オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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年号の幕間みたいな話
188 引越し先を探すためにるるぶを読むような話


地球人が二本の脚で歩くのが普通であるように、テレポートで移動するのが普通の生き物が居たとして、彼らは如何なる場所に居を構えるのだろうか。

人間であれば、日常的に通う場所、学校なり職場なり、行きつけの娯楽施設、飯屋、或いはそこに繋がる駅などの近く、という事になるだろう。

一日はおおよそ24時間、1440分、86400秒、言い方をどれだけ変えても有限である事は(時空間に纏わるテクノロジーが不足している段階では)変えられない。

ただ場所から場所に自分の位置を動かす為だけに費やす時間は短ければ短いほど良いに決まっている。

結果として、この星の人類は誰も彼も密集して生活するはめになっているのだ。

 

移動手段であるバイクとそれに乗る者に格好良さを求めた果ての世界の住人としてはどうかと思うが、事実と言って差し支えないだろう。

映像作品としても後年になるにつれてバイクでの移動シーンは減少傾向にあり、まるでアリバイ作りの様に一応バイクを登場させて、少しだけ走らせてみる、みたいな扱いも少なくは無い。

なんなら、設定上はバイクに乗るよりも移動が高速になる、なんて奴等も居る。

クロックアップ戦闘前提のZECT製ライダーなどを除き、加速能力持ちの連中は大体バイクごと加速出来ない為に置いてけぼりになる。

異なる時間の流れに乗るタイプの加速能力でも無ければ、衝撃波を発生させない為の何らかの術理が無い限り、加速した瞬間に街を瓦礫の山にしかねないので仕方が無い話ではあるのだが。

 

ワームとネイティブの侵略を乗り越えた以上、残す所の敵はイマジンとファンガイア。

なんとなればファンガイアの方はノータッチでもいいくらいで、今年を乗り切れば居住地を東京或いはその近郊に限定する必要は無くなってくる。

もちろん、現在進行系で混乱の渦の中にある外国に拠点を移すことは無いが。

 

逆に考えて、治安が安定していて、知らない秘密組織の暗躍が無い場所なら、地球上に拘る必要も無い。

仮称バダンニウムの採掘を行っている月などは安牌だ。

まだ暫くは地球の周りにあるし、相対位置がわかっているのでワープしやすい。

問題があるとすれば、ちょっと技術力のある組織なら手を伸ばせる位置でしかないというところか。

ワープ能力のない人向けの距離感で例えると、新幹線を使えば通学通勤が可能かな、くらいの立ち位置になる。

 

快適さと安全さはトレードオフの関係にある。

地球からの侵略の魔の手が伸び難い居住可能な惑星となると、生活圏を地球に置いたまま移住するのは難しい。

快適な生活を求めるあまり、必要なものが金さえあれば手に届く範囲に全て揃う人類文明圏から離れるのは本末転倒な話だ。

 

そこで、話は少し遡る。

 

カッシスワームの事を覚えているだろうか。

二体のカッシスワームが融合した形で産まれたが為に、通常のワームの枠を超えた力を手に入れた変異個体だ。

 

タキオン粒子制御器官の直結による時間制御能力の向上というのは、ワーム研究においては古典的なテーマの一つだった。

なんとなれば、その研究の延長線上に存在するのが通常のゼクターと同時運用を想定して作られる予定だったZECT製ハイパーゼクターである。

この世界においては結局ZECT製のハイパーゼクターは完成することは無かったが、コンセプトとしては単純な代物だ。

 

パーフェクトゼクターも同様。

あれは単体でも強力な武器だが、複数のゼクターを制御装置とする事でタキオン粒子利用兵器の中では群を抜いて高い出力を得ることに成功している。

恐らく、この二つはどちらかを研究する中でもう片方が開発された同根の技術であると考えて良い。

 

しかしながら、ワームの研究を行っていたZECTはついぞカッシスワームのフリーズを越えることはできなかった。

無論、カッシスワームが時間移動しなかった(できなかった)以上、能力を伸ばす方向が違っただけ、と言ってしまえばそれまでなのだが。

実のところ、カッシスワームはハイパーカブトやパーフェクトゼクターと比べて、タキオン粒子制御能力においては明確に上位互換にあるといってよい。

 

なにせ、ゼクターは手のひらサイズの中にクロックアップシステムを完全な形で搭載しているのだ。

機能としてはワームのそれよりも最適化されている。

カッシスワームは二体の野良ワームが融合しているだけで、この優れたデバイスを超える性能を発揮しているのだ。

タキオン粒子制御器官を連結することで出力の向上を図る、という一点で見れば、カッシスワームはハイパーゼクターよりも余程高度な事をしていることになる。

 

たった二体の上位ワームが融合しただけで、なぜそれだけの力を得ることが出来たのか。

それは器官の連結方法に秘密がある。

彼等は物理的に融合していたわけではなく、同時に同じ場所に存在していたのだ。

所謂、過去と未来の鎌田が、とはまた違う。

ここは近似値でありながら決定的に異なる存在である鎌田で説明しよう。

 

過去鎌田と未来鎌田の関係性は単純なもので、過去鎌田は元の時間においては最終的に未来鎌田に辿り着くし、未来鎌田は過去において過去鎌田であったタイミングが存在する。

所謂新幹線理論における起点と終点で例えても良いだろう。

この二体の鎌田は同一時間軸において直線上に存在する同一個体である。

融合したのはどちらがどちらを取り込んだという話ではなく、同一の時間に同じアンデッドが存在したが故に矛盾を解消する為に統合された、というのが実際のところか。

 

少し話は反れるがこの世界でのアンデッドだとまた話は変わってくる。

特定種族の集合無意識が像を結んで形作られるこの世界のアンデッドは情報の投影体……実体を伴ったプロジェクションマッピングとでも言うようなものであるため、過去から、或いは未来からの情報投影は成立しない。

記憶の矛盾を修正されるように、自らを過去鎌田、未来鎌田と思い込んだ二体のハーフ鎌田が一瞬現れて統合される、という形になる。

恐らく、純粋に種族の始祖であったアンデッドと異なり、この世界のアンデッドは厳密な意味での時間旅行は不可能という結果になるだろう。

 

閑話休題。

 

ともかく、過去鎌田と未来鎌田はどちらにせよ本質的には同一存在である。

しかし、カッシスワームは異なる。

彼等は言わば『一秒ズレた世界』に存在した同位体なのだ。

これは、過去カッシスワームの一秒先の姿である未来カッシスワーム、という意味ではない。

世界Aが0時0分0秒の時、0時0分1秒である世界B。

常に一秒ズレた世界というものが存在する。

世界Aが一秒進んだ時には世界Bもまた一秒進んでいる為に、二つの世界が交わることは無い。

 

誰かの選択の分岐で発生する平行世界とは異なる、根本から、その世界の発生からしてズレた世界だ。

当然だが、一秒というのはものの例えで、実際にどれくらい離れているか、なんてのは観測しようもない。

だが、何分、何時間、何日なんてズレではない事は確かだ。

たった一秒、たった一瞬、何かがズレただけで、宇宙は発生しなかったかもしれない。

 

そこは未だ時間も空間もない、何にでもなり得る無限のエネルギーを内包した『無』だけが存在しているかもしれないし、そこまで行かなくとも、太陽系なんて存在していないかもしれない。

木星は無事に太陽と同時に存在する恒星だったかもしれないし、ハビタブルゾーンに地球の双子の惑星があるかもしれない。

地球はあれど、人間のような知的生命体は居ないかもしれないし、テオスは居らず、自然発生的原生生物だけが発展していたかもしれないし、まともな大きさの生き物は生まれもしなかったかもしれない。

 

たった一秒、或いは無限の隔たりにも等しい一秒もの長い時間のズレで何もかもが異なる世界に存在した奇跡的な同位体。

如何なる理由でそれらがこの時間軸において融合した状態で活動していたのかはさだかではない。

しかしそれは間違いなく、ワーム一匹分の体積の中に時間差で常にもう一匹のワームを内包するに留まらずある種の共鳴現象を齎し、或いは、同時に存在する一匹と一匹の間に存在する時間のズレそのものすらも内包し、ただ並列で繋いだタキオン粒子制御器官とは次元の異なる出力を実現しているのだ。

見た目上は単体のタキオン粒子制御器官が二倍どころか二乗以上もの制御限界を備えていたのはそういう理由があった。

マルチドライブではなくツインドライブだった、という訳だ。

 

なに、わからない?

それはそう。

俺だってこんな理屈、実物を確認した上で無ければ飲み込みようもない。

原理的に完全解明できている訳でもない。

オリジナルであるカッシスワームの観測記録を元にした実験により、再現性がある事が確認されているだけなのだ。

なんかわからんがこの器官はこういう繋げ方をすると出力が凄い!

今日はこれだけ覚えて帰ってください。

俺は理屈がわからなくても試しに作って運用するが。

 

無論、デメリットもある。

死亡後に肉体が再構築された際にフリーズが使えなくなった様に、タキオン粒子制御能力は非常にデリケートなものである、という事だ。

フリーズ発動可能なタキオン粒子制御器官は、時間移動の際に内部のズレを修正され、瞬時に強い放射線に近い性質を持つフリーエネルギー、そして超高熱を発しながら爆裂する。

核融合ではなく時空が瞬間的に破断したのだ。

実験用惑星で行っていなければ日本から人類の居住可能な土地がなくなるところだった。

 

その時ふと閃いた、これは時空間破砕兵器の開発に活かせるかもしれない。

惑星規模の敵に対してタイムマシンであらゆる距離的制約を無視して飛翔し敵拠点を破壊、長期に渡る汚染でデバフも掛けられるすぐれものだ。

また、直撃でなければ生き物に対する長期的環境ストレスを与えるのにも使える為、アギト養殖惑星管理にも流用が検討されている。

 

話がズレにズレたが、本題はこの時空のズレ、常にズレた時間に存在する世界だ。

これは恐らく、本編にもここではないかと思われる世界が登場している。

擬態天道総司が擬態日下部ひよりを匿っていた異世界である。

ここは単純な時間移動では辿り着けず、地球と似た環境でありながら文明らしいものは見つけられず、大型動物も存在しない。

 

人格未搭載の搭乗式大型ハイパーゼクター(四連結)でまず発見したのが、なんとなく見覚えのある、所謂『時空の狭間の世界』と呼ばれる、擬態天道総司と擬態日下部ひよりが引き籠もっていたかもしれない世界だ。

この世界において、擬態天道総司は早期に保護され記憶の走査技術により元の姿を取り戻し施設に保護されているため、この場を利用している者は居ない。

天道総司の元で自らの食い扶持を稼ぐ為にハイパークロックアップして超光速内職(ボールペンや造花や電子回路の組み立て)に勤しんでいるハイパーゼクタックは時間移動能力をロックされている為にこの場に来ることは不可能。

この場に来るためにはタイムマシンが必要な為、月よりはセキュリティ面で安全と見て良い。

 

当然、時間移動者、歴史改変者からの侵入は予想されるが、それは元の世界でも変わらない。

正直な話、時間停止能力への対策はどこまで行っても最初はぶっつけ本番になる関係上、抜き打ち勝負にならざるを得ない。

時間停止がパッシブでなくアクティブなのが唯一の救いだが……、結局は油断をしない以上の対策は存在しないのだ。

なお令和に関してはとりあえず一切考えないものとする。

俺は平成の出来事を始末するだけでも正直いっぱいいっぱいなのだ。

どうせ令和になっても平成(P.A.R.T.Y.)は続くし……。

無限にウォッチは作られ続けるし……。

いやまぁあの魔王も死ぬと言えば死ぬので最終的に死後にウォッチとベルトを処分できればどこかのタイミングで安心はできるだろうけど。

 

再来年に世界が再構築されなかった場合の居住地としてはまぁまぁ良い候補地だと思われる。

何も無いを通り越して食料もろくに無いがそんなものは元の世界と行き来すれば問題ないし、順次食用の家畜も放っていく予定だ。

 

問題は、もう一つ。

時間移動のコツを摑むための試行錯誤の中で辿り着いた別の世界にある。

 

そこは、宇宙だった。

そう、惑星上でない、暗黒の宇宙空間。

ハイパーゼクターが気密されたコックピットで無ければ突如真空に放り出されて寒い思いをしていただろう事は想像に難くない。

地球が形成されなかった世界があることも当然想定していた為、宇宙空間での活動を想定して設計しておいたのだ。

 

ただ、地球が存在しなかっただけの宇宙というのであれば何も問題は無い。

宇宙空間それそのものは珍しいものでもないし、生活に必要な資源は適当な小惑星帯から引っ張ってくればコロニーの一つくらいなら簡単にでっち上げられる。

まさかこんなところに住むはずがない、という思い込みを利用して隠れ家を作るのは悪くない考えだとも思った。

或いはタイムマシンを使わずに単独で時間移動してくる間抜けを真空に誘い込む事もできる、天然のトラップエリアと考えれば立地は良い方ですらある。

 

しかし、そんな真空活動未対応な人ぶっ殺しゾーンである、という点を除いてもこの空間、明らかにおかしい。

宇宙空間、とは言ったものの、無数のデブリが浮遊している。

一瞬頭を過ったのは小惑星帯だ。

元の世界の小惑星帯に比べると明らかに太陽に近く、同時に密度はあちらより余程低い。

また、微弱ながら生命の気配、の、残滓程度のものが感じられる。

残留思念の残り香、核爆発の跡地に焼き付いた人影よりも余程希薄でしかし、行き場も無く完全に宇宙の闇に解れて融けていく事もできない、幽霊の残り滓。

 

それが、宇宙の真空の中で()()ている。

無数の、元の形すら失った魂魄の残骸が、ありもしない酸素を求めてありもしない喉をありもしない指でありもしない爪が剥がれるほど掻き毟るような苦しみだけを垂れ流していた。

 

肉体を失いながらも消滅できず、さりとて宇宙空間に適応もできていない……というより、生きていた頃に真空中での活動ができない生き物であった為に、死後もその制限に捕らわれているのだろう。

アギトも宇宙で死ぬとこんな形で残るのだろうか。

たやすく消滅出来ない程度には強い魂魄を持ち、しかし必ずしも宇宙空間の環境に適応できないとなると、元の世界ではまっさきにアギトが思い浮かぶ。

この残骸達も似たような立場にあった戦士なのだろう。

 

そう、おかしいのはそこだ。

宇宙空間に戦士の霊が居る程度の事はそれほどおかしな話では無い。

俺達の文明は未だ外宇宙への進出も外惑星に住まう異星人との交流も成し遂げていない(勝手に地球にやってきた連中は除く)が、惑星外での戦闘の末に命を落とした者の魂が宇宙に存在するのは理屈としてはある話だ。

 

だが、大体の死者というのは余程のことが無い限り死ぬ直前もしくは直後の姿で霊魂として現れる。

俺が再利用のために東京近郊で拾い集めた状態の良い魂も、大体は未知の未確認生物相手に力及ばず命を落とした前後の致命的な損傷を受けたグロテスクな外見もあれば、死を自覚できず五体満足な姿のものも居た。

 

なんとなれば、元の世界にも宇宙空間とまではいかずとも、大気圏周辺には宇宙服を纏った亡霊が今も焼け死に続けてすらいる。

人種も国籍も様々だが、彼等は皆一様に死の直前の姿、宇宙服を身に纏ったままの形を残していた。

空間に焼け付いた彼らの死の絶叫は、地球の持つ穢の浄化システムの範囲からギリギリ外れているが為に濾過も希釈もされることなく残留している訳だが……。

 

その理屈で考えると、彼等はこの宇宙空間に耐えられる肉体機能を持たなかったにもかかわらず、宇宙空間用の装備を着けず、宇宙空間で死んだ、という事になる。

この空間には宇宙放逐刑みたいな処刑方法を扱う野蛮な文明でも存在したのだろうか。

確かに、生半可な方法では殺せない相手への処刑方法として宇宙への放逐は有効(キングストーン保有者は除く)だが……。

 

それはふとした興味からくる実験だった。

仮に、彼等がここを偶然通り掛かった宇宙船などから放逐されて藻掻き苦しんで死んだ、というのならそれまでの話だ。 だが、この密度が低い小惑星帯もどき、デブリ帯にかつて星があったとしたなら?

何らかの外的要因で、惑星上で活動していた彼らが宇宙空間に放り出される様な、惑星破壊級の災害に見舞われたのであれば。

それが如何なる要因からかを確認しなければならないだろう。

 

ただの惑星すら粉砕する巨大隕石だとか、地脈に巣食う龍が飛び立った結果とかであればただの杞憂だった、で済む話だ。

彼らの正気を取り戻す、までは行かずとも、整合性の取れた形の記憶を引きずり出せるまでに修復出来たなら、何かしら新しい知見を得られるかもしれない。

未知の災害、それも宇宙規模のそれに対する備えを始める必要が出てくるかもしれない。

何も無いというのであれば、情報提供に協力してくれた彼等の魂を弔ってやろう。

何しろ今の日本には出来立ての慰霊碑があちこちに山程ある。

知らない土地で知らない人たちと弔われるのは困惑するかもしれないが、宇宙空間で苦しみ続けるよりは余程良い筈だ。

 

魂魄の修復というのは、割と前から研究を進めていた分野でもあった。

度重なるタイムベントによる巻き戻しで崩壊寸前だった神崎士郎の精神体。

優勝賞品として彼に研究を手伝って貰った時、彼の魂魄を修復する事ができれば、もっと多くの天才の閃きをフルーツジュースの如く搾り取れていたのにな、という後悔はひっそりと引き摺っていたのだ。

 

意識のみで行った神崎士郎の人生ループの中でも類似の研究は存在した。

自己複製による同時並列思考。

この自己複製も人格、魂魄のバックアップに使えるものだ。

元がはっきりとした形で残っていれば、ディスクアニマルに入れる雑霊を変形させる様に、自らを神崎士郎と思い込んだ別人の霊くらいは作れる。

近年で一番手軽なのはワームやネイティブによる擬態だが……。

 

どれも破損後の修復には役立たない。

また、肉体を持たず魂魄の残骸しか無い彼等は広瀬式記憶複写機のお世話にもなれない。

この世界の現代科学は未だ魂魄への干渉手段を殆ど持たないのだ。

 

やむなく、タイムベントを駆使して彼等の魂を可能な限り巻き戻して行く。

物理的に巻き戻している訳ではなく、彼等が魂魄しか無い為に記憶を遡る様な形になるが、宇宙空間の暗黒で延々窒息しながら死ぬことも出来ず苦しみ続ける記憶を残しておいても仕方が無い。

問題は彼等が何処まで巻き戻しに耐えられるか、突如として襲い掛かってこないか、という二点だが……。

 

魂魄を除去した式神ワームに彼等の中の一体を封じ込める事で外殻とし、補強させてもらう事にした。

封じた魂が記憶を取り戻す度に戻った記憶に沿った肉体を擬態で再現するので魂魄の保護に適しているし、肉体的には式神化したワームであるので行動を縛られており、即座に攻撃行動には移れない。

無論、彼等が式神としての縛りすら無視できる強い戦士であればどうしようもないが、そこまで強い肉体は式神ワームの擬態能力では再現出来ない。

亡霊の記憶再生装置として見ると、やはりとても都合がよい。

 

念には念を入れて、元の世界には帰還せず、その場のデブリを一通り集めて簡易スペースコロニーを作り対応した。

これで万が一の出来事があっても被害は最小限で済む。

四連結ハイパーゼクターの中では既に現時点で最高の耐久力を誇る変身体になっている為、何が出てきても逃げる程度の事は出来るはずだ。

更に念を入れてカッシスワームのタキオン粒子制御器官の再現物をZECT式ハイパーゼクターに括りつけた物を用意して置く。

何かあればこれで跡形も無く吹き飛ばす。

 

タイムベントを発動する。

魂の残骸の時間が巻き戻されていく。

一見して見た目の変化は無い。

タイムベントによる巻き戻しの失敗か?

いや、感覚として、眼の前のそれは確かに時を巻き戻されている。

ただ、彼等が過ごした時間が膨大過ぎるが故に、生前の形を思い出すのに時間がかかっているのだろう。

霊的視覚で見ると、彼等の動きに僅かながら変化が見て取れる。

 

びくり、と、式神ワームの身体が魂魄の動きと同期するように動き始めた。

溺れ足掻き苦しむ、という形すら失った死ねない苦痛のニュアンスが、元の身体の形を思い出す事で明確な動作として再現され始めたのだ。

重力の発生していないコロニーの中で、ばたばたと手脚を振り回し、何かに縋り付こうとする動作。

ぱきぱきと式神ワームの身体が凍り付いていく。

 

真空中に投げ出された時の身体状況をリフレインしているのだろう。

稀に地縛霊がやってるやつだ。

ちょっと霊感のある人なら繰り返しビルの屋上から飛び降り続ける奴とか見たことあるだろう。

地球の方だと最近は殆どをヤマタノオロチが地球外に持ち出したので見かけることは少なくなったが。

 

ここでおもむろにフレイムセイバーを取り出し転送、ハイパーゼクターの手に持たせて構える。

肉体性能と精神と記憶、どれが先に取り戻されるかわからないので、危なそうに見えたら記憶を読み取る前に首を落として殺さなければならない。

フレイムセイバーは手に入れた順序としては古い武器だが、俺の強化に合わせて進化を続けてるので霊体くらいなら切れるし焼ける頼もしいやつだ。

二ーくんは一品物なので未知の相手にはなるべく使いたくない。

 

凍りついた四肢をバタつかせる式神ワームの身体をハイパーゼクターの片手で抑え込み、もう片方の手に握りしめたフレイムセイバーを何時でも押し込めるように軽く当てる。

サイズ差の関係でフレイムセイバーがまるで包丁だ。

抑え込まれた式神ワームがグズグズと輪郭を崩しながら、徐々に人型に近い形状へと変化していく。

人間に近い。

毛むくじゃら。

 

刃を押し込む。

ぼとりと首が落ちた。

あらかじめ用意しておいた御札を口に押し込み、首と胴体に貼る。

手脚を関節ごとに落とし、それぞれの切断面にも札を貼る。

 

「これは、当たりだな」

 

画面越しだが覚えがある。

戯画化された猿の生首。

頭には緊箍児にも似た装飾。

皮膚は赤く体毛は白い。

怪魔獣人大隊所属、獣人忍者隊部隊長、ガイナニンポー。

 

彼は一度死んだあとに霊界怪人として再殺されている。

であれば、その魂は消滅したのでなければ生まれ故郷に帰っていたのだろう。

この、クライシス皇帝と運命を共にした、怪魔界跡地に。

 

 

 

 

 




不動産情報誌とかではないのが味噌

☆世界再編が起きなければ
二期に続くなら起きるよって話
少なくともディケイドまではやる
じゃあ二期やらなくても世界再編は起きるのでは?
いやディケイドが巡った世界は原作関係無い異世界なので
ここも原作関係無い異世界なんですけどね
この話を改めてした理由とかはディケイド除くとあと二作で一期が終わるからなんですが

☆ズレた時間とかいう原作にいっさい無い話
でも狭間の世界とかなんの説明も無かったからなんかしら説明つけたいなぁって
原作要素だけで言うと時の砂漠みたいな場所じゃね?とも思うんだけど、じゃあ結局時の砂漠ってなにって話になるので
昔に何かで見た設定を入れてそういう場所って事にした
まぁライダー世界も気楽にクロスオーバーする割にタイムパラドックスとか平行世界とかの設定はまちまちだからこの世界ではこういう理屈があるということで
そもそも魔化魍の穢とか何処で見た設定なのか考察なのか覚えてないし、辻褄合わせるためにアンデッドは始祖じゃなくなっちゃったし
振り返れてるのかこの作品は、というのは過去を振り返る行いなのでやらない

☆怪魔界跡地
ここ、絶対言及したいし登場させたいなって
でも本編でやると本筋から逸れすぎるので幕間でやることに
跡地自体には怪魔界の残骸しかないしいいよね
なお霊界怪人

☆ガイナニンポー
霊界怪人としての死後に故郷に魂だけが帰っていた
なお故郷の末路
終盤で再登場した時の方が印象が強い
能力的に地味だが歴代ライダーに紛れ込む事ができるので顔うつしの術の擬態性能はワームを上回るものと思われる
冷静に考えると死んだあとも働かされるのはすごく嫌


ガンプラ組んだりしてました
フルメカニクスソードカラミティが買えなかったのでカラミティとパーフェクトストライクをミキシングしてソードカラミティ作れないかなとかやってたら再販かかってるのに気付かず買い逃したり
今回ほぼモノローグで進んでしまったのはリハビリみたいなもので、みたいなことを書こうと思ったけどいっつもモノローグで進んでたわ
そんなんだから主人公の脳内を見るだけの作品とか言われるのだ
電王編は敵サイドにテコ入れが入ってるだけの話なので手早く済むと思われるので、その前に横道を消化していきたい
投稿ペースは相変わらずだと思うけど、それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい

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