試作品集   作:ひきがやもとまち

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以前から思いついていただけで書いたことはないアイデアを書いてみた作品、その第2号です。
今回の原作は『伝説の勇者の伝説』。
あの作品に、作者が使うかどうか迷ったまま使わずに来た主人公案の一つを投入して考えてみた試作版の内の一作ですね。

・・・主人公の性格が癖あり過ぎなタイプですので、原作ファンの方は多分読むの控えた方がいいような気もする、二次創作的にどうなのかという作品でもありますが…。


伝説の勇者を否定する伝説

 ・・・この孤児院には、死が溢れていた。

 

「もしも・・・もしも死なないで大人になれたら、私と結婚してくれる・・・?」

 

 亜麻色の髪を持った、おっとりした顔つきの少女が泣きながら言った。

 それに対して少年は、やる気どころか生気すらも感じさせられない、死んだ魚のように濁った瞳を、片目だけ覗かせたまま少女の濡れた瞳を黙って見返す。

 

「もしも死なないで大人になれたら・・・」

 

 少女は返事のない少年に、もう一度だけ同じ言葉を口にする。

 ――そんなことはありえないと思いながら。

 

「生き残れたら・・・私と・・・」

 

 ――死ぬのだ。自分も。少年も。ここにいる者たちは一人残らず全員が。

 ここでは、この孤児院では死が溢れている。本当に死が溢れる。こんな小さな子供たちにも分かるほど、この世界には死が至る所に溢れている・・・。

 

「生き残れたら・・・私と・・・・・・」

 

 不可能を承知で、少女自身が自分の言葉を否定しながら、必死の思いで想いだけでも口にして・・・別れの時の大切な思い出として記憶に残そうとした最後の言葉。

 

「時間だ。泣くのはここで終わりにしろ」

 

 しかし言葉はそこで遮られる。

 少女の肩に、突然現れた黒いスーツを身にまとった初老の男が手をかけて掴み、引き寄せて、有無を言わせぬ口調で言い聞かせる。

 

「お前にはもう、弱さという感情は必要ない。弱ければ死ぬ、それだけだ」

 

 そう。弱ければ死ぬ。分かっている。

 ――そういう場所に、自分はこれから連れて行かれる・・・。

 

「・・・・・・はい」

 

 少女は一瞬だけ怯えた表情を見せてから、やがて頷いた。

 ――そして顔を凍り付かせる。

 

「いくぞ」

 

 もう自分は、笑うことはないかもしれない。そう思って男に促されて歩き出す。

 ・・・そして最後に、もう一度だけ返事をくれない、答えをくれない少年の顔をのぞき込んでから――自分に与えられた新たな道を歩き出そうと心決めて。

 

 自分にとっては、なんの意味もない道を・・・目標もなく、夢もなく、希望もない。

 ただ、この男の人形として生きている価値のない操り人形としての人生を、最初に歩み出す第一歩目を、少年の無気力な顔を一目見てから始めようとして――その瞬間。

 

「おい」

 

 ――声がかかった。

 やはり覇気のかける、いつも通りやる気がない、・・・そして、“いつも以上に苛立っている”声と口調で、少年の声は言ってくる。

 

「弱ければ死ぬのがこの国なら、テメェが一番先に死んでんだろうがよ。嘘吐いてんじゃねぇよ。無能バカ貴族ジジィ」

「・・・なっ!?」

 

 だが、少年の声は少女ではなく、少女の手を引く男の方に向けられたものだった。

 いつも以上に限りなく苛立っていて、バカをバカと罵り、クズをクズと罵倒する。

 いつも通り、何がそんなにムカついているのか気にくわないのか、他人には全く分からないほど苛立ちまくった口調と感情を、少女の手を引く男に“だけ”向けて、少女を見続けている瞳はいつも通り面倒くさそうで覇気のない、仕事嫌いな中年のような瞳を向けたままで、貴族の男だけを馬鹿にする。馬鹿にしまくる。

 

「き、貴様! この私を愚弄するとは! それがどれだけ重い罪か分かって言って――」

「あん? だったら何だ、殺すか? 言っとくが、そこの草むらに隠してる魔法騎士二人と、背後に回って魔法唱え始めた一人程度をかからせたところで俺を殺れるだけで、お前は死ぬぞ?

 絶対に殺す。俺が死んでも殺す。殺されても殺す。ここから生きて帰れるとか思い上がるなよ雑魚ジジィ。絶対にだ」

「う・・・ぐ・・・・・・っ」

 

 少年の声に隠しようもない、隠す気も一切ない剥き出しの殺気が混じりだしたことで、素人でしかない男の勢いが目に見えて弱まる。・・・あるいは伏せていた伏兵をアッサリと看破されていたことが余程予想外だったのやもしれない。

 狼狽えたように語気を弱め、言うべき言葉を探して視線をさまよわせ―――ふと、相手の片目が初めて自分を射貫いていた事実を知る。知らされる。

 

「――オ貴族サマの養子に迎えられる以上、痛めつけるな泣かせるな・・・とまでは無茶降りする気は端から塵ほども期待しちゃいねぇからいいんだが・・・・・・」

 

 少年は今度は男の目を見ながら、男に向けた言葉を発しながら。

 その言葉は限りなく、男に対して思うところは微塵もなく――ただ少女のことだけを思いやった“要求”と“命令”だけに満ち満ちていた。

 

「だが、絶対に殺すな。死なせるな。テメェが死んでも、コイツは絶対に死なせるな。守り抜け」

「な、なぜ私がそのようなこと――」

「できなきゃ俺がテメェを殺す。絶対に殺す。この国の魔法騎士団全部敵に回して八つ裂きにされて殺されても、テメェだけは絶対に殺す。道連れにしてやる。絶対にだ。約束してやるよ」

「ぐ・・・うぅ・・・・・・」

 

 狂眼で睨み付けられて、男は明らかに怯んでいた。

 相手の常軌を逸した要求と、この国の常識を超越しすぎた平民らしからぬ無礼な態度と――そして何より、伏せてある護衛共が主の危機に一切姿を争うとしない異常事態を前にして、男は完全に冷静さを保ち得なくなっていた。

 

 常であれば、貴族に対して無礼を働いた瞬間には相手を背後から現れて取り押さえて腕をねじ上げ、骨を折っているはずの魔法騎士たちが先ほどから送っている合図にも気づかずに沈黙を守り続けている異常すぎる状況。

 

 素人である彼には知るよしもなかったが、魔法騎士たちは少年が自分たちにこそ狙いを定め、動き出した瞬間に殺すつもりで用意を済ませていることを把握していたが故に動けなくされてしまっていたのだ。

 

 その当事者たちにとっては必然の事実である危機にすら気づけぬ、弱すぎる癖して今も生き続けている「嘘つき貴族」の男に対して少年は。

 『嘘吐きには言葉だけ言っても無駄だから』という常識に則って、当たり前のように“約束”をする。

 

「そいつを殺したらお前を殺す。死んでも殺す。事故で死んでもお前が殺したと、俺が決めてお前を殺す。間違ってても殺す。正しくなくても殺す。ああ、絶対だ。約束してやる」

「そ、そんな理不尽な要求が――」

 

 飲めるか!と、男が拒絶の叫ぼうとした瞬間。・・・果たして彼の心は、相手の中にナニを見ることができただろうか・・・?

 

 

「――アホウ。この国で人殺し殺すのに、証拠なんざ必要だったこと一度もあったことねぇだろうがよ・・・」

 

 

 それだけ言って、少年は男に背を向けて、自分が元いた孤児院の中へと歩み去って行く。

 冷たく、空虚で、なに言ってもやっても“無駄な生き物だと解りきってる連中”に、これ以上語って聞かせる無駄な徒労はしたくないとでも言うかのごとく・・・。

 

「~~~っ行くぞ!」

 

 男が少女の手を先ほどよりも強く引き寄せて――だが、体に触れた瞬間に「ビクン」と震え、反射的に握る力に強弱の差が揺れるのを感じて、少女は先ほど少年がしてくれた意味の気づき、

 

「あ、あのっ!」

 

 と、何か一言だけでも伝えようと振り向いたときには時すでに遅く、相手の姿は閉じようとしていた扉の向こう側に、忌々しそうな園長先生たちの表情とともに消えようとする最後の残光しか残ってなくて。

 一時だけ手を上げながら、一方的に聞こえてきたのは、只一言のみの――別離の言葉。

 

「―――またな」

 

 たったそれだけ。その一言だけで少女の顔に感情を戻してくれる、再会の時まで過ごす別れの言葉。

 

「・・・・・・うん! また、今度ねっ」

 

 少女は大きくうなずいて歩き出す。新たに与えられた自分の道を。

 もう、何の意味もないとは思えなくなった道を。目標ができた道を。希望に満ちた道を。

 遠く幼い日の約束を果たすために、この男の操り人形として生きていく、自分にとって大事な大事な約束を守るための人生を・・・・・・少女は新たに歩き始めることができたのだから・・・。

 

 

 

 ――だが、現実は過酷だ。少女の心は救われても、それ以外の誰も救われてなんかいない。

 死の満ちた孤児院は、相変わらず死が満ち続けて・・・・・・そこに残った少年もまた死に満ちた人生しか送ることを許されないままに・・・。

 

 

「・・・この化け物め! 余計なことを喋りおって! わかるか? 貴様の勝手なこうどうのせいで、先ほどの方から我らが後程どのようなお叱りを受けることになると思って――」

「・・・・・・・・・ウザイ・・・・・・」

「それもこれも全て貴様のせい―――なに? 今なんと言っ――」

「うざ~~~い・・・・・・」

 

 

 死んだ魚のように生気のない目で相手を見つめ、生者と死者をいちいち分けるのも面倒くさいと言いたげなほど、怠惰で怠惰でどうしようもない程やる気がなくて・・・・・・

 

 

「そんなにムカつくなら、殺せば~? 俺もテメェら全員殺したくて仕方ねぇし丁度よくね? 鬱陶しいじゃん? 生きてるだけでムカつく生きモンが目の前でグダグダ人間のフリして喋ってんの見ると超うざくね? 

 ホラ、サッサと殺しに来いよ。殺してやるからさァ。

 テメェら普通の人間ごときが、俺みたいなアルファ・スティグマ保持者のバケモンと殺し合いで一方的に殺せるとか思い上がってんだったら殺しちまえよ! なぁ? なぁっ? なぁッ!?」

 

 

 そして、少女の去って行ったこの日もまた、少年の日常は死に満ちて終わる。

 死んだ死体が生きてるときには誰だったかなんて、面倒くさがり屋の彼には調べようという気にすらならない、意欲もわかない。彼にとっての当たり前すぎる死に満ちあふれた平凡な日常。

 

 

 【ローランドの黒き死神】の伝説は、彼と彼女の出会いよりも、ローランド帝国王立軍事特殊学院生徒の少年【ラグナ・ミュート】の名を誰かが知るよりずっと前に・・・すでに始まってしまっていた【死に彩られた幼き死神の伝説】だったから―――

 

 

 

 

 

 

 

 迫り来る鉄拳。

 それをボーッとしていると言うより、寝不足でぶっ倒れる寸前みたいなクマだらけの眼で眺めながら。

 

 ラグナ・ミュートはこんなことを考えていた。と言うか、呟いていた。

 

「ダリぃ・・・・・・眠い・・・・・・運動マジ面倒くせぇ・・・・・・」

 

 全く整えられていないボサボサの髪、やる気も覇気も全くなく、オマケに健康的ですらない慢性的な寝不足を煩っているであろうことが一目瞭然な大きすぎるクマをこさえた死んだ魚のように腐った瞳。

 猫背気味な中肉中背よりかは痩せ気味の体からは、覇気よりも吐き気の方を催してきてるようにも見えて、晴天の下で運動する姿が全く似つかわしくない事この上ない。

 

 それどころか、この目前まで鉄拳が迫ってくると言う緊迫した状況にもかかわらず、

 

「はぁ・・・・・・この国滅ぼせば寝れねぇもんかな・・・・・・」

 

 なんて不敬罪で死刑にされかねない言葉を、よそ見しながら拳なんかから目をそらして言ってくるだから、こんな拳打くらい避けることなど容易いのだろう。

 そう。それだけの実力を彼は持って・・・・・・

 

 ドコ!

 

「・・・わ~・・・やーらーれーたー・・・・・・・・・はぁ、かったり・・・」

 

 と、直後に当たった拳で殴り飛ばされて吹っ飛ばされながら、面倒くさそうな言葉をまだ吐き続けて、地面に転がり落ちた後も死んだフリすることさえ面倒くさがり。

 

「あぁ~と、たしか・・・・・・俺はすでに死んでいる・・・・・・って事にしとけ。メンドくせぇ・・・」

 

 などと言うだけで、痙攣して見せたり転がる手間すら惜しんで来やがる。

 ・・・あらためて言い直そう。

 それだけの実力を彼が持っているのか否か、これでは全くわかりようがない。

 

 ラグナたちが今いる場所は、ローランド帝国王立軍事特殊学院の演習場。今は実践組の時間で、生徒全員での戦闘実習をしている最中なのだが。

 

 ・・・そんな中で一人の生徒だけが、全然実力を出していないの丸分かりだわ、本当は全然攻撃が効いてないのも一目瞭然だわ、やる気ねぇ奴がダリィから本気出してないだけなの見え見えな状況って、採点する側にとってマジうぜぇ存在にしかなれない。

 本気でやる気ねぇんだったら出て行ってくれねぇかなコイツ・・・と思われるのが普通のレベルでやる気ゼロ過ぎる。・・・ただし、ここが本来の学校ならばの話だが。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ」

 

 ラグナを殴り飛ばした生徒が、溜息を吐きながら、右手をブラブラ振りながら言ってくる。

 

「だぁからラグナってば、なんでいっつもそんなにやる気ないわけ? 本当はもっと出来るんだから、ちゃんとやりなさいよね本当に!!」

 

 赤毛のショートカットで、勝ち気そうな赤い瞳。ラグナとは対照的にやる気に満ち満ちていて、しかも真面目な委員長タイプで先生からの受けも良さそうな少女キファ・ノールズは、倒れたまま立ち上がろうとする気配のない相方のラグナをビシッと指さし。

 

「って言うかアンタ! 気絶したフリするか起き上がるか、せめてどっちかがぐらいは徹底しなさいよね! あんな中途半端にわざとらしく死んだフリしようとして途中でやめる奴なんて人間には実在しないでしょーが!?」

 

 それに対してラグナは、やはり相変わらずやる気のない面倒くさそうな声音で返事をし、

 

「ここにいるじゃ・・・・・・はぁ・・・。ガキくさい平凡ツッコミ面倒くせぇ・・・・・・」

「言い訳すら徹底しないの!? って言うか、そこまで言ってんだったら最後の『ん』まで言い終えなさいよ、せめて! それなら僅かでもやりきった評価でアンタの場合は加点されちゃうレベルなんだから、それぐらいやってよね! こんなんじゃ私の成績まで落ちちゃうでしょ!?

 もう、じゃあ続けるわよ? いい? 魔法うつわよ? いくよ? いいの?」

「別にいいんじゃね? 撃っても。どーせ効かねぇ無駄うちなんだし、好きにしとけば?」

「魔法うつ前から攻撃側のやる気まで奪うなー!?」

 

 などなどかけ声をかけ合ってから、撃って良いと許可された攻撃魔法を放つことの、どこがどう実践組み手なのか全くわからないが、とにかくキーファは空中に手を踊らせ始めて魔法陣を描き出す。

 

 それを見るとはなしに、ボンヤリと“暇つぶし”に見ていただけのラグナが、ボサボサの前髪に隠れていない片目だけで魔法陣の構成を寝転がったまま見上げながら。

 

「《求めるは雷鳴の魔法》ねぇ・・・・・・急所に当てさせて受け身もとらなけりゃ、ギリ気絶して寝れるぐらいの威力はある・・・・・・のか? 期待薄っぽいなぁ・・・・・・」

 

 と魔法の成績が比較的よい優等生のキファからすれば侮辱以外の何物でもない酷評を呟いたままの姿で、

 

「求めるは雷鳴〉〉・稲光」

 

 キファが完成させた魔法陣の中央から光源が生まれ、それがラグナへと放たれて―――直撃する。

 

 ドゴォォッン!!

 

「ちょっ!? ちょっとーっ!? なんで避けないのよアンター!?」

 

 むしろ当てた側のキファの方が慌てふためき、受け身も防御も回避もすることなく、本気で撃って良いと言ったときの姿勢のままで魔法の直撃を当たってしまうとは想像もしていなかったため、彼の安否を気遣って怪我人の側へ寄ろうとして、それで――!

 

「・・・・・・はぁ・・・やっぱダメだったな。威力が低すぎると睡眠導入剤にもなりゃしねぇ・・・」

「死ねッ!! クズ!!」

 

 バキン!と。キファは、人の気持ちというものを一切全く考えていないとしか思いようのないクズなクラスメイト男子の頭を思い切り殴りつけてグラウンドに沈めて、“先ほどと同じく”殴った右手の痛みに手をブラブラと揺さぶって気を紛らわし、少しだけ痛みで涙目になりながら恨みがましそうな瞳で、気になる相方の少年が・・・・・・実力を全く出そうとしない理由を尋ねずにはいられない。

 

「い痛つつ・・・・・・って言うかさぁ、なんでアンタはそこまでして授業に参加するだけで真面目にやりたがらないわけ?」

「昨日は眠てねぇから眠ぃんだよ・・・」

「あんたいっつも寝れてないでしょーが! 昨日も! 一昨日も! 一昨昨日も! むしろアンタが熟睡できたなんて話は一度も聞いたことないんだけど!? 見え見えの嘘吐いてないで本当のこと教えなさいよ!」

「クソみてぇな授業ゴッコに眠いの我慢して参加させられてるから面倒くさすぎて、やる気0以下なんだよ・・・」

「正直すぎるわ! 隠せッ!!」

 

 再びの鉄拳制裁。・・・そしてまた痛めるキファの右手のみ・・・。

 そんな、ある種の夫婦漫才としか言いようがない会話を続ける二人の周りでは、失笑や嘲笑、悪意ある罵声が漏れ聞こえてくる。

 

「普通あんな手加減された魔法くらうか~?」

「困るんだよなぁ~。弱い奴にこの学園にいられたら、俺たちの価値まで下がるじゃないか」

「もういっそラグナなんて、今の攻撃で死んじまえばよかったのにな」

 

 そんな言葉が演習場に溢れかえっていく。

 悪意ある、それらの善い心なき言葉の数々。・・・だがそこに隠しようもない嫉妬とひがみによる負の情念が込められてしまうことを発言者たちは誰も皆が理解していた。思い知らされていた。

 

 魔法の成績で上位に入るキファからの雷撃をくらって、かすり傷一つ負うこともなく、平然と大したことのない攻撃だったと嘯けるラグナの姿からは、彼らの目には強者の余裕としか映りようがなく。

 やる気がないから実力を出さないだけで本気さえ出せば自分たちなど簡単に倒せると内心で見下しきっているようにしか、彼らの劣等感に満たされて反動としての優越心を持つ心には感じようもない。

 

 ・・・だが、それは仕方のないことだった。この学園においては、どーしても生徒たちは“そういう眼”でしか他人のことを見ることがどう足掻いてもできない。出来そうもない生まれだからだ。

 

 ここローランド帝国王立軍事特殊学院は、貴族たちが通う普通の士官学校とは性質が異なり、国の異端者ばかりが集められているような場所だった。

 ある者は孤児、ある者はA級犯罪者の子供・・・・・・社会に居場所がない、仕事も食べ物すら与えてもらえない、そんな頼るものがなにもない者たちだけが、この場所へ集められて放り込まれる。

 

 彼らに求められているのは、戦争の道具としての能力だけ。貴族や普通の国民たちが前線になるべく出なくて済むよう、戦闘兵器としてのみ彼らは育ててもらえる権利を有する。・・・そのはずだ。

 

 にも関わらず、成績的には落ちこぼれで、国家にも教官にも無礼な口を叩きまくり、一体何度死刑になるかわからないような暴言を日常的に吐きまくっておきながら、退学にもならず死刑にもならず口封じもされず、ノウノウと減らず口を叩きまくりながら現在進行形で今も生き続けているラグナには、軍に自分を高く売り込むためだけに日々能力を磨いている他の生徒たちから激しい憎悪と、同じくらいに歪な嫉妬が入り交じり合った複雑な感情を抱かざるを得なくなってしまう。

 

 碌な努力もしてないにもかかわらず、本気さえ出せば自分たち以上の力が出せて、それを実績で持って証明してきている、テストの成績上では劣等生の『テストを真面目に受けたことのない同級生の少年』は、自分たちの努力と存在意義を否定されているような気分にさせられてしまって本当にイライラさせられて仕方がないのだ。

 

 まぁ、それはともかく。

 

「もう! ラグナは悔しくないの? あんな風に言われてコンチクショー!とか、そんな風に思って見返すために努力してやろうとか、そういう気持ちになることできないの?」

 

 聞こえよがしな陰口の応酬を聞かされて、キファがさらにラグナに対して説教してくる。

 彼女は、こういうことが嫌いな性格の持ち主だからだ。眉をつり上げ、怒りを露わにして、悪口言ってる奴らを力で黙らせるのではなく成果によって間違いを認めさせてやろうと躍起になる。

 

「いや、お前・・・・・・悔しくないか、って言われてもな・・・・・・」

 

 しかしラグナは、キファの言葉で余計にやる気を奪われたような表情になると、一応は気遣いに感謝して立ち上がるだけは立ち上がってやりながら、

 

「悔しがってんのは、いちいち俺に突っかかってくるだけで、口で言う以上のことはなんも出来ない、奴さん達の方が上なように見えるんだが?」

「う、ぐ・・・それは・・・・・・相変わらず変なところだけ鋭いわね・・・」

 

 思わず口をつぐんで、口調の勢い衰えさせながらキファ・ノールズは咄嗟に言葉を探して視線を何処かへとさまよわせる。

 

 これもラグナが、この学院において爪弾き者にされている理由の一つだった。

 いつも明るくて容姿もそこそこ整っている、隠れファンが多い優しいキファと、ハタから見ると恋人同士に見えなくもない会話を日常的に交わしているラグナには、モテない男どもの男子生徒達からやっかみ混じりの八つ当たりが批判へと直結することが多いのだ。

 

 また、彼が普段から時折見せてくる鋭くて正しい観察眼は、多くの生徒達にとって意外な盲点と痛いところを突いてくるところが多分に有り、自分たちより格下でダントツ落ちこぼれだと見下しきっていた相手から初歩的な間違いや見当違いを冷静に指摘された側としては不快さを募らせないではいられない。そういう不条理な感情的理由も彼への非難を強める結果につながってしまい。

 

「ラグナ消えろ! 邪魔だ!」

「弱いくせに、この学園にいるんじゃねぇ!?」

 

 などなど彼の周りには、罵詈雑言の嵐が吹き荒れまくる毎日となってしまっている日常となっていた。

 

「・・・ふぁ~あ・・・・・・眠ぃ・・・・・・ダリィ・・・マジ熟睡してぇ・・・・・・」

 

 ・・・尤も、非難する側が本気で悪意込めて罵声浴びせまくっている相手から、欠伸しながら本気でどーでも良さそうな口調で、こんなセリフを呟かれてたら理由などなくても爪弾き者になるのが妥当な扱いなのだろうけれども。

 

 と、そんな自業自得の状況を本人が一番どーとも思っていない歪な状況が形成されてしまったときのこと。

 

 ――ふと、澄み渡ってよく通る声が、突然彼らの非難と罵声を強制的に打ち切った。

 

「君たちはラグナのことを馬鹿にする前に、自分たちをもっと鍛えた方がいいんじゃないのかな?」

 

 現れたのは、艶やかな銀色の長い髪を後ろにくくり、意志の強そうな瞳に均整のとれた容姿を持つ、ラグナたちと同じ年齢とは思えないほどの風格と優美さを備えた貴公子然とした一人の若者だった。

 

 彼の名は、シオン・アスタール。

 全ての科目で成績トップを誇り、学院内でもすでに中心人物と化している青年でもあり、彼に心酔する生徒たちを集めた一つのグループを作ってしまえるほどカリスマ性に溢れたリーダーとしての資質まで持ち合わせている。

 

 しかし、彼を説明するにおいて、そんな些事などどうでもよい。

 彼を語る上で一番重要なのは、シオンが貴族の出だということだけだ。

 

 貴族――この学院から、もっとも遠い位置にいるはずの存在。

 そんな雲の上の地位にいるはずのシオンが、なぜこの様な場所にいるのか・・・? その謎が様々な噂を呼び、彼の神秘性をいや増させる結果へと繋がっていく。そんな人物。

 

『し、シオンさん・・・』

「君たちも暇そうだな。なんなら僕が相手になるよ? まだ授業は終わってないみたいだからね」

『え!? あ、いや、シオンさんと組み手なんてとてもとても!! なぁ!?』

 

 そんな若くして小さな伝説の主となってしまった学園の王子様から直々に声をかけられて、勝負まで挑まれてしまった筋肉が取り得そうな同級生たち三人組は慌てふためきながら何とか組み手を辞退しようと、チラリチラリと採点係の教官の方と周囲の生徒達へすがる視線を交互に向けながら意味のない言葉を発し続けるだけのマシーンと化すしかない。

 

『あ、ああ! そうだよそう! 俺たちはラグナが気にくわないだけで、あんたとやり合いたいとは少しも思わないよ! ああ、本当に!! 絶対にだ!』

「そうなのかい? ・・・・・・だが――」

 

 相手達の謙遜を装った言い訳を聞くだけ聞いてやってから、シオンは笑顔を浮かべたまま視線だけ少し動かして、

 

「でも、いいのかい? 今ちょうど僕たちの方を教官が見てるぞ? いま僕との組み手を放棄したら、君たちは敵前逃亡する可能性がある人材と見なされて減点されるかもしれないが・・・・・・それでも良いというなら、別に僕はかまわないよ。どうぞ君たちのご自由に」

『う・・・・・・』

 

 相手に言われて三人組は、一様にうめき声を上げる。

 ある意味それは当然の反応だったのだろう。この学院にいる以上は、少しでも高値で軍に引き取ってもらえるよう成績を上げるために皆、必死で頑張っているのだ。

 ここで勝ち目のない格上の相手と戦って、敗北したという結果だを成績表に記されてしまうのは彼らの人生設計にとって何の得にもならない損だけする意味のない行為としか映りようがないのだから・・・・・・。

 

 ――が、しかし。

 立場が変われば品も変わり、見るべき視点も変化する。

 彼らが持つ『仕方のない当然の事情』も、別の人間から見れば別の光景となって見えてしまうのも、また仕方のない事情の一つではあるのだから――

 

「へっ・・・・・・とんだ茶番劇だな。楽に勝てると踏んでた相手にはデカく出れても、自分より強いヤツと権力にはへりくだって尻尾を振りたがる・・・。ザコやられ役の小悪党にいそうな定番じゃねぇか。

 なんだって、テメェらみてぇに楽して勝ちたいだけのザコ野郎どもが、この学院にいたがるんだぁ? 死ねよ、バ~カ」

『――ッ!! ラグナ! てめぇッ!!』

 

 せせら笑いと共に放たれた挑発の言葉に激高し、シオンには勝てそうもないと踏んでいた三人の筋肉ダルマ達は、半分近くは演技だったものの怒り狂ってラグナへと矛先を変え、三人がかりで襲いかかろうとしたのだが

 

「ほう? 敵を前にして今度は無防備な背中をさらすのか・・・これは敵の挑発に乗せられて罠にはめられやすい人材と見なされても仕方のない状況だね」

『う!? ぐ、ぐぅ・・・・・・っ』

 

 再びシオンの言葉でうめき声を上げさせられ、進退窮まったように周囲を見渡し目をそらされて無視されて、

 

「それとも君たちは僕に、奇襲攻撃の成功確率を高めさせてくれるため自らは犠牲になってくれるつもりだったのかな?

 それはそれで僕としてはありがたいけど、心苦しくもあるね。出来れば君たちにも勝利して成績を上げるのに貢献できる対等な立場で同級生とは付き合いたいんだ。

 ・・・・・・で、どうする?」

『く、くそ! やるか!』

 

 ここまで言われても尚、三人組は迷っている風だったが、ようやく意を決して覚悟を決めたらしい。

 シオンはさらに笑みを深くして、

 

「そうこなくっちゃね。三人同時にかかって来いよ?」

 

 と、挑発じみた宣言を放って距離を置くと三人組は、二人が手を動かして空中に魔法陣を描きはじめて、残り一人がシオンに向かって突進していく。・・・・・・戦闘が始まった。

 

「うん。なかなか上策な戦法ね」

 

 戦い始めるため、互いの準備を終えたシオンと三人組とを交互に見比べたキファが、ラグナの隣に立ちながらしたり顔で解説っぽいことを教えてくれる。

 

「一人が牽制して、二人が魔法でとどめを刺す。奇抜さはない戦法だけど、そのぶん癖がなくて目立った弱点もない。王道的な戦い方ね」

「・・・・・・どこが?」

 

 戦略理論で上位の成績を取っている優等生として、キファはラグナに『こういう戦法をとってきた敵をどう攻略するか?』という答えの参考として、シオンの戦いをよく見ておくようにと言おうとしていた矢先のところで、またも冷や水の指摘が入る。

 

 座り込んで胡座かいていたラグナが、片足だけ立てて膝立ちにして、肘を膝に乗せて顎を乗っけて寛ぎながら、キファの評価に全然ダメという意味での落第点を押しつけてこられる。

 

「・・・なによ!? ラグナのために解説してあげようとしてたのに! 私の評価のどこに疑問が入る余地があったって言うのよ!?」

「見てりゃわかる。黙ってみてりゃ、答えはすぐ教えてもらえるだろうよ・・・」

 

 だが、相手からは面倒くさそうな声音で返事が返ってくるだけ。視線すら向けてこようとしてきゃしない。

 憤懣やるかたない思いを抱えながら、仕方なくキファは言われたとおりにシオンと三人組との戦いの方へと視線を戻し・・・・・・そして、相手の言った答えこそが正しかったのだという事実を思い知らされることになる。

 

 

 ――シオンの勝利は圧倒的だった。まるで勝負にならないほどに。

 まず彼は、自分に向かって突進してきた一人目を躱して、首筋に蹴りを叩き込み。

 気絶した一人目をそのままに、二人目の魔法陣を描いていた男の方へと急速接近して距離を詰め、顔面に拳を入れて殴り飛ばして気絶させ。

 仲間二人がやられている隙に魔法を完成させていた男が、魔法を放とうとした瞬間に足下の砂を蹴り上げて視力を奪い、最後の男も腕をひねりあげてから投げ飛ばし、あっさりと勝負はついてしまった。

 

 

「・・・自分たちより格上相手するのに、順当でオーソドックスな教科書通りの戦法使っちまったら、順当通りに負け確定するだけに決まってんだろ。

 真性のバカだったのか? あの筋肉バカどもは・・・」

「・・・・・・」

 

 ラグナの口悪すぎる暴言的評価に対して、キファは返す言葉が思いつけない。

 言い方は悪すぎるが、言ってる内容は非常に正しくて、むしろ自分はどうしてそこに気づかなかったのかと疑問に思わざるを得なくなってしまうほど・・・・・・当たり前すぎる勝敗の結果そのもの。

 

 シオンは確かに強かった。強すぎた。

 一般生徒が学ぶには参考にならないほど、実力の差がありすぎた程に。

 

 そして、それと同じぐらいには――相手の三人組は弱かった。弱すぎた。シオンの戦い方を学ぶために比較対象となってもらうのは無理すぎるほどザコ過ぎた。

 

 像が犬を弾き飛ばしただけの結果なら、狩りにならない。狩りにならなければ、狩りのやり方は学びようがない。

 当たり前すぎる勝利を、流れ作業で手にしただけの結果では、シオンの凄ささえも正確には読み取ることが出来なくて、『スゴい』と言うことしかわからない。

 

 これは確かに・・・・・・どこが何の役に立つのか全くわからない戦闘モドキを見物させられてしまった、ただそれだけの茶番劇でしかなかった・・・・・・。

 

「え~と・・・ラグナ? ちょっとその・・・さっきはゴメ――」

 

 少し気まずそうな表情と口調でキファが、先ほど怒りかけてしまった自分の先走りを謝ろうとした時。

 タイミング悪く鐘が鳴らされ、今日の授業が終わったことを学院生徒たち全員に知らせてくれる。

 

 思わず肩を落としてしまったキファの気落ちした姿とは裏腹に、演習場にいた他の生徒たちからは歓声が上がり、嬉しそうに雑談しながら皆それぞれの部屋へと一人ずつ戻り初めて行ってしまう。

 

「・・・眠ぃ・・・・・・あと、ダリィ・・・・・・マジ眠くて超ダリィ・・・・・・」

「って、あんたは最後までそれかいっ!!」

 

 パシン!と、最後に一発思い切り相手の頭を平手ではたいてやって、痛い思いをして手のひら真っ赤に染めさせてから、色々な思いで赤くなった表情に涙目をたたえながら非難がましい視線で相方を見つめて、非難がましく非難することしか彼女にはできない。

 

「アンタねぇ・・・いい加減もうちょっとだけでも真面目にやらないと、この学校追い出されちゃっても知らないわよ?」

「あ~・・・・・・そりゃねぇだろ。オレは優秀らしいからな・・・・・・」

「・・・アンタがこれで優秀だったら、きっと私は女神様にでもなれるほど評価されてる気がするわ・・・・・・」

 

 そんな身の程知らずなバカ発言を、死んだ魚の目で空見上げながら「眠ぃ、眠ぃ」とか言いながら言われても説得力など微塵も感じられるはずもなく、キファは適当な言葉で聞き流してやったのだが。

 

「――って言うか、今のオレが出て行かなきゃならねぇんだったら、とっくの昔に出て行かされるだろうよ。この世からな」

「―――っ!!!」

 

 その直後に呟かれた相手の言葉に意表を突かれ、思わず相手の横顔を厳しい顔して直視して。

 何か言おうとして、何も言えなくて・・・それでも何か言わなくちゃいけないような気にどーしてもなってしまって口を開こうとした、まさにその時。

 

「あはは。二人の夢は大きいなぁ・・・じゃあキファが女神様になった暁には、願わくば僕のことも幸せにしてくれるかな?」

「え? あ、シオン・・・・・・じゃなくて、アスタールさん!?」

 

 そう言って、朗らかに笑いかけてきてくれるシオン・アスタール。

 学院最強で場違いな貴族出のお坊ちゃまなはずの青年が、いつの間にか二人の側に立っていて、座り込んで話していた二人のうちキファだけが慌てて立ち上がり。

 

 もう一人は・・・・・・最初っからシオンがいつの間にか側に立って自分たちを見下ろしていた場所を見上げた姿勢のままでピクリとも動こうとせず――ただ一言。

 

 

「・・・・・・ウザったそうなヤツが来やがった・・・・・・」

 

 

 とだけ呟き捨てて、相手のウザったくなりそうな運命に自分が巻き込まれるであろう未来を、なんとなく予測して面倒くささに吐息する。

 

 どこまで行ってもラグナにとっての人付き合いは、イラつかされて面倒くさくて・・・・・・そして、避けるための努力するのはもっと面倒くさくなるからイヤすぎる代物のこと。

 

 只それだけが、彼が運命に妥協できる理由の全てだったから・・・・・・。

 

 

 

 

『キャラ紹介』

【ラグナ・ミュート】

 今作での主人公にして、原作でのライナの立場をなす少年から青年に成長する主人公。

 コミュ障で、慢性的な不眠症を患っていて常に寝不足。この作品だと主人公がいつも眠いのは、いつも眠れてないからという設定に置き換えられている。

 

 『やる気』はないけど、『殺る気』だったら満ち満ちているタイプの少年で、常に不機嫌であり、いつもイラついており、もはや完全に病気のレベルに達して久しい。

 ライナと同じく『複写眼(アルファ・スティグマ)』保持者の一人だが、力に対する嫌悪感も罪悪感も劣等感も一切なく、力の行使も躊躇わず、戦闘に身を起き続けてきたため魔術師でありながらフェリスとほぼ互角の戦闘能力を現時点で持っている。・・・もっとも、ルシル相手には到底勝てない程度の強さだが。

 

(逆説的に、ライナも“やる気”を出していれば同じになれてた可能性を意味しており、彼の力が危険な方向に用いられてしまっていた場合の『悪いライナ』を体現させてみた感覚。

 『悪』ではなく『悪い』ため敵にはならないが・・・)

 

 口が悪く、目つきも悪く、性格も決して良くはなく、人間嫌い。

 だったら動物や植物が好きかと聞かれたら、どっちも嫌い。とにかくムカつく奴らは全部嫌い。その分ランキング別けして対応を変えてはいる。

 

 医者にかかった方がいい状態になって結構経つのだけど、ローランド帝国内に貧民用の良い病院は一件もないため症状が良くなる宛ても一切ない。

 長引く戦争がもたらした社会の歪みが生んでしまった因果応報の被害者・・・・・・と綺麗に言えなくもないけど、コイツの場合は先天的な人格面での欠陥だろう。間違いなく絶対に。

 

 ムカつく奴らは殺して解決したいと思いながらも、殺して解決する方法だと後になって面倒くさくなるから我慢して、殺したいのを我慢しなきゃならないから余計にムカつく!

 ・・・という負の連鎖の悪循環。本当に・・・どうしようもない・・・。

 って言うかマジで病院に行った方がいいと思う、本当に・・・。

  

 

 

【フェリス・エリス】

 今話では登場してないけど、今作でもヒロイン役は彼女しかいないだろう。普通に考えて。

 性格的理由からラグナとの相性は最低最悪であり、皮肉の言い合い、嫌味の言い合い、罵倒の言い合い、ガン付けあって、挑発し合った末に毎度のようにガチンコバトルへと発展してしまう日常を送る冒険譚になってしまう仲悪過ぎな美少女ヒロインと主人公の少年。

 

 ただしラグナはライナよりも強いせいで勝率は五分五分であり、フェリスが勝つこともあれば負けることもあり、決着はなかなかついてくれず、互いが言い合いになる理由の大きな一つにもなっている。

 

 対等で平等な力関係が、必ずしも平和的で争いのない世界を意味するものではないという一例であり、ムカつく他人が自分と完全に互角で対等であっても嬉しいことはあんまりないという実例でもある。

 

 

 

 

――綺麗事クソ食らえな感情論ファンタジーであり、理屈よりも感情を優先して弱者の側には立ってくれるけど、民衆が望むような自己犠牲バンザイ英雄崇拝など都合が良いだけで願望の具現だ。

 英雄主人公は好きだけど、民衆のエゴは気色悪ィにも程がある・・・・・・。

 

 そういうテーマの作品で使うこと想定してストックしてたキャラクター案のひとつを、試験的に『伝勇伝』で使ってみた次第です。・・・不快だった方はゴメンナサイ・・・。

 

 なにぶん中学生時代に作ったキャラなので、口は悪いし性格も悪い厨二キャラしか思いついてなかった世代なものですから・・・。




*書き忘れてましたが、今作で使用している主人公の見た目モデルは『機動戦士ガンダムSEED』に出てきてた『シャニ・アンドラス』を大本に使っており、中学時代に考えたキャラの性格を融合させました。

・・・見た目の方は言われるまでもないと思われるかもしれませんが、一応の説明責任として。
ちなみに作者がSEEDで一番好きなキャラクターが彼だったのが、選んだ理由っス♪

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