オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
簡単に力を付けたい、というのであれば、何も修行に拘る事はない。
既にある力を他所から持ってくるのも力をつける手段だ。
それは機械式のアーマーでもいいし、単純に武器でも良い。
だが、最終的にそうやって手に入れた力を使いこなすのには、使いこなすための練習……修行が必要になってくる。
良い例がキン肉マンに出てくるステカセキングだろう。
彼は自分のキャラソンの中で、練習を積まずにエアーチェックをするだけ、などと嘯いているが、そうではない。
今の時代には存在しない、後の世で連載再開される初代キン肉マンにおいて、彼はスプリングマンと共に上司にあたる悪魔騎士にしごかれる描写が存在する。
それはフィジカルを鍛える、という意味もあるのだろう。
如何に優れた技、能力を模倣できようと、それを繰り出す超人の力が不足していては相手を打倒する事は難しい。
そして、カセットの力で他の超人の特性や技を使いこなす事ができたとして、その技をどのようなタイミングで使うか、どうやってその技を使うに至る流れを作るか、という判断はステカセキングの頭に掛かっている。
机上のシミュレーションでも済むかもしれないが……。
実際に選択を迫られるのは、リングの上で戦っている真っ最中なのだ。
しかも、一本のカセットで一試合戦い抜くというのであればいざしらず、カセットを幾度となく取り替えるというのであれば、カセット交換の隙を作る練習もしなければならないだろう。
当然、効率的に鍛えるとなれば、実戦形式の練習を繰り返して、試合中でも冷静かつ的確にカセット入れ替えを行えるようにしなければならない。
可能であれば、所持する全てのカセットで、カセット交換や悪魔のシンフォニーへと繋げるパターン構築の練習を積むべきだろうし、当然、一年あれば365日修行の日々である悪魔超人ならば実際にこなしていたのだろう。
……うるう年には一日だけ休めたりするのだろうか。
翻って、魔石、霊石の戦士、そしてアギトはどうか。
そして後の時代のライダーやそれに類するシステムの使用者達はどうだろう。
的確に使用武器、フォームを選ぶ、というのは、言うほど簡単ではない。
選択肢が増えるというのはそのまま選べる未来が増えるという事だが、増えた未来が必ずしも良い未来とは限らない。
使える、便利だと思い増やした手札が、場面によってはブタになる、なんて事は十分にありえる。
選択肢が多すぎれば目移りしてしまい、選んでいる時間が隙として認識される長さにまで伸びてしまう事もあるだろう。
選択肢を、力を、技を、武器を増やすのが悪いとは言わない。
使いこなせるならそれに越したこともないだろう。
だが、迷いの中にあるのならば、或いは未だ不慣れであるというのなら、最初からある力を単純に伸ばしていった方がいい。
シンプルに強い、というのは、実際かなり攻略が難しいのだ。
そういう意味で、モーフィングパワーとアギトの力はとても良い。
双方に共通する点として、基本的に鍛えれば鍛える程に伸びていくという点がある。
恐らく、力の元となる部分に共通する何かがあるのだろうが……。
今はいいだろう。
「ふふん」
手の中で転がすのは、先日新造した魔石だ。
作れるだろうという確信はあったが、これが記念すべき初制作だったりする。
別に、今すぐに魔石を増やす必要はない。
増やす必要が出てきたのならば、時折見つけるスマブレのオルフェノクを使えば似たような事ができるのだ。
今回、この魔石はおまけ。
この魔石に込められたエネルギーこそが本命と言える。
人間に接続されず、当然この魔石は休眠状態にある。
だが、ある程度の五感以外の知覚能力があれば、この魔石から強い力を感じる事ができるだろう。
強い力、というのは語弊があるか。
濃い存在感が魔石の中にある。
しいてこの力をなにかに例えるとするならば……種火。
そう、種火というのが相応しいだろう。
消灯した部屋の中に、火の灯った蝋燭がある。
この魔石はそんな状態だ。
仮に、この魔石をベルトの外装に搭載し、何か適当な生き物の体内に投入したとして、生まれるのは普通のグロンギの類似生物だろう。
さもありなん。
この力はアギトの力ではあるが、完全に覚醒している訳ではない。
照明の点いた部屋の中で存在感を示せる程の輝きはない。
近寄れば温かい、可燃物に付ければ燃焼する。
それはモーフィングパワーで生成する武器への影響であったり、念動力、短期予知などに該当する。
何かしらの追加行動で表出する事ができるというだけで、あるだけで全体に影響を与える程には至っていないのだ。
アギトの力を完全に覚醒させた人間が、超能力を失う、と、そう思われているのもこれが原因だろう。
先に、魔石とそこに宿るアギトの力を部屋と照明と蝋燭に例えたが、ここではこの部屋を人間の身体、或いは魂も纏めたものを指すものとし、魔石は電気照明装置としよう。
アギトの力を宿した人間は、電気照明が無く、火の灯った蝋燭だけがある部屋。
火に近付いて暖を取る、或いは部屋の中の何かに火を近づけて燃やす、というのが超能力だ。
規模が小さく、部屋そのものには影響を与えない。
だが、その火をより効率的に使う為に、部屋に暖炉やストーブ、ランプなどを設置して火をそこに移したならどうだろうか。
電気照明はないが、火を持たない部屋とは別物になるだろう。
暖炉、或いはストーブやランプが設置されている部屋。
これがアギトだ。
完全に部屋の一部として組み込まれるが故に、別の方法での利用は難しくなるが、実際には無意識的に多方面で利用しているのだ。
それこそ、アギトはその超能力を機能の一部として維持している。
フレイムフォームの熱発生は発火能力とも取れるし、その熱や炎を自由自在に動かす操作は念動力に類するだろう。
優れた五感、超越感覚などは千里眼の変形とも取れるだろう。
暖炉の火を弱めれば、火のない部屋、通常の人間に近い形に戻る。
これが変身解除。
だが、超能力を使おうと思えば、人間に近くなる程弱めた火に燃料を放り込み炎を作る事になる。
暖炉の中に炎があれば、それは火のない部屋とは異なる……変身し、アギトとなる。
超能力を使う、というコマンドが、そのままアギトへと変じるコマンドで上書きされてしまうのだ。
そして、暖炉などの火を使う器具があるのがアギトであるなら、部屋全体に引火してしまっているのがギルスである。
部屋を焼くことで炎は強くなり、その炎に焼かれて部屋は瞬く間に焼け落ちる。
そもそも火の点いた蝋燭があるというより、部屋の中に火が投げ込まれた様な状態というべきか。
変身を解除しようとも、炎の入れ物である肉体は元の通りには戻れない。
ギルスが治癒を受けて、或いはアギトの力を受け取って副作用を克服、パワーアップに至ったのは、それこそ火以外の力で部屋を整えられたからだ。
アギトは交配によらず、火のエルが力の行使者として直接的に力を託した存在である為に、使いこなす為の構造を最初から組み込まれている。
アギトである方の津上翔一はそのまま火のエルによって火の点いたストーブを渡された男。
超能力による治癒はさしずめ、消火した後に部屋を修理し、中にある道具を使って簡易ランプや簡易ストーブを作ったようなもの。
折れた骨が太くなるのと同じく、アギトの力による破損に対して、再発を防ぐ為の変化を行わせたのである。
アギトの力の譲渡はそのまま新しく人からストーブを貰ったようなものだ。
簡易ストーブと貰い物のストーブで部屋の温度は倍だし明るさも増し増し。
変な事をしなければ部屋に再引火もしない。
そして……、新たに提示されたのが、魔石の力を制御するベルトと火のエルの力の共存である。
電気を通して照明で部屋を明るくする為に部屋そのものに手を加えるついでに、部屋そのものを耐火構造にしているのだ。
スプリンクラー付きになった部屋とも言えるかもしれない。
しかも定期的に業者が破損した部屋を修復すらしてくれる。
だから、アギトの様に制御されている、というより、制御されていなくても問題なく動くようにしていると言った方が近いだろう。
部屋が燃えすぎるとスプリンクラーなどで鎮火したりする。
だから、暴走しない、自傷しない、破損した部分は修復するように加工はされていても出力はアギトよりも高い。
便利だ。
で、翻ってこの魔石に込められた火だ。
これは、沢木哲也(仮名)によって、部屋の何処にあるのか、どう使うかを教えられて発見、利用され始めたか細い蝋燭である。
これから時間を掛けて身体がこの火を強くするため準備をする、という段階のものであり、これを単純に俺が取り込んでも、あまり意味はないだろう。
或いはアギトの芽生え段階ではなく、覚醒した後に譲渡されたというのなら話は別なのかもしれないが。
では難波さんに渡すのか。
それも否。
無意味ではないだろうが、今すぐ何かが変わるほどではないだろう。
安定、という意味で言えば、ベルトが破損した場合の保険としては良いのかもしれないが。
……実際、明確な利用法を用意していた訳ではないのだ。
ただ、アギトの力を宿したまま死ぬ人間から、アギトの力だけを抽出できればお得だよなぁと思って取りに行ったに過ぎない。
ただ無為に力が消えるよりは間違いなく有意義なはずだ。
結果的に、榊亜紀さんの肉体は内部に魔石により生じた神経組織が残されることとなったが、外から見る分にはほぼ何の変哲もない首の骨を折られた死体のままだから問題もそう無いだろう。
罪を重ねた、殺すことを黙認されているグロンギではないから、魔石を取り出す方法も人道に配慮した念動力と瞬間移動の応用であるアポートで腹を裂かずに引き出してある。
まぁ、結果的に肉体の一部が変異したままである可能性もあるのだが、パッと見では顔とか肌が出ている部分はほぼ人間に戻ったから上々な結果ではないかと思う。
やってみたら出来た、というか。
試しに買ってみた宝くじで何万円か当たった、くらいの話なので、少し困惑すらしている。
そして、使い道が思いつかないからといって、完全放置をするには些か危険な物品だ。
なので、
「あー」
口を開け、魔石を中に放り投げる。
ひゅる、と、喉の奥に落ちていく感覚。
ごくり、と、飲み込む。
「うぅん、石味」
味というか、喉越しはただの石だ。
力が漲る感覚もない。
腹の中から焼けた鉄みたいな熱と爆竹みたいな衝撃が連続しているくらいか。
ちょっと痛い。
先まで俺が手の中で転がしていた石に興味深そうな視線を向けていたジルが目を見開いている。
座っていたベッドから慌てて起き上がり歩み寄ってきたかと思うと、俺の後頭部に手をあて前に倒し、ばしんばしんと背を叩き始めた。
背を必死に叩く手の力強さに、こいつのリハビリもバッチリ成果が出てきたなぁと実感する。
しかし、これ、昔にボランティアで行った老人ホームとかで見たことあるな……。
涙目で口の中に指を突っ込もうとしてくるジルの手を押し留め、
「大丈夫、大丈夫だからちょっと待て」
お腹の中でバチバチと未知の化学反応を起こしていた魔石が大人しくなった。
ティッシュを何枚か取り出し重ね、その上に腹の中の魔石を転移。
僅かな胃液と焦げ付いた胃壁と共にごとりとティッシュの上に落ちた魔石を、ティッシュとアルコールティッシュで拭いて、手に取る。
『ああああいお?!』
声が出ていないので感嘆符も何も無いのだが、涙目かつ高速で動く唇は早口かつ大声で言おうとしているのが伝わってくる。
ばかじゃないの、くらいの事は言われているのだろう。
俺の身を案じての事か、貴重なアギトの力の入った魔石を案じての事かは分からないが。
「まぁそう言うな。流石にこれは動物実験では使えないからな」
何しろ貴重品だ。
この後に、タイミングよくアギトの力を宿し、死亡直後の身体に誰も近寄らない状況で死ぬ様な被験体はあまり居ない。
そもそも、アギトの力を持つ人間を黒い霧でグロンギ化して、体内の魔石にアギトの力が収まる理屈すらわかっていないのだ。
再現性のあるアイテムかわからない以上、動物実験でうっかりアギトの力が動物側に残ってしまい取り出せない、みたいな状況は避けたい。
かといって、適当な瓶に入れてラベルを貼って保存というのも問題が有る。
人体に含まれていない、或いはアギトの力を持たない人間に移植することすら可能かもしれない剥き出しのアギトの力、というのは、俺にとってもテオス、エルロード達にとっても厄ネタだろう。
たぶん、低位のマラークですら、近い位置で超能力を使えばそれに反応できるのだ。
待機状態のまま放置しても、家を焼かれる可能性なども十分にある。
魔石からは、当然のようにアギトの力が消えている。
驚くほど上手くいくものだ。
なんとなく直感的に飲み込んでしまったが、既に宿主が無い以上、取り込もう、という意思を向けるだけで俺の中に力は移動したのかもしれない。
単純に時間経過で宿主のない力が自然消滅したのが、タイミングよく今だったか。
或いは、魔石やベルトが、アギトの力を移動させやすい媒体として作られているか。
が、やはり足りない。
いや、足りる、足りない、という話なのかもわからないのだ。
今、魔石からアギトの力が、仮に俺の中に移動していたとして、例えばテオスを相手にどうこうするには足りないだろう。
そもそも、アギトの力の元の持ち主である火のエルは闇の力にあっけなく倒されている。
なんとなく、拮抗した末に倒された風の描写だったような気もするが、結局テオスに何らかの痛手を与えた訳ではない。
ワンチャン、遠い国で変身をせずにしらばっくれていれば今年を乗り越える事も不可能ではない、という可能性だってあるのだ。
テオスは人間に対する極めて偏った独善的な見方をしている。
総体としての人間は見ているが、人間個々人を見比べてどうこう思う事は極めて稀だ。
アギトかそうでないか、くらいの違いしか見ていない節すらある。
……具体的な解決法が無い、というのは、もどかしいものだ。
どんなに困難でも解決策が明確であれば、頑張ろうという気も湧いてくるのだが。
目標地点が見えない道程は、どうしても気が削がれてしまう。
少しばかり、息抜きが必要かもしれない。
―――――――――――――――――――
「てやぁ!」
絶妙に力の抜ける声で、驚くほど腰の入っていないパンチが放たれる。
左足一本を軸足に、マサカリを振るうように山なりの軌道で、野球のピッチングの出来損ないというのが近いフォームで振るわれる拳。
だが、その拳の軌道を見切れた者がどれほど居るだろうか。
ざわめきと共にかなりの距離を置いて見守るギャラリーの前で、ばぐんっ、と、金属バットのフルスイングでも出ないような重い殴打音が響き、画面の中で隕石が宇宙の彼方へと弾き返されていく。
数値は……、独自単位なのであれだが、拳の速度と乗せられた体重から考えて、一トンに届いていない。
これでは素殴りでの勝負になった場合、無印G3にすら負けるような結果になってしまうだろう。
勿論、変身せずにG3と近距離で殴り合うなんていうシチュエーションは想定する必要もないし、これからちゃんと相手を殴るフォームを教え込めば威力は伸びるはずなので問題はあるまい。
「やったー! 見てた交路くん! ランキングトップ5独占!」
てて、と、片手を上げたまま難波さんが駆けてくる。
応じるように片手を上げて、
「いえーい!」
ハイタッチ。
周囲の騒がしい電子音を一瞬だけかき消す程の破裂音が上がる。
空気がきっちり入った自動車のタイヤにナイフを突き刺すとこんな音がする。
周囲から『ヒェ』とか『折れたな』とか『119だ!急げ!』とか聞こえてくるが、実際それほどではない。
変身前の肉体強度と筋肉密度は、ギルスのそれというよりもグロンギのそれに準じているのだ。
せいぜいが、メのパワー系トップランカー変身前、くらいの腕力しかない。
制御も完璧だ。
先日の体育の授業で行われたサッカーの試合だって、全力で蹴ったボールが破裂していなかったのだから見事という他無い。
魔石の肉体改造は、少なくともベルトで制御されている間は、変身前の肉体にそれほど強い強化は施さないのだ。
勿論、変身に耐えられるように基本的な強度はかなり変わってくるが、うっかりドアノブを握りつぶしてしまう、なんていう事も無い。
「さて、それじゃ次のお店行こう」
「? ここじゃ駄目なの?」
「ゲーセンだけってのももったいないでしょ、別のとこ回ろう」
俺も、当初はこの店でそれなりの時間を使うつもりだったのだけど。
頭に疑問符を浮かべる彼女の背後で、今まさに殴りつけた筐体が異音を発しているし、店員が駆けつけてきている。
俺はもっぱらゲーセンと言えばクレーンとガンシューだった為、こうなるのは予想ができなかった。
ウカツ。
可愛らしく小首をかしげる難波さんの手を掴み、そそくさと店外へと脱出を測る。
「わ、そんな引っ張らなくてもついてくって」
ゆっくり行くと、振り向いて自分のゴリラパワーに恐れを抱いてしまうかもしれないから駄目なのだ。
難波さんに向けられる多くの歓声と、それを連れ去る俺への一部舌打ちなどを背に受けながら、しめやかにゲーセンを脱出した。
―――――――――――――――――――
そもそもの問題として、ゲーセンに連れて行って、かなり速い段階でパンチングマシーンに挑戦し始めるとは思っていなかった、というのもある。
事前に行っていたワニワニパニックで片手ハンマーのみでノーミス全撃破を行えた辺りで彼女の中の闘争心がやんちゃをかましてしまったのかもしれない。
だが、ゲーセン側に迷惑を掛けたという点に目を瞑れば、力を振るうのに前向きになるというのは良いことだろう。
迷いながら進むやつも強いが、迷いなく進むやつもまた強くなれる。
強さは人それぞれだけれど、どうせなら悲しむ事も苦しむ事もなく、力を扱うのに慣れていってほしいと思うのが友人としての俺の思いだ。
「うーん……」
「どうしたの?」
「いや、あのね? たぶん、私、鍛えないといけないんだよね」
肉屋で買ったメンチカツを手に持ちながら、難波さんがそんな事を言う。
「そうだね。難波さんは戦い方を覚えないといけないと思う」
それは別に、一緒に戦う、という決意を見せてくれたから、というだけではない。
単純に、どうしたって難波さんが自力で戦わなければならない場面が出てくるのだ。
なにせ、今出現しているマラークならばともかく、エルロードともなれば、戦闘中でなければ、瞬間移動かどうかは知らないが、長距離の転移は間違いなく行えるはずなのだ。
それでいてアギトの力を察知する能力を持つとなれば、どんなタイミングで襲われるかわかったものではない。
一緒に居る時に遭遇したなら、当然難波さんと共に戦うつもりではあるのだが、そう都合よく一緒に居る時に襲いに来る事も無い。
「……もしかして、今日のこれも修行?」
「修行の方が良かった?」
「んー……どっちでも良いよ。どっちでも、交路くんは付き合ってくれるんでしょ?」
ね? と、問い返してくる難波さん。
笑顔が眩しい。
いい人なのは間違いないのだけど、それが少しだけ後ろめたくなる。
「うん。まぁ、ね」
付き合ってくれる、というが、どちらがどちらを付き合わせているのかと問われれば、間違いなく俺が難波さんを付き合わせてしまっているのだろう。
難波さんに死んでほしくないから自衛の手段を整えてほしい、というのは俺の勝手な願いだ。
今回息抜きに誘ったのだって、難波さんの休養というよりも、俺の行き詰まった思考をどうにかするためでしかない。
「悩んでる?」
「うん」
「じゃあ、さ。そろそろ夏休みだし、みんなで海に行かない?」
「海に? (クラスの)みんなで?」
「うん、(私と交路くんとジルちゃんの)みんなで」
海。
海かぁ。
照りつける太陽……。
輝く海面……。
観光客の楽しげな笑い声……。
海の家の不味いラーメン……。
砂の混じった焼きそば……。
溶けかけのかき氷……。
粉っぽいカレーライス……。
水着の美女……。
割れる水面……。
飛び出す巨大海獣……。
振り下ろされる巨大な鋏……。
飛び散る砂浜……。
駆けつけるバイク……。
変身……。
戦闘態勢に入ったライダー……。
その目の前で海獣の懐に飛び込む美女……。
花を象るプリセットルーチン……。
今放たれる必殺の奥義……。
もう美女って歳じゃない……!
「山に行こう」
「山、山も良いよねぇ。森の中とかは涼しそうだし、川に足を浸して涼んで、スイカも冷やして、夕方には河原でバーベキュー……」
「泊まりで」
「え?」
「二週間くらい、時間取れる?」
「え、二週間? え、っと、え?」
困惑する難波さんの手を取り、顔を見つめる。
ひらめき、いや、気付きか。
だがそのきっかけは勿論難波さんからのものだ。
アギトの力を伸ばせるか。
戦う力を伸ばすだけでテオスを倒せるのか。
わからない。
わからないが……。
「難波さん」
「ひゃい!」
「夏休みに入るまでに、旅行の準備を済ませておいて欲しい」
「う、に、でも、わたしも都合が付くか、家族に相談したり」
じ、と、見つめる。
目を見つめると逸らされてしまったが、それでもちらちらと此方に視線を向けてくれる。
「一緒に、過ごしたいんだ」
「い、一緒に……?」
瞳を潤ませる難波さんに頷く。
「一緒に、青森に行こう」
いざ行かん、青森県、八甲田山、赤心寺!
今回は幕間説明回も同然の話だったわけですが
ここで問題です
Q,ASHRさんにベルトを渡した事で、彼は変身の反動も精神的な衝動もない完全無欠の健康体になりました
原作の流れはどれくらい崩れるでしょうか
A,2クール目後半からのほぼ全ての歴史が焼却されました
中半のストーリーの筋がね……
基本的に戦って倒れて拾われて襲われて殺されて生き返らせられてというASHRの兄貴を軸に進むからね……
真魚ちゃん攫われない能力覚醒されないあかつき号事件関係者と関わらない当然翔一くんも探しに行く事はないので合流しない
弁当前の互いの正体バレからの心を開いての会話が実にエモいのでめっちゃ好きなのでこれは悲しい
まぁあかつき号事件の残党は最初から狙われてるから普通にアンノウンに殺されてていいと思うんですが
水のエル居るしね
☆自分で取ったものを食べたので何が悪いわけでもないけど倫理的には色々問題があるクラスメイトの異性の友人を夏休みに泊りがけの旅行に誘うマン
もう私はつばを吐く元気も無いです
でもこいつ自身は迷走しつつも元気元気
胃腸の調子もいいので石を食べてしまったりしますが食べ物ではないので吐きます
回収したアギトの力は取り込めたのかどうなのか
不明というわけでも秘密にしておきたいわけでも伏線を貼りたいわけでもなくまだ決まっていない
アギトに別のアギトの力を移譲するのは前例が無いので……
取り込まれるのか、別にストックされるのか
☆義兄であり新たなンでもある人の奇行に驚きを隠せないヒロインちゃん
もうこいつ怪しさの欠片もないな
ただの家族を心配する妹キャラなのでは
たぶん旧グロンギにも魔石を飲み込む風習は無いのでジルではない中の人は爆笑してる
☆トレーニングかと思えばデートでちょっとはしゃいでパンチングマシーンでゴリティカルかましてしまうクラスメイトちゃん
やろうと思えばバイクとか自販機を持ち上げて投げつけたりできるが本人にはあまり自覚はない
トレーニング後のストレッチとかマッサージであえいだりする案もあった
太ももの付け根まで念入りにマッサージされて赤面してハカハカ息荒げて目を潤ませる描写はやりたいのでどこかで書く
修行中にやればいいか
きっと修行先の義経さんは激おこ通り越して呆れてものも言えない
そして、戦闘シーンも変身シーンも無いのにこんなに変身後を頂いて申し訳ないやらありがたいやら、ナナス様より頂いたイラストです!
【挿絵表示】
難波で……タイタン……?
ううむ、せっかくの女騎士っぽい鎧なのに余計なベストマッチが頭から離れない
変わり果てた本編を考えるのも描写するのもあれなので、テレビ本編の敵は水のエル周辺までふっとばして、入れられれば劇場版を挿入して代用します
あえて言いますが、クウガ編程盛り上がる展開にはならないというか
正直原作組と合流する展開が思いつかないので例によってスポット参戦とか第三軍やるかもです
絶対に変身を解いてはいけないプロジェクトG4とか
ぬるっと終わる感じにもなりえる可能性があるので
そういう時もあります
なにせ思いつくまま書いてますので
それでもよろしければ、次回も気長にお待ち下さい