この世界はループしている。工藤新一が江戸川コナンになる日を契機にひたすら同じ年を繰り返し続けていて、気付いているのは原作知識を持っている者だけだ。僕以外にいるかは知らないが
だけどこのループは少し不思議で時代月日にちは同じなのに繰り返すたび技術は進歩していて、本の新刊が出て,番組は続いていき,アナログがデジタルに,ガラケーはスマホに変わり続けている
そのせいで現在が原作のどの辺りか分からないことが多いが、時々確認できる
例えば、今とか
「ねぇ彩、今度僕が作るの手伝ったプログラムのゲームの発表会?みたいなパーティーがあるんだけど一緒にいかない?コクーンって言う機械を使ったVRPGで今回は子どもだけ体験できるんだけど、その中のゲームの1つのシナリオを工藤優作さんが書いてるの。彩、好きだったよね」
あ〜うん。劇場版ですね、分かります。確かにこの話なら会場に行くだけなら巻き込まれないし、劇場版では上位で好きなヤツだし野次馬としてならだいぶ楽しそうなんだよなー
それに僕、工藤優作さんのファンなんだよなぁ あの人の本って奥が深いし凝ってるし専門知識とかしっかり調べてるのがよく分かるし、レベルは違えど同じ物書きとして尊敬するし
『えっいいの?いいなら是非とも行きたいね。うん、結構かなり嬉しいよありがとうございます』
「テンション上がってキャラがおかしなことになってるよ。結構かなりって頭悪そうだね」
『良かったな、ボクは今凄く機嫌が良いことに感謝しろ。じゃなかったら蹴ってたぞ』
「彩の蹴りは本気で怖い」
ボクにかかれば英士の貧弱ボディを潰すくらいなんてことない。
室外だったらキックに10%補正が入るブーツ(鉛詰め)を常時装備してる分成功率も上がってるし
まぁ、そんなこんな茶番をしながら僕は劇場版の舞台に突入する事になった
ついに当日、ボク達は会場にたどり着いた。高価な服を着た人が多いがそれと同じくらい生意気げな子どもが多い。
『へー結構大物が多いんだね。警察官僚に政治家に、バリエーション豊かなお偉いさんの巣窟じゃないか。ボクはこの新感覚仮想体感ゲームに夢を見ている方だけど、たかがゲームの完成披露パーティーなんかでココまで集まるものかい?』
いつか家庭用VRPGが出来て人間が妖精となり空を飛ぶ日が来るって信じてるけど、お偉いさんが来るほどとは思えなかった・・という建前を作る。現時点では彩が知らない情報だから
普段から僕はリアル知識を披露するがあくまで勘としてぼやかしてで、はっきり言い切るような予言はしない
「えっと・・・なんだっけ」
「しっかりしてくださいよ、一応雇い主っスよね?なんで忘れてるんですか⁉︎この企画の責任者がIT産業界の帝王でシンドラー帝国とか称されるトマス・シンドラーだからっスよ‼︎皆んなシンドラー社長と仲良くなりたいんス」
あ、この貧弱で軟弱なチャラ系後輩敬語は千尋か
『千尋もいたのか』
「実はオレってば英士くんの手伝いをしてたんスよ。作るのは専門じゃないけどまったく出来ないわけじゃないっスからねー」
英士と千尋は同じ天才同士仲が良い。だから千尋が英士の手伝いをするのはそんなに珍しいことでもない。何が実はだ
こうして僕達は3人で集まりダラダラ駄弁りながらイベントの開始を待った