オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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171 虫の研究発表会

ワームという生き物には他の生物に擬態する能力がある。

その生き物の外見どころか記憶知識に至るまでをコピーし、衣服や所持物に至るまでを再現可能だ。

実際、これらを利用しようとした人間というものも存在しており、腕利きの医者がワームに自分をコピーさせて仕事を持ち回りでこなそうとした、という事例も存在する。

人間の腕利きの医者と同じ仕事をこなせる程度には精度が高い擬態という訳だ。

しかしこの擬態能力には際限がないというわけではない。

擬態能力にも得意不得意というものが存在しており、肌質や臭いにも違いが現れ、場合によっては体温が違いすぎるためにサーモグラフィで正体を見抜かれてしまうなんて事もある。

また、人格の主体はワームであり、擬態先の知識と記憶は持っているだけであるため、ちょっとした習慣を実行しない、なんて形で正体が露見する場合すらある。

 

しかし妊娠中の人間に擬態した場合は胎内の胎児までも身体構造の一部とみなしてしまい、そのまま出産出来てしまうため、これを利用して一斉にワームが増える危険性も存在する。

出産直前の妊婦に複数のワームで擬態してしまえば擬態したワームの数だけ新たなワームを作ることができる。

 

この方法でワームが増えないのには理由がある。

この方法で増えたワームの自我の主体というものは擬態先の人間のものになってしまうのだ。

ワームの近縁種であるネイティブでの話になるが、先の擬態妊婦ネイティブから産まれた個体は年齢にして18になるまで自らを何の変哲もない人間であると思い込んで生きてきた。

自らをネイティブであると自覚している両親から自らの種族の正体を教えて貰わなかった理由としては、両親が擬態先の人格に半ば主導権を握られていた為であると思われるが……。

逆に言えば 誕生時点で人間に擬態しているワームはワームとしての本能を持たずに生まれてきてしまっているということになる。

 

これは捕獲したワームを使った実験により明らかになったことなのだが、妊婦に擬態したワームの体内から出産された赤子は生物的には人間に擬態したワームだが、ワームが出産した卵から生まれてくる子供のワームとは異なる発生経緯を辿っている。

妊婦に擬態したワームの肉体は体内の赤子までを含めて自分の体と認識して擬態しているのだ。

ワームの身体に生えた胎児型の腫瘍のようなもので、それが擬態の結果として生き物としての機能を獲得した、という方がより正確な表現だろう。

ワームの細胞で形成された胎児は、人間の胎児そのものの構造を持ち、人間の胎児として正常に機能するため、ワームとしての本能を持たずに産まれてくる。

 

性同一性やらが叫ばれる昨今ではあるが、まさか種族同一性とでも言える問題が密かに発生しつつあるとは誰も思うまい。

先に例に出したネイティブの子供こそが正しくそれだ。

種族自認としては間違いなく人間なのだろうが、生き物として見た場合は間違いなくネイティブになってしまう。

それはワームとしての肉体を持ちながらも人間として産まれてくる。

その為外側から精神作用に手を加えない限り、赤子ワームはその擬態を解くことが出来ない。

更に言えば、どうにかこうにか赤子ワームの擬態を解除してもその場に現れるのは人間の赤子相当のサイズしかないワームの未成熟体だ。

 

ワームの擬態例として子供に化ける事は稀にある事なのだが、擬態を解除した結果として小さくなる例はあまり存在しない。

ワームは自分より巨大な生き物に擬態することは不得手なのではないか。

より身も蓋もない言い方になってしまうがワームは自分より性能的に優れた生き物に擬態することはできないのだ。

ワームの擬態は数値の再振り分けに過ぎないのである。

ワームが卵から孵化した瞬間から通常のサナギ体として活動できるサイズなのはこの擬態の性質を考えた上ではかなり重要な要素なのだろう。

 

無論、この擬態の限界についても幅はある。

擬態先の見た目を真似して記憶知識をコピーしながらも振る舞いが伴わないものから、逆に擬態精度が高すぎて人格を完璧にエミュレートしてしまった結果として元のワームの人格がほぼ完全に消滅してしまうものまで。

まぁ、後者の場合は擬態先が強い感情を備えていた為にそれに塗り潰されてしまった、というのが正確な所だろうが。

 

妊婦に擬態したワームから産まれてくる赤子に擬態したワームというものは、ワームの幼体というよりも、ワームの体細胞を培養して作られた分体のようなものでワームの幼体とはまた異なる生き物に分類される為に、当然のようにワームとしての本能を持たない。

もし何かの間違いで目の前の自分以外の生き物の姿かたち記憶を写し取ろうと思ったとしても、人間の赤子がそうするような単純な動作の模倣に留まってしまうのだ。

腕が4本あったとして、自分の腕が二本であると認識していたら残り二本を上手く動かすことは出来ないのと同じだ。

 

これをワームが仲間として運用しようと思ったのなら、普通のワームの様に本能のまま他の生き物に擬態して知識を獲得するのを待つ、という事が難しい。

人間の赤子を育てるようにして地道に教育を施していくしかない。

卵を産んではいおしまい、のワームの感性では難しいどころの話ではない。

イヤボーン効果でも狙わない限り、擬態の方法を知らないワームに擬態を教えるのは、右腕があるのに右腕の動かし方をわからないという人間に右腕の動かし方を教えるのと同じ程度の苦労を強いられるだろう。

 

恐らく、このタイプの未熟なワームの出産は幾度か行われたものの、不完全な個体であるとみなされて処分されてしまっていたのだろう。

或いは擬態先の人格が強く現れずワーム主体の精神で活動している場合、それは赤子ではなく腫瘍、いやさ、粉瘤の中身のようなものとしてただ遺棄されてしまうのかもしれない。

通常の卵生ワームとは異なり、ワームの体細胞培養個体であるためにサナギ体を経由せずに未熟な体躯の成体として産まれてくるのは利点でもあると思うのだが……。

ワームからすれば、成人の顔つきで産まれてくる子供のようなもので恐ろしく奇怪な存在に見えるのかもしれない。

そもそも先のサンプルからして、親がサナギ体であるにも関わらず成体ワームの如き性質を備えたワーム体であるため、この産まれ方は何らかの変異を誘発するのか。

敵対種族であるネイティブが先んじて潜伏している土地で悠長に子育てをすることができない、などの理由も考えられる。

妊婦擬態ワームから産まれた変異ワームの生態に関しては追々実験を重ねていくことで見えてくるものもあるだろう。

 

また、擬態能力の限界として、強い感情 あるいは 使命感などを能力の根拠に持つ場合、人格を乗っ取られない程度の擬態ではその本領を発揮できないという欠点もある。

更に言えば、衣類やちょっとした小物までなら擬態できるものの、複雑な構造の機械までは複製できないという明らかな欠点もある。

なんの制限もなく相手の装備品まで擬態出来るというのであれば、サナギ体のワームの群れがザビー辺りに一斉に擬態してしまえばシャドウ部隊などは連携もクソも無かっただろう。

天道総司や覚悟の決まった後の加賀美新、覚悟を決めたスコルピオなどは人格を乗っ取られかねないが、初期矢車だの初期影山などであれば問題なく擬態できた筈だ。

 

なんとなれば、ゼクターで変身したライダーに擬態して、などと悠長なことをせずとも、当たり個体の成体ワームにサナギ体のワームが擬態してしまえば良い。

人間への擬態など必要なくなる程にインスタントに戦力が整う。

異なる種である人間よりも同種であるワームの成体の方が構造は近い、擬態に制限が無いなら同種の上位個体に擬態するのが戦力強化の一番の近道だ。

 

ハイパーゼクター争奪戦、などという話も無くなる。

ハイパーゼクターが完成した時点でそれを持った人間に擬態してしまえば手に入るのだ。

しかる後、擬態天道辺りにサナギどもが一斉に擬態して複製ハイパーゼクターで変身すれば大量のダークカブトハイパーフォームの完成だ。

 

だが、奴らはそれをしない。

部族の掟でそれをしない、という訳では無いのも実験済みだ。

陰陽術を組み合わせたハイブリッド式クロックアップシステムを構築し終えた時点で、そこらの野良ワームを捕獲する事は容易くなっていた。

ゼクトの研究資料にワームの生態を詳しく記したものは無かったが……今では、その理由も含めて解明が済んでいる。

 

今年の敵は何か。

少なくとも、ワームという生命体はその極一部を除いて敵足り得る相手ではない。

アンチミミック弾こそ開発していないが、見抜くだけならそれこそアギト一人が居れば良い。

厄介なのは擬態能力を理性的に利用して人類及び地球に対して搦手で忍び寄るネイティブであり、ワームではない。

無論、それらが厳密に別種の生き物であるか、というのはまた別の話になるのだが。

 

ネイティブと戦う、と考えた時、優位を取ろうと思ったら、何をするべきか。

奴らはワームを殲滅しようとしている。

その理由は、自分達と敵対しているから。

より正確に言うのであれば、ワームがネイティブに強い敵愾心を持っているから。

それでいて、ワームにできることはほぼ自分達にもできる、その上で単純に生物としての強力な能力を備えるのはワームの方だろう。

ネイティブはその賢さを持って、より強力な種族であるワームを殲滅しようとしている。

 

似た性質を持つ生き物は同じ縄張りの中で生きていくことはできない。

生き物として似ているということは、必要とする資源も似たようなものになるということだ。

どうしてもパイの取り合いになる。

 

ネイティブはワーム殲滅のためにゼクターを開発した。

その資料として提供されたのがワーム達の死体だ。

ワームという生き物が備えるクロックアップの機能、タキオン操作器官を機械的に再現し人間に装備させることでワームと戦えるようにした。

 

数が少ないのは反逆防止のためだろう。

あるいは ネイティブにとってワームの殲滅は、もっと長期間にわたる計画だったのかもしれない。

スコルピオによる大量のワーム殲滅はイレギュラーな出来事だったのだ。

人類をネイティブに変化させてからゼクターで自分たちを強化しワームを殲滅するつもりだったのかもしれない。

それらの真相を知ろうと思えばネイティブのトップ、親玉を捕まえて情報を引きずり出すしかない。

 

だが。

彼ら、ワームとネイティブを殲滅するという目的から考えれば、実のところネイティブの真の目的を知る必要はない。

彼らがネイティブ繁栄のために地球で避けてきた行為をこちらで代行してやれば、自然と彼らを弱体化し、滅ぼす事ができるのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

と、いうのが俺の方針なのだが。

言うまでもないことではあるが、俺以外の人間、大きな組織だってワーム対策をしていないわけではない。

事前にワームについて多少なり存在を察知していた組織は、少なからずその性質を理解して自分たちの手札で対処できるように工夫をしていた。

特に顕著なのは猛士だ。

人間に擬態したワームを見分けるという1点において、彼らより優れた技術を持つ組織は日本ではほぼ存在しないと言ってもいいだろう。

 

なんとなれば、人に化ける魔化魍というものも文献に存在する。

狐狸妖怪と括られ、しかし時代の流れで自然消滅したとされるバケダヌキ、バケギツネ。

厳密に言えば特定個人ではなく、そこらの通行人に化けるノッペラボウ。

変わり種で言えば近年に発生した都市伝説型の魔化魍にも人間風に振る舞う物が多く存在する。

 

さらに言えば、対魔化魍だけを考えていれば良い近年とは異なり、古い時代には陰陽師同士の戦いもあり、その中には相手の似姿になる、似姿を式神で作る、なんてのは日常茶飯事だった。

それに対する対策は今現在も慣習として残されており、非戦闘員が擬態されて情報を抜かれるという事もない。

鬼に関してはそもそも生物としてのワームが擬態できる性能でない為、鬼に擬態したワームがクロックアップで襲ってくる、という、基礎スペックでゼクト式ライダーを余裕で嬲り殺しにしてくる戦法も取ることもない。

おかげで、猛士の組織内にワームは入り込んでいない事は確認済みだし、劔冑に搭載したタキオン粒子変動感知式パッシブクロックアップシステムについても周知する事ができている。

 

素晴らしき青空の会に関しても対ZECTの為に頑張って貰わなければならない。

ワームの出自、生態、能力、対策、対抗手段、全て伝達済みかつ、猛士とも連携して動いて貰っている。

甘味処たちばなでは現在カフェマルダムールとコラボ期間中であり、たちばなが定休の日でもマルダムールに行けばたちばな名物であるきびだんごを買うことができる。

それくらい二つの組織は密な関係になったのだ。

(マルダムールは素晴らしき青空の会と直接的な関係は無い、店主のご厚意である)

昨年の日本ほぼ壊滅の余波で悪化しそうになった治安を守るために裏の二大組織が手を組まざるをえなくなったとも言う。

 

肝心要の警察はどうなのか。

構成人員の多さからワームとの遭遇率はそれなり以上にあり、実のところを言えば殉職者も多い。

元々多かったが、末端の警察官などは知らぬうちにワームとの入れ替わりが確認され、ちょっとしたサスペンスホラー展開を経てアギト部隊涙のライダーキックにより撃破されていたりする。

ゼクトルーパーだけでワームの巣に突撃するZECTに次ぐ被害が出ている組織と言っても良いだろう。

 

父さんなどは最早何度遠くに置いても何時の間にか手元に戻ってくる破壊も分解解析も出来ない変身ベルトと見守りデススティンガーくんのお陰で無事だが……。

何せ、先のヤマタノオロチの一件で人知れず殉職した警察官も多い。

本人を前にせずとも写真などから顔貌を写し取り、あとは適当な大怪我を負ってそれが原因で記憶喪失、というていで入れ替わることは容易だ。

それでもアギトが超越感覚で凝視すれば見分けることは可能なのだが、要領の良い個体などは怪我を理由に警察を退職、という形で身分だけを乗っ取っていたりする。

 

そういう訳で、警察も人間に擬態して社会に潜り込むタイプの敵対種族が居ることは把握している。

殉職者に化けたワームが大量に居る、或いは居たというのが問題だ。

本来のワームは擬態先を目の前にして記憶ごと写し取る。

わざわざその場にいない人間の写真や映像のみを元に擬態するのは効率が悪い。

ならばなぜそんな形で擬態しているかと言えば、それを促した者がいる、という事になる。

警察の殉職者、行方不明者のリストにアクセスできる人間が、或いはその人物に擬態したワームが手引している。

つまり、警察の中に裏切り者かスパイが居るのである。

 

市民の安全を守る警察内部に利敵行為を行う売国奴ならぬ売星奴が居ることも大問題だが、事は警察内部に留まらない。

日本国内での行方不明者の数はかなりのもので、土地ごと焼かれたものの中には一切姿形の記録が残っていない者も少なくない。

しかし、そうでない者もまた多い。

 

昨年の騒動で行方不明になった知人友人恋人家族が帰ってきた。

そう嘯く人たちが増えて、そして、静かになっていく。

死んだと思っていた人と再会し、一頻り喜んだ後は静かに暮らしているのだ。

そうであればどれだけ良いか。

 

各組織はそれぞれ対抗手段を持ち、決定的に乗っ取られているところは無い。

しかし。

侵略は静かに進められている。

愛する人を騙られて、命も姿形も記憶も立場も奪われる人が増え続けている。

それだけは間違いのない事実なのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

そんなわけで、素晴らしき青空の会、猛士、警察の三組織に対して合同説明会を行った。

猛士、素晴らしき青空の会は勿論のこと、警察にも共同作戦の実績や新倍力装甲服の提供などで十分にパイプが出来ている為に開催は容易だった。

最近はワームの活動が活発であるためにサンプルの捕獲も容易だ。

脳改造と魂魄改造により式神化したワームの生体標本による擬態及びクロックアップの実演を行い、スパイの存在も示唆した。

警察の中では内偵もより活発に進む事になるだろう。

俺が自分の身バレに関わらない情報を出し渋りすると思ったら大間違いだ。

 

ついでに国内であるにも関わらず銃器の類を潤沢に所有する対ワーム専門な謎の組織に関しても情報を提供しておいた。

素晴らしき青空の会もファンガイアスレイヤーとかイクサとかそういうの所持してるが、あれは嶋さん経由で話が通ってるのだ。

ウォーメイジシリーズも同上。

その謎の組織ZECTの構成員に超越感覚持ちのアギトに見られて不味い人員が含まれていないのであれば、表立って警察と手を組んでくれる事だろう。

仲間になれば心強い肉盾になってくれるだろう。

 

楽しみだなぁ新戦力。

おれ新戦力だいすき。

新戦力が俺のことを好きかは知らないし考慮するつもりも無い。

まさか大量の銃器で武装した組織がトップに異星からの侵略者を据えていて、攫ってきた子供を使って人類を自分たちと同じ種族にする非人道的な実験を繰り返してるなんてことあり得るわけないよな。

あったら俺もショックだ。

証拠の品は全てこちらで確保してるから何時でも警察に突き出せるぞ。

 

なお、現在の警視総監である加賀美陸氏は欠席。

まぁこういう説明会にわざわざトップが出張ってくる、という事はそうある話ではない。

そして、その帰り道が今。

来るときは式神化ワームの搬入の為にハイエースで来たが、そっちはニーくんに運転させて先に帰らせている。

通る道は人気のない薄暗い道。

 

「君達は」

 

態と足音を立てながら振り返る。

 

「堪え性というものが無さすぎやしないか」

 

一匹の、知らん人に擬態したワーム。

にや、と嫌らしく嗤い、その姿をぐにゃりと歪め、俺の姿に……ならない。

見た目すら写し取れず、そのワームはピンボケした写真のようにぼやけた人型へと変貌した。

戸惑うように自らの身体を確認するピンボケ人間という間抜けな姿に対して鼻で笑う。

 

同種の上位個体どころか、ゼクターやZECT製ライダーにすら擬態出来ないのがワームだ。

そもそもその擬態は超能力で言う変身能力。

肉体を完全な形で模倣した結果として知識や記憶が写し取られる以上、こちらの肉体の構成を一度は読み取らなければならない。

超能力の塊であるアギトな時点で読み取りは困難。

 

そして、アギトとして、魔石の戦士として進化と修行と自己改造を重ねた俺に擬態しようなど片腹痛い。

幹部怪人が人間態のままライダーとの戦闘行動が可能であるのと同じく、既に俺の人間態は標準的幹部怪人を凌駕する戦闘速度と強度、火力を備えている。

俺を構成する体細胞から魂魄の一片に至るまで、ワームの擬態能力で写し取れるような安っぽい素材は使っていない。

そして猛士で広く普及してる術であれば全て習得済み。

何年もこの世界で生きてきてワーム対策をしていない訳が無いだろうが、馬鹿め。

 

目の前のピンボケ人間の身体が再び歪み、ワームの成体へと変貌する。

ウロコ状の白い甲殻に隙間から生える無数の赤い棘、胸には白い髑髏模様。

ノミに似た特徴、プレクスワームか。

俺の知る物と同一の個体なら多少なりとも組織的活動をしようというタイプではあるが。

 

「またハズレ」

 

わらわらと物陰から溢れ出すサナギ体が五匹。

周辺被害を考えてこの程度の数しか引き付けられなかった。

プレクスが走り出す。

少し早いか。

クロックアップしているようだ。

 

警察にも各種組織にも顔が利く人間を乗っ取ろう、という程度の脳はあるようだが。

それだけの脳があるのに、なぜ考えられないのだろうか。

これだけ目立つ、ワームに敵対的な行動を取る人間が、各種組織にもワームの情報を提供した帰り、護衛の一つも付けず、変身もせず、人気のない通りを歩いていたか。

 

迫るプレクスの右腕の赤く長大な毒針。

恐ろしい速さだ。

これが非クロックアップ状態で見るクロックアップ中のワームの速度。

僅かに身を捩り毒針を躱し、横から掴み取る。

当然手にはグローブ、ライダーのスーツにも使われている素材、毒など通さない。

同時に鬼闘術で凍結、脚を払い、投げ飛ばす。

 

ゴミの中に頭から落下するプレクスワーム。

サナギ体どもが動揺するような動きを見せる。

何を驚いているのか。

クロックアップ技術の修得以前からクロックアップ対策は重ねてきたのだ。

眼の前でクロックアップして動き出した相手であれば、オルフェノク準拠の超加速と超越感覚、増幅した五感、第六感でこの程度の事はできる。

全てを修得した者は居なくとも、それらの一つくらいは持ち合わせた敵を見たことが無い筈がないだろうに。

 

渋谷隕石の落下から7年。

それだけの時間を経て、本格的に侵略行動を開始したからには自信があるのだろう。

これまでの人類の戦いを見た上で勝算があると踏んだのだろう。

或いは、擬態とクロックアップの合せ技ならどうにかできると思ったか?

馬鹿の一つ覚えで勝てると思っているのなら。

 

「愚かな事だ」

 

このまま変身せずに超加速と怪力と鬼闘術で磨り潰してやってもいいが。

長い時間をかけてアンチシステムを用意したのだから、間違いのない様に始末せねば。

 

―――――――――――――――――――

 

交路の手元にジョウントで蜘蛛型のゼクターが現れ、それを腹部に押し付けた。

ゼクターからベルトが自動生成され腰に巻き付き、装着が完了。

 

「変身」

 

同時に、蜘蛛型ゼクターを中継機にし、軽自動車程もあろうかという真紅の大蜘蛛型ゼクターがジョウントで現れた。

ガサガサと這い回りながら周囲のサナギ体を蹴散らし、その身体を分解させ、無数の装甲へ。

蜘蛛型のゼクターから物質生成装置で形成されたボディスーツを覆い隠す様にその身体を鎧っていく。

後に残るのは、背部に蜘蛛の腹の様なブースターと切っ先鋭い副腕を備えた真紅の鎧武者。

 

「溢れる叡智で返り討ちにしてやろう」

 

遠目に見つめる無数の監視に見せつけるように、そう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近はPCの前に座る時間が取れないなー
と思いながらスマホのメモ帳に書いて出したのが今回と前回の半分くらい
改行変だったりしたら申し訳ない
あと単語登録しとかないと出にくい単語をなるべく出さない形で話を進めることになるので展開にも恐らく偏りが出る

☆妊婦擬態出産ワーム問題あれこれ
口に出して言ったら敵対ほぼ確定くらいはある考察
でもまぁワームもネイティブもほぼ似たような種族だし野良ワームの脳改造して妊婦に擬態させたりすれば実験体はいくらでも調達できるしそれで結果も出たからなんの問題もないよね?
人権もクソもない本格的な侵略者にかける情けは無い

☆各組織のワーム認識
7年ひっそりと活動してるつもりでも人間襲って擬態してなんてやってれば多少なりともバレるので認知度はそこそこだった
現時点では各組織にワームの詳細な研究データが出回ってるし警察以外にはクロックアップシステム配備済みだし警察にも順次容赦なく呪術ハイブリッド式のゼクターが配備される
ZECT式のゼクター?
ネイティブの装備を増やす理由は無い

☆ワーム式神
ワーム資源利用の一つの形
肉体の損傷が少ないものを研究用にこれにして各組織に配布している
青空の会では橘さんを始めとした研究員がこれを弄くり回してるし猛士では吉野に検体が回されて研究が進められている
説明会に持っていった物はそのまま警察預かりで榎田さんの家族との時間を奪っている

☆わらわらと集まるワーム
なんかワームについて触れ回ってるやつおるから擬態して利用したろwww
序盤ワームは計画性のない擬態をしてる個体も居るがこいつらは多少なりとも物を考えてたグループ
なお

☆ワームの到着前から準備を重ね続けていた一般大学生
超加速使えるオルフェノク二体もとっ捕まえて生きたまま研究材料として消費しといて超加速自力で使えるようになってないとでも?
ここまで使わなかったのは使う必要のない相手と使っても意味のない相手としか戦ってなかったからでしかないので
オルフェノクの王ではなかったけど研究材料にしたオルフェノクの力は大体肉体改造と進化で獲得しているので実質オルフェノクの王

☆二段召喚式呪術ハイブリッドゼクター
小型ゼクターと大型ゼクターに機能を分割しているため変身後はマスクドフォームもかくやという程に大型になる
イメージとしてはライダモデルに近いが、使われている技術としては各種特殊合金で作った装甲を組み合わせて作った音式神をアームドディスクアニマルにしたものなので呪術的要素がかなり濃い
ディスクアニマルと同様、器物に魂を吹き込む形で作られた物なので回収したワームの魂を再利用する形で製造しており、従来の量産型よりも生産性は高い
近年の作と比べて技術の発展が目覚ましいのは地球の厄災の記憶を取り込んだお陰
捕まえた虫で新たな虫と戦う、まさに虫相撲を体現したようなゼクター

カブト編どうすっかなと思いながら本編見返してるけどほんとワームってやり口も存在も何もかも胸糞の塊で逆に笑う
たぶん主人公も笑ってる
もっと俺を笑顔にしろよと言っている
こいつがネイティブ移住組を許す未来は見えないが、今後はどうなってしまうのか
とりあえず主人公に大きな動きをさせたから原作キャラもリアクションとってくれる筈だと思うんですよたぶん
取らせられるかな……どうかな……
明日以降のぐにょりを信じてくれる人も疑っている人も、次回を気長にお待ち下さい

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