オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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54 炸裂せよ!憤怒のライダーミンチ!

世界一位ならどれだけガバをしても良い。

偉大なる先人の言葉だ。

一見してアホな事を言っているようだがこれも紛うことなき真実の一つである。

兎にも角にも、最初にゴールまでの道を切り開くというのは一人にしか許されない事だ。

最善最速を目指すための標も無く走る以上、いかなる行動も試行錯誤の一つとなる。

ガバと呼ばれる行動はつまりそれなのだ。

一見して単なるロスにしか見えない行動も最終的に役に立つ事がある。

当然、一見して単なるロスだが実際にも単なるロスである場合だってある。

だが、それがロスとなるかは実際に駆け抜けてみなければわからない。

一発で分かるロスもあるがそれはそれだ。

 

だが、それでも完全に何の知識もない状態でゴールを目指すというのも違う。

俺にはこの一年に関しても知識がある。

最終的に目指すべき地点が存在する以上、そこへの大まかな道筋というのは作れるもの。

 

この一年での俺の最終的な目的は、ライダーバトルの終結……ではない。

そんなものは知らん。

神崎士郎製ライダーを全員殺せば終わるのだからそんなものを目指す必要が無い。

何なら今からちょっと東京に行って高台から超感覚でデッキの持ち主の位置を探り当ててしまえば次の瞬間に終わらせることだってできる。

だが、そんな無為な事をするために態々受験を控えたこの年に東京くんだりまで来て戦っているのでは無い。

 

兎にも角にも時間制御技術なのだ。

勿論、神崎士郎の持つ時間制御技術が完全無欠のものという訳ではないのは百も承知だ。

剥がれた絵を一枚元に戻す為に数ヶ月巻き戻している以上、少なくとも細かい時間の指定をしての巻き戻しが出来るわけではないだろう。

実際、神埼士郎が神崎優衣に新たな生命を渡す段階まで行った時間軸は割りとある筈だ。

その上でループが繰り返されている以上、通常の道筋では神崎優衣は新たな生命を受け入れないという事になる。

そして、それを修正するのであれば、態々最初からやり直す必要もない。

何時間か巻き戻して新たな命を渡す時の言い回しを変えてみるとか。

何日か巻き戻して新たな生命の出処をごまかす言い訳を考えるとか。

それをしない、できない、という事は、少なくとも世界の時間を巻き戻す、という並大抵の技術者にはできない技術は、運用法が限りなく限定されている、という事だ。

 

が、少なくとも時間関係の技術を研究する取っ掛かりとしてこれ以上の物件は存在しない。

少なくとも、オーディンは戦闘中に時間停止中行動と思しき挙動を見せている。

これがあれば、どんな強いライダーでも時間止めちゃえば無防備だよなぁみたいなクソインチキをかましてくる薄汚い時間改変者のドブ臭い内臓を引きずり出して耳障りな怪音と鼻が曲がるような呼吸をきゅうぅっと締め付けて永遠に止めてやる事も可能だろう。

 

勿論、時間停止中活動可能にも色々な種類が存在する可能性は大いにあるので、どうにかカッシスワームは捕縛して実験体にしたりしたい。

が、こちらは現在所在がわからんのでパスだ。

そもそもこのカッシスワームを捕獲して実験体にする為にも今年の間に神崎士郎から時間制御技術を回収しておく必要がある。

最悪、首から上、脳味噌が残っていればそこから回収できないでも無いのだが……。

残念な事に神崎士郎の死体の所在がわからない。

これは日本でミラーワールド関連の実験を行うよりも前にアメリカで死亡が確認されていたりと、ループを繰り返す中で神崎士郎の持つ時間的秩序が破壊されてしまった為なのだろう。

少なくとも現在、俺はあるとも無いとも言えない、存在が不安定な状態の肉体を探し出す術を持たないのだ、不甲斐ない事だが。

 

脳味噌をかき混ぜる代わりに、肉体を失った神崎士郎を捕獲して文字通り情報を引きずり出す、という方法も考えたが、これは難しい。

恐らく、俺が持つ、魂などと呼ばれる記憶情報を含有した生命エネルギーの塊を弄くり回す技術では、必要な情報を引きずり出す前に神崎士郎は修復不能なまでに破壊されてしまうだろう。

大雑把にマラークの魂を掴んでおくくらいしか出来なかった時から比べれば成長はしているつもりだが、今では逆にテオス式のそれが混ざってしまっている為、一人の魂を細かく分析するというのが難しくなってしまった。

テオスが人間は好きだが個人はそれほど、というタイプだったので余計に、だ。

これも後に改善を予定しているが、今しばらくの時間が掛かるだろう。

 

また、四国方面にはそもそもそういう時間停止などのインチキにはインチキ(不思議なこと)で返すタイプの方が居ると思われるのだが、俺には彼を相手にして実験を行おうなんていう度胸はない。

というか、彼の直感がどうなっているか不明なのでまず顔を合わせたくない。

俺が二十二号であるという事実をプライバシー保護に関する警戒心が昭和な方々に知られる訳にはいかないのだ。

なんだ文通の為に雑誌に実住所やら電話番号乗せるとか、怖いわ昭和。

彼には四国限定悪の組織と戦い続けてもらうか、平穏にステーキハウスの経営でも続けていて貰おう。ヘリパイロットかも知れんが。

 

ともかく。

俺の今年の最終目標は神崎士郎の持つ全知識。

最低でもオーディンのデッキ及び契約モンスターを解析できれば良し。

……本当に、こんな素敵な技術を生み出せる頭脳であれば、新たな肉体を与えてでも保護しておきたい所ではあるのだが。

欲張りはいけない。

彼には彼の目的があり、それを果たしたり諦めた後に元通りの性能を発揮できるかはまた別の話なのだ。

そもそも、ライダーを同士討ちさせた挙げ句に最後のライダーを殺し、その生命を神崎優衣に渡し、受け入れさせて延命する、などというクソゲーの中のクソゲーみたいな事をやっている相手にそれ以上の苦労を背負わせる必要はない。

……人を犠牲にしてまで生きたくないというなら、そのへんの動物の命を継ぎ合わせて作るとか、事情を話して色んな人に融資を頼んで少しずつ生命エネルギーを分けてもらうとか、そういう方向転換をすれば意外とすんなり行きそうだとか、そういうもしもの話は置いといて。

 

そう、そうだとも。

俺の道筋は今年を乗り越えても続いていく。

しかし、今年に限って言えば。

俺よりは神崎士郎の方が余程難しい道を歩んでいるのだ。

たとえそれが選んだ手段から来る難しさだったとしても。

それは彼が、かけがえのない大切な家族に、幸せに、人並に幸せな人生を歩ませてやりたいという、愛ゆえの行動なのだ。

 

だから、そう。

愛する妹が危機に晒されたので。

今行使できる技術でもって守りました、と。

そういう話でしかなくて。

 

巻き戻しという行為の是非で言えば、決して、決して。

デッキ返せ、とか。

クソが、とか。

死ね、とか。

そういう一言で切って捨てていい程に下らない話という訳ではないのだ。

彼の行動には正当性がある。

彼にとって世界で唯一の宝物なのだ。

それを守るための行為に、なぜ怒りを覚える必要があるだろうか。

 

巻き戻っただけだ。

失いはしたが、リカバリーできる範囲だ。

同じ道筋をたどれば、大体取り戻す事ができる。

後に丸々歴史を書き換えようとするクソに比べれば。

彼は自らに残った最後の希望を守る、健気な一人の、哀れな一人の人間に過ぎない。

それを責め立てる事の、なんと愚かしい事か。

 

今、タイムベントを発動した指が悪いだけなので、その爪を剥がす事で償いとしようとか。

次に同じ事ができない様に引っこ抜いておこうとか。

いっそ縛り付けておこうとか。

逃げたらいけないので脚も落としておこうだとか。

 

そんな、そんな、そんな、的はずれな意見は良くない。

良くない。

そんな事は非生産的で非文明的だ。

何の利益も産まない。

そりゃあ気分はとてもスッとするだろうけど、それで失うものの方が多いじゃあないか。

 

もっと建設的な事をしよう。

失われたものを取り戻しに行こう。

次こそは変な中断が起きないよう手を尽くそう。

それが、文明的で文化的で理知的な人間として理想的な行動なのだ。

 

今、俺ができる事を。

収集を。

実験を。

そして、戦いを。

ライダーバトルをしようではないか。

そうとも、今年はライダーバトルの年なのだ。

別段人を滅ぼす種族という訳でもない一般人が、ライダーとなって、自らの願いの為に殺し合う年。

基本には忠実にいかねばなるまい。

決して、この戦いが必要な事だとは思わない。

避けることもできる戦いだろう。

いっそ虚しい戦いだと言う人も居るだろう。

 

だが、それを言う資格は誰にもないのだ。

どんなものであれ、願いを叶えるために、皆必死に戦っている。

それが全ての基本なのだ。

願いを叶えるために、その障害を取り除いていく。

人類は皆ライダーと言った人も居る。

そう、そのとおり。

根源的に見れば、人は争う生き物。

いや、あらゆる生き物がそうだ。

生存とは闘争とイコールで結ばれる。

そして、そこに明確な目標があれば、それを避ける事はできない、決して!

だからこのライダーバトルは!

ライダーバトルは!

 

仕方のない事なのだ。

無為な暴力という訳ではない。

目標を果たすための1プロセスに過ぎない。

ライダーの死も。

暴力も。

一つのシステムに組み込まれた歯車の一つ。

 

だから。

これは、決して。

振り下ろす先に困った拳の行き場などではない、という事を、忘れてはいけない。

 

そして当然の話ではあるが。

俺は一旦忘れる事にする。

試行錯誤である以上。

ガバが出るのは仕方がない事だ。

 

―――――――――――――――――――

 

高見沢逸郎が入浴を終えて寝室へ向かうと、窓の外が燃えていた。

いや、窓の外ではない。

燃えているのは室内だ。

今、自分が居る、火の気の一切無い自室が、炎に包まれている。

よく見れば自室なのかと疑う程に、家財の類の一切が粉砕されて瓦礫と化していた。

無事な自室の中から、音もなく焼け落ちる自室を、呆然と見つめる。

 

「選ばせてやる」

 

鏡合わせの様に立つのは、艶のない鎧を、炎の赤で照らした黒い戦士。

体色を同じくする四足の機獣を従えた戦士が、低く抑えた声で告げた。

 

「戦って死ぬか、逃げて死ぬか」

 

―――――――――――――――――――

 

鏡の中の異常を察知し、霧島美穂こと仮面ライダーファムが駆けつけた時、全ては終わっていた。

まるで爆撃でも受けたかの様な高見沢邸は、最早鏡合わせの世界とは思えない程に崩れ、焼け落ち、見る影もない。

そして、彼女が探す相手、自らの雇い主であり、ライダーバトルにおける協力者でもある高見沢逸郎こと、仮面ライダーベルデ。

それは、探すまでもなく見つかった。

 

「高見沢……」

 

()()が高見沢逸郎、ベルデであると示すものは、最早殆ど残されていなかった。

例えるならば、黒いボディスーツを着せられたゴム人形だろうか。

狼に似た意匠のライダーが持ち上げるそれの顔面に、ベルデのカメレオンに似た仮面の残骸が無ければ、ライダーかどうかすら判別できたかどうか。

力なく垂れ下がった手足に、胴に、ライダーの身体を守る装甲は殆ど残されていない。

地面に転がる、力任せにねじ切られた様な金属が無数に散らばっている。

 

「よし。……だいたい掴めた」

 

黒い戦士──陽炎が何事か呟き、手にしていたベルデを地面に落とす。

どさ、と、地面に落ちたベルデは、まるで空気の抜けたゴム人形の如く、デタラメに手足を投げ出している。

中に、本当に人が入っているのだろうか。

半ばから折れた胴体に、背骨や肋骨の類が入っているとはとても思えない。

頭部も、頭らしい形をしているが、奇妙に撓んでいる。

中身の少ないゴム風船のように、入れ物の形が辛うじて人型を保たせているようだ

 

「ご協力に感謝します」

 

その言葉と共に、ベルデだった何かはくしゃりとしぼみ、入れ物の役目を果たしていたグランメイルもまた、消滅した。

後に残るのはデッキのみ。

それを、陽炎の脚が踏み砕く。

そしてそのまま、薙刀型の武装、ウイングスラッシャーを構えるファムに向けて歩み寄る。

思わず後ずさるファムに、陽炎はまるで天気の話でもするように語り掛けた。

 

「この仮面ライダーシステムは、人間の身体能力を最大限まで引き出す機能を有しています。元の力に機械的な力をプラスするのでなく、元の力を増幅する形ですね。つまり、カードの能力を除いた純粋な身体能力で言えば、元の数値の差が大きく現れる……貴方のような方は少し不利という訳です」

 

「何が言いたいの?」

 

「比較的楽に死ねますよ、というお話を。ええ、流石にちょっと、ちょっとだけね、冷静になれたので。彼の協力のお蔭で」

 

踏み砕いたデッキの残骸を蹴るように払いながら、カードを引き抜く。

対するファムは既にソードベントで召喚する武器を手にしている。

カードを使用させまいと踏み込む薙刀の一撃。

それは決して手ぬるいものではなかった。

頭をかち割る為のものでも無く、デッキ破壊を狙ったものでもない。

正確無比な一撃はカードを引き抜いた手先を狙う。

手首どころか指。

カードを持つ手を打ち払い取り落とさせる事が主目的の一撃。

如何に仮面ライダーとして身体能力を増幅させたとして、頑強な鎧で守られているとして、カードを手にしたままではいられないし、指も無事では済まない。

切り落とされるか、最低でも骨は折れてグシャグシャになるだろう。

 

陽炎の手からカードが零れ落ちる。

しかし、ファムのウイングスラッシャーには何の手応えも無い。

カードは打ち払われたのではなく、陽炎の手から投げ捨てられたのだ。

 

「前にも拝見しましたが、良い手だと思います。ですが」

 

ウイングスラッシャーの先端が陽炎に踏まれ、地面にめり込む。

その驚異的な強度から曲がる事も折れる事も無く、咄嗟の判断で手放す寸前、ファムの上体が僅かに地面に向けて引っ張られた。

顔面に衝撃。

ウイングスラッシャー半分程の距離を詰めた陽炎の肘打ち。

 

後方に派手に吹き飛ぶファム。

しかし、倒れ込む事はない。

食らった瞬間に背後に飛びダメージを抑えたのだ。

 

『ソードベント』

 

ファムの眼の前で陽炎が馬上槍に似た得物を構えている。

投げ捨てたカードを拾ったのか新たにドローしたのか。

対するファムはウイングスラッシャーを取り落とし無手。

だが、派手に跳んだお蔭で距離はある。

デッキから新たなカードをドローする為に手をやり、気付く。

 

「ドロー妨害、カードの使用妨害は、気取られぬ様にするのが効果的なのです」

 

デッキが、白いクモ糸の様な粘着質の何かで覆われている。

取り除く事は出来ないでも無いだろうが……。

ファムの眼の前で陽炎が馬上槍──バトルランスをぶん、と振りながら、一歩下がった。

武器の適正距離に移動したのである。

対して、ファムもまた、腰に据えていた羽召剣ブランバイザーを構える。

現状唯一使用できる武器だ。

逃げる事は叶わない。

背を向けた瞬間に背後から刺されるだろう。

契約モンスターの自主的な援護を期待したいが、望み薄。

ファムに一筋の光明があるとすれば、一合目。

バトルランスによる突撃(チャージ)を切り抜け、その隙にクモ糸を払いデッキを復帰させ、ファイナルベントを放つ。

突撃をやり過ごせば、二人の間にあるウイングスラッシャーも手に取れる。

或いは突撃の直後にファイナルベントが間に合えば、ファムのファイナルベントの特性上、陽炎の態勢を崩す効果も見込める。

 

燃え盛る館を背景に、向かい合う白と黒の戦士。

二人は、ばち、と、火花が弾ける音と共に──

 

―――――――――――――――――――

 

ハッキリと言ってしまえば。

バトルランスはランス部分が分割構造になっており。

先端が飛ぶ。

飛ばす為のギミックではなくガンランス形態への換装ギミックなのだが、些細な事だ。

いきなり槍の穂先が半分程火を吹きながら飛んでくると大体の人間は驚く。

そして、生き物はランスで貫通式を行われなくとも、めちゃくちゃ殴られると死んだりする。

頑丈な鎧を着ていてもそれは変わらない。

つまりはそういう事だ。

 

精神のクールダウンに付き合わせてしまった二人には悪いことをしてしまったかもしれない。

ベルトでのクールダウンが効かない、必要な戦闘に対する精神の高揚や激情の類はこの様に自己管理しないとならない場合が出てくる時も無いではないのだ。

だが俺が殺さなくとも大体の場合に誰に知られるでもなくひっそり脱落する連中なので……。

いいかなって。

大丈夫。

どうせこの周でも最後まではたどり着かないと思うから。

 

そして。

指差し確認。

新しいブランクデッキ、よし。

 

「ヨシ!」

 

ぐぉう。

俺の威勢のいい掛け声に、寂しい時は鳴き声の様にも聞こえる各部駆動音で応じながら、拡張した研究所内部で器用に二本脚で立ったロードインパルスも指差し確認を行う。

一人のチェックだとチェック漏れがあるかもだから、こういう二重チェックは重要なのだ。

ロードインパルスには最新鋭とまでは行かないし超技術でもないけどまぁまぁいい感じのセンサー類を搭載している。

彼以上の二重チェックの適任者はたぶん腐るほど居るけれど、二重チェック要員でしかないのでまぁヨシとする。

しかもよく見ると尻尾にも見えるトリックブレードもブランクデッキを指し示している。

つまり実質三重チェック、厳重だ。

 

あの後、一度ミラーワールドから出た上でミラーワールドに入り直し、拡声器を使ってミラーワールド内部で東京中を疾走しながら神崎士郎へ呼びかけを行い召喚。

奇妙な共鳴音と共にノーヘルバイクでやってきた神崎士郎にライダー二人の撃破を確認させた上で参加表明を行い、前回よりもかなり早くブランクデッキを手に入れる事ができた。

 

ここで選択の時。

といっても、デッキの契約カードを残しておくかどうかという話ではない。

契約カードは今回は破損からの損失覚悟で解析に回す。

そもそもオーディンとの対戦にまで持ち込めるかが怪しいからだ。

俺の知る限り、オーディン自体は負けた後に勝敗でごねたりはしない。

倒した後なり戦う前なりに関連技術の全開示が願いだよと伝えておけば、じゃあ勝手に解析しろよと契約カードなりオーディンのデッキなりを渡してくれる可能性もある。

最悪、契約は一時諦めてモンスターの方だけ残しておくとかでも良いし。

 

じゃあ何を選択するか、と言えば。

色々な優先順位だ。

 

まず、既にやってある事。

神崎優衣への護衛の派遣。

これには魂を入れていない、ロードインパルスの子機であるヘキサギアを幾らか向かわせてある。

彼女がうっかり何者かに連れ去られそうになったならそれを防ぐ事くらいは出来る筈だ。

連れ去ろうとしたやつは犠牲になるが、人攫いの類ならまぁ良いだろう。

 

これからやるべきことで順番が決まってない事。

ナイトのデッキの返却。

秋山蓮は神崎優衣を名前で呼び捨てたり妙に距離が近かったりと、なんやかや親しげなので、ナイトとしてライダーに復帰して貰えば彼女に降りかかる諸々に対応してくれる可能性がある。

返しておいて損は無いだろう。

最悪、彼が眠っている時間帯にでも遠くから窓を割りつつ部屋にデッキを投げ入れたりするのでも良い。

兎に角ライダーに復帰してもらえれば良い。

 

次に須藤雅史の始末。

デッキを奪ってボルキャンサーを殺しても、デッキがあれば復帰してあれこれやらかしそうなので、生かしておくのも問題がある。

警察の目撃者が出るといけないので、自室に居る時を狙うのは決まっている。

彼も誇り高き警察官だ。

あそこまで腐る過程で色々あったりしたのだろう。

殺すのは勿体無い気もするが、どうせ勝ち抜けるライダーではないので最後には死ぬ。

遅いか早いかの違いでしかない。

兎に角確実に殺す。

 

最後に、()()()()調()()

ライダーバトルに関する、という話ではなく、色々な事情などを知りつつ神崎優衣を守ってくれる感じの協力者が必要になる。

こいつには色々な事情を詰め込んで教えておきたい。

情報ソースをぼかしても、勝手に裏取りをしてくれる感じだとなお良い。

兎に角便利なヤツを選びたい。

 

で、今日が土曜なので。

明日の内に全部やる。

平日にまでライダーバトルなぞしたくないのだ。

俺にも生活がある。

楽しかった高校生活だって残り一年と少し。

いや、……ループすると体感時間的には延長されるのか。

………………それでも人は先に進むべきなのだ。

 

あれこれしている間にもう夕方だ。

赤心寺の地下を間借りしている以上、最低限兄弟子らと義経師範の夕食は用意せねばならない。

睡眠時間は考えないものとして、今日の夜から活動開始となる。

 

となると、真っ先にできる事と言えば……。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

そうして。

仮面ライダーシザース、須藤雅史は、誰に看取られるでもなく鏡の世界の自室で死んだのだ。

よくよく考えたら、肘を思いっきり逆に曲げてやれば大体のライダーはカードを使用できなくなる。

腕にカードスロットがあるタイプはその特徴が顕著だ。

そして地力が低いライダーはカード使用を封じられると大体詰む。

俺も気をつけよう。

 

思ったよりも早く始末できたので、一度デッキを研究所に置いて自宅に帰宅。

ジルを風呂に入れて、母さんに付き添ってスーパーの惣菜やら肉やらの見切り品を購入。

惣菜は夜食に、肉は明日の夕餉や弁当に使うらしい。

夜食を母さんと共につまみつつ、貴方も立派になったわねぇ、とか、来年から寂しくなるわ、とか、ジルちゃんも連れてくんでしょ、とか、グジルちゃんがケーキを焼いてくれたの、とか。

そういう親子の語らいに時間を取った。

改めてこういう親子の会話の時間を取る、というのはなんとも気恥ずかしいものだ。

だが、だからこそ、改めて。

こういう掛け替えの無い時間を歪めさせてはいけないのだと強く決心する事ができた。

 

あと、結構イカしたコートを貰った。

どうしたのか、と聞けば、三年生への進級祝いのようなものらしい。

学校指定のコートなどもあるのだが、色んな場面で使いこなせるのが出来る男の証明なのよ、と言われてしまった。

そしてわりと丈が長いので、素性を隠す為に使ったりもできるから便利らしい。

これを着て帽子を目深に被りつつニヤリと笑って高い所から人を見下ろしていると謎の人物的な気分になれて楽しいのだとか。

立ち去る時に裾をばさっと翻すのがポイントらしい。

実演までされてしまった。

なかなか様になっているから馬鹿に出来ない。

 

母さんは偶にこういう剽軽な意見を出してくるので油断できない。

でも生地の厚さから見て春先も着れそうなので、ありがたく使わせてもらおう。

 

―――――――――――――――――――

 

ベンチも兼ねているのであろう、天板の平たい公園のオブジェ。

その上に敷かれた占い用と思しきマットに、ダァンっ! と、勢いよくナイトのデッキを叩きつける。

訝しげに顔を上げた占い師の人の顔が驚愕に染まる。

それはそうだろう。

変身済みの仮面ライダーがロングコートに帽子のコーディネートで町中に現れたのだから。

俺ならワンチャン、この世界でライダーの代わりになりきれていないヒーローことバイクヒーローのコスプレイヤーか何かと疑うところだ。

だが、彼はその可能性を考慮する事はできないだろう。

デッキを持っている彼は、今もすぐ傍に控えるロードインパルスのお蔭で耳元が共鳴音でうるさくて仕方がないのだから。

 

「あんた、鬼相が出てるな」

 

「鬼相?」

 

しかし、占い師の人は表情を戻し、何処か浮世離れした表情で、コインを3つ弾く。

デッキを上手く避けて落ちたコインを見つめる占い師の人。

 

「三人……いや、四人か」

 

「ざぁんねん、三人でした」

 

「いや、俺の占いは当たる」

 

「じゃあ、今回はハズレだな」

 

タイガは殺していないので三人だ。

他所のミラモンの所業にまで責任は持てない。

手に下げていた折りたたみの椅子を開き、占い師の対面に座る。

 

「それに、最後には十一人になる」

 

「……の、ようだ。だが、未来は変わる」

 

どこか苦々しげに言う占い師の人。

因みに、彼は嘘つきだ。

彼の性根は今ほど優しいものではない。

彼の失われた友人へのリスペクトで今の様な性格を演じているという可能性がある。

それに、彼はどちらかといえば自分の占いが当たるという事実の方を信じている。

未来は行動で変えられる、というのは、彼の願望に過ぎない。

ある意味、自分に嘘を吐き続けているのだ。

人生はレールの上を走るトロッコではない。

未来は絶望という行き止まりではなく、希望へと繋がる出口なのだと。

しかし、

 

「そうとも、未来は変わる」

 

その嘘を、自分から行動する事で本当の事にしようとしている。

それはきっと素晴らしい事だ。

その精神はリスペクトするだけの価値がある。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これをあげよう」

 

「ふうん?」

 

コートの内ポケットに入れていた手帳を置く。

 

「なんだと思う?」

 

「わからないな」

 

「ライダーバトルの参加者リスト」

 

「?!」

 

「予定者も入ってる。脱落者もだ。大まかな人格とプロフ、そして」

 

「願いも、か」

 

何かに納得する様に手帳を手に取る占い師の人。

詳しい説明はしていないのだが、大体の事を察してくれたと見ていい。

立ち上がり、椅子を手に取り立ち上がる。

 

「神崎優衣を守れ。それが、完全な結末への助けになる」

 

立ち去る俺を追うでもなく、手帳を開くでもなく、占い師の人が声だけを投げかける。

 

「この手帳、お前の事は書いていないな」

 

「秘密主義なんだ」

 

「願いは?」

 

決まっている。

 

「平穏で、幸せな人生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







~~NGシーン~~

ベンチも兼ねているのであろう、天板の平たい公園のオブジェ。
その上に敷かれた占い用と思しきマットに、ダァンっ! と、勢いよくナイトのデッキを叩きつける。
訝しげに顔を上げた占い師の人の顔が驚愕に染まる。
それはそうだろう。
叩きつけられた衝撃でナイトのデッキが粉々に砕け散ったのだから。
眼の前でいきなりデッキ粉々に飛び散ったら驚く。
当然の事だ。
彼にはいきなり失礼な事をしてしまった。

「ごめんね?」

~~完~~




☆少し感情的になってしまったけど神崎士郎が愛する家族の為に頑張ってるって事はわかってるのでそれで別に怒ったりしないしクールダウンにはTさんとか詐欺師の人が手伝ってくれたのでほんとに怒ってないよほんとに怒ってないって言ってるだろ!という内心は表になるべく出さず不必要な暴力はなるべく可能な限り控えたほうが良いよなとたまに思うマン
世界初ミラーワールド技術解析RTA走者
ガバを受け入れる偶にダウナーになる人
略してガバナー
得意技
本物の暴力を教えること
短所
教えられた相手は大体生きていられないこと
長所
本当の暴力を教え合う事ができる相手は回想シーンで度々出てきたり強敵とか雑魚との比較で名前を出したりするなど出番が増える
弱点
腹を割って自分をぶつけ合った相手は既に死んでいるのだ
『タイムベント』フォーン♪
怒った?
『ファイナルベント』フォーン♪
怒ってないよ……!
メンタルリセットの為の運動に際し、ライダー二人撃破で神埼士郎にライダーとして適性を見せつける必要があるという理由付けが行われた
現場を見た神崎士郎は『高見沢グループに恨みがあったのか……?』とか考えてる
現時点で正体を隠しているが、この形態は仮の姿といて扱うので実は正体がバレても問題ないと考えている
二十二号と繋がらない戦闘形態というだけで価値があるのだ
実は流石に怒っていた
ベルトの精神抑制効果?
まぁまぁ……
実はテオスの力吸収前と後でベルトの内実がかなり変わっている
それが人間性にどれだけ影響があるかは不明
そもそも人間なのかというのももう不明

☆偽装用変身体・陽炎
実は前回から通してブランクのデッキに契約を移していないので仮面ライダー表記ではない
強い怪人程度の力しかない人間態主人公を、ライダーの装甲を素手で千切り取るくらいのパワーに強化できる
これはロードインパルスとの特殊なリンク状態が関係しているのだ

☆安全確認ロードインパルス君
ヨシッ!
多芸
実はコトブキヤの公式ブログで組み換えで作る二足歩行形態があるがそれとは関係なく通常形態のままで二足立ちができる
周回で主人公のリンク、及び捕食した生命エネルギーの引き継ぎが起きている
ホイールベントことグラインドサークルはバイオグリーザのヨーヨー要素を元に生み出されたカード
今回出たバトルランスはファムのソードベントが元である
という形で武装面が強化されると共に食ったモンスターの分強化されてく
……のだが、疑似ライダーとしてのリンク先が主人公であるため、相互強化がややこしくなっているという事情がある
ン階級の人間態である主人公と契約する事で強化されたロードインパルス君が主人公の偽装変身体である陽炎を強化する、みたいな……
あと、ヘキサギアとしてはワンオフなレイブレードインパルスが存在するのだが
トリックブレード、多関節の長い尻尾がある分全身での表情つけが可能でより可愛くかっこよくなったのがロードインパルス君なのです
買おうとまでは言えないが、レビューサイトとかでポージングの例とか見てるだけでも欲しくなってくる事は保証するぞ!

☆ぐにゃぐにゃたかみー
袋に入れたナッツ類を麺棒で粉々になるまでぶったたきまーす
みたいな加工を施された
主人公も反省したので次の周では優しい対応がなされると思われる

☆貫通式が行われそうになった詐欺師の人
順当に戦って負けた
実は降参したら渋々見逃してもらえた可能性がある
かもしれない
次回からは優しい対応が……ううん

☆カニ缶
仕事終わりに自宅に帰った後洗面所で歯を磨いていたら鏡に引きずり込まれた
武士の情けで変身はできた
戦闘シーン?
最適解が新武器を試していた主人公と相対してた前回の戦闘シーンなので……

☆便利な占い師さん
ホモとか言っちゃいけませんよ
なんか運命的に謎のキーマンとの出会いを果たした風だが、面倒事を押し付けられただけ
運命感じちゃってる?
ここから仲良くなるのかすげーな占い師のコミュ力
やはりホモはコミュ充

☆神崎優衣(護衛付き)
うわぁぁぁぁぁあ鏡の中からめっちゃミラーモンスターっぽいのがじっと見てるぅぅぅぅぅ!
ってなって
襲いかかってこないヘキサギアたちに徐々に心を開いてくれたらなと思う
定期的に彼女を守るために残虐行為を行うのでその道程は果てしなく遠い

☆記者見習いくん
時期的にこの時点ではまだデッキに触れてすらいない
でもホモの人の渡されたメモ帳には二人分同じ顔が載ってる

☆メモ帳
知る限りの今年のミラーワールドライダーのデータがざっくり載ってる
人のプライバシーがめちゃ入ってるのでそうそう人には見せられない






ちょっと暴力的な描写が増えてしまいましたね
でも無かったことになるという前提と制御できない感情とかが合わさるとこういう事もあると思うんだ
ファムの戦闘シーンを、という言葉もあった気がするし
でも流石に同じ相手に何回もってのはあれなので次回から時間が進みます
そこに至るまでに士郎の猫リセットが何度挟まるかは未定
今回は丁寧にホモに説明していたけど、最終的に奇声を上げながら顔面にメモとデッキを投げつけて帰る、みたいな周も出てくるかもしれない
そもそも人間を容赦なく殺してたり暴力で精神を安定させたりというのが受け入れられないう意見もありますし……
でも主人公的にライダー殺しが駄目ってんならグロンギ殺しも駄目だったよねってなるので
そういうの大丈夫って人や、駄目だけど試しに続き読んで見るって人は
次回のガバも気長にお待ち下さい


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