ちなみに作者は2回だけ銀のエンゼルが当たったことがあります。
--さーたん視点
篠ノ之博士フェイスブック騒動は過ぎ、時は休み時間、俺と織斑が博士の投稿にいいね!をつけてる最中、セシリアさんがこちらに近づいて話しかけてきた。暇そうだなあの人。
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」
「え?何のハナシ?」
「決闘ですわよ!決闘!!忘れたとは言わせませんわよ!!」
「あー…そうだった、ゴメン忘れてたわ」
「あ、あなたねえ…」
そうか、何か忘れてると思ったら、確か決闘しなくちゃいけないんだよな。
「…ふん。まあいいですわ。勝負の結果は見えているのですし、その態度がいつまで続くか見ものですこと」
「?…どういうことだ?」
織斑がそう聞くと、セシリアさんは待ってましたと言わんばかりに口を開いた。
「あら、ご存じないのね。いいですわ。庶民のあなた方に教えて差し上げましょう。このわたくし…セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生…現時点で専用機を持っていますの。」
『へぇへぇへぇ』
「いやなんですのそのボタン!?バカにしてますの!?」
それを聞いて織斑は、どこから取り出したのか、昔の某素晴らしきムダ知識番組で使われたボタンを取り出して使っていた。あ、俺も欲しかったんだよなアレ…
「いや懸賞で当たったからさ…今が使い時かなって…」ヘェヘェヘェヘェヘェヘェヘェ
「一回それ押すのやめてくださる!?何だかひどく不愉快ですわ!」
「お、10へぇか、まあまあのトリビアだったな」
「わたくしの誇りをトリビア扱いしないでくださいまし!!」
バンっとセシリアさんが机をたたく。それ手傷めない?大丈夫?
「ッ~~…」
あ、ちょっと涙目になってる。痛かったんだな
「…こほん。さっき授業でも言っていたでしょう?世界でISは467機。そんなISの中で更に、ワンオフの専用機を与えられるということは、全人類の中でもエリート中のエリートなのですわ!」
「…なあ晴明、つまり?」
「チョコボールで考えるんだ織斑、IS全体を銀のエンゼルだとすると、その中でも専用機は金のエンゼル…つまりそれ1枚だけで銀のエンゼル5枚分の強さを持ってるってことだ、きっと。」
「やったじゃんセシリアさん!キョロちゃんの缶詰貰えるぜ!」
「馬鹿にしているでしょうッ!!?」
俺の例えはどうもセシリアさんの機嫌を損ねてしまうものだったらしい。…でもホントにレアなんだぜ?エンゼルって?俺、銀すら一回も当たったことないし
「いやそんなことないって…なあ箒?」
織斑君。そこで篠ノ之さんに助けを乞うのは悪手だと思うの。あ、ほら、親の仇でも見るような目で睨んできたじゃないか。俺を巻き込むのは勘弁してくれ
「そういえばあなた、篠ノ之博士の妹なんですってね?」
「…妹と言うだけだ」
あらら、すごいメンチ切っちゃってまあ…あれでヤクザスラングを言ってくれさえすりゃ言うことなしにコワイんだけどな
「う…ま、まあ、どちらにしてもこのクラスで代表にふさわしいのはわたくし、セシリア・オルコットであるということはお忘れなく」
そういって、セシリアさんはふわさぁ…という擬音が似合う立ち振る舞いをし、そのまま立ち去って行った。結局なにしに来たんだろうかあの人…?
「…わるい晴明。今日の昼飯、箒もつれてっていいか?」
「…余計な節介かもだぜ?」
「それでも、だ」
そう言う織斑の目には、断固として譲らないという頑なな意思が見え隠れしていた。コイツはそういうやつだ。困っている人を見かけたら、ほっとくことができない。大方今回は、篠ノ之さんの進行するボッチ化を阻止しようというのだろう。何ともまあ人によっては迷惑極まりない話だけど、なんでか、コイツのそういうところは嫌いになれないでいた。
…が、こやつにはどうも看過できない阿呆な部分がある
「…でもだ、織斑。行くんなら、他の人は誘わないで、篠ノ之さんと2人っきりで行くことだな」
「ん?なんでだ?みんなで食べたほうが仲良くなるだろう?」
コイツ、やっぱり他の女子も誘って行くつもりだったな。それは下手すりゃ幼馴染とのフラグを折って死亡フラグに変換されるまでありますよ、織斑さん。
「まあそう焦るなよ。そういうのは急いだってしょーがないぜ?まずは、幼馴染の男の子と仲良く食事。それでいいじゃんか」
「うーん…でもなあ…」
「まあ、騙されたと思って、今回は俺の口車に乗ってみんのも、悪くないんじゃない?」
「…わかった。晴明がそういうなら、そうするよ」
「…よし、んじゃ決まりだ、さっさと誘って来いよ。その間にお邪魔虫は退散しとくからさ」
「お前はどうすんだ、昼飯?」
「どっかで適当にとるよ、そんじゃ」
「わかった、サンキュー」
織斑に別れを告げ、俺は駆け足で教室を出た。
さて、織斑は篠ノ之さんにどう接するのかね…結果が楽しみだ
(…ああ、そうだ、そういえば専用機のハナシ、まだ詳しく聞いてなかったっけか)
あの時、騒ぎがあったせいで曖昧になったが、確かに専用機が貰えると言っていた。この機にどんなもんなのか聞いてみよう。
(…いくつか、聞きたいこともあるしね……)
--閑話休題
「佐丈君の専用機、ですか?」
職員室に行くとそこには、ちょうどお弁当を食べている山田先生がいた。食べている最中に悪いが、織斑先生は出払ってるらしいのでこの人に聞くことにした。
「ええ、どんなもんかな、と…」
「ええと、ちょっと待ってくださいね」
そういって、デバイスを出して、慣れない手つきで操作をする山田先生。しどろもどろになりながらも一生懸命探してくれるその姿はとてもかわいかったです。はい
「?…あの、私の顔に何か?」
「ああいえ…カワイイ弁当だなと」
「あ、そう思います?自信作なんですよ、これ…よければ、おひとついかがですか?」
そう言って、彼女は中にある唐揚げをひとつ俺に差し出してきた
「あら、どうもスイマセン…あ、うまいっすね。これ」
「そうですか、よかったです。…と言ってもまあ、食べさせる相手もいないんですけどね…」
途端、ブルーになる山田先生。ああ、彼氏いないのかこの人…しかし、喜んだり悲しんだり、相変わらず表情がころころと変わる面白い先生だ。
「へえ、じゃ俺立候補しよっかな」
「フフ、それもいいですねー…て、え!?」
「!?」
俺が冗談交じりにそんなことを言った途端、いきなりでかい声を出してこっちを向く山田先生。正直すげえビビった。唐揚げのどに詰まるとこだったマジで
「さ、佐丈君。ほ、本気ですか?私、佐丈君よりおばさんだし、仕事も教職だからあまり時間も作れないし、た、多分佐丈君のご両親も反対なさると思うし…」
ねえなんで俺の両親の話が出てくるの?なんでそんな仕事がどうとか具体的な話が出てくるの?ねえちょっと怖いんだけど
「そ、それに佐丈君はまだ高校生だから、あと3年は待たなきゃいけないし…ああでも、その頃には私はもうにじゅう…」
「せ、せんせ?専用機。俺の専用機は?」
「ハッ!?そ、そうでしたね、ごめんなさい…今探しますね…」
あーびっくりした…何だろうこのひと。親に結婚の催促でもされてんだろうか?鬼気迫るものを感じたけど…
「…あ、あった。こちらですね」
どうやら見つけたらしい。山田先生は俺に見るように手招きをして、デバイスの画面をこちらに向けてきた。
「このISが佐丈君の専用機、デュノア社のラファール・リヴァイブです。と言っても、佐丈君用に造られたというわけではなく、量産機をデュノア社から提供してもらってるだけなんですけど…」
へー、これが俺の…何というか、まさにスタンダードって感じの機体だな…
「あ、ちなみに、機体はもうこちらに届いているので、申請を出せばすぐに使用できますよ」
「へーそりゃまた…重畳ですな」
「でも、なんで急に機体のことを聞きに?オルコットさんと対戦があるから、そろそろ練習しておきたい、とか?」
「それもあるんすけど…あ、そうだもうひとつ聞きたいことがあったんですけど…」
「はい、何でしょう?」
「ISって、武器スロットとかシールドエネルギーとかのステータスあるじゃないですか。あのステ振りってやり直せるんですか?」
「す、すてふり?」
ああそっか、ゲームやんない人にとっちゃこの質問、意味不明だよな。ええと、どう説明しようか…
「できるよ~」
「ん?あれ?本音さん?」
いつの間にか、俺の後ろには本音さんがいた。なんでここに?逃げたのか?自力で脱出を?
「あ、布仏さん。生徒会の報告書ですか?」
あ、本音さんの苗字、布仏って言うんだ。初めて知ったな…ん?ていうか…
「生徒会?」
「そのと~り、何と私は、生徒会の書記だったのだ~。えっへん」
「えぇ…ウッソだろお前…」
本音さんって書記の仕事できたのか?ていうか普通の人と仕事の話できたのか?
「む~。今失礼なこと考えてたでしょ?」
おおっと、いかんいかん。読心されてら
「いやいや、そんなことは全く…それより、できるのか?ステ振り直し」
「うん、できるよ~。なんなら私がやってあげようか?」
「…本音さん。ISはねるねるねるねとは違うんだ。適当に練るだけで強いものができるわけじゃないんだぜ?」
「さーたん?私のことバカにしてるでしょ?」
そう言って、頬を膨らませる本音さん。いやだって、ねえ…?
「佐丈君。布仏さんは、ISの整備に関してはエキスパートなんですよ?」
「ウソお!?」
「む~今日のさーたんは意地悪だよ!さては私のこと、お菓子をねだるだけの残念な子だと思ってたでしょ!」
いやごめんその通り、と言ったら本気で怒りそうだから黙っておこう
「…でも山田先生、ISの整備って相当な知識と技術がいるんじゃ…なんでそんな技能を、本音さんが?」
「え…えーと、それは、その…」
何だか言葉を濁しながら、露骨に目を泳がせる山田先生。あら?なんか触れちゃいけない部分だったのかしら?
「…まあいいや、つまり本音さんなら、俺の専用機も整備できるってことだろ?」
「ふーんだ。もう知りませーんだ。整備なんかしてあげないよーだ」
「コアラのマーチ5個あげるから」
「しょうがないな~さーたんは~!今回だけだよ~?」
わーちょろーい
「…でも、一体どうしたいの?要は改造でしょ?ラファールはバランスの良い機体だから、下手にいじった方がかえって危ないと思うけどな~」
「改造、ですか…それは先生もあまりお勧めできませんね…まずはとりあえず動かしてみて、そこから何が足りないのかを見つけていった方が良いと思いますよ?」
「まあ、そうなんですけど…それじゃ、ちょっと間に合いそうにないんですよね…」
「もしかして、セッシーとの決闘の話?」
セッシー?ああ、セシリアさんのことか。本音さんって人にあだ名つけることが趣味なんかな?
「ま、そんなとこ。このまま正攻法で行っても、まず勝てないだろうし」
「…やっぱり、勝つつもりなんですね…」
山田先生がそう聞いてくる
「…俺はどうでもいいけど、もう1人が…ね…」
織斑。アイツは本気で勝ちに行くつもりだ。それを俺が水を差すのはどうにも気が乗らない。図らずとは言え、乗った船だ。乗った以上は、最後まで付き合わなきゃあ、バツが悪い
「あまり意味ないと思うけどなー。ちなみにどんな感じにしてほしいの?」
「ああ、それは…」
そして俺は、ステ振りの要望を、本音さんに説明した。説明すると、本音さんも山田先生も、ひきつったような顔をそれぞれしていた。
「…て感じで、できないかな?」
「…さーたんって、結構バカでしょ?」
いきなりバカ認定された。いや、正直お前さんにだけは言われたくないんだけども…
「…まあでも、それなら確かに、凄く上手くやって、運がよかったら、勝てるかも…」
「でしょ?」
「だ、ダメですよ!そんなギャンブルみたいな戦い方、先生認めませんからね!」
「そうだよさーたん。まさにギャンブル!それに失敗すれば、怪我じゃ済まないかもよ?」
そう言う本音さんは、どこか心配そうな顔を俺に向けてくる。なんだかんだ優しいよな、この人も
「で、やってくれるの?」
「やらないっていったらさーたん、自分でいじくっちゃいそうだしね~。それよりは…」
「布仏さん!?」
「でもなんで、わざわざそんな危ない方法選ぶの?もっと無難なやり方もあると思うよ?」
「…上手く言えないけど、こういう時は、そういう方法を選んだら、きっと良くないと思うんだ…」
「それってジンクス~?」
「まあ、そんなもんかも…昔の人が言ってたけど、こういう時は…」
その時俺は、ある伝説の雀士の言葉を思い出していた
「死ねば、助かるのさ」
お菓子そのものより、エンゼル目的でチョコボールを買った不届き物は作者だけではないはず。…はず……