『紅に染まったこの俺を!ピッ…』
…昔の夢を見た入社したての頃の夢を。あれから数年いろんな事があった俺は背景班に飛ばされ、模部先輩は今は結婚して育児に専念している。後輩ができ、ゲームも作った。 え?葉月さんとの恋路はそれは…
「うぅ…おはよう鈴都くん」
隣で目を擦りながらゆっくりと体を起こす葉月さん
そうです、同居を始めたんです。
「おはよう、葉月さん。」
「……」
「顔近いですよ。キスでもしたいんですか?」
朝はメガネをかけていない葉月さんは顔を確認すようにゆっくりと自分に近づいて来る。ジョーダンまじり俺はそんな事を言った。
「君がしたいんだろ?」
そんな事を言いながら彼女は愛おしそうにこちらを見てくる。俺はそんな彼女の唇にそっと口ずけをした。
「ほら、やっぱした。」
「期待してると思いまして。」
─────────朝のいちゃいちゃ終了───────────
「そういえば今日はキャラ班に新しい子がくるの日だね。」
葉月さんが思い出したかのように言った。
「おっ、可愛い子ですか?」
「あら、彼女の前で他の女の子の話しかい?」
しずくさんが少し頬を膨らませて言う。それを見て俺は質問を変えてもう一度問うことにした。
「言い方を変えましょう、しずくさんの趣味で選びましたか?」
「なっ、私をなんだと思っているのかね!」
怒ったように言うが、実際のところしずくさんの周りはほとんど女子で固められており職権乱用疑惑などに思われても仕方ないのである。ちなみに我が背景班は男オンリーであり、花の1つでも欲しいくらいである。
「…今職権乱用なんて思ってはいないかい?」
疑惑の目をこちらに向けてくる。
「……いや職権乱用疑惑くらいにしか思っていませんよ。」
「やっぱり思ってるじゃないかー!」
ぷんすかと怒る彼女は宥めていたら、会社に到着した。
「それじゃあ、また帰りにでも」
俺は背景班のオフィスに着き、しずくさんに手を振る。
「ああ、またね、」
葉月さんと別れ、席に着く。PCを起動して一息つく。
「さてと…コーラでも飲みに行くか」
最近、コーラの飲み過ぎでしずくさんから注意を受けているが、月曜日くらい許して…今飲まないと絶対1週間引きずるから。
社内にの自販機 のところに行く。紙コップのサイズをSかMで悩んでいるとりんさんがやって来た。
「あら、またコーラ?葉月さんに怒られるわよ」
「月曜日だけはガソリンが注いでもいいじゃないですか。そういうリンさんは2つも注いで寝起きのコウにですか?」
「んー、今日は新しい子の分と私の分よ」
例のキャラ班の新人君か。少し気になるな
「良かったら見に来る?」
リンさんが察したように声をかける
「じゃあ、邪魔にならない程度に行きますかね」
そうしてキャラ班のところについて行く事にした。
「おパンツー!!!」
そんな聞き覚えの無い声が聞こえた。
「あっ、ちょっと鈴都くん!ストップ!!」
「あっ、はい」
この会社でそれなりに長くやっているだけあって、すぐに察する事が出来た。
…少女準備中
「いいわよ来て」
2分くらいしてリンさんがキャラ班のブースから顔をだした。
「おっす」
キャラ班にはリンさんとコウとあと1人中学生っぽい女の子が1人
「あっ、あの涼風青葉です!今日からよろしくお願いします!」
緊張したように彼女は挨拶した。
「あぁーよろしく。俺は背景班リーダーの加佐登 鈴都です。以後お見知りおきを」
「よ、よろしくお願いします!」
とりあえず、すげーいい子だこの子!俺が新人の時めっちゃ生意気だったなぁ…模部先輩ありがとうございました
「ゲホッゲホッ…これブラックだ」
隣でコウがむせている。こいつ飲めもしないのにブラック飲んでやがる。先輩ずらしたい時期なんだろうなぁと思ったら
「ごめん、コウちゃん間違えた」
リンさんは結局自分のをあげるか
「ブラック飲むの?ませてるなぁ」
「社会人ですから」
えっへんと言った顔で涼風青葉はブラックを飲む。
「………ゲホッゲホッ!」
「飲めないのかよ!」
コウの的確なツッコミが入った。僭越ながら笑ってしまった。
「大人ぶってブラックなんて飲まなくても良いのに、ここには年中コーラ飲んでる奴だっているだから」
コウがチラチラとこちらを見てくる。おい、皮肉のつもりなら私にはきかんぞ。
「コーラってのは集中する為の全てが揃ってるんだって…眠気覚ましのカフェインだろ?あと糖分だって充分に摂取出来る。さらには炭酸の刺激が脳を活性化させ最高のモチベーションを作り上げる」
…まぁあくまで自論だが
「そうだったんですか!知りませんでした!」
涼風が目をキラキラさせながらこっちを見てくる。
「…嘘だからな青葉」
「…正確に言うと裏ずけすふ根拠が無いだけだから」
コウの言葉に対し少し訂正をいれる。ごめんね涼風
「んじゃ、そろそろ俺は戻りますわ。分からん事があったら相談してくれてもいいよ。まぁキャラ班でこと済ませると思うがな。」
軽く手を振り、その場を立ち去った。
─────────────帰り────────────
右手にはコーヒー、左手にはソシャゲをしながら会社の前でぼーっと佇む。息が白くまだ春といっても少し夜は寒く感じた。
「待たせてしまったね」
自動ドワが開き葉月さんが小走りでやって来た。
「いや、今来たとこですよ」
少しカッコつけてたが、似合わない事をしたと心なしか後悔した。
「ふふっ、そういう事にしておこう」
改札をとおり電車に乗る。ちょうど、2人分席が空いており一緒に座ると葉月さんは鞄を膝の上にのし俺の方にくっついてくる。その温もりに俺はちょっと緊張した。
「青葉くんの調子はどうだったんだい?」
「いや、キャラ班じゃないんで分かんないすよ」
唐突に葉月さんが話を振ってきた。ディレクターという役職柄気になるのだろうし、たぶん一個人としての興味もあるだのだろう。
「君から見た印象を聞きたいな」
「そうですね、いい子だと思いますよ。話した印象としてわ」
俺の回答に気分を損ねたのか、少しむくれる
「そういう、建前みたいなのが聞きたい訳じゃないんだよ!君の悪いところだよこれは、自分の意見を言わずそれとなくの意見で場を濁すところ、人の粗を探すタイプの人間だろ?」
すごい言われようである。ただ、涼風の肩をもった気はなく、あまり世知辛い意見を言うのはアレと思い躊躇ってしまったのも事実だろう。要するに、葉月さんの指摘は正しい。
「あぁ…分かりました、正直に言いますね。良くも悪くも純粋ですよね、高卒だからってとは言いませんが、まだまだ青いですし、その分伸び盛りでもありますが、そこに脆さを感じます。」
「なるほどぉ…厳しい意見だね。」
「葉月さんが言わせたんでしょ。」
「悪いわるい、じゃあどうすればいいと思う?」
「うーん、ここが理想の職場であったとしても、夢の会社ではないと自覚させるべき、とか?まぁ、放っておくいても勝手に成長すると思いますよ。八神よりかはよっぽどマシですし」
ハハハと愛想笑いを浮かべながら昔のことを思い出す。それを見て葉月さんがくすくすと笑う。
「そうだね、今は下手な干渉はしない方がいいだろう。それに、八神君にもいい刺激になると思うしね。」
電車から見える空はビルの光が明るくとも空には満天の星空で、まるで都会に埋もれないよう星が一生懸命光っているみたいで、俺も明日からまた頑張ろうと思えた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。いつも通りの駄文ですが、葉月さんの可愛さが伝わってくれたら有難いです。
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