オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
実際問題、この世界のこの国の人間の神経はどうかしている、と、そう思う事がある。
東京で、ターゲットがどのように選ばれるかわからない連続殺人事件が一年に渡り繰り返されたにも関わらず、結局東京から避難しよう、みたいな世間的な流れは生まれなかった。
ダグバと戦っている時に、東京では無数のグロンギが暴れまわっていたと聞くが、それを抜きにしてもグロンギの行っていたゲゲルは日本史上に残る程の大事件だった筈だ。
どいつもこいつも詰めが甘く、まともにゲゲルを完遂する事すら出来なかったが、それでも最終的に殺害した人数は常人が起こす連続殺人事件のそれを大きく上回る。
冷静に考えて、もう被害者の数で言えばグムン(見たことはない)の時点で、警察にも大きな被害が出ていた。
後のゴ集団だの、この世界では起きなかった三万人大虐殺と比べるから地味に感じるが、今までの犯罪史に照らし合わせれば、数十人どころか十数人の連続殺人だって悪名が歴史資料に残る程だ。
まともに考えて、一度事が起こり始めれば数十人から数百人の被害を出す様な化物が居る、少なくとも一年前までは確実に居たと言える様な都市で、何故今までどおりに生活できるのか。
会社が休むなと言ったから通勤している?
学校は帰宅時の寄り道、放課後の集まりを禁じた?
ナンセンスだ。
せめて疎開くらいはするべきだった。
だから、クラスで修学旅行先の選定を行う際に、相も変わらず東京を候補地として上げるのは幾ら何でもバカすぎると呆れたものだ。
当然俺は京都行きを希望した。
前年の被害を考えれば、東京に行きたがるような阿呆は居ないと高をくくっていた。
京都で八つ橋食って三十三間堂で「スプリンター」ごっこをして、奈良に行っては鹿せんべいを食べ、鹿の角を戦果として獲得してジルへのお土産とするのは確定事項だと思っていた。
別に、東京にはゲゲル関係で何度も来ているから別に修学旅行でわざわざ来る必要性がない、とか、どうせなら行く予定のない京都に行きたい、みたいな、浮ついた気持ちで言っているのではない。
皆の安全性を考えればこそ、そして、みんなもちゃんと危険の少ない京都を選ぶと思っていた。
何故だ?
何故修学旅行の行き先は東京なのだ。
未確認生命体関連事件資料館、みたいなものを見に行きたいのか。
俺も正直今年の七月オープンの日本科学未来館は行きたくて仕方がないが、それはプライベートでマラーク殺すついでに行くから別に修学旅行は京都で良いぞ。
だが、東京にも良いところはある。
その良いところが修学旅行向けかどうかはともかく。
「うー、ん。ね、どれが良いと思う?」
「レビューだとクレヨンしんちゃんべた褒めだったよ」
「デートだよ?」
「じゃあホラーだけど降霊。役所広司とか出るってさ」
「面白い?」
「見るとすごく落ち込めるよ」
「デートだよ?」
「そうねぇ……」
映画館が多いので、とりあえず話題作だろうとマイナー作だろうと見ようと思えば見れるという点だ。
京都は違うのかって?
知らん、京都人に聞け。
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俺は恋愛強者という訳ではないので、デートスポットの選び方なんぞ知らないし、およそ映画館というのがデートに向いているか向いていないか、というのを正確に評価する事はできないのだが。
映画の好みの違いなんかもあるんだから、デートのルートに組み込むのは結構難しいんじゃないかな、と、そう思う訳だ。
恋愛系を見て雰囲気出す、なんて話も聞くが、男女双方ともに感動して良い雰囲気になれる映画ってランダムに引くのは難しいし、一緒に恋愛映画を見て良い気分になれるというのなら、それはどんなシチュエーションでも良い雰囲気になれる出来上がったカップルなのではないだろうか。
更に言えば友人同士で見に行くには恋愛系はキツイ。
同性で見に行くと誤解されそうだし、異性の友人で見に行くと誤解されそうだし。
そういう意味で言えば、ファミリー系映画はどんな相手と見に行く場合でも安牌だと思う。
良いファミリー映画は殺し合いのシーンから始まるという法則もあるが、そうでなくても名作は名作なので安心してほしい。
「で、どうだった?」
「クレヨンしんちゃん舐めてた……」
上映後、パンフレットの入った袋をぎゅっと抱きしめて感慨深げに溜息を吐く難波さん。
デート向きかと言われるとわからんけど、そも、この人がどういう意図でもってデートしよう、などと言い出したのかがわからん以上、安牌を投げるしか無かったのだ。
安牌を投げるしか無かったのだが……。
時は2001年春、個人的にはメトロポリスなどもオススメしたい。
映像表現が凄いのだ。あと音楽。
というか、手塚漫画の映画化は大体ヤバイ級の出来なのでこれも外れ無いと思うのだけど、マニア向けっぽくて友人……を、誘うには、少し躊躇われる。
「それで」
「うん?」
「ご飯どうする?」
「……おまかせしていい?」
上目遣いで聞いてくる。
任せていいか聞いているようで、その実選択肢はないのだろうな、と。
デートしようと提案しつつ、ノープラン過ぎるのではないだろうか。
まぁ、美味しくて、今だからこそ気兼ねなく行けるお店、というのもある。
「まぁ、カレーとかコーヒーとか、そういう店でいいなら」
恋人をどういう場所に連れていけば良いのかは知らないが、友人なら気兼ねする必要もない。
……実は、四号カレーを食べてみたかったのだ。
金箔入りのスペシャルバージョンは、まだ売っているのだろうか。
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一般的なデート、というのが、どういったものであるか。
前の人生まで含めれば経験が無い、という訳ではないのだが、いきなり疎遠になっていた異性の友人にデートに誘われる、という経験は無い為、それほど当てにはならない。
そも、ふよふよと此方の周辺を浮遊しようとするマラークの魂を念動力で離れた位置でお手玉しながらのデートというのは、気が張るとまでは言わないが、集中しきれない。
デートに集中できない、というのは、どういう意図があれ、デートに誘った相手に失礼なのではないか、と、そう思う。
結局、東京という優れた地の利を駆使する事もなく、学校帰りの寄り道か、散歩の様な形に収束してしまった。
良い友達だと思っていた、そして、疎遠になってしまった相手との時間だと考えれば、それほど悪くはない。
映画を見て、食事をして。
以前は、ジルを伴って幾度か一緒に遊びに行った時にそういう機会もあったのだけど。
めっきりそういう事も無くなって久しいので、正直、少し、楽しい。
「あ」
ふと、脚を止める。
「何、どうしたの」
「いや、懐かしい場所に出たな、と思って」
気付けば、俺と難波さんは、見晴らしの良い海沿いの公園へと辿り着いていた。
階段を降り、遠くにフェリーを見る。
沈んでいない、平和に海を行くフェリーに、銃口を向けるように人差し指を向ける。
無論、人差し指を立てた手はペガサスボウガンでもないし、銃口に見立てた人差し指からは殺傷攻撃が出るわけでもない。
出せるが。
「ここでさ、初めて会ったんだ」
「……ジルちゃんと?」
僅かな沈黙の後に続いた問に、なんとなく察する。
多少なり、事情を誰かが説明したらしい。
何処まで説明されたのかは知らないけれど。
「ズ・グジル・ギ。俺が戦った、はじめてのグロンギの戦士だった」
はっきり言って、力だけの雑兵だった。
苦もなく、とは言わないが、手に入れた技術を駆使すれば想定通りの戦いを経て殺せる相手だった。
戦い、という形式になったのは、俺もまたその時点では雑兵のようなものだったからだろう。
なんとなく、あそこがスタートラインだったような気もする。
力を得たのはベルトを巻いた時だった。
元が人の生物を殺したのは、名も知らぬオルフェノクだった。
だけど、俺が、小春交路が、未確認生命体二十二号と認識されるに至る始まりは、恐らく、ここだ。
味方のふりをして油断を誘わなかった。
変身し、認識の外から一方的に殺す一撃を不意打ちで叩き込まなかった。
完全に戦闘に適した形態で、向かい合い、武器を構え、互いの攻撃が届く距離で、殺される可能性が互いにある位置で、攻撃を交わしあった。
修行、鍛える意味もあったから、正面からの戦闘を挑んだ。
「あいつの背中に、大きな傷、あるでしょ」
「うん」
難波さんが頷く。
あいつの水着を見繕う上で、布面積の多い水着を選ばなければならない原因の一つ。
「俺が斬った」
沈黙。
既に誰かから聞いていたか、聞いていなかったか。
それは知らない。
「実際はさ、骨も斬ってた。背骨、肋骨、内臓にも届いてたと思う」
思う、と、断定できない形になってしまうのは、当時の俺が、人間に近い構造を持つ生物を斬り慣れていなかったからだろう。
そこまでの人型相手の経験で得ていたのは、不意打ち気味に抜き打ちで首を跳ねる手応えだけだ。
「その時点では、まだ変身してたから。だからあの程度の傷で済んでる」
「あの程度って……」
「背骨も断ち切ったから、治ってないならそもそも歩けてないよ」
「……」
反論なんて幾らも出てくるだろうに。
続きを促すような無言。
顔は見ない。
どういう表情をしていようが、意味はないのだ。
「そのまま、背中から、ベルトを壊した。槍で刺してね。下腹部の傷はその名残かな」
「どうして」
「その方が確実だし、被害も少ない。死んだ未確認が爆発するっていうのは知ってるよね、ニュースでも散々やってたし」
ベルト周りの神経を断裂されると死ぬのは、ダグバが証明している。
ベルト無し、そもそも魔石無しで変身体で活動していたキノコも居るが、あれは変異後の生態が特殊だったからこそだろう。
あれは変身体ではなく、変身体の細胞を元に生まれた、変身体によく似た別の生物だ。
変身の要になるのはベルト、ゲドルードと、魔石ゲブロン。
これを破壊すれば死ぬ。
……という訳でもない。
「ヂガグ、ボンバボパ、パダギパ、ゲゲルゾ、クウガゾ、パダギパ」
「え?」
「未確認の言葉だよ。意味としては『ちがう、こんなのは、わたしは、ゲゲルを、クウガを、わたしは』かな」
「……」
「わかるよ」
「え?」
「あいつ、一人称、わたしだったんだな、って」
わとあの区別がつきにくいので、あたし、かもしれないけど。
ちょっとイメージ違わない?
みたいになるのはわかる。
でも『ぼく』とか『おれ』もなんか違うし、一人称を名前にするのは教育の段階で許していないので心配ないが。
実際、振る舞いから無邪気そうな部分はあるけど、知識量はかなりのものになってきたし、ベルトの件も考えれば『わたし』でも違和感は無いのだけど。
「いや、そういう話じゃなかったよね?」
「そういう話だよ。未確認、グロンギにも当然言語があって、一人称があって、死に際に悔いがあれば未練がましく譫言も言う。……変身中にベルトを壊されると、どうなると思う?」
「……元の姿に戻る?」
「そんな感じかな。制御されてない石は残るから、点滅するみたいに元の姿に戻る」
安全装置の一種だ。
ベルトを破壊されただけで、一気に安全性を無視して完全に進化の力を開放するというのであれば、ゲゲルの最中に短時間で死ぬン級の脱落者が続出する可能性だってあるし、それが知れれば強くなるために故意にベルトを破壊する輩も出かねない。
ベルトの機能が死んでもゆっくりと元に戻るのは、制御から外れた時点で元の身体に戻るような機能が、変身後の肉体に組み込まれているからだ。
正確には元に戻るというより、魔石の影響を遮断するというべきか。
通常時、非戦闘時に人間の身体でいる時、ベルトは魔石に対し、肉体に干渉するな、という命令を出している。
実験でもわかることだが、ある程度の生体電流を持つ生物に接続された魔石は、制御無しで勝手に肉体を作り変え始めるからだ。
逆に、変身時には、肉体をある程度(階級により異なる)作り変えてよし、という指令を下す。
当然、ベルトが破壊された時点で、本来ならば制御下から離れた魔石は勝手に肉体を際限なく作り変え始める。
肉体を作り変えるのはモーフィングパワーだし、それが切れれば元の人間の肉体に戻る。
しかし、モーフィングパワーで作り変えられた物質は完全に元の形に戻る事はない。
基本的に、無機物を元に武器を作った場合、モーフィングパワーを切らせば塵のようになる。
グロンギ、クウガに共有する、変身と変身解除を司る可逆変身機構は、最終的には魔石の力で元となる肉体も修復するから成り立つのだ。
全身の追加神経はモーフィングパワーを流し易く、直し易くするための土台のようなもので、ベルトの認識する肉体に干渉していない形は、ベルト装着後は基本的に繰り返しの変身に耐えられるような構造に作り変えた後のものを指す。
そして生きている生物の肉体の中で無ければ、肉体を作り変えるモーフィングパワーは作られない。
なので、ゲドルードのバックルには、幾つかの制御装置が搭載されており、完全に破壊されない限り、変身限度を維持する命令を下し続ける。
変身、解除を繰り返すような肉体の挙動は、制御から完全に外れたから起きる現象ではなく、制御下にあり、不完全な状態でも魔石の制御を続けているからこそ起こる現象なのだ。
言ってしまえば、ダグバの不完全体もこの形態であると言える。
人間態に戻らず、中間形態になるのは、ほぼ全開放状態のンだからこそ。
変身体と人間体のモザイクな死体が生まれるのは、修復が間に合わない損傷を受け、肉体を限度を決めた状態で変異させている最中でモーフィングパワーが切れ、変異を繰り返す中で停止したからに過ぎない。
あいつ……ジルが今、傷こそあれど、人間の姿を維持しているのは、ベルトを破壊し、魔石を抉り出した後に蘇生したからだろう。
半端に変化した状態で死んだ肉体を、恐らく、オルフェノクとして蘇生する上で死因の一部として認識され、傷のある完全な人間体で甦ったのだ。
負傷が残っているのは、スネークオルフェノクの手指と同様、生前に負った傷、としてカウントされたのだろう。
「人間の顔で、人間の姿でさ、譫言言いながら、口から血とか吐いてさ、まぁ、嫌なことするなぁ、って」
「嫌なこと……」
「だってそうでしょ、化物殺すつもりで、実際殺して、もうそろそろ死ぬ、ってところで、人間の姿で苦しみ出すとか、悪趣味にも程がある。こっちの身にもなってほしい。これから、爆発させないように殺す度に、安全に殺す度に、人間の姿に戻って、譫言だの、恨み言だの、人間の死に様でさ。死に顔も覚えてる。涙に濡れて、血まみれで、悔しそうな、嫌でもわかるよ。ああ、人間を殺したんだな、って。だから」
「だから?」
「顔を焼く事にした」
息を飲む音がやけに大きく響いた。
「一番やりやすいのがそれだった。顔を削ぐより、戦いの流れの中で狙いやすい。まあ、余裕が無い時とかは省いたけど」
実際、途中から、顔を焼くのは省略していた。
結果的に顔が焼ける事はあったけど、頭部は急所だから結果的にそうなっただけだ。
たぶん、気にならなくなってきたんだと思う。
殺して、殺せて、ほっと息をついて、終わり。
「四号みたいには、できなかったの?」
「だって危ないじゃない。爆発とか」
そりゃあ、周囲への被害を気にしなければ封印エネルギーで爆発させるのがスマートなやり方だとは思う。
でも、そういうのは警察とかと連携して避難指示とかができるからこそ成り立つ訳で。
もし、俺が最初から爆殺する方針でやっていたとしたら、バッシングも大きくなっていただろうし、警察ももっと敵対的だったろう。
ズだのメだの、木っ端の爆発なら大丈夫、という話でもない。
人間大の生物がバラバラになる爆発力で、バラバラになった死体の一部が周囲に飛んでいくのだ。
手榴弾に鉄片だのが入っている、なんて話じゃあない。
十分な速度が伴えば、人間の骨の欠片だって十分に殺傷力を得る。
そして、この世界ではマスコミのカメラマンが命がけ過ぎる距離でグロンギの写真を撮ろうとする。
そしてその骨片がマスコミや周辺の野次馬に直撃して被害でも出たりすれば、それはもう、二十二号は残虐な狩りをする怪物でなく、周辺への被害も省みない危険生物として報道され、警察も対処せざるを得なくなる。
俺が、最後までマスコミにヤバいやつ扱いされたり、現場に駆けつけた所轄の刑事に通常弾頭で撃たれる
「顔を焼くのは、ストレスを溜めない為。四号みたいにやらないのは、危ないから。警察と協力なんてできないから。信用してないから」
振り向く。
難波さんの顔を、目を、まっすぐに見る。
「そういう奴だよ。俺は。全部、全部、全部、自分の為にやってる。望んで殺してる。望んで戦ってる。
念動力で、手元にマラークの魂を引き寄せる。
それが何か、ギルスである、そして、ムセギジャジャとしての資格を持っている難波さんには理解できるだろう。
「これを、人間から生まれた生き物にねじ込んで、
見ればわかる。
恐れている。
目に涙が浮かんでいる。
震えている。
そうとも、それが正常な反応だ。
何がおかしい。
いや、何もおかしくない。
恐れて然るべきだ。恐れられて然るべきだ。
難波さんは知っている。
ジルは人間らしく生きている。
グロンギ、未確認の様に、人をゲームとして、儀式として殺す事もなく、平和に過ごしている。
ベルトを破壊し、魔石を引きずり出し、記憶を失えば、グロンギは社会復帰すらできる可能性がある。
結局、未確認生命体は、ただの、変な信仰を持ち、変身能力を持つだけの人間だ。
未確認生命体二十二号?
バカバカしい。
ただの、超能力を持って、犯罪者を、人間を勝手に殺して回っているだけのイカレだ。
何処由来とも知れぬ、語らぬ、よくわからない、出所不明の知識だけを元に人間を殺し回る危ないやつだ。
恐れて離れたなら、そのままの方が絶対に良い。
知らずに友人でいるならいい。
知った上で友人関係を続けようなど馬鹿のやる事だ。
それを理解するべきだ。
優しさから、仲直りなんて、するべきじゃあない。
難波さんのような優しい人が、気にするべきではないし、関わるべきじゃあない。
唯でさえ、難波さんは体質的にエルロードに狙われる危険性があるというのに。
自分から、戦いの場に赴くようなアホと付き合いを続けるべきではない。
「今日はありがとう、デートに誘ってくれて。気の利いた場所に連れていけなくてごめん。でも、ここまでにしよう。ここからは、これからは、難波さんが関わるべきじゃ」
手首を握られた。
距離は離れていた訳ではない。
一歩踏み出せば手の届く距離だった。
それは不思議ではない。
おかしくはあるけれど。
でも、わからない。
なんで、
「なんで、そんな怒ってるの」
困り顔でもない。
泣き顔でもない。
涙は浮いている。
でも、恐怖に歪んだ顔ではない。
怒っている。
誰にかと言われれば、俺に、だろう。
涙を浮かべて、怒った顔で、俺の手を掴んでいる。
オトナ帝国の逆襲のパンフレットが投げ捨てられている。
「怒るよ。勝手過ぎる」
一歩近づく。
「そういう奴だもの」
手を振り解き、下がる。
「そんなんじゃない。交路くんは、優しい人だよ」
もう一歩。
「人を見る目がない」
距離が近い。
後退る。
「ジルちゃんを見る目が優しい」
二歩踏み込まれた。
「錯覚だよ。しっかり介護してるとそう見える」
大きく後退る。
「いっつも気遣ってくれてた!」
後退るのと同時に踏み込まれる。
体当たり染みた動き。
背に腕を回される。
「お見舞い、ずっと来てくれてたんだよね。目が覚めた時、君が居てくれて、嬉しかった」
どう返すか考えて、肩を掴んで、押し戻す。
「優しい奴は、自分から人殺しなんてしない。難波さんはもう、一度見てるから解かる筈。あの馬みたいなのも、元は人間だ」
「なら……、なら」
難波さんの視線と、俺の視線が絡み合う。
涙に濡れて、でも、強い意思の込められた瞳。
「私も戦う」
「何を馬鹿な」
「殺すのが、
――私が、一緒に背負う!」
告げられた言葉に、ぐらりと脳が揺れる。
何故、これほど衝撃を受けているのか、自分自身わからない。
だが、自分自身でも想像できない程に、今の言葉に衝撃を受けたのだろう。
念力でグリップしていたマラークの魂の感触が無い。
周囲を見渡せば、ふらふらと力なく浮いていたエネルギー体が、早めの紙飛行機程度の速度でまっすぐと飛んでいくのが見えた。
その先には、見慣れた灰の怪物の姿。
突き刺さり、変形を開始する。
下がって、と、俺が告げるよりも早く、難波さんが前に、マラークの魂に乗っ取られつつ有るオルフェノクへと近づく。
肩幅程に開いた脚が、ザッ、と、地面をこする。
顔だけでちらりと振り返り、
「だから、見ていて」
前に向き直った。
小さく、細く、薄く、柔らかい線の、頼りない背中。
しかし、
「私の……変身!」
その背中に、嘗て見た多くの戦士の背中が、重なって見えた。
( ゚д゚)、ペッ
ってやりたい部分もあるけど、こういう展開を書くのは楽しくて素直に反吐を吐けないのが悩ましい
☆フォースグリップマラークの魂キープマン(実質ヒロイン)
なんか俺は悪鬼なのだ、みたいな弱音を吐いている様に見えるけど、実際まともな生活を送るべき相手だと思ってる難波さんが相手だからこういう思考になっているのであって、別にグロンギ連中を殺したこと、元人間の多種族を殺す事に関して何らかの負い目がある訳ではないしこれからも特に変わらず殺す
平気な振る舞いができるのは立場、心情共に比較対象とするべき相手が居なかったからなのだけど、居ても別段実働においては問題なし
デートを口実にポレポレにおもむき特性カレーを味わう程度の余裕はある
難波さんと疎遠になるのは悲しいけど実際疎遠になっておいた方が安全だからこれでいいよね、みたいに自己完結してたら難波さんが覚醒してトゥンクさせられる
まさかこやつヒロインなのでは?
でもヒロインパート終わって戦う決意を受け入れたら多分修行パート入れさせる
夏休みに一緒に旅行に行こう、みたいな事言ってドキドキ勘違いとかさせるパートをやりたいという思いが私の胸の中に沸き立つ
ン人公イン「師匠、今年も修行に来ました」
女の子二人を背負子で背負って、また奴が赤心寺を訪れる……!
☆EDをバックに変身ポーズを取って次回への引きを担当する難波さん
誰かのために戦う決意をするその姿はまさに仮面ライダーなのだ
次回、いい感じにギルスとクウガの方式が混ざりあった変身シーンからスタート
まさかこやつ主人公なのでは?
☆家に凸してきた難波さんがママンにホテルの部屋番号教えられて新幹線のチケット貰うのを見て、にやりと笑うヒロインちゃん
強キャラムーブ
主人公のやってきた事の大まかな説明の中で、自分がお風呂の世話をされてる事をさり気なく説明したりしたのは背中を押す意味もあったのだ(行間の話)
こう、傷のあたりを洗う時には指先が優しくなるなー、みたいな事をさり気なくほのめかした結果、ちょっとだけ難波さんが大胆になれたのが今回の抱きしめなのです
アギト編の間にイベントを起こすが難波さんのそれとは方向性の異なるイベントになる予定
どれくらいの予定かっていうと予告時点でなんも決まってないけど、予告の背景様にそれっぽい絵コンテ風の一枚だけ書き下ろす感じ
まさかコヤツ敵か味方か不明なライバルキャラポジなのでは?
そして、またもやナナス様よりイラストが、二枚も!
一条さんです!
【挿絵表示】
そして
【挿絵表示】
背中合わせの共闘!
……のような、主人公だけが後ろを向いて一条さんの事をちら見してるのが意味深なような
なんか企んでない?
ベルト装着後の容態を心配しているのか、変身未開放状態の戦闘データを欲しているのか
一条さんが前だけ見てるのは、詳しく話は聞きたいし凶行も止めたいけど、共闘が必要な状態ならまずは戦って驚異を取り除く事を先決するクウガ警察ムーブを貫いている感あっていいと思います
後で詳しく聞かせてもらうぞ! とか言いながら戦意はあくまで敵に向ける一条さん有能
ちゃんとしたデートシナリオ書けなくてごめんな……
でもこのSSライダーSSなんでね、ここからが本番よ
次回で難波さん変身と初まとも戦闘
その後になんでそこまで気遣うのか、みたいな事を聞かれて、告白しきれずにヘタれる難波さんを書いたらすっきりする
変に早期に恋愛関係でくっつけちゃうと話を動かしにくくなるからね
それでエタったSSを幾つも俺は見てきた……
とりあえずその後はちゃんと原作シナリオに寄り添いマラークをぶち殺してく感じになると思いたい
そんなSSでもよろしければ、次回も気長にお待ち下さい