脱線ばかりするIS   作:生カス

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いつの間にか評価が真っ赤っかに…皆さんありがとうございます
しかも日間ランキングに載っているだと…!?

貞子かわいかったですねー…エンディングがめちゃくちゃ明るいトランスなのも個人的には好きです。


8話 リングは最後のおじいちゃんが一番割食ってる

--さーたん視点

 

「あ、相川さん、ちょうどよかった。そこのジャンプとってくんない?体動かなくって…」

 

「……はい…」

 

「サンクス」

 

セシリア嬢と戦って少し後、俺は彼女の手によって先生方のところに連れてかれ、怪我が結構シャレにならないレベルと診断されたのち、緊急で医務室へと運ばれることになった。

 なので今の俺はミイラもしくはマミーよろしく包帯でぐるぐる巻きにされてる。そこに相川さんが看病に来てくれて、冒頭の会話に戻るわけである。相川さんが俺を見るなり、ほっとしたような顔をしたかと思ったら、それはすぐに怒りの表情にすげ替えられた。おかげで俺も表情には出してないものの、どうにも気まずい。

 

「…心配したんだよ?本当に…」

 

「…悪かったって」

 

聞いたところによると、俺が試合で大けがをしていたのをバッチリ見ていたようで、医務室に俺が運ばれたことを聞くなり一目散にこっちに来てくれたらしい。ルームメイトとは言え他人をここまで気遣ってくれるとは、なんともまあ優しい人である。

 

「でも、良かったの?織斑の試合見なくてさ?みんな見に行ってるぜ?」

 

「だって…放っておけないし…」

 

「お優しいこって」

 

「それイヤミ?」

 

「冗談。でももったいないなー。きっとかっこいいと思うぜ?」

 

言って、ふと思った。アイツは今どんなふうに戦ってるんだろうか。少なくとも、俺みたいな悪手でなく、正々堂々とやってるはずだ。俺のときなんぞよりずっと見どころのある試合だろうに

 

「…えーと…」

 

「?」

 

どこか照れた感じで、頬をかきながら目をそらす相川さん。何か言いたいことがあるのか、んーとかえーとか言って口をもごもごさせている。何だ?うんこか?

 

「…さ、佐丈君も…その……か、かっこよかった、よ…?」

 

「……お、おう…?」

 

まったく予想してなかった言葉を相川さんの口から聞き、思わず俺は素っ頓狂な声を出してしまった。ええ、てっきり…

 

「…な、何さ…?」

 

「あ、いや…てっきり、"えーあんだけ吹いといてこれとかーマジ痛すぎるんですけどー、しかもあれでかっこつけてたつもりなのー?キモーイプークスクス"くらいには思ってんのかと…」

 

「待って、何!?アンタの中の私そんなに性格悪かったの!?一回も言ってないじゃんそんなこと!」

 

「いや相川さんって言うか、小・中のときの俺に対する女子の当たりって軒並みそんなもんだったから、自然、俺に対してはそうなるだろうなと…」

 

「え、ちょ、やめなよ、悲しくなるから…大体、そんな風に思ってる子が、わざわざお見舞いに来ると思う?」

 

「あーなるほど」

 

「バカ」

 

何のひねりもなくバカと言われた。それすなわち何の付加属性(エンチャント)もないバカということだろう。せめてゴミバカとかクソバカとか…悪化してんな、うん…

 

「まあ冗談はともかく、俺はもう大丈夫だし、行って来たら?あわよくば、織斑とお近づきになる話の種になるかもだぜ?」

 

「…何よ、それ」

 

「え?」

 

あれ?なんでそこで不機嫌になるんすかね?

もしかして、俺の方にフラグが立って…るわけないしな…じゃあなんなんだ?

 

「きよたんがお近づきになりたいのはさーたんのほうだもんね~」

 

「ほ、本音…!?」

 

「あ、本音さんチッス」

 

「ち~す」

 

そうこうしているうちに登場したのは、御馴染み魔改造ピカチュウこと本音さんである。

ちなみにジャンプ持ってきてくれたのもこの人、今週号まだ読んでなかったから本当に助かった。

 

「…ちなみに本音さんや、今の言葉の意味は?」

 

「そのまんまだよ~?さーたん、フラグ立ってるんだよ~」

 

「マジで!?」

 

「ち、ちち…ちがうし!」

 

そう聞くと、あたふたと慌てながら顔を真っ赤にして否定する相川さん。その様子はどこか前に見たアニメのヒロインを思い出すものだった。

 

「…え、うそ?え、マジで」

 

「も、もういいじゃんその話は!それより…」

 

そう言って、相川さんは強引に話を切り上げ、別の話へと持って行った。

 

「そんなことより、どうすんのさこれから?負けたらオルコットさんの奴隷って話だったでしょ?これで織斑君が負けたら、もう終わりなんだよ?」

 

「ああ、そのことか…まあ、大丈夫だよ。アイツは、そんな簡単に負けないさ」

 

「でも…」

 

「大丈夫だって…ね?」

 

そう言って、俺は相川さんの頭を撫でた

 

「あ…もう、また…どうせ撫でとけば大人しくなるとでも思ってんでしょ。近所の犬みたいにさ」

 

「あ、まだ引っ張ってたんだそれ…」

 

まあ、全くそう思ってないって言うと、ウソになるけれど

 

「信頼してるんだね~おりむーのこと」

 

「まあ、信頼ってわけじゃないけど、俺はアイツのこと結構買ってるよ…アイツは、ここぞって時に何かやってくれる、凄い力を持ってると思うんだ。もしかしたらって思うんだ。もしかしたらアイツ、本当に勝っちゃうんじゃっt」

 

 

 

 

 

『試合終了。勝者、セシリア・オルコット』

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

…試合の結果って、スピーカで全校放送するんだぁ…知らなかったなぁ…

 

 

「…まあ、あれだ」

 

 

 

 

 

「奴隷って、週休二日制だったらいいな」

 

「…私たちも頼んでみるから、諦めないで…ね?」

 

「…うん」

 

「さーたんださ~い」

 

「うん、とどめ刺すのやめてあげようね?本音」

 

 

 

 

--閑話休題

 

 

 

 

しかし翌日、朝のホームルームにて

 

「では、1年1組の代表は織斑君に決定です。あ、1つながりでいい感じですね!」

 

そう嬉しそうにしゃべる山田先生。それに歓声を乗っけてより教室を盛り上げる女生徒諸子。相川さんの方に顔を向けてみると、彼女も何が何だかわからないという顔をしていた。ちなみに本音さんは寝ていた。

 

「…どういうことなの?織斑?俺もう織斑のことわからないよ…」

 

「うんちょっと俺もわかんないわ…」

 

なに?何がどうなってんの?昨日試合には負けたって織斑にはっきり聞いたし…なに?もしかして平行世界にでも飛んだの?ワルプルギスの夜倒さなきゃ(使命感)

…しかし本当にどうして…

 

「理由をお教えしましょう。それはわたくしが辞退したからですわ!」

 

そう言ってドヤ顔で立ち上がるは、件の騒動の渦中の人物であるセシリア嬢その人だった。辞退だと?なんでまた突然…

 

「確かに試合はわたくしの勝ちでした。しかしそれと同時に、わたくしは御2人を通して、自分の未熟さを知りました…まあいわゆる、試合に勝って勝負に負けた…と言うやつですわね…」

 

ん?なんだ?随分謙虚というか、おしとやかな感じになったな。最初にあった時はテンションの高い地獄のミサワみたいな感じだったのに…

 

「それでですね…その…そのことを反省しまして、"一夏さん"にクラス代表を譲ることにしましたわ」

 

"一夏さん"?今織斑のこと下の名前で言ったか?昨日までは名前で読んですらなかったのに…

と、ここまで考えて、俺に電流が走る。あのセシリア嬢の織斑を見る目、紅潮した頬、そして先程の名前呼び…これらから導かれる結論はひとつ…

 

「ちょちょっと待ってくれよ…それなら晴明だって同じだろ?なんで俺なんだ?」

 

「俺、理由わかったかも…」

 

「本当か晴明!どんな理由なんだ!?」

 

「…絶対教えない」

 

「なんで!?」

 

フラグ立ってんだよ言わせんな恥ずかしい。やっぱりこいつはモテるんだなあと、織斑を見てデレデレしているもんよ、セシリア嬢。

 

「あ、もちろん晴明さんにもちゃんと謝罪をさせて頂きますわ」

 

俺と目が合ったセシリア嬢が、深々と頭を下げてきた。こうして改めて謝られると、どうにもむず痒いものがあるな…ていうか俺も名前呼びなのな、別にいいけど

 

「ああいや、俺は別に…ところでこれ、負けたら奴隷云々の話は反故ってことで大丈夫?」

 

「当然ですわ。なんでしたら、あなたが言った一発ギャグ?の罰ゲームもやって差しあげますわよ?」

 

「「それはいいです」」

 

自ら死地へと向かって行こうとする者を、俺と織斑は全力で止めた。知らないってのは怖いことだなと、頭に『?』マークを浮かべてるセシリア嬢を見ながら、そう思った。

 

 

--閑話休題、おりむー視点

 

 

「織斑君、クラス代表決定おめでとう!」

 

「「おめでと~」」

 

授業も終わり、夕食後の自由時間の寮食堂。クラッカーと共に沸き起こる、俺のクラス代表を讃えるクラスメイト全員分の歓声…

 

「……はあ」

 

しかし俺は全く嬉しくなかった。何一つとしてめでたくないぞ。何だって俺が…

大体、晴明はどうなんだ?なんでアイツにはみんな何も言わないんだ?

そう思い、チラリと晴明がいる方を見る

 

「ちょっと佐丈君!酷いじゃないですか、あんな怖い映画見せるなんて!おかげで少しの物音にもびっくりするようになっちゃったんですから!」

 

「すいませんって山田先生…ほら、お詫びにこれ、貸しますから…」

 

「え、これは…?」

 

「"リング"って言う映画です。癒されますよ」

 

「ホラーじゃないですか!やめてくださいよもう!」

 

「まあ一応貸しておきますから、よかったら見てください、そんじゃ」

 

「あ、ちょっと佐丈君…あ、ああ~」

 

そう言ってアイツは某有名ホラー映画を押し付けてから、俺の方に歩いてきた。どうでもいいけど、性格悪い奴選手権ってのがあったらいいとこまで行くんじゃないかなアイツ?

 

「よお織斑、おめでとう」

 

「お前自分が難を逃れた途端元気な?…どうでもいいけど、山田先生にホラー映画貸すのやめろよ。ああいう人って見たくなくてもせっかくだからって言ってつい見ちゃうタイプだぜ、きっと?」

 

「いいじゃん、貞子かわいいし、テレビから出るとこなんて超キュートだぜ?」

 

あ、違うこいつ性格悪いんじゃない。単純に趣味嗜好がおかしいんだコイツ

 

「…人気者だな、一夏」

 

「…本当にそう思うか、箒?」

 

「…ふん」

 

隣にいる箒は何だか不機嫌だし、もうなにがなんだか…

 

「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君と、佐丈晴明君にインタビューを行いたいと思いまーす」

 

いつの間にか現れた、新聞部を名乗るメガネの女の子。彼女の言葉に周りも大盛り上がり。やっぱり女子は好きなんかね?インタビューとかこういうの?

 

「あ、私は2年の黛薫子。新聞部副部長やってまーす。これ名刺、よろしくね」

 

そう言って彼女は手慣れた動作で名刺を渡してきた。

 

「それではまずは織斑君に質問!クラス代表になった感想をどうぞ!」

 

どうぞも何も辞退したいんだよなあ…でもここまで言った以上それを言うのもはばかられるし…

 

「まあ、がんばります」

 

「えー、もっといいコメントちょうだいよー」

 

いやそんなこと言われても…

 

「んーじゃあ佐丈君、織斑君に向けて、エールの言葉をどうぞ」

 

「んごご、もごごご、んぼぼぼ」

 

「インタビュー受けてるときに飯食ってんじゃねえよ」

 

マジ何なのコイツ?自由すぎるだろいくら何でも。たまにコイツ、行動が全然読めない時があるんだよなあ…

 

「ま、まあいいや…じゃあセシリアさんも…いいか。どうせ適当にねつ造するし」

 

「せめて聞きません!?ねえせめて聞きませんこと!?」

 

そこらかしこで乱痴気騒ぎ。もうそろそろ夜も遅いというのに、当分終わる気配はなさそうだ…

 

…ええいもうヤケだ!俺は俺で好き勝手やってやる!

 

「晴明!スマブラやろうぜスマブラ!リンクでおまえを倒す!」

 

「あ?お前俺のサムスに勝てると思ってんの?上等だよ2ストック終点な」

 

そう言って俺と晴明はお互いの3DSを出す。もうヤケだ。どうせ決まったことは覆らないのだし、ならこのパーティーを楽しんでおこう

 

 

 

 

 

--さーたん視点

 

 

 

「はい、じゃあそろそろ写真撮るよー、はい織斑君はスマブラやめて、セシリアさんと並んで」

 

そろそろ夜も更け、宴ももう終盤。最後に写真の一枚でも取ってしめようというのか、黛さんはそんなことを言ってきた

 

「おっと、行った方がいいんじゃないか、織斑?」

 

「ああ、そうだな、じゃ12勝11敗で俺の勝ちな?」

 

「はいはいそれでいいから、はやく行けよ」

 

「なんか釈然としない言い方だな…まあいいや、行ってくる」

 

そう言って織斑はその場を後にし、セシリア嬢の方へと向かって行った

 

「楽しそうだね、佐丈君」

 

「あ、相川さん」

 

いつの間にか後ろに相川さんがいて、俺に話しかけてきていた。

 

「あれ?本音さんは?」

 

「…本音はもう寝ちゃってる。あの子、夜は弱いから…」

 

「あそう」

 

相川さんは、何も言わず俺の隣に座った。ゆっくりとした動作はどこか艶っぽいものがあり、見てるこっちは何故か少しだけドギマギしてしまう

 

「…佐丈君ってさ」

 

「あ…はい」

 

「本音のこと、名前で呼ぶよね。なんで?」

 

「え?」

 

彼女はゆっくりと此方に目を向けてそう言った。言われてみればなんでだろう?最初に聞いたのが本音って名前だから、自然そうなったんだろうか?

 

「いや別に…そんな深い意味はないけど…」

 

「そうなんだ…ねえ佐丈君」

 

「はい?」

 

「あの…わ、私のことも、名前で呼んでくれない?」

 

「え?あ、ああいいけど…清香さん?」

 

「!…うん!」

 

名前で呼ばれたのがよっぽど嬉かったのか、彼女は笑顔で強く首肯した。何だろうこれ、ほんとにフラグ立ってるわけじゃないよね?勘違いしちゃうよ俺?

 

「あ…あともうひとつ、いい?」

 

「…なに?」

 

「…わ、私も…は、晴明君って、呼んでいい?」

 

「…いいけど」

 

「うん…ありがと…晴明君」

 

ねえ何この甘酸っぱい感じ?耐えられないんだけど。どういうことなの?俺にこんな女の子関連の青春はないはずじゃなかったの?小中学でキモイウザイ邪魔と女子に言われ続けた俺には荷が重いです神様

 

「…あ、写真撮るみたいだよ?ね、私たちもいこ?」

 

「え、ちょま…あれ織斑とセシリア嬢のツーショットじゃあ…」

 

「みんな写る気満々だよ?ほーらいいから」

 

そう言って、俺と腕を組む相川さん。何故か知らないけど今日の彼女はいやに積極的で、それに中てられたか、俺はそれに逆らう気にはなれなかった。

 

「じゃあいくよーはい、バター!」

 

どこかずれている合図とともになるシャッター音。相川さんの言った通り、その瞬間にはクラス全員がカメラのフレーム内に移動し、クラス全員集合の写真となった。

 

 

 

 

 

…ちなみに俺は相川さんに引っ張られるも間に合わず、俺だけフレームの枠外だった。

 

 

 

 

 

 




サイレントヒルの映画も凄く雰囲気良くて好きでした。


できればP・T欲しかったなあ…

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