オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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短いやつです

修正して短くなくしました

普通の長さです


2020年エイプリルフール特別記念短編 20200403加筆

ニューヨーク州、とあるハーレムの中にある教会を前に、立ち止まる。

場所の特定は難しくなかった。

最近この土地に越して来た神父の話は、少し街の噂話に耳を傾ければすぐに入ってくる。

 

「なんだあんた、観光かい」

 

そんな教会から、不機嫌そうな仏頂面で出てきた青年が、表情を人懐っこそうな笑顔に改めて声を掛けてきた。

アメリカなのに日本語で、という時点でお察しで、彼もまた日本人のようである。

まぁ、見た目が明らかに日本人のそれなので口を開かなくても分かると言えばわかるが、顔つきだけで言えば日系人だって結構居るのがアメリカという土地、ニューヨークという大都会だ。

 

「ええ、見聞を広めに。探せば教会がそれなりに見つかる、というのも土地柄ですかね」

 

「なんだ、教会に用か?」

 

「いいえ? 懺悔する様な事もありませんし、結婚となると相手も居ませんから」

 

「それ以外でも来る奴は多いらしいけどな。な、あんた、これから飯でもどうだ? 同じ故郷のよしみってやつでさ」

 

おっナンパか?

という訳でもなく、この青年、さり気なく俺をこの教会から引き離そうとしているのだろう。

この教会が()()と踏んでいるが、証拠が見つけられない。

だが、これ以上無闇に被害者を増やす訳にはいかない、という事なのだろう。

 

なるほど、これが修羅場を踏み続けた男というものなのだろう。

踏み込むほどの証拠がないから引いたのだろうが、あのままこの青年が無理矢理にでも教会の内部を調べようとしたならば、あの教会の天井に無数に張り付く簡易改造人間達が彼の血を吸い尽くしてしまっていただろう。

戦闘能力を伸ばす代わりに、生存本能を伸ばしたのかもしれない。

正義の味方でなく、公権力の捜査官として正しい技能の磨き方だ。

 

「あー、お誘いは嬉しいのですが、連れをホテルに待たせていまして」

 

「そっか。ま、ココらへんはあんま治安が良いとも言えないから、気をつけてな」

 

「お気遣い、ありがとうございます。貴方もお気をつけて」

 

それでは、と、会釈をしてその場を離れる。

教会が見えない位置まで青年が移動したのを確認し、教会の扉を両手で開く。

 

「頼もう」

 

ぎぎぎ、ばたん、と、さほど大きくもない扉が両開きに開ききる。

返事は無い。

そして、それは当然の話ではあるので、遠慮なく脚を踏み入れる。

少し歩き、完全に中に入れば、開け放ったままにしておいた入り口の扉が閉じた。

天井に無数の小さな赤い光。無数の眼光。

今更な話で、その視線は見えずとも最初から侵入者である俺に向けられていたのだ。

 

「主は、嘆き悲しんでおられます。愛さなければよかった、と」

 

わかる。

唯一系の神様ってどうしてもそういうところがあるよね。

大体の場合において行動の履歴を辿ると唯の砂場で一人で人形遊びして癇癪起こしてバケツで水流して川作り出したりする様なクソしか居ない。

だから敵対したらもう徹底的に行くしかないのだ。

 

「そうして流した黒い涙の中から、私達は来ました」

 

ひゅっ、と、何かが飛び掛かってくる。

簡易な改造人間。

一晩くらいもあれば簡単な施設で作れるし、その上飛行能力に加え人類を軽く凌駕する膂力、音波に纏わる特殊な器官なども備えたバランスの良い兵器だ。

 

「悔い改めよ」

 

がし、と、力強い腕が身体を掴み、鋭い牙が首元に迫る。

突き刺されたが最後、死ぬまで血を吸われ続けて死んでしまうだろう。

怖い話だ。

 

「そして死に絶えなさい、愛されなかった人々……」

 

何やら感じ入りながら自作ポエムを朗読している神父さんの声の位置を把握。

噛み付こうと首元に迫っていた簡易改造人間の頭を掴み、引き抜く。

ぶち、とは行かず、ずるずるずる、と、脊椎と一部内蔵が引きずり出されてしまった。

なるほど、改造手術とは言うが、完全に全身を置き換えている訳ではないらしい。

頑丈な別物に置き換えられている場所と、ウイルスなどを用いて徐々に元の肉体を変化させていく部位があるのだろう。

頭部はこのタイプの改造人間においては重要なパーツが揃っているし、強化された肉体に素早く命令を伝える為に、脊髄なども人工物に置き換えているらしい。

恐るべきはこの改造手術に用いられた技術よ。

脊椎などは人工的に作るとなるとこれが中々難しいのだ。

 

「汚い」

 

顔が近かったので、首を引き抜いた勢いで血が身体に掛かりそうになる。

ばっちぃので、全て身体に触れる前に揮発してもらった。

引き抜いた首も足元に捨て、踏み砕く。

改造人間の技術に興味はあるが、このレベルでは採用するに値しない。

 

「お前らの神の愛って、安っぽくない?」

 

「脆いし、弱いし」

 

「使い捨ての雑兵にしてももう少しまともに作るでしょ、普通」

 

「こんなんじゃ甘いよ」

 

「たかが知れてる」

 

「あぶれてたとこを拾ってもらったからって、変に相手を高く見すぎてるっていうか」

 

「あ、ごめんなさい」

 

「愛されてるつもりなんだっけ」

 

「悪く言うつもりは無かったんだけど」

 

「感想をそのまま言ったら、悪口になっちゃった」

 

「悪気は無いんだ、悪気は」

 

次に何を言うか、と考えていると、周囲で様子を見ていた怪人達が一斉に襲いかかってきた。

──ことほど左様に。

この時代、この世界の悪の組織の構成員は、相手からの煽りに滅法弱いという特徴を持つものが多いのである。

 

―――――――――――――――――――

 

十数体の改造人間。

かつて、とある悪の組織において科学者待遇で雇われていた彼の研究成果の一つであるそれらは、突如として教会に押し入ってきた不躾な男の手によって、バラバラの肉片にまで引き裂かれてしまっていた。

 

「想像の百倍くらい弱いんだけど、まさかこれで終わりじゃないでしょ?」

 

つや消しの黒の装甲と、十字架に似た金の装飾を持つ戦士。

それが持つこれまた十字架に似た剣に、切り裂かれ、拳で砕かれ、或いは単純に握りつぶされ、投げられるままに勢いよく周囲に叩きつけられ、呆気なく。

 

「何者ですか、貴方は……」

 

神父の態度は揺るがない。

怒りで煮えていた頭は目の前の戦士の確かな力を前に冷水を浴びせられるように冷え切っていた。

 

「さあて、この形態は初お披露目でね、どう見えるか……そうだ」

 

金の十字架の如き仮面が展開し、内部から赤い複眼に見えるカメラアイが露出する。

変化はそれだけ。

しかし、教会のかろうじて無事だった内装を吹き飛ばす爆風を浴びながら、神父の目に怒りがにじむ。

 

「その顔付き、忌々しい……私の愛した彼等を壊した、奴らに似ている……」

 

神父の身体がメキメキと音を立てて膨張する。

簡易改造人間とは比べ物にならない巨躯。

それを目の前にしながら、仮面の戦士──黒いイクサは、十字架に似た剣をじゃらりと分解させ、鞭の様に振るった。

 

「盲め」

 

全高五メートルはある異形と化した神父──蝙蝠男の背後から闇夜に紛れるように振るわれる翼が、鞭のようにしなる連接剣を硬質な音と共に弾き返す。

しかし、蝙蝠男の翼も無事では済まない。

連接剣を防いだ翼には深い傷跡が刻まれ、その刃の鋭さと振るう膂力の強さを物語っている。

そして何より、戦うには明らかに場所が悪い。

 

ばん、と、足元の死体を血霞に変えながら力強く踏み込む黒いイクサ。

八極拳の箭疾歩(せんしっぽ)にも似た動き。

しかし、常人のそれを遥かに上回る身体能力から放たれるそれは軽く音より速く、音波による探知能力に優れる蝙蝠男では捉えきれなかったのだろう。

矢と化したイクサの拳が膨れた蝙蝠男の下腹部へと突き刺さり、教会奥の十字架へとその身体を吹き飛ばした。

 

「得意技はなんだ? 空は飛べるだろうが機動力ってデザインでは無い。探査型か、それにしてはでかい図体が邪魔になる。他人を改造する方が得意か? そこらの肉片がそうなら少しお粗末過ぎる。なぁ、君の自慢は何だ。優れた機能はなんだ。特別な改造はあるか。特殊な器官はあるか、なぁ、なぁなぁ、なぁなぁなぁ、応えてくれよ。喋れない程殴ってないぞ。普段はこんなに喋らないのに、これは大サービスなんだからさ。まだ超音波だって打てるだろ。何かあるなら見せてくれ。愛される理由を見せてくれ。愛されてないものより優れてるところを見せてくれよ。難しい話じゃあ無いじゃないか」

 

ゆっくりと歩み寄りながら近づくイクサ。

そう、機動力、正確には飛行能力とそれなりの戦闘能力を持つ、万能型とも言えるのが蝙蝠男だ。

だが、蝙蝠男は巨大だった。

飛行能力を損なわずに巨躯による強力な膂力を兼ね備えた優れた改造であると自負しているが、それはこの狭い教会の中ではそれほど意味を成さない。

 

外に出なければならない。

ニューヨークの摩天楼の空。

そこに出てしまえば、空も飛べない地を這うカメンライダーなど、恐るるに足りない。

ばさ、と、翼を広げると同時、溜めすら無く超音波攻撃を放つ。

頑丈なヘルメット程度なら一撃で真っ二つにできる程の威力を備える音波攻撃で隙を作り、窓から空に出る。

 

対し、イクサが僅かに背を伸ばし、顔を超音波へと向ける。

見えるはずの無い超音波。

それが中空にて消滅する。

イクサが喉を瞬間的に組み替え、逆位相の音波を発生させて衝突させる事で打ち消したのだ。

 

しかし、超音波を打ち消したところで、蝙蝠男は既に窓から外に出ようとしている。

そして外に出ればこれまでと条件はまるで変わる、と、少なくとも蝙蝠男は信じていた。

が、有利な戦場を求めるあまり敵に背を向けたのは致命的だった。

空を飛ぶ為に羽ばたく蝙蝠男の翼の付け根に、きゅるきゅると音を立てながら連接剣が絡みつき──ずぱ、と、片翼を切り落とす。

 

「キ、サマァァァァ!!」

 

空を目前に、教会の中へと落ちる。

高さはそれほどでもない。

しかし、蝙蝠男が地面に激突する事はもう二度と無いだろう。

落下する先、教会の中には、連接剣を捨てて、空を向いて手刀を弓矢の如く引き絞るイクサ。

苦し紛れに、落下の最中に絶叫と共に超音波を放つ蝙蝠男。

それは蝙蝠男の身体よりも僅かに先行しイクサへと向かい──

蝙蝠男の身体諸共、呆気なく真っ二つに引き裂かれた。

 

ばしゃばしゃと飛び散る内臓、血液。

それを不自然な程浴びていないイクサが、二つに分かたれた死体へと歩み寄り、それらを掴んで引き寄せる。

手元には連接剣……ではなく、赤と金の装飾の入った鋭いナイフ。

イクサは嬉々として、それこそ、鼻歌混じりに蝙蝠男の死骸を切り刻んでいく。

 

以前、それこそ、この黒いイクサを作り上げるよりもずっと前、まだ手探りで戦っていた頃も似たような事をしたが、その時よりも発見は多い。

知識量、生き物の身体を切り裂いた経験量、科学技術、呪術的知識。

同じ怪物の身体を切り刻むにしても、見えるもの、見えてくるもの、理解できるものの量が全く違う。

強靭な改造人間のサンプルとしては落第だが、未知の技術を知るための土台としてはそれほど悪いものではない。

数十分程をかけてじっくりと死体の見聞を終えたイクサは、周囲の人目を気にしながら、何処か楽しげに教会を後にする。

 

新入りの神父の教会に、無数の怪物の死体が転がっているのが発見されるのは、一晩明けて翌日になるのを待たねばならないだろう。

悪の組織の暗躍を知る滝和也が現場を確認し、新たな組織の台頭と、今までに無い残忍なやり口に戦慄するのは、そこから更に僅かな時間を置くことになる。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

オーロラの仕業か、昭和の組織の遺産かなにかが悪さをしたか、或いは俺の知らない未知の敵からの攻撃か。

気が付けば世界は一変していた。

グロンギ、マラーク、ミラーモンスター、オルフェノク、アンデッドに魔化魍に……。

見知った敵も見知らぬ敵の痕跡も見当たらない別世界。

いや、見知らぬけれど、知識として知っては居る敵、痕跡。

元の世界に戻る手立てが無いではないが……。

とりあえず、この世界においても一先ずの平穏を作り出すところから始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

エジプト・カイロ。

ケンタッキー・フライド・チキンだってある立派な都会だが、サービスまで同じ、という訳ではない。

日本で接客やチキンの出てくる速度に文句を言っているやつがたまに居るが、この店で一度チキンを注文して見れば、以降は日本のケンタが超優良店に思えるだろう。

結論として、この国に行くなら何を食べても壊れない頑丈で再生能力のある胃腸を用意してから、というのが賢明になる。

それさえ用意してしまえば、現地で何を食べても大した問題は起きないだろう。

 

きぃきぃと鳴き声が響く。

放っていた砂地模様のディスクアニマルの一体だ。

読み取った情報には、仏頂面のナイスガイがグラサンを掛けた浅黒い肌の男の手を力強く握りしめている様子が映っている。

 

黒いピラミッド。

無数の改造人間素体の保管場所でもあり、完全に機械で作られた管理アンドロイド達の眠る場所でもある。

先の蝙蝠男の構造はいかにも古い時代に作られましたよ、というものだったが、決して見どころが無かった訳ではない。

改造人間というのは、基本的に機械と人間のモザイクだ。

現代の一般的な技術で見れば、あそこまで人間と機械をまぜこぜな状態にして安定運用するのは難しい。

それなりの期間メンテナンスしなくて動き続ける上、戦闘にも耐えうる頑丈な機械装置。

そしてそれに繋がれたままでも問題なく生体器官が動き続けるというのも驚異的だろう。

 

そして、黒いピラミッドにはそんな改造人間を作るための材料が大量に備蓄されている。

戦闘に耐えうる、いや、身体能力を向上すらさせる義肢、機械化臓器。

それに繋げられたまま、何時でも怪人を作る材料として使用できる様な状態で維持された生身。

それを保存しておく為の装置も存在するだろう。

それこそ何千何万の時を超えて人体を保管しておける装置だ。

何かに使えるかもしれないと考えるのはおかしな話ではない。

 

取っていた宿をチェックアウトし、彼等を追いかける。

ツレであるグジルも今度は一緒だ。

こいつには風見志郎がうっかり本当に洗脳されたりしない様に見張っていて貰う。

その間に俺は素体の保管プラントを見学させてもらう、という手筈な訳だ。

 

砂漠を行くジープを、さとられない様に生身で追跡する、というのもお手の物、そう、魔石の戦士ならね。

充分に距離を取って行動していたが、逆に距離を取りすぎたがばっかりに俺たちの方にもミイラ……改造人間素体が現れたのは凡ミスだが、これも特に変身が必要になる相手では無かった。

無用の戦闘を避ける為に、ここらには既に無数のヘキサギアを潜り込ませているのだ。

辺りには無数のアビスクローラーのバイティングシザースにバラバラにされた素体だったもの。

ほぼほぼ無尽蔵に出てくるようだが、俺の周囲に存在するヘキサギアは常にモーフィングパワーによる修復を受け続けている為、持久戦をものともしない。

 

「わー、懐かしい技」

 

遠く、風見志郎こと仮面ライダーV3が放つ逆ダブルタイフーンを遠目に眺めてグジルがぼんやりと呟く。

 

「あっちの方が威力は高いぞ」

 

「あたしとジルのは撃った後も普通に戦えるからいいんだよ」

 

なるほど。

しばし後を付ける。

……そう言えば、V3には現代で言うところの高性能なドローンが搭載されていた筈だが、あれを先行させて調査したりはできなかったのだろうか。

地形把握の為に出していたスニークサイト部隊は普通に空を飛べているし、何なら黒いピラミッドらしきものも地中に潜らせていたアビスクローラーが発見できているのだが……。

 

そんな疑問を持ちつつ、風見志郎達から意図的に距離を起きつつ、黒いピラミッドの中に侵入する。

入り口はそれほど広くない為、アビスクローラー達は砂に分解してお別れ。

壁をこんこんと叩き、音の反響から空洞部を探し、適当に横穴を開通。

 

「あ、竜巻の人が刺された。死ぬの?」

 

「改造人間があの程度で死ぬかよ。お前は予定通りあっちな」

 

「見てればいい?」

 

「洗脳装置っぽいのを被せられたらできれば外してあげるといいぞ。外してあげなくてもいいけど」

 

「人のゲゲルに手を出すのはマナーとしてあれだからなぁ」

 

「じゃあ見学でいい。色黒が転進してくるから、途中まではそれと一緒に行動するといいぞ」

 

「交路の解説は為になるなぁ」

 

じゃ、と、手を振り合い一時分かれる。

斜め下気味に横穴を掘り進めていくと、見た目石造りながら明らかにオーバーテクノロジーの産物であることが見れる部品がどんどん露出していく。

が、これを全て解析するとなるといくら時間があっても足りないので今回は無視。

 

ぼこん、と、広い部屋に出る。

天井がやたらと高い。

……内部空間歪んでる? と思う程広いけれど、ふしぎな科学で薄い素材でも強度を出せる為、ピラミッドの容積をギリギリまで使えるというだけの話だ。

そして、壁を見れば一面の人、人、人。

攫われたり迷い込んだりした挙げ句に改造人間素体に作り変えられてしまった人達。

そして、そんな彼等の人間部分を長期保存する為の冷蔵庫の一種である。

無論冷えている訳ではないが。

 

明らかに高すぎるところにまでぎっしりと素体が詰め込まれていることから見ても分かる通り、ココは本来敵の侵入を予定した場所ではない、本当に素体を保管する為だけのスペースだ。

製造システムの中枢である工場長ユニットが破壊されるまでは、何をされても基本的に無抵抗という訳である。

 

そういう訳で、素体が収められた一面を一先ず引っ剥がすところから始めよう。

 

―――――――――――――――――――

 

黒いピラミッドの内部。

狼面の戦士が動き出した改造人間素体を相手に立ち回り、ついでとばかりに生存者の護衛をこなしている。

ベガが連れ出した生存者と共に迷い込んだ時点で改造人間素体を収めた壁を破壊していた狼面の戦士は、素体が動き始めると同時に舌打ちし、やる気なさげに生存者を一箇所にまとめ上げ、素体の破壊に専念し始めていた。

 

「この場はこの様に致しますので、貴方の方はご自由にどうぞ」

 

別の場所でやることがあるのだろう、と、そう言外に匂わせながら顔すら向けない。

 

「あんたは……?」

 

男の問いかけに、狼面の戦士は新たな武器を手に考え込む様にしばし止まる。

 

「ご覧の通りでご存知の通り、通りすがりの者です」

 

隙だらけの様に見える背を前に、男──ベガが身体を変化させようとするのを、まるで背後に眼が有るように、ピタリと銃口を向ける。

 

「俺をどうこうするより、あの方の洗脳を待った方が賢明ですよ」

 

「へぇ」

 

「出来れば、の話ですけど。それに」

 

「それに?」

 

「彼は遺言を聞いてくれますが、俺は聞くつもりもありませんので」

 

 

―――――――――――――――――――

 

再びニューヨークにて。

 

「マスクドライダー、現る、ね」

 

新聞の一面に広がるのは、ニューヨークの街を駆けるサイクロンに跨る仮面の戦士だ。

はぁー。

これだよ。

情報管理の大切さぁ。

知らないんだよなぁ彼等は本当に。

だから嫌なんだよ。

俺も撮られた事が無い訳じゃないけどさぁ。

 

「お、なんだ、気になるのか?」

 

「滝さんのお話は長くなるのでいらないでーす」

 

小洒落たカフェーで朝食をしていると横から青年──滝さんが声をかけてくる。

まぁ、この世界があの世界と知れた時点でもう、活動拠点を移すのは決まりきっているのだ。

こうして金髪ブロンドのきれいな店員さん目当てで足を運ぶ先で絡まれる事もそうそう無い。

 

「寂しいこと言うよなあ。あ、グジルちゃんは聞いてくれる?」

 

「あっちに良い話相手が居るから紹介しようか。アスファルトの地面ってやつなんだけど、幾ら長話をしてもずっと聞いててくれるんだぜ!」

 

ビッ、と、親指を下に立てるグジル。

アメリカでそのジェスチャはあんまり洒落にならないから止めような。

 

―――――――――――――――――――

 

時をしばし置き、BADANの総攻撃により世界各国の軍事基地が破壊されてから、数ヶ月。

新宿の夜空を覆い隠す様に広がる魔法陣へ、無数の影が、渦の吸引力を物ともせずに襲いかかる。

 

「あれは……ドラゴン?」

 

ヘリで魔法陣に迫っていたアンリが呟く。

赤い機械の龍が、無数の群れを成して魔法陣の外縁に火炎放射やレーザーを照射し続けている。

 

「なんだありゃ、味方……なのか?」

 

困惑する滝。

彼の知る正義のために戦う戦士達の中に、あの様な物を使う連中は居らず、彼等に味方できる組織でもあの様な兵器を運用できるところは無かった筈だ。

敵か味方か。

BADANと敵対する組織か、とも思えば、渦に吸い込まれていきそうな人々を爪や口で咥えて下に下ろしていく姿も見える。

BADANの作戦の妨害と見れば、何も可笑しくはない筈だが……。

 

 

散発的に魔法陣への攻撃を加え続けるドラゴン──ヘキサギア、アグニレイジの群れはしかし、決定的な打撃を与える事無く、ただ人が吸い込まれるのを阻止し続けている。

時折地上から飛んでくる針を装甲で受け流し、人を掴みながら、そのセンサーは何かを待ち構えるように、ビルの上で膝を付き魔法陣と自分たちを見比べる一人の戦士、ZXへと向けられていた。

一挙手一投足を見逃さぬ様に、あらゆる情報を取りこぼさぬ様に。

 

―――――――――――――――――――

 

東京方面で突然の巨大蟻地獄発生?

JUDOがZXの身体を乗っ取ってあわや復活の時?

深海探査用改造人間の人が攫われて腕もがれて洗脳された?

別段珍しい事じゃないでしょ!

そういう実にならない話に付き合ってられる程気持ちに余裕が有るわけでも無いんだよ!

 

そんな訳でモーフィングパワーで捏造した金塊売って作った金でホテルは取った!

馬鹿野郎俺はもうロボスーパー1が出るまで青森から出ねぇからな!

後はホテルでグジルと寝たりして過ごす。

あと赤心寺もちょっと訪ねてみたい。

人間形態だとあんまり勝てないんだよね義経師範……。

この頃なら俺の知る師範より未熟だから勝てるかもしれないと思うとちょっとチャレンジしてみたくなる気持ちはある。

 

面識は無いから何事かと思われるっていうか普通にいきなり訪ねてきたやつ扱いになるだろうけども……。

あそこは正面から訪ねて、素人は帰れと言って追い払ってくる門弟を適当に殴り飛ばして、騒ぎを聞きつけてきた他の門弟を殴り飛ばし続ければ師範に会うことができる、素人でもわかりやすいシステムになっているので何も問題はない。

あと、地下に何故か俺が作った秘密基地の反応があるんだよね……。

稼働状態に無いから、未加工のゾイドの元とかは置いてないから大丈夫だとは思うんだけど、ライダーの皆さんに破壊されない様に色々と手を回しておきたい気持ちもある。

 

つまり割とやることはいっぱいあるのだ。

ちょっと東京で怪人が暴れたからって何よ。

ていうか東京で怪人が暴れてない時期って何時よ。

そんな事でいちいち騒がないで欲しいね!

せめて大首領が無数の怪人を率いて人間狩りを始めてから騒いで貰おうか。

 

という気持ちで荷物整理をしていると、惣菜パンをかじりながら備え付けのテレビを見ていたグジルが感心した様に呟く。

 

「はえー、前交路が言ってたピラミッドが飛ぶってこういうことかぁ。世界各地にトンでるってよ」

 

「何ぃ? 国内だと何処だよ」

 

「新宿からの生中継ってさ」

 

え、新宿に黒いピラミッドが?

これからライダーとライダーがライダーバトルを!?

いかん正義の心が俺を新宿方面へと導く!

 

「グジル! 手順は覚えてるな!?」

 

「はいはい、頭潰して、自爆装置が作動する瞬間を爆発の基点把握して」

 

「最終的にニコイチサンコイチで一体でも確保出来ればヨシ! 行くぞぉ!」

 

 

―――――――――――――――――――

 

──BADANとの熾烈な戦いを繰り広げる仮面ライダー達の前に現れる、二人の謎の戦士。

 

「君達は……?」

 

「通りすがりの黒い謎の戦士です!」

 

「通りすがりの赤い謎の戦士だな!」

 

敵か味方か、ブラックイクサー、レッドイクサー!

 

──突然の共闘!

 

「一緒に、戦ってくれるのか」

 

「そちらで三体、此方で三体でボチボチ行きましょう!互いに手出しは無用です!」

 

──そして生まれる亀裂!

 

「待て、その残骸をどうするつもりだ」

 

「お土産にするだけ! お土産にするだけですから! 部屋に飾るだけですからぁ!」

 

「そうだよただのハンティングトロフィーだよ! 怪しくないだろ! 見ろぉこの金色の綺麗な美しい瞳(重複表現)をぉ!」

 

「仮面で目元が見えない」

 

「違う、そうじゃない」

 

──そして現れるJUDO、全人類質問会!

 

「信じてた下僕に裏切られてん万年単位で封印されるってどういう気分なんですか?」

 

「はいはいはい! 実際問題下僕が裏切りそうだなー、みたいな予感とか無かったの?」

 

「反乱防止の為にキルスイッチとか仕込んで無かったんですか?」

 

「え? ああ、キルスイッチというのはですね……これこれこういう目的でこういう仕組みの……」

 

「積んでおけばよかった? でしょう? やっぱり必要なんですって保険は!」

 

「あははははは! 哀れだねぇ!」

 

──そして行われる禁断の質問……!

 

「今封印されてる場所って地球を軸にした亜空間の牢獄じゃないですか。仮に地球が粉々に砕け散った上で人類やその他生物が死滅して、周辺の惑星も全部消滅したら詰みますか?寿命とか発狂とかそういう問題はどうお考えで?」

 

「地球砕かれたら困ったりします?」

 

「ねぇ」

 

「ねぇってば」

 

「おーい!」

 

人類も地球も顧みないイクサーブラックの仮定を横で聞き、疑いの眼を向ける仮面ライダー達。

 

──立ち上る疑惑!

 

「こいつらは仮面ライダーではない」

 

吐き捨てるように告げる風見志郎。

復讐ですらなく、平和の為とも思えず、終着点の分からない、目的も知れない戦士へと向けられる疑いの眼。

 

「それな」

 

「わかる」

 

怒るでも反発するでもなく頷くイクサースーツの装着者、小春兄妹。

彼等は何を目的としているのか。

 

──そして、水面下で始まる、謎の組織の暗躍……!

 

そこには、無数の傷病者が横たえられていた。

BADANの襲撃によって壊滅した自衛隊、軍隊、傭兵部隊などの生き残り。

或いは怪人たちの襲撃に巻き込まれ、不幸にも身体を欠損してしまった一般人に至るまで。

既に生きながらにして生きる目的を失い、BADANへの憎しみつのりながら、戦うには壊れすぎてしまった者たち。

ただ命を失わなかったというだけ、ただ生き続けるしかない、無為な時間に気が狂いそうな彼等の前に、仮面の男が現れ、脳に染み込むような声で囁く。

 

「BADANが憎い?仇が取りたい?戦いたい?」

 

「わかりますとも!」

 

「でも、しかし、あなた方には力が無い」

 

「……差し上げましょうか? BADANと戦える、強靭な体、武器、速くて強くて頑丈で賢い乗り物……」

 

ベルトのバックルにも見える謎の装置。

仮面の男の率いる機械の獣の群れ。

それを前に希望を見てしまった、一人の元兵士が問う。

 

「私達の目的? ふふふふふ、それはですねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キネマ版!

オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期!

~オリ主とオリヒロ二人で突き抜けるノンストップ!仮面ライダーSPIRITS~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛と自由と平和です!」

 

 

 

 






ン人公「……っは! 夢か……」



☆今日はエイプリルフールだなと夜勤前夜に気付いたから今日がエイプリルフールネタ投稿日という事で異世界に飛ばされる生産能力MAX倫理観最小の主人公
元の世界に戻る為には平穏な研究時間が必要なのでBADANをどうにかしたく、そのついでに色々と回収してければいいなって思うのであった
ケツモチであるママンや外付け良心回路役のヒロインや友人知人がこの場に居ない為何一つ止まる要素がない
ブレーキ役のヒロインは元の世界に置いてきてしまったが運良くアクセル役のヒロインはついてきたのでとりあえず孤独ではない

☆アクセル役?ニトロ役かもしれないしむしろ飛行用追加パーツかもしれないヒロインことグジル
悪事を働くと不味いのは結局は後腐れがあるからなんやなって
劇場版は厳密には本編とは違うパラレルなんやでって話で微妙に現代倫理観が抜けてる

☆現地の方々
結果的に助かる命は増えるが倫理観というものを見つめ直す事になる

☆ショッカーライダーの皆様
実は新1号基準なのでスペックは高いけど微妙に主人公に通用しない武器積んでる連中が居るのでたぶんそいつの残骸が回収された
昭和ライダーの怖い所はスペックの高さもあるけど経験値の多さなので悪役側のライダーはあんまりこわくないのだ

☆現地ライダーの皆様
各地で悪の組織の尖兵と潰して回る黒い戦士が居るらしい
あいつらかな?
お、共闘できそう
あれ、何かおかしいな……
駄目だ……それをしてはいけない!
いけないって言ってんだろ(怒)
いけない、いけないと言ったのに……その地獄の道連れは……
総じて悲しみに包まれる
でも戦力として結構役立つので倒すに倒せない
BADANを倒したら説教(物理)やぞ

☆BADANを倒したい無力な無改造の方々
→BADANと戦える改造済みの方々に!
お客様満足度ナンバー1!
なお起源が違う為グロンギ化はできないしアギト化も難しい
でもまぁ改造できないでもないので……できた!
BADANが滅んだ後?
大丈夫大丈夫!
本郷さんがきっと面倒見てくれるよ!
ところでハイブリッドインセクターって話があってですね



リアル日付で祝日ネタとかやるの夢だったんすよ
前はバレンタインでやれたので今回は一種の嘘予告的な
でも嘘予告って難しいな……
しぃしぃ?!
あてぃしぃ~
遣隋使ぃ~
エステティック○BCぃ~
剛田武ぃ~
見上げる星ぃ~
それぞれの歴史が輝かないので当然続きません
ところでこの話エイプリルフール過ぎたらこの位置にあるのめっちゃ読むのに邪魔になりそうだけどプロローグの前に置いたほうが良いんですかね?
でもあの形式だと邪魔なんですよね
初めてみたSSの冒頭にいきなり番外編が纏められてる時のあの得も言われぬ気持ちは何なんですかね
酢豚パイナップルくらいの気持ち
間違えて番外編から読むと貝食べたらまだ砂結構はいってたくらいの気持ちになりません?
活動報告とかの方に置いたらいいんですかね
消すのは……ほら、せっかく書いたものを消すのは躊躇われるしぃ……
しぃしぃ?!
そういう訳で、次回こそは轟雷といにゅいの視点の本編です
次回こそが気長にお待ち下さい



・追記
話数を移動させると感想がずれるという事で場所はこのままです
気まぐれで続きが書きたくなったら容赦なく本編の中に差し込まれます
導入部分を継ぎ足したから書くとしたら青森から新宿に向かった後からになるかも
こっから描写して、ショッカーライダーとの戦い、戦い終わって非ライダー認定、戦力の増産編……みたいにしていくかもしれない

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