試作品集   作:ひきがやもとまち

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『ハイスクールHENTAI×HENTAI』書いてる途中ですけど、『ロードス島戦記』二次作を先に投稿させていただきましたー。どっちか終わらせないと集中できませんからな。
紆余曲折あって今作はこんな内容になってますけど、詳しい詳細は話の下部をどうぞ。


ロードス島戦史~ハイエルフの転生神子~

 アレクラスト大陸の南に、「ロードス」という名の島がある。

 かつて創造の女神マーファと、破壊の女神カーディスとの壮絶な死闘の果てに生まれたこの島を人々は呼ぶ、「呪われた島ロードス」と。

 

 そして今また、戦いの歴史に彩られたロードスに新たなる野望が胎動をはじめていたことを、ロードスに住む人々はまだ知らない。

 自分たちの住む島に、「呪われたとしか思えない場所」の伝説が新たに書き加えられることになる近い未来の島の歴史を今のロードスを生きる人々はまだ知らない。知る由もない。

 

 “彼女”以外には・・・・・・

 

 

 

 

「・・・ニース様、如何なされましたか?」

 

 若い神官に声をかけられ、ニースと呼ばれた黒髪の女性はどこか遠くへ赴かせていた意識と視線を、自分たちの目前にそびえるように立つ巨大な生き物へと帰還させた。

 

 “ドラゴン”と、その生き物は呼ばれていた。

 純白の鱗に包まれた巨大な獣で、最強にしてもっとも華麗な幻獣、そして魔獣でもある。

 

 氷竜ブラムドというのが、その名である。

 彼女たちは、その白龍山脈第三の主人とも言うべき偉大な存在の守る宝を我が物にしようと欲する俗物たちの群であった。

 

「ニース様、危険です!」

 

 神官の一人が、ニースが竜に向かって慎重に歩を進めはじめたのを目にした瞬間、悲鳴にも似た声を上げるが、ニースは振り返ろうとは思わない。

 

「人間の娘よ、それ以上、近寄ってはならぬ」

 

 轟くような声がした。自らに歩み寄ろうとするニースに対して、目の前の竜が発したものだ。多少くぐもってはいるが竜の鳴き声ではない、ロードス全土で使われている人間の言葉だった。

 竜はただの野獣ではなく、成長するに従って高い知性を獲得する。

 1000年の齢を重ねて古竜と呼ばれる上位種族に昇華したドラゴンは神にも匹敵する偉大な存在である。だが500年ほど前に滅んだ古代魔法王国の支配者たちは、その古竜さえ制約の呪いにより奴隷として奉仕させていたのである。

 

「あなたを呪いから解放してさしあげます」

 

 ブラムドの怒りと悲しみが胸に伝わってくるように感じたニースは、胸を張って言った。

 大地母神の信者たちから“マーファの愛娘”と呼ばれる彼女の由縁がここにある。

 

 大地母神は「自然である」ことを教義と第一とする。文明を否定しているわけではなく、人間として自然な生き方を人々に説いているのだ。 

 他人から強制されたり、束縛されたりすることは自然な生き方とは言えない。たとえ相手が人間ならぬ魔獣であっても、呪いによって束縛されているのであれば解放することが大地母神の教義に則った行動なのである。

 

「我が呪いを解く? 汝は、カストゥール王国の魔術師なのか?」

「いいえ。私は大地母神に仕える者です。古代魔法王国の住人でも、魔力を操る者でもありません。

 ですが、祈れば大地母神は奇跡を授けてくださいます。あらゆる呪いを解く、奇跡の力をです」

「神聖魔法か・・・話には聞いたことがある。だが、神の従僕たる娘よ。我が呪いを解いて何とする。カストゥール王国の秘宝が望みか?」

 

 ニースは素直にうなずいた。

 実際、彼女がここを訪れた最初の理由は金の工面だったのは事実だからである。

 

 先日、アラニアを襲った大地震で多くの者が被災し、彼女たちが仕える大地母神マーファ神殿も倒壊を免れず、被害を受けた貧しい人を救うためにも、神殿を建立しなおすためにも、ドラゴンが守っている古代魔法王国が残した莫大な財宝という名の遺産がどうしても必要となっていた。

 

「しかし、それだけが理由ではありません。生きとし生けるものは、すべて自由な存在であるのです。いかなるものであれ、呪縛を受けるべきではありません。慈悲深き大地母神マーファは、そう願っておられます」

「・・・それゆえ、我が呪いを解きたいというのか?」

「その通りです」

 

 ニースは静かに答えてうなずいた。

 大義名分として大地母神の教義を振りかざしているわけではない。話を交わし、この氷竜の聡明さを確信したのだ。ニースは本心から、この幻獣を呪縛から解放したい気持ちになっていた。

 

「私一人の力では、あなたの呪いを解くことは出来ません。そのために私は十人の神官を連れてきました。そして何より、あなたにかけられている呪いを解くには、あなた自身の協力は必要不可欠です。呪いを解くため、あなたの身体に触れなければならないからです」

「・・・呪いにあらがえと言うことか」

 

 ブラムドの言葉にニースは微笑んでうなずき、答えを返した。

 この氷竜に古代王国の魔術師たちがかけた呪いとは、彼らの残した遺産である金銀財宝を盗掘者の手から守り抜くことであり、財宝の番人として側に居続けることを強制させ、制約を破ろうとすれば神にも等しい偉大な存在エンシェント・ドラゴンでさえ耐えきれぬほどの激痛が身体を責め苛むというものだ。

 

 彼女はブラムドに対して、その痛みに耐えてほしいと言っているのである。自分が彼の鱗に触れて呪いを解くことができる可能性上の未来を信じ、必ず襲われることが確定している現実の今に味わう苦しみと痛みに耐えてくれと、そうブラムドにお願いしたのである。

 

「わたしがあなたのところまで行き着く、その間だけでいいのです。古代王国の呪いと戦ってください」

「それが、どのような苦痛か、汝は知っているのか?」

 

 ニースはゆっくりと首を横に振り、それから見上げるように相手と視線を合わせて言い切った。

 

「それでも、耐えてください」

 

 そして彼女は、小さくて大きな一歩目を踏み出した。

 

「やめるのだ、娘よ。我が呪いは解くことかなわず!」

「解けぬ呪いなどありません! どうか、私を信じてください」

 

 こうしてニースとブラムドは、それぞれに戦うべき相手との戦いを開始した。

 ブラムドは呪いがもたらす激痛に耐えるため大きく尻尾を振って、地に打ち付け咆哮し、ニースは悲しげに響くその声を聞きながら今すぐ駆け寄ってゆきたい思いを押さえつけ、精神の集中を乱さぬよう一歩一歩確実に二十歩の距離を無限に遠く感じながら進んでゆく。

 

 結果的にブラムドは呪いに屈することなく、ニースは呪いを打ち破ることに成功した。

 だが、救済による開放感は痛みと違って即効性のあるものではない。時間の経過とともに実感としてジワジワと身体全体で知覚しながら理解していく類いのものである。

 この時もまた、解かれたばかりの呪いは、痛みという名の残滓を残していた。

 

「ニース様! 危ない! 避けてください!!」

 

 最初に自分を心配して声をかけてきた若い神官の悲鳴に似た叫び声が聞こえ、ニースは反射的に身体を後ろへ反らした。

 間一髪だった。氷竜が痛みを紛らわすため、デタラメな方向に振るっていた鋭い鉤爪の行く手にたまたまニースが立ってしまっていたのである。

 

 間に合うか? 間に合わぬのか? 神のみぞ知る生と死の狭間の中で、彼女は不思議な旋律が聞こえてくる音を確かに聞いていた。

 

 それは今のロードスで使われている共通語ではない。古代魔法王国の言葉でもない。

 音楽的で不思議な音色を持ち、どこか非人間的な別の存在たちに聞かせるためにあるような不思議な祝詞。

 

 もしこの場に、神官だけでなく他のルーンマスターたち・・・特に“精霊使い”がいたとしたら、その旋律はこのような意味ある言葉として彼らの耳には理解して聞こえていたことだろう。

 

 

――ボクの召喚に応じてほしい。偉大なる風の王、エルスよ。

  風で上昇気流を起こし、あの人間の少女を助けてあげて――

 

 

 聞く者が聞けば、そういう意味を持って聞こえる音の旋律がニースの耳にたしかに届いた次の瞬間。

 ニースの周囲を柔らかな風が包み込むと、物凄い速さで彼女の身体を急上昇させていき、唸りをあげて自分へと迫り来ていたブラムドの前足と鉤爪が通過していくのを他人事のように眼下に見下ろし、唖然としながら自分の身に今起こっている不思議な現象について考えようとしていたところへ、予定していた高度まで上がってきた彼女の身体を優しく抱きかかえてくれながら、奇跡の使い手が答えとともにニースに向かって朗らかな笑顔を投げかける。

 

 

「やぁ、大丈夫だったかい?

 マーファ神殿の人から、君たちがこの場所に向かったことを教えてもらって大急ぎで手伝いに来たんだけど一足以上遅かったみたいで申し訳なかったね。

 でも、最後の最後で怪我させずに救えたみていで安心したよ。君も怪我とかしないに越したことはないでしょ? “マーファの愛娘”な司祭ニース殿」

「あなたは・・・・・・」

 

 

 ニースは、相手を見上げながら戸惑ったような声を上げる。

 相手が何者なのか、分からなかったからではない。むしろニースだからこそ知らなくても分かってしまう相手の正体が一層彼女を戸惑わせずにはいられない。

 

「あなたは・・・人間ではありませんね」

 

 そう言い切ったニースに対して、小柄な相手は笑いながら頷いて、軽く頭を振って被っていたフードをずらし、そこに隠されていた秘密の一端にして相手の正体そのものを露呈させる。

 

 ピンと尖った長い耳。人間の持つサイズにしては余りにも長すぎる其れ。

 その部位だけを見れば、相手の正体は一目瞭然だ。

 

「エルフ族・・・っ!!」

 

 ニースは小さな声で叫び声を上げて、自分を抱きかかえて地面に向かって降下していく相手の正体にさらなる疑惑と不可思議さを感じさせられざるを得なくなっていた。

 だって相手は、エルフ“などではない”存在のはずだから。女神が教えてくれている相手の正体は、その程度の枠では収まりきらない上位種族の中でも更に特別な立ち位置にいる存在であることを明確に示唆している。

 

 そう。それはまるでニース自身と同じように。

 やがて彼女が拾うことになる娘と孫娘たちと同じように。

 特別な使命を神から与えられて降臨した、選ばれし者。

 あるいは・・・・・・使命を与えた神と、もっとも親しき友たる者。

 

 

「ご名答。・・・と言っても、詳しい説明は後回しにした方が良さそうだ。君を待っている人たちが大勢いる。ボクは後でいい。今は彼女たちのために君の時間を使ってあげるべき時だとボクは思うけど、どうする?」

 

 そう言って相手が見下ろす先にあるものを自分自身でも見てみると、自分が呪いを解いたばかりの氷竜ブラムドと、自分のことを心配そうに見つめてきている十人の神官たちの姿が視界に入り、今は目の前の相手より彼らのことを優先すべき時であるとニースにも納得することができた。

 

「分かりました。では、また後ほどにでも詳しい事情をお聞かせ願いましょう」

「構わないよ。ボクもそのつもりで来た身だからね」

 

 裏表のない微笑みを浮かべながら、それでいて心の底をまるで見透かせない不思議な笑い方をする相手だったが、その相手がやがて困ったような表情になって横を向いてソワソワし始めたことにニースは不思議に思い、「なにか?」と問いを発する。

 

「いやさ・・・淑女たるもの、相手が子供で女の子だとしても、もう少し恥じらいは持っておいた方がいいと、君のためにもボクは思うよ?」

「え・・・?」

 

 意味が分からず聞き返した後、改めて自分の姿を見下ろしてみた瞬間、思わずニースは真っ赤になって年甲斐もなく悲鳴を上げそうになってしまった。

 

 仮にも、十七という年齢でマーファ神殿の高司祭の地位に就いている身である自分が、よもや“お姫様抱っこ”されたまま相手と至近距離からたっぷり見つめ合ってしまっていたなどと聖職者としてあるまじき破廉恥極まりない行為である。

 まして相手がエルフならば、尚更だ。

 彼ら彼女らは揃って美男美女ばかりが生まれ育つ種族として知られており、たとえ相手が人間の寿命に置き換えると自分と同い年ぐらいに当たる120歳の少女に過ぎぬ身であろうとも美しいものは美しいのであり、女でも見惚れるほどの美少女である事実に変わりはな――え?

 

「あなた今・・・少女って・・・」

「あれ? 気づかなかったのかい? おかしいな、マーファの愛娘なら気づけてもおかしくないと思っていたんだけど・・・」

 

 ポリポリと頭の後ろを片手でかいて、あらぬ方向を見上げつつ、ニースに対しては「ほら相手が待ってるよ」と急かすことも忘れない不思議なエルフ族の少女。

 

 そんな彼女の前から離れた彼女が最初に向かった先は、自分自身が解放したいと願って成し遂げた存在、氷竜ブラムドの足元。

 

「娘よ・・・」

 

 彼の声が頭上から響いてきた。

 

「私は自由を取り戻した。感謝する、大地母神の従僕よ。古代王国の宝は汝のものぞ」

 

 氷竜の言葉を聞いて歓喜の声を上げながら、神官たちがニースのもとへ駆け寄ってくる。

 そんなニースの姿を氷竜は首だけもたげて見下ろしながら、穏やかな声で頭を垂れるように感謝の思いを言葉として告げてくる。

 

「感謝する、大地母神の娘よ。これより、私は汝を主人と定めよう。この誓いは、私が滅びるまで変わることはない」

 

 この宣言に対してニースは即座に拒否の言葉を返そうとしていた。

“せっかく古の呪いから解放されたというのに、新たな束縛を誓ってどうするのか”と。“これからは古竜として自然に生きて欲しい、それが私の願いだ”と。“主人としてではなく、友というなら大歓迎だけれど”と。

 

 そう言うつもりでいたのだが、まるで彼女がそう言おうとしていることを事前に知っていたかのようなタイミングで少し離れた場所に立ったままのエルフ少女から制止の声がかかり、断念して氷竜からの提案を受け入れる道を自主的に選びことにしたのであった。

 

「ああ、マーファの愛娘殿。そこは素直に相手の厚意と感謝の気持ちを受け取ってあげた方がいいと思うよ?

 誇り高いドラゴンにとって自分から頭を垂れることは、彼らにとって最大限の感謝と敬意、そして友誼を示す行為をも意味している。

 いくら自分が「自然に生きなければいけない」というマーファの教えを信じ貫いているからといって、人間とは違う神を持たない種族に対してまで自分の信仰心を押しつけるのは良い行為とは言えないと思うからね。「自由に生きるべき」と言うなら、相手が君に忠誠を捧げる自由だって認めてあげなくちゃ矛盾してしまう」

 

 驚いたように自分を救ってくれたエルフの少女の顔を見直して、フードを目深に被り直したその姿から内心を読み取ることを諦めると、ニースは素直にブラムドの言葉を受け入れて感謝と忠誠の誓いを受け取った後、あらためてエルフ少女の前まで戻ってくる。

 

 

「お待たせしました。この様なところではなんですから、よろしければ私たちの神殿へおいでください。歓迎させていただきます」

「それはありがたいね。ボクも君にちょっと人には聞かれたくない内容の話で聞きたいことがあって来ている身だから助かるよ」

「お気になさらないでください。――それにあなたは私個人に対しても、なにか言いたいことがおありなのでしょう?」

「・・・・・・」

 

 このとき初めて相手の少女は即答せずに黙り込み、ニースの瞳を自分の瞳に移し込みながらまっすぐ見つめ、互いに相手の魂の底まで見透かし合っているような視線を交わし合い終えてから、静かな口調でこう言い合った。

 

 

 

「よく来てくれました、異界からの来訪者にして、大地の法を見誤った者よ。

 あなたがそれを敵と定めてしまった理由は私には理解できないけれど、それでもあなたはその戦いをやめるべきだと私は思うの。

 戦うべき相手は他にいます。自らに呪いを課すことはなかったはずなのよ」

 

「君個人の感想は理解したよ、マーファの愛娘殿。気遣ってくれてありがとう、お礼にボクも君に対して一つだけ忠告してあげよう。

 女神マーファへの信仰のため、自分の命も人生も幸せさえ捧げてしまう生け贄みたいな生き方は改めた方が君個人のためにはなると思うよ? 女神が与えた使命を全うするため自分の全てを他者のために捧げてしまう人生なんて、それは女神にかけられた呪いと何ら変わりないとボクは信じて生きている者だから」

 

 

 

 二人の視線が混じり合い、ぶつかり合い・・・・・・やがて穏やかに逸らされていく。

 

 大地母神の寵愛を一身に受けた人の子である“マーファの愛娘”ニースと。

 神にも等しい力を持った精霊王と生まれながらに絆を結んだ“ハイエルフの神子”。

 

 二人の異なる神に愛された少女たちが出会った、この日、この時、この瞬間から、ロードスの歴史に微妙な修正点が加えられていくことになる未来を誰も知らない。

 

 戦いに彩られたロードスの歴史を変えることなく、書き加えることだけを望む少女の戦いはここから始まる・・・・・・。

 

 

 

オリジナルキャラ紹介

《神子》(本名未定)

 

 今作オリジナル主人公で転生者のハイエルフ。

 生まれながらに精霊王たちと高い親和性を持っていたことから、選ばれた特別な子供《神子》として大切に守られながら崇め奉られ育てられてきた。

 未来の歴史(原作のロードス島戦記)を知っていることから、里の長老たちに『近々《鏡の森》が復活した魔神に襲われて黄金樹が奪い去られる夢を見た』という嘘を伝えて、『神子の見た夢なら正夢かもしれない』と思わせた後、「念のために」という名目で旅立ってきた。

 マーファ神殿に来たのも表向きは《石の王国》の現状について《鉄の王国》からニースを通じて聞くことができないかと訪ねるのが目的だった。

 

 

能力:

 四大精霊王すべてと契約して召喚可能になってはいるけど、同時召喚は無理。

 体術や剣術もチート転生者故に他よりずっと恵まれていた身体能力のおかげでかなりのものだが、ベルドやファーンとは精霊魔法なしだと逃げ回ることしかできない。逆にフラウス相手には魔法なしで圧勝できる。

 チート転生者な割に中途半端な能力だが、これは原作に本気で介入しようという意欲を途中で失ったためであり、本来ならば四大精霊同時召喚も今の時点で可能となっているだけの才能の持ち主。

 ハイエルフに生まれたからこその才能が、ハイエルフの持つ寿命によって開花を妨げられてしまったという皮肉な存在です。

 

 

性格面:

 当初は調子に乗って「転生チートだ」「歴史改竄だ」と内心ではしゃぎながら第二の人生を送っていたのだが、百年近くも続くと飽きが来てしまい、今では一刻も早く退屈な妖精界から出られすれば何でもいいと思うほど変わらない日常に嫌気が刺していた。

 人としての記憶と人格を持ったまま、長い時間を生きたせいか精神面が老成しており、本人曰く『枯れている』

 全ての物事に多面性を見いだしており、一つの正しさには別の側面から見た醜さがあるというような価値基準を持っているため『絶対』という言葉が大嫌いで、一つの正しさのみを盲信している者たちには皮肉を言わなければいられない斜に構えた性格の持ち主。

 ただ、あくまでも『一つの正義だけを正しいと信じる思考法』が嫌いなだけであって、必ずしも否定した相手の信じているものを否定しているわけではなく問題定義するに留めることが多い(ただし、本人の主観で加減が決められてしまってる)

 

 「ボク」という一人称と、ボーイッシュな口調は男だった前世から引き継いだもの。

 基本的に本編が始まる前の時点で意欲もやる気も長すぎる待ち時間の間に燃え尽きてしまっているため、積極的にロードスの歴史に介入する気も変えようという気もないが、個人的に救いたい者たちはいるので彼らの救済が主な戦う理由と目的。

 『全体』よりも『自分が好きな一部だけ』を優先して守ることを由としたチート転生者。

 本来ならロードスを救えたほどの力を持たされて転成してきた身であったのだが、長すぎる時間が彼から『勇者』としての精神的資質を完全に奪い去ってしまっている人。

 

 誰に対しても皮肉屋な性格で、同族に対しても容赦がない。

 ハイエルフの中でも特別な生まれだっていたため『ディードリット物語』に登場していたエスタスとは幼い頃から親しい付き合いだが、仲はあまり良くない。

 

 

彼女から見たハイエルフの価値観に対する評価はコチラ↓

 

「全ては時間が解決してくれること・・・」

『あれだけ時間があれば、どんな事だってどーでもよくなる』

 

「エルフ族ならもっとも良い意見が通る」

『自分の意見を持ってないだけ。植物のようにみんな同じ。同じ存在なら一人だけでいい』

 

「人間たちは些細なことで優越感を抱けるものだ」

『些細な悪口で不快感を抱けるエルフ族が言う言葉かい?』

 

「人間たちは自分のことしか考えていない」

『エルフは自分たちが滅ぶ未来の可能性を考えようともしちゃいない』

 

「人間たちは同族で殺し合いを続ける愚かな種族だ」

『人間は国も民族も宗教もバラバラだ。動物じゃあるまいし種族が同じってだけで同じ生き物だと考えられるヤツらがバカすぎる』

 

総論

『エルフたちは、自分が知っていることしか知らないことを知らない種族』

『人間は賢明な奴等と愚かな奴等と普通の奴等とが入り乱れてなんかやってる種族』

『正しいかどうかは知らないし興味もないけど、単色の世界よりかは汚い色も入り交じった多彩な色の世界の方が自分は好きだ』

 

――こういう価値基準の持ち主です。

 

 

 

オマケ:

『原案版《神子》』

 

 もともとは妖精界にある黄金色の森の中で、ひときわ輝く黄金の少女として描かれるシーンで始まっている少女だった。

 ボツになった理由は、魔神たちに黄金樹が奪われたから切り札的戦力として取り返しに行くことを旅立つ理由に想定していたところ、それだと登場がかなり遅くなってしまうことに気づいたから書き直したのが今話の内容です。

 

 

 

尚、ニースと仲悪そうに描かれてる初登場回でしたけども、本人たち自身は必ずしも相手のことが嫌いでもなければ否定し合ってもいません。

 ただ、思想的に合わない者同士だと正しく認識し合っただけ。そう言う関係の二人です。


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