オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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175 おまかせコース

俺の中でこいつの好感度が急上昇した、というのは間違い無い話ではあるのだけど。

こいつが死んだ時に悲しくなるか、と言われると、いや、それは違う、と答えることになると思う。

この元後輩に抱く感情は、友や家族に抱く親愛の情とは異なる物だからだ。

 

この状態のこいつが死ぬとしたら、ここでおさらばしてこの後特に事態が好転することもなく只管鬱になっていき死ぬか。

さもなければ、こんな一人で生きるのもままならないような状態のまま誰かを助けようとして、そして当たり前のように力及ばず死ぬか。

 

ここまでの実績を見る限り、後者になる可能性が極めて高く、なおかつ後者の場合は少しだけ長持ちするとは思う。

マッドアークで片腕とアスリート生命を失って、ヤマタノオロチで皮膚の幾らかを失って、その上でこいつは死なずに生き残ったのだ。

こいつが失えるものを全て消費するまでは、死に損ない続けるのではないか、という予感がある。

まるで、身体を覆う金箔を貧しい人に分け与えるも、金箔が届く前に相手が尽く死んでしまう、誰も救えない幸福の王子とでもいうべきか。

……世界観を考えると、こいつの上に居る神様が『死んだら楽になるのでこいつはまだ生かしておくか』という判断を下し続けている、という地獄めいた可能性も無い訳では無い。

 

ライダー世界には得てして世界観の外側にそういう邪神が住まいがちだ。

変身できる戦闘力のある人なら戦いの中で死ねるが、そうでない人間に目を付けていたら最悪だ。

何しろリアルに人が生きている世界というのは年齢制限がないので何が起きてもおかしくない。

最悪、手も足も全ての皮膚も目も耳も舌も自我も失った上で、最後に唯一持ち合わせていた臓器提供意思表示カード(案の定持ってた)に従い、無事な内臓を全て移植に回されて。

何にも手が届かなかった彼女は、誰かに差し伸べる手も駆け寄る足も励ましの言葉を紡ぐ口も誰かの愚痴を聞く耳も、そして、誰かを助けたいという自らの意思すら失った事で、初めて誰かに命を譲るという形で助けの手を届かせる事ができたのだ、くらいは言いかねない。

ライダー世界の内側から言及されない外側に居る神や鬼は時間帯によっては平気でそういう事をする。

今の俺の上げた例などはむしろそれらの神からすれば凡庸で面白みもないと思われる程度の物でしかない。

 

ギルスになってしまう事と比べてどっちが不幸だろうか。

変身後の老化部位ロシアンルーレットで脳や心臓に直撃して初回変身解除直後に老衰即死とかいう世にも奇妙な死に方をする可能性があるが、危機に対するその場その場での生存率は高くなるので、どっこいどっこいかもしれない。

死んだほうが楽になる、という意見は受け付けていない。

 

幸運不運というものがどれだけはっきりと存在するかは兎も角、こいつは極端に不幸というより、巡り合わせが悪い、という方が正しいのかもしれない。

立ち位置自体は生き残れる位置に有りながら、助ける為に手を伸ばせる程度には死に近いというか。

こいつが不幸な目にあっているのは、こいつが類稀なる善性を備えているから、と考えることも出来る。

そして、善性を持つが故に不幸に対して手を伸ばし、不幸を払い除けるだけの力が無い為にただ巻き込まれて失っていく。

ただ意味もなく不運で不幸なのではなく、助かる道もある中で、自らの選択の結果として不幸に陥る、というのがなんとも困りものだ。

 

人の性質を例えるのに他の人間を挙げるのは余りよろしく無い事ではあるのだが……。

危機察知能力と安全管理能力と戦闘力を極端に低下させた五代雄介タイプ、とでも言うべきか。

よく言う、自分以外を磨いて綺麗にする代わりに自分自身を削ってよれよれになって行く雑巾にも石鹸にも例えられるタイプだ。

普通に生きて行くなら少しだけ損をする程度で収まるのだけど、この世界ではそうはいかない。

 

ところで俺の方は中学時代に結構公共交通機関で他の人間を皆殺しにするスマブレ所属であろうオルフェノクと遭遇してたんだけど、こいつはよくもまぁこんな性質をしておいて野良オルフェノクに遭遇してつっかかって死ななかったなと関心しきりだ。

野良オルフェノクに遭遇しないという幸運を積み重ねた先に待っていたのがボランティア先でのマッドアークとの遭遇なのだとしたら、確率はやはり収束するのかもしれないが。

 

ともあれ、そういう性質を備えている、とわかったので、俺はこいつに大した親愛の情を抱かないまでも、尊敬の念を抱くことにはなった。

こいつが死んだ時に俺が抱く感情は、悲しいとか悔しいとかムカつくとかではない。

『惜しい人を亡くした』

といったものだろう。

 

そう。

勿体無いのだ。

彼女が抱き、しかし、未だ確かな結果を出せていない性質は、数多くの普通の、或いは、しょうもない人間が持たないもの。

アギトの力の様な超常存在由来の即物的なものではない、ただ、真っ直ぐに生きる人間ならば誰しもが心に持つ事ができる『輝き』というものは。

無力や非力を理由に踏み躙られ、何の実を結ぶ事もなく消え失せて良いものではない。

 

「あ、あのぉ」

 

「うん?」

 

対面に座る元後輩が、不安げに手を上げている。

 

「おしっこか?」

 

手を上げたまま無言でこっちの脛を蹴ってきた。

怒る元気があるようで大変よろしい。

 

「これ、何処に向かってるんすか?」

 

有無を言わせずヘリに連れ込んで飛び立ったからな。

肉体的に損傷の激しいこいつをロードインパルスに乗せて全速力で飛ばすわけにはいかない。

だからこその、ミラーワールドを行き来できるヘリでの移動になった。

今の日本の空は、目に見えなくてレーダーに引っ掛からない程度のステルスでは隠密移動が難しい。

警察アギトや野良アギトが空を見上げた時にうっかり視界の中に居たら、あれ、なんかおかしいな?という違和感を抱かれてしまうからだ。

 

ビルの屋上に設置した小屋の中に格納したヘリが一瞬離陸した後に鏡面化した小屋内の壁面に前進。

ミラーワールドに突入してしまえばアギトの視界には中々入らないし、ヘリの外装にミラーワールドライダーの外装と同じ機能を持たせる事は難しい話ではない。

ヘリの中に居る限りは、ライダーにならずとも生身の人間をミラーワールド経由で運搬可能なのだ。

 

「いいところだ。空気も美味く、自然豊か。生まれ変わるには丁度良い」

 

「生まれ変わる……」

 

神妙な顔で、オウム返しに俺の言葉を繰り返す。

そう。

恐らく、という枕が必要無い程には確実に。

こいつは遠からぬ未来で非業の死を遂げるだろう。

それを避ける、避けられるようにする。

それは、こいつを戦士にすることと必ずしもイコールでは結ばれない。

結果として戦士としての振る舞いができるようになるかは、こいつ次第。 

 

だが、何はともあれ、こいつの肉体をどうにかしなければならない。

そして、大っぴらに人間の肉体を作り変えようと思ったならそれ専用の施設を使わなければならない。

ただモーフィングパワーで腕を生やす、焼け爛れた皮膚や断裂した各部の筋肉や神経を再建する、などという愚かな真似はしない。

 

食い千切られた腕を、焼かれた皮膚を、ただ以前と遜色無い形に戻して患者の身体と心を治す。

そういうのはお医者様の仕事だ。

 

「そう、言うなれば……変身だな」

 

たとえ、人食いの怪物を相手に竹刀一本、或いは素手で挑まなければいけない場面でも。

炎に飲まれた倒壊寸前の建物の中で倒れ伏す誰かを見つけても。

傷一つなく、とは行かずとも、行動可能なレベルにまで損傷を抑え、助けるべき相手に伸ばした手が届くだけの力を持つ。

そして尚且つ、こいつ自身も大きな後遺症なく生還できるような。

あらゆる困難に対して力及ばずただ巻き込まれて被害者を増やすだけの常人ではない。

その気高き心に相応しい力を備えた超人に。

変身するのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

そして到着する、毎度お馴染み、皆さん御存知、青森県は青森市の南側、八甲田山の奥深く。

無数の武装した武僧が日々殺人拳法の技を磨く、科学と呪術で硬く閉ざされ、しかし力を求めてやってきた者には等しく開かれる(※開かれない場合もある)、現代最後の武のユートピア。

……の、地下。

こいつがまだ戦士としての技術を必要とするか、必要としたとして振るえる精神状態に戻れるかとわからんため、秘密基地へ直行ルートを取らせて貰った。

 

ミラーワールド側は常駐しているヘキサギアにより好き勝手放題改造しているので、山が開いて地下へ直行するルートもある。

最早ミラーワールドというより、空間型都市伝説魔化魍に近い位相の異なる空間だ。

航空機の発着場を鏡面化し、基地内部でミラーワールドから通常空間に出る。

 

例に漏れず八甲田山もヤマタノオロチの被害を被っているのだが、地下基地にそれ程影響は無い。

アニマルソルジャー1号であるプラントアンデッド熊により地脈を吸い上げていたというのもあるが、設置されたインフィニティパワーユニットが良い働きをした。

エネルギー取り込み先である異次元へと地脈を溢れる穢が逆流する事で(穢が流出した先がどうなったかは不明だが)、ここのヤマタノオロチは幾分と弱体化した状態で現れたのだ。

後は、予め師範達に託していた、巨大ジェノザウラーと巨大レッドホーンと巨大プテラスが合体して作られるデラックス赤心オーがなんとかしてくれた。

お陰で青森市街はかなり無事な箇所が広く、今年の子供ねぶたでは赤心オーが題材として被り過ぎていると聞く。

噂では昔ながらのねぶた職人も制作に取り掛かっているとかいないとか。

 

「ほ、ほあぁ……!」

 

俺の手を借りてヘリから降りた元後輩が、地下基地内部の格納庫を見て間抜けな声を上げる。

緊急時にミラーワールド経由で八甲田山から出撃させる為に、格納庫には無数の普及型でないヘキサギアが並んでおり、それに驚いているのだろう。

 

「センパイ、センパイセンパイセンパイ!あれ!あれ!」

 

先までの憔悴が嘘のように目を輝かせてグイグイと袖を引きながら、立ち並ぶアグニレイジを義手で指し示している。

 

「巷で噂のアレっすよね?!」

 

「ヘキサギアな」

 

「ッス!」

 

「乗ってみたいか?」

 

「乗れるんすか!?」

 

その乗れるんすかは乗って良いのかという問いなのか物理的に乗れるのかという問いなのか。

答えはどちらもイエスだ。

原典においては愚かな人類ぶっ殺すマシンであったアグニレイジだが、よく見ると元から背中に普通にハンドルがついていて頑張れば乗れるように出来ている。

無論、飛行するタイプのヘキサギアである為に搭乗者の安全は一切保証されないが……。

そんなものは、搭乗者を落下死しないくらい頑丈にしてしまえば問題ではなくなるのだ。

 

「ふふふ……乗れるようにしてやろうじゃないか。楽しみにしておれ」

 

「ウヒョーっ!マジッすか!」

 

袖を掴んだままぴょいぴょいと跳ね出した。

今のこいつの目元を記号で示すなら≧≦とかになるか。

目の下の隈もそのままに事前情報一切なしでランドに連れて来られたネズミファンくらいには燥いでいる。

冗談抜きに躁鬱の気があるのかもしれない。

そして跳ねながら器用に姿勢を崩した。

精神の不調からくる体調不良もそのまま、飯も一食喰いそびれてる状態なので血圧の急激な変化での立ちくらみかもしれない。

袖を掴んでいた手も力が抜けたのか、そのまま後頭部から地面に落ちていく。

のを、途中で背中に手を回して支える。

 

「……うへへ、センパイって、王子サマみたいっす」

 

脳に必要十分な酸素が行き渡っていないらしい。

血の気の引いた白い顔で、焦点の定まらない瞳のまま腕に顔を擦り付けながら、ぼんやりとそんな譫言を口にした。

それだと俺の父さん母さんはどっちかが王様って事になるな。

だが、今は王様王子様どころかゲゲルのチャンピオンの座も余所の団体のトップに取り上げられているところだ。

それでもグジルなどは有り難いことに付いてきてくれているが、とても調子に乗れるような立場には無いのだ。

まかり間違っても王子様なんて偉そうな称号は自称できない。

 

―――――――――――――――――――

 

その後、暫くしても立てなかった様なので両腕で抱えて持ち運んでいると、白い顔は血流が正常に戻ったのか徐々に赤らんでいき、脳活動も正常なものになった様で。

抱えられたまま無事な手と義手の両方を使って幾分血行の良くなった自分の顔を覆っている。

 

「自分はお調子者のカㇲㇲ……」

 

蚊の鳴くような声とはまさにこの様なものなのだろう、と思える掠れた声。

 

「まぁ、生まれ変わるのだからそれもチャラだ」

 

「カスは否定してほしっㇲ……て」

 

人型タイプのヘキサギアも歩く通路を進んで、辿り着いたのは中型から大型のヘキサギアやゾイドを納めた格納庫や量産用の工場とは異なる小部屋。

真ん中には手術台、天井にはライト、一般人には用途不明であろう諸々のギザギザしたりトゲトゲしたりする器具。

壁際には幾つかの高速培養槽が怪しげな光を発しているが、これはインフィニティパワーユニットで異世界からぶっこ抜いてきてるだけの人体にそれほど害のないフリーエネルギーなので、危険はそんなに無い。

 

「あの、センパイ、これは」

 

「見ての通りだ」

 

見ての通り、工作室だな。

生き物の身体を呪術的に奇形化させたり奇形化させた部位を切り落として別生物に移植したり。

捕獲した危険生物の解剖とか、魂魄抜き出しとか、脳改造とかもできる。

なお、不思議なことに人間を作り変える為に使われるのは初めてだったりする。

培養槽の前で、元後輩をそっと下ろし、服を脱がしていく。

片腕が安物の義手であるためか、衣類は着脱が簡易なものばかりでとても助かる。

 

「なんか、恥ずいっすね」

 

残るは下着のみ、という段階で、視線を逸してはにかみながらそんな事を言う。

 

「恥ずかしい身体ではない」

 

「ッス……ざす」

 

剣道をやめた割には、戦士でない人間にしてはまぁまぁ引き締まっている方だと思う。

培養槽が開く。

義手を外し、一糸まとわぬ姿になった元後輩が中に足を踏み入れた。

蓋がゆっくりと閉まっていく。

 

「心配する事は無い、万事上手くいく」

 

そういう予定だ。

 

「自分のぜんぶ、センパイにまかせます」

 

そう言って、元後輩は培養槽の中で静かに瞼を閉じた。

 

―――――――――――――――――――

 

脳作用を弄り、元後輩の意識を落とす。

全部任されたって事はどんな改造をしようとも俺の自由という話になるのだが。

その前にコピーを取るために腕を生やさなければならないだろう。

ついでにそれ程重要でない皮膚はモーフィングパワーで健全な皮膚に作り変える。

首から下の傷、火傷はさっと直して……問題は顔の火傷だ。

 

人間、自分の顔面の変化には気付きやすく、しかし細かい特徴などを詳しく言語化できる人は少ない。

なので、美容整形技術で顔面の火傷や傷を修復した際に、無事なパーツから元の顔を想像した場合、時間経過で違和感から来るストレスに苛まれる事になるのだが……。

こいつの顔、中学時代、しかも俺の卒業式に見たのが最後だから中二の頃の顔しか知らん。

知らんので、最新の顔の無事な部分と記憶にある顔立ちからざっくりと作る。

 

流石に若返り過ぎるか、とも思ったが、一度の修復で完璧を目指す必要はあるまい。

いざとなればこいつの記憶を抽出して映像化して無事だった頃の顔を参照すれば良い。

一番楽なのはこいつ自身の時間の巻き戻しなのだけど、そうなるとこいつの脳味噌まで巻き戻るので説明が面倒になる。

モーフィングパワーに拠らない新たな人体修復技術の練習になるかと思ったがなかなか上手く行かないものだ。

 

そんなわけで、培養槽の中で半物質化した高濃度フリーエネルギーの中に浮かぶ元後輩の肉体は隻腕なのを除けば傷一つないものになった。

中々の長身スレンダー美人。

腕を一度生やして、テレパスと透視の組み合わせで精神と肉体のコピー。

ここから少しだけ地下の部屋に吊るしてある式神ワームへと転送し、擬態させる。

これで本題の交配実験の準備は完了だ。

この元後輩の見た目なら普通にエッチだから問題なく射精できるぞ。

やったね!

 

という訳で、脇道に戻る。

交配実験用ボディは見た目が良ければ良いので生身の人間の肉体で良いが、元後輩の生き様を応援しようと思えばそうはいかなくなる。

死にに行く人間を死なせない為には、死なない様な身体に改造してやるのが手っ取り早い。

 

まず、生やした腕は分解する。

生身の人間の腕など今更こいつには必要無い。

容易く四肢の欠損が治せるなどと思われてけが人を運び込まれても困るからな。

見た目に良く、性能に良く、しかしあくまで義手という体裁を整えておきたい。

 

で、腕をどうするか、というのは一先ず後回しにして、本体の改造。

義手だけ強くしても本体が駄目なら半ばから外れてしまう。

一番手っ取り早いのは魔石の搭載。

金属探知機に反応せず、無力化が必要な時は弱点がわかりやすく、こいつの精神的な問題も早期に解決できる。

 

しかし魔石の移植は技術流出の可能性がある。

安全装置をつけていても一条さんのように特殊な進化を止めるすべはない。

進化とは枷を解き放って行くものだからだ。

また、腹部の魔石から全身に神経が伸びていく様子は警察に生体サンプルが居るし居たので十分データが残ってしまっている。

せっかく二十二号を表向き殺したのに繋がりが感じられる技術を俺の管理下にない奴に搭載して正体バレの種を撒きたくない。

 

死に難くする、という意味で言えば、今のところ一番のおすすめはトライアルシリーズからの発展技術である奇形化生物への頭脳載せ換えや部位移植だ。

臨獣殿で山程積み上げられた実験データがあるので危険性の少なさで言えば一番だろう。

だが、任せろと言った手前、最終的に人間としての幸せを掴みにいけなくなるような、人間同士の生殖に不具合が出かねないような改造は避けたい。

これも全面的に採用することは難しいだろう。

 

安易な単一技術による改造は最早古い!

……ではなく、古い規格の改造は対策されていたり身バレの危機に繋がるセキュリティの甘さを内包しているので避ける必要がある。

そこで、これまでに修得した技術を統合した、集大成とも言える改造プランを進めていく事にする。

 

なので、まず魔石搭載型の発展技術を使用して優勝していく。

培養槽に手を触れ、中身に赤黒い煙を発生させる。

非グロンギ種族に対する簡易同化処置だ。

旧来のそれと異なり、俺のこれは規格が統一された変身体への改造が可能になる。

変身体はライト版戦士クウガと言った具合のものだが……。

 

これを、定着する前に魔石と肉体の接続をカット。

バックルと魔石を粒子状に変換し、椎骨へと定着させていく。

で、脊椎から伸びる神経と強化神経を置換させる命令を入力。

骨はザックリと別素材に入れ替えてしまおう。

ベルトと融合した部位が脆いなんて冗談にならないし、骨は折れないに越したことはない。

骨の代謝はそのままに、モーフィングパワーがフルオートで骨格を新品同然の特殊素材へと置換してくれる。

安全装置を強めに掛けて完成。

 

これで、身体能力的にはベルト融合直後の一条さんと同等でありながら、レントゲンを始めとした各種検査に引っ掛からない超人素体の完成だ。

これはG1システムと共存する形で進化を進めた一条さんからヒントを得て思いついていたもので、被検体が前々から欲しかっ……、試しに作ってみたかっ……、ええと、そうそう。

本体に変身システムをあえて搭載しない事で、複数種の外付け変身システムに対して極めて優秀な適合率を獲得し、それでいて生身での身体能力にも優れる、人間社会への潜伏能力に特化させた改造体だ。

つまり常に戦士ではないが時と場合によっては戦わなければならない立場の人間に優しい初心者向けの改造、ということにできる。

それでいいだろう。

 

死んでも爆発しない、死んでも変身後とのモザイク死体にならない、死体を回収されても椎骨や脊椎、神経を成分分析にでもかけられない限りは魔石由来の改造体である事が露見しないという利点もある。

欠点としては、重要でない部位の再生機能は緊急時以外は最低限でしかないことと、全身の神経の置換に時間がかかる事か。

作業自体は椎骨と融合したバックルがやってくれるが、安全性を考えて一日程は待たなければならない。

全身の神経の置き換えなんて手動でやったら大仕事だからそれに比べれば楽ではある。

大量に作るようなものではないので、それ程大きな問題にはならない。

 

隙間時間を無為に過ごすのも勿体無いので、この時間で少し交配実験を進めてしまおう。

ワームの生殖活動を確かめる過程で排卵を促す為の薬は作ったが、あれが擬態後でも正常に作用するかも試しておかなければ。

……見た目はこれになってるだろうけど、やってる最中に一瞬ワームに戻るとかあると嫌だな。

擬態を解けない様に封印術でも掛けた首輪でも用意してから向かうか。

 

―――――――――――――――――――

 

一仕事終えてスッキリし、シャワーで身を清め、一眠りし、一夜明けて。

培養槽の前に戻ってくる。

まだ元後輩の意識は覚醒していない。

眠っているのではなく、意識を奪っている、という説明がより正しいからだ。

俺が操作しない限り目覚める事は無い。

 

できれば、覚醒させる前に臓器の入れ替えもしておきたい。

魔石関連技術から二十二号へと連想されなければ良いので、トライアル技術を応用して作る強化臓器は偽装を施す必要がない。

心肺の強化くらいはしておいても問題ないだろう。

何しろ火災に巻き込まれておいて人助けしようとする様な奴だからな。

できれば体内に生体器官の形でパーフェクターを搭載してやりたいが、あれを機械部品無しで再現するのは難しいので断念。

 

今まで必要にならなかったからそれ程研究が進んでいないジャンルなのだ。

せいぜい息を止めたまま十分くらい全力運動ができる程度にしかしてやれない。

今回必要になったから、今後も使う場面が出てくるかもしれない、要研究だな。

こいつはその研究の映えある被検体一号という事になる。

 

が、流石に臓器を弄るとなると本人に説明をしない訳にもいかない。

流石に本人から許諾を得ていたとしても、全身フル改造して事後承諾で『君が望んでいたからだ、強い力を』なんて相手に責任があるかのような言い訳で通して良い話ではない。

魔脊柱のお陰で病気や怪我には滅法強くなったが、臓器の改造までやったら普通の医者にはかかれないし。

 

臓器を改造するかしないかで、装着できる義手のグレードも変わってくる。

心肺機能を強化するか否かでどういう形式でくっついて動くかも変えなければならない。

日常生活の過ごしやすさとか通院とか健康診断とかに不備が出ないようにとか、そういう事を考えたら勿論改造は控えめの方が良い。

しかし生身に棒切れ一本で人間ムシャムシャ食べてる怪物に立ち向かって、片腕失った状態で自ら火災に巻き込まれてる中で人命救助しようなんて考えるハリキリ☆ガールに、今更日常の中の人並みの幸せを獲得できるか?という疑問もある。

そう考えると俺のオススメは人間の三大欲求を全て満たせるけど、長い目で見た時に幸せかはちょっとその時になってみないとわからない全身改造コースなのだが……。

そこも含めて、今後の方針を決めるためにも、一度目覚めさせなければならない。

 

培養槽から元後輩を取り出し、手術台に乗せる。

魔石融合椎骨が全身の神経を強化神経に置換して代謝を制御してくれているお陰で、顔色はだいぶ良くなっている。

人体を漬ける想定をそんなにしていなかった濃縮フリーエネルギー槽に浸していたのも影響があるかもしれない。

おおよそ人間のFAGかアニマルソルジャーくらいしか漬けてなかったからな。

不健康そうな顔色も嫌いでは無かったが、こやつが本来備える気質を考えれば血色は良い方が自然だ。

 

「ほら、起きろ後輩。お前のための輝かしい朝だぞ」

 

顔に手を当て、脳味噌を弄る。

限りなく健康体になっている事も合わせて、目覚めは通常ありえないほど爽やかな筈だ。

電源が落ちるように眠る、という表現があるが、まさに電源が入るような目覚め。

 

「ふ……あぇ、しぇんはい?」

 

の筈なのだが、何故か元後輩の目覚めは夜更かし後の日曜の朝が如く間の抜けたもので、口の端から涎でも垂れていそうなものだった。

ぽやぽやと焦点の合わない目で周囲を見回し、義手の着けられていない欠損部位を見て、ほう、と息を吐く。

目を細め、顔に当てられた手に頬ずりし、頬を緩めて満足そうにしている。

 

「おあっ……す……ふむむ……はふはふ」

 

目覚めの挨拶と共に掌に鼻を埋め、唇で

指を喰み始めた。

魚を調理した後に偶にニーくんがやるやつだ。

仮にも成人した人間の女の姿か……?

だが、まぁ、今まで被検体の居なかった新形態の肉体改造を施しているので、その一時的な副作用という可能性もある。

こやつの新しい自分作りの工程は始まったばかりだ。

多少は長い目で見る事も必要だろう。

そんな事を思いながら、犬猫の様にじゃれる元後輩の顔を、犬猫にするように両手で挟み込んで捏ね繰り回した。

 

 

 

 

 





この後輩の一連の話は幕間というか、本筋に絡まない箸休め回的に捉えてほしいのですが
こっち側の話だけだと本当に正義感で不幸になる後輩を好き勝手改造して
懐かしのウルルン滞在記の如くさっぱりと別れシーンを描くだけの話になってしまうので
この話の対比になる裏面も同時進行で作ってるんですが
ここまでの話だと裏面も途中までしか書けないし
まぁまぁの文字量になったし燃料として感想も欲しいから一度上げるかなとも思うんですが
ライダーどころか敵も原作キャラも出ない話って
感想書くこと無いスよね……
燃料が欲しいタイミングで出す話は毎回そんな感じ
いや感想は無限に欲しい無限の欲望を持つ無限の住人(幕末編)なのですが
でも書いてる内に後輩ちゃんのキャラは固まってきた
使い捨てる予定のキャラに個性を定着させるなという話は
もうみんな耳がタコになるほど聞いてると思うし
こいつ周りの話も次回で終えられる筈なので

☆出す予定が無かった時期はもっと凛々しい剣士キャラ想定をしていた大型犬タイプの後輩ちゃん
とりあえず言えることは後輩ちゃんの方はこれ以上運気が下がることはない
正義感溢れる力が足りない良い人類だからね
強い想いを叶えるための力として自由(フリーダム)を与えられるという意味ではキラくん……名前は暫定でキラちゃんでいいかな
なにが綺羅星だよ馬鹿馬鹿しいという言葉も懐かしくなりましたね
あれのゲーム版がPSPだったからかなり昔、丁度SEEDと近い年代かな?
サブキャラみたいなメイドさんまで攻略できたのは楽しかった気がする
ストライクじゃなくてザニーで他のガンダムと戦って生き延びてしまったみたいなキャラ
あと一話でフェードアウトする
そういう話もあるし、それを否定するのはゲストキャラを主軸に据えた話を否定する事になるから別にいいかなって

☆つまり実質ラクス・クラインな男
ラクス・クラインな男、という文言を書いた時点でこの話での立ち位置これ以外に書く必要無いなぁってなっちゃったので
でも別段ラクス・クラインではないんですよ
あの人はあの人で平和のためにやってる訳で
じゃあやっぱりラクス・クラインなのかな……
こいつ自身はミーアの方が好き
胸が大きいからね
愛嬌もあるし
人間臭いし
体臭臭そうだし
ラクス・クラインって体臭薄そうだよな、みたいな偏見があるのかもしれない
なんと傲慢なのだろう
たぶん裏ではシン・アスカがルナマリアのNTR同人誌を見て廃人となった
ルナマリアさんがパイスーの中に顔のないムキムキヤリチン精液ビタビタに流し込まれてそのまま出撃させられる話好きなんすよね……

そんなわけでゲスト回上中下の真ん中回でした
次の次からはカブトらしい話に戻れるので気長にお待ち下さい


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