試作品集   作:ひきがやもとまち

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*最近、意欲が低下してるらしく根気と集中力が必要な作品が書けない状態が続いております。
ノリと思い付きだけで書ける作品をいくつか書いてみて、回復する切っ掛け作ろうと努力してますので、連作作の更新はしばらくお待ちください(謝罪)


私、能力値にバッドステータス付与はお許しを!って言ったのに・・・。3章

 そして、あの忌まわしい拉致誘拐事件が解決した翌日のこと。

 私はハンター養成学校に入学するため街を離れ、レニィちゃんに見送られながら別れの時を迎えていたのです・・・・・・。

 

「学校ガンバってくださ~い。たまには遊びに来て下さいねー♪」

 

 そう言って、頭の上にデッカい漫画タンコブこさえて手を振っている、夜遅くまで遊んで帰りが遅れて親に怒られる年頃の不良むす――もとい、犯人に浚われて危うい所だったと思われていたけど無事に何事もなく帰宅して事なきを得た、事件発生の情報を教えてくれる宿屋の娘ヒロインであるレニィちゃんに背を向けて、私は訪れたときと同様に独り身のまま目的地へと帰っていくのでありました・・・・・・チクソウ。くたびれ損の骨折り儲けと分かっていれば、こんな事には――コホン。

 

 そういう事情によって、私は事件が無事に解決した次の日の朝に、ヒルズ王国に入国したときの目的通りハンター養成学校に入学するため、新入生の女子生徒として仮の宿を出発して学生寮へと向かって歩き始めたのです。

 

 そう! あくまで本来の予定していたスケジュール通りに動いてるだけであって、なんら怪しい行動なんて今の私は何一つとしてしていません! 昨日事件があった場所の近くから慌てて逃げ出す怪しい不審人物になんて私はなっていない!

 事件があった直後こそ、最も普通の行動をして、怪しい素振りなんて事件とは関係ない別の事情を隠してるだけという風に装う! それこそが容疑者に含まれないためのコツ!

 初っぱなから色々怪しい行動とりまくるコナンくんの犯人よりも、金田一少年の犯人達こそ、目指すべき正しい犯罪者の姿というもの!

 いえ、私は決して犯罪者なんかじゃないですけれども! 捜査員たちはなかなか真実を信じてくれないですからね! だから仕方なくです! 私と違って捜査員たちは本当に全くもう! 

 

 と言うわけで、やってきました! ヒルズ王国ハンター養成学校の校門前が、ここ!!

 ・・・・・・しかし。

 

 

「やっぱり小さいね、国営なのに。TO大とかKO大学とは大違い」

『まぁ、そのぶん学費は無料ですし。どこから運営費を捻出してるかは微妙ですが』

「だね! きっと公共の利益の名の下で、色々な人が儲けているに違いない場所だよきっと多分! よし、今度こそ恩赦を勝ち取るため学生寮への潜入もとい入寮しますかッ!!」

『そういう考え方してる限り、マール様って基本、普通の生活に戻るのに向いてないと思うんですけどね~』

 

 横でナノちゃんがなにか言っているような気がしたけれども、きっと気のせいだと聞き流し、私は難聴系を装いながら転生者らしく、即ち主人公らしく学生寮へと最初の一歩目を記すのでした!

 

 まぁ実際のところ、この学校に恩赦が得られるような解決すべき事件が潜んでてくれるとは正直思っていません。特に必要もない場所でしたしねぇ~。

 

 なにしろ、国営のハンター養成学校でありながらも、この小ささ・・・・・・つまりは国から全く期待されておらず、注目されてもいなくて見下されてる教育機関と言うこと。

 ならば多少の際だった成果を上げたとしても、格下の学校如きが既存の既得権益層から正当に評価されるはずもなく、なんやかやと理由をつけて低い評価に抑えられるに決まっている立場だと言うことです。

 

 それは学校運営側にとっては不都合でしょうけど、私にとっては好都合。

 何故なら私たち学生は、たったの半年だけで卒業して学校とは永遠にアデューする、一時だけの関係性! 学歴の切れ目が縁の切れ目。それが学生にとっての学校というもの。

 後はせいぜい何十年後かに同窓会で再会して、「あの頃は楽しかったよね」とか綺麗に美化した思い出話に花咲かせるぐらいしか使い道ないのが学校であり、学生時代というものでしょう。

 終わってしまえば、何もかも皆懐かしく感じるようになるものです。実際にやり直したら嫌な気分になるだけでしょうけれども。

 

 とまぁ、そんな感じで「髪染めてたから卒業式に出られなかった」と嘆いていたテレビの中の学生さんに全く共感できなかった過去を持つ元中学生の私は、学生時代だけという都合がいい間だけ肉体面での関係を持つことになる、ルームメイトという名の共同生活者の皆様に笑顔で自己紹介と挨拶です!

 

 心の中でなに思っていようとも、顔はにこやか笑顔でニッコリスマイル☆

 それが元日本人の生きる道!!

 

 

「初めまして、私マールって言います♪ ふつつか者ですが皆さん、どうかよろしくお願いしま――」

 

『・・・・・・え? 君(アンタ)(あなた)は・・・・・・』

 

「――ふぇ・・・・・・?」

 

 

 頭を下げてから上げ直した直後。

 視界に入ってきた三つの顔と、三色の頭髪と、3パターンの髪型と、2つに大別されたバストサイズに見覚えがあったような気がしなくもなかった私は、思わず相手と顔と顔を見合わせあって、しばしの間硬直して、それから――――

 

 

「え? うぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

『ああああああああぁぁッ!?』

 

 

 サスペンスのお約束、事件関係者で当事者でもある娘さんたちと偶然の再会ーっ!?

 お兄姉様のメイビスさんと、他人呼んで赤のレイナさんと、オッパイ回復魔法使いのポーリンさんが同室のルームメイトだったー! いくら何でも揃いすぎでしょコレ!? 転生者は主人公で、主人公にはよく在ることだからって全員は流石にダメでしょ!? 一人ぐらいは別クラスの別部屋にって、同じだー!? 大して私的ピンチには変わりなかったー!!

 

 どど、どうしましょう! よりにもよって、この人達と一緒の部屋だったなんて!?

 このメンツで昨日のアレを、どう説明すれば『偶然であって意図的ではなかった』という真実を信じてもらえますかね!?

 『そんな偶然があるか! 嘘を吐くなら、もっとマシなウソを吐け!!』とか言われて反論できる自信が全くなーい!!

 

 ひたすら混乱の局地にあり、いつ呪いが発動しても不思議ではない心理状態になり掛かっていた私でしたが、それを再び助けてくれたのは、またしてもあのお方。

 

「――さて、ではまず自己紹介からだね」

「え? はい、え? あれ?」

「私はメイビス・フォン・オースティン。十七才、騎士の家の出で剣士を目指してる」

 

 お兄姉様ーッ☆ 困ってる人を助けてくれる正義の女騎士メイビスさんが、またしても私を助けるため割って入ってくれました!

 よし! 自己紹介よし! 『私たち今ここで初めて会いました観』がよく出てて、既に面識ある者同士だったことを臭わせる要素が大分減りました! さっきの「えー!?」もなんかで誤魔化せる! 偶然Yes!! 容疑者同士の接点なければ共犯者NOッ!!

 

「まっ、そうね。私はレイナ、十五才よ。ハンターランクEの魔術師で、【赤のレイナ】って呼ばれてるわ」

「Eランクか。やっぱりFランクの初心者じゃなかったんだね」

「まぁね。まだまだ駆け出しなのは認めざるを得ないけど」

 

 と、次は相変わらず他人呼んで赤のレイナを自認しているレイナさん。

 まぁ、Eランクですからねぇ。名前売るためにも積極的に名乗っていかなきゃ知名度低いままでしょうから、手っ取り早く昇格するためにも有効な手段ではあります。

 どの業界でも腕が良いだけでは正当な評価は得づらいもの、政治力とかスポークスマンなんかも必要なのは悲しい異世界の現実。

 

「あ、私も魔術師志望なんですよ。ポーリンです、十四才で実家は商家をしています。

 レイナさん、同室のよしみと言っては何ですが、良かったら色々教えて下さい」

「まぁ、私で良ければ教えるのは構わないけど――でも、このメンツでなら頼む相手が違うんじゃないかしら? ねぇ?」

「ふえ?」

 

 ファンタジー異世界でも抗いきれない世の中の世知辛さと、十四才であのサイズなら将来はどこまで育つのかと想像して末恐ろしさに意識を取られすぎ、実家が商家の娘はいいもの食べてるからバケモノなのかと、格差社会が女の子スタイルにまで不平等をもたらすをテーマにした論文を、原稿用紙30枚分くらい頭の中だけで書き上げて実際には1文字も書かないつもりでいた私は、突然レイナさんから話を振られて驚き慌てて周囲を見る。

 

『・・・・・・(ジ~~っ)』

 

 ・・・・・・何故だか、三人の視線が私一人に集中していて微妙にい、痛い・・・。

 なんか、こういう眼で見られるの痛いのよ! そして辛いのよ! キツいのよ!

 江戸時代のリアル針のむしろよりマシだけども、それでも現代日本人の精神的には微妙に辛い気がするから辞めて!?

 

「自己紹介よ、自己紹介。あなたの番よ?」

「え? あ、そっち・・・そうですよね、ハイ。分かってますよ、もちろんじゃないですか、イヤだなぁーもう。それぐらい言われなくたって最初から分かってましたよレイナさ~ん」

「・・・・・・うわ。この子、ウザ」

 

 ボソリと言われたさり気に傷つく一言を、敢えて聞こえないフリして言われなかったことに記憶を捏造してねじ曲げて、スカートの前で手を組み合わせながら私なりに考えてきた完璧な自己紹介を、今ここで発表する機会を得たのでした。

 

「えっと、私はマール。十二才で――」

「職業とランクは?」

 

 と思ってたら、レイナさんから遮られて身分証明の開示をいきなり要求されてしまった私。

 ・・・・・・って、あれ? コレってもしかしなくても取り調べ状態なのでは・・・・・・に、任意同行には応じますので疑わないで下さい! 任意同行拒否は、やましい所があるから拒否したに決まってる扱いする事実上の任意じゃない同行要求だから嫌いでーす!?

 

「ま、魔術師志望ってゆーか、最終的には魔法剣士を目指してまして、今のランクは一番下のF!

 新米ハンターですので、どうかご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いしますレイナ先ぱ――」

『嘘だッ!!!』

「って、ええぇぇぇぇッ!? 夏でもないのにジャンル変わった!?」

 

 完全なる矛盾なき自己紹介に続く予定だった挨拶をしたはずなのに、何故か完全否定されて疑われるという理不尽すぎる状況に突き落とされる私!

 せっかくヨイショしたのに! ご機嫌取る褒め言葉言ったのに! 権威主義で現場主義な古参のベテランさんなら喜ばれやすい挨拶の仕方したはずなのにーっ!

 

 ひょっとして、このままだと私、ナイスボートされちゃうとか!?

 首だけ切り取って湖の上まで連れてかれて、お腹を切り開かれて私の黒くない純白の秘密を暴き立てようとするんじゃ・・・ッ!? 私は何もやってない!!

 

 何度目か分からない危機的状況へと陥っていた私を救ってくれたのは、またしてもお兄姉様!・・・・・・では今度はなく。

 

 キーン、コーン、カーン、コーン♪

 

 という古風な鳴らされ方した、教会っぽい鐘の音。

 

「ん、時間だね。そろそろ行こうか」

「・・・む。そうね。仕方がないわ」

「マールちゃんも早く行きましょう」

「へ? あの・・・・・・行くって、どこへ? 何をしに・・・?」

 

 あまりの事態急変に、頭が付いていかなくなっていた私は咄嗟に反応できずに間抜けな質問。

 それでも相手は呆れることなく、私に向かって簡明に説明。

 

「入学説明会に遅れちゃいけませんからね」

「あ、ああ成る程。そうでしたね、そうでした。・・・ふぅ~、危うい所で助かっ――」

『続きは説明会が終わってからの方がジックリできるし(るから)(ますから)ね』

「ってない!?」

 

 むしろ逆にピンチ!? 説明会が終わった後には助けが何もなくなるから大ピンチ状態に!

 ああ、おかしい・・・おかしいですよ、この状況は・・・。私は何も悪いことなんて、犯罪行為に抵触しないようにしかやった事ないはずなのに・・・・・・何故だか、この人達といると私が悪いことを犯して誤魔化しながら逃げているだけのような錯覚を感じさせてられてきて・・・・・・あう、あう、アウぅ・・・・・・の、呪いが出、そう・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 体調不良のまま、無理をして全校朝会に出席する生徒のような心地を味わいながら、何とかグラウンドの校庭に集合して気分も持ち直すことが出来てきた頃。

 

 一人の無精ヒゲを生やしたロン毛の中年男性が壇上に上がって、校長先生から一言みたいな登場の仕方をした後で語ってくれたのは以下のような内容↓

 

 

「俺が学校長のエルバートだ。

 ここでは本来ならば、お前達が何年もかかって自分で経験して学ぶはずのことを半年間で詰め込んでやる」

 

 

 短っ!? 数年間を半年に凝縮ってどんな授業!? スペシャル・ベリーハードコースよりかは大分マシな難易度ですけど、それでも普通の人にはキツいよ多分!

 

 そして学校に通えば半年間で学べることを、数年間の自習自得で学ぶらしい独学ハンター! この異世界でも高等学校に行く行かないで就職後のランク差が分厚い! 分厚すぎる!

 

「訓練は厳しい。だが卒業の暁にはDランクをくれてやる。

 さらに! 成績優秀者にはCランクをくれてやる!!」

『うおおおぉぉっ!? スッゲーッ!!!』

 

 しかも安ッ!? 安すぎませんかね!? この学校のランク評価あつかいって!

 半年学校に通うだけで、二つ名持ちのEランク『赤のレイナ』さんを超えちゃえますよ!?

 半年の学校生活で成績優秀だっただけで、昨夜に戦ったAランク入り目前のBランクハンターさんたちのと、ランク的には並べちゃう目前までいっちゃうんですが!

 

 明らかに高い報酬で釣るしか人材獲得の手段がない、成り上がり新進企業じみたこと言っちゃってる入学説明を学校長自ら宣言しちゃってますけど、ホントに大丈夫なのこの学校!

 後からなんかヤバいことしてるの隠してる学校とか知られる展開はイヤなんですけど! 嫌すぎるんですけれども!

 私の輝かしい経歴と資格ライセンス欄に、デッカい傷ができる可能性がーっ!?

 

 

「まずは、お前達の実力を見せてもらう!!」

 

 

 こうして、絶対に私の呪い持ちであるという真相を誰にもバレないようにしなければいけない中、精神状態最悪にされてしまった今の私は、実技試験もどきな実力示すだけのデモンストレーションに参加させられるのでした・・・・・・。

 ダメじゃん、もうこの時点で・・・・・・もう今日の私に呪いを抑えておける力は残ってななナナナナナ―――

 

 

「はぁぁぁぁぁッ!!!」

「そこまで!! 良い腕をしているな、メイビス」

「ありがとうございますっ」

 

 カァッン!!と、微かに残っている意識の中で、メイビスさんが可愛い系の見た目をしている美少年剣士君から一本取るのが見えていましたが・・・・・・意識がフラフラしつつある私に、余り細かいことは判断できず、何となく次が自分の番だと言うことだけが分かって前に出て行きながら。

 

「よし、次の組っ」

「・・・はぃ? ふぁーい・・・・・・」

 

 ボンヤリしながら立ち上がって、木の盾と木剣を持ちながら周囲の見ている前に進み出て、対戦相手の生徒と向き合うことになる私。

 

『――おい、見ろよ。あの子の相手、アレってまさか・・・』

『ああ、間違いない。現役ハンターの、オーブだ』

『あの素手でオークを絞め殺したって噂のか!? あの子も可哀想に、萎縮しちまってるぜ・・・』

 

 目立ちすぎないためには、上から五番目くらいの強さを示して、良い勝負した後で負けて、「参ったよ私の負けだ。思い上がりを気付かされた気分だ~」とか爽やかに言うぐらいが丁度いいんじゃないかなーとか頭の片隅で考えながら、

 

「ケッ! こんな小娘が相手じゃおもしろくもなんともねぇ。

 同じ小娘なら、アッチのお嬢ちゃんの方が良かったぜ。こんな絶壁まな板娘じゃつまらねぇ」

「・・・ふぁい・・・?」

 

 上手く聞こえなくなってきていた私の耳と頭に、相手が戦う前になにか言ってきているのが聞こえたので、なんとか相手を見ようと意識を集中させ、そうすれば呪い発動も押さえれるかと期待しながら目の前に立った対戦相手の姿を見つめようとする私。

 

 髪の毛が一本もないスキンヘッドの頭。眉毛がない角張った顔。

 膝だし二の腕だしノースリーブ・ショートパンツアーマー装備で、表情は眉間にシワが寄ってる、少年少女達が通うハンター養成学校の新入生の一人で男子生徒の―――

 

 

「・・・・・・え? オッサン? なんで角張り顔の中年オッサン剣士が、学校に通いに来てるんですか!? まさかこの学校の年齢上限は四十路以上というルールに校則変更が!?」

「誰がオッサンだ!? 誰が角張り顔だコラ!! 俺はまだ十代の少年だッ!!」

「嘘だッッ!! 絶対に嘘だのナイスボートだぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

「嘘じゃねぇよぉぉぉッ!? いくら何でも失礼すぎるにも程があるぞお前ぇぇッ!!!」

 

 

 気付いたときには激しく罵り合っていた、絶壁まな板娘形態の転生者な私!

 マールディア・フォン・アルカトラズと、角張り顔のオッサン少年剣士(自称)のオーブさん!!

 

『お、おい見ろよ! あの子、オーブに向かって何てことを・・・っ!?』

『あ、ああ・・・間違いないっ。現役ハンターのオーブにっ、あのオーブに・・・!!』

『あ、あああの素手でオークを絞め殺したって噂のオーグに向かって・・・っ』

 

 

『『『なんという――素手でオークを絞め殺したオーク顔のオーブだなんて、本当のことをぉっ!!』』』

 

 

「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!

 失礼すぎるヤツしかいねぇのか、この学校はぁぁぁぁッ!?」

 

 

 薄れゆく意識の中で、怒り狂いながら地団駄踏んでるオーク顔のオーブさんが、オクトパスみたいに顔色を真っ赤にして痛恨の一撃を私に食らわせて八つ当たりしようとしている姿が、ウッスラとだけ心の隅っこに焼き付きながら。

 私が思っていたのは別のこと――

 

「もう許さねぇ! 絶壁まな板の小娘だからと手加減してやるつもりだったら図に乗りやがって! 俺様の真の力を見せてやるぜ! 覚悟しやがれぇっ!!」

 

 ハ・・・ゲ・・・・・・まな板ム、ネ・・・・・・小ムス・・・・・・グ~~~ZZZZ

 

 

「ホーッホッホッホ! ちょこざいなっ! この私の超能力の恐ろしさを思い知らせてあげるわッ!!!」

 

 

 ・・・・・・って、なんでコイツ来た━━━━(゚∀゚)━━━━!?

 確かにハゲ相手に圧勝した一人ですけれども! ライバルの嫁が胸とお尻で命乞いしてましたけれども!!

 

 それだけなら他の候補でいいじゃん!?

 前回の呪いで同じシリーズの続編キャラやってますし、二回続けて同シリーズからの呪い発動は前例ないから考えてなかった――ッ!!

 

「ちょ、チョー能力だと? 特殊スキルかなにかだな! だが相手が悪かったようだな!」

「ホーッホッホ! おバカさんね、私を怒らせたらどうなるか教えてあげるわ!

 それから、もう少し減量なさい。私、小太りのタイプって好みじゃないの。鎧もなんかゲイっぽいし、オカマのハンターなんてお気持ち悪いわね!!」

「お前にだけは言われたくないわ――――ッ!?」

 

 私自身もコイツにだけは言われたくないですよーっ!? 呪いだから仕方ないでしょう!?

 私のせいじゃないもん! 私のせいじゃないですもん!! 私、バッドステータスはお許しをって言ったのに―――ッ!!!

 

「こ、この高貴で、ほ、ほほ誇り高きわ、私が・・・・・・の、呪い。呪いが発動して、は、はは恥を晒して、恥を晒すだなんて・・・・・・格好悪い!

 許せないわ! 私、許せないィィッ!! ホワチャァァァァァッ!!!」

「へっ? 剣と盾持った胸当て装備のヤツが蹴―――って、ブホッハァァァァッ!?」

 

 バコォォォォォッン!!!――と。

 上向き前ジャンプで高速接近してから、顔面の横っ面に飛び蹴りかますドラゴンボール・キックをお見舞いして、一瞬によって勝負を決めて地面に着地する私。

 その時には既に呪いは収まっていて、瞬時に沸騰した感情が呪いを全力で発動させたことにより、短時間での呪い解放が可能になったのでありました。

 

 つまりは要するに。・・・・・・この状況、どうやって言い訳すれば言い逃れるか皆目サッパリ検討つかなくても、黙秘するしか道がないィィ・・・。

 

『お、オーブを一撃で倒したのか!? しかも一瞬で接近して・・・!』

『今の見えたか!? 全然見えなかったぞ!』

 

『だとすると、まさか・・・・・・一瞬前まで見せてたオカマっぽい言動は、オーブを油断させるための陽動だったということなのか!?』

『戦場では敵を侮って油断したヤツから死ぬ。あの子はもう、その域に達した存在だと言うことか・・・!!』

 

 

 ――うん、まぁ、こういう時のお約束として勝手に拡大解釈して過大評価してもらって、便乗すれば誤魔化せること確実な状況には、大いなる世界を司る意思か何かによって与えてもらっているのではありますけれども。

 

 ・・・・・・どう考えても、便乗することで誤魔化すことが、私個人にとっては追い詰められることにしか繋がりようのない、犯人に追われて追い詰められて殺されてから発見される被害者ポジションになってしまっていると自覚してはいるのですけれども・・・・・・。

 

 他に方法がなければ乗らざるを得ない、借金で人殺して偽装のためのトリックで予定にない罪まで犯す必要出てきちゃう系の犯人になる第一歩目の十三階段という現実がここにある訳でもありまして・・・・・・。

 

 

「ふ・・・フフ・・・・・・卑怯・・・?

 ―――良い言葉だわ・・・♡」

 

 

 恍惚とした笑みを浮かべながら、周囲のギャラリー達のヤジを肯定して誤解を広める一躍を自らこなすことになる私自身・・・。

 

「マール、ますます君に興味がわいたよ。

 魔術師志望とは思えない身のこなしもそうだけど、まさか格闘技まで使いこなすなんて!

 出来ることなら君には正義の騎士として、人々を犯罪者から守るため国に仕える軍人の家に生まれて欲しかったぐらいさ!!」

「いえその・・・・・・えーと・・・・・・多分そうならなかったから、今の私がある方が良いと思いますよお姉兄様。いやもうホント、嘘偽りなく本心からの言葉として・・・・・・」

「その今を大事にする心も、実に素晴らしいよマール! 君とは、良い友達になっていけそうだ! これからも宜しく!」

「はは・・・・・・ハイです。これからも宜しくお願いしま~す・・・・・・」

 

 

 こうして、新たなドツボに嵌まり始めたことを早くも自覚し始めた私でしたが・・・・・・一度でも選んで進んでしまえば、引き返すのは難しくなる一方なのが犯罪の道というものです。

 

 やってしまったからには、後戻りはできません。

 突き進んでいって、嘘を事実として公的に認められる以外に、トリックで偽装して今まで通りの生活を維持しようとした犯人に、選べる道は他にはない。

 

 突き進むしかないのですよ、吐いてしまったウソを真実にするための道を。

 犯罪者ロードを極めるために!!

 

 見た目は、少し不気味美少女貴族! 中身は呪い持ち転生者! それがマールディア・フォン・アルカトラズ! 真実はいつも一つ!

 名探偵が暴いた真実だけが、たった一つの正しい真実!! その全て!!

 

 つまり名探偵のいない場所では、犯人のトリックこそが真実に出来るものなのだーっ!!(自棄)

 

 

 と言うわけで、入学初日の能力検査は残り半分残ってまーす(半ば自暴自棄かけ中)

 

 

 

つづく


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