オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
なんでここにイクサの人が?!
などという安直な思考とリアクションをするほど、俺は自分を落ちぶれた生き物だとは思っていない。
それは意識の喪失から目覚めて見たのが馴染みのない天井板だったからといって、知らない天井だ、という程に想像力に欠けた行為だからだ。
人の長所とは考える事にある。
記憶を探って対処法のわかる出来事ならばともかく、どうすれば良いか、最善の行動がわからない場面において重要になるのは想像力である。
戦いの中では想像力を失ったものから死んでいくと言っても過言ではない。
俺自身、自分が特別想像力に溢れている、とまで言うつもりは無いが……。
未知に対し、既存の知識の組み立てやある程度の発想の飛躍、推測からある程度の対処ができる程度には柔軟にやれているつもりだ。
イクサの人の様なお姉さんにおかえりなさい、という言葉をもらうならもっと他のシチュエーションが良かったな、と思いつつ、思考速度を切り替える。
物理的にはともかく、脳の構造と分泌物を少しばかり弄って思考を加速させる程度ならお手の物。
まず最初に。
イクサの人が母さんを訪ねてくる、というのは、イクサの人の語る母さんとの関係性を考慮すればそれほど不自然な事ではない。
逆に、俺を経由して母さんの居所を知ったイクサの人が訪ねてくる事がこれまでなかった、という方が不自然とも取れる。
取れるが……イクサの人も社会人だ。
昔の憧れの先輩だからといって直ぐに現在の仕事をほっぽりだして駆けつけるなんて事はありえないだろう。
駆けつけたい、という思いがあったとしても、それで相手側が迷惑に思うかもしれないから、と、立ち止まり考えるだけの思慮深さがあった証拠とも言える。
更に言えば。
少なくとも、俺の五感及び六感で感知した範囲で、なおかつ俺の知識の及ぶ限りでは、彼女はイクサの人に擬態した別種の生物であるという可能性も低い。
つまり、彼女は俺の知るイクサの人本人な訳で。
イクサの人はちょっと姉御肌でなおかつ普段は清楚(通常の辞書に記載されている清楚という意味である)を装った義理堅い武人肌気味の人だ。
武人と言うよりも…………レディース?とかいう感じの地が稀に透けて見えるというか。
社会人になってよそ行きの顔を覚えた元ヤン、或いは元女番長というべきか。
仮に彼女が母さんへの襲撃者だとしても、この場が即座に戦場になる事はあるまい。
夕日の沈む河川敷か採石場かさいたまスーパーアリーナだ。
そして、仮に彼女が襲撃者であったとして母さんに危機が及ぶかという話になるのだが……。
………………悩ましい。
グジルから聞いた話では、母さんはベルト装着前の使徒再生アギトジル変身体の全力パンチに横入りして軽く受け止めている。
ベルトによる調整が入っていないにせよ、アギトの力は強く、一般的なグロンギであれば当たりどころによっては即死もありえる威力だったと見ていいだろう。
それが何らかの武術なり妖術なり、或いは純粋なフィジカルかはわからないが、少なくとも母さんは育児の片手間に不完全なイクサとして活動して特に後遺症もなく退職して普通に主婦業を続ける事ができる程度には強い。
赤心寺で少し修行をすればわかるが、この世界は人間に対して害のある種族こそ多いが、人間の限界値も割りと高い。
限界値に近いのでは?という義経師範に目を奪われがちだが、赤心少林拳学びたてで手加減ができているか怪しい難波さんの攻撃で後遺症が残る怪我を負った兄弟子が誰一人居なかったことからもそれは伺い知れる。
そもそも、一条さんだって普通の警察官としてのカリキュラムしか受けていないだろうに異様に頑丈だったりしたのだ。
母さんが何の変哲もない母さんでありながら、元イクサの中の人でなおかつ使徒再生アギトの全力パンチを軽くいなせてもさほどおかしくはない。
推測される母さんのスペックは人類中でも上位であると見ていいだろう。
母さん自身が簡単に害される可能性は限りなく低い。
そう、少なくとも、母さんが容易く人類の敵対種族に襲われて死んでしまうという可能性も低いのだ。
やったね。
これは安心して大学に進学して一人暮らし(ジルとグジルも連れて行くつもりだが実質一人暮らしのようなものだろう)ができる。
そして、この場を放置しても、即座に影響はないという事もわかる。
そもそも、イクサの人が語る母さんとの思い出(現状を見るにだいぶん美化されている)から考えるに、わざわざ家にやってきて戦闘に発展する可能性は低い。
無論、こういう戦士特有の久しぶりにお手合わせお願いしますデッキを駆使して来る可能性もあるが……。
そこまで行くと、昔の縁がある母さんとイクサの人の間での問題でしかないので口を挟むのも野暮というもの。
そして、マル・ダムールのある東京に住んでて常連ぽいイクサの人にあげるマル・ダムールのケーキは無い。
無い。
無いのだ!
まあそれを除けば歓迎するつもりが無いではないのだけど。
母さんがジュースもお菓子も出さなくていいっていうし。
そう言うならそれなりの理由もあろうというもの。
変にここに留まって成人した妙齢の女性同士、しかも割りと明確に上下関係がありそうな二人の会話を聞くのもね……。
俺、まだ法的には子供な年齢だから大人の話し合いとかわかんないし怖いからね。
物理的に命を脅かす敵対種族なら死力と知力を尽くして跡形も残さず抹殺すれば解決できるのでさして問題ではないんだけどね。
そうじゃない、俺に関わりのない話は別に聞かなくてもいいでしょ。
大人に注意される様な不良みたいな真似はあんまりしてないし。
なにしろ文武両道の優等生だし……。
この思考も僅か10ミリ秒にも満たないし……。
ではこの思考プロセスをもう一度繰り返してみよう。
と、考えている間にも合計23ミリ秒が過ぎてしまった。
後はお部屋で、おやつタイムにしたい。
にこ、と。
表面上の営業用の笑みではない、心からの笑みを浮かべて。
「いらっしゃい、なごみさん。これといったお構いもできませんがゆっくりしていってくださいね」
情けない表情で助けを求めるようにこちらに向けて手を上げかけたイクサの人などは見えなかったので。
すすすー、っと、足音も立てずに居間からフェードアウト。
「ああ、ちょっとコウちゃん?」
「うん?」
する途中で呼び止められた。
「最近、危ないこととかしてる?」
「んー……?
一昨年とか去年なら嘘を付くことになったかもしれない。
が、今、今年に危険な行いをしているか、と、聞かれたなら、俺は堂々と首を横に振ることができる。
まだ、今年の戦いの主目的を完全に達成した訳ではない。
が、ここまでで危険な事は起きていないし、ここから危険な戦いになるかというと、そうでもない。
こちらの能力が制限される状況を見越してハンディキャップ付きの戦いを繰り広げたりもしているが、それでも、可能な限りの安全マージンは確保しているのだ。
例えば現状、俺が二十二号であることまで含めて正体がバレて、タイムベントで過去改変を受けた場合、俺がベルトを装着する前に巻き戻されたりする場合は危険である可能性もあるが……。
そもそも、それほどに時間を巻き戻せるのであればオリジナルの神崎優衣が死ぬ前に戻すなり、もっとループの期間を長くする筈だ。
故に、俺を害する形でタイムベントを使用する事はできない。
そして、ここからの戦いで俺を除く十三のライダーと同時にフルスペックで敵対する場面があったとしても。
それ以上の事が起きたとしても。
俺の側とて切り札は既に手の中にある。
「そうよね。……そう言ってるけど?」
にこ、と、イクサの人に微笑みかける母さん。
疑うべくもなく穏やかな心からの笑みだ。
笑顔とは本来どういう時に浮かべる表情か、なんて話をする輩も居るが。
俺たちは社会的な人間で野生動物ではないので一緒の括りにされるのは困るのである。
だから当然、イクサの人が『うぅっ……』と言いながら萎縮しているのは笑顔が原因ではなく、それ以外の理由があるのだろう。
まぁ、初手正座な時点で母さんとの関係性からくるものだろうとは予測が付くのだが。
予想もついたのでこれ以上巻き込まれない為にも部屋に戻るぜ。
「コージ君、後でお部屋に行ってもいいかな」
「ん……いいですよ」
別段イクサの人が嫌いという訳ではないし、母さんとのお話が終わったあとでなら何の問題も無い。
お話が終わるまでにケーキが残っている訳もないし。
お部屋に来たなら買い置きの羊羹とお茶くらい出してあげよう。
イクサの人の言葉に頷き、背を向けて部屋に戻る。
「『なごみさん』に『コージ君』ね。…………十くらい歳が離れた男の子と名前呼び?」
「ああ! その目やめ、やめてください! そういうアレじゃ! そういうアレでは無いんです! そういう目で見られるアレでは……! 携帯は! 警察は! 警察は勘弁してください!」
ああいうやり取り、なんだかバブル期終盤のギャグ漫画っぽいなぁ。
振り返って見るつもりは無いけど、スマホ持って通報しようとする母さんの腰に曲線を描きながら跳ぶ涙を流しながら縋り付くイクサの人という図が簡単に想像できる。
前より少し早めに生まれた俺でも古めに感じる。
ジェネレーションギャップというやつか。
―――――――――――――――――――
それからしばし、数十分の後、部屋にて。
「ああいう風に言われたけど、先輩だって人のこと言えないと思うのよ」
お出しした羊羹をひょいと口に放り込みながらのイクサの人の感想がこれである。
どういう話をしていたか知らんけどそんなに懲りてないな?この人。
「俺はそんな悪い気はしませんけど」
母さんは確か十七だか十六の頃に俺を産んだが、それは確かに父さんと愛し合っての事。
当時の事を語る父さんが少し遠い目をする程、父さんを見初めた母さんのあの手この手が激しかった、というのは事実だが。
つまりそれは、それほど母さんが父さんの事に関して本気だった、という事になる。
俺が生まれて早十七年。
それほどの時間を経ても未だ仲睦まじくしているところからして、父さんも当時から憎からず思っていただろうし、今でもそれが変わっていないのは間違いない。
母さんのあの発言が、軽々しく年の離れた異性に手を出すな、という忠告であるのならば、互いに名前呼びである、という点はそれなりに重く受け止められたのだろう。
イクサの人と本気でどうこうなろうと思っている訳ではないが、仲良くなろうとした結果名前呼びに持ち込んだのは、少なくとも母さんからすれば、年の離れた異性としては少し分不相応な親密さを感じられたという事だろう。
イクサの人もそうであれば、それだけ油断を誘えている、という事になるのではないか。
そんな事を考えていると、こつん、と、頭を小突かれた。
「そういう事を軽々しく言わないの。軟派に見えちゃうわよ?」
注意されてしまった。
めっ、とばかりに額を軽く小突かれ、少しだけ眉根を寄せた表情で人差し指を立てている。
ううむ。
図らずも心がときめく。
俺の心がチョロすぎる。
幾ら相手が戦闘力高めで黒髪ロングストレート年上綺麗なお姉さんだからといって。
ときめくな俺の心、揺れるな俺の心。
恋とかするといざ虫になり変わられたりオルフェノクになってしまっていたりする時にきっとストレスとか凄いぞ。
……イクサのベルト、多分ある。
装着はしてないけど、女性が普段持ち歩くものとしては大型過ぎる鞄が怪しい。
常人の鼻では気付けないだろう、珍しい配合の合金、知らない金属の匂いもする。
匂い自体は薄い。
電力は通っているがあくまで待機状態に過ぎないようで、内包する熱量から推測するにここ二三日は本格的な運用はされていないのだろう。
そうして嗅覚を強く意識すると、薄っすらと付けられた香水の匂いに、正座で蒸れたであろう膝裏からの汗の匂いなども混じってくる。
移動はバイク……ではない。
臀部の蒸れの匂いはあるが、頭部からはそれほど汗の匂いは感じないのでメットはしていないだろう。
電車か新幹線? といったところか。
専用バイクは無いが…………イクサのベルトがあるわけか。
ううむ。
むむむ……。
流石に、ここで短絡的に襲ってしまったら、イクサの人を気絶させるまでに母さんが気付いてしまうな。
母さん的に、流石に自分の後輩が自宅で自分の息子に性的に襲われるというのは、許容範囲の外になるのではないだろうか。
この状況からだと本格的に俺から襲うという形になってしまうから後も怖い。
既にレントゲン等の検査はどうとでもなるが、今後も社会の中で生きていくなら前科持ちにはなりたくない。
生体実験の過程でレシピができた、耳かき一杯程度でどんな堅物でも性的に緩やかになる類の薬も、今からでは盛る事はできない。
できれば、お酒の席などでおつまみのチョコなりに混入して、ある程度酒が進んだ時点で食べてもらうと、不自然無く効果を発揮できるのだが……。
「……もどかしいなぁ」
「変な事は考えるものじゃないわよ」
「それほど変な事は考えてないですよ」
「じゃあ、何考えてるか言ってみなさい」
「ここで穏便になごみさんを押し倒すにはどうすればいいかな、と」
ごすっ。
明確にゲンコツを落とされた。
さっきよりも気持ち程度痛い。
「……穏便に済ませたいなら、まずは押し倒す方向から離れなさい」
あけっぴろげなこちらの発言に対し、少し頬を赤くしたイクサの人がゲンコツを解きながら注意してくる。
かわいい。
「はぁい」
まぁ、こういう冗談の類は何度か言っているので、これで警戒される、という事はそうそう無い筈だ。
それこそ、イクサの人の家で夕食を頂いている時にこういう話をした事もある。
幸いにしてデッキの完全解析と幾度かの改造により、イクサシステムを早急に手に入れる必要性は薄れている。
その内にイクサの人の家で晩酌に付き合う時にでも試せば良かろう。
「それにしても」
「はい?」
「こざっぱりとした部屋ねぇ」
「そうですか? わりと散らかってると思いますけど」
流石に、普段の様に怪しまれない程度の実験器具がむき出しで置いてあるとか、小間使い代わりの小型ヘキサギア・実験助手のスケアクロウ型とかは隠しているが。
一般的な同学年の男子の部屋を参考に怪しまれない程度にものを置いているのだけれど。
「本棚も……機械工学、解剖学、薬学、医学、物理学、天文学、考古学……?」
「安心してください、ムーもありますよ」
「安心……?」
魔法系の資料は収集が難しいので、毎月一通りのオカルト系雑誌を購入し、糸口になりそうな部分のみスクラップしている。
ムーだけ残しているのはカモフラージュだ。
笛木奏自体はただの物理学者として存在しているのだが、取り寄せた論文の写しを見る限り、今のところはただの優れた物理学者に過ぎないらしい。
娘さんはまだ生きているとの事なので、娘さんの容態が悪化しはじめたら監視を送る程度でいいだろう。
「あ、ドラえもん」
「あと三年くらいしたらアニメの声優全員変わりますよそれ」
「まっさかぁ」
笑い飛ばすイクサの人。
ほんと、まさかの話だけど、仕方がないのだ……。
毎週やる仕事が無くなってしまったからか、一部の中の人の頭がホンワカパッパしてしまうのは悲しい話だけれど、そうでなくても、定命の者はいつか必ず現役を退く時が来てしまう……。
魔石を搭載しなければ……魔石を搭載しなければ……。
運命を覆そうと思うのなら……。
「じゃあベッドの下は……」
「なんで家探しされてるんです俺」
あと、スケベ本の隠し場所はまた別にしてあるので、ベッドの下は自作ルンバしか入っていない。
「その冷蔵庫とか……あ! 喉が乾いてきた!」
拳を手のひらに落としながら、あ! ではないが。
お出ししたお茶がまだ半分くらい残ってるんですが。
「次なごみさんの家行った時に同じような振る舞いをしていいなら開けますけれども?」
冷蔵庫の電子鍵を必要としない扉から瓶のコーラを取り出し差し出す。
まさかキンキンに冷えた瓶コーラの上の棚に魔石で変異した各種山の生物の生体標本が詰め込まれているとは夢にも思うまいよ。
同じ冷蔵庫に入れたからって害があるわけじゃないしね。
「もっとこう……お年頃っぽいお部屋が見たかったのだけど」
わきわきと形にならないリクエストを表現するように指を蠢かせるイクサの人。
「お年頃……うーん」
同学年の男子は結構な割合で財布に装着式のゴム風船を入れていると聞くが。
生中派だしなぁ。
モーフィング避妊とモーフィング性病回避があるので、基本的に気持ちよさ優先だ。
ジルもグジルも難波さんもプレイ内容を鑑みるに同じだと思う。
「RC未確認生命体四号with警視庁から提供された最新高性能バイクとかありますよ」
「……今はなんでも商品化するのねぇ……」
ビートチェイサーに乗った四号のラジコンを手に持ち、しげしげと眺めるイクサの人。
残念ながらこの次元では販売されなかったので、記憶を頼りに再現してブラッシュアップした自由研究で提出する予定だった自作品なのだ。
頑張ればジャンプとかもできるぞ!
「でも……うん、よかった。男の子って趣味してるわ」
「女々しい振る舞いはしてないつもりですよ」
「マル・ダムールで会う度にケーキセット食べてたから……」
なんでや! 男の子もケーキとか大好きやろ!
あ、いや、待てよ……?
「もしかしてここ、押し倒して『じゃあ男らしいとこ見てくださいよ……』みたいにした方が良かったですか? なごみさんのお部屋に置いてあるレディコミみたいに。なごみさんのお部屋に置いてあるレディコミみたいに!」
「実行に移さない理性は認めるけど改めて確認しないで頂戴」
いやでも、ああいう本が置いてあるってことは、そういう願望も少なからずあるって事にならない?
俺も未練がましく取ってあるバニー本、実際にプレイに取り込めた時は嬉しかったし……。
お尻部分の布地をずらしても不思議な接続方法で座標固定された尻尾を弄った時の反応を見て聞いた時、なんだかんだで楽しかったし……。
一般参加者を殲滅すればザギバス……ファイナルゲームだ。
そしてこの最終戦は勝とうが負けようが、神崎士郎の目的が達成されなかった時点でタイムベントされる。
そして、俺が首尾よくオーディンのデッキとタイムベントの起点を手に入れても近いタイミングでタイムベントの試験を行うことになる。
そうするとイクサの人に何をしても無かったことになるのだから、近い内に試してみよう。
理論上魔石を搭載していない人間でも感度3000倍とかアホやらない限り後遺症は残らない筈だから、色々試してもいい筈だ。
イクサの人は頑丈そうだから二十倍スタートでいいよね。
「言っておくけど、そう簡単に押し倒せるとは思わないでね」
「はい」
実際、一切の投薬なりをせず、なおかつ俺がこの人間態で挑むとなれば、押し倒す俺と押し倒されまいとするイクサの人で無差別格闘の如き熾烈な寝技の応酬が始まるだろう。
純粋な馬力でなら優る自信があるが……単純に、横になった状態での戦いに慣れていないので苦戦を強いられるだろう事は簡単に予測が付く。
じゃあイクサに変身してファンガイアと戦うイクサの人がそれに慣れているかと言われると首をひねるのだけど。
イクサではないストリートファイター時代とかありそうな人なので、マウントからのラッシュが得意技である可能性は否めない。
モーフィングパワーありなら身体から鋭いトゲなり刃なり生やせば終わりなのだけど、人間態限定だとどうなる事か……。
今どきは超能力者も増えてきてるので、単純に寝技から逃れる為に思いっきり衝撃波を俺を中心に発生させるというのもありかもしれない。
或いは麻酔薬を仕込んだ注射器を隠し持つとか。
極悪死刑囚を故郷の酒で丸焼きにしてコテンパンに返り討ちにできる中国拳法の達人も麻酔薬を食らうと即落ちして街のチンピラにかわいい財布を盗られそうになったりするから、これは有用であると考えていいだろう。
などと、内心で幾つかの寝技シミュレーションを走らせていると、イクサの人がジト目を向けて来た。
「……だからって、苦労すれば押し倒せるとも思わないでね?」
「えー」
思うだけならタダでは?
麻酔薬も自作だから実質タダだし。
「えーじゃないの!」
「ちょっと強めに押せ押せで攻めたら雰囲気に流されてくれそうだし……」
フィジカル的にはギリギリまで抵抗しそうだけど、ある一線を越えられるとくにゃりと折れそうな雰囲気はある。
あとアナル弱そう。
「あぁ、もう……私は、今はそういう事考えてる余裕が無いから」
テーブルに肘を付き、片手で頭を抑えながら溜め息を吐くイクサの人。
次いで出た言葉は先までの悪ふざけをしていた時とは異なる、深刻そうな、真剣な口調だった。
「お仕事忙しいんですか?」
「ん……まぁまぁね。オフの日も多いけど、いきなり仕事の連絡が来る時も多いし」
ふむ。
イクサの人の所属する素晴らしき青空の会の主目的は人類を捕食対象とする魔族、ファンガイアの殲滅にある。
富豪がトップを張ってるだけあって権力も多少あり、ちょっとした警察沙汰ならもみ消せる程度には組織力がある。
が、反面調査能力には欠けており、ファンガイア以外の異種族を知らず、人間でない種族をとりあえずファンガイアとして当てはめて殲滅対象にしたりとガバも多い。
おそらく、彼らはファンガイアを狩るつもりでオルフェノクを狩りの対象としているのではないだろうか。
流石に魔化魍は間違えないだろう、とも思ったのだが、実は人間サイズのただの怪人にしか見えない魔化魍だって一定数存在するので、こちらも巻き込んでいる可能性は高い。
そして、実質敵対的異種族に対抗できるのは青空の会の中ではイクサのみ。
忙しくもなるだろう。
「俺に手伝える事があれば、なんでも言ってください、と、本当なら言いたいところなのですが」
「受験生だもんね」
「あ、いえ、受験は別に……優等生なので」
「わー、生意気。……何かやってるの?」
じ、と、見つめる視線の質が変わった。
野生の勘、戦士の感というものだろうか。
優れた戦士は相手の普段の所作から戦闘力というか、身体操術の質を見極める事が可能だ。
身体をある程度動かせる、という点で俺がこの人に疑われる理由は無い。
俺が幾つかの格闘技や武術をかじっているのは結構前に話している。
だからこれは、武術かなにかをやっているか、という問いではなく……。
何故か、ミラーワールドでの戦いを察知されたか。
「そですね。ちょっと、私的な案件で……」
「お姉さんにも秘密?」
むむむ。
お姉さんムーブをしてくるとは……。
とてもありがたい話だ。
実際、ミラーワールドでのライダーバトルに関して、そして陽炎の正体に関しては二十二号の正体程に徹底して隠しているとは言い難い。
だが、全方向に無条件でバラしていくつもりは毛頭ないし、隠せるなら隠し通す。
基本的に、疑似ライダー陽炎の変身者であるというのが俺の隠している秘密である、と、そう誤認させる為の処置だ。
だから決定的な証拠を突きつけられて逃げようがなくなるか、或いは、一度隠れてから変身して駆けつけるのでは間に合わない場面でやむなく変身する、というのでなければ、今後共に秘密として守り通さなければならない。
頼れる相手を作れ、という、本郷さんからのメッセージが少しだけ頭を過ぎるが……。
ここは、テーブル越しに少し腰を上げて乗り出してきて首を傾げるお姉さんムーブだけを有難く拝領するに留めておこう。
「コウジの秘密を知りたいって?」
がちゃ、と、戸を開けてグジルが、そしてジルが入ってくる。
「コウジは……コスチュームでのプレイとか好きだな!」
好きだけども。
「貴女は」
「こいつはジル。そして私はグジル。これがお茶のおかわり」
持っていたお盆をダァンッ! と勢いよくテーブルに置くグジル。
ここ最近家事全般の技術を磨いているからか、勢いよくテーブルに叩きつけられたにも関わらずお盆の上のお茶は一切こぼれていない。
おかわりの置かれたテーブルの残り二面にグジルとジルが腰を下ろす。
腰を下ろしたジルが美しい所作で粉薬をイクサの人のお茶のおかわりに流し込む。
サーッ!
グジルがほほえみながらそのお茶をイクサの人に差し出した。
「媚薬しか無かったけどいいかな」
「良くないわよ?」
「そっか……」
真顔で返すイクサの人にグジルが悲しげな表情で項垂れる。
その様子を尻目にジルは次いでグジルのお茶に、俺のお茶に、自分自身のお茶にも粉薬を入れていく。
サーッ!
「これなら?」
「そうねー対等ねー。……じゃないわよ!」
ややノリツッコミ気味にイクサの人がテーブルを叩きながら声を荒げた。
「だって仲良くしてる年下男の子の部屋で二人きりとか絶対コウジのコウジ狙ってるだろ! 混ぜろよ!」
『おんあおおああいえ、あういえあんおうえっううえああおうあおうお』
対抗するようにテーブルを叩きながら叫ぶグジルに、二人をなだめる様に……、というか、二人の様子を気にすること無く楽しげに、しかし実際何を言っているか解読するのは憚られる提案を口パクでのみ行うジル。
助け舟を出しに来たのか、それとも前から話に上がっているイクサの人を見物しに来たのか。
まさか本気で媚薬飲ませるつもりで来た訳ではないだろうけど。
どちらにせよ、固くなりかけた空気を弛緩させるのには成功したようだ。
休みとかの集中力ある時にわっせわっせとこうして文章をこさえている訳ですが
書いててだんだん自分でも何を書いてるかわからなくなってくるときがあるのです
わからない時には一旦完成させて投稿して意見を求めたりするのです
それが今回の話
まぁ見せるに値する話じゃないから消せと言われても投稿したからには消すのは忍びないので消さないのですが
つまり感想とかもらえたりすると嬉しいのです
☆普段とキャラが違うのは普段と絡む相手が違う一見してただの高校生(人間態)
ここ数ヶ月新たな戦場に身を置いてるけど主観的に危険かと言われると別に……くらいの人
戦場ではなく狩場なのでは、という疑問があると思われるが、実は無防備な状態でファイナルベントの直撃を受けたりはしていないのでノーガードで急所に高い威力のファイナルベントを食らうと命の危機に直面するかもしれないのでつまり油断している
油断ではなく余裕というなら神崎士郎から抽出できる技術を全て吸収してからにしよう
少し前にイクサの人に関して姉が居たらこんな人かなとか友人にレビューしていたな
あれは嘘だ
でもイクサの人と難波さん、どちらかしか助けられないよと言われたら難波さんを助けるんじゃないですかね
いや、手助けしなくても生き延びそうとかそういう話ではなくてですね……
黒髪ロングも好きだけどバニー好きの流れで金髪も好きだけど実はその需要は既に満たされていたりする
☆十くらい歳の離れた男の子を下着含む洗濯物を置いたままの家に度々招いたり二人で一緒に映画見に行ったりするし互いに名前呼びだけどそれは母親経由で縁がある友人だからで別段やましいところは無いイクサの人ことなごみさん
名字はおいおい出していこうと思います
名前が出るのが早すぎるって?
普通はこれでも遅いくらいだと思うけどどうだろうか
知り合いというかもう友人と言っても差し支えない男の子が何か危ないことに手を出している可能性を考慮してベルトも持参していた
仮に今回の来訪時に母親が居なかったら普通に押し倒されてベルト解析されていたかもしんないけどそうはならなかった
押し倒されて、と、ベルト解析される、がどうしてつながるかってのはアギト編の後の龍騎編までのつなぎの話の辺りに書いてたと思うのでチェックしていただければ
☆主人公の事は息子なので当然色々把握しているけどそれは母としては当然なので別段おかしなところは何もないママン
よくよく考えたら山奥で俗世から生活を切り離して修行しているだけの一般人である義経師範だって素手で怪人殺せるんだから、昔イクサとして戦ってた母さんがジルの変身体のパンチを受け止められても全然おかしくないな!
なぁんだ安心!
な!
!
でも年の差があると色々大変だと思うけど大丈夫?
高齢出産は母体にも影響があるし
え、年の差はどうにかできるの?
そう……
うーん
じゃあいいわね!
私の見てないとこで私の後輩をファックしてもいいわよ!
これくらい普通の母親でも言う
言わない……?
いや、言うね!(鋼の意思)
FANZAで見たもん!
母親の友人や後輩をファックする展開本当にあるもん!
悟空も言ってたもん!
ホウェートシテューって言ってたもん!
流れに乗ってシチュー作りたいけど浄水場浸水して断水してるから作れないの悲しい……
夜勤明けに、一眠りして起きたらお肉ゴロゴロのカレー作ろーって思ってお肉買って帰って寝て起きたら断水してんの悲しい……
夜中緊急警報携帯にガンガン入れるなら、今日何時から水止めますよーみたいなのもいれておいてほしかった……
インスタント麺はお湯じゃなくて水でも作れるって?
水が出なくなるとはね……
みんなもポリタンクの一つ二つは常備しておこうね
最近のお米は最悪研がずに炊いてもまぁまぁ食えるからね
割りとスーパーでもお茶とかは残ってたりするからそれを使うのもいいと思うの
☆お客さんにお茶のおかわりも持ってきてくれる家庭的な元グロンギかつ現役ムセギジャジャなグジルとジル(迫真)
サーッ!
モーフィングパワーありでもなしでも媚薬くらいは作れるけど普段は使ってないのだ
使う時でも脳内にちょくで働きかけるからあんまり服薬したりはしない
どっちかっていうと足腰ガクガク言ってる時に無理やり身体動かすのに使ったりする方が多い
ところでヒロアカでのオールマイトに対する態度がヤンデレストーカーすれすれだからってサーッ!ナイトアイとかうまいこと言ったつもりの方は正直に手を上げなさい
サーッ!が女だったらサイドキック時代にオールマイトに睡眠薬飲ませて『私が彼の後継を産んで育てる……(恍惚)』とかやってそうとか思った人手ぇあげてー
手を上げてもいいんですよ!
みんなが見てるから手を上げにくいんですね!
じゃあみんな顔伏せて目つむって
はい、サーッはヤンホモと思う人ー
……はい、今手を上げた人は死者をあんまり冒涜しないようにしましょうね!
でも原作で死んでるから生き延びさせた上でヤンホモに覚醒させるなら一種の救済だから冒涜にはならないよね?
死んでるよりはいいからね!
グジルの肉体は定期的にモーフィングパワーで再成形されているので、実は髪色くらいは比較的自由に変えられる為、需要のある金髪にしてみたりという日もある
金髪濃いめの日焼け跡フォームとかね
☆蚊帳の外にいる人
この人出てないから説明いらないんじゃないかって?
いや、書かずに、今回は全ヒロインが一斉に顔を合わせるラブコメ回でしたね!みたいな事を書こうとも思ったんですが
それをできるほど非道にはなりきれなかったというか……
因みに主人公とイクサの人が関係を持った場合、最初はジルグジルの事もあってそれほどショックは受けないんだけど
本人と出会うと想像よりも美人で想像より大人のお姉さんで
わー綺麗な人だなー
うん、こんな綺麗な人なら、交路くんが惹かれるのも、わからなくは……
ってなって、ぽろぽろ泣き出しちゃう
なんなら交路くんとっちゃヤダーとか幼児退行しちゃう
そっからイクサの人があやしてちょっと仲良くなるみたいなね?
ところでにじさんじの動画を最近ちょくちょく見てるのですが
赤ちゃんと化したライバーの方を視聴者があやすという配信を見てですね
世界はまだまだ未知で溢れているんだなぁ……となった
おぎゃる需要は知っていたのですが
おぎゃってる相手をあやす需要があるとは……
あと配信時間七時間のゲーム配信とか見ると、なんだかんだどんな業界も過酷なんだなぁと
☆きょうのわんこ
おやすみです
イクサの人程勘が働かない相手ならどうにかなったのですが
どうにもならないのでミラーワールド側の主人公自室でスリープ状態で待機する以外無いのだ
今日のミラモ
今日のミラモは、とある地方都市、小春家に住むロードインパルス君
媚薬を巡って喧々諤々の人間たちを横目に待機電源だけでぐっすりと横になる姿は、一見して春の終わりの暖かさにまどろんでいるよう
でも、いざ探知範囲内に野良の人類敵対種族が現れたのなら、戦いの時間
大好きなボール遊び(手足をもいで死なない程度に転がす)
ご主人が投げたボールを楽しそうに持って帰る、ロードインパルスなのでした(連携攻撃)
☆実験助手のヘキサギア・スケアクロウくん
フォルム的にこれだけは自作のロボットですって言っても良さそう
実際はスケアクロウにフレキシブルアームBを四本くらい付けた子供くらいの大きさの機体
来客中なので屋根の上で薄型ソーラーパネル付きの傘をさして待機している
立場的にはジャービスではなくアイアンマン初代映画のメカアーム的立ち位置
メモとお財布を渡せば堂々と買い出しにも出せるぞ
浸水など無く、水道以外無事で自宅でまぁまぁ生活できてる分際で言うのはなんなのですが
やっぱり早く水道は復旧して欲しいですね……
夜勤はまぁ良いとして、日勤が2日以上続くと洗濯が間に合わない
兄貴宅に風呂と洗濯機借りに行くにしても夜中だと迷惑になるし
難しいものです
というか、職場の方はちゃんと水が使えているかが心配で仕方がない
ていうかうんこも気軽にできないのがつらいのです
つまり、水が復旧するまではなかなか更新されないか
うんこを堪えながら書くSSになりますが
それでもよろしければ、次回の更新も気長にお待ち下さい