オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
びょうびょうと音をたてながら狭い縦穴を落ちていく時間は極めて短い。
数十メートル、いや、あっても十数メートル程度か。
しばらくせずに地下施設の床が見えてくる。
オルタリングからフレイムセイバーを取り出す事、二本。
両手に逆手に握り、刀身を壁に突き刺す。
落下によるエネルギーにより、フレイムセイバーは縦穴の壁をざりざりと切り裂き、赤いアギトが減速していく。
十分に減速した所でフレイムセイバーから手を放し、足裏から炎を噴出、僅かにホバリングしながら地面に着地。
「あーあー」
上を見上げ、縦穴の出口付近に突き刺さったままのフレイムセイバーを惜しむ。
実の所を言えば意識的に手放した訳ではなく、思ったよりも激しい壁を切り裂く際の振動に負けてうっかり手を放してしまっただけなのだ。
「まぁいいさ」
手をぷらぷらと振りながら、あっさりとフレイムセイバー二本を諦める。
元から得物を使う戦いが得意という訳ではない。
赤いアギト……グジルの本来の戦いに武器は必要ない。
元の戦いが万全にこなせる訳ではないが。
こつ、こつ、と、変身前から引き継いだ脛当──金属製のブーツが歩く度に音を立てる。
意識的な物だ。
足音を消そうと思えば消せない訳でもない。
それはグジルにとってのノックの代わりだった。
客が訪れた事を訪問先に伝える。
言わばマナーだ。
ちりん、ちりん、と、金属の擦れ合う音が響く。
ノックに応じた返答、という訳ではない。
だが、音の主こそがグジルの標的に他ならない。
コンクリートの柱から足音も無く、装飾品からの音を隠すこともなく、それは現れた。
アントロード・クイーン、フォルミカ・レギア。
無数に存在するアントロード達の女王にして母。
その立ち姿は堂々として、逃げる事も隠れる事も無い。
じり、じり、と、距離を置きにらみ合う。
軽口も無い。
これが常のグジルであれば、あるいは、一般的なグロンギであれば名乗りの一つも上げたのだろう。
口上を述べる程度であれば隙にもならない。
だが、できない。
するだけの余裕は無い。
一目見ればわかるほどに、クイーンの立ち姿には隙がない。
ゲゲルのため、基本的には自ら動き出す『動』の戦士が多かったグロンギではそう見ることのないタイプ。
しかし、構えた三叉の槍が、視線が、グジルの一挙一動を逃していない。
ざ、と、強く足音が響く。
視線をクイーンから逸らさず、後ずさる。
後ろに引けば、その分だけクイーンが迫る。
走る事は無い。
突如、細い火柱が天井からクイーン目掛けて伸びる。
縦穴に突き刺さったままだったフレイムセイバーの一本が解け炎と化したのだ。
七千度にも及ぶ炎の柱がクイーンの視界を埋め尽くし、しかし、それでもクイーンが慌てる事はない。
手にした三叉の槍、黄泉の鎲を軽く振るうだけで、生物を瞬時に焼き殺す程の炎を巻取り無力化してしまったのだ。
基本的な事ではあるが、余程両者の力に大きな差が無い限り、マラークとアギトの戦いで超能力は決定打になりえない。
位階こそ違えどアギトの力の源泉はマラークのそれと同じ天使のものだ。
マラークが超能力者の人間を殺す際の特殊能力がアギトやギルスに対してほぼ通用しないのと同じく、アギトの行使する炎や風、念動力はマラークに通用しない。
互いの持つ基本的な超能力が干渉を阻害するからだ。
そして、その事実を全てのアギトとマラークは誰に教わるでもなく承知している。
人間の超能力者程度であればともかく、アギトに覚醒した時点でその力はマラークに劣るものではなく、互いの力の性質を無意識の内に把握する。
当然、アギトによる使徒再生で生み出されたグジルもそれは理解している。
ただの超能力……アギトの力で生み出した炎ではマラークを殺す事はできない。
だが、それは命を奪うことができないというだけの話で、依然として炎は光を放ち熱は水分を揮発させる。
炎を浴びせられれば当然視界は塞がれるし、熱は眼球の表面を一時的にも乾かし視界をかすれさせる。
向かってくる火柱をクイーンが槍で受け流している間に、グジルが跳躍。
縦穴の縁に刺さっていたもう一本のフレイムセイバーを掴み、火柱に紛れクイーンへと大上段からフレイムセイバーを振り下ろす。
七千度の熱を内包した実体のある剣。
超能力を持つ怪物同士が戦う上で、肉の器を破壊する事こそ確実に殺害し得る手段なのだ。
だが、それはクイーンとて承知の事。
炎で視界を防がれたとはいえ、元から視界だけに頼っている訳ではない。
いや、視界を防がれたからこそ、どこから攻撃を仕掛けてくるかは読みやすくなる。
黄泉の鎲の三叉の刃が振り下ろされたフレイムセイバーの刀身を受け止める。
受け止めた斬撃は軽い。
アギトと化したとはいえ、変身者の元の体格は変身後の体格にそれなりに影響する。
通常の拳ですら数トンの威力を誇るアギト、それと互角に戦いうるマラークにとって、重力を生かしての攻撃はあまり利が無い。
逆に踏ん張りが利かない分威力が減衰する場合すらある。
三叉の槍を捻り、受け止めたフレイムセイバーを巻取り背後に投げ飛ばし──咄嗟に逸した首元を刃が掠める。
柔らかに見えて、しかし雑兵の甲殻程度には頑強な首周りの外皮が煙を上げながら切り裂かれた。
フレイムセイバーを背後に弾き飛ばす動きを加速し、黄泉の鎲の柄でアギトの居るであろう位置を薙ぎ払う。
がきん、と、金属のぶつかり合う音が響き、炎が失せてクリアになった視界に地面に着地したアギトの姿が映る。
その片手には僅かに炎であった名残の揺らぐ輪郭を見せるもう一本のフレイムセイバー。
グジルは内心で舌打ちをした。
今のは絶好の場面だった。
並のマラークなら間抜けにも首を貫いてそのまま切り落とせただろうに。
当然の話ではあるが、一筋縄ではいかない。
グジルの打った手は単純なもの。
縦穴に突き刺さったままのフレイムセイバーを炎として目くらましに使い、その間にもう一本を回収。
わかりやすい驚異であり受けやすい攻撃であるフレイムセイバーの振り下ろしを囮として使い、視界を防いでいた炎をフレイムセイバーとして掴み直し、三叉の槍を武器の巻き上げに使い無防備になったクイーンの首に突き刺すというもの。
自在に武器を変化させるというのはグロンギの上位者であれば可能な技術であり、ジルの視線越しに交路が練習している場面を幾度となく見ているグジルにとっては自然な発想だった。
フレイムセイバーの刀身を炎の鞭として扱ったのと同じく、真正面から力技で押し殺せないからこそ生まれた戦法。
だが、クイーンとて伊達にクイーンと称されている訳ではない。
無数の兵隊を生み出し操るその姿から誤解されがちだが、クイーン自身もまた強力なマラークに数えられるうちの一体なのだ。
無数の兵隊は、自分が出来ないことを行わせている訳ではない。
自分の手を煩わせる必要のない程度の低い仕事をさせているだけに過ぎないのだ。
ただ群がり襲いかかるだけのペデス、それを纏めるエクエスとは違う。
力と技とを兼ね備えるギルス、あるいはアギトと戦う場面でのみ、クイーン──レギアは己が力を振るう。
雑兵を踏み越えてやってきた選ばれし戦士こそ、自分が刃を振るうに相応しい、と。
ごう、と、背後から迫る炎に対しクイーンは身じろぎ一つしない。
ただの超能力で、アギトの力で生まれただけの炎では自らの体を焼く事は不可能であると知るために。
炎を動かしたアギト──グジルもそれは承知していた。
大蛇の如くうねる炎はグジルの手の中に収まり、しかし、フレイムセイバーになる事無く、もう片方のフレイムセイバーの柄尻に接続され、長大な柄となる。
ストームハルバード、ではない。
グジルの変じるアギトはそのスタイルを変える事ができない。
炎一本。
しかし、武器を変異させるグロンギとしての記憶が、自らを殺害せしめた武器への奇妙な執着が、この変異を可能とさせる。
双刃であるストームハルバードではない。
風すら纏わない。
短い刀身のフレイムセイバーの柄を伸ばしただけの、しかし、自らの命を断ったが故に、他のあらゆる武器よりも強く死のイメージを持つ、必殺の武器。
フレイムハルバード。
炎の戦斧を大上段に振りかぶる。
尋常でない雰囲気に、クイーンが黄泉の鎲の柄を握り直す。
必殺の、必殺と定めた、必殺と信じた一撃が来る。
ぎち、と、筋繊維の膨張する音が、じり、と、互いが地面を踏みしめる音が響く。
一足一刀の間合い。
先に動いたのは、グジル。
勢いよく、一歩、後ろに下がりながら更に戦斧を振りかぶり──否、柄尻を跳ね上げる。
受けるまでもない、よく見れば避けるのも容易い大ぶりの一撃の前動作に見えるだろう。
故に、クイーンは目をそらす事無くグジルを、アギトを、アギトの持つ戦斧を見据える。
閃光。
薄暗い地下施設を白く染め上げる眩い光。
それはフレイムハルバードの柄尻に埋め込まれた宝玉から放たれていた。
熱を持たない、攻撃ですらない。
瞼を閉じていても目を焼く光はしかし、あるいは腕や何かで遮れば一切害のない目くらまし。
しかし、グジルの動きを見逃すまいと目を凝らしていたクイーンにはそれをする程の時間は無かった。
強烈な閃光に視界を奪われ、しかし、頑強な肉の器を持つマラークであれば十秒もしない内に回復するだろう。
だが、その僅か数秒は、もはや最後まで縮まる事はない。
閃光を受け目元を抑え蹌踉めくクイーンを前にグジルが一歩下がる。
振りかぶる構えから、戦斧を腰だめに構え直したグジルの──アギトの体が白く変色していく。
近寄らせるものか、と、クイーンが黄泉の鎲を振り回すその先で、赤いアギトは白く、そして、戦斧はより鋭く、シンプルな長槍へと変じる。
長い木の棒の先端を尖らせた様に、或いは、天へ伸び続ける枝の先の様に。
一歩、後ろに足を下げ。
僅かに回復したクイーンの視界に、背に光の翼を広げたアギトが、低い姿勢で槍を構える姿が映った。
白いアギトの頭部クロスホーンが展開し、足元にアギトの紋章が広がる。
同時、白い長槍の穂先、刃の根本で同じ様に鍔が開く。
たん、と、軽い踏み込みと同時に背に負う光の羽が爆発し、加速。
空気の壁を突き破り衝撃波を生み出す白いアギトの前方に展開した、光り輝くアギトの紋章。
それを突き抜け、吸収し、盾のように翳された黄泉の鎲ごと、クイーンの心臓付近を貫き、手首の捻りで更に刃をねじ込みながら再加速。
狭いわけではない地下施設の壁に、勢いよく叩きつけられ貼り付けにされ苦悶の声を上げるクイーン。
その頭上に光の輪が浮かぶのを確認すると、白いアギトは柄から手を離し、振り向く。
こつ、こつ、と、全てが終わったのだと言わんばかりに歩き去るアギトの背に手を伸ばすクイーン。
しかし、頭上の光の輪が消え去る事も無く、ダメ押しの様に胸に突き刺さる槍の穂先が熱くなっていくのを感じ──
自らを縫い付ける槍の爆発によって、粉々に砕け散った。
光の輪を出してからの自壊ではない。
突き刺された槍の穂先の爆発によって、その肉の器は砕かれたのだ。
「悪いね」
『おえんえ』
煙を吹き出しながら、再び赤く染まったアギトが振り返りもせずに手を振りながら、その影に映る白い少女が申し訳なさそうな顔で。
「自爆がカウントに入るか確認し忘れてよ」
『ああしあいあ、こおさあうあ、だかあ』
歩き去るアギト、グジルとジル。
その足取りは軽い。
いや、軽い様に見せている。
よく見れば足も手も震えている。
恐怖ではなく、力を出し切っての疲労から。
やせ我慢だ。
本音を言えば倒れ込みたい。
それを堪えて、余裕ぶっているだけ。
ギリギリの所でクリアして、その後は歩く事もできない。
そんな無様は見せたくない。
それは、どちらにとっても共通する、審判への見栄であった。
―――――――――――――――――――
うむ。
合格だ。
「どうよ」
変身を解き、強化外骨格姿に戻ったグジルが縦穴の梯子を登り切り、誇らしげに胸を張る。
足元がふらついているのはご愛嬌。
万全でない肉体でよくぞ戦ったものだと思う。
梯子を登りきるまでに力尽きていたら救助した後に指さして笑っていたところだが。
「見事だ。60点」
「辛口……」
「何、点数自体に特に意味は無い」
そもそも万全ではない肉体で戦いの場に出た、という時点で、事情はどうあれ満点とは言い難い。
戦いも、もう少し赤いままで粘れたし、やりようによっては始末出来ただろうにとは思う。
目くらましからの最速最大火力と思しき一撃は良い。
が、目くらましをした時点で赤いままトドメを刺す事も可能だった筈だ。
最も、白いアギトになったのはそれぞれの変身時間制限も関係しているのだろうが。
「約束通り新しいベルトをこさえてやろう」
「これで私も、ムセギジャ──」
ふつ、と、グジルの声が途絶える。
何事かと見れば、先までの歩き方にまでにじみ出る蛮族感が消え、その場にへたりこむグジルの姿。
その場に女の子座りで崩れ、首元に手を当て、頭部装甲を持ち上げる。
──のを、上から押さえつけようとした所で、グジルの──ジルの手が止まる。
口元だけが露出した状態で、頭部装甲を持ち上げたまま、唇を動かす。
『ああい、おうえいあえお』
「ああ、上出来だ」
俺の返事に、並びの良い歯を見せて音もなく笑い、再び頭部装甲を装着した。
防御に隙のないフルフェイスであるために当然表情も見えないし、何故かグジルからジルに戻ってから何時も通り声が出ていないので、こうなると表面上何を考えているか読み取ることは難しい。
筈なのだが、歩き方がふわふわと浮ついている辺り上機嫌そうではある。
……普段の姿ならともかく、強化外骨格姿でやられてもシュールなだけなのだが。
「じゃあ、俺は他の人らを拾って帰るから」
此方を振り向きながら首を傾げるジル(強化外骨格フル装備)の後ろ側に踏み出した足に足を引っ掛け、後ろ向きに転ばす。
わたわたと悲鳴も上げずに後ろに倒れ込みそうになるその先に帯電する煙の塊が現れ、その中に落ちていく。
転移先はホテルのベッドの上、怪我をすることもあるまい。
まぁ、外骨格表面の諸々のトゲトゲでベッドは少し破けてしまうかもしれないが修復できる範囲に収まるだろう。
さて。
この施設の案内図は大体頭の中にある。
強化された五感で反響音を聞き取り、案内図に無い部分も大体わかる。
施設付近の魔石の反応が3つ。
施設内のものは葦原さんのもの。
施設の外、トレーラーから少し離れた場所で向かい合っているのは難波さんと一条さん。
施設内の魔石がちょこちょこ動いている辺り、津上さんや氷川さんと連携して風谷真魚さんを保護しているのだろう。
まさか今年のこんな早い段階で三人のライダーが手を取り合って戦うだなんて、感動的だなって思う。
「おっと」
うっかり地面についた足裏を伝ってモーフィングパワーが施設全体に滑った。
視界の端で監視カメラ風の物体が一つ残らず粉々になってしまったが……事故だな。
そして、研究室っぽい場所への最短距離を隔てていた壁が突如として蒸発してしまったが……。
これはいわゆるプラズマの仕業というやつだろう。
二、三年前までオカルト系の特番でいっつも言っていたやつだ。
高名であるらしい大学教授とかが言っていたので間違いない。
いきなり空いた横穴をダッシュで走り抜ける。
もしかしたら要救助者とか生き残りのアントロードとかが居るかもしれない。
くっ、施設のあちこちで同じ様なプラズマとかによる被害が!
おかげで俺の足跡とか、行動の痕跡になりえそうな部分も跡形も無く蒸発してしまっている!
なんて事だ。
きっとあのカルト女の仕業に違いない。
即席強化外骨格人形で稼働時間を伸ばされたせいで変なタイミングでG4が内蔵骨格と筋肉を駄目にして機能停止し、本人もきっとアントロードに殺されて。
全てが台無しになったから死ぬ間際に基地の自爆装置を起動したのだ。
きっとそうだ。
今日この日、この基地の中で何が起きていたかなんて、後から調査してもきっと何もわからなくなるほど跡形もなくなる様な規模の恐るべき自爆装置!
プラズマリアクター的な何かが秘密裏に開発されて秘密裏に建造されて秘密裏に運用されていたに違いない。
何せ、この世界は恐らく昭和の時点で一部技術者の間では重力制御装置とかが実用されていたのだ。
こんな今時流行らない超能力開発なんてしてる時代錯誤なカルト集団にも、その手の技術が流出していてもおかしくない。
「ここか」
それらしい資料室だ。
紙の資料は少ないが……。
無い訳ではないな。
これは……紙に起こしたG4の設計図とプレゼン用原稿。
火を付けてぽい。
こっちの棚は……あった。
ふむ……。
完全なものではないが、現物があるから問題は無し。
発信機らしきものも無し。
これはホテルに転移でぽい。
……よし!
気がかりな部分、全部完了!
あとは難波さんを拾って帰るだけなのだが。
葦原さんがまだ施設内でうろちょろしている。
アントロードの生き残りが予想より多くて苦戦している……という訳でもあるまい。
既に施設内にマラークの気配は無い。
なら、なぜ同じ様な場所でぴょんぴょん跳ね回っているのだろうか。
魔石の稼働率も明らかに葦原さんが戦闘状態である事を示している。
これではこの施設を心置きなく破壊できない。
間違えた。
仮面ライダー達が悪の基地の自爆に巻き込まれてしまう。
むーん。
エコーロケーションで、なんとなーく、何かと戦っているのはわかる。
だが、複数体ではない。
大きさもなんとなくわかる。
機械の稼働音も無いので回収した重装甲服の同型でもないだろう。
動きに積極性が無い。
攻撃を避け続けている?
相手を殺しに行っていない……となると。
「なるほど」
確かに、彼らでは戦いにくかろう。
折角だ、少しくらい手伝いをしてもバチは当たるまい。
―――――――――――――――――――
轟音。
金属の塊が壁を突き破り室内に侵入する。
壁に大穴の空いた部屋の中には、津上翔一変ずるアギト、葦原涼変ずるギルス調整体、装着員氷川誠のG3X。
三人の戦士が取り囲む──いや、遠巻きに手を出しあぐねているのは、G4システム。
いや、それは本当にG4システムなのだろうか。
黒を銀で縁取る装甲はひび割れ、装甲に対して手足は女性の様に細く、黒いボディスーツがあるべき場所はくすんだ陶器の様な質感の灰色に染められている。
極めつけは、その顔だ。
G3Xと大差ない筈の頭部装甲はアメーバの様に歪み、顔面の四分の一程が先に殺された筈のアントロード・クイーンのそれに変質しかけている。
「なんだ、こいつら」
魔石の制御により、三人の中でも群を抜いて冷静にされているギルス、葦原が突然の闖入者に誰何の声を上げた。
壁を突き破り現れたものに見覚えがあるのは津上と氷川のみ。
重装甲の人型。
G4と共に港で、或いはこの基地周辺で戦っていた連中だ。
だが、数が多い。
その数およそ十。
肥大化させたG4とでも言うべきそれらが機械的な動きで周囲に視線を巡らせ、膝を曲げ腰を低く、
アギト、ギルス、G3Xをそれぞれ三方向から取り囲むようにしてのタックル。
タックルと見紛うほどの勢いで行われる捕縛。
「こいつ、離っ、せ!」
スコーピオンの銃床で装甲服の背を叩く氷川の耳に、自らを抑え込む装甲服から声が聞こえた。
『間もなくこの基地は自爆します。外までお連れしますので抵抗なさらぬよう』
聞き覚えの無い声。
この装甲服の装着員だろうか。
『この様な騒ぎに巻き込んで申し訳ありません。誘拐された民間人の少女は既にトレーラーにお連れしていますので、ここは急いで離脱を』
装甲服越しであるが故にややくぐもって、しかし、水城の様に狂気に侵されたようには聞こえない誠実そうな声。
それは、彼らが本気で自分たちを避難させようとしているのだと思わせるには十分すぎた。
「しかし、彼女は」
『この基地は、彼女の生命活動が止まるのに合わせて自爆するように設定されています……この様な研究をしていた以上、彼女も覚悟の上でしょう』
「そんな……」
足裏のローラーで加速する装甲服達に抱えられ、津上、氷川、葦原は数分とせずに基地の外に脱出する。
Gトレーラーには風谷真魚が保護されているのが確認でき、その場に下ろされた氷川達は基地を振り向く。
燃えている。
天を衝く様な火柱、異様な放電現象、崩れ行く外壁、繰り返す小爆発。
『ああ、終わる……悪魔の研究が……』
声に振り向けば、氷川達を脱出させた装甲服もまた、基地と同じ様に燃えていた。
装甲の隙間から、バッテリーから、明らかに内部を焼く炎。
しかし苦悶の声は無い。
まるで苦痛など感じないとでも言う様に。
「何故……」
『機密保持の為の自己終了装置です……元より我らは、この施設無しでは』
駆け寄り火を消そうとする氷川達を手で制し、次々に装甲服が崩れていく。
一つ、また一つ。
最後の一体、火に飲み込まれ、放電音に紛れながら、確かにその声が響く。
『ありがとう……』
がしゃ、と、最後の装甲服が崩れ落ちる。
すると、何かのスイッチが入った様な音と共に、残骸が光に飲まれ──
後には、焼け焦げた地面のみ。
彼らの痕跡は、一欠けも残らず消え失せた。
―――――――――――――――――――
「──かくして」
がしゃ、と、炎に包まれた制御室内に何者かが踏み入る。
金縁の黒いつや消しの、葉脈の如きエネルギーラインが走る装甲。
炎の照り返しを受け、冠の如き金の六本角が血塗れの様に赤く染まる。
手に大鎚にも似た杖を携えたその姿を、ただ、G4の装甲を纏うオルフェノク──死んだ筈の深海理沙だけが目撃した。
「悪魔の研究所は、一夜にして炎に飲まれて沈んだ。多くの非人道的な実験の被害者と共に、ね」
「二十二、号……!」
人間の肉体であれば歯ぎしりしただろう。
だが、同時に感じたのは異様な程の高揚感。
最高の相手だ。
ここにはG4がある。
いや。
私こそがG4となった。
突如として身を焼く様な痛みが走ったかと思えば、多くのものが見えるようになった。
理解できる。
これが、未来。
これが、予知。
「マラークの魂に、肉体を乗っ取られないオルフェノク。貴重なサンプルとは思いますが」
がん、と、大鎚の柄を地面に落とす。
すると、マジックの様に大槌の頭が消えた。
二十二号が内部に精製していた、外部操作用の副脳を消滅させたのだ。
「……貴方、まだ国を守る自衛官として活動するつもりは?」
「勿論よ。私は、それだけの為に働いてきた」
「どうやって?」
ああ。
決まっている。
「皆を私と同じにする。死なず、外付けの超能力者を必要としない、完全なるG4に!」
「そう……」
残った柄を煙のように消しながら、興味なさげに相槌を打つ二十二号。
だが。
死の淵から蘇った深海理沙には。
G4オルフェノクには理解できた。
こいつは私を殺そうとしている。
だが、それはできない。
「G4は無敵よ。より完全に仕上がった
「一つわかった事がある」
二十二号が構え、手首をくいと曲げて手招きする。
「馬鹿は死んでも治らない」
飛びかかるG4の影、深海理沙の残骸は、狂気に歪んだ笑みを浮かべていた。
☆ジャッジ終了で晴れてラの業務を終了し趣味の時間に突入マン
ケンシロウ! 暴力は良いぞ! 無益な広域破壊も良いぞ!
うちのSSの恒例行事みたいなものだから勘弁してね
別に今回暴力的な行動はしてないから他意はないけどね
つまり基地の自爆に巻き込まれる
悪の秘密基地って怖い
監視カメラは運悪く基地の自爆前に一つ残らず破壊されてしまったねぇ
ふとした思いつきから自分が全力戦闘をしていない場合に限り複数体の装甲服付き人形を高精度で動かせるギミックを作り上げる
これも脳みそ潰したり直したりしたあの遠い日(半年くらい前)の思い出があればこそ
かつての強敵との戦いの経験を生かして強化されたりする辺りまさか主人公かもしれない
でも気持ち悪いし結局手間は掛かっているのでAIやら制御系に関する知識は収集
次回ちょっと戦います
☆新たなムセギジャジャ
名を小春ジル&グジル
改めて書くとこの名前語感悪いな……
作中でも言われていたけど、もうちょっと赤で粘れば普通に勝てたけど、熱量管理の関係で戦闘中でも隙を見てフォームチェンジしないと死ぬか死ななくてもちょっと前の雑魚戦後のフラフラ状態になる
が、何度もフォームチェンジを繰り返すとそれはそれで肉体に負荷が掛かるので熱量の管理しっかりしていれば無限に戦闘できるという訳でもない
安定性を欠くが白い時の火力は頑張ればともすればシャイニング並かもしれない
たぶんね
フォームチェンジの際は数秒無防備になる為、周囲の敵をどうにかしておかないと危険
ぶっちゃけ一つの火を二人分の人格で分割している弊害と予期せぬ副作用的な何か
☆アントロード・クイーン
他のアギト怪人同様、戦わせにくい
戦闘シーン集めてもそんなに動いてないんだよなぁ
一般人への殺人シーンが多く、その殺人に使うギミックがそのまま戦闘に流用できてそれなりに長回しでクウガと戦って戦闘シーン見せてくれたグロンギを見習うがいい
貼り付けからの槍爆発でケツに爆竹ぶっ刺されたカエルみたいに死んだ
ろくにダメージを出せなかったが、原作通り葦原さんと当たったら余計悲惨な死に方したろうから……
☆原作主人公ズ
なんか死んだはずの人間である筈の深海理沙が蘇生したかと思ったら化物になってG4の装甲はいで装着して襲いかかってきたから殺しあぐねていた
謎の装甲服決死隊に助けられ基地から脱出
命をかけて自分たちを救助してくれた勇敢な実験体の人たちに感動
☆実験により神経系のみを移植され文字通りパーツと化したカルト女の支援なしでは生きていく事もできない謎の装甲服実験部隊
そんなものは存在しなぁいっっっ!
現地回収した装甲服の残骸と、手に入れた設計図らしきものを元に、適当な建材から作り出された木偶人形ズ
自爆装置も搭載されていて中の人(非実在)の痕跡すら残さず抹消しようとする悪魔の機体なのだ
欺瞞!
☆副脳
変身時にモーフィングパワーで肉体を変異させているし、欠損した脳みそも復元できるわけだから作ろうと意識すればイケるんじゃね?という思いつきで形成された
実サイズはソフトボール程度、衝撃吸収材に厳重に包まれた上で巨大なハンマーの様な杖に搭載されていた
主人公の脳みそがそのまま複製されている訳ではなく、主人公の脳細胞の構造を元に作られた限定的な生体CPUで念動力などを駆使する補助を行える
謎の善良な実験部隊の声は念動力で装甲板をすり合わせて出された合成音なのだ
☆謎のカルト女深海理沙改めG4オルフェノク
素体の時点でG4的な見た目だが、水城さんが死んだ後の装甲板を無理やり肉体にはめ込んだらなんかくっついたぞ
クイーンの魂に乗っ取られるかと思ったら異様な精神構造的な劇場版ラスボス補正で乗っ取り返して魂が拡張されて逆に超能力に目覚めた
スペックは超能力者に接続された限界稼働時間制限無しG4くらい強い
でもお前が相手にするのも予知能力持ちの超能力者だって事は理解しとこうな
次回にちょっと戦うよ
☆今日の難波さん日記
外からトレーラーを見張っているだけでいいからと言われてウロウロしていたら、怖い警察の人に職質されました
帰ったら流石に怒ろうと思います
でもデートとかしてくれたら許します
……デートしてくれたら許してあげるって、なんだか彼女面みたいで図々しいかなぁ……
☆自衛隊基地近くに屯する未確認生命体に声をかけたら明らかに何の変哲もない善良なJKらしい反応を返されて困惑する一条さん
二十二号……こんな少女まで巻き込んでいるのか!
……何、助けてもらった?
いや、だからといって戦いに巻き込んでいい訳が……
みたいな
直接話す機会があったら説教ですよ説教
そして今回もありがたくイラスト紹介です
ありがとうナナスさん!
【挿絵表示】
白アギトですね、ミラージュではない感じで
正面から見ても胸元ヴォリュームあるなぁ……
股の隙間は運動不足感あると思います
たぶん登場初期すべてCGで出て、補正切れた辺りで普通に肉弾戦CGナシで始めるんじゃないかなと
改めて位置を表示されるとホントに日本の端っこですね総人口小数点以下含めて少なめのSAGA……
そして武装の擬人化で真っ先に出てくるのが萌キャラじゃなくて胡散臭いおっさんってのは良いと思います
ヒロインどっちもかわいいから脇は色んな性別いろんな個性で固めたいですよね
今季名作多くないですか?
しかし一話見たなら一週間待たなければならない……
そんな隙間時間のお供に
言いたいことがまとまりそうでまとまらなかったので
そんな考えた先から書いちゃって後から何だこりゃとなる筆下手なSSでもよければ、次回も気長にお待ち下さい