オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
はっきりと語れる事の顛末はそれ程多くない。
ワームの数は激減し、ネイティブも主戦派とも言える派閥の連中は叩けたが、そのどちらも少なからぬ残党が残っており、これらの絶滅までは今暫くの時間を必要とするだろう。
対して、ZECTは無事解体された。
侵略者であるネイティブが親玉をしていた組織ではあるし、諸々の法律違反もあり、所属していた人間は大体が警察にしょっ引かれてしまったのは言うまでもない事だろう。
銃刀法とか、凶器準備集合罪とか、そこら辺のわかり易いものを始め、ZECTという組織が長年に渡って繰り広げてきた犯罪行為は多岐に渡る。
関係者で捕まっていないのは、土壇場で元警視総監が諸々の記録を抹消した加賀美新くらいのもの。
言うまでもない話ではあるが、この手の法を犯しながら組織として存在し続けるにはそれなりの社会的な力が必要になる。
それが権力!
或いはコネとか金である。
日本が誇る馬鹿げた資産家である嶋さん率いる素晴らしき青空の会なんかは、今は無きファンガイアスレイヤー(先日正式に旧版の製造が停止され、順次変身機能搭載型の新武装が配布される予定)を会員に持たせるために彼方此方に鼻薬を利かせて回っていた。
まぁ嶋さんはその影響力から相手側から勝手に配慮して貰っていたりもするのだが、自分から細々と根回しを欠かさないのが組織を上手く回す秘訣なのだろう。
体脂肪を気にするだけの中年ではなく、組織の長としての振る舞いが参考になる良くできた大人なのだ。
そういった前例に倣い、ブレインスクラッチも警察に媚を売っている。
堂々と社員に武装させてあれこれ言われないのも警察に大々的に装備を安価で提供し続けているからお目溢しを貰っている、という面が大きい。
社長は純粋な技術者でしかなく、この手のやりくりができない為、社員付きの秘書が総てやってくれているのだが……。
お陰でパーフェクトゼクターを無職なイケメンに譲り渡した件もお咎め無しで済んでいる。
因みに猛士なんかはそこら辺が微妙に複雑で説明がし難い。
警察への根回しがどうこうとかいう立ち位置に居ない、というのが正確なところだ。
警察の中でも微妙に頭が緩いタイプの人々からは特殊部隊かなんかだろうと雑に認識されていたりもする。
武器の類も大体楽器と言い張れる範囲のものなので、現場の人間に少し言い含めておけばトラブルの一つも起こらない。
ともあれ、加賀美新がZECTと関係無かった、という嘘が罷り通ったのも、加賀美陸がZECTに関する内部資料を全て揃えた上で警察に全面的に協力してみせたお陰である。
司法取引というものだ。
これは、本人も父親から説明を受けているらしい。
というか、説明を受けなければ再就職にあたって職歴の欄に馬鹿正直にZECT隊員と書きかねないので説明せざるを得なかったのだとか。
産まれる前からガタックの資格者と定められていた、という点からネイティブの実験の被害者、と分類することもできるので正当性が無い訳では無いが……。
長らく共にチームを組んでいた岬佑月は他のZECT隊員と共に投獄、田所修一を名乗るネイティブは騒動の最中に姿を晦まし生死不明。
真っ直ぐな男(柔らかい表現)である加賀美新は自分だけが裁かれない、という点で文句を言っていたらしい。
最終的に、加賀美新の今後の振る舞いで元ZECT隊員の減刑も有り得る、という事で大人しく受け入れた。
ZECT隊員はネイティブに騙されていただけで、個人個人は純粋に人類を守るために命がけで戦っていたのだ、というのを加賀美新がこれから行動で証明していかなければならないわけだ。
だからといって全ての罪が帳消しになるわけではないが……。
人間、余程の事が無ければ何もかも取り返しがつかない、という事もない。
そして、その余程の事があって取り返しのつかない状態になった人々も居る。
ネイティブ化してしまった人々である。
自分からネイティブに恭順しようとしたZECT隊員などは別に問題にはならない。
その多くが警察により無力化された……はっきり言ってしまえば掃討作戦の折にその大半が始末された為だ。
内々に進められた法改正により、地球外生命体であるネイティブやワームへの変化は人間としての死に相当すると解釈されるようになった。
つまるところ、人権を失うのである。
人権団体が紛糾しそうな法律ではあるが、類似する案件である灰色の怪物オルフェノクやアギト(これらは現行法では近似する特殊な体質として扱われている)との明確な違い、元の肉体の有無が判断の決め手となった。
アギトは人間の肉体と魂の変化であり、オルフェノクは人間の魂と死体の再利用生物であり、元の人間との同一性が表面上担保されている。
だが、ネイティブへと変化した人間の基本形はネイティブだ。
元の人間の姿になるのは擬態でしかない。
つまり、ネイティブへと変化した人間を元からネイティブだったものと区別する方法が存在しないのである。
人権団体だって命は惜しい。
人間である事も捨て難い。
人間を異形の怪物に変化させようとする異星の侵略者であるネイティブを野放しにする可能性を残してまで、本当に元人間かわからないネイティブを擁護し続ける事はできなかった。
なお、この人権剥奪ラインは元の人間との同一性を根拠としているため、脳みその残る昭和式の改造人間は大体セーフとなる。
或いはこれもトップに改造人間を据えるゴルゴムが裏から手を回した結果なのか、という邪推もできてしまうが……。
まぁ、晴れて怪人には人権が保証される世の中がやってきた訳だ。
大手を振って改造人間技術を流布できる。
話が逸れたが、基本的に敵対的なネイティブは処理された。
が、降伏を求めてきたネイティブ、というものは扱いに困っているのが実情だ。
対話可能な知的生命体を一方的に殺害することは、たとえ相手に人権が無かったとしても人道に悖る、という判断がされてしまったのだ。
これに関しては地道にやっていくしかない。
アンチミミック弾の成分がどの様な作用を持って擬態を阻害するのか、という研究も進んでいる。
そしてネイティブも普通に殺す分には爆発して跡形も残らない。
市井に紛れたネイティブを緩やかに狩り殺していく分には不便しない。
人類は勝利した、と、断言しても問題ない。
俺が手を貸した場面が無かった訳では無いが、実際のところ、諸々の組織だけでもネイティブの野望を阻止することは可能だった。
思えば遠くに来たものである。
人類文明(日本)はもはや、そんじょそこらの人類敵対種族に負けやしない程度の地力を手に入れたのだ。
なので、その過程で幸せやら真実を掴みそこねた人々が居たとしても、それはまぁ、お目溢しを願うしか無い。
生きてさえいればそのうちに良いことは起こるのだからして。
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日下部ひよりから見た天道総司という男は、掴み所はないが、信用できないという程ではない知り合い、というところだろうか。
彼女から見て、余りにも謎が多い。
両親の死に関わるベルトの持ち主である、という一点がどうしても引っ掛かるが、それを除けば単なる妙に馴れ馴れしい俺様野郎であり、しかし時に命を救ってくれたりもする。
極めて独善的ではあるが、総じて悪いやつではない。
疑惑と恩が打ち消し合って、ひよりがもともと人付き合いを得意としない事も相まって距離を掴みかねている。
だからこそ、天道総司がひよりを見守りつつ、しかし一定の距離を置くようになった事には気付けずにいた。
対人経験値が少ないひよりに、それを察しろというのは酷な話であるし、天道もまたそれを望んでいない。
「店員さーん!スイカ一玉くーださいカブー!」
ひよりを見守りながらのランチを楽しんでいた天道の対面の席にハイパーゼクターが無造作に腰を下ろし、昼下がりの静寂を吹き飛ばすような溌剌とした声で注文を飛ばす。
「そんなメニュー無い……」
「冷蔵庫に入れてあるカブ。ブレインスクラッチのロゴが入ってる方カブよ」
厨房から、何を勝手に置いてるんだ、あら助かってるわよタダだし、などの話し声が聞こえてくるのを耳にしながら、天道はハイパーゼクターに視線を向けた。
塗りたてのペンキのように発色良く赤く、郵便ポストの如く太いハイパーゼクターの身体は嫌でも目立つ。
最初は、これを送り付けて来た会社が自分を監視するための目印かと疑った程だ。
「カブ」
「言いたいことがあれば言ってみろ」
「カブ。ひよりについてるゼクターは、物理的なボディを持たない魂魄融合型カブ。壊れる時があるとしたら、それはひよりが寿命なり病気なりでいなくなっちゃう時カブ。ひよりの危機に変身を自動でやってくれるカブ」
「鬼やディスクアニマルの技術の応用らしいな。それで?」
ふむむ、と、ハイパーゼクターが口元(ものを食べる事はあるが実際に口が見えた時は無い)に手を当て、考え込むように口元をとんとんと指で叩く。
「もう証人は居ないから、幾らでも言い換えはできるカブよ?」
具体的な単語は使わず、限りなく言葉を選んでの提案。
天道総司と日下部ひよりの関係性は非常に複雑だ。
日下部ひよりの両親は天道総司の両親の擬態であり、両親の仇でもある。
当時、本来の日下部ひよりを妊娠していた母親にネイティブが擬態したことにより産まれてきたのが日下部ひよりという事になる。
血の繋がり、という意味では、天道総司と日下部ひよりになんの繋がりもない。
日下部ひよりは、無自覚ではあるが、間違いなくネイティブの子供として産まれたネイティブ亜種なのだ。
ハイパーゼクターは一通りの学習プログラムを終えてから出荷されているため、(自らが天道総司の所有物でありその生活圏内に居座るのは必然である、という建前を守るための言い包め、誤魔化し、詐称、詭弁を扱う場合を除き)空気を読むことが出来るし、その上で強制しない程度の助言も可能としている。
日下部ひよりがネイティブ亜種である事を隠しながら、天道総司と兄妹の関係にある事を説明する事は、難しくないと言えば嘘になるが、できない話ではない。
或いは、ハイパーゼクターを製造した組織の力で適当な証拠を捏造することもできる。
一番の懸念であった、天道の両親がネイティブに入れ替わっている事を知る者はその多くがこの世を去り、生きているものも再び日の目を見ることはない。
「言わぬが花、という事もある」
厨房で大玉スイカを切るひよりを見る天道の目は慈愛に溢れている。
なんという事はない。
ひよりを初めて見たあの日から、天道総司の覚悟は決まっているのだ。
疑われても、両親の仇と憎まれても、ひよりを守れるのならばそれで良い。
自分がどう思われるかなど、些細な話なのである。
それに、既に世の中にはワームやネイティブの事が知れ渡っている。
ひよりに押し付けられたゼクター……いや、ひよりに施された処置のお陰でネイティブとしての姿が露わになることがないとはいえ、自分の両親がネイティブだったのかも、という疑いを持つきっかけなど与えない方が良い。
「人間のそういう感情、難儀なものカブねぇ……」
メンタルケアの一環として勧めこそしたものの、そもそもハイパーゼクターには天道がひよりを妹と認識している、という点に強い違和感を覚えていた。
Bロボであるハイパーゼクターには血も涙もない。
だが、食べ物の好みもあれば不可解に疑問を覚える程度の自分の意見もあり、つまり、自我があった。
ハイパーゼクターの自我は魂魄と電子頭脳に由来するものであり、専用の施設に繋げばバックアップを取ることは容易だ。
これにより、ここに居るハイパーゼクターが完全に破壊されたとしても、最新のバックアップを元に過不足ない性能の同型機を用意する事ができる。
だがそれは今ここにいるハイパーゼクターと同一の存在ではない。
仮にこのバックアップが常時行われていたとしても、死を経験して自我を霧散させたハイパーゼクターが存在した以上、次のハイパーゼクターは同じだけの経験値を与えられた別個体に過ぎない。
ハイパーゼクターは涙を流さず悲しむことも無いし、死を恐れる事もない。
死こそがこのハイパーゼクターという個体の唯一性を保証するイベントだからだ。
このハイパーゼクターの死後に複製されるハイパーゼクターは、天道家でジュカやソウジと料理を食べた記憶を持っていて、共にワームの群れと戦った記憶を持っていても、まったく別の個体になる。
死というイベントを持ってログを完結させた、という事実こそが、替えの効かない存在であったという証明になる。
死は悲しむことではなく、尊ぶべきものなのだ。
そういう視点から見れば、日下部ひよりを自らの妹である、という天道総司の想いは、酷く歪んだ価値観に思えた。
ハイパーゼクターとて日下部ひよりが何か悪いことをしていると思っている訳では無い。
だが、あの日下部ひよりに罪が無い、という事と、産まれること無く母体の中で死んでしまった日下部ひよりが報われない、というのは両立する話である。
人間、日下部ひよりは産まれること無く死んだ。
産声すら上げること無く、生まれ落ちることすらできずに死んだのだ。
それは、あの日下部ひよりがネイティブの自覚なく生まれ落ち、自らを人間であると思いこんで生きている事とは無関係に存在するどうしようもない事実だ。
天道総司、いや、日下部総司の妹は産まれること無く死んだ。
それは真実と言うほど劇的でもない、あるがままの事実に過ぎない。
今、この世界で生きている日下部ひよりは、天道総司の両親に擬態したネイティブが産み落とした、産まれる筈だった赤子と同じ形で成長する別の生き物なのだ。
ハイパーゼクターの優秀な電子頭脳は、この天道総司と日下部ひよりの関係性を学習した時から、薄々感じていた事がある。
天道総司は心の底から日下部ひよりを自分の妹として認識しているのか?
理性的に、産まれてくる日下部ひよりに擬態したネイティブが罪無き存在であると認識し、しかし、感情面ではどうしても憎しみを捨て切れなかったのではないか。
その憎しみを捨て去るために、生まれてきた擬態日下部ひよりを、生まれ方が違うだけの自分の妹であると思いこんだのではないか。
日下部総司を預かり、天道総司として育て上げた彼の祖母は大層優秀な御仁であったと聞く。
事実として、天道総司は尊大な自信家である、という一点を除いて人格者と言って良い。
だからこそ、妹の姿形、妹の立場、名前、それらを奪い生きる、しかし、本人に何の罪もない偽物を憎まない為に、自らの認知すら歪めてしまっているのなら……。
ハイパーゼクターの使命は地球上からのワームとネイティブの根絶であり、その手段は天道家の人々を護ることにある。
天道総司が死ぬ、というのならばスルーするが、それ以外、樹花とひよりが死ぬのだけは避けなければならない。
万が一にも、新たな歴史改変者を生み出すわけにはいかないのだ。
それを防ぐために、現状では天道樹花と日下部ひよりを守っている。
歴史改変は、時を遡れば遡るほど元の歴史への影響力が大きくなる。
仮に、天道総司が日下部ひよりに対する妹であるという自己暗示から抜け出してしまったら?
本当の日下部ひよりを助けよう、そう願うのだとしたら、何処から歴史を書き換えることになるか。
たった一人の人間を助けるために、地球は水を失った死の星になる可能性すらあるのだ。
任務期間は長期に渡る。
仮に、日下部ひより以外のネイティブとワームを根絶したとしても、日下部ひよりの天寿が(或いは天道樹花も)全うされる迄は付き合わなければならない。
その上で、天道総司の日下部ひよりへの家族愛がブレないよう、メンタルケアをし続けなければならないのだ。
仮にハイパーゼクターの電子頭脳に十全な感情アルゴリズムが組み込まれていて、生身の胃袋などが搭載されていたのなら、一リッターや二リッターくらいは吐血していてもおかしくない。
クロックアップの優位性を失い、擬態による潜伏が可能な範囲が狭まりつつあるワームが大きく栄えることはもう無い。
企みを暴かれ、危険な地球外生命体として認知された、生物としてはワームの下位互換であるネイティブの復権も起こり得ない。
地球外生命体ワームとネイティブによる騒動は収束を迎えつつあると言って良い。
だが、ハイパーゼクターの使命、ワームとネイティブの抹殺、最後のネイティブになる日下部ひよりを含む天道兄妹が幸せに人生を全うするのを見届ける仕事は、これからが本番になる。
(どえれぇ地雷カブ。ハイパーなゼクターでも無きゃ達成できないカブね)
しかし心を持たないハイパーゼクターは気負うこと無く。
長い長い、気の遠くなるような残業の始まりを意識するのであった。
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そういうわけで、色々あったが大学もそろそろ卒業なのである。
難波さんなどは一年時にヤリサーを幾つか潰し、俺もそのフォローをして回っていたのだが、それ以外は特段変わったところのない大学生活だった。
いや、あの五代さんが通っていた大学だというのに新入生に酒飲ませて持ち帰って強姦するような連中が徒党を組んでいるサークルが複数存在した事こそ驚きだが。
離島に潜伏していたネイティブを根切にし、同地の魔化魍を単騎で清めに来ていた仲村くんと合流した後、帰りのクルーザーで、暇を持て余して互いのキャンパスライフを振り返る事になった。
因みに、人間関係の話は不毛なのでしていない。
俺は難波さん経由で知り合った酒飲みと、サークルに集まった強さに飢えた狼くらいしか新しい知り合いはできなかったし、仲村くんの方は彼を拝み屋の類と勘違いして都市伝説案件を投げてくるような輩ばかりだ。
猫の忍者に襲われていた後輩の子以外はその友人くらいしか付き合いは残らなかったらしい。
まぁ仲村くんの方はあおが何かした疑惑もあるが……。
「そこのところ、仲村君はどうだった?」
「魔化魍退治と変わらん、必死でこなしていたら終わっていた、というのが正直なところだ」
通っていたのは他の大学だが、どちらも似たりよったりだったらしい。
まぁ、仲村くんは元から優等生だしあおのサポートもある。
一般的な学業なら魔石由来の学習能力で問題なくこなせてしまう俺は言わずもがな。
専門的な知識を学びに門戸を叩くのが大学な訳だが、こと覚えるという一点では大胆に時間を省略できるので、それほど印象深い記憶が残らなかった。
そもそも大学進学が必要だったかと言われると難しいところで、なんなら今社会人として活用している知識の多くは全く関係ない場所で勝手に覚えたもので、ここで得た知識がどれ程役に立つかはわからない。
というか、学部の選択を間違えた気もする。
でも入学する段階では会社経営に手を出すとか考えてなかったからなぁ。
「去年などは本当に卒業できるのか……というか、そもそも文明は正常に残るのかなどと不安だったが、なんとかなるものだ」
「国外留学してた連中がどうかはわからんけどね」
国際線、まともに動いてないし、確認のしようもない。
殆ど会話もしたことのない連中だけど、戻ってこないとそれはそれで寂しいものだ。
見知らぬ秘密結社などにとっ捕まって改造人間にされていたり、カルト宗教に捕まって生贄に捧げられていたり、見たこともない生物の苗床になっていたりしなければいいが。
「何、そのうちフラッと戻って来るかもしれん。そう信じておけば」
「おけば?」
「気が楽だ」
「気休めかぁ」
悪いとは言わない。
最近保護した後輩にそれで精神を守ってるやつが居るし。
「或いは何か他のことで気を紛らわせるかだな。この時期なら就活やら卒論でそれどころではない、というのが大半だろう」
「就活は猛士に行くから良いかもだけど、卒論は何とかなった?」
「あお殿に手伝って貰ったからな。お前は?」
「俺は一年の頃から書き溜めてたから」
「『今振り返るユートピア原理』か」
歴史の闇に消えた天才が残した、彼の理想、いや、夢想とも言える論文があった。
様々な理由を持ち出して、全人類に改造を施すべきである、とした怪文書である。
因みに、読んでみると驚くほど理屈が通っていて、成る程、これは理想的な未来像である、と思える部分もある。
理屈は、正しい。
しかし、いい加減使い古された言葉ではあるが、正しさで人は動かない。
正しさだけが罷り通るなら世界は理想的な社会主義に染まっていてもおかしくない。
常に理想的な正しい振る舞いができるなら、それはもう人間とは呼べない生き物だ。
理想郷の構成要素になれるほど、人間は良く出来た生き物ではないのである。
かの天才、結城丈二が計算に入れることが出来なかったのは人の愚かさだ。
知能指数に大きな差があると会話が成立しない、なんて話があるが、それと同じことをやってしまった。
はっきり言って、個人個人ならばともかく、人類に未来を見越して予め何らかの方策を立てるなんて事は出来ない。
痛くないように鎧を着るのだって、一度痛い目を見てみないと難しい。
未知の痛みを恐れながら、重いだの動きにくいだのと何かと理屈を着けて拒否してみせるのが人間だ。
今年、人類はワームとネイティブに対して大勝利を収めてみせた。
だが、これらワームやネイティブといった地球外生命体に対して事前に危機感を抱くことが出来たのは、事前に何度も未知の敵に対して痛い目を見てきたからだ。
未来を見越して行動を起こせるようになったのではなく、知らない場所から知らない敵が出てくると危ない、という学びが元からあっただけの話。
「受けは悪そうだったな」
そりゃあそうだ。
人類が学べたのは未知の敵に備えなければならない、という部分であって、将来的に資源は枯渇するよ、なんて話ではない。
仮に人体改造を義務化出来たとして、それは物理的な外敵に対処する能力を付与するようなものであって、よりエコロジーな生き方ができるようなものではないだろう。
人類が皮膚や髪の毛に葉緑素を配合して光合成をする未来はまだまだ遠いのである。
「でも、興味を示してくれた人も居たよ」
デー↑ストロン↓の情報工作により、結城丈二が残した研究成果の殆どはダミーに入れ替えられてしまっているが、実は論文の写しを個人的に所有している識者が居て、再研究が行われていたりする。
まだ組織に正式に加入する前の研究成果であるためにオーバーテクノロジーとまではいかないが、逆に今の人類の技術レベルでも実現出来る程度のものだ。
今、人づてに話を聞いたそれら文献の所有者達がブレインスクラッチの門戸を叩いてくれている。
元から義肢の技術は進んだ世界ではあったが、資源問題に取り組むための技術としての人体改造の基礎理論はライトな改造手術の入口として丁度よい。
そう遠く無い将来、オリンピックの記録が軒並みパラリンピックの記録により塗り替えられる時代が来る。
人間という枠組みは、天使の計らいではなく、バトルファイトの勝者の特権でもなく、悪の組織の企みとしてでもなく、人自らの生存本能によって変えられていく事だろう。
「何か見えるのか?」
クルーザーから水平線の向こうを見ていると、そう問われた。
「あぁ……陸が見えてきたなって」
嘘だ。
いや、陸地も見えはするのだが、それよりも早く目に映るものがあった。
本州上空に無数に浮かぶ、無数の光の玉。
数千はあるか、数万は行かぬか。
あの全てが未来人の精神体だ。
肉体ごと時間移動する技術を確立できなかった世界では、ああやって精神体のみを過去に送り込む事で歴史改変を行う。
もしかすれば、とも思ったのだが。
ここの人類の進化のやり方では、イマジンが居る未来には繋がらないらしい。
上手くすれば敵を一種類減らせる、良い案だと思ったのだけど。
方向性が違い過ぎたのだろうか。
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イマジンという連中は未来人ではあるが、後の世に現れるタイムジャッカーやらとは趣が異なる。
俺の記憶にある彼等の記録、いわゆる仮面ライダー電王という作品は派生作品こそやたらと多く、主役級の扱いで映画化した回数も多いものの、敵であるイマジンが如何なる種族であるか、という点については殆ど触れられていない。
というよりも恐らく、イマジンは種族的には
なんなら、イマジンというのは種族名ではなく特殊な形態を指す言葉でしか無いと言っても良い。
多くのイマジンが異形の怪物であるためにそちらに意識を向けられがちではあるが、イマジンの存在する分岐世界の未来人にはカイが居る。
それなりの戦闘力を生身で備え、時の列車のチケット偽造、記憶の覗き見、過去への扉の開閉などを行える、推定強めの超能力者である。
珍しい能力の伸び方ではあるが、類似する能力を備えていたアギトは見たことがあるし、それになる可能性を秘めたホモも知っている。
時間停止物のAVは九割が偽物という一般論から考えれば彼も残り一割の側なのだろう。
仮面ライダー電王という世界観において、彼は公式にイマジンが存在する分岐世界の住人である事が明言されている。
となれば、基本的にはイマジンが元いた世界の人間も見た目はそう変わらないと考えて良いだろう。
彼はイマジンのいる未来世界における特異点であり、電王世界における特異点とは時間的秩序に囚われない存在だ。
固有の時間の流れを持つ、という意味ではそれこそ創世王やその候補に近い、と言っても過言ではない。
さて、彼が特異点で、なおかつ時間を司る超能力者である、というのなら疑問が一つ残る。
何故、彼は過去改変をするにあたってイマジンを率いなければならなかったのか、という話だ。
イマジンの過去世界への介入は、それこそ自分たちの世界を護るための行為だ。
これは間違いのない正当性と言って良い。
少なくとも、自分たちの歴史は正しく無いので消滅します、などと言われて素直に従う理由は何処の誰にもない。
生きていくことに、生きていることに、存在することに正当も不当もクソもない。
彼はイマジンが居る未来世界の全てを味方に出来るだけの理由があり、尚且つ時間を遡る力もある。
三千ぽっちの精神体などではなく、未来世界の全戦力を持ってくれば良かったと、そう考えたことは無いだろうか。
今より技術が進んでより強化された軍隊、或いは人類を護る秘密組織、それら全てを味方に、自分達の世界を護ることができた筈なのだ。
だが、時間移動者、いや、時間異能者であるカイが引き連れるのは三千人分の精神体のみ。
この遠因となるのが特異点という存在の恐ろしい……敵対する相手ではなく、特異点自身が背負う悍ましい宿命なのだが……。
それを語るのはまた別の機会にしよう。
離島に逃げたネイティブ掃討のお礼として、現地の人から美味しい(らしい)地酒を教えて貰ったのだ。
何本か買ってみたのでみんなに分けてあげたいし、酒の良し悪しは分からないから難波さんに評論して欲しい。
戦いの無い時間も大事にしないとメリハリがつかないからな。
酒のつまみも現地で買ったけど、どうするかな、途中で幾つか買い足して行くか?
スーパーやらコンビニやらに寄りつつ、難波さんの家に到着。
だが、様子がおかしい。
玄関外に居ながらにして聞こえるほどの口論。
ドタバタと暴れる音も聞こえる。
まさか押し込み強盗か?
理論上、何らかの武術の達人がアギトの力に目覚めてかつ、四クール丸々激闘を繰り広げて多段進化した上でなら、変身前かつ相手を殺さないように手加減した難波さんとの殴り合いが成立する。
二ーくんの入ったボトルにノックをしながら合鍵を取り出す。
もしもの時の為に互いに持っていた方が良いよねと提案されて渡されていたものだ。
刺股に変形した二ーくんを握りながら、鍵を回し、ドアを開ける。
異変。
この目で見たのは初めてだが、間違いない。
イマジン憑依者が居る!
と、思った瞬間、その砂がざらざらと集まり、地面に異形の怪物の上半身が、その上に下半身が現れる。
未契約のイマジンだ。
未契約のイマジン?
ここに?
「あったまきた! そういう方向にだけ思いっきり良いのほんとなんなの!? そんなんだから好きの一言も言えないんじゃない! バーカバーカ! うわばみ! 物理的サークルクラッシャー! ただのセフレ!! 永遠の良いお友達ー!!!」
未契約のイマジンはバシバシと自分の手を地面に叩き付け憤慨しながらダイニングの方を指さして口汚く罵倒を繰り返している。
余程激昂しているのかこちらに気付く様子もない。
声色からして珍しい女性イマジンか。
「言って良い事と悪いことがあるでしょー?! あなた本当に契約する気あるの!? もう絶対許さないんだから! 封印する! 塩と油とにんにくと一緒にお米に混ぜて炊いて炊飯器の中に封印して宇宙に放逐して、や……」
ダイニングの方からは柳眉を逆立てた難波さんがドスドスと足音を立て、エプロン姿で米の入った炊飯釜を片手に現れ、こちらに気付くと、緩やかに宇宙漂流刑の宣告を小さくしていった。
そこで未契約のイマジンは何事かと振り返り、こちらの顔を見上げ、
「わ、ぁ、え……ンミミィィ……」
子供のような罵倒を発していたのが幻聴だったのかと思えるほどか細い声で狼狽えて、フリーズしたかのようにその場で固まってしまった。
俺もまた、どう動くべきかわからず、土産物の袋と刺股を手に立ち尽くしている。
奇妙な沈黙が難波さんのマンションの玄関口を支配している。
なんとも締まらない空気ではあるが。
どうやらこれが、産まれ損ねた世界の残党との、ファーストコンタクトになるらしい。
ぬるっとカブト編終了
☆親に庇われて無罪にされてしまった戦いの神とひっそり難を逃れた人
親心なんだけど、銃刀法以外ではそんなに罪が無かったのが大きい
怪盗シャドウの話とかはたぶん公式の記録にも残していなかったのでそれも大きい
馬鹿だから組織に平気で逆らってたのも大きい
前科者になると再就職も難しいからね
原作では1年後にぬるっとおまわりさんやってるのであのあとストレートで警察官採用試験合格してるのでそこそこ優秀ではある
体力問題は間違いなくどうにかなるしな……
というか、こいつを外においてZECTメンバーの減刑の理由にするのが主目的
戦闘訓練を積んだ大量の犯罪者を檻の中に放り込んだままにしておくのも危ないというか
それらが全てまともに就職できずに裏社会に拾われたりすると厄介どころの話ではないのでたぶん警察側というか国もどうにかしたいのではないかと思われる
一足先に組織を放逐されてホモに拾われていた矢車さんは結果的に捕まっていないのでラッキーだったね、と
ホモに拾われ、という部分をホモのカキタレって書こうかと思ったけど拾われただけで掘られたか掘らされたかはまだ未確定なのでやめておいた
意外といい関係を築いていたのかもしれない
やさぐるまさんにならず、地獄に落ちずしかしパーフェクトハーモニーにもなれないどちらとも言えないくたびれ矢車さんくらいの立ち位置に落ち着いていると思われる
☆天道総司が兄妹関係を言い出せないので関係が微妙な天道総司と日下部ひより
本編が上手く行ってるのって結局日下部ひよりが自らの正体を知ることができたってところが大きいのよねという話
ネイティブバレが不可抗力で起こったからこそ天道はあのタイミングで関係性をカミングアウトできた訳で
たぶん、日下部ひよりのネイティブバレが起こらずそのリスクが発生する可能性がある以上は絶対に自分から言い出さない
発覚するとしたら、天道のおばあちゃん経由で天道の旧姓が日下部だと明かされるみたいなイベントが必要
一応、樹花が海外留学して天道が豆腐を買いに行ったあとに天道邸に来るらしいのであり得るとしたらそこなんだけど
天道がおばあちゃんをめちゃリスペクトしてるから諸々明かして口止めしてる可能性もある
それらを全て理解した上でひよりに話すんではないかなとも思うんだけどまぁそこは運よ
☆大学卒業おめでとう!
こいつが何学部の何学科に進学したか結局謎のママだったなと
でも科学技術を学ぶなら大学よりも企業の研究室盗み見る方が勉強になるだろうし……
やっぱ予め危機を知るために考古学とか?
知っての通りファンボーイなので桜子さんには勝手に護衛の一つもつけているかもしれない
卒論のテーマは昨今の人類敵対種族の頻出と、そんな時代における人体改造の是非やら、改造や進化が起こり得る世界での人間の定義やらを昭和の天才が残した文献を紐解きながら纏めて行く、みたいな物だと思われる
人間の強化を推進するような内容では無く、必要不必要とかそれに対する拒否感の出どころとかを纏めて、さてどうするか、みたいな、読んでる側に結論を投げ付けて終わる怪文書
大学関係者以外が目にすることはそう無い筈なのだが、何故か一部の外部の人に読まれている
☆電王編への引き
電王に限った話ではないけど、全話見たのかどうかさえ記憶があやふやなので、本編を見返したり超全集的なものを参照したり検索したりしながら話を考えていくので
最後に出てきたンミミィィイマジン(仮)の設定と、基本的にいつも通り本編には絡まないという程度の事と、どういうイマジンと戦っていくかという予定しか決まってないです
そんなんなので即座に電王編には進まないかもしれない
この話が前の話からどんくらいのタイミングなのかも書いてないのでこの話に至るまでの時間を使って幕間とか書いてくかも
☆DMMブックスで角川系の49%還元があったのでクロスボーンガンダム初代からDUSTまで揃えた話
そら鋼鉄の七人の後に続編やるとかなったら荒れるよな→フォントくんおもしれー男……あとハロロが可愛いのに主張しすぎない程度の存在感でバランス感覚が凄い→というか絶妙に新主人公と前作主人公が絡んでく構成が毎度美味すぎて文句のつけようもない天才か?→ハロロのキュクロープス制服かわいい→誰かMS料理道でガンダムSS書かん?→何時頃からバイオマス素材に置き換わっていったかって思ったけど、石油燃料の枯渇具合とか考えると普通に早々に置き換わっててもおかしかないよな……→落ちぶれたヤザンにMS料理を振る舞うオリ主!→ヤザン経由でシャングリラ組に伝わるMS料理!→眉をひそめるブライトさん→そういや公式はガンダムの次の百年を描いていくとか言ってるらしいけど、ここ数十年でたった一人の漫画家さんがその半分くらいのメインストーリー書いてるんだけどどうなるんやろねこれ全部アニメ化してくれという想いはあるストーリー改めて考えずにアニメ作れるからそこは便利では?この人アニメ化に恵まれないんじゃ!って思ったけど飛べイサミはこの人か……フルメンバー時代のトキオの主題歌が良いんだよな……みんな若い……
SEED劇場版良かったのもあるけど、やっぱガンダムの二次創作とかもやってみてぇよなぁ
原作主人公に寄り添いながらも戦いに対してサーシェスとか御大将くらい前向きな姿勢で居られるオリ主もの書きたい
もうカブト編で一年もかけちゃったから、今後も何年かかるかとか気にせず好きにダラダラ書いていこうと思います
原作キャラに関わるか関わらないかも拘らずに好きにやっていこうと思います
たぶんそれが一番いい
そんなSSですが、良ければ次回も気長にお待ち下さい