個人的には乾燥は大丈夫なんですが、代償と言えるレベルで花粉にやられます。
--さーたん視点
「いやあ、ビックリしたなー……あんな顔の本音さん初めて見たよ」
「自業自得でしょ」
「わあ辛辣。わざとじゃないんだってば」
先程、山田先生のやわらかいものにダブルラリアットをくらってからというもの、女子の方々は俺を冷ややかなジト目で見てきている。そしてそれは目の前の清香さんも同じ……どころか、それにプラスして声も超冷ややかだ。泣きそう。
「もう……なあ凰様もなんか弁明してくれよ。わざとじゃないって」
というと案の定、凰様にギロリと睨まれた。今話しかけんなと言わんばかりである。
「……なによ、知らないわよ。痴話喧嘩くらい自分たちだけでどうにかしなさいよ」
「ち、痴話じゃないし!」
「なんだよ、ドヤ顔で自信満々で挑んだのに、2人がかりで山田先生にぼろ負けしたのまだ気にして」
「あ?」
「なんでもないです」
そう、あの騒動の後、気を取り直して当初の予定通りセシリア嬢と凰様が、山田先生に挑んだのである。が、そこはやっぱり先生。2人がかりとは言え生徒に後れを取らず。ビューティフルな戦いを見せてくれた。
「大体、私のせいじゃないわよ。セシリアが面白いくらい回避先読まれて……」
「私のせいにしますの!? 鈴さんこそ、無駄に衝撃砲バカスカ撃ってたくせに! なんですの、追いつめられた天津飯ですの!」
「なによ天津飯って! さては晴明になんかそういうマンガ借りたわね!」
セシリアさん、ベジータ呼びのお詫びに貸したドラゴンボール読んでくれたんだ。でも2日前に貸したばっかなのに随分いいところまで読んでませんかね……
「ほら、もういいから並べ、貴様ら……さて諸君、これでIS学園教員の実力はわかっただろう。以後は敬意をもって接するように」
頃合いを見て、織斑先生は生徒に向かって実習内容を話し始める。いい加減そうしないと尺が足りな……じゃなくて、授業時間が無くなるからな。
--閑話休題
「では、実習を行う。グループリーダーはそれぞれ専用機持ちがやること。織斑、オルコット、佐丈、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰の順番で、出席番号順に7人単位でグループをつくれ。いいな?」
織斑先生がそう言うのと同時に、集団はそれぞれ好きな専用機持ちのところへと集まっていった。
……ていうか織斑、デュノア君のところに全部集まっていた。やはり世界で数少ないISを動かせる系男子。シェアエネルギーなるものがあったらこの2人だけで国が作れそうだ。
「……そして俺のところにはほぼ来ないっと……」
「あ、あはは……」
清香さんに苦笑いされた。そう、俺のところにいるのは、清香さん、かなりんさん、本音さんの3名と、あと数名のみ。あれおかしいな? 俺もIS系男子のはずなんだけどな?
……まあ理由はわかってるんだけどね? むしろわざわざ俺の方に来てくれた人って随分と物好きだなって思っちゃうくらいだし。
「……なあ、もう俺たちも織斑たちの班に混ぜてもらった方がいいんじゃね?」
「いやなんでさ、晴明君だって専用機持ちでしょうよ!」
めんどくさくなって、織斑グループに吸収合併してもらおうとしたら、清香さんに一蹴された……でも真面目な話、俺が教えれることなんもないし……
「何をやっている! 出席番号順に並べと言っているだろうが! 次もたつくようならISを背負わせて森に投げた石を探してもらうからな!」
鶴の一声、という形容が当てはまるだろうか。織斑とデュノア君に集まっていた人達はすぐに行動を始めた。
「……お、てか清香さんは織斑んとこか。よかったじゃん、いってら」
「………ん」
……え、なに? なんでそんな急にしょげてんの? 織斑の班に入れるんだから嬉しいはずじゃないの?
「……結構あれよね、晴明君って」
「かなりん、さーたんにそういう期待はしない方がいいよ。モテたことなかったから経験値ないんだよ」
どうして俺はいきなりディスられてるんだろうか? これも全て織斑のせいだ。おのれ織斑!
「……ええと、じゃあ誰が俺の班なんだ?」
気を取り直して班のメンバーを見てみる。見た感じ、本音さんとかなりんさんは俺の班みたいだ。
「そういえばかなりんさんの苗字って、結局なんなの?」
「……ふふ」
いやふふじゃないが。そう言えば苗字どころか本名も知らないんだよな。未だに謎が多い御仁だ。
見ると、俺の班含め、大体はちゃんと分かれたみたいだ。みんな色々と仲良く実習をしている。男子2名のところは、言わずもがなの大盛り上がり、凰とセシリア嬢のところもガールズトークっぽい雰囲気になってるみたいだ。
「さーたん。始めるよ~」
おおっといかん。こっちも早くやんないと。
「ええと……じゃあ一番手は誰すかね?」
「はーい。私でーす」
見ると、カールスラント軍人みたいな髪型の……わかりにくいね、要は2つ結びのおさげの髪型をした女の子が手を挙げていた。
「はいわかりました。えーと……」
「谷本癒子でーす」
谷本さんか。間違ってもトゥルーデって呼ばないよう気を付けよう。
「あ、ひとつ質問いい?」
「? なんでしょ」
「佐丈君って彼女いるの?」
「逆にいると思う?」
なにビックリしたな……煽ってんだろそれ絶対……なんで他の子も若干そわそわしてんですかね?
「……そういうのは織斑に聞けばいいんじゃない?」
「えーでも、佐丈君って意外と人気あるんだよ? 織斑君と違って、カルト的な人気ではあるけれど」
「それは、織斑がスターウォーズとかのハリウッドで、俺がサメ映画とかゾンビ映画みたいな感じかい?」
「そう、それ!」
……なんだろう、ちょっとうれしいけど素直にうれしいと言いたくないこの気持ちは……
「……はい、じゃあ始めますか」
これ以上考えると心の迷宮に迷い込みそうなので、さっさと実習を終わらせることにした。他の班もISを動かし始める。とりあえず、うちの班含め、どの班も順調に進んでいるようだ。しかしひとつだけ、動く様子のないISがあった。ボーデヴィッヒさんの班だ。
……そう言えば、ボーデヴィッヒさんの班はどうなっているんだろうか? 見た感じ気難しそうな人だったし、だんまりを決め込んで実習が進まない感じなんだろうか?
そう思い、ボーデヴィッヒさんの方をよく見てみると、意外や意外、結構和気あいあいとしゃべっているのである。
「なんだ、結構仲よさそうだな。なんでIS動かしてないんだろ?」
「……ねえさーたん、でもあれ変じゃない?」
「え?」
「あ、本当ね……ラウラさんは全然喋ってないわ」
確かに見てみると、件の渦中にいるボーデヴィッヒさんはピクリとも笑っていない。それなのに彼女の周りの女子はキャッキャウフフと仲よさそうにしている。時折聞こえる、「ボーデヴィッヒさんありがとう」という声が、疑問に拍車をかけた。ホントになんだって……
「この時期って意外と荒れるもんね~」
「ね~。ホント助かったよ。もう肌ガサガサでさ~」
「貴様らは準備が足りん。時期に限らず備えておくのが当たり前だろう」
「そうだよね~。ありがとうボーデヴィッヒさん」
……
「……ボーデヴィッヒ、それはなんだ?」
「あ、教官。教官もお使いになられますか?」
「うん……あ、いや、なんで今ニベア?」
ああ大変だ。あまりの事態にあの千冬様が素になってる。あんな苦笑いしてる千冬様初めて見た。しかもちゃっかりお徳用じゃんあのニベア……
「何故って……うちの副官のクラリッサはご存知ですよね? 彼女が、ハンドクリームを常に携帯するのは、軍人の常識だと……やはり彼女は優秀です」
「……アイツに化粧品アドバイザーに転職しろって言っといてくれ」
「!? な、なぜ……あんなに有能な人材は他に……」
「わかったから……頼むから早く終わらせてくれ、な? 頼むから……」
ついに懇願しだした……スゲエ……あの人にあんな疲れた表情させること、俺や織斑でもなかったぞ……
「……じゃあ、俺らもさっさとやりますか」
「う、うん」
何とも言えない気持ちになりつつ、俺たちは苦笑いをしながら、実習を終わらせた。
--場面転換
「なあ晴明、箒たちと屋上で一緒に飯食うんだけど、一緒に行かないか?」
「あー……俺はパス。食堂で食うわ」
「えー、なんだよ連れないなー」
「良いだろ別に。モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……」
「ガーンだな……出鼻をくじかれた……」
……というやり取りをして数分、俺は一人で食堂へと向かっていた。実際のところ、俺が行ったらお邪魔虫になる未来しか見えない。それなら、たまには気兼ねなく一人で飯を食って、うおォンとか言ってみるのも悪くはないだろう。実際言うわけじゃないけど。
「おい、待て」
のったりと歩いていると、誰かに後ろから呼び止められた。この声は聞き覚えがあるな……
「……やあ、これはこれは、ボーデヴィッヒさん」
「貴様が佐丈晴明だな?」
「ええ、いかにも」
「話は聞いている。副官からな」
ああ、確かクラリッサって人だったっけか。
「フムン……それで俺に何の用で?」
「私はこれからお前を篭絡する」
「……え? なんだって?」
「私はこれからお前を篭絡する」
伝家の宝刀「え? なんだって?」を使ったのに普通にリピートされました。使えねえなこの宝刀。いやそうじゃない、なんていったのこの子?
「篭絡?」
「そうだ」
「意味わかって言ってる?」
「うまくまるめこんで自分の思う通りにあやつることだ」
「辞書のような解答ありがとう……てそうじゃなく、なんでその考えに至ったのよ?」
「なぜって……」
「貴様は織斑一夏の恋人なのだろう?」
「待って」
びっくりした。なんでいきなりホモ認定されてるんですかね? そんな風に言われる筋合いはないんですけど?
「なに、違うのか? わが副官によると、この密接な関係は間違いなく恋人同士。ならばこの恋人は寝取るのが一番織斑一夏に効果的だと……」
「もうサークル設立して同人誌でも描いてた方がいいんじゃないかその副官?」
「な、違うというのか!?」
「ちげえよ」
スゲエなこの子、ここまで突っ走ってる娘見たことねえわ。いやどっちかっていうと副官がすごいのか?
「大体、なんでその副官のことそこまで信頼してるんだ?」
「……我が副官は、とても博識でな。最近はこと日本のことになると、部隊の中では一番的確なアドバイスをくれるのだ」
「……ちなみに情報源は?」
「最近では確か純情ロマンチカを」
「やめさせた方がいい。絶対やめさせた方がいいその副官」
なんてこったい。ドイツの軍隊はいつの間にか腐海に侵食されているじゃないか。そりゃ千冬様を苦笑いす……ん? 待てよ。
「そう言えば、織斑先生がいたころもそんなだったのか?」
「教官か? いや、教官がいたころはまだやつの能力は並だった。使えはするが、教科書通りの指示しか出来んやつだったな」
「じゃ、なんでそんなことに?」
「ふむ……確か教官が去っていった頃だから、1年ほど前のことだ。やつは余興でインターネットでチャットのやり取りをしていてな。そこで奴はその相手から少女漫画を勧められたらしく」
「いや、そんな余興を仕事に持ち込むのはちょっと……ん?」
まて、今この子なんて言った? 1年前?
「……なあ、ちょっと聞いていいかい?」
「なんだ?」
「その勧められた少女漫画のタイトルは?」
「"ベルサイユのばら"だが?」
「……そうなんだ……」
「? どうした、顔色が悪いぞ」
「ああうん、何でもない……」
「?……まあいい、とにかくお前を篭絡する。お前を寝取られたときの織斑一夏の顔が見ものだな」
「だから違うってば……」
「そんなウソに騙されるものか。まあ、今日のところは宣言だけにとどめてやる。せいぜい首を洗って待っていることだな」
そう言って、彼女はスタスタと、規則正しい足音を立ててさって言った。
……そうか、1年前の、チャットで、ベルばらかあ……
「俺のせいじゃん……」
どうしよう、まさか面白半分でベルばらを紹介したあのクロウサギさん(チャットのハンドルネーム)がその人だっただなんて……
まずいぞ、このことが織斑先生にばれたらどうなるかわかったもんじゃない。このことは墓場まで持っていくしか
「ほう、そういうことだったのか……」
「……あ、どうも千冬様。本日も見目麗しく……」
「なあ佐丈。私な、最近、IS用の近接ブレードで月牙天衝を再現できる方法を見つけてな、ちょうど実戦でどのくらい使えるのか、試してみたかったんだ……」
「……帰っていいすk」
「今夜は帰さないゾ」
今日の教訓
ネットで不用意な発言は控えよう
ちょうど今ぐらいの季節の変わり目にになると片頭痛が起こる方もいるのではないでしょうか。作者もこの時期は毎回悩まされます。