オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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45 カフェでの一時

さてもさて、平和な時間はまだまだ続く。

年明け、1月の終わりまでは恐らくそれほど重大な事件が起きないとなれば、日々張り詰めすぎてもなお切れない信頼と伝統のメイドインジャパンなフェムトファイバー(説明文略)製の緊張の糸も緩むというもの。

冬休みを間近に控え、二学期期末試験で皆があーうー言ってる時間を利用し、遠出してしまったりもする。

 

例えばの話だが、この世界はかつて俺が居た世界と色々な面で異なる世界である。

まず、当然といえば当然だが、番組として、創作物としての仮面ライダーなるものは存在しない。

実の所を言えば、探すところをしっかり探せば、昭和の時代に秘密結社と戦いこれを打倒したマスクドライダーなる都市伝説を発見する事も不可能ではない。

しかし、当時の各組織の情報隠蔽工作が巧みであったのか、その存在の真偽に関しては非常に眉唾ものの情報しか残されていない。

信頼性で言えば、ミステリスペシャルで度々議論に上がる地底人や金星人の住民票と大差ないレベルだ。

だから、この世界に実在する実物としての仮面ライダーをモデルに漫画、そして特撮の仮面ライダーが作られるなんていう話すら転がっていない。

 

そういう大きな部分のみならず、この世界がこの世界であるが故に消えてしまっているものが多くある。

大きなところで言えば、渋谷なんかはその代表格だろう。

東京一帯を滅ぼしかねなかった隕石の落下は、隕石の謎の減速により渋谷の一部を廃墟に変えるだけに留まった。

しかし、当然その一画にあったお店なんてのは存在できよう筈もない。

 

小さな所で言えば幾つかの個人経営の店舗なども含まれる。

オリエンタルな味と香りで名高いポレポレにしても、モデル、撮影場所として使われていたお店は当然存在できていない。

それはそうだ。

モデルとなった店と同じ場所に存在する以上は避けようがない現実である。

この世界に生まれ落ちた人間が他に居たとして、元のお店の雰囲気やメニューが好きだったのならこれほどの不幸はこの世界に生まれ落ちてしまった事以外には在りえまい。

 

逆に。

存在を上書きされてしまったと言っても過言ではない元の、モデルとなった、撮影場所となったお店の所在さえ知れていれば。

わざわざこの時代の微妙にアングラ感漂い、お店の所在すら虚実入り交じるインターネットでの情報に頼らずとも、すんなり辿り着く事が可能になるのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

カップを掲げ、驚くほど黒く熱い液体の香りを吸い込む。

香りを楽しむ、という点で言えばこの飲み物もそう悪いものではない。

嗅いでいると心が安らぐ。

 

カップを置く。

徐に砂糖壺の蓋を開く。

中に入っているのは角砂糖だ。

砂糖を入れる。

砂糖を入れる。

砂糖を入れる。

砂糖を入れる。

そしてミルクを注ぐ。

付属のスプーンでかき混ぜる。

カップを掲げる。

飲む。

うむ。

 

コーヒー牛乳だこれ!

 

店主がなんとも言えぬ微妙な苦笑いを浮かべているのが視界の端に映る。

まぁ如何にコーヒーに拘りがある人物と言えど、特にマナー違反をした訳でもない一般客相手にどうこう口出しするタイプの人間では客商売などできよう筈もない。

 

拘りのコーヒーが有名で周辺住民にも愛されているお店、カフェ・マル・ダムール。

平日の昼下がり……を、少し過ぎた微妙な時間である為か、人の入りはまばらを通り越してほぼ無人と断言しても良い。

ミーハー心丸出しで聖地巡礼気分なので、実際丁度よい。

そもそもの話、この時代ではまだ俺の知る素晴らしき青空の会のメンバーは殆ど存在しない筈だ。

いや存在はしているのだろうが……。

俺の知る立ち位置に収まっている人間は殆ど居ないだろう。

 

紅渡はこの世アレルギーがどうとか以前にそもそもまだ中学校に入りたてくらいな上、紅邸に移り住むのも六年後くらいなので所在が知れない。

キバットとの出会いが何時かという事も不明な為、ただの子供のハーフファンガイアでしかない。

ファンガイアの王専用の鎧というのも気にはなるが、扱うための知識も不足している為に、遭遇できて捕獲できたとして下手に分解もできない為接触を試みるメリットは少ない。

名護啓介にしてもこの時点で十五歳、鍛えただけの生身の人間だと考えれば戦士として戦えるかは微妙だし、仮に活動していたとしても素晴らしき青空の会ではなく3WAの方で過激派の先輩(こいつは見つけ次第殺しておくのが良いだろう)にシゴカれている時期だ。

画面越しに見ている分には面白いが、実利として考えるとイクサシステムを持たないこいつには一切用がない。

 

兎にも角にも、時期が早すぎるのだ。

ファンガイア界隈での動きは一切知らないが、この時期では俺の知識は一切役に立たない。

各種ドローンやハッキングなどを駆使すれば対ファンガイア兵器の一つ二つ設計図を盗み出す事も可能かも知れないが、そこまでするほど切羽詰まっても居ない。

 

では、今回の性懲りもない東京遠征がただの聖地巡礼コーヒーブレイクなのかと言えば、さにあらず。

……この時代、イクサシステムはある程度安定した形で運用されているようなのだ。

多数の死者を出しながら、しかし勇敢かつ蛮勇あふれる記者達の活躍により、今年初めの未確認生物の同時多発ゲゲルは幾つものライブ感あふれる写真が残されている。

その中で、さして話題にも上がること無く流されていった記事の一つに、仮面ライダーイクサの姿が写り込んでいる。

記事の内容としては、多大な戦果を上げたG1と同様、警視庁で秘密裏に開発されていた特殊装甲服の試作品の一つだったのではないか、という、ありふれたものだ。

 

もちろん、その記事は大きく取り沙汰される事もなく、数多あるゴシップ記事の一つとして扱われている。

何故かと言えば報道管制だ。

警察組織内部にはファンガイアの関連事件を専門に扱う部署が存在しているらしく、そこが態々手を回したらしい。

何故知っているか、と聞かれると難しい話になる。

しいて言うのなら、普通の人間には突如として壁の中に発生した盗聴器の類を発見する事は難しいのだ、とだけ言っておこう。

 

とはいえ、それほど荒っぽい事が行われた訳ではない。

警察の極秘プロジェクトの一貫であると言い含められ、記事にすれば逮捕されるとなればそれだけで手を引く記者はそう少なくない。

実際、当時は未確認を相手にできる装備の開発が待たれていたのだ。

記事にする事でそれを邪魔してしまうのだ、と言われてしまえば、まともな良心を持つ人間であれば反抗はできない。

そもそも、戦場で活躍するイクサの写真を撮れたという事は、イクサに助けられる形であった事は想像に難くない。

命の恩人に迷惑をかけてまで記事を作るような記者は……居ないとは言わないが、少なくともこの記者にはそれなりに真っ当な良識が残っていたようである。

 

閑話休題。

 

ともかく、この時代でも変わらず、イクサシステムは運用されている。

最初期の未熟な技術で作られたプロトから数えて二十二年。

それだけの歳月を掛けて作られたタイプⅩ及びⅪ。

そこまでは行かずとも、それなりに安定した、ベルトと大きなバックル程度に収められたパワードスーツ。

欲しいか、欲しくないか、と聞かれれば、欲しいと思うのが人情というものだ。

 

だが。

誰が使っているんだよ、という話になる。

嶋護辺りも身体を鍛えているから使用できると言えばできるだろう。

だが、現時点でも彼は四十過ぎの体脂肪を気にする生身のおじさんだ。

戦士かと言われると難しい。

 

居るはずなのだ。

イクサシステムを運用する戦士が。

それを知りたい。

知りたくて、知りたくて、知りたくて。

思わずこのオシャレなカフェーの壁の中に、徐に内部構造体を変化させて盗聴器が発生してしまったりするのだ。

これもストレスの為せる技である。

このストレスを解消するためにも、この時代のイクサの装着者を見つけなければ……。

 

適当にコーヒーのおかわりを頼もうと顔を上げれば、丁度入り口のドアが開いた。

ドアベルの類も無く、ただ素っ気ない、しかし店内の静かな雰囲気を壊さないドアの開閉音。

それと共に現れたのは、たおやかな雰囲気を纏う、すらっとしなやかな体躯の、長い黒髪を持つ大変に美しい女性だった。

モデルか何かか、という推測は、主婦的な落ち着いた服装と、その足運びと体幹から直ぐ様否定される。

 

何でも無いような自然体。

しかし、それでいて隙が無く、意識が視線の先だけではなく全方向に薄っすらと広げられているのがわかる。

体内オーラ、ライフエナジー、赤心少林拳などでは気と呼ばれるものだ。

物理的な神経とは異なるが肉体、或いは魂、生命の一部に含まれるもので、これを意識的に体外に置くことで、それに触れたものを察知する事が出来るようになる。

圏境、或いは場所によれば制空圏と呼ばれる技術だ。

優れた武人であれば大半がこの技術を身に着けるという。

鍛え上げているとはいえ、未だギリギリのラインで人間の範疇にある義経師範が、俺が人間態でとはいえ殺す気で打った先の先型桜花に遅れる事無く対応しカウンターを打てるのはこの技術によるものが大きい。

赤心寺でも一部の武僧達が使えていたが……それよりも遥かに練度が高い。

義経師範に匹敵するのではないだろうか。

力の方向性もそう違わない様に見える。

 

並の鍛え方ではない。

自然体のままに展開されている領域は波飛沫の飛ぶ海面の如く荒々しい。

お行儀よく道場で鍛えていて身につく類のそれではない。

基礎的な部分は正道かもしれないが、これは戦いの中で磨き上げられた技術に見える。

アギトかグロンギかで言えば間違いなくグロンギ寄りの戦士。

静か動かで言えば紛れもない動の型。

そして、明らかに実戦を重ねた熟練の戦士の類だ。

 

町中に居たら、すれ違ったのなら思わず振り向いてしまうだろう。

美人だから、などという話ではない。

人の群れの中に人食い虎の類が居るという違和感が故だ。

例えばの話、義経師範が主婦の様な格好で町中で買い物袋を手に下げて歩いていたのなら、誰だって目を剥く筈だ。

顔に刻まれた大きなキズを隠したとしてそれは変わらないだろう。

 

悪口を言っているつもりはない。

繰り返しになるが、パット見の外見で言えば間違いなく美しいと評されるに相応しい女性だ。

ぱちっと開いた大粒の宝石の如き瞳、すっと通った鼻筋は可愛らしさすら感じる顔立ちに凛々しさという確かな柱を通している。

スラリとした印象があるが、全体として見える女性的なラインは十分すぎる程に起伏があり、背も高すぎず低すぎず。

足音から察する靴底の厚さから考えて、身長は目算で161センチほどか。

背が高すぎたり低すぎたりするのがダメな人が居ることを考えれば、正しく平均的な男性の好みの範疇に綺麗に収まる美人のテンプレの様な姿をしている。

このタイミングで仲村君が隣に居たとすれば、肘でつついてきた挙げ句に、

 

『見ろ、美人だ。絶世の、と言っても良いな、あれは』

『おまえ、ああいう人とかどうだ』

『……うむ、まぁ、予想はしていたが』

『じゃあ、難波さんとかと比べたら……』

『……ううむ、そうか。いや、別に悪いとは言わんが』

『…………待て、何故そこで妹君の名前が出てくる』

『何、グジル? ジルではないのか』

『増えた? ……増えた訳ではない? どういう事だ』

『説明しろ苗木!』

 

同じ班の苗木君に無茶振りをしていただろう。

同じ様なやり取りを数日前にしたから間違いない。

仲村君は綺麗なお姉さんに目がない。

俺だって綺麗なお姉さんが嫌いという訳ではないが、仲村君には負ける。

それに、割りと綺麗なお姉さんなムセギジャジャも容赦なく斬り殺したりしてきた負い目がある。いや負い目は無いが。

そこを行くと、今店内に入ってきたお姉さんの戦力分析の方が先に始まってしまう。

まぁ、サブショグ、というやつではあるのだが。

そういう風に敵を分析した結果油断すると足元を掬われるので、いけない。

敵となりえる相手を分析した結果に出るべきなのは感想ではなく確実な殺し方なのだ。

 

では、どうやって、と言えば。

相手の所作、見た目から見える戦い方を分析するところから始めるべきだろう。

これに関しては俺も未だに慣れているとは言い難い。

本来俺が相手をする連中の場合、大体が俺の頭の中に武器や身体的特徴、戦い方が収まっている。

観察し、戦闘の方向性を見極める為の経験値はそれほど蓄積できていない。

 

手を見る。

美しい手だ。

普段の生活の中で一通りの家事を嗜んだ上で、ケアも忘れていない。

しかし、ケアにより柔らかさときめ細やかさを維持しているようで、拳ダコをヤスリで削って整えた痕跡が僅かに見える。

重心の置き方からしても、明らかに蹴りを主体にするものではない。

腰回りは太すぎず美しいくびれが服越しでも見えるが、厚みからしてうっすらと付いた脂肪の下に猫科の大型動物の如き強靭な筋肉がある筈だ。

単純に腹筋などで鍛えているというタイプのものではない。

腰のひねりから生まれる全身の力を拳に乗せる動きが目に浮かぶ。

拳打を主体とするか。

普段から敵を殺す為に拳を振るい続けている人間の肉体と言えるだろう。

 

総じて、美しい。

日常に紛れるに過不足ないカモフラージュが彼女をある種の大和撫子の如き女性の様に偽装している。

それでいて、彼女の本質は紛れもない戦士だ。

倒すべき、殺すべき相手と向かい合う時、彼女が相手の殺害を躊躇う事はないだろう。

そのために鍛え上げ、磨き上げられた力の集積物。

例えるならば美しい装飾の鞘に収められた大業物だ。

抜けば玉散る氷の刃か、抜けば魂散る定めの刃か。

最も価値あるものは刃紋でも輝きでもない。

折れず、曲がらず、確実に相手の生命を貫く武器としての完成度、実用性の高さにある。

 

「ちょっと貴方」

 

「はい?」

 

声の方に視線を、上げる。

目が合うのは入店してきた女性だ。

 

「何いきなり人の事をジロ、ジロ……」

 

柳眉を逆立てた女性が、少しだけ声を荒立てて注意してきたかと思えば、視線が合うと同時に目を見開く。

見てはいけない物を、或いは、何か、ある筈の無いものを見るような、驚愕に彩られた視線。

しかし、そこに何かを懐かしむ様な色が混じっているのは気の所為だろうか。

女性は驚きの表情のまま、口元に手を当てる。

 

「……スバル先輩?」

 

―――――――――――――――――――

 

一人で掛けていたテーブルの向かいに、先の美しい女性が座っている。

 

「そっかそっか、あのスバル先輩がねぇ……」

 

嫋やかで母性を感じる雰囲気を纏っていた様にも思えたが、なるほど、予想よりも薄い化けの皮であったらしい。

少し話した印象では、見目の麗しさからは今ひとつ想像つかないカラッとした、元ヤンのお姉さんの如き性格が本性であるらしい。

しかし、そんな彼女でも、十数年も昔に袂を別ったまま連絡も取れず、安否も定かではなかった相手の息子が相手ともなれば、その相手を目の前にして染み染みと物思いにふけってしまうようだ。

言葉の端々から感じられる、言っていい情報と言ってはいけない情報をより分けながら口を開いている様子から、どうにも一般には言い難い話であるらしい。

 

……実際、薄々と感じては居たのだが、少なくとも、俺が生まれる前の時代において、母さんは何らかの特殊な事情を抱えていたらしい。

まぁ、俺も母さん父さんの身辺を調べたとはいえ、過去を捨てて主婦として生きる、と決めているのであれば、それこそ生半可な調べ方で見つかるような隠し方はするまい。

人間、十数年前に何をしていたか、なんてのは、事細かに日記なりで記録していない限りは後の時代で改めて調べるのは難しい。

 

考えてもみれば、だ。

俺の頭の中にある、以前の常識から、この世界には一般的な表の世界とその裏に潜む裏の世界、みたいな区切りがあって、なおかつ表の世界の住人の方が多いものと思っていた。

しかし、俺の知る限りでも、世界中で暗躍してたと思しき悪の組織の類は十を超える程に存在していた可能性があるわけで。

そういった連中が手先として扱っていた、或いは表の協力者として手を組んでいた相手、というのを含めれば、この世界、実は完全に真っ当に表の世界でのみ生活している人間というのは少数派になるのではないだろうか。

知らず何らかの計画の中枢を担うような企業で働いていたなんて人間は枚挙にいとまがない筈だ。

 

「ねぇ、コウジくん、だっけ。先輩、元気にしてる?」

 

「ええ。……最近は、少し寂しそうにしてる時もありますけど」

 

うちの両親は恐らく他所の家庭と比べても仲がよい。

新婚気分でほやほや、という程あからさまではないが、多くを語らずとも互いをわかり合っている様に見える。

俺は気を使う質なので現場に遭遇した事は無いが、俺が中学に上がってからも度々俺の弟か妹を製造する為に星獣合体(比喩的表現)でギンガイオー(青少年に配慮した表現)している様子が見られる程だ。

たまの休日に東京に弁当を届けに行って、妙につやつやして帰ってきたりする辺り、一年以上出張が続いている今でもその仲は冷めていないと思われる。

ただ、そんな仲の良い二人だからこそ、離れ離れが続いている今はあまりよろしく無いのではないか、と。

 

「お父さん、警察官だっけ。大変だよね」

 

気遣わしげに眉をハの字にする美人さん。

確かに、去年と今年の惨状から考えれば、父親が警察官というのは何時何処で地雷を踏むか分からない要素だろう。

俺だって人の家族のあれこれを聞く時、警察で東京に出張してるなんて聞いたら色々と察して話題を変えるレベルだ。

 

「まぁ……そうですね。でも、大丈夫ですよ」

 

何しろ大丈夫では無くしそうな連中は先んじて殺して回っている。

それこそ不意のオルフェノクの襲撃だのに巻き込まれたりしなければ、或いは通常の犯罪者がいきなり超常の力に目覚めたりしなければ無事に仕事を熟せていると断言できる。

……意図せず、そういった町中の通行人が唐突にアギトやその他超常能力に目覚めてしまう可能性の桁を二つ三つ程跳ね上げてしまった俺ではあるが、それに対するアフターケアをしていない訳ではない。

それらのアフターケアが直接的に俺の力に変わるわけではないが……。

少なくとも、父さんの安否を気にしてまともに戦えない、という心配は無いわけだ。

 

と、そんなことを考えていると、対面の美人さんが口元に手をやり音もなく笑っていた。

 

「なんです?」

 

「本当に、スバル先輩の息子さんね。その、理由は言わないけど自身満々なところとか、そっくり」

 

そう言って、美人さんは肩を震わせて笑い続けている。

それほど顔に出ていただろうか。

別に、俺が何かしたから父さんが安心、とは口にしていないので、自信満々な表情をしていたらおかしいかもしれない。

逆に、そんな思わず表に出てしまっていた俺の表情と似た表情を浮かべていた当時の母さんがどういう立場にあったのか。

 

「あの、もしよろしければ、母の話を聞かせては貰えませんか」

 

「いいわよ。私も、最近の先輩の話とか、聞かせて貰えたら嬉しいし」

 

―――――――――――――――――――

 

さて。

思わぬ収穫が得られた。

やはり、余裕がある時になら修行と学習以外の行動も挟んでみるものだ。

今、俺のポケットの中には、あの美人さんの携帯番号とメアドの記されたメモが入っている。

もちろん、俺の携帯番号とメアドも向こうには渡してある。

これで、折を見て彼女と接触を図る事ができる。

 

もちろん、今となっては謎多き母さんのお話が聞ける、というのは魅力的だ。

だが、それはあくまでも彼女に接触する為の表向きの理由に過ぎない。

重要なのは、母さんの()()であるらしい彼女への接触そのもの。

 

彼女はイクサだ。

 

直感ではない。

あの優れた戦士の身のこなし、他者への意識の向け方。

そして、自然体ではあるが、僅かにあった重心のズレ。

懐に大事に大事に何かをしまいこんでいるからこそ起きるものだ。

透視こそできないが、彼女のゆったりとしたラフな格好でも、不自然に一部が膨らまないように余計に服装のサイズを大きく取っているのを見れば、嫌でもわかる。

 

後の世の名護啓介を見ればわかるが、基本的にイクサの装着者はベルトとイクサナックルをほぼ常に携行している筈だ。

あの身のこなし、隙をついて盗む、なんて真似はとてもできそうに無い。

武力に物を言わせて、とも思ったが、用途を考えると二十二号がイクサシステムの技術を持っていると思われるのは問題がある。

基本的には、人前で人間としての身体能力の範囲では対処しきれない相手と戦う時に使う予定の技術だ。

 

友好的に行こう。

信頼は成長の遅い植物だ、なんて言葉もある。

隙を伺うなんて真似をすれば、あの練度の戦士には何か目的があると気取られてしまう。

 

自然体だ。

戦士としてのそれではない。

年頃の男子学生らしい自然体。

警戒されない年相応の振る舞いで行こう。

かつては俺もそうして生きていたのだからして。

脳作用の方も、意識的に弄らなければそれ相応の反応ができる筈だ。

出来る。

筈だ。

たぶん。

 

「頑張るか」

 

年相応、と、言えば。

期末試験が終われば冬休みだ。

色々と次に備えて準備も進めなければならないし、幾ら理論上衰えないと言えど鍛錬を怠る訳にはいかない。

しかし、尋常の学生であれば、冬休みは楽しくエンジョイしていてもおかしくはない。

思えば、去年も難波さんや他クラスメイトと共に初詣などに出掛けたりしたものだ。

……なんだ、意外と年相応にできているではないか。

まあ、それもこれも、度々ジルと共に俺も誘い出してくれた難波さんのおかげ、とも取れる。

 

電車の窓から外を見る。

この時代から見て未来の東京と比べればまだまだ大人しい方ではあるが、12月に入った東京は既にクリスマス目前と言わんばかりにイルミネーションが飾られるなど、浮かれ気分がビジュアルにまで反映されつつある。

何かお礼を、と、その思いを実行に移すのであれば、やはりクリスマスかそのイブが相応しいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 




ち、違うんじゃ
これは母親の友人とか叔母とかに思わず手を出してしまう思春期男子とそれを最初は嫌がりながらも最終的には受け入れてズブズブの関係になってしまうなどという、ありがちだけど実用性の高い同人CG集に影響を受けてしまった部分が表出してしまっただけで
暇ならたぶん聖地巡礼とかしちゃうよな、とか思って原作キャラがまだ殆ど未可動なキバの世界なテリトリーに侵入して
恐らくは名護啓介が3WAを出奔してイクサを継ぐまでの間にイクサであっただろうなぞの人物を勝手に描写した挙げ句
その人物と親しくなってたまに行動を共にする中でファンガイアに襲われたりでイクサに変身する様子を目撃されるという、主人公の性質的にできない正体バレ展開を織り交ぜつつ
敵の妨害でイクサに変身できない装着者さんの代わりにイクサに変身して、みたいな展開からの
イクサベルトを解析しての複製、そして現れる謎の黒いイクサとは……!
みたいな話を振り返る原作の合間合間に入れてやろうなんていう、クロスSSにありがちな浅ましい感想稼ぎ展開に繋げようとしているわけじゃないんじゃ!
でも黒いイクサは本当に出したいし魔石の戦士特有の無限スタミナで連休をフルに使った数十時間超耐久ゼクロス!で体液塗れで横たわり……な何処ぞの浜辺の聖女風捏造空白期間イクサ装着者さんは描写したい
因みに次回はモノローグにある通りクリスマス回です

☆今の所話を聞く中で行動を共にする時間を増やしてファンガイアと同時に遭遇するチャンスに賭けてる脳内の化学反応を操作しない限り思春期相応の反応ができるマン
因みに敵対種族と遭遇する可能性がある場面では基本的に全手動で脳内活動は調整しているので少なくとも特定の相手しか居ない室内でもなければフルタイムで脳内完全制御
因みにジル&グジル和解前は二十四時間完全制御みたいなもんだった
制御中はどれだけ好みの女性が扇情的な誘い方をしてもピクリともしないぞ
つまり制御していなければ色んなイベントが起きる(多方面に配慮したふわっとした表現)
変にイクサの捏造装着者さんが自宅に上げて先輩の息子さんに手料理を振る舞ってあげよう、みたいなことをしなければライダーSSに相応しくない数百円で買えそうなエロCG集みたいな展開にはならないからご安心だ!

☆帰ってきた主人公から話を聞いて少しだけ昔を懐かしむ誰かの先輩であったらしいママン
そっかぁ、あの子が……
でも私の◎個下だから、この子の○個上で……
うーん、娘と見るにはちょっと……
でも前の思春期としてどうかと思う時期から考えれば、火遊びの一つ二つはあった方が健全よね!
年齢に関しては誰々と同じ、という明確な設定があるので適当言った
前後三才くらいの余裕を持っていると思いねぇ
そもそもパパンとくっつく為に戸籍の年齢は書き換えた可能性がある
ふわふわ時間(年齢面の話)
決まってるのはママンが学生時代に主人公を出産した程度の事よ!

主人公は自分が生まれる前の話だと思っているが
実はパートに出ていると見せかけて色々していた事になった
この話を書ききってからイベントの時期が主人公生まれてからだなと気付いたので
そういう事になったのだ!
でもこの辺の話は別段秘密にしてる部分とは関係ないので聞けば答えてくれるぞ!
ママン的には玩具みたいなスーツ着て遊んでたら大金をくれる美味しいパート的な認識なので普通のママンの枠から逸脱する行為ではない
つまり総合的に見れば普通のママンなので余裕

☆セリフの一つも無い内に罪過が増えていくパパン
当時学生の少女ママンを孕ませて主人公を産ませた事が消えない罪と言うなら娶る事がそう背負し罰だろ?
でも愛することが罪になる世界は間違っているし双方同意の元だったからセーフセーフ
法的にはアウトだが、パパンの年齢も設定は曖昧なのでたぶんセーフの可能性がある
当時のパパンは既に新人警察官か警察を目指す好青年かで話はかわる

☆知らない女の臭いがする……
さすが我が王!
ってなるのがジルとグジルなのだ
たまにしか会わない新技術を持ってるだけのとしまえんとか敵じゃあないわな
え? 義経師範並に強い?
へぇ!(まだ見ぬ知らん人へ向けられる尊敬と好戦的な視線)

☆そろそろクリスマス、なんて理由を付けて誘うべきかなぁ……
なぁんて呑気こいてるから想い人が新たな(小型変身アイテムとの)出会いにワクワクしている事に気付くこともできないのが難波さんなのだ
でも最近は修行もあるけど普通に遊びに行く事もあるから今の時期は忙しくないんだなぁじゃあ攻め時じゃない?そうかな……そうだよ!(左右からささやく難波さんのイマジナリー天使と悪魔)
天使と悪魔がタッグを組んでも惚れた弱みで常識的な範囲の照れにより攻め手が弱い難波さんなのでした

☆何処に需要があるかと言えば書いてる側からの需要がある謎のイクサ装着員お姉さん
アラサーだけどそれを感じさせない若さを持つ某英霊大戦の浜辺の凄女風のお姉さん聖女要素薄め
ヒロインは増えすぎると扱いきれなくなるの法則があるのでたぶんイクサシステムを主人公に託して大怪我でフェードアウトしたりする
あと年下の男子に押せ押せで押し倒されて強気なんだけどなんとなく流されて……みたいな人を書きたいので話の主軸にかかわらないけどそういうの書きたい時とかに出てきます

────時は1988年!
ファンガイアとの戦いで大破したプロトイクサの反省から様々な改良を施されて再生産されたイクサシステムVer.Ⅱ
しかし、装着者の安全面を重視したとはいえ、未だこれを安定して操ることのできる人員は存在しなかった
次々と現れるファンガイアとは異なる謎の怪人たち
それを打ち倒す謎の黒い戦士、仮面ライダーブラック
謎の秘密結社の迂遠極まりない作戦に巻き込まれた幼き少女を救ったのは……?

「コウちゃんがしっかりしているって言っても、限度があるの」

今度のライダーは……

「早く帰ってご飯つくってあげなきゃだから」

パートタイムの若奥様?!

「悪いけど貴方、三手で積みよ」

魑魅魍魎跋扈するこの地獄変
新米ママが此処に居る

新番組!
仮面ライダーイクサⅡ
1988年秋、放送開始!

ブレイドで言うラメネチャン枠だったが十数年の時を経て育ったのでアナザーイクサをやっている
青空の会はいざとなれば切り捨てる対象で深く関わるつもりも無かったので当時幼児だった主人公をママンは連れてきたりはしなかったぞ!
連れてきてたら主人公に小さい頃から面識のある美人お姉さんヒロインができた代わりに小学中学と初期も初期の思春期が本格的に死んで今よりカツカツに切り詰めて修行に専念していたと思われる
そしてこんだけ書いたにも関わらず次回以降まともに出番は無い
たまに言及するかな、って程度には残してイクサ入手フラグだけを保持していくのだ

☆仲村くん
綺麗なお姉さんが大好き
と、主人公に思われているが
一緒に遊びに行く時に定期的に主人公がちゃんと異性に興味があるのかを確認してくれている
人間関係に関する危機察知能力が高いので、グジル、ジルに関するあれこれは最近教室で問いただしたりしなくなった
賢い

☆聞けば推理の範囲内でなんでも応えてくれる苗木くん
クハハハハ!
とは言わないし、太い方の赤セイバーにメロメロだったりもしない
人の意見に対しても『それは違うよ!』とはっきりNOが言える日本人
別の世界線ではグロンギライダーに家族を殺されつつも協力したりする警察官とかやってるんじゃないすかね
たまに仲村くん、主人公、苗木くんで遊びに行く程度には交流がある
直流は無い(女装癖並の鋼の意思)

あと二話くらいと言ったな
すまん、ありゃ嘘だ
ホントは捏造美人イクサとか出さずに店内のイヤープレート見て、クリスマスに何送るかなぁとか考えたり、地元に戻って友人とクリスマスに何して過ごすと聞いた挙げ句に友人に難波さんを誘うように遠回しに誘導されたりそれを理解しつつも受け入れてさてどう誘うか、みたいな話を入れて、次回クリスマス会、みたいな話にする予定だったのかもしれないが年かさのお姉さんが押し倒される前日譚みたいな話になってしまった
でもこれはこういうSSなのだ
適当に章わけして番外というか幕間みたいな位置に入れておくから許してくれ
因みに唐突ですが

・【ネタ・習作・処女作】原作知識持ちチート主人公で多重クロスなトリップを【とりあえず完結】
・文字通り絵に描いたような、あくまでドラゴンメインの高校生活
・オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)

この三つが別名義含むぐにょりが書いてるSSです
別の名義で別のSSを書いていたりはしないので
唐突に連載中のを放置して短編一発ネタを書いたりするかもしれないけれど
少なくともハーメルンで書く上では全てぐにょり名義にまとめておきます
こうして明言しておけば特に問題も起きない筈!

そういう色々なしがらみがあります
そしてこの話の様に唐突に脱線したりします
ヒロインではないけど明らかにエロシーン作る目的の使い捨てキャラみたいのも出てくるかもしれないです
挙げ句ママンネタがしつこかったりします
ところでママンと言うと反射的に
幸せに
おなり……
だ…
ってなるけど流石にからくりの長さで2クールアニメ化は難しかったですね……
黒賀村編の全員ED迎えて出れた後の最終ページで
ぜひ
ってなるのすっげぇ好きな引きだったのでそこも残念
因みにぜひ、で引くのはうろ覚えの記憶からなのでそんなシーンは無いかもしれないけど結構好きでした
毎年花売の女の子から花を買う自動人形のじいちゃんとかも黒賀村編だし
正直色々言われるけど、花火をバックにした「負けてあげない!!」は決まってると思うんですがどうですか
背中合わせの最終決戦大好き
誰かがおれの後ろでサービスをしている!
違うか?
実質同じなのでよし!

そんなSSですが、それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい
次回というか龍騎編が始まるのを待ってる人は更に気長にお待ち下さい
令和が終わるまでには龍騎編始まるので

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