オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
擬態神代剣にワームの大半を率いさせて殲滅する為には、擬態神代剣が岬祐月に惚れ、その上で自らがワームである、という自覚を持たせる必要がある。
実際のところ、既にワーム殲滅の為にこのプランに固執する理由は無い。
遺伝子変異ワームの製造は既に軌道に乗っており、単純な単為生殖により発生した卵に高密度の呪詛を当て変異させ、無数の奇形肉塊と少数の高い才能を持ったワームを作り出し、これを成熟前に脳改造すれば、スコルピオワームの近似個体を産み出すことは容易になった。
能力的に上振れした個体を妊婦に擬態させる日下部式擬似妊娠法で、危険なワームとしての本能に欠けた、しかし産まれた時点で成体相当の特徴を備えた改造素体を確保することもできる。
なんとなればスコルピオワームの体細胞は採取済みなので、単純に他のワームの胚を用いて体細胞クローンを作ることもできる。
こちらが直接的に命令を出して操る事もできるし、協力的な人格モデルも運良く手に入ったので、監視を付けながらではあるがワーム全体の支配者に据えて一纏めにする事も不可能ではないだろう。
だが、やはり、ワームを纏めて殺すのは擬態神代剣になるだろう。
ややこしいような、当たり前のような話ではあるが、ワームと人間の恋愛というものは成立しない。
ワームの自覚を失い、擬態先の人格が主になったときに人間と精神的な交感をする事はあるが……。
どこまで行っても、それは再現された人格とのやり取りでしか無い。
ワームはコピーした人格をある程度の精度で再現こそするが、それはワームとしての目的を果たすためのツールとして使っているに過ぎないのだ、というのは、各組織にワームの講義をする度に口酸っぱく言い聞かせている話だ。
ワームの頭の中にコピーされた人格は当然のように自主性を持たないし、勝手に動き出す事はない。
そしてそれは、ワームとしての自覚を失った個体であっても実はそう変わらなかったりもするのではないか、という疑いがある。
その具体的な例が、擬態神代剣から岬祐月への恋愛感情だ。
本編を見ればわかるどころか、公式の紹介ページにも書かれているが、擬態神代剣が岬祐月をミサキーヌと呼んで慕うようになった切っ掛けは本人との何らかの交流には無い。
天道総司の妹を狙った擬態岬祐月との交流の最中、擬態岬祐月に死んだ(殺した)姉の面影を重ね、そのワームを殺害した後に本物岬祐月へのアプローチを開始したのだ。
なんのかんのと言ってワームの擬態能力は強力だ。
特殊な情報防壁を張っているか、単純に生き物としてのスペックがワームを凌駕しているなどの例外を除き、ただの人類にワームの擬態を阻止する力はない。
擬態岬祐月にしても、記憶と見た目程度は人類目線で完璧なコピーであったと思われる。
思われるが……この擬態岬祐月、作中一二を争うほどに擬態下手だ。
少なくとも同じ状況にオリジナルの岬祐月を置き換えたとして同じ挙動はしないだろう。
何故かと言えば、それはこの擬態岬祐月がワームとしての目的意識で動いている為に、擬態先の人格に沿った行動を取っていないからだ。
ワームの擬態の数多くある欠点の中でも特大に大きく、一般市民がワームの擬態を見破る指標にもなる。
全く種族全体の目的に関与しない完全野良の無知ワームがただただ生態の一環としてその地域の支配種族に擬態するので無い限り、ワームは擬態しながらにして擬態先が取らない行動を取ることになる。
花に擬態したカマキリが狩猟の瞬間のみカマキリとして振る舞わねばならず、花として振る舞えないのと同じ話だ。
擬態先の種族の中で死ぬまで息を潜めて生きる類の生態で無ければ、生きている中で必ず擬態が不完全になるタイミングが生まれてしまうのだ。
具体的にワームとしての行動を起こさなければならない、つまり役割を与えられた、目的を持つ、待たされた個体ほど擬態が下手にならざるを得ない、という話になる。
先の擬態間宮麗奈などが分かり易い例で、奴はそれこそ人の群れの中に溶け込む為の化けの皮としてしか擬態能力を駆使していなかった。
間宮麗奈のパーソナリティなど微塵も再現していなかったのだ。
効率の為、面倒事を避けるために擬態を使い、力があるため厄介事、外敵を避ける必要が無い為であるとは思うのだが……。
そういう意味で言えば、擬態岬祐月は擬態間宮麗奈の配下ではあったが、使い捨てにできる駒でしか無かったのだろう。
擬態前の姿がサナギでしか無かった以上、擬態は自衛の為にも使われるべきであるにもかかわらず、具体的な目的を持って不自然な動きを取り擬態を不完全なものにしなければならなかった。
だが、この擬態岬祐月、擬態神代剣との遭遇からの挙動が奇妙だ。
前後の大まかな流れを説明しよう。
①天道総司の妹、天道樹花を狙うも、天道総司にバレて逃走。
②行倒れているところで擬態神代剣と遭遇。
③自らを姉と呼んだ擬態神代剣に取り入るように近付き、しかし、上司のウカワームが仕留める寸前に正体を晒してまで擬態神代剣を庇う。
④その後、和解するような流れを見せつつ擬態神代剣に不意打ち、返り討ち。
④の不意打ちで殺すことが行動の本命なら、まず③で擬態神代剣を庇う理由がない。
③の段階でウカワームは擬態神代剣の変身したサソードを殺せる状態にあった。
つまり、③で擬態神代剣を庇ったのは計画的な行動ではなく衝動的な動きであったと考えて良い。
だが……、②の擬態神代剣との出会いから③で庇うまでの間に、自らの生き死にをかけてまで庇う理由が見当たらない。
一方的に擬態神代剣の姉への思慕とそれを岬祐月の外見に重ねたことを利用して懐に入り込んでいただけの筈だ。
人間がワームの自覚を失った再現人格と疑似的に精神的交流をする例で考えれば、岬祐月の人格が、ワームとしての主体性を保ったままであっても神代剣人格を気に入って命懸けで助けようとしてしまった、という可能性も無いではない。
しかし、とうのオリジナル岬祐月から神代剣への反応を思い出してみれば、そこまで素の相性が良いというものでも無さそうだ。
では何故、擬態岬祐月は擬態神代剣を庇ったのか。
岬祐月人格が神代剣人格に、僅かな時間のダンスで命を懸けて助けたくなる程に惚れ込んでしまった、愛着を得てしまった、と考えると流石に不自然な話になる。
この場面、双方が擬態した状態だから勘違いしやすいのだが、別の考え方をすると答えが見えてくる。
擬態岬祐月が擬態神代剣を庇ったのではなく、ワームサナギ体がスコルピオワームを庇ったのだ。
単純に、次世代は高性能な個体を、という動物的な本能に基づいて考えれば、サナギ体から抜け出せない木端ワームにとって、スコルピオワームは優良物件と言える。
そして、この段階でウカワーム率いる一派は擬態神代剣がワームである事には気付けていない。
それこそが、擬態岬祐月が最後に残した「殺すつもりだったが、できなくなった」という証言の真相なのだろう。
本能的に繁殖相手として見初めた為に庇ったが、その理由を具体的に説明できないが故の言葉。
その後の一撃は、殺せなくなった理由を自分でも理解できなかった擬態岬祐月が、相手をワームを憎む人間であると勘違いしたまま、自らを殺す理由を持たせるための、反撃を誘うための攻撃だったのだ。
或いは、あの場で背を向けてただ立ち去るだけであれば殺されずに済んだのか。
しかし、そういう訳でもない。
擬態神代剣はワームを憎み殺すことを目的に動くので、ここで如何なる選択を取ろうとも擬態岬祐月は殺される事になる。
だが、この場の擬態神代剣は擬態岬祐月を問答無用で殺すこともしなかった。
神代剣人格として正しい挙動は、追いついた時点で背中から話し掛けもせずに擬態岬祐月を殺す事だろう。
いや、何らかのアクシデントで本物と入れ替わっている危険性もあるため、確認の意味もあったかもしれないが、それにしても話が長い。
そこで、話は少し前に戻る。
高性能な、より強靭なワームは擬態の精度を落としても問題がない。
その強さ故に擬態先の人格を真面目にトレースする必要がないのだ。
そして、スコルピオワームはワームの中でも上澄みの中の上澄み。
擬態時の人格模倣の縛りは緩い。
つまり、擬態岬祐月の話を聞き、許そうとした時の人格は神代剣を正確にトレースしたものではなく、記憶を失ったスコルピオワームが主体になっていた。
スコルピオワームが丁度よい繁殖相手としてサナギを認識した上で、神代剣人格がサナギの攻撃に反応して主体を取り戻し、殺害した。
これが、一連の奇妙な流れの真相なのである。
そして、この後に擬態神代剣から本物岬祐月へのアプローチが開始される。
これは、神代剣人格が岬祐月へ向けた思慕だろうか。
擬態神代剣が神代剣の人格を正確にトレースしていると仮定すると、神代剣はかなり思い込みが激しいタイプで、他人への認識を一度定めるとそれを大きく変えることをしないタイプに見える。
だが、このエピソードまでの擬態神代剣と岬祐月にはこれといった関わりもなく、擬態神代剣と擬態岬祐月の間にあったのも姉を重ねて見ても良い、というやり取りでしか無い。
擬態神代剣から岬祐月への思慕に繋がる感情の発生源がどこにあったかと言えば。
それは神代剣に擬態したスコルピオワームと、岬祐月に擬態したワームサナギ体の間で成立した繁殖相手としての感情にあるのではないか。
この後の擬態神代剣から岬祐月への感情は、岬祐月を擬態岬祐月に誤認したスコルピオワームの発情からくるアプローチだったのではないか、そう考えると、何とも虚しい話だ。
無論、傍から見て擬態神代剣のアプローチは余りにもズレたものだった為に後々指摘は入り、岬祐月本人の人間性を見るようにはなるのだが……。
神代剣人格は傍若無人で世間知らずなところこそあるが、紳士としての教育も受けている。
岬祐月もまた何を考えているか分からないところもあるが、良識のない人間という訳でもない。
片方が真摯に向き合うのであれば、もう片方がそれに真摯に応える形になるのは不思議な事でもない。
何も、想いの始まりが致命的な勘違いである、というのが悪いわけではないが……。
擬態神代剣と岬祐月が本格的に想いを通わせた先にどの様な結末が待っていたかと言えば、それはどう転んでも悲劇でしか無かったのだろう。
だが。
始まりやその行く末に何が待ち受けていたとしても、岬祐月を想い続けた擬態神代剣の意思は強い。
それは疑似人格と人間の勘違いの恋ではない。
スコルピオワームという上澄みワームが同族に抱いた想いを起源とし、神代剣という人格が一人の人間である岬祐月を見るに至った、真っ当な恋。
生物として最も原始的な本能に基づく決意であり、一人の男の真摯な想い。
ワームの指導者は交代制だ。
一匹の指導者が死ねば新たな指導者が現れる。
そしてそれは、必ずしも強さを根拠にしていない。
単純に、ウカワームは初期カッシスワームよりも戦闘力で優れている訳ではないからだ。
そこには具体的な種族としての優先順位というよりも……、意志の強さが根拠にあるように思う。
心が強ぇ奴こそがワームを指揮する立場に立つのだ。
カッシスワームは散発的にネイティブを殺したりライダーを殴り倒しに来たりするだけ(なんと変身解除させるだけでそのまま帰ってしまったりする)で、具体的な行動の指標は存在しなかった。
ネイティブを殺す、アンチミミック弾を奪う、ゼクターを奪うなどの短期的で場当たり的な目的こそあれ、長い目で何をするか、という視点は無かったように思う。
だが、ウカワームにはもっと根源的な……ワームそのものを救うという強い目的意識があった可能性が高い。
ウカワームはハイパーゼクターを狙っていた。
ライダーを殺すのでもなく、ZECTを滅ぼすのでもなく、人類を皆殺しにするのでもなく、だ。
当然の話だろう。
ハイパーゼクターを正常に運用する事が出来れば、ライダーを殺す必要もZECTや人類を滅ぼす必要も、地球を乗っ取る必要も無い。
母星が滅びる前にそれを歴史改変で阻止すれば、或いは、ネイティブによってワームという種族に改造される前にまで遡りそれを阻止すれば。
もっと前の時間でネイティブを滅ぼすことが出来ていれば。
それだけの強い目的意識を持っていたからこそ、ウカワームはワームの指導者をやれていた。
仮に、ウカワームやカッシスワームを上回る力を持つ個体を投入したとして、指導者の立場を奪えるか、というと疑問が残る。
手元にある都合の良い人格はそこまで強い目的意識を持っている訳ではない。
あの人格は人を守る為に戦う事は出来ても、そのために敵対種族を族滅するまでの強い決意を抱ける方向性ではない。
ワームの指揮権を得て、一纏めにして殲滅する。
ワームとしての本能に根ざした強い恋愛感情を、擬態人格がワームを殺す方向にうまいこと捻じ曲げて初めて、全てのワームが従う。
神代剣の人格こそが、死してなおワームを確実に絶滅寸前まで持っていける唯一人の戦士なのだ。
誉れ高い話である。
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そして時は流れ、色々な事が起きた。
大学出で教員免許を持っているインテリ鬼の人が、ワームの蔓延る学園に潜入してこれを殲滅したり。
落ちぶれていたところを気まぐれ占い師のホモに拾われていた矢車さんが再就職先を斡旋されるも人格面の問題で複数組織をたらい回しにされていた(接客業務には向いていないので喫茶店の店員はできなかった)ので護身用にゼクターとベルトを渡したり。
ZECTが何故か取っていなかったゼクター関連技術の特許を纏めてブレインスクラッチ名義で取得したり。
もしもの時の緊急装備として警察の現在の制式採用装甲服にゼクターをセットして二段変身できるようにしたり。
色々あったけどまぁ、何か難しいことがあったわけでもない。
平和な日々が続いていたのである。
ダイスを振る必要もキーパーを納得させる為のロールプレイも必要のない、行動宣言がそのまま通るような容易い日々だった。
その分、時間を掛ければ完成する類の研究はだいぶ進んだけれど。
その色々の中、ZECTの方ではアンチミミック弾が完成した。
このアンチミミック弾というものはワームの擬態能力を一時的に阻害することができる効能を持つガス弾だ。
実験中に偶発的に作れた三発分しか無いが、ワームに直接撃ち込むのではなく、空間散布型の薬液であるため、一定範囲のワームの炙り出しに使える優れものだ。
三回分しか無い薬液の内、二回分を速攻で実戦投入するのは中々に冒険的だと思うが……。
アンチミミック弾の効果はワームの近縁種であるネイティブにも等しく効果を発揮する。
ネイティブ側が何らかの対抗策を開発するまでは普及して欲しいものでもないのだろう。
「そういう訳で、これがそのアンチミミック弾に使われる薬液なんですね」
「君は相変わらず話が早いな」
素晴らしき青空の会の偉い人、嶋さんの行きつけのスポーツジムで落ち合い、ZECTから失敬したサンプルをお出しする。
エアロバイクに跨った嶋さんはサンプルの入ったケースを受け取るでもなく視線だけを向けた。
当然ながらこの場にZECTのメンバーやネイティブ、ワームの目耳は無い。
他の一般利用者の目耳はあるが、一部ウラセカイで起きる音声及び文字認識バグを利用した情報隠蔽術がある。
俺と嶋さんの会話はマクドで屯する女子高生のトークくらい中身のない話にしか聞こえなくなる、という寸法だ。
周囲からはネイルアートの話でもしているように聞こえるだろう。
「橘さんにも解析をお願いしようと思うんですけど、連絡がつかないんですよ」
「彼は普及型のアップデートの方にかかりきりだからね」
「むむむ」
因みにここで言う普及型とは、量産を前提としながら各組織の変身システムから良いとこ取りをして一般的な治安維持組織への普及を目指している新型だ。
一番の特徴としては持ち運びが容易で単品での変身を可能としているところだろうか。
土木の分野を中心に普及したレイバーブロスを見て、そろそろイクサの派生量産品を純粋戦闘用、ファンガイア駆除用装備として広めても大丈夫だろうと判断したらしい。
現在はゼクターの技術を取り入れて、使用者登録をしたら後はどこに置いていても呼べば飛んでくる、みたいな形を目指している。
選り好みしてフラフラと適合者を変えたりしない、なおかつ人間以外にケツを振らないザビーゼクターが理想形か?
そこに青空の会の技術、つまりイクサの系譜として生まれるので、空飛ぶベルト生成機能付きイクサナックルが生まれるのだろう。
或いはイクサナックルではなく、イクサカリバーに全ての機能を統合、ブレード部位を常時展開型にして蛇のように地を這いながら移動する形にするか、もしくは移動用に脚部パーツを足してバッタのように跳ねさせるか、という案もある。
なんとなくキバットやサガークを思わせる形状に収束していくのは因果な話ではないか。
「しかし、量産自体はできるのだろう?」
「俺だけが出来ても駄目です。殲滅戦の後の生き残りにも使うことを考えれば、信用できる組織は製造ノウハウを得ていて欲しいので」
俺自身は天才という訳では無いが、各組織から技術を吸収して積み重ねだけはあり、技術レベルだけで言えばかなり先を行っている。
偶然とはいえ一度生産できた薬品くらいなら再生産は容易だし、その製造法を広めることも出来る。
が、生き残りのワームを虱潰しにしていく作業は大々的な駆除ではなく散発的なものになるだろう。
あらゆる組織で洗剤の買い置きのように気軽に置いておけて、不足があれば作れるくらいではあって欲しいのだ。
「生き残りは出ると?」
「生命に絶対はありません。どんなに纏めて駆除しようとしても生き残りも、薬液への耐性を得る個体も出てきます」
スマブレのオルフェノクを滅ぼせたのも、あそこが恐怖を持って形作られた組織だからこそ参加者を一箇所に集められたのであって、好き勝手する野良は最初から数に含んでもいなかった。
だからこそ、人力、虫力でワームを掻き集める擬態神代剣が重要なファクターになり得るのだけど。
それに、人類は生き物を滅ぼす時、敵意を持って滅ぼす時よりも、何らかの欲望を持って乱獲した結果として滅ぼす方が確実性が高い。
現行人類にとって、ワームはそれほど魅力的な資源生物足り得ない。
細々とした生き残りが出てしまうのは仕方のない話だ。
「とはいえ、それは駆除作戦が上手くいってからの話だ」
ジムの入り口を開けながら入ってきて、これまでの話を聞いていたかのように会話に乱入してくる男が一人。
トレーニングウェアに身を包んだその姿は一見して一流アスリートかと見紛う……とまでは行かない、シーズンオフの野球選手の様な姿のその男は。
「橘さん、太りました?」
なんだか、暫く見ないうちにシルエットがぽてっとしてきている気がする。
「戦闘訓練よりも研究開発の時間の方が長くなってきたからな……」
橘さんは神妙な顔付きで自分のお腹を撫でている。
嶋さんはエアロバイクから降りて、そんな橘さんの肩を叩いた。
「幸せ太り、という言い方もできるだろう。そう悪いことでも無い」
ああ。
そういえば、少し前に式も挙げたんだっけ。
日本中が焼け野原になったしばらく後、生き残りの人々の間で結婚や妊娠が続いた、というのは有名な話だ。
死を身近に感じたから生存本能が刺激されただとか、何時どんな災害に見舞われるかもしれないからやれることは生きてるうちにやらないと、みたいな空気が広まった、なんて話もある。
また、結婚を機に青空の会での立ち位置を研究者一本に絞る、という話すらあった。
危ないことをしてほしくない、という奥さんの願いとの事だが……。
誰かを護りたい時に身体が動かない事に恐怖心を抱いている橘さんは戦闘員兼研究者という立場を辞めるつもりはないらしい。
まぁ、橘さん程の戦士が研究職に専念する余りに自衛すら出来なくなる、というのも惜しいので、奥さんには慣れるまで心配していて貰うしかない。
青空の会に居る限り最悪、即死しなければどんな怪我でも直すので。
「これの成分分析だけでいいのか」
俺が手に持ったままだったアンチミミック弾に搭載される薬液の入ったケースを奪い取る橘さん。
「年内……年度内くらいに出来ていれば良いかなと。究極的には、やっぱり出たとこ勝負になりますので、スーツが広く普及してくれてる方が安心はできるかと」
これさえ作れれば何とかなる、というものでもない。
成分的に人間に対しても完全無害という訳でもなく、ガス状にして散布しても咳き込むくらいには有害なのだ。
これが作れれば暫くの間はワームの見分けが簡単になる、というだけの話。
なんとなく許された雰囲気で多数の生き残りを出したネイティブと同じく、野良のワームを駆除するのは容易な話ではない。
無論、可能なら殲滅を目指して動くが、例えば海外に渡航したワームなどの追跡も難しい。
わかりやすくワームの群れが廃工場を根城にして卵を大量に産み付けてくれるわけもなく、野良のワームは殺して身分を乗っ取った人間の家の中で卵を産む。
なんの目的もなく、生態として他者を害して成り代わる個体までとなれば、文字通り虱潰しにしていかねばならない。
組織としてのワームの壊滅はともかく、生き物としてのワームの絶滅タイムは暫く先の話になるだろう。
都合よく人間に対して無害でワームにだけ効く致死毒でも開発されれば話は別だが。
「出たとこ勝負か」
「だが、それでも策はあるのだろう?」
「うーん、まぁ、無いでは無いですが、状況次第としか……」
擬態神代剣の行動次第なところもある。
国外の個体はともかく、国内の個体は重点的に始末したいしね。
彼には愛しのミサキーヌの為にも頑張って欲しい。
ふざけようもない真面目な話ばかりで
空気が硬い
代わりに橘さんの下腹を柔らかくしておきました
奥さんだけが触れるのだ
☆擬態神代剣の恋愛感情
擬態岬祐月に姉の面影を感じて
本物岬祐月に姉の面影を感じた擬態岬祐月の面影を感じて
その実は岬祐月に擬態岬祐月の擬態してない状態を重ねていたのでは?
何しろ公式のキャラ紹介で擬態岬祐月との交流がミサキーヌへの想いの切っ掛けと記されてる
トンチキなエピソードに沈んだ各種エッセンスを抜き出してくとホントに救われないなぁと
まさに平成ライダー味
☆ワームの根絶
そもそも原作擬態神代剣も厳密にはなしえていない
なんかネイティブが本性現して黒幕として一部が死んだけどワームについてもわやわやの内に終わってる
そもそもネイティブ化のネックレスもワーム探知機として配ってたから脅威としては普通に残ってた訳だし
ワームを利用してるつもりで繁殖の手伝いしてるやつらも居る
栄養が足りてれば定期的に卵を産めるので密かに増え続ける事もできる
どう根絶しろというのか
アンチミミック弾の回を見るに原作では割と社会に潜むとかそういうレベルでなく野に放たれたスワンプマンみたいなレベルの話に見える
おめー天道こらトゥーフを買いに行ってる場合じゃねーぞ!
でもこいつワームの殲滅よりもひよりを守る事のが優先順位高いしな……後は自衛すりゃいいやくらいの話なのか?
この世界だと加賀美の警察への再就職は継続的なワーム撲滅という点では現実的な話になるが
☆あらためて考えるワームの脅威
ワームの卵がどれくらい親の特徴を受け継ぐかを考えると、繁殖に専念する優秀な個体が存在しない時点でそんなでもないとして
野良のサナギワームの卵から確率でカッシスワームみてーなバケモンが産まれるとしたら
決して油断できた話でもないんすよね
フレポ無料ガチャから確率で最高レアが出てくるみたいな話だが
卵から産まれた個体はサナギを絶対に経由すると考えればサナギを見つけ次第確殺するのが脅威レベルを下げる方法としては妥当なものなんだけど
☆各組織へのアンチミミック弾製造依頼
ワームに関するあらゆる知識を広めてどこでも対処できるようにするしかないので
出入国審査の段階とかでアンチミミック弾の薬液を噴霧して確認してくのが一般化するのが理想形
現代のアルコールによる手指消毒レベルで使っていきたい
そんなわけでアンチミミック弾の辺りまで話が飛びます
なんかこう、息抜き代わりにワームも何も関係ない日常回とかもやりたいがどうなるか
ヒロインとかも出したいところ
なのになんで嶋さんと橘さんを出してしまったのか……
まぁこの二人も原作ではヒロインだったような気もするし
そんなわけで次回も気長にお待ちください