脱線ばかりするIS   作:生カス

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最近コメント返せてませんね。申し訳ありません。
これからボチボチ時間を見つけて返信させてもらいたいと思います。


23話 番外編:押しキャラで性癖は割れる

「配信の準備できたー?」

 

「OK、いつでも大丈夫」

 

「ちょ、配線踏まないで!」

 

「だからまとめて束ねとけとあれほど」

 

 いつもの教室とはまた違う部屋。長い机に、ぽつんと置かれた目の前のマイクと、ラジオと聞いていたにも関わらず据え置かれてるプロ用のカメラ。奥にはミキサールームで、せわしなく動いている放送委員会の人達が見える。そんな中に、晴明と一夏は座っていた。

 

「なあ晴明、ホントに大丈夫なのか?」

 

「先方はいつも通りのノリでいいって言ってたけどな」

 

「しかしいきなり台本無しなんて……」

 

「今更ごちゃごちゃ言ってもしょうがないだろ。それに文句は俺じゃなくって、企画を出した生徒会長様とやらにだな……」

 

 そう、今回彼らは生徒会きっての要望でラジオパーソナリティをすることになったのだ。

 

「それじゃあ、本番入りまーす!」

 

 彼らが渋い顔で言い合っていると、スピーカ越しにそんな声が聞こえた。ミキサールームからのものだ。二人はそれを聞くと、ため息をしたのち、すぐに前を向き、苦い表情を隠しきれてない作り笑いをした。ちなみに本番と言ったがリハーサルなど一回もやってない。この配信が最初だったりする。

 ADがカウントダウンをし、スタートの合図を出したところで、一夏と晴明は声を発した。

 

「晴明とー」

 

「一夏のー」

 

 

 

「リクエ「リクエスト「おこt「ズレてr「お応えあ間違った「あトークs「ト「待ってトーク?「ラジオだよな?」あ違」ちょま」

 

 

 

「………はい、リクエストお応えトークラジオ始まります」

 

 結局、一夏達から少し離れた場所に座っていた鈴が、ラジオ開始の宣言をしたのだった。

 

 

 

--凰様視点

 

『デューン↓wwwデデデデwwwヴェン→ヴェン↑ヴェン↑ヴェン↓wwwデューン↓↓wwwデデデデwwwヴェン→ヴェン↓ヴェン↓wwwゥヴイィヨ゙ィヨ゙ィヨ゙wwwデデデデwwwディ↑ヨヨヨwwwヴェンヴェンwwヘイ!wwボボボボボwボンファイア!』(嬰ト短調)

 

「はい、というわけでやたらキックの効いたオープニングテーマと共に始まりました。誰かしらの謀略で企てられたこのトークラジオ。このラジオは私、佐丈晴明と、横にいる織斑一夏が、IS学園にいる生徒の方々から寄せられたご質問にお答えしようというものです」

 

「一体いつ集めたんだそんなの……」

 

「細かいこと気にすると禿げるぞ織斑」

 

「は、禿げてねえしッ! は、はは、禿げてねえし禿げて!」

 

「……はあ」

 

 相も変わらず勝手に漫才を繰り広げている昔馴染みの男2人をしり目に、私は自分の現状にため息をしていた。

 ことの発端は、千冬さんに呼ばれた昨日に遡る。

 

――

――――

 

『ラジオ? 一夏と晴明が?』

 

『ああ、生徒会の要望らしい。面倒だが、大勢の生徒からの要望もあるらしくてな、無下にも出来んのだ』

 

『はあ……でそれを、なんで私に?』

 

『ブレーキ役をお前にやってほしい。あの二人だけだとどんな風に暴走するか予想できんからな』

 

『ええ……なんで私が……』

 

『そう言うな、他にも補佐をつける。頼んだぞ、じゃあな』

 

『あ! ちょ千冬さ……えぇ……』

 

――――

――

 

「たくもー、なんでこんなことになるのよ」

 

「ど、どうどう凰さん、落ち着いて、ね?」

 

「そうだぞ鈴よ。今更ここでうだうだ言ったところで仕方ないだろう」

 

「……んで、補佐ってのはあんたらなのね」

 

 机にうつぶせになった体勢はそのままに、チラリと横の方を見ると、いつも通りの仏頂面の箒と、あとは困り顔の相川がいた。

 

「アンタらも千冬さんに呼ばれたわけ?」

 

「うむ、一夏がへまをしないか心配でもあるしな」

 

「私もそうだよ。あの二人、ほっとくとすぐ話が明後日の方向に行っちゃうから。なんで私なのかはわからないけど……」

 

 それは私もそうだ。けどまあ確かに、少なくとも他の連中よりはブレーキ役に適しているだろうって言うのはわかる。まず間違いなくラウラとかよりはマシなはずよね。

 

「はい、というわけであちらにはツッコミ三銃士を連れてきたよ」

 

「ツッコミ三銃士!?」

 

「ねえちょっと待って!?」

 

 なんで晴明は早々に私たちに変なあだ名を命名してるの? どうしようまだ開始から5分経ってないのにもう嫌な予感しかしない。

 

「制服の肩を破り世紀末スタイルを楽しむ謎センス専門、凰鈴音さん」

 

「やめろよ晴明! あの簡易ヒャッハースタイルには俺も触れないでいたのに!」

 

「ショルダーカットよ! え、アンタらそんなふうに思ってたの!?」

 

「続いて剣道専門、篠ノ之箒さん」

 

「う、うむ、別に剣道だけが私のアイデンティティというわけではないと思うのだが……」

 

「えーと……まあいいや、相川清香さん」

 

「雑! 雑だよ晴明君! せめて何か言ってよ!」

 

「はいじゃあ早速1枚目いきまーす!」

 

「一夏はスルーして進めるんじゃないわよ!」

 

 ……ああ、どうしよう、もう心が折れそう……

 

 

--閑話休題

 

 

「えーでは1枚目は、PNパトラックさんからのお便り。『ISでスポーツをしたらどうなると思いますか』とのことです。どう思う晴明?」

 

「じゃあ実験してみよう」

 

「そうだな」

 

「は?」

 

 清香がそう声を漏らすと同時に、一夏と晴明は同時に指をパチィン! と鳴らした。すると、背面の真っ白な壁に何やらグラウンドを映した映像が現れた。

 

「というわけでお願い。ラウラさん」

 

『了解しました、アニキ』

 

『お、お手柔らかにね、ラウラ?』

 

 そこにはラウラとシャルロットがISを展開した状態で対峙しており、何やらテニスのラケットを持っていた。それを見た女性陣(ツッコミ三銃士)は、ポカンとした顔を隠せずにいた。

 

「え、ちょっと晴明これどういうことよ? いつのまに」

 

「はい、それではテンポを良くするためと作者の技量不足のためここから台本形式でお送りしまーす」

 

「聞けって」

 

 

--テニス

 

ラウラ『フッ!』

 

シャル『な!? 僕の打球を倍の力で返球している!』

 

晴明「あれは……!」

 

一夏「知ってるのか晴明!」

 

晴明「ラウラゾーン……相手のどんなリターンも全て、自分の周囲にかえってくるよう回転をかけるラウラさんの奥義だ」

 

ラウラ『うおおどこまでも無敗! いつまでも無敗!』

 

シャル『そ、そんな……ウワアアア!」

 

 バアアーーーーンッ

 

晴明「恐竜が……」

 

一夏「全滅した……」

 

箒「鈴よ、なんなのだこれは! どうすればいいのだ!?」

 

鈴「私が知るわけないでしょうが!」

 

 

--サッカー

 

ラウラ『走れイナズマうぉぉぉぉぉ!!』

 

シャル『なにィ!!』

 

一夏「ああーっとシャルロット君ふっとばされたー!!」

 

晴明「スタンダップ♪ スタンダップ♪ 立ち上がリーヨ♪」

 

 

--ハンドボール

 

ラウラ『当然! 鉄球だッ! ハンドボール部から受け継ぐ鉄球ッ! それが流儀ィィッ!!』

 

晴明「ハンドボールって鉄球使うのか……」

 

清香「いや使わないよ!?」

 

 

--卓球

 

ラウラ『反応! 反射! 音速! 光速!』

 

シャル『は、速い!』

 

一夏「シャルロットがピンチだ……」

 

晴明「ピンチの時は三回唱えろ」

 

一夏、晴明「「ヒーロー見参! ヒーロー見参! ヒーロー見z」」

 

鈴「うっさい!」

 

一夏、晴明「「ゴメンナサイ」」

 

 

--S○SUKE

 

ラウラ『逆だったかも』

 

シャル『しれない』

 

一夏「そりたつ壁でエネルギー波出して戦ってるぞアイツら」

 

晴明「なんか根本から勘違いしてるっぽいな」

 

清香「エネルギー波出してるのは誰も突っ込まないの!? ねえ!?」

 

 

――再び凰様視点

 

「まあこんなところか」

 

「じゃあいったんCMです」

 

『ヴァーwwヴァーwwウンバババwww』

 

「つ、疲れた……」

 

 まさか最初っからあんなにぶっ飛ばしてくるとは思わなかった。完全に誤算だったわ……

 

「こ、この調子でやるのか……?」

 

「どうしよう、私最後まで体力が持つ自信ないよ……」

 

 相川と箒も、私と同じかそれ以上に疲弊している。だけどそんな私たちを意に介すこともなく、あの2人は平然と次の質問にいった。

 

『ピロピロピロピロ ゴーウィゴーウィヒカリッヘー YOゴーウィゴーウィシンジッテー ヒーメターオモイイッマー ツーヨーサニーカエテデュッウィーヴェ↑ヴェー→ヴェ↓ww 』(CM明け)

 

「次の質問は、PNミステリアスなレイディさんからのお便りです。『私には歳の近い高校生の妹がいるのですが、反抗期なのか最近話をしてくれません。どうしたらいいでしょうか?』……うん、だそうだ織斑」

 

「俺に振るのかよ……うーん、その妹さんのことはよく分からないから詳しいことは言えないけど、とりあえず何かきっかけを作ってみてはどうでしょうか? 例えば妹さんの趣味を話題にするとか。特に喧嘩しているわけでもなければ、こういったことから始めて見てもいいかもしれません」

 

「なるほど、いいかもしないね。PNミステリアスなレイディさん、頑張ってください。それでは次のお便り」

 

 ん? あれ? なんかずいぶんあっさりね。いつもはこの辺で厄介なボケかましてくるのに。ネタ切れ?

 

「む? おい佐丈よ、ちょっと待て」

 

 横にいる箒が何かに気づいたのか、次の質問を読もうとする晴明を制止する。その声に晴明はビクッと体を震わせた。

 

「今のはがき、読んでない部分があるではないか。全部読まなければダメだぞ」

 

「いや、その、これはちょっと」

 

 何か言いづらいことでも書いてあったのか、しどろもどろになる晴明。それを見て箒はしびれを切らしたのか、置いてあったさっきのはがきを読み始めた。

 

「ほらみろ、ちゃんと続きが書いてあるじゃないか。ええと何々……『特にここ最近はイチ×ハルだかハル×イチだかでインターネット上の友達と盛り上がっているようで、疎外感を感じています。たまにダン×イチだのハル×ダンなどの単語も聞こえてきますが、一体どういう意味なのでしょうk」

 

「はぁーいPNミステリアスなレイディさん頑張ってくださーい!」

 

「はい終了! 閉廷! 次!」

 

「お、おいどうした!?」

 

 箒の言葉をよっぽど聞きたくないのか、2人は大げさに声をあげて強引にその話題を切り上げた。

 でも一体何をそんなに嫌がってるんだろう? イチハル? ハルイチ? どういう意味?

 

「ねえ相川、アンタなんか知らない?」

 

「うぇ!? し、知らない、私は何も知らないよ!」

 

 そう言いながら、相川は顔を真っ赤にして否定した。この反応は知ってるわね。あとで聞かせてもらおうっと。

 

 

『アノ~イボジ~~アノ~イボジ~~アアァァァァァァァア!↑↑』

 

「さっきからアイキャッチに流れる曲に全く統一性がないのは何なの?」

 

民意(リクエスト)だ。えーと次のハガキは、PNピカチュウじゃないよさんから、『さーたん、ジャパネットのものまねやって~』隠す気ねえだろこの人……」

 

「え、出来んのか晴明? お前の声ただでさえバリトン一歩手前みたいな低音なのに」

 

「しかも俺ジャパネットほとんど知らねえんだよな……まあやってみるさ、織斑リアクション頼むぞ」

 

「おう!」

 

 よかった、今回は比較的普通ね……まあ、モノマネの類なら話も脱線しにくいし、何よりモノマネ以上のことはできないはず。今回は突っ込まずに済みそうね……

 

「では、コホン……」

 

 

 

「ハハッ、やあみんな、コンニチワ! ジャパネットさーたんダヨ!」(裏声)

 

 そう思っていた時期が私にもありました。

 

「今回はみんなに、夢を届ける新商品を紹介するよ!」(裏声)

 

「フェッフェー! どゥおんな商品なのゥォオ?」(某ダックみたいな声)

 

「今回紹介するのはコレ!『全自動パリィ機』! これがあれば、どんな攻撃でも自動で受け流してくれるんだ! 銃パリィでも盾パリィでもお手のものさ! これでコマ切れにしてやる♪」(裏声)

 

「ファーー! すぅんぐぉいネエェヴ! くぉれで3デブも狩りふぉうでゅあいでゅあっはは!」(某ダック)

 

「後半なんつってんのか全然わかんないけど、まあそんな感じさ、ハハッ。いまならこの黒くて丸いつけ耳と、いまいち存在意義のしれない黒いつけ鼻を付けちゃうよ!」(裏声)

 

「スッゴォォオイ!」(某ダック)

 

「更に、フフッなんか寿司についてたこの草みたいなやつもお付けするよ!」(裏声)

 

「ファァァアッ! スッゴォォオイ!」(ダック)

 

「更にさらに、今回購入してくれたお友達に限定して、そのへんで拾ったなんかいい感じの棒もつけちゃう!」

 

「ファァァアッ! スッゴォォオイ!」(ダック)

 

「更にさらにさらにィハハッ! 今ならなんかポケットに入ってた、気持ちキレイめな石もつけて、お値段そのままさ!」(裏声)

 

「フエェェァァァアッ! スッゴウオォォォォォォォオイ!」(ドナルド)

 

「みんな、欲しかったらチャンネル登録してね! しなかったお友達は流刑に処すゾ! じゃあみんな、まってるよ~ゲホッゲッホ」(限界間近の裏声)

 

「ファーーーーーーww!! マァッタネエェーーー!!」(山寺)

 

「……お疲れ」

 

「じゃあ次のお便り」

 

「「「突っ込ませろぉおおお!!」」」

 

 

 

『テレッテッテーwwテッテーwwテレーレーwwビーwビーwビーwwビーフォーユーwww』(アイキャッチ)

 

 

「はいじゃあ、これが最後のお便りとなります。PNサーナイトに髪型が似てると言われるさんから……」

 

 晴明が発したその言葉に、私は心底安堵した。よかった、これで終わる。長かった……そう思うと体中に一気に脱力感が突き抜けた。他の2人も同じようで、最初に比べると明らかに疲労の色が見て取れた。

 ……でも、その疲労感は、晴明の次の言葉で吹き飛ぶこととなった。

 

「『晴明君と織斑君の女の子のタイプを教えてください』……え?」

 

「え?」

 

「「「!?」」」

 

 その言葉に、私たち3人はおろか、収録作業をしていた他の子たちまで釘付けになった。

 

「て言われてもなあ……」

 

「ああ、いきなり言われてもな……」

 

 さすがにここまでストレートな質問が来るとは思ってなかったのか、言いあぐねているみたいだ。そんな2人の様子を見てると、何故だか私まで落ち着かなくなってしまう。

 

「な、名前で言ってみてはどうだ?」

 

「ほ、箒!?」

 

 まだかまだかとその返答を待っていると、横にいる箒がまさかの発言をした。びっくりしてついその名前を言ってしまった。まさかコイツがそんなこと言うなんて……

 

「箒……けどよ……」

 

「べ、別に好きな人というわけではないのだ。あくまで好みにどういう傾向があるのか測るためだろう? それに、文章で言うよりもわかりやすいと、お、思うぞ!」

 

「いや、そうだけど……」

 

「……いや、箒さんの言う通りだぜ織斑」

 

 箒の言葉に、晴明が賛同した。それを聞いた相川は、さっき以上に体を強張らせ、真っ直ぐと晴明の方を見た。……前々から思ってたけど、やっぱりこの子、晴明のこと……

 

「……そうだな、せっかく質問してくれたんだ。できる限りは、それに応えなきゃな……」

 

「ああ」

 

 2人はついに決心したのか、姿勢を正して、深呼吸をした。そんな2人を見る私たちも、緊張がもう限界にまで達していた。

 

「じゃあ、せーので言うぞ」

 

 晴明がそう言うと、部屋は水を打ったようにシーンと、静まり返る。これから来る返答に、皆期待と不安を募らせているのだ。

 私もそれを聞くのは怖い、けど、絶対に聞かなきゃいけない。これからの私の恋を左右する、重要な情報なんだから。

 

 そして、次の瞬間

 晴明が、合図を出した

 

「せーの」

 

 

 

 

「ミドナ様」

「ミファー様」

 

 

 

 

「「「……は?」」」

 

「お前ゾーラ好きだったのか」

 

「そう言うお前はロリコンだったのか?」

 

「は? ちげえし。ミドナ様ロリじゃねえし。魔物なだけだし!」

 

 ……ああ、うん。そうよね、コイツらだもんね。真面目に答えるはずないもんね。コイツらが学園の誰かなんて挙げるはずないもんね。わかってたわよ。ええ……

 

「えー無理あるだろあの姿じゃ……あれ、なあ晴明」

 

「あ? なに……え、何この空気……」

 

「……あんたら」

 

「あ、凰様……ねえどうしてそんな般若みたいな顔してんの? ねえちょっと?」

 

 そのあと、私が2人にローリングソバットをくらわせダウンさせたことで、今回のラジオは幕を閉じた。

 

 

 




セシリア「私は?」

そう言えばお土産屋でセラミック製の般若のお面を買ったよ!
サイズ合わなかったよ!

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