オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

60 / 207
59 颯爽脱獄! 新たなる戦士!

人間の心というものはままならないものだ。

ふと暴力的な気持ちが心を満たす時もあれば、何もかもを捨てて人里離れた山奥で座禅を組んで過ごしたくもなる。

一処に熱中していたかと思えば、少し時間を置くだけでなぜそんなに熱中していたのかもわからない程に心が凪いでしまう事もある。

この様な曖昧な方向性や熱量は言うに及ばず、願いですらも一つでは済まない。

自分の中の願いが全く矛盾してしまっているなんていうのはそう珍しい話でもない。

反発し合う願いが無くとも、叶えたい願いが自らの倫理観に反する、という話であればしょっちゅうだろう。

 

この世界で平和に、平穏に過ごしたい。

この恐ろしい世界を一度跡形もなく焼き払ってしまいたい。

 

……一見して矛盾し合う願いであっても、単純な要素に分解した上で再構築すれば、矛盾のない一つの願いとして成立する事もあるのだが。

少なくとも、俺にこの世界を跡形もなく焼き払う事はできない、ないし、粗方を焼き払った後の身の保証も無いので、考慮にも値しない。

 

とても単純な例として、秋山蓮の願いが挙げられる。

恋人の意識を取り戻したい、ないし、健康な状態に戻したい。

そして、その実、秋山蓮という男は結構な糞が相手でも、相手が人間であれば殺す事に躊躇いを覚えてしまうくらいには善良である。

 

もしも、万が一、本当にどんな願いでも叶うというのであれば、秋山蓮のこの悩みは完全に解消する。

優勝した際に、ミラーワールドやミラーモンスター、仮面ライダーによって齎された被害をすべて無かった事にしてくれ。

こう願えば恋人は意識不明では無かった事になるし、自分が殺したライダーも死ななかった事になる。

現に、この願いはある世界では叶っている。

まぁ、願いを叶えた結果ではなく、ライダーバトルの何もかもがノーゲームになったからこそ、なのだが。

 

推測になるのだが、この願いを叶えるだけの力はこのライダーバトルには無い。

そもそも優勝者の願いをかなえる、というのは、最後に主催側のライダーが勝って主催者の願いが叶えられる、という意味でしかない。

そして主催者、神崎士郎の願いは単純明快、神埼優衣の延命だ。

 

神崎士郎が神崎優衣の延命を諦める最後の周において、秋山蓮の願いが曲がりなりにも叶ったのは、神埼優衣に与える予定の命が譲渡されたからだろう。

他の、例えば……時間にも空間にも縛られない無敵の力が欲しい、なんていう願いには対応できないだろう。時間は限定的にどうとでもなるだろうが。

そもそも願いを叶えるというシステムが存在していないのだ。

本当に優勝者の願いを叶えるとしても、それを叶えるには神崎士郎の努力が必要になってくる。

 

たとえば、全人類でライダーバトル。

神崎士郎のデッキは機械的な装置なので、製造にも普通はコストが掛かる。

全人類に配布、というのは難しいだろう。

単純に全人類をライダーというか戦える、変身体のある体質に変化させる、という話であれば、こちらにお話を持ってきていただければどうにかなるので、恐らく今、画面上で右から左に流れている募集要項に従うなりして頂きたい。

いわゆる視聴者全員プレゼントのお知らせというやつだ。

やもすればED後かつ予告前にジルなりロードインパルスなりが和やかかつコメディータッチな感じで説明してくれるかもしれない。その際ホワイトボード等筆記用具は没収するが。

 

勿論ここまでの話はジョークの一種だし、俺は相談されたからといってやるつもりはない。

俺の持てる手段での変化となると、最終的に人類の誰もが俺やダグバと等しくなる可能性があってとても危険だ。

俺は全ての人類に自衛手段が必要だと思っているのであって、全人類が俺を打倒する事が可能な力を得ればいいと思っている訳ではない。

というより、どれだけベルトの制御装置を試行錯誤した所で、魔石を搭載している以上はンに辿り着く可能性はゼロではない。

ここまで頑張ってきている以上、アドバンテージは欲しい。

ダグバの同類がランダムポップする様な世界にするつもりはないワケだ。

 

話は戻る。

幸せになりたい、良い暮らしをしたい、というのであれば、それはデッキを貰った時点である程度叶っていると言っていい。

言っては何だがカードデッキが一つあるだけで金を得る程度の悪事なら働き放題だからだ。

空き巣強盗強姦殺人、ぱっと思いつくだけで幾らでも可能だ。

勿論、監視カメラ等には気をつけるべきだが……。

良心が邪魔をする、なんていう話は受け付けない。

願いを叶えるために殺人バトルロイヤルに加わっている時点でそいつは大体ろくでなしだ。

善人ぶられても知らん。

 

そして、傷病等の治療に関してはそう難しくない。

それこそ、神崎優衣に与える予定の新たな生命を使えばなんとかなる。

なんとかならなかったとしてもそれは知らん。

というより、新たな生命を吹き込まれる、という状態がどういうものなのかわからない。

生命エネルギーの消耗によるものなら問題ないだろうが、免疫系の病気とかには効くのだろうか。

新たな生命を得る事で肉の器も新品の完全なものになる、というのであればどうにかなるのかもしれんが。

或いは沢木哲也ないし真の津上翔一の如く偽りの命を与えて、という形に近いのかもしれない。

 

……こうして見ると、結構な割合で神崎士郎は人の願いを叶える事ができる様に見える。

本当に、ライダーバトルでしか神崎優衣の延命は不可能だったのだろうか。

不治の病の金持ちを手軽に治して協力を仰ぐとか……。

彼のコミュ力の問題は知らない。

妹の命は救いたい、でも自分のコミュ力は鍛えません、全て自力でやります、と決めたのは神崎士郎だ。

自己責任である。

願いを叶えたい系の連中はこんなんばっかりだ。

俺は良いんだ。

眼の前に鏡を置いて同じ文句を言った事があるからな。

反省した所で改善を望めないからどうにかこうにかやっているのだし。

 

逆に。

願いを叶える事ができたとしても、願いを叶えてまで協力を仰ぐ必要がない、というのが一番悲しい。

俺が願いを告げるべきは神崎士郎だ。

その他、今年のライダーバトルに参加している連中は俺が抱える願いには一切必要ない。

脱落するぜ!

と言われたのなら、おう、元の生活頑張れよ! と送り出す所存だ。

勿論、その後のそいつを食べて食いごたえが増した野生のミラモンを餌にする為に監視は付けるかもしれないが。

 

実際、自らを蝕む不治の病を治す為に不老不死を願うらしい弁護士の人は、哀れに思わないでもない。

が、治すか治さないか、と言われると……。

恐らく治せるが、治す理由は一切無い。

悲しい話だ。

ほうっておいても死ぬ相手を、折を見て殺さねばならない。

手間だ。

ただただ、手間だ。

だが、ほっといて他のライダーとの戦いに乱入されたりしても面白くない。

マグナギガもロードインパルスに食わせるには良さそうだし。

飛び道具持ち、大砲持ちのミラモンはまぁまぁレアなのでぜひとも食べさせてみたい。

……む、こうして見ると、割りと殺す理由はあるな。

良かった。

 

が、それよりも重大なイベントが近づいている。

未使用の契約のカードが複数手に入るかもしれないイベントだ。

慎重に研究を重ねており、多少なり成果も出てきてはいるが、契約のカードの複製は一筋縄ではいかない。

予備が三枚も手に入れば、研究は飛躍的に進む、かもしれない。

 

だが、俺は既にデッキを手にしてしまっている。

あの特別なデッキを手に入れるには、一手間が必要だろう。

そして。

俺は必要なもののためならば、手間は惜しまない。

 

―――――――――――――――――――

 

今年に起きる出来事に関して、日付はそれほど当てにならない。

例えば俺の知る知識の中では時期的に生きている筈のライダーだって死んでいる訳で。

或いは、タイムベントを繰り返す毎に起きる……かもしれない細かな事象のブレなどを考えれば、大体この時期だろう、という推測で動くのは問題が有る。

これに対処する方法として、事件が起きるタイミングを見計らう、のではなく、自分から事件を起こす、という手法を取らせてもらっている。

いわゆる先手必勝。

ライダーが何時戦いを挑んでくるかわからない、どのタイミングで脱落したのかわからない。

なら、こちらから戦いを挑めば良いし、俺の手で脱落させてしまえばいい。

 

或いは、事件が起きるきっかけとなるだろう何某かに張り付いておく、という手段がある。

今回張り付くのは北岡弁護士。

北岡弁護士は基本的に忙しい。

売れっ子の凄腕弁護士であり、抱える案件は多い。

自らの健康も鑑みて休養を取る日もあるようだが、仕事がある日も大体が俺の狙いとは関係のない仕事になる。

ミラーワールドの中から監視させると、デッキが反応する可能性もある為、小型のドローンやミラーモンスターにしていないヘキサギアなどを活用する。

 

そして、目的の案件が起きたとして、即座に向かう事ができるかと言えば難しい。

俺も平日は学業に励んでいる訳で、授業中などのタイミングで抜け出すのは考えものだ。

 

慣れた気配に視線を向ければ、開けっ放しにしている缶ペンケースの内側、磨き上げて鏡の様になった一面に、ロードインパルスの顔がドアップで映っていた。

スンスン、と、頭部前面先端に組み込んだセンサーを一通り動かした後、顔を離し、ミラーワールド側の鏡面が壊れない様に加減をして、カリカリと筆箱の蓋裏を引っ掻いている。

板書をノートに写していた難波さんが未知の気配にビクッと身体を震わせたのが見える。

幸いにして教師には見つからなかったが、隣の席のクラスメイトに心配されているようだ。

申し訳ないことをしてしまった。

 

ふと思うのだがミラーワールド側の鏡面を破壊した場合、現実世界からミラーワールド側に居るだろうミラモンなどはどの様に映るのだろうか。

いや、それを言ったら道路で運転中の車などはミラーワールド側ではどの様に処理されるのか。

今までミラーワールドで勝手に動いているものと言えばミラーモンスターとミラーワールドのライダー、野良ファンガイア探索中に目撃した市街地を結構な速度で飛ばしているバイクに乗った神崎士郎くらいのもの。

言ってしまえば車なんて、綺麗に維持しているのならガラス以外も全面鏡面のようなものだ。

……いかん、これは深みに嵌ってしまう考えだ、今はやめておこう。

 

勿論、ロードインパルスの内部には通信機も仕込んでいるし、俺の持つ携帯に通信を入れる事は不可能ではない。

が、授業中にはマナーモードにしていたって内容を確認できないので、この様なアナログな方法で知らせるように仕込んでいるのだ。

このロードインパルスは魂を吹き込んだ唯一無二の個体であると共に、全てのヘキサギアを管理する母機でもある。

つまり、こいつの管理下の機体が事態が動いたのを確認したという事だろう。

なんとも間が悪い。

もうそろそろ今日最後の授業が終わるが、それだけに今保健室へと抜け出すのも不自然極まる。

そこから掃除、ホームルームとなれば更に時間が掛かる。

俺の知識の中では、デッキが渡されたのは昼以降、日が沈む前。

少しばかり夕日が差し込んでいたが、光の色合い的に完全に夕方、というわけではなかった筈だ。

今時期は日が沈むのが遅くなりつつあるとして、十六時か十七時、その間と思われる。

 

間に合うか……?

間に合わなければ、力づく、という話になるが……。

 

―――――――――――――――――――

 

関東拘置所。

凶悪犯を収める独房、その中で一人の男がぼんやりと外を眺めている。

いや、果たして本当に外を眺めているのだろうか。

頑丈な鉄格子で覆われた上、外から開けることもできないカーテンが掛けられた窓からは、布越しに日差しこそ入ってくるものの、外の景色などは確認のしようもない。

常人の目では外を見ることなど出来ようはずもない。

 

だが、男は間違いなく外を見ていた。

外の景色を眺めるのでもなく、沈む夕日から差し込む赤でもなく、外を、外にいる全てに苛立ちの視線を向けている。

誰が、という意味で言えば、直近で男を怒らせた担当弁護士だろう。

だが、それは短い期間での話ではない。

うつむき加減に、見上げるように、睨みつけるように、視線の届かない外の全てを見つめる男は、ただ、外にある世界全てをその飢えた獣の視線でじぃっと見詰めているのだ。

 

ふと、男が振り返る。

食事の時間には早く、男に面会を求めに来るのは担当弁護士くらいのもの。

誰かが来ることはそうそう無い。

だが、何かが居る。

野生の獣の如き直感がそう告げていた。

 

檻の外を覗く。

……誰も居ない。

気のせいか。

そう思い振り返る。

 

「おはようございます」

 

落ち着いた声色で挨拶をしてくるそれは、全身鎧。

コミックの中から抜け出してきたような、浅倉にとっては馴染みの薄い見慣れぬ姿。

 

「なんだ、お前。何処から入ってきた」

 

浅倉の言葉に応えるように、鎧の男が片手を上げて応える。

 

「とっておきの良い話を持ってきました」

 

「いい話?」

 

「さっきの弁護士を叩き潰したりできるお話です」

 

「そりゃあいい」

 

にや、と、薄暗い笑みを浮かべて答えながら、浅倉の拳が鎧の男に飛ぶ。

言葉に嘘は無い。

自分を無罪にできなかった無能をぶん殴ってやりたいという思いはある。

だが、浅倉の中では既に目の前の鎧も殴ってやりたい相手に含まれていた。

佇まいか、見透かすような言動か、見下し騙しにかかっている様な雰囲気か。

どれが原因、という事も無いだろう。

ただ、言語化されない苛立ちがいつものように浅倉を動かした。

 

「それです」

 

だが、届かない。

殴り抜ける勢いで振るった拳が鎧の顔面に届かず終わる。

動きとしてはただ一歩下がったのみ。

殴り直す事は難しくない。

 

「っあぁぁ!」

 

獣、いや、蛇の如き掠れた声で叫び、再び殴る。

消えた。

正しく目の前の鎧が消え失せる様を目の当たりにし、

 

「怒りを、憎しみを叩きつけるのです」

 

耳元で囁く声。

視線だけを向ける。

仮面が無ければ息すらかかりかねない距離。

機械的な獅子の意匠を頂くのっぺりとした仮面。

獅子面の鎧が、浅倉の肩越しに、紫の直方体、デッキを差し出してくる。

 

「戦いが貴方を待っている」

 

「戦い……?」

 

「そう。勿論、あの弁護士も居る」

 

「ふぅん……」

 

浅倉の表情がやや和らぐ。

それは警戒を解いた訳でも、内心で考えを巡らせている訳でもない。

 

「ここから出られるんだな?」

 

やるべき事が決まり、刃を向ける先が変わったというだけの話。

その刃が、いずれ再びこの鎧に向く事になったとしても。

 

―――――――――――――――――――

 

ミラーワールド内部。

遠くに関東拘置所を臨むビルの上。

浅倉威の暴れようはここからでも存分に見て取れる。

予め威力を見せておいた為か、ミラーワールド内部の独房の壁をぶち破り、鏡写しの関東拘置所を派手に破壊しながら外に出てきた。

首のこりを取るようにぐるんと首を回し、手に下げたVICブレードを振るう。

それなりに派手な脱獄ではあるのだが、ミラーワールドという目撃者の出にくい、そしてライダーバトル関係者以外では自由に出入りどころか認知すらできていない場所である為に、極めて密やかな脱獄とも言える。

挙げ句、今独房周辺に存在した監視カメラは全て機能を停止し、看守の類も突如として発生した未知の昏睡ガスにより安らかな休息を貪っている最中だ。

アレが脱獄した事実が判明するまでしばしの時間が掛かるだろう。

 

「どういうつもりだ」

 

背後からの声。

俺の勧誘活動に茶々を入れずに非実態のままじっと見ていた神崎士郎ではあったが、事態が一先ず落ち着いたのを見て確認しに来たのだろう。

当然か。

自分がライダーバトルの参加者として勧誘しに来た相手の場所に既にライダーバトルの参加者が居て、挙句の果てに自分よりも早く勧誘を済ませ、デッキまで渡していたのだ。

正常な判断力を持つ主催者であれば理由を問うてくる。

 

「ほら、俺ってば、ライダーをそれなりに倒してるじゃないですか」

 

「勝ち残る為であれば、当然だ」

 

「ええ。でもね、考えてもみてくださいよ。他にも参加者は一杯いるのに、だぁれもまともに戦いやしない。そうなるとね? 最後に戦って倒すライダーってのは、まともに戦いもせずに決勝戦に出るようなもんですよ。これはいけない」

 

「だから増やした、と」

 

「もともと勧誘するつもりだったんでしょ?」

 

神崎士郎は既に肉の器を失って久しいが、それでも所持品、特に、他人に譲ることを前提としたものに関してはどうしても実体でなければならない。

カードデッキを持っている以上、どうしても動きに出るのだ。

まぁ勧誘しに来るだろうという前知識があったから余計に分かりやすいというのもあるが。

 

「最早、新たなライダーは必要ない」

 

「あのライダーを除いて?」

 

頷く。

 

「お前の持つ、使っていない疑似デッキを渡せ」

 

「破棄しろ、ではなく?」

 

「預かっておく。ライダーバトルが終われば、返そう」

 

優しい……。

まぁ破棄したら後々回収したり修復したりで知らない所で配布される恐れがある、という事なのだろう。

 

「じゃあ、交換しましょ?」

 

「……交換?」

 

「貴方の持ってる、浅倉威に渡す予定だったデッキです」

 

振り返り、神崎士郎に対し手を差し出す。

くれ、という端的な意思表示だ。

 

「増やさないなら、もう要らないでしょ?」

 

「何に使う」

 

「俺の願いを叶える為に」

 

視線を合わせる。

仮面越しである為にこちらの目は見えていない筈だが、確かに視線が絡み合うのを感じる。

俺の言動の真意を推し量っているのだろう。

だが、仮に嘘を嘘と見抜ける人だったとしても、俺の言葉に嘘を感じ取る事はできない筈だ。

何しろ一切嘘は言っていない。

あのデッキを手に入れるのは、間違いなく願いに近づく為の確かな一歩に繋がる筈だ。

 

「ライダーは、最後の一人になるまで戦わなければならない」

 

「別に協力者を作るわけじゃないです」

 

ロードインパルスとヘキサギア達で十分だ。

受験を控えた難波さんや、日常生活を謳歌しているジルを連れてくる必要は一切無い。

 

「強くなる為に手を尽くしたい。……ライダーバトルの参加者なら、当たり前の心構えでしょ?」

 

「……………………なるほど」

 

応えるまでの時間が少し長かったな。

下げていた手が一瞬ピクリと動いたのは、ポケットなり懐から何かを取り出そうとしたのか?

サバイブのカードを渡すか迷った、という話であれば少し惜しいことをしたかもしれない。

或いは、サバイブのカードと新品のデッキ、どちらを渡すかで迷ったか。

もしくは、警戒心が動いたか。

 

「いいだろう」

 

ちゃ、と、金属部品が触れ合う音と共に、神崎士郎がポケットから一つのデッキを取り出す。

紫のブランクデッキ。

四隅の模様が金なのは単純な個体差か、性能差か。

だが、間違いなく、浅倉威に渡される予定だったデッキだとわかる。

 

「お前の健闘を祈っている」

 

差し出されたデッキを受け取る。

 

「ええ、ご期待に沿う様な戦いをお見せしましょう」

 

―――――――――――――――――――

 

神崎士郎と別れ、追跡や監視が無いことを確認しながら拠点である赤心寺地下研究施設に戻る。

途中、浅倉に渡した特別仕様の疑似デッキに組み込んだ発信機で変な動きをしていないか確認。

どうやらちゃんと北岡弁護士のお家に向かっているようで、余計な被害は出ていないらしい。

デッキと一緒にヘビ革のジャケットとズボン、ブーツも渡しておいたからな。

囚人服から着替える為に何処かのお店やお家に盗みに入る手間が無いぶん早く到着したかもしれない。

めっちゃ怪訝な顔をされながらも衣装を押し付けた甲斐があったというものだ。

 

懸念があるとすれば早く到着しすぎて、脱獄の一報が届くよりも先に浅倉が北岡弁護士のお家に到着してしまった場合と、変身したまま襲撃をした場合だ。

チェーンロックも無しでドアを開けたならいかに護衛の人でも不意を突かれるだろうし、変身したままだったらそのまま扉ごとバッサリ、或いは、シュートベントのマシンガンで蜂の巣だ。

契約モンスターとして新たに製造した人造ミラモンのハイドストームに搭載され、シュートベントとして使用されるマシンガンは弾体が矢にも似た専用弾頭で、射程は短いが貫通力は高い。

下手をすればノックもチャイムも無いまま、ドア越しに蜂の巣だが……。

幸運な事に、浅倉は徒歩で弁護士事務所に向かっているらしい。

ハイドストームに乗って移動すればまた話は変わると思うのだが、あの見た目の機械生物に乗りたがる物好きでも無いのだろう。

あと多分、飛び道具でぶっ殺すよりは手に持った刃物や鈍器で殺すのを好みそうではある。

 

途中、鏡面の無い山林に入った時点で転移。

更に拡張しちょっとした武装の試射室も備えた実験施設に到着。

この間数分。

しかし、高速でミラーワールドを駆けながらの転移であった為に勢いを殺しきれず、ロードインパルスの脚部ホイールが横滑り。

ドリフトするように滑りながら静止するロードインパルスから転げるように飛び降り、片手を着くようにして着地。

ぐっ、と、堪える身体を引っ張るように残る慣性に任せるように再び、跳躍!

着地!

数歩後ろ向きに歩き!

お辞儀、身体を起こして片手を上げて!

くるくると横に回りながら前進!

再びポーズ!

 

「うおおおぉぉぉぉぉ! スペシャルなデッキだぁぁぁぁっ!!!」

 

俺の感情の昂りに任せた情動的な動きにシンクロするように踊ってくれたロードインパルスの前足を手に取り軽くステップ。

俺の叫びと、金属の床を踏み鳴らす音が激しくはあるが、耐爆構造であるこの武装試験室はちょっとやそっとで音漏れもしない。

ここでなら感情のままに騒いでも怒られたりはしないのだ。

 

ついに。

遂に揃ったのだ!

契約のカードを万全の状態で研究する為の条件が!

 

ここまでのライダーバトルは、最早過去のものとなる!

ここからが!

ここからが、俺のライダーバトルだ!

待っていろよ、オーディン!

待っていろ、ゴルトフェニックス!

俺が全てを解き明かしに行くのを!

 

この俺が、時の秘密に手をかけるのを!

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 





話としては戦闘シーンも人死にも無い、平和な幕間
暴力らしい暴力も生身の人間の空振りパンチだけなので今度こそ暴力描写は無しと言って良いでしょう
実際ここから何が起きようが描写が無い限りは平和な世界なのです

☆王蛇になるブランクデッキ欲しさに先んじて凶悪な殺人犯に犯罪し放題なカードデッキを渡す謎の獅子面のライダーが居るらしい
モーフィングパワーによって狼面を獅子面に変えて全身のディティール及びカラーリングを変えた疑似ライダー……いったい何陽炎なんだ……
でも、手は手でなければ洗えない、得ようと思ったらまず与えよ、って言うからね、仕方ないね
ゲーテとチャーリーが悪い
夢の話だからチャーリーは悪くないか
じゃあゲーテが悪い(濡れ衣)
ゲーテもチャーリー・パーカーもわかる辺り実はスパイクって教養もあるんですよね、使う場面は少ないですが
死人は生き返らないと前に言っていたな
あれは嘘だ
嘘ではないけど仮初の命を与えるのはできる
与える命をよそから持ってくればほぼノーコスト
だから事実上神崎優衣の延命は簡単にできる
が、それと病人の命をどうこうできるかは別の話
どういう病かによって治せるか治せないかは異なる
不治の病っていうけど結局どういう病なのかわからんので弁護士にはノータッチ
わかってもノータッチ
でも浅倉には手を出す
なんとなくイライラしたからで大量殺人を犯すヤベー奴を私利私欲のために世に解き放つやつが居るらしい
まぁ最終的に無かったことになるから許せ
許せ、という意識すら無く念願の契約カード三枚積みのデッキを手に入れて喜びのダンスを踊る

☆生まれたときから悪魔とあいのりしてるけど本人に悪気はない忠犬ロードインパルス君
授業中はミラワ側の教室内の机をどかして主人公の横で身体を横たえて待機してるぞ
精密動作がすごいので巨体に似合わず鼻先や爪先で缶ペンケースの蓋も開けしめ出来るし、その中の小さな鏡から主の姿を確認したり、知らせる為に音は鳴るけどギリギリ傷はつかない力加減で缶ペンケースの裏側を掻くこともできる
空の餌皿を搔いてアピールしている訳ではない
当然ダンスもできる
主が突発で踊ったカービィのクリア後ダンスっぽい動きもできる
できた
実は難波さんとは面識が無い
紫色の大きな蛇は美味しかったらしく、食べた後は満足そうに陽炎に鼻先をすりすりして喜びを表現したりした

☆勉強会前のちょっとした運動時になんだか見られている感じがしてドキドキはしていた難波さん
同じ視線を教室で感じて、あれー?
あれー?で終わったのは何かあったなら交路くんが知らせてくれるよね、という信頼がある
問えば今起こってる戦いを知る事ができたけど……
まぁ受験生に新たな戦いを知らせるのは酷だよね、という気遣いにより蚊帳の外

☆二人のPから勧誘される素質を持つ優秀なライダー候補
特別製の疑似デッキに初心者向けの解説機能が付いてるお蔭で原作より効率行動が可能
光の屈折を変化させて平面に鏡面を作り出す新機能
簡易補助AI
発信機
キルプロセス
などの新機能を試験的に搭載されている
凶暴性は相変わらず
相変わらずだけど、二十五歳になるまでは懲役刑食らう様な犯罪を犯していない、或いは露見させていない辺り、実はライダーバトル参戦の為に色々と過去をいじられたのでは、という疑惑はある
ライダーバトルの一年しか弄れないってなると、SPでの蓮の彼女がホモの元カノって設定が説明つきにくいしね
語られてないだけで本編でも元カノだったのかもしれないけど

☆ハイドストームくん
メカイカ
刃物も飛び道具も持ってる
触手とかから考えるとストライクベントは鞭かな?
地味にドローンとか搭載してたりするし、水中用でなく空中もふわふわ飛べたりする
ベノスネーカーの代理

☆ジャパンスネークセンター
言わずとしれた群馬に位置する日本最大級の蛇の研究施設
食堂では蛇料理を提供しており、裏メニューで仔マムシの踊り食い、蛇の心臓生ぐいなどができる事で有名
……だったのだが、近年保健所の指導が入りその手の裏メニューは提供されなくなってしまったらしい
悲しい
職人さんの蛇の骨を一息にビーッっと剥がすテクニックは死ぬまでには一度は拝見したい妙技

☆プロメア
ちょっとネタバレ




銀髪緑髪?おかっぱのヒロインがメカデザに文句を言う主人公のためにアドリブでかっちょいいデザインの外装を作ってくれたりする献身的なところがとても良かったと思います
マッドバーニッシュの変身体見てもわかるけど、センスあるよねリオくん
結論としてはあれ
相棒枠に女顔の男を入れるとね……そういう視点が生えちゃうよね……
アラヤダ!
あれは立派な人命救助の場面なのですから、そういう嫌らしい視線を向けてはいけませんですわよ!
気持ちはわからないでもありませんけれどもね!
見逃していたけど、近場のイオンシネマで一週間限定再公開してくれたの超助かる
本編さっぱり終わった後に流れる氷に閉じ込めてが名曲過ぎる
一本で完全に完結するから非常に後味が良い
ファーフロムホームも面白かったけど、新たなMCUの開幕って感じでどうしても後を引く感じがね……
気軽に見れるエンタメ映画という点でこっちの方が好きまである
えっちな格好したあやねる声の女の子は……
二時間でアクションやって恋愛要素までやったら時間パンパンになっちゃうから仕方ない面もあるんではないですか?

☆死後にまで色々残していくトニー
トニー・スタークにもハートがある
ハートはあっても凡人の心はわからないんやなって
あるのはあくまでトニーのハートだからね
アイアンマン3の時もそうだったけどさぁ……トニーはさぁ……


ここまでは良いのだけど
ここからどう進めるかのヴィジョンが浮かばない
ヴィジョンは浮かぶどころか飛べるのにね……
ハンマーも使えるし
原作の日常ギャグパートがほぼほぼ使えないのが問題でもある
そろそろ地震とか台風で絵が剥がれて濡れたり破れたりからのタイムベントを始めるべきか
梅雨時期が恐らくタイムベントの多発地帯
梅雨を超えると湿気で絵がカビてゆいぃぃぃぃ!タイムベント
ってなるからどうにでもなる
次回
起動せよラミネートマシン!
お楽しみに
って感じで変身状態の陽炎がひたすらラミネートマシンでああああああ!って叫びながら絵のラミネート加工をするシーンが本編で出てくる
あまりにタイムベントが重なるとデッキ返還時にラミネートマシン持ったままやってきてライダーバトルを終結させるために手伝えって言ってラミネート加工を手伝わせたりする
そんくらいしか展望ないぞ!
うそ、龍騎編ラストバトルの相手は決まった
と思う
未定!


そんな未来への切符はいつも白紙(可能な限り美しい言い換え)なSSですが
それでもよろしければ、次回の更新も気長にお待ち下さい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。