やはり俺たちの防衛生活はどこかおかしい。 作:ハタナシノオグナ
最近『ゆっくりクソSSレビュー』というものがあれば載れるんじゃないかとよくわからない期待をしています。
どうせ作るなら突き抜けた駄作を作りたいものです。
タイトルは『かぜひきのこうじゅ』
「ドーモ、部長サン。コンニチハ。本日ヨリ部員トナリマシタ、杜暁法デス」
「同じく2年F組の比企谷八幡です」
平塚先生と八幡の熱き語り合い(≠物理)にけりがつき、上層部の会議で手袋を叩きつけ。
遂に、或いは終に、暁法は晴れて奉仕部の一員となった。もちろん八幡も道連れに。
◆◆ ◇◆◆ ◇◇◇ ◆◆◇
嵐のようなひと時を耐え、なんだかんだと翌日の授業を終え、ホームルームを無難にやり過ごし、(何故か平塚先生の『御見送り』付きで)奉仕部へと向かい。
そんなこんなで、今まさに『着任』の挨拶をしているのだった。
……敢えて繰り返すとしよう。『入部』ではなく『着任』。
彼等は『お仕事』でここに居た。例え、それに自己暗示以上の意味は無いとしても。
一応、名目としては入部である。
しかし裏では平塚先生との密約が結ばれており、先生がいくつかの要求を飲む対価として、こちらも奉仕部で雪ノ下雪乃を『助ける』事になっていた。のだが……しかしまぁこの部長さん、実に可愛げがない。
いや、見目の麗しさで言えば申し分どころか、彼等がなにか言おうともそれはただの僻みに過ぎないレベルなのだが。
それにしたって口が悪い。100人が彼女と会話したとしたら90人は不快に感じるだろう。9人位は泣き出すか、殴り掛かるかするかもしれない。残りの1人は変態だ。
そんな評価をこちらにさせながら『口汚い』と言わせないのは卑怯じゃないかとも思うが、事実スラスラと暴言を並べる様さえも気品を感じさせるのだから。まったく、始末に負えないものである。
しかし、幾ら気品を備えようと、そんな特科戦力の集中砲火を零距離で浴びるような真似をしたい者などまさかいるはずもないだろう。どんな戦争狂だってお断りに違いない。
が、やらねばならぬ人間はいる。というか、このふたりがそれである。
青菜、もしくはナメクジに塩を散らした時のような状態を浮かべてもらえれば分かりやすいのかもしれない。
ぐったりと、今にも倒れそうな姿勢のまま苛烈極まりない口撃を耐えている。ふたりは『舌鋒鋭く』という慣用表現にも限界があることを、その身で存分に味わっていた。
渦中の、そして火中の暁法と八幡がとてつもない後悔に襲われていることは述べるまでもなく。
ボーダー的に見れば問題ない環境が、そのまま自分達にとっても安全地帯であるかの検証が抜けていたことは痛恨のミスだった。
誰ですかぁ!! こんな杜撰な計画立てたのは!? アアソウダヨ! オレだよ! 『杜が撰んだ』からだってかぁ!? じゃかあしいやバッキャロー!!
声にならない悲痛な愚痴をモノローグにたっぷりと込めて、暁法は現実からの脱出を謀っていた。自棄になっているせいか、元々そこまで確立されていなかったキャラが更に不安定になっている気がしないでもないが、そこはまぁご愛嬌というやつだろう。
閑話休題
先日あれだけの徹底した抗戦ぶりを見せてはいたものの、誰だって目的も利益もない戦争なんて御免蒙りたいものである。恐らく雪ノ下を除けば。
正直な話、彼女との『戦争』、もとい口喧嘩は分が悪いどころの話ではないのだ。
『
勢いで誤魔化したとはいえ、同じ手が通じないであろうことは疑いようもく。
ましてや、継戦能力は比べるべくもなかった。
そうでなくとも、云わば目的に沿った運用をしたはずの特化型のふたりに対し、
性能の差が戦力の決定的差でないということは歴史が証明する通りだが、当たらなければどうしようもないということもまた、かの赤い人が言った通りなのである。
おまけに、先日取り逃したことが非常に悔しかったようで。おおかた平塚先生から聴いたのだろうが、暁法と八幡が来るのを手ぐすね引いて待っていたらしい。
明らかに場当たり的でない歓待の罵詈雑言を受けているのである。
その質・量ともにオーバーキルであることは傍目から見ても明らかなのだが、眼前の彼女はそれを見てむしろ勢いを増している気さえする。いや、間違いなくしている。
それはそれは艶やかな笑顔を湛えながらも、その口から聞こえてくるのは修正待ったなし辞典の索引を読み上げるが如き蛮語の数々なのだから。自身の聴覚と視覚の不一致を疑っても見たくなるものだ。
……しかし、滔々と続く雪ノ下雪乃のターンは第三者によって遮られることとなる。
コンコン、という音がした。少しの反動がかたりと扉を鳴らして来訪者の存在を教えている。
当然、この教室に人が来るなど滅多なことではないというのは承知している。そしてそれが平塚先生でないと断定できたのならば、残る可能性は『依頼人』位のことだろう。
ともあれ、その音は部長殿を我に返す役割を果たしたらしい。
彼女は場を区切るように小さく咳払いをして、どうぞと入口に声を掛けた。
ここにいる誰もが、その瞬間を忘れないことだろう。例え忘れることがあっても、それは最悪の思い出としてではなく、きっと苦笑を伴に浮かぶ鮮やかな記憶だ。
彼等彼女等の高校生活は、おそらくここが『始まり』だった。
「し、失礼しまーす」
怯えたような上ずった声が、奉仕部の教室に届けられた。
ゆきのんがウッキウキで罵倒しに来るって言葉からして可愛いですよね。そっちの描写はあくまで抑えましたが。
さて、今回ははもっと長くなるというか、まぁクッキー関連の話は全部終わらせるつもりだったんですが。
そうしなかった、できなかった原因は単に風邪ひいたからです。髪切ったら平均気温がガクンと落ちましてね? 適応できませんでした。
そんな中ぱっと浮かんだのがセリフを一個しか使わずに書いてみようというものでした。
実際やってはみたものの限界が案外早かった&明日以降の都合上ここで筆を置きます。
【追記】令和2年5月12日
少しだけ訂正や改行を。2年も経つと読点やら三点リーダやらの扱い方も変わるものですね。
ずっとゆきのんのターン!