オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
例えば。
玩具や時計を分解した経験というのは誰しもあるものだろう。
分解して戻せなくなった経験もあれば、内部構造を理解することで新たな知見を得るに至ったという場合もあるだろう。
例えば何か物を作ろうという場面で、その作るものの構造や動作の理論が書かれただけの説明書だけを見て物を作るより、一度実物を手に入れて動作を一通り確認した上で、分解して内部構造などを検めた後の方がより完成度の高いものになるのは当たり前のことだ。
そういう意味で言えば、サンプルとなるデッキはもう一つくらいは欲しかったというのが本音だ。
貴重なサンプル、破壊してしまえばそれまでという事で、一つしか手元にない現状では禄に分解もできないし、部品の成分検査も難しい。
ナイトのデッキ自体はカード構成も含めて戦いやすい作りだとは思うのだが……。
そういう訳で。
ここにもう一つデッキを用意したのであった。
タイガのデッキ(分解済み)だ。
やはり学生は良い。
ミラーワールドから夜の大学事務室に侵入すれば容易く住所が割れる。
あとは夜に眠っている所を更にガスで深く意識を奪ってしまえば、そう難しいものではない。
こういう昏睡強盗の被害が昨今は拡大しているので、これから大学生活で一人暮らしを始めるという方々にはぜひともセキュリティの厳重な住まいを確保して欲しいものである。
さておき。
ナイトのデッキだけでは出来なかった内部構造の詳しい解析に関しても、こうして中身をばらして見ればなるほどと納得できる箇所が多々見受けられる。
というより、モンスターに由来しない機能に関して言えば殆ど解析は完了したと言っていいだろう。
尤も、契約に関わる部分の解析を逸ってしまったせいで、タイガのアドベントカードは破損してしまい契約が切れてしまったのだが、これも必要な犠牲というもの。
契約が切れた時点でこちらに襲いかかってくるかと思ったデストワイルダーであるが、アドベントカードが破壊された時点でふらりと何処かに行ってしまった。
また、契約が切れる事で一部特殊なカードも消失してしまうらしく、タイガのデッキにおける切り札とも言えるフリーズベントとリターンベントも消失。
迂闊……。
リターンベントはある意味では時間系カードの一種とも取れる挙動が見込まれただけに、ここでの損失は痛い。
次の機会があれば分解するのは別のデッキにしてこちらは契約を残したまま実験に使うべきだろう。
────さて。
こうして、貴重なデッキを一つ解析、一つ分解することで、モンスターとの契約以外に関しては殆ど完璧とも言える成果が出た。
実際、契約のカードにしても、洗脳装置を作ってしまえばデッキとの関連付けは行えるので必ずしも必須とは限らない
生き物の脳味噌に突き刺して使うタイプの洗脳装置に関しても、実は野良犬野良猫野良たぬき野良熊などを使用して研究中であり、実現はそう遠い未来の話ではないだろう。
洗脳する対象が人間ではないので人体実験が必要ないのだ。
研究は驚くべき早さで進んでいる。
何しろ八甲田山は自然豊かであるし、赤心寺の周囲もまた奥深くである為野生動物を度々見かける。
また、モーフィングパワーを治癒に転用する事が可能なのは周知の事実ではあるが、これは生体の一部パーツのみを培養して増やすことも可能である事は他ならぬ自分の脳味噌で一度ならず実験済みだ。
多くの種類の野生動物の脳味噌は必要ではあるが、種類が必要なだけで数はそれほど必要無い。
また、作用するのは首から上、脳味噌だけであり、肉体は普通の死体になるため、これは普通に可食である。
赤心寺の兄弟子達には大層喜ばれたものだ。
義経師範が複雑そうな顔をしていたがそれは知らん。
腹に入れば皆同じだと黒古毛般蔵先生も言っていた。
それでいて美味しいのだからこそ、師範も複雑そうな顔をしながらも料理を口にしてくれたのだろうし。
さて。
これで、それほど労せずしてライダーバトルへの参加チケットは手に入れた。
契約のモンスターにしても、後々正式なミラーモンスターをとっ捕まえるまでの繋ぎ程度は用意している。
後は何食わぬ顔でライダーバトルに参加してしまえば、最終的にオーディンとのご対面である。
疑似デッキでの参戦がダメというのであれば、また別のライダーからデッキをいただけばよろしい。
だが、実のところ、それよりももっと嬉しい成果がある。
デッキを、ミラーワールドのライダーを解析した上での副産物だ。
時間制御技術を手に入れる為の踏み台や、ミラーワールドに攫われた時用の脱出装置としての役割くらいしか持たなかった筈のデッキからの、思わぬ収穫である。
それは超硬物質アーメタルでもなければ、あらゆる環境での活動を可能とさせるプリフィケーションフィルターや、契約モンスターに自らの意思をダイレクトに伝えるジペット・スレッドでもない。
それは、ミラーワールドに突入する時に使ったり使わなかったりする不思議な乗り物、ライドシューターである。
ハッキリ言おう。
今年に限って言えば、そして、時間制御技術を除けば。
今年に手に入る最大の収穫はこのライドシューターである。
しかも、分解済みとはいえ、契約カードの無い正規デッキは組み立てれば作れる。
つまり、このライドシューターも二台あるという事になる。
二台あるという事はどういう事か。
片方は直せなくなる覚悟で分解してしまっても良い、ということだ。
素敵だ。
素晴らしいことだ。
ハッキリ言ってミラーワールドのライダーシステムとかライドシューターに比べたら玩具というか、逆に食玩における豪華な玩具に付いてくるちっこいガムみたいなもんである。
嘘だ。
流石にこのデッキ一つで、あとは鏡面さえあれば変身できるシステムは魅力的であるし、鏡面にしても地面に水ぶちまけて作った水たまりでも大丈夫とかいう壊れ性能なので、手に入ったのは素直に嬉しい。
だが、総合的に見て最終的に最も価値があるのはこのライドシューターと言っていいだろう。
別に、走る場面が殆ど無いくせに無駄に高い走行性能とかが魅力という訳ではない。
90度の壁を走る事ができるというのは少し走らせてて楽しそうではあるがそうではない。
インフィニティ・パワーユニット。
そう。
インフィニティ・パワーユニットである。
別に名前のとおりに無限の力を手に入れる事ができるという訳ではない。
だが、言ってしまえば実質無限のエネルギーを抽出できる装置であると言っても過言ではない。
このユニット、次元エネルギーを取り込むことで爆発的パワーを得ることができるのだ。
つまり、燃料や電力を補給する必要がない。
他のライダーマシンのいくつかが実際にガソリンを補給する日常的な場面があったりする中、このマシンは適当に放っておいてもエネルギーを生み出す事が可能なのだ。
はぁ……(恍惚の溜息)。
なんて素晴らしいのだろう。
これを解析さえすれば、時間関係の技術とは関係ないが、一つの大きな問題が解決するのだ。
無闇矢鱈と魔石の戦士を増やす意味すら無くなってしまう。
いや、安全面から考えれば当然全人類はいずれアギトに覚醒するか魔石を搭載したベルトと融合するべきなのだが、それを当面は考えなくても良くなるかもしれないのだ。
そして、契約のカードの解析に当てる残りの時間は全てライドシューターの、というか、インフィニティ・パワーユニットの分解解析に当てた結果。
劣化版、いや、海賊版のパワーユニットを完成させるに至ったのである。
この喜びを、他の誰が理解できるだろうか。
この疑似パワーユニットはまさに対人類敵対種族戦における革命と言っても過言ではない。
去年の夏、未熟なAIユニットと共に手に入れた自立戦闘ユニットの製造理論。
それにこのパワーユニットを組み込む事で、全国に敵対種族だけを徹底的に捜索追跡殺害死体抹消を行うお掃除用戦闘ドローンを放流する計画にまた一歩近づいたのだ。
無論、現状では各部部品の消耗などの問題があるため中々難しい話ではあるのだが。
自衛のために戦う必要のない平和な世界がまた一歩近づいたというのは素直に喜ばしい。
あまりの嬉しさに、ユニットを組み込んだロードインパルスで八甲田山山中を駆け巡りうっかり登山客とばったり目があってしまっても仕方がない話ではないだろうか。
しかもアダプテーションホイールの技術を流用したお蔭でこういう山脈地帯でも立体的な機動が可能になって、動かしていてとても楽しい。
勿論、安全面を考えてオリジナルのデッキから回収したデータを元に改良を施した試作疑似デッキで変身していたので、せいぜいが八甲田山の中に現れる巨大な四足獣に乗った謎の怪人の噂が広まる程度なのでこれも問題は無い。
普段は赤心寺の地下深くに作られた実験施設併設の格納庫に保管しているので、一般的な警察やなにやが山狩りをしたところで見つけることなど不可能に近い。
だがここで問題が一つ。
この格納庫への入り口、転移を使わないのであれば、本堂の床下をぶち抜いて作ったエレベーターで降りていかなければならないので、格納時にどうしても目立ってしまうのだ。
このエレベーターの起動には、複数のパスワードに顔認証声紋認証などのセキュリティの他、師範クラスの気の操作が必要になる独自の認証を通らなければそもそも入り口すら出てこない為、そうそう見つかる事はないのだが……。
ひっそりと赤心寺の本堂に戻ってきたロードインパルスを見てキラッキラと目を輝かせた兄弟子達の為に出撃シーンと発進シーンを披露している最中に義経師範が音もなく背後に現れた事に気付いた時には流石に焦った。
勿論、俺は素直な良い子なので、外を土足走行していたロードインパルスをそのまま本堂に上げた事、修行で疲れている兄弟子達を無駄に興奮させて休息の時間を減らした事、ついでに本堂の床を密かにぶち抜いて元の木材の床下に特殊合金使用の複合装甲を大胆に使用したエレベーターを作ってしまった事は素直に謝った。
しかし、それでも師範は容赦なく俺の頭頂に鋭いげんこつを落としたのである。
はぁん(悲しみの相)。
なんという事だろう。
これが日本の体罰の現状である。
エレベーターを設置するついでに床暖房も入れたから冬でも快適に稽古ができるというのに……。
きっと床暖房に感激して地べたに寝そべってうっとりしていた兄弟子達への怒りもこちらに向いて拳として放たれたに違いない。
悲しい話だ。
きっとこんな山奥で修行に明け暮れているから現代文明から離れてしまっているに違いない。
今後はこういう事が無い様に、来年から導入が始まる地デジ対応テレビは速攻でこの赤心寺に寄付してちゃんと工事もこちらで済ませてしまおう。
そしてNHKが嗅ぎつけない様にしっかりとカモフラージュもしておこう。
こう、本堂の仏像の腹がパカっと開いてテレビ画面がせり出す、みたいな……。
いや、赤心寺の地デジ対応の話は今はどうでもいいのだ。
はっきり言って、オリジナルのデッキから得られるデータは既に殆ど無いと言っていい。
既に契約カードを除けば遜色ないデッキが作れるし、契約のカードに関してはアドベントカードを解析するよりは未使用の契約のカードを手に入れるのが一番手っ取り早い。
つまり、既にこのナイトのデッキは用済み、というわけだ。
更に言えば、最終的にオーディンと対面するためにライダーバトルに参加する以上、敵を増やすのは得策ではない。
結論として、このナイトのデッキは破壊してしまうのが良いのかもしれないが……。
残念な事に、俺にはまだそれなりにまっとうな人の心というものが搭載されているのだ。
こればっかりは魔石やアギトの力で変質しようとも、自分から完全に捨て去ってしまおうとは思えないのが難しい。
無ければ苦しい思いをしなくても済むと思う時もあるが。
やっぱり、少し変わってしまっても胸の内に収めておきたい、と思うのが人情というものなのかもしれない。
不便なものだ。
―――――――――――――――――――
──秋山蓮がカードデッキを奪われてから、既に一週間が経過しようとしている。
その間の秋山蓮の憔悴ぶりは、傍から見ている神崎優衣から見てもどう声を掛けていいかわからない、いや、そもそも声を掛けていいのかと迷うほどのものだった。
カードデッキを新たに手に入れる為にライダーを探すも空振り、神崎士郎に新たなデッキを貰う為に探すも見つからず、デッキを探して当て所無く街を彷徨い、鏡の中にモンスターとライダーを見つけられないかと眺める日々。
その行動は完全に心を病んだ人間のそれだったが、蓮の瞳は正気を宿していた。
病的にデッキを、ライダーバトルを求めるのは、当然の話ではあるが理由有ってのことだ。
秋山蓮はなにかの為に戦っている。
それは以前から優衣も知るところではあった。
これまで、互いに深く干渉しない為にその目的を知る事は無かった。
しかし、ライダーバトルから脱落してしまったかもしれないと精神が弱った蓮はつい、自らの戦う理由を漏らしてしまう。
ミラーワールドの実験で意識不明になった恋人の話。
その恋人を目覚めさせる為に、願いをかなえる事ができるかもしれないライダーバトルに参加した事。
しかし、それを聞いて優衣はどうすることもできない。
兄に願い出て蓮の願いを叶えてもらう?
無理だろう。
ライダーを戦わせて最後の一人の願いを叶える、と言っている以上、本当に願いを叶えるにしても何か必要な条件がある。
そして、優衣は兄に連絡を取る手段を持っていない。
しいて言うのであれば、蓮が決して戦いをやめる事はないだろうと確信した程度か。
それは蓮も同じことだった。
心が弱ってしまった為につい口から漏らしてしまった願い。
しかし、口にしても口にしなくても、蓮の決意は変わらない。
意識不明の恋人を目覚めさせる。
そのためならなんでもする。
戦うことも、ライダーを、人を殺すことも、躊躇わない。
口にして弱まったり、逆に人に言う事で強くなるような決意ではない。
戦い続け、勝ち続け、殺し続けて勝つ。
勝って願いを叶える。
恵利を目覚めさせるのだ。
だが……。
決意だけではどうにもならない、何も変わらない。
ミラーモンスターに襲われたと思われる行方不明者を辿りながら、デッキが無い為に戦うことも出来ない。
ミラーモンスターを見る事すらできない。
今もそうだ。
眼の前で、鏡の中に、車のガラスに吸い込まれていった男を目撃したにも関わらず、何かすることもできない。
モンスターを倒す事も……。
「お困りのようだね」
不意に、背後から声を掛けられた。
赤いジャケットを羽織った上背のある優男。
薄っすらと浮かべた微笑みはどこか胡散臭い。
いや、そういう風に捉えてしまうのは今の蓮の精神状態に余裕が無いからか。
「願いを抱き、苦難を受け入れながら、今はそれに向かって進む事すらできない」
「……うるさい」
しかし、今の蓮には男の言葉に付き合う余裕は無い。
そんな蓮に対し、男はポケットから何かを取り出し、放り投げる。
ゆったりとした軌道で飛んでくる何かは緩やかに蓮の顔面に直撃するコースを取り、蓮は咄嗟にそれを掴み取る。
「これは……!」
黒い板状の箱に、コウモリを模した様な金の紋章。
一週間前に強奪された蓮のカードデッキだ。
顔を上げると、やはり男はうっすらと笑っていた。
「今日、俺達は運命に出会う……らしい」
「お前か、この間のライダーは」
「いや。そのデッキは俺も投げつけられたものでな。メモによれば『持さ主に返してあげてくだちい』だそうだ。……お前のものでいいんだろう?」
「何故わかる」
蓮の言葉を受け、男がジャケットのポケットから新たな赤いデッキを取り出す。
「占い師だからな」
はんっ、と、蓮は男の発言を鼻で笑う。
少なくとも嘘ではないのだろう。
カードデッキを奪ったライダー本人であるのなら、少なくとも人伝にでもこちらにデッキを返す理由は無い筈だ。
それこそ奪った直後に破壊してしまえばいい。
もっとも、破壊されていない事を願って未練がましく探していた以上、それを口にする事は決してないが……。
「話がある」
「俺には無い」
蓮がデッキを車のガラスに向ける。
「いいや、お前は聞くよ。あのモンスターを倒した後にな」
少しの距離を開け、男が赤いデッキを同じ様に車のガラスに向けた。
「それも占いか?」
「そうだ。そして……俺の占いは当たる」
鏡を前にした二人の姿が、勇ましい構えと共に装甲に身を包んだ戦士へと変わり、鏡の中へと吸い込まれていった。
―――――――――――――――――――
蜘蛛型ミラーモンスター、ディスパイダーは、ミラーワールドにおいてそれほど強いモンスターではない。
独自の食物連鎖を持たない、ライダーに使役されない限りは人間のみを食らうミラーモンスターであるが故にそう比較される事は無いが、多くのミラーモンスターの中では中堅どころが関の山。
しかし、それは他のミラーモンスターと比しての話でしかない。
八本の足はそのまま鋭い凶器としても振るわれ、一本一本がアーメタル製の武器による攻撃にも耐えきる程に強靭。
更には撚り合わせれば荒縄程度にはなりそうな蜘蛛の糸を獲物に吹き掛ける事で動きを封じる事が可能であり、獲物である人間が相手であれば十分過ぎる程に強い。
そしてそれは、未だモンスターとの契約を行っていないライダーにも言える事だ。
「うわぁぁっ!」
見習いジャーナリストである城戸真司が変身した、仮面ライダーのブランク体。
如何なるモンスターの攻撃にも耐える特殊強化皮膚グランメイル、アーメタル製の保護具であるブラックアーマーは、常人であればその場で真っ二つになるディスパイダーの蹴撃を喰らいながら、内部の真司の肉体に殆どダメージを与えない。
だが、それは内部の人間の肉体を保護するだけで、衝撃を打ち消せる訳ではない。
小石を蹴る様に無造作に打ち据えられたブランク体はそのまま四階建てのビルの壁に激突し、看板を破壊しながら地面へと落下する。
内部への衝撃は最低限に抑えられている為に脳震盪などの心配も必要ないが、それだけだ。
即死を免れ負傷を避けたのは事実だが、完全にノーダメージという訳ではない。
ふらつく頭で真司が辺りを見れば、先に自分を蹴り飛ばした大蜘蛛──ディスパイダーがジリジリと距離を詰めている。
一撃で死なない獲物だ。
だが、ディスパイダーというミラーモンスターにとって、それは別段不思議に思うような事でもない。
ミラーワールドにおいて即座に消滅しない、自分の攻撃を受けても死なない。
ただそれだけで、
事実として、生中な攻撃の通らないライダーが相手であっても、ミラーモンスター達はこれを仕留め命を奪い捕食するに足るだけの力があった。
まして、契約していない、ミラーワールドで活動できるだけのブランク体であれば、少し殻が硬いだけの卵の様なものだ。
攻撃を──捕食を躊躇う理由は無い。
スタジアムの日陰からにじり寄る様に近づくディスパイダーを相手に、未だ現実感が無いのか恐怖すらする事無く、戸惑い気味に座ったまま後ずさるブランク体。
ブランク体の中身である真司が危機感を抱いて逃げ出すのが先か、ディスパイダーが飛びかかり、グランメイルを破壊しないまま中身だけを押しつぶし、死亡した真司の生命エネルギーを捕食するのが先か……。
次の瞬間、鏡の中から飛び出した二台のライドシューターがディスパイダーを跳ね飛ばす。
並走するようにしてディスパイダーを跳ね飛ばした二台は真司の眼の前で停車し、屋根にあたる部分、ゲイルプロテクト・スクリーンを跳ね上げ、中から二人のライダーが現れた。
腰に剣を携えた黒い騎士風のライダー。
仮面ライダーナイト。
エイに似た盾を左腕に備えた赤いライダー。
仮面ライダーライア。
互いに殺し合う事を運命づけられた仮面ライダー達。
しかし、今は目の前のモンスターへと互いの意識は向けられている。
それはライダー同士の戦いに横槍が入る事を気にしての事か。
或いは、共に戦える事を信じての事か。
『ソードベント』
『コピーベント』
ナイトがウイングランサーを構え、それに僅かに遅れてライアが同じ武器を握る。
状況に追いつけない真司を他所に、二人はディスパイダーへと駆ける。
全長5メートル50センチのディスパイダーの脚部は相応に長く、堅く、そして強い。
仮に正面からの戦闘であれば、武器を持った仮面ライダーとそれなりに渡り合える程度には強いだろう。
ナイトがウイングランサーで斬りかかる。
グランメイルの効果で極限まで強化された膂力で振るわれる大槍をしかし、ディスパイダーは容易く前脚一本で受け止める。
同じく斬りかかるライアの大槍もまた同じく受け止める。
前二本の脚だけで事足りてしまう。
……という訳にはいかない。
ぐ、と、ナイトが前脚で押さえられた大槍を押し込み、脚を大きく開く。
すかさず押し開かれた脚の間にライアが割り込み、それをディスパイダーが口から糸を吐き出し迎撃しようとするも、吐き出された糸はライアの手の中にあるコピーベントによって作られたウイングランサーに纏わりつくのみ。
大型のモンスターと言えど、形状は蜘蛛。
関節から畳むようにして折り曲げた脚を開いたのならば、その向こうの顔までは半歩程も無い。
迫るライアがウイングランサーの鋭利な石突でディスパイダーの顔を下からすくい上げる様に殴りつけ、そのまま手を離す。
そして、契約モンスターであるエビルダイバーに似た盾型の召喚機、飛召盾エビルバイザーの装着された左腕を振りかぶり、殴りつけた。
ミラーモンスターの力を宿したアーメタルで構成されたその盾の縁は非常に鋭利かつ頑強。
十トン近いパンチ力でもって鋭い凶器を叩きつけられたディスパイダーの顔が鈍い刃物で殴打されたように拉げ、すかさずライアがエビルバイザーのカードスロットに一枚のカードを挿入。
『アドベント』
飛来するライアの契約モンスター、エビルダイバーが、今まさに背後からライアを突き刺そうとしていたディスパイダーの脚をへし折り、ライアは空中で急旋回したエビルダイバーの尾に捕まり離脱。
『ファイナルベント』
僅かに離れた場所から電子音。
ライアがディスパイダーを殴りつけている間に距離を取っていたナイトが、マントと化したダークウィングを背に、ウイングランサーを手にして跳躍。
離脱したライアと入れ替わる様に、無防備なディスパイダーの背中へと突き刺さり……。
爆発!
流れる様な討伐。
しかし、これも詮無き事だ。
ミラーモンスターの想定する相手は人間であり、自分たちに対抗できる戦闘力を持つ仮面ライダーは想定していない。
余程の弱小モンスターと契約したライダーでもなければ、ミラーモンスターを一方的に狩って回る事が出来るのは明確に優劣が存在するからに他ならない。
油断やアクシデントで敗北する可能性が無い訳ではないが、仮面ライダーは紛れもなく、アンチミラーモンスターシステムでもあるのだ。
更に言えば、初対面であった筈のナイトとライア──蓮と手塚がシンプルながらも連携をしてみせたのも原因だろう。
これでは、ディスパイダーにつけ入る隙はない。
「貰うぞ」
「どうぞ」
短い言葉で交わされたのはどちらのモンスターに殺害したモンスターのエネルギーを食わせるかというもの。
ミラーワールドの仮面ライダーが殺し合うものとして設計されたものであるという理由を除いて、ライダーの共闘が少ない理由がこれだ。
どれだけ強大なミラーモンスターであっても、殺して出てくるエネルギーが二つ三つと増える事はない。
大きなエネルギーをどちらが、誰のモンスターが手に入れるかでどうしても揉める。
この場においては手塚が話をする為に譲ったからこそスムーズに話は進んだが、場合によってはエネルギーの取り合いの為に協力していた筈のライダー同士が争いを始めるという可能性もあるだろう。
そう、意思疎通は極めて短い時間に行われた。
しかし、二人の短いやり取りの間、確かにダークウィングとエビルダイバーはエサであるエネルギーを前に手出しするのを止めており──その隙を、確かに突いたモノが居た。
黒い影。
音もなくディスパイダーの居た場所を通り過ぎたそれは、口にエネルギーの塊を咥え、止まること無く走り抜けた。
目にも留まらぬとはこの事。
まるでドラッグレースの車のようなスピードでライアとナイトすら通り過ぎたそれは、するするとビルの壁面を駆け上り、止まる。
ナイトとライアが遅れて気付き、獣の居るビルを見上げる。
それは獣だった。
犬か、猫か、狐か。
明瞭な答えを出せる程にはハッキリとしたモチーフの分からない、四足の獣。
大きさにして先のディスパイダーよりも僅かに大きい。
そして、その獣の機械的な頭部を掻く様に撫でる人影。
逆光ではっきりと見えないその人影は、ライアとナイト、そしてその後ろで未だ混乱している真司に人差し指と中指を立て、斜めに傾けた片手を上げ、
「チャオ♪」
陽気ですらある声色で挨拶をした後、煙のように姿を消した。
ここまで三話分の龍騎編を見てくれた人はもういい加減お気づきかな?
龍騎編は全編通してこのノリで行くから主人公側に悲壮感とか決意とかを求めても無駄です
今回は完全に好き勝手引っ掻き回していく側なので
☆眼の前で罪なき人が死ぬのはやっぱりちょっと気になるけど後々罪を犯しそうなやつが知らん場所で死ぬ事に関してまでは知らんライドシューター大好きマン
大好きなので分解して解析して殺怪人ドローンに諸々の技術を組み込んだりする
というか調べ直せば調べ直す程龍騎編がボーナスステージになっていく
ボーナスを得る過程での犠牲は遠い場所の自分とは関係ないものは無いものとして処理する事にしている
デッキ分解してアドベントカードを破損紛失したらモンスターがもとのターゲット食べに行った?
デッキ盗まれる方が悪いわ
★チャオ♪
イタリア語の挨拶
こんにちは、さようなら、の意味で使われる
または1977年創刊の日本の少女漫画雑誌
あるいは怪しい陽気なキャラが良く使う鳴き声
初対面でこの挨拶交わしてくる知らんやつが居たら人相次第ではとりあえず殴っておくのが安牌
☆傷心のあまり色々漏らすつもりのなかったものも漏らしてしまうれんちょん
ちがうのん、うち、戦う理由なんてもらして無いのん
龍騎編書く上で龍騎を仮面ライダーが大体見れるAUのビデオパス(再生中の操作はプライム・ビデオに大きく劣る)で見直してるんですが
優衣ちゃんへの距離感が近すぎませんか
硬派な男と思っていたけど、実際ライダーになるまではちょいワルだったんすかねぇ
でもきっとほんとに愛してるのは恋人だけっていう……そういうの良いよね
義理の妹と親友に手を出してるだけで恋人がどうとか一切考えてない誰かは見習うべきではないだろうか
デッキを取り戻したけどこの時点で色々と前提条件が変わってしまっているぞ
☆通りすがりにデッキを投げ渡された手塚海之さん
手塚だが哲学ミミズではない
デッキとメモしか主人公との繋がりは今の所無いのだけど、ここからどうやってエピローグ兼プロローグの時点の好感度にまで持っていけばいいの?
まったくわからん!
でも大暴れの結果ライダーが大量に助かったりしたらこいつの占いは大外れになるから、いざとなったらそれでいいか……
どっかで正体バレイベント挟むと良いかな、口は硬そうだし
速攻でコピーベントを使ったのは、渡されたデッキのカードはとりあえず全部確認したからだぞ
ちゃっかりしている
因みにエビルダイバーはエイがモチーフのモンスターだが
エイはその性器が名器である事が古くから知られており、漁師が船上で性欲を発散するのに使われていたのは多くの人が知る所だろう
その様を描写した浮世絵がある程にメジャーな使われ方をしていたらしい
つまりこいつは受け
口は硬そうなのに後ろの口は柔らかいってか、やかましいわ
☆いまのとこ原作ムーブを崩していない真司くん
デッキを無事に回収できたのは、やはり面倒な部分はその年の主役に投げるに限るからという理由なだけで
未契約デッキは先んじて回収されたりして特にライダーバトルに関わらないルートに行ったりもするぞ!
主人公が全てのライダーバトルの秘密をぶっちゃけに二十二号のまま突貫する案があった頃は世界初の未確認生命体への独占インタビューを成功させた男として名を上げたり下げたりする予定だった
だがもう無くなった!(プロットグシャー)
☆ディスパイダー
全長5m50cm
でも実際映像で見ると結構小さく見える
実際ライダーの設定にある数値は龍騎のAPGPに限らずかなりガバガバ
きっと脚を限界まで伸ばした数値を採用してる
生体エネルギー回収
☆謎の四足獣
ヘキサギアのロードインパルスがこの間届いたので
わからんって人はロードインパルスで検索するだけで画像は見つかる
あとコトブキヤオンラインショップなりアマゾンなりで実物も手に入れるとよくわかるぞ!
なんでミラーワールドで活動出来てるかって?
その説明は次回な!
☆赤心寺改
本堂の床が割れて巨大エレベーターからメカビーストがせり出してくる
来年には確実に地デジ対応テレビの導入が約束された
でも地デジもアンテナの位置が悪いと普通に映像ぐちゃぐちゃになるから注意な
☆唐突に弟弟子が持ってきたかっちょいいマシンに思わずしいたけ目のいかつい兄弟子達
山奥で修行する世捨て人達だが男の子なのでメカは大好き
勿論こいつらも後で怒られたぞ
ああいうリアクションすると余計に悪乗りするぞ、みたいな
☆義経師範(おこ)
地下施設作った事をカミングアウトされた程度ならまだおこで済んだ
本堂の床をぶち抜いてエレベーター建設したあげく床暖房を敷いたのは不味かった
ムカ着火義経師範の握りこぶしはン級魔石の戦士の人間態にサーティーワンアイスクリームの三段アイスみたいなたんこぶを作る事が可能なのだ
回避判定は『げんこつ』の書き文字大写しでキャンセルされる
ぶっちゃけ龍騎編は悲壮感も無く大暴れするだけな感じなので
向かない人には向かないなと思います
きっと離れる読者の人たちも居るだろうとも
でも所詮人は自分に書ける話しか書けないのだ
そんな訳で、読んでもいいよって人は、次回も気長にお待ち下さい