスペンス容疑者にならないで済むため、敢えてギャグ漫画のキャラに私はなる! 女として恥ずかしすぎるなコンチクショー!!
はぁ・・・・・・まぁ、その道進むと決めたからにはレイナさんと同じ呪文唱えて、同じ魔法を使うとしますかねぇ、同じ魔法を。
・・・同じ・・・・・・魔法を使、う・・・・・・? あ、意識が――――。
って、えぇッ!? たったこんだけで発動すんですか今回の呪い!? いくらなんでも間口広すぎって言うか、それで有りだと何でも有りにな―――ZZZZZ
「よし。では次、マール」
「はぁーい・・・・・・」
出番が終わって、自分の初期位置に戻ってきた私の前で、「例のアイツ」が校長先生から名前を呼ばれて、みんなの前に出てくる姿を私は身体全体で追っていた。
マール・アルカトラズ。私と同じハンター養成学校の一年生として入学してきたルームメイトの一人で、この前は偶然にだけど一緒に戦ったこともあるチッコイ女の子。
・・・アイツ、私らと再会したときには「魔法剣士志望」って言ってたけど、倉庫で見せつけられた魔法は、とても戦士と両立して出せる魔力じゃなかった・・・。
その上、さっき行われた武器を使った力試しで見せた動きも、魔術師も一緒にこなせる動きとは思えなかった。普通だったら器用貧乏になるか、どちらかに偏らせてサポート程度のサブ職ぐらいになるのが魔法剣士なのに・・・・・・なにか秘密があるに違いないわ!!
私には、どうしても力を手に入れなきゃいけない理由がある!
あの忌まわしい事件で全てを失わされた時から、私にとってはそれが全て・・・・・・その為にもアンタから学び取れるものは全て吸収させてもらう。悪いけどアンタの技術、盗ませてもらうわねマール!
心の中だけでそう思い、私は相手の一挙手一投足を見逃さないよう凝視しながら、アイツが魔法を使う瞬間をジーッと待っていた――その時だった。
アイツは――マールは私が見ている方へと顔だけ振り返って「ウバァ・・・」と、まるで化け物の笑い声を聞いたみたいな幻聴と共に――
「フフフ、そんなに見たいのなら見せてやろう。
ちょうど私も、完全体となった真のパワーを試したいと思っていたところだ」
「なッ!?」
気付かれた――いいえ、最初から私に気付いていてアイツわざと・・・!?
「この技を見て、驚くがいい!!
《燃えさかれ! 地獄の業火ッ! 骨まで焼き尽くせ》――――ッッ!!!」
ごぉぉぉぉぉッ!!
「なッ!? なァァァァァァッ!!!???」
い、今のって! 今アイツが使った炎の魔法って! 私だけが使えるはずのオリジナル魔法を、まさかアイツ今さっき一回見せつけられただけで!?
しかも、それを使う前に私に向かって「この技を見て驚くがいい」って、わざわざ宣言してくるなんて――!! いい度胸してんじゃないのよ、あのチビッ子ォォォッ!!!
「ふむ。レイナ程ではないが、一年生にしては大した魔力だったぞマール」
「・・・・・・へッ!? あ、いや、違ッ!? 今のは私にやるつもりはなくて! 気付いたときには火を付けてしまっていてどーすればいいのか分からなくって、それで――」
「よし、次の者!! 前に出ろっ」
「は、ハイッ!!」
「うぇぇぇぇぇッ!? ・・・・・・や、ヤバいですヤバいですよ・・・このままだと確実にアブナイ人にな――」
「やるじゃない、貴女」
「うおひィッ!? れ、レイナさん!?」
――当然のように、当然の反応として、不信感丸出しの目つきと視線と態度で立ち塞がってきてたレイナさん・・・・・・ですよね~・・・。
「い、いえあの・・・そ、それほど大したものではない程度の魔法だったと、私自身は自負している所存でありまして、え~~とぉぉ・・・・・・」
「へぇ~? あなたは、私しか使えないオリジナル魔法は、“それほど大したものではない程度の魔法”だったんだぁ~?」
「お、オリジナル魔法!?」
「ってことは私のオリジナル魔法は、あなた的には『自分にとって大したことない魔法より更に弱いゴミ魔法に過ぎない』とかって言いたかったことになるのかしらねぇ~? ねぇ? ねぇ? ねぇぇぇぇッ!?」
「ヒィィィィッ!? ち、違っ! 誤解ですゥゥゥゥッ!? 私はそんなこと一言も言っておりませぇぇぇッん!?(ToT)」
鬼の形相でドアップで迫り続ける超怒り状態のレイナさん!
私はただ必死になって謝ることしかできず、
「じゃあ、どういうつもりで言ってた言葉だったか説明しなさいよ! ほら早く! 早く早く早くゥゥッ!!!」
と急かされまくって、なんとか絞り出すことに成功した、こういう時に適切かつ問題ない事情説明がぁぁぁぁッ!!!
「ひ、秘書が勝手にやったことですので、私は詳しいことは存じ上げませ―――ッん!!」
「誰よ秘書って!? アンタがやったんでしょうが! ア!ン!タ!が!!! いい加減な答弁してんじゃないわよコラ――――ッ!?」
「ヒィィィィッ!? 国会議事堂は大嘘つきだったァァァァァァァッ!!!」
無理でした! 責任押しつけれる部下がいないワンマンアーミーの私には、この説明だと相手からの糾弾とめれるセリフになれませんでしたー!
せめて組織さえ持っていれば、言い訳として通用できると思ったのにぃぃぃぃッ!?
「ハァ・・・、ハァ・・・、ひ、酷い目にあいかけちゃったわよ・・・・・・ヒィ・・・、ヒィ・・・」
なんとか『急な用事』とか『トレイに行く途中だったこと』なんかを思い出して、その場から逃げ出すことだけは成功した私は、校舎裏の森の一角に片手をついて肩で息をしながら、九死に一生を得た思いで心臓バクバク収まるのを待っておりましたわ・・・。
「ま、またやってしまうなんて・・・・・・うぅ、なんで私ばっかり、こんな目に・・・・・・」
《まぁまぁマール様。マール様がマヌケな失敗で酷い目にあうのは、いつもの事なんですから、そうお気になさらずに》
「助けてくれなくても、少しは慰めてくれてもいいんじゃないかなナノちゃん!? せめてトドメぐらいは刺さないで欲しいんだけどォッ!?」
《そういう仕様です。仕方がありません》
「それ他の事でも、同じ説明ばっかしか言われた記憶ないんだけど!? 実は体よく回答しなくて良くなる詭弁に使い回してないかな、そのセリフって!?」
《そんな事はありません、仕様です。仕様ですから仕方がありません》
微笑みのポーカーフェイスで同じ内容の答弁を何度でも何度でも、全ての場面で使ってきてる気がするナノマシン生物マスコットのナノちゃん。
ちくそう・・・・・・本当なのかウソなのか詭弁なのか、名探偵じゃなくて異世界囚人状態な罰則あり転生者だと判断できない・・・。
ああ! こんなとき私にもコナンくんや金田一レベルの推理力さえあれば、ナノちゃんの嘘と真実を暴くことができたかもしれないのに!
こういう時だけは犯人側じゃなくて人助け探偵側の能力が欲しい! こういう時だけだけども!!
《まぁまぁまぁ。折角ですしホラ、こんな時用に持ち歩いてたアレを完成させる、いい機会なのでは?》
「ああ・・・アレねぇ。まぁ、他にやる事もないし丁度いいと言えばいいか・・・」
気分転換に進めてくれたと思しきナノちゃんからの忠告によって思いだし、乗せられてるような気がビンビンしまくりながらとはいえ、気分転換そのものは実際に必要だと感じてもいたことから、私は範囲が広くないとはいえ一定のスペースは入れる事が可能な《収納魔法》別名を《大きな袋魔法(私だけのオリジナルネーム)》から例のものを取り出して、地面に生えた切り株の上に並べます。
そして作業開始です。・・・彫り彫り彫り・・・。
う~ん、ここの顎のラインがいまいちかも・・・もう少しシャープな方が・・・局部も少し増量した方が売れるかも・・・・・・あとパンツも――
「へぇ~、変わったお人形ですね」
「いえいえ、私程度より上の人は幾らでもいますから。
まぁ、ガチャポンじゃ出せないゲーム中のCGに近い肩のエッジぐらいは造形したかったって言うか、可愛さを引き立たせるため3頭身にしたSDも嫌いじゃないんですけど、私的にはやっぱりガレキ派って言いますか―――って、いつの間にいたんですかポーリンさん!?」
「“局部も少し増量した方が、あとパンツも”の辺りですね。大体その辺からです」
背後に立ってたポーリンさんから、曖昧な表現で全部聞いてたのを濁す言い方で説明されたー!?
しかも気づかない内に声に出してたっぽい、恥ずかしすぎる一人言の私ーっ!!!
「たしかにコレは可愛いと言うより綺麗って言いますか・・・ちょっとだけ、その・・・・・・あ、アダルトな魅力を感じさせられちゃいそうになるお人形ですね・・・(ポッ♡)
ど、どこでこんな技術を習得したんですか? ・・・・・・あと知識も」
「ふぇぇっ!? それを聞きますか! この状況下で、それを聞いちゃいますかポーリンさん!?」
あまりにも的確かつピンポンイントかつ、そりゃ誰だって聞くよな同じ状況なら!としか言いようのないナイスクエスチョンを質問されてしまった、良い質問には答えられない出題者側ポジションの私!!
い、言えない・・・・・・前世で趣味だったものを、見様見真似で材料と道具造って再現してただけとか、転生者として言えるわけない事情なのもそうなんですけれども。
・・・・・・コミケ3日目の軍資金として、ガレージキット系のイベントに出品してる内に上手く造形できるようになりましたーなんて、女の子的にも言えない秘密ですッ。
たとえ異世界にはコミケも同人誌もないから分からないとは言え、オタクの社会的地位が低い学校に進学してる場合に染みつかされた社交術基準の対応は、そう簡単に消せやしない! それが現実!!
「え、え~~~とぉぉ・・・・・・ひ」
「ひ?」
「ひ――秘書が勝手に造っていたものですので、私は詳しいことを存じませんッ!!」
――再びの同じ説明しか思いつかない辺り、ひょっとしなくても私の頭はコナンくんの犯人たちより悪いんじゃないか?という疑問に自分自身でさえ思わない訳にはいかなくなってきてる私マールディア・フォン・アルカトラズ十二歳・・・。
自分からベラベラと殺人計画とか動機とか話まくっちゃう犯人たちを、「バカだなぁ~」とか嗤いながら見ていた子供時代が・・・・・・何もかも皆、懐かしい・・・・・・。
――ですが。
「そうなんですかぁ♪」
「・・・へ?」
「まぁ、それはそれとして良いとして」
とアッサリ自分から話題変更してくれたので拍子抜けさせられ、思わず相手の話に聞く姿勢を取ってしまって―――バカを見る羽目になる、主人公たちに引っかけられて捕まる愚かな三流犯人の醜態を再現しちゃってたのが私で~ス。
「実はマールちゃん。ここに来たのは、ティータイムのお誘いだったんですよ」
「てぃ、ティータイムぅ!?」
とは言え、その単語を聞かされた直後には素っ頓狂な声を上げてしまって、思わず警戒心出しまくってたのが私でもありましたが!
だって! ティータイムって言えばアレでしょう?
・・・放課後の部室に集まってダベリながら、高校三年間を音楽活動に捧げたり、真面目なミュージシャン志望な後背がいつの間にか餌付けされた猫耳メイド服ロリッ娘になっちゃってた恐るべき、放課後のティータイムな女子高生たち。
あんな青春を謳歌しまくる人たちの空間に、ひねくれ者で嫌われ者だった私が参加するなんて言語道断です。
ひねくれ者が放課後にいるべき部室は、ひねくれボッチ先生と同じ場所以外にはあり得ない。それがオタク世界の常識というもの(私調べの統計結果)
そんな場所に、ひねくれ者の王として、我以外は全て雑種リア充と言い切れるようになること目指す私としては、そんなのへの誘いに乗るわけにはいきません。全力でお断りさせて頂きま――
「ちなみに、断った場合にはバラしますね♪ 先程おっしゃっていた『局部の増量』も。あと『パンツ』も。それでも良いのでしたら無理にとは言いませんけど」
「・・・・・・・・・・・・」
――選択肢があるようでない相談は、相談と呼ばない・・・・・・そんなセリフがどこかのダークファンタジーで言われてましたねぇ~。
まったく・・・・・・ダークってのは、スウィートで甘く優しいケーキみたいな世界のことかと、そんな悪態を吐きたくなるぐらいに選べる道なき今の私は、ポーリンさんに先導されながら、これから半年間四人一部屋で過ごす部屋へとリバースさせられるしかありません・・・・・・。
そして、同行を拒否する権利はあるけど選択する自由は与える意思なき、警察からの任意じゃない任意同行で引っ張られたときのようにポーリンさんによってドナドナされていくしかなかった私は、その後・・・・・・
「さて――あなたのことを聞かせてもらいましょうか。
美味しいお菓子もお茶はいっぱいあるから、それが尽きるまではゆ~~っくりとね」
「OHぅ・・・」
見事にレイナさんとアイビスお姉兄様というルームメイト全員集合状態での、吐くまで問い詰め続ける警察の強引な自白強要捜査を異世界陣たちの手によって行われる取調室へと連れてこられる羽目になったのでありましたとさ・・・・・・。
二段ベッドの下の段を椅子代わりに、部屋の右側にあるベッドにはアイビスお姉兄様とポーリンさんが微笑みかけてきて、左側のベッドに私と右隣のレーナさんという配置。
別の言い方をすれば、私の正面にアイビスお姉兄様とポーリンさんが座っていて、レイナさんが『部屋の扉側』に位置して、私を窓側へと押しやっている配置ですね・・・・・・逃がす気ないにも程がある・・・。
「さぁ、遠慮なく食べなさい。そして吐きなさい、全て吐くのよ。
吐き終えるまで今日は眠れせてもらえるだなんて甘ったれたこと思ってんじゃないでしょうね!? ええぇッ!?」
「本当に自白強要だったのコレって!? 単なる私の思い込みじゃなく!? い、イヤです! 私は何も知りませんし、知ってることは全て話しました! 信じて下さいレーナさんっ!!」
「まだ何も言ってないし、聞いたばかりでしょうがボケぇぇぇぇぇッ!?」
「ひぃぃぃッ!? 先走り過ぎちゃいましたゴメンナサァァッイっ!
それでも私はなにもやってません!! 何もやるつもりなんてないんですってばーっ!?」
入学初日から、「署の方で話を聞かせてもらおうイベント」に巻き込まれてしまった、なんの法的な違法行為も犯したことない、ただ子供を見殺しにして保身を謀っただけの細やかな非倫理的で主人公らしからぬ行為をしてしまっただけの私、マールディア・フォン・アルカトラズは必死に自分の無罪を同じ部屋の仲間たちに訴えかけながら昼の時間は過ぎていきます。
まだ日が沈むまでには長く、日が沈んでからの夜はもっと長いであろう、私にとってハンター養成学校で一番長い日になりそうな入学初日の一日目は終わってくれそうにありません・・・。
テーブルに置かれたカップから湧き上がる湯気が、タバコの煙のように天井に滞留しています。
・・・・・・お皿に盛られた美味しそうなクッキーが、自白剤入りクッキーのように見えてきながら私の一日は、これから始まりにさせられそうです・・・・・・シクシク。
つづく