オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
実際、俺が誰の何を知っているのか、と言われると、とても困る。
俺は俺の知る限りの五代雄介を尊敬しているし、俺の知識にある限りの一条薫を尊敬している。
数多くの、これから戦いに巻き込まれる戦士達も尊敬しているし、今も戦い続けている戦士達も尊敬している。
願わくば、彼らの奮闘だけで、この世の人類を脅かす、或いは、俺の平穏な生活を脅かす多くの敵がどうにかなるように。
力を得てほしい、戦ってほしい、戦い続けてほしい。
無尽蔵に湧き出る人間の燃えカスも、人の皮を被り記憶も人格も奪う虫も、野山に湧き出す魑魅魍魎も、歴史を狂わす異邦人も、鏡の向こうから牙をむく獣も、或いは、今年の天使も、神も。
殺して、殺して、殺し尽くしてほしい。
だが、そうはいかない。
彼らは、きっと戦う力を得るだろう。
それは運命だの歴史だのという話ではなく、彼らの人生の必然として。
望むと望まざるとに関わらず、彼らは戦士になる。
戦って、戦って、敵を殺しぬくだろう。
だとしても。
足りない。
絶対に足りないのだ。
誰かが戦う力を得たとして。
それが構えた武器を下ろす理由にはならない。
代わりに戦ってくれる誰かが居たとして。
それは戦士を減らす理由にはならない。
必要なのは誰かが戦ってくれるという安堵ではない。
正義の味方の背に送る声援でもない。
救世主が現れるようにという祈りでもない。
力を得なければならない。
手に入れて、練り上げて、高めて。
増やして、広めて、定着させて。
武器を持って、技を組み上げ、術を磨き。
誰の助けが間に合わなくとも、命の危機を乗り越えられるように。
俺は。
私は。
いや。
力を得なければ。
―――――――――――――――――――
がちゃがちゃと、回収した重装甲服を分解していく。
何らかの発信機、通信機の類いが存在しない、あるいは存在していたとして、現状では機能していないというのは確認済みだ。
──大前提として、G4には学ぶべき部分が殆ど存在しない。
結局のところ、予知能力者との機能連携を除けばその機構は全て既存技術の塊でしかなく、アギトに迫る膂力に関しても装着者への負担を度外視したが故のものでしかない。
言ってしまえば、少し大げさなG1というべきか。
進化、進歩というより先祖返りだ。
仮に現在のG1が現在の一条さんの肉体に合わせてカリカリにチューニングでもされようものなら、G4なぞ子供のおもちゃと言えるだろう。
何故、天才小沢澄子はこんなものを設計してしまったのか、と、疑問にすら思う。
G4が残した教訓は、費用対効果を考えない兵器を普及させようとすると運命的に絶対死ぬし、仮に何かの間違いで死ななくても発見次第絶対に死ぬという事だ。
何故死ぬかは知らん。管轄外だ。
対して、此方の謎の重装甲服には、明らかに異質な技術が使用されている。
再現不可能な超技術、という訳ではない。
明らかに、小沢澄子設計の装甲服からは感じられない設計の癖が見られるのだ。
人間が纏う鎧である事を前提として作られたGシリーズには存在しない、人間の肉体の代替物である内部フレームとそれを動かす各部モーター。
それらを動かす為の高性能バッテリーと小型発電機。
大まかな命令に従う、ある程度の自己判断が可能な高度なAIと少し高性能なCPU。
少し、というのが実に小憎らしい。
恐らく、この技術を小沢氏か自衛隊かに提供した企業は、この次の世代か次の次の世代のより高度な演算装置を開発済みの筈だ。
如何なる理由か、運用試験、或いは小沢澄子の組んだプログラムこそが欲しかったのか。
面白く、俺の育てていなかった技術、知識ではある。
だが、この技術を使って即座に高度な装甲服が作れるかと言えば否だ。
そも自作する装甲服はベルト装着済みの俺や難波さん、後でベルト装着予定のジルが運用する前提なので装着者への負荷、反動はほぼ無視できる。
そして、この謎の新技術は装甲服を強化するのではなく、無人の装甲服を人間の代わりに運用する為の技術でしかない。無論、応用は利くのだが。
しかし、戦力を増やす事はできる。
搭載されていた演算装置は改善の余地が多々あり、現時点では製造も調達も難しい諸々の電子部品も、俺であれば
無茶な構造の変化をさせなければ、変化後の形を残すことも可能なのだ。と、バルバからの説明で明らかになった。
ヌの技師が健在であれば、前代のグロンギが活動中に新たに積み重ねられた技術も徴収可能だったらしいのだが……、手に入らなかったものを惜しむより、手に入ったものに喜ぶのが正解だ。
AIは単純でなおかつ馬鹿ではあるが、それは演算装置の性能の限界が問題だっただけで、これをベースにより高度な戦闘AIを組む事は難しい事じゃあない。
少なくとも、格闘ゲームや3Dアクションの如く遠隔から操縦なんて真似をする必要は少なくなる筈だ。
これでオルフェノクやワームやファンガイアを見抜く機能を機械的に付与できれば、日本全国に無数に徘徊させたりできるのだが。
いや、ある程度はばら撒いてもいいのか?
オルフェノクの人間態を見抜けなくても、オルフェノクが殺人を行っている場面を目撃できれば良いし、オルフェノクの殺人を止める力がある、オルフェノクを倒すだけの力がある、と判れば抑止力にもなる。
……駄目だな、あまりやりすぎると青薔薇配送ルートに向かってしまうし、いくら頑丈に作ってもメンテナンスフリーとはいかない。
燃料の問題もある。
やはり既存技術だけでは色々と制限がありすぎる。
映像の録画機能があればミラーモンスターの存在も記録可能になるし、そうなれば警察に持っていった上で清明院大学に対抗できる装備があると告げ口して対策が可能になるかとも思ったが。
いや、稼働のための電力問題は……ゼクターかIXAを参考にできればどうにかなるのではないか。
間違いなく効率が良い何らかの発電能力を持つのはゼクターだろう。
しかし、正式なゼクターの完成はこれから五年ほど待たなければならない。
試作機であるダークカブトゼクターならば多少は早いかもしれないが、そう何年も前に完成しているとは考えにくい。
だが、設計図自体はネイティブどもが三十年も前に書き上げている筈で、それも渋谷に置いてある筈。
設計図があれば作れる、というものではないだろうが、参考にはなるだろう。
これも近い内に回収に行こう。
ワームの察知能力はそれほど高くない筈だから、姿を消しながら知覚範囲内のワームを片端からプラズマ化しつつ進めばそれほど危険は無い筈だ。
となると、IXAだ。
そも、現状IXAがどこで運用されているかがわからない。
青空の会に突撃して実力を見せてIXA装着員に自力でなる。
可能か不可能かで言えば可能だろう。
身体検査も無く見込みのありそうな若者を取り込もうとするような組織だ。
ファンガイアとその王の鎧の後継者が本格的に活動を始める年代には正式な装着員が居るが、その正式な装着員はタイミングによってはまだ青空の会ではなく3WAに所属している時期かもしれない。
というか、生身のスペック勝負だとレントゲン撮られない限り勝てる。
が、今の俺にそんな時間の余裕はない。
そもそも今年はテオスの事で精一杯なのだ。
挙げ句来年は受験である。
東京なんてハイソな場所に本拠地がある組織に所属して活動などできようはずも無い。
どこかでIXAが稼働している場面に出くわす事ができれば、人形をいくつか作り出して加勢するふりをしてベルトを一時的に借り受けることも不可能ではないだろうから、そういう幸運があるように祈ろう。
現時点では、ちょっとした雑用をさせるとか、露払いをさせるくらいの手近な運用法しか実現できない。
だが、それもできると出来ないでは大違いだ。
数機の自動人形による連携ならば、恐らく高位のエルロードの一体二体程度なら足止めができる。
テオスに集中できるようになる、というのはとても大きい。
「うむ」
大体わかった。
やはり
普段使いの時は一旦ばらして怪しい部品が無いか確認してから使っているが、性能の高さだけは折り紙付きだ。
今年を乗り切れたら感謝の印として根切りにしてあげよう。王も確実に始末してあげよう。
スマートレディは怪しいからどんな手を使ってでも背後関係を吐かせよう。
「これを、こうして……こうじゃ」
証拠隠滅の為に装甲服の残骸は砕いて素材別に分けてインゴットにし、そのインゴットからスケールダウンした人形を作る。
スーパーディフォルメG4!
……は、SD特有の関節の嘘のせいで難しいので。
ボルトレックス君!
小型!
大きくしても理論上は戦闘に投入可能なレベルの速度で動ける!
指を近付ける。
顔を擦り寄せてくる。
愛い愛い。
オートバランサーも正常に機能しているようだし。
盗難されても内部フレームの代わりに人間を入れられないから一定以上の技術力の無い所じゃ運用できないし。
何よりバイクになる。
車検通るかは知らない。
バイク屋さんに相談してみよう。
……いかんいかん、徹夜した後ぶっ通しで戦利品の確認をしていたから趣味に走ってしまった。
とにかく、重要なのは各部駆動系……ではなく、それらを総合的に運用できるオペレーションシステムと演算装置だ。
自衛隊基地を襲撃する際には自力で人工筋肉に電気信号を送って動かしていたのを、機械任せにする事ができる、というのは素直にありがたい。
稼働に必要な電力に関しても、俺の知覚範囲にいればモーフィングパワーにより遠隔でも充電が可能になる。
なんなら燃料式の発電機を搭載しても良いわけだし。
自力でリアルタイムで動かすなら人型の方が都合も良いが、こういう形式なら人型に無理に拘る必要も無し。
かしかしと、小型の榴弾投射機の搭載された前足で顔を掻く仕草を見せるボルトレックス。
こういう形の生物の狩猟時の動作がいまいちわからないのでそれらしい動きを適当に入れたが、これはノイズだな。
これは試作モデルだから可愛いだけで良いけど。
やはり四足歩行の方が犬なり狼なり猫なり虎なりをモデルにできる分、戦闘動作は作りやすそうだ。
まあ、そこは試行錯誤していけば良い。
ジュラシックパークとかを見て参考にしても良いし。
こういうものを作れるようになった、というのが何より大きいのだ。
「可愛い……」
背後から声が上がる。
難波さんだ。
徹夜で待機した挙げ句に一条さんに職質を受けたりして疲れていたので、戻ってからぐっすりと眠っていたのだが。
のし、と、背から覆い被さる難波さん。
嗅ぎ慣れたジルのものとはまた違う匂い。
シャワーを浴びてから眠った筈なので香水の類いは付けていない筈なのだが。
不思議なものだと思う。
「起こしちゃった?」
「んー」
頭の上に固い、顎かな。
頭部に乗せられた顎がグリグリと押し付けられている。
後頭部に当たっている柔らかいものが一緒に動いているが、良いのだろうか。
年頃の女子として大丈夫なのかな。
首に腕を回される。
「おもちゃ?」
「うん……? まだ玩具」
呂律が怪しい。
頭に当たっている感触が硬めの顎から柔らかい、たぶん頬に変わった。
頬ずりされている。
そして、
「おもちゃで遊ぶこーじくん、かわいぃ……」
酒臭い。
首に回された腕を痛めない程度に力づくで振り向けば、そこには常に無い赤ら顔の難波さん。
瞳がとろけている。
顔が近づいた。
頭にされていた頬ずりが顔に移行する。
躊躇がない。
頬に触れる難波さんの頬の感触は柔らかく温かい。
僅かに汗ばんでいるのがわかる。
俺も難波さんも戻ってから一度シャワーを浴びているが、それから眠っていた難波さんと起きて作業を続けていた俺では皮膚の汚れ具合も違うだろう。
それを指摘し離れるように言おう、と、口を開くよりも先に、首に巻き付いていた腕が頭に回され、両手がぐしぐしと頭を撫で回し始めた。
「わたしは、わかってるよ。がんばってるもんね、すこしくらいあそんでも、ぜんぜん……」
言葉尻が小さくなり消えていく。
抱き合う様にして頬と頬を合わせたまま、難波さんの頭が時折かくんと頷くように下に落ちるのを感じる。
そもそも起きてきた時点で寝ぼけていたのか、どこかで摂取した(ジルと難波さんのベッドの間にある開封済みのペットボトルが怪しい)アルコールの効果か、意識が飛ぶ寸前のようだ。
「ありがとう」
何に対するありがとうなのか。
居てくれて助かっている?
秘密をある程度共有できるのは精神的に楽?
単純に、色々承知した上で、離れずに居てくれた事だろうか。
俺の言葉が聞こえていたのか聞こえていなかったのか、難波さんは此方の首を抱きしめたまますぅすぅと寝息を立て始めてしまった。
このまま、というのも問題があるだろう。
彼女も年頃の少女なのだ。
自分から酒とわかって飲んだのかどうなのかはわからないが、酒に酔って異性の友人にパジャマ姿で抱きついて眠りこけてしまった、なんて知ったら、次に正気に戻った時にどんなリアクションをするものか。
何かをやらかした時に人に原因を押し付ける事ができるほど人間的に邪悪ではない為、とことん落ち込む可能性の方が高い。
元装甲服の残骸をそのままに、難波さんを抱えて立ち上がる。
首を抱きしめる腕が中々力強い為、抱きしめ合う様な姿勢のまま、膝裏に腕を通し、腰をもう片方の腕で支える。
とりあえずベッドに横にしておけばいいか。
そう思いベッドにまで持っていくと、ジルが布団に潜ったまま顔を此方に向けていた。
寝ぼけて、という風ではない。
シャキーン!
と言わんばかりにばっちり目を見開き、キラキラとした視線を向けている。
そのまま両手を布団から出し。
片手で人差し指と親指で丸を。
もう片方の手の人差し指をピンと立て。
Success!
と言わんばかりのキメ顔で両方の手のジェスチャーを合体させた。
「寝ろ」
「──眠れません」
こいつグジルじゃねーか。
―――――――――――――――――――
難波さんをベッドに横にした後に部屋を調べたら、案の定酒瓶が隠してあった。
しかも割とちゃんとした奴だ。
コンビニで売ってる様な清酒ではない。
そういえば、ジルは別個に母さんから軍資金を貰っていたな……。
まだまだ酒類の購入時の年齢確認などが徹底されきっていない時代だ。
例えば酒屋に行って親のお使いなんだ、とでも言えば普通に買えてしまう。
スーパーなんかじゃあまともに確認すらしないだろう。
未成年飲酒、と、一概に咎める事はできない。
実際、ベルトを巻いた時点で老化などあって無きがごとしなグロンギにおいて、外見から実年齢を類推する事はとても難しい。
まぁ、現在の小春ジルとしての戸籍では未成年なので形式上は間違いなく未成年飲酒なのだけれど。
購入したのがグジルなら、グロンギの伝統的にゲゲルの成功を祝ってのお酒、というものなのかもしれないが。
「呑むならせめてベルトを巻いてからにしろ」
こつ、と、頭に軽く拳を落とす。
てへぺろ、とばかりに舌を出して誤魔化す仕草はどちらかと言えばジルだろうか。
実際アルコールの匂いはジルからはあまりしないので、祝いの為に少し舐めた程度である可能性が高い。
ジルとグジルがどれだけちゃんとした共生関係にあるかは知らないが、それほど好き勝手はしていないのだろう。
ペットボトルに移した理由はしらん。
「────」
「あの、難波さん」
濃厚な無言。
無言の中に深い反省だとか後悔だとか羞恥だとかが練り込まれているのがわかる。
ベッドに体を丸めて横たわったまま顔を両手で覆っている姿は、感情表現に必ずしも激しい動きは必要ないのだと教えてくれる。
「わたしはかいになりたい……」
耳まで赤いから分類するなら貝ではなく蟹か、さもなければ赤貝かもしれない。
何年か前に所ジョージ主演でリメイクしたけど、俺たちの年代だとあんまり見てなかった印象なんだよなぁ。
世間的に話題になったのは今から六年くらい後にアイドル主演でリメイクされる方だ。
流石は難波さん、渋いところを突く。
感慨深く思っている間も、難波さんは相変わらず自分の殻に閉じこもったままだ。
さもありなん。
だが、こうなってしまった女子にどう声を掛ければいいのか、残念ながら、俺はその答えを持ち合わせていないのだ。
持ち合わせていないのだが。
持ち合わせていないから何もしない、というのは、流石に愚か過ぎるのではないかとも思う。
横たわる難波さんのベッドに近付き、そのまま難波さんの首の後ろに手を回して起こす。
お尻を支点にくるりと体を起こし、足が地面につき、ベッドに座るような形に。
ここまで難波さんはノーリアクション、とは行かず、首の後ろに手を回された時点で一度びくりと体を震わせている。
が、ここまで。
俺はまだなんと声をかけていいか思いついていないので、とりあえず難波さんの言葉を待つような形で、両手で覆われた顔を見つめ続ける。
難波さんがなにか言い出してくれればそれで良し。
その前に良案が思いつけばそれで良し。
「あの……」
難波さんが顔を覆う両手の指を僅かに広げ、その隙間から覗かせた視線を俺に向けながらゆっくりと口を開いた。
「うん」
「何を言ったか覚えてないんだけど……」
「うん」
ベルトのもたらす再生能力には意外と穴が多く、余程のものでない限り、大体の毒は一度受けてから再生する、という形を取る事が大きい。
アルコールもその例に漏れず、一度酩酊感を得てから普通に分解が始まる。
再生能力が効き始めるのは過剰に摂取した場合などになるか。
故にこそアルコールがグロンギの間で嗜好品として通用するのだが。
だから、普通に酒を飲んで酔ってやらかしてしまう事がありえるのだ。
「あの、あの……めっちゃ馴れ馴れしくしちゃったような」
「いや、そんなでも無かったから大丈夫」
「そ、そう? 記憶違いだったかな……」
と、まぁ、変な記憶違いを起こしてしまうこともある。
それで別に死ぬ訳ではないのでベルトだってなんとかしようとは思わないのだ。
ベルト搭載の人工知能はバックアップしている本人の記憶一式を流用しているので、セーフラインは本人次第とも言える。
「ちょっと頭を抱きしめられて胸を押し付けられた後に頭をかいぐりかいぐりされて頬ずりされただけだから」
「してる──! それ滅茶苦茶してる──!」
わっ、と、上体を前に倒しながら再び顔を覆ってしまった。
馴れ馴れしくしているのだろうか。
別に一緒にお風呂に入ったわけでも無ければ体の洗いっこをした訳でもなく同衾したわけでも無いので問題ないと思うのだが。
友達なら誰でもしている、とは言い難いが、酔っていたのなら仕方がないのではないだろうか。
していいことといけないことの区別がつかない状態だったのならどうしようもない。
酔った勢いで何かしらの一線を超えた訳でもなし。
いや、酔って異性に過剰にスキンシップをしてしまったことに後悔しているのか。
「まぁ、お酒が入っていたから仕方がないよ。俺も別に誰に言うつもりも無いし」
「……あの、さ」
上体をやや起こし、顔だけを上げて、顔を覆う両手を少しだけ下げ、上目遣いにこちらを見る難波さん。
ハの字になった眉と潤んだ瞳はどこか不安げだ。
「……嫌だった?」
「全然。難波さんは?」
「わ、わたし?」
「うん」
困惑気味な難波さんに頷く。
良く良く考えれば、だ。
今回の難波さんからの接触に限らず、運動をする上で必要なこととはいえ、同年代の異性と体を過剰に接触させるのを、普通の女子は嫌がるのではないだろうか。
もう少し早くに気付くべきだったのだが、今の今まで難波さんが肉体の接触でここまで派手なリアクションを取ることが無かったので気にすることが出来なかった。
勿論、俺が自分で気付く事ができていれば良かったのだが、気付けなかったものは仕方がない。
ここで嫌と言われたならまた別の方法で彼女の修行をサポートするのみ。
うんうん唸る難波さんの顔をじっと見つめて返答を待つ。
「別に、私は、嫌じゃないし……」
「本当に?」
問い返すと小さく頷き、耳元に口を寄せて来た。
「うん……交路くんなら、触っても、いい、よ?」
「なんと」
囁くようなか細い声での返答に驚く。
まさか、そこまで信を置いて貰えているとは。
今にして思い返してみれば運動後のマッサージは危ういラインの部位まで触っていた気もしたのだが、そういう場所を触ったとしても、マッサージを言い訳にいかがわしいことをしないだろうと、そう信じて貰っていると考えていいのだろうか。
実際、俺だって性欲が無い訳ではないのだ。
ジルの世話に関しては、体が不自由な相手の介助をする上で欲情したりあまつさえ手出しをするなんていうのは人間の風上にもおけない行為なので除外するとして。
例えば難波さんが、まぁ、確実にありえない事とは思うのだが、性的に誘惑してきたりしたのならば、子供ができない範囲で手出ししてしまう可能性もあった。
だが、ここまで信頼を寄せられたのであれば話は全く別だ。
たとえこの先、トレーニングなどの関係で肉体的な接触が多くなろうとも、絶対に彼女に性的な目を向けない、意識しない事を、天地神明(テオス除く)に誓おうではないか。
ベルトを巻いて戦い始めてからそういう方面ではかなり自制が効いているし、最早自分の脳に限れば脳内物質の分泌を制御するなど造作も無い。
「──難波さん」
顔の前で降ろされかけていた両手を掴む。
「ひゃ、ひゃい!」
「俺の持てる全てを以て、貴女の信頼に応えてみせよう」
大仰な言い方かもしれない。
だが、つい口をついて出てしまった言葉なのだ。
これ以上に俺の本心に近い言葉もあるまい。
「よろしくおねがいしましゅ……」
アルコールは完全に抜けたはずなのに、何故か真っ赤になった顔を俯かせる難波さん。
彼女が今年を乗り越えて、健やかに人生を送る事ができるように、より良い強化プランを構築しなければなるまい。
手を握り合って向かい合う二人からカメラ横にスライド
ジルがカメラ目線で肩を竦める姿でアイリスアウト
何が悪かったってホテルで残骸解析から始めようと思ったぐにょりとゲゲルクリアしたんだからグジルがジルそそのかして酒呑むに決まってるって思ったぐにょりとそれを難波さんはうっかり飲んで酔ってちょっと大胆になっちゃうに決まってると思ったぐにょりが悪い
そしてこのあとがきを書くのは上記全てを反省したぐにょりで今回が初投稿になるので無罪なんです信じて下さい刑事さん悪いのはユグドラシルに雇われた乾巧ってやつなんです!
ライダー要素どこだよ!
せめてホテルから出ろよ!
幕間と思っていただければ差し支えない回でした
あとがきの場を使い色々整理というか片付けというかちらかしというか
☆原作本編の流れ
死んでる……
葦原さんが常人の十倍健康でふらふらしてないので大体のイベントが死んでる
葦原さんの代わりに原作イベント達が死亡イベントを全て消化したのかな?
でも最終的にあかつき号事件はあの若者と木野さんくらいしか生き残ってないんじゃないかな
芦原さんが健康体で強化されてるってもあかつき号事件残党は好き勝手動くし真津上翔一は彼らを強化するし強化されれば調子にのって超能力使ってアンノウンに狙われたりして死ぬのだ
当然まなちゃんの超能力も強化されないけど来年を見越してどうにか強化してもらおう
そういう事情で本編のどのタイミングで合流しようかなという迷い箸が今回の話を書かせたのです
次回身内イベント済ませたら唐突に木野さんがアギト狩りしようとしてギルスドラゴンフォームに追いつけない場面から始まったりするかもしれんけどユルシテユルシテ
☆残骸
スマブレ製の基盤が使われたりしていた
偽装とかされてなかったのは、別にスマブレ自体は表立っては普通の大会社で怪しいところが無い為
感謝の印として今代のンと戦う栄誉が与えられるぞ!(悪魔将軍のキャラソン感)
原作から見て二年前だとまだゴートオルフェノクさんが社長してる時期なんだろうか
アマプラのファイズ有料になったから確認できない
クウガも有料になってしまった
悲しい
☆ここまでの話ではっきりとキーパーソンであるジル
Success!(握りこぶしの人差し指と中指の間から親指を出しながら)
ジルが居ることで主人公ここまでうまく生き残れていた説がある
ジルを甲斐甲斐しく世話する姿が不特定多数に目撃される事で放課後そっこで家に帰る理由も問われないし、優しいやつなんだなと勝手に周囲が思ってくれる
難波さんとの出会いもそもそもジルの水着だかを見立てている場面に遭遇したから
難波さん引っ掛ける連鎖イベントの鍵である為、ジルを回収できなければダグバ戦で食いしばりイベントがそも判定すら起きなかった
ジルがゲゲルをしに東京に行かなければ難波さんがG1条さんから話も聞けず理解者が少ないこともいまいち実感できなかった
ジルが買ってきた酒を飲んだおかげでやや素直になれた難波さんUC(この後何事もなく別々に寝て健やかに朝になった)
恋のキューピッドにして外付け制御装置
ベルト授与の儀式は次回にな
たぶん一騎打ちはベルトに馴染んでからかつテオス戦前のどこか
ジルはともかくグジルは旧グロンギ最後の生き残りみたいなものなのでキーパーソンになるかもしれない
☆酒に酔った勢いで大胆になってしまう難波さん
それでもはっきりと好きと言えない
いやそもそも異性として好きと明言された事があっただろうか
明言できないほうが悪い
大きくはないが押し付けるとはっきりとその存在感を感じることができる程度にはある
平均値
なんでそんな事を書くのかと言えば、ここまでろくに外見の描写をしていないからなのだ
髪の色も長さもどんな顔しているかも背丈もふくよかなのか細いのかも何一つろくに描写をしていないからなのだ
でも何も問題が発生していないので不都合が出るまでこのままなのだ
☆難波さんのベルトのAIさん
新型のベルトのAIは全て、ベルト側にバックアップされた本人の記憶意識が元である為、酔っ払ったほうが本人的に都合がいいよなーと思ったらちゃんと前後不覚にするし気分も良くするし大胆にする
つまり今回のイベントはAI難波さんプロデュースの話なのです
本人の記憶と意識を持ちつつも本人で無い為本人ならためらうようなことも平気でする
☆自作ディスクアニマル的な物を作り始める実は多少性欲あるマン
ジルが居なければ黒目から復帰出来ずに東京タワーの上でダグバくんのベルト掲げて哄笑して新たな人類の脅威誕生エンドもあり得たけどそれはそれとしてベルト無しの未成年飲酒は体に悪いので諌める
現状対テオスの策はほぼ無い
無いが、最悪原作の流れに乗っかった上で最終戦で大量の戦闘員引き連れて乱入すればいいやくらいの思いもある
性的に興奮しようと思えばできる
しないようにしておけばしない
それは性欲と言えるのかという疑問は残る
☆ボルトレックスくん
しゅみです
クロスオーバータグ付けてるからいいかなーって
他作品の乗り物タグはつけるべきかどうなのか
最終的にはアビスクローラーとかが大量に湧き出したりする
ゼクター技術とかも統合して作られた無数のアグニレイジが空を埋め尽くしたりする
そろそろアビスクローラーもバンディッドホイールも届く
みんな、ヘキサギアはいいぞ!
なお最終的な乗り物は全てマシントルネイダーに収束するもよう
☆後の展開で出てくるかも知れない形態
つまり戴き物のコーナー!
ナナスさんありがとう!
【挿絵表示】
【挿絵表示】
まるで灰の塑像の様なクウガ……一体何フェノクなんだ……!
原作の流れでアギトパワー抜き取られたりした時に出てきたりするかもしれないけど何者なんだ……!
通常体と激情態セットだなんてなんとありがたい……!
素敵なイラストをありがとう御座います!
もう劇場版の後始末はこれで終わりなのだ!
来週にはなんやかや赤心寺での修行を終えて、家でジルのベルト装着の儀式して木野さんを殴って縛り付けてアギトやらテオスやらマラークやらのネタバレを叩きつけてやるんだい!
原作の氷川さんが木野さんに良いように利用されすぎてて草
僕の知ってるアギトじゃないに至るまでが長すぎませんか……?
なお今作ではツッコミ役に小沢さん以外に外様とはいえ一条さんが居る上にアギト正体バレしてるし別に芦原さんが邪悪なアギトじゃない事は一緒に戦って証明されてたりするぞ
木野さん四面楚歌の巻
そのまま四方八方を謎の機械化恐竜軍団とかに囲まれて捕縛されてアギトの起源とその敵に関しての説明会に出荷よー
ということになるかどうかは書いてみないとわからないのだ
この話も元は難波さんの労をねぎらう為に二人でオシャンティなレストランのディナーに行ってモーフィングパワーの応用でコインから小さな造花を作って送るみたいなおしゃれイベントにする予定だった
っかー! 難波さんがうっかり酒飲んで酔って酔いつぶれて無ければなーっ!
ようは筆が乗る方向がどうなるかは未定という話なんですよ
プロットがっつり作れば作るほど書いてる内にこっちの方がいいな、こっちのが書きやすいなでズレていくみたいな……
でもいい加減ライダー要素が見えないので頑張る
この頑張るってのは努力目標的なあれなので守れなければ守れないで仕方ないなーアカネくんは(モニタ越しの黒幕感)と甘く許してもらえるやつ
そんな甘やかなでふわふわした進行のSSではありますが、それでもよろしければ次回以降も気長にお待ち下さい