【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…】の二次創作です。
ただ即興のアイデアを形にしただけですので、色々とバランスが悪いの点はご容赦ください…(謝罪)
・・・・・・そこは、白い色一色の空間だった―――。
『この世界は―――腐っている!!』
その場所の中央で、なんか凄そうな服装した美形で頭良さそうだけど微妙な悪そうなイメージでもある、背後の壁に『勧善懲悪反対! 悪こそ正義と既存の正義を裁くだけのアンチ風潮大反対!!』と書かれた横断幕をデカデカと飾らせた人が、私に向かって叫んでおりました。
『下界の人間たちである愚民どもは、争いを続ける世界を否定しながら、今まで悪と蔑まれてきた者たちこそ真に価値ある者だったと主張し、これまで正義とされてきた者を貶めることによって己の理想とする平和社会を実現しようと目論んでいるが・・・・・・それこそ大局的にしか物事を見ることの出来ない愚か者の発想としか言い様がない愚考だ。
彼らが唱える主張は、今までの悪と正義・弱者と強者を入れ替えさせるだけでしかなく、今の世で悪と貶められるようになった今まで正義だった者たちが、いずれは今の正義とされた悪たちに復讐してくるだけでしかないのだが・・・・・・愚かなる愚民の群れでしかない人間共には、それは理解できまい』
言ってる内容は割と優しさ重視で人道主義っぽいんだけど、【愚民】とか【愚かな人間共】とかの単語がメッチャ選民思想くさいです、この人。
あるいは、この神。自称『神様』
あ、申し遅れました。
私は、どこにでもいる普通のインドア系ギャルゲー好き女子高生だった▲◆■です
今さっき交通事故に遭って、トラックに吹っ飛ばされてヒッデェポーズの死体となって死んでしまって、気がついたら神様によって白一色の部屋に拉致されて、神様的演説を聞かされている最中になって今に至ってます。
あと、なんか自分の名前がさっきから思い出しづらいです。洗脳されてきてる気がするのは間違ってないでしょうか?
『そこで、この【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・】という作品だ。
【FORTUNE・LOVER】という人気乙女ゲームの世界に転生した平凡な日本のアホ女子高生が、破滅する運命から逃れられぬ悪役令嬢のカタリナ・クラエスに転生することで、原作では敵対する主人公や王子たちとも仲良くなり、悪人を裁くだけではない理想的な平和な結末へと向かっていく物語。
これぞまさに、真なるハーレムEND恋愛小説といえるだろう。素晴らしい。
――と言うわけで、▲◆■君。
君は今日から、カタリナ・クラエス。御年8歳。いいね?』
と言うことになったらしいです。って言うより、されてしまったみたいです。
拒絶したくても、反論しようとすると口が塞がれて声が出せません。賛成だけしか言葉が言えない。優しさに基づく主体的な判断で、批判的な言葉を口にさせない言論統制はんたーい。
「ええっとですね・・・・・・その志し自体は大変良いものだと思うのですけど、方法論がそのあのえ~~っとぉ・・・・・・」
『うむ! やはり君も私の完全理想平和主義に賛成してくれるようだな! 私は君なら分かってくれると信じていたのだよ▲◆■君!
では、【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・】を用いておこなう、現在の間違った優しさがまかり通る社会を変革えるため、人々の心根から改革する転生改善プロジェクトの第一号として頑張って成果を出してきてくれたまえ』
「・・・え? あの今、転生改善って・・・・・・しかも1号って2号もあ―――」
『では発進! 地球を離れ、【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・】の世界へ向けて、いざ飛び立つのだ!!
出力120パーセントで臨界! ハイパー魂メガ波動砲を発射せよッ!!!』
ズゴォォォォォォッン!!!と。
たかが塵芥のごとき人間の一匹でしかない私個人の意思や人権など、魂ごとお空の彼方にある別世界まで放り出されて、私は【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・】の世界へとやって来させられたのでした。
いえ、正確には【乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・】の舞台である【FORTUNE・LOVER】っていう乙女ゲームの世界なんですけど、知らねぇですし。作中作だし。現実には実在しねぇから聞いたことねぇしプレイしたこともないですし!
って言うか、狭い! ここ狭い!! なんか今までの自分より大分小さくて狭い気がする真っ暗な場所に着地させられたみたいで、狭いです!暗いです!なんか怖いんですがこの状況ってー!?
誰かー! 助けてくださーい!! 助けるのが無理なら、せめて出して!? ここから出して!? 狭いよ暗いよ怖いよぉぉぉぉッ!?
――そうやって必死にあがき続けていたところ――
「・・・大丈夫ですか!? カタリナ様っ!」
「お嬢様! 聞こえていますか!? お嬢様ーっ!」
「カタリナぁぁぁぁぁぁッ!!」
「――はっ!?」
なんか気づいたら周囲から、色んな人たちからの気遣わしげな視線が!? あと、なんか心配されまくってる外国人女性の名前が! しかも妙に男も女も美形ばっかり! 凄いですね外国! こんな扱い、私も受けたい!
・・・・・・でも実際に受けたら、怖じ気づいちゃって逃げ出したくなるんだろうなーと、基本的に口先だけのヘタレでしかない己を知る私は、自嘲気味な想いとともに立ち上がって場違いな位置から去ろうとした・・・・・・はずだったんですけれども。
「あ、れ・・・? なんか体が動か――歩幅が狂、目線の高さ、が・・・・・・フベシッ!?」
『か、カタリナぁぁぁぁぁッ!?(様ぁぁぁぁっ!?)』
目測を誤って歩き出そうとして転んでしまい、頭から道路に顔面衝突して再気絶。
後から私に仕える使用人のアンから聞いた話によれば、本日二度目の同じ傷口にピンポイント自滅アタックをぶちかましてしまってたそうな・・・。
「お医者様からも、『よほど運がお悪かったんですな』と仰られていたぐらいですから・・・」
と、余計な補足情報まで追加してもらいました。
こうして私は、今の自分がソルシェ王国の大貴族クラエス公爵家の一人娘であり、乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢の『カタリナ・クラエス』として生まれ変わらせられた事実をイヤと言うほど思い知らされることになるのでしたわ・・・。
入院中って、勉強以外にやることないってホントだったのね・・・・・・シクシク。
こうして最初に負った傷が治って熱が下がるまでに約五日、さらに傷口が深くなるよう自滅した分も合わせると、合計で15日ぐらい屋敷の自室で今の自分という現実と直面させられ続ける日々を送った後。
最初に倒れたとき一緒にいた男の子が、お見舞いのため訪ねてきてくれたのでした。
あのとき周囲にいた人たちの中で、私以外ではただ一人の子供だったらしい男の子です。
聞いた話によれば、今までの私ことカタリナ・クラエスは相当な我が儘お嬢様だったらしいのに、そんな子が一緒に遊んでいて怪我しただけでお見舞いに来てくれるなんて、小さいのになんて優しい良い子なんでしょう!
私は、愛らしい笑顔を浮かべて、純粋な眼差しで気遣いの言葉をかけてくれる心優しい王子様に、思わず心が胸キュンですよ! ・・・・・・まっ、子供相手だからこそですけどね。穢れた大人になると、穢れなき無垢な子供のピュアさって眩しい~。
「こんにちは、お加減はいかがですか? カタリナ様」
「はい、もう平気です。熱もスッカリ下がりました。――えっとぉ、ジ・・・ジオルト様」
八歳ぐらいの男の子に頭を下げられ、慌てて私も返礼をして、アンから聞かされた相手の名前を記憶の片隅から引っ張り出し、たぶん合ってるだろうと思いながらも初めて呼ぶ相手の名前だったから戦々恐々していたのだけれど、反応から見て合ってたっぽかったので一安心。ふぅ~、良かったぁー。
「・・・本当に申し訳ありません。お顔に傷を作ってしまって・・・」
「いえいえそんな、お気になさらず。謝らなくてはならないのは私の方ですし。今回のことはすべて私の自業自得、むしろ皆様にご心配をおかけしてしまったみたいで、こちらから謝罪にいくべきところを謝られてしまうと困ってしまいますわ」
言いながら、自分でも本当にそう思うしかない状況に、多少の冷や汗を内心で感じるレベル。いやもうホント、今回のことは完全に私が悪いからね。私だけが。
正直、最初に転んで気絶したときの経緯は、まったくサッパリこれっぽっちも覚えてないし分かんないままなんだけども、その後に歩幅ミスって自分から頭ぶつけに行って入院したのは完全無欠に私が悪い。悪すぎた。
強いて他に悪いヤツがいるとするなら、それは例の善意に基づく独善神様しかいません。
あんな偽善じゃなくても独善ヤロウと比べたら、目の前の曇りなき優しい気遣いを示してくれる八歳の男の子王子様が悪いはずがない!
まぁ確かに、目の前の男の子よりも年くってた分だけイケメンでしたけども。目の前の子は可愛いタイプで美形ってタイプじゃないですけど、イケメン度では向こうの方が好みな顔でしたけれども。
それでも、この子は悪くない。神様が悪い。神様が人類改善のため丁度いい存在として選んだカタリナが悪い。そうに決まっている、そうに違いない。そうでなければならないから、そうだと私が決めた!
『えッ!?』
・・・・・・と自分では思っていたのに、何故そこまで驚かれちゃってます私の発言。
もしかして、アレですか? この国では遊んでた子供が怪我したら、怪我しなかった方が全部悪いと決めつけちゃうモンスターママンが正しさ認められちゃう善意の勘違い正義国家だったりするんでしょうか?
一応は今の自分も八歳児だから、子供の情操教育的にそこまでのことは教えてもらってなかった私には分からなーい。
とりあえず、被害者正義で被害者の言い分は全部正しい偏向報道ヤダー!?
「そ、それに顔の傷っていっても掠り傷ですから、掠り傷。だから大丈夫です、問題ありません。楽勝です」
世間の重圧に苦しんでいるかもしれない相手の、精神的負担を少しでも軽くしようと額に貼り付けられてたままの包帯をペリッと剥がしてポイッと放り投げ、後で拾ってゴミ箱に入れ直そうと頭の片隅で考えながらも、今だけは気楽そうな態度を意識しつつ、場の雰囲気緩和を優先して軽いノリと口調で断言して保証した私。
・・・・・・なのですけれども。
『えぇッ!?』
何故か、さっきよりももっと驚かせてしまっただけになってしまいましたわ・・・。
まぁ気遣いの言葉というのは奇々怪々なもの。自分ではそのつもりがなく言った言葉でも、相手が傷ついてしまうことってあるものですからね・・・。
そしてやっぱり、傷ついた被害者側が全部正しく言い分通る、と。偏向報道やっぱヤダー!?
「えっと・・・・・・その、カタリナ様。あなた自身が傷を気にされなくても社交界では、そうはいきません。傷物として今後の婚姻などに影響が出てくるかもしれないのです」
「・・・はぁ・・・なるほど・・・」
私は返事を返しながら、そう言えばギャルゲーでも美少女なのに、ちょっとした傷があるってだけで差別されてハブられて卑屈になってる美少女キャラクターとかいたなぁ~という前世知識を思いだし、こんな小っぽけな傷でも人生振り回されちゃう貴族社会って大変だったんだなーと、今時の歴史ブームに乗っかって大河主人公と同じ時代を舞台にしてTSしたギャルゲーやってた頃を懐かしみながら―――待てよ、と。心の中にアイデアが閃いたのです。
効果音は、キュピーン☆
頭の中にバァー!って光って走る新たなる人の形がごとく、誤解なく物事を理解できる新人類能力に私は覚醒し、それによって得た気づきに心の底から感謝した!
・・・・・・この小っぽけな傷一つあるだけで今後一生、結婚できなくなるとするならば。
・・・・・・・・・結婚しなくて良くなって、むしろ楽なんじゃね?という素晴らしきナイスアイデアが・・・!!
そうよ、そうですよ、そうなんですよ! 結婚できないんじゃなくて、しなくていいんと思えばなんてことありゃしません!
何故なら、あのクソみたいな世界に帰らなくていいのだから、とかまでは言いませんけど結婚しなくていい傷物になって貴族社会に戻れるのなら、それはそれで悪くはないと私は思う!
よし、これで行こう。これで貫こう。相手がなんと言おうとコレで突っ切る腹づもりで私は王子様への応答を貫徹する覚悟を決めました。
「ご心配ありがとうございます、ジオルド様。ですが大丈夫です、まったく問題ございません」
「い、いえですがカタリナ様。私がもう少ししっかり周りを確認していれば・・・・・・」
「大丈夫です、ジオルド様。まったく問題ございません」
「ですが私が警戒していれば、あなたにぶつかってしまうこともなかったですし・・・・・・」
「大丈夫です、ジオルド様。まったく問題ございませんですわ♪」
相手に同じ返事を連呼してるだけと悟られぬよう、微妙に言い回しを変化させながら私は愚鈍を演じきり、相手が諦めて帰って行くまで同じ返答だけを繰り返し続けました。
ふふふ・・・・・・これぞ引きこもり必殺、『理屈の通じないバカを演じて話しても無駄なヤツと諦めさせるの術』!!
インドア系たる者、皆が皆、理屈の言い合いが好きだと思うな! 理屈よりもゲームやってる方に時間割きたいオタクの存在忘れるなかれ!!
この私が十七年間の前世人生で会得した必殺交渉術、たかだか八歳の純粋極まるお子ちゃまには見抜けるものではないでしょう・・・・・・悪く思わないでくださいね? ジオルド王子。すべては私が平和でダラダラした第二の人生を送るという、ささやかな夢を叶えるための小さな犠牲なのです・・・・・・どうか許してください、ジオルド王子、よよよよ~。
「――ですので、傷をつけてしまった責任を取るため、私がカタリナ様と結婚する。そういうことでよろしいんですよね? カタリナ様」
「はい、もちろんです。全くもって何の問題もございませんわジオルド様♡」
「よかった。では、またあなたの体調が優れた頃にでも改めて、ご挨拶に♪」
そう言って微笑んで退室していく、利用されたことに気づかぬ哀れで純粋な男の子ジオルド・スチュアート君、御年8歳児。
ああ・・・必要な犠牲とはいえ、幼気な子供を騙して利用してしまったことに罪悪感が無きにしも非ずっていうか、やっぱりちょっと微妙って言うかなんというかそのえーとう~ん、ぐらいには感じて心を痛めているのですよ!? 本当に!!
・・・・・・って、あれ? なんか最後ら辺は惰性になっちゃってて、自分が何言われてなに答えてたか意識しなくなっちゃってたんだけど、なんとなくヤバいこと言われてヤバい返事をしてしまったような、そうでないような気が少しぐらいは無くもないような・・・・・・?
「お嬢様! おめでとうございます!!」
「うわっ!? ビックリした!?」
記憶をたどって過去の歴史についてボンヤリ考え巡らしてたら、使用人の一人でえっと・・・・・・たしかアンっていう色々と教えてくれたメイドさんが、私にどアップで迫ってきながら満面の笑顔で祝賀の言葉を述べてきたんだけど! なに!? 何があったの!? 一体なにごとぉっ!?
「ジオルド様は第三王子とはいえ、とても優秀であられるとのこと。我が国では次期王は現王の指名制で、ジオルド様が国王になられる可能性だってあります。
そのジオルド様の婚約者となれば、お嬢様は未来の王妃様も夢ではありませんね。ご婚約、本当におめでとうございます!」
「・・・・・・へ? え、えと・・・・・・ちょっとアン、今なんか不穏な単語が混じってた気がするんだけど、一体なんのはな―――」
「もちろんジオルド様がカタリナ様に結婚を申し込まれ、カタリナ様がそれをお受けになった、先ほどのご婚約話のことです! 結婚おめでとうございます!カタリナ様!!」
言われてから、はたと気づく。
先ほど交わされた会話内容、最後のやりとりに纏わる記憶。
『――ですので、傷をつけてしまった責任を取るため、私がカタリナ様と結婚する。そういうことでよろしいんですよね? カタリナ様』
『はい、もちろんです。全くもって何の問題もございませんわジオルド様♡』
・・・・・・言っちゃってますね私。
メッチャ勢いよくプッシュしてOKしちゃってましたね、考えるの辞めて惰性でもの言っちゃってた先ほどまでの私。カタリナ・クラエス御年8歳児ちゃんのおバカ娘ちゃんは・・・。
って言うか、受け答えの内容とタイミングからして、もしかして私あの純粋そうな男の子にハメられてな―――
【解。肯定です。あなたは『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった・・・』の相手役キャラクター、ジオルド・スティアートを見くびって填められました】
「うわっ!? なんか聞こえてきた! 『転スラ』の大賢者みたいな役割果たすナニカが!? 頭の中だけに勝手に響いてくる声、気持ち悪ッ!」
【――『FORTUNE・LOVER』内における、ジオルド・スティアートの設定を開示します】
思わず呟いてしまった私の正直な気持ちの言葉に、多少の不快感を感じたのか、ちょっとだけ間を開けてから見えるようになる、先ほどまで純粋無垢な男の子だと思っていたジオルド・スティアート君がもつゲームキャラクターとしてのキャラ設定。
『ジオルド・スティアート』
一見お伽噺に出てきそうな金髪碧眼の王子様だが、実は腹黒な性格で性格は歪みぎみ。
なんでも簡単にできてしまう天才肌な王子。何にも興味を持てずに退屈な日々を過ごしている。
カタリナ・クラエスは幼少の頃に王子と出会い、額にできた傷を盾に婚約。
他の貴族令嬢たちへの防波堤代わりに用いるため、王子も婚約関係を維持することになる。
最終的に、その出来事が理由となってカタリナは殺される。もしくは国外追放される要因となる存在。
・・・・・・なるほど。純粋無垢な良い子に見えて、実際には良い子に見せかけるのが上手な、頭の良さを持った狡猾な男の子だったのか。
そうなると、つまり先ほどまでの私という存在は――――
「は、謀ったな! 謀ったわねジオルド王子―――――ッ!?」
ガルマ様ポジションにいる人に裏切られて、シャアだった本心を見抜けなかった私に、ザビ家並の破滅の危機が訪れる可能性が!?
人間だけが持つ可能性という神なんて要らないから、時を戻して! リセットボタンを頂戴! 選択肢を選ぶ前まで戻って選び直せるリセットボタンをって、選択し直前セーブしてなかったぁぁぁぁぁぁッ!?
ギャーギャーと、再び混乱と困惑の中で騒ぎまくってテンパって、再び転びそうな危機を持ち込み周囲の人を慌てさせながら、私は謀略の中へと引きずり込まれてしまった微笑みの仮面王子がもたらす脅威に戦き、恐怖することしかできませんでした!!
・・・・・・そんな私だったからこそ、館を出て城へと帰っていく途中の馬車の中で、腹黒王子が呟いていた独白の内容を知るよしなど、全くちっとも金輪際決してないまま物語はスタートさせられることになるのでありましたとさ・・・・・・めでたくなし、めでたくなし・・・・・・シクシクシク・・・。
「ふふッ、面白い人だ。
他の令嬢たちは、僕との距離を縮めるため手練手管を尽くす者ばかりなのに、彼女はあからさまに僕を遠ざけたがっていた。あんなにも見え透いた演技をしてみせてまで・・・。
僕と同じく、無難な対応を演じることで人との距離を遠ざけるため利用する公爵家令嬢カタリナ・クラエスか・・・面白いな。うん、面白い。
これからは今までより、面白くなる可能性が期待できそうだ―――」
試し読み切りなので、続くかは未定