オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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仮面ライダーカブト 2006年~
170 クロックアップ正面突破作戦


この世界において、渋谷の一部は1999年から長らく関係者以外立入禁止とされている。

されていた、というのが正確なところで、この封鎖区域は先のヤマタノオロチ騒動において運悪く龍の顎門の直撃を喰らい見事に跡形もなく消滅した為、もののついでとばかりに再開発が成され、今では渋谷は完全な姿を取り戻している。

渋谷の封鎖区域の地下に何があったのか、今となってはそれを知るものは少ないだろう。

 

侵略型異星人を満載した隕石の落下。

そんなものがむざむざと見過ごされる程にこの星は愚かではない。

こと、外宇宙からの侵略者、などという文字通りの外敵に対する防衛力はすこぶる高い。

隕石の破壊規模は小さく、また、その直後に起きた未確認生命体による儀式的連続殺人のお陰でこの封鎖区域に関しては、その理由に関しても曖昧なまま半ば忘れられていた。

言ってはなんだが、たかが首都の一区のそのまた一部が破壊されて封鎖されてしまっている、なんていうのは、後々の価値観で言えば、その程度のものか、という反応になってしまうのも致し方ないだろう。

 

何度か行われた大襲撃の度にそれ以上の規模感で街が破壊されているし、その度になんやかや復興を遂げてきたのだ。

なんなら区民の反応は、あの辺りまだ直ってないんだ、いつ壊れたんだっけ? くらいのもの。

そう、破壊された時期すら曖昧になりつつある。

さもありなん。

どのタイミングでどの辺りがどういう怪物に破壊されたかどれくらい人が死んだか、なんて、いちいち覚えていたら人間の精神は保たない。

都合が悪い記憶を忘れるというのも重要な機能の一つだ。

 

だが、ワームの絶対数が少ないか、と言えば、それもまた違う。

ワームの繁殖形態は卵生で、なおかつ誕生直後から程なくして通常のサナギ体として活動可能だ。

工場いっぱいのワームの卵、という悪夢のような光景は、そのエピソードが新ライダー登場回であった事もあって印象に残っている者も多いだろう。

その上で、擬態中のワームは人間の身体機能を模倣している為、恐らく胎生で増えることも可能だろう。

理性的なワームの中には、人間の力を恐れて人間の中でひっそりと妊娠を繰り返して増殖していこう、と、そう考える者も居るかもしれない。

或いは、あの工場の様な大規模なものではない、より小規模な産卵場の様な場所を各地に用意すれば数を揃える事も難しくはない。

 

という大前提をひっくり返すようで悪いが、少なくとも国内にワームの大規模、中規模の産卵場なんてものはほぼ存在しない。

やれても戸建住宅の中に、とか、アパートの中で、とか、その程度の話になる。

実はゴルゴムが匿っているのだ!

なんて話が無い事も確認した。

既に彼らとは都市計画で事業提携を結んでいるのである程度スムーズな情報交換が可能になっている。

彼らはワームに先んじて地球に訪れていたネイティブと組織として直接接触した訳では無いが当然その存在は把握しており、現生人類の強化のためにあえて放し飼いにしているらしい。

曰く、これくらいなら現状の人類でも対処可能、との事だ。

 

それに関しては俺も正直頷ける部分がある。

元から昭和ライダーが存在している為、なんとなれば天道総司がこの世にうっかり産まれそこねていたとしても、多少の犠牲の末にどうにかワームは滅んでネイティブの野望も打ち破られていただろう。

人間をネイティブにするという陰謀にしても、この世界観ではどれほどの成功率であるかわからないし、下手に配布されたものの効果を鵜呑みにしてはいけない、という教訓を人類全体に与えることもできる。

 

その多少の犠牲の中に俺にとって殺されると嫌だったり困ったりする相手が居る可能性がある以上、この手できっちりとワームは殲滅するし、彼らが人間を種族として上書きする手段に関してはしっかりと排除させて貰う。

その為の基礎研究は、既に完了している。

資源として利用する事も不可能ではないが……、彼らの生物的特徴はすべて機械で代替できてしまう。

 

更に言えば、対抗組織であるZECTが必要であるか、と言えば、そうではない。

組織としてそれなりの規模があるがワームに対して明確に対抗戦力としてカウントできるのはゼクターの使用者だけであり、その他のゼクトルーパーに関しては、はっきりと警察の装甲服部隊の下位互換。

或いは警察に提供した新装備含めて丸々横流しされていたとしても警察と同等程度の戦力、いや、やはりアギト部隊が無い事を考えれば下位互換にしかならない。

そして、ZECT式の物とは異なるがゼクターは開発済み。

ハイパーゼクターの設計図が完成した時点で彼らは完全に用済みとなる。

 

しかし、ZECTを……というか、その上層に居るネイティブをどうにかする事を考えれば、何もかもを今すぐに、というのも難しい。

彼らは巧妙に人間の中に紛れ込んでいる。

隠れ潜む事も逃げ出す事も選択肢に入れて選ぶことができる理性的な連中だ。

何処ぞのスマートブレインの時の様な幸運はそうあるものではない。

なんとなれば、早い段階で殺し損ねれば人類との融和政策だ、なんて態度を取って民意を味方につけようとしてくるかもしれない。

 

殺すタイミングを間違えてはいけない。

そういう意味で、奴らは酷く面倒な相手とも言えるだろう。

 

なので、今やれる事はシンプル。

目についたワームを順番に殺していく。

最終的にワームと危険なネイティブを全員殺してしまえばよいのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

とある明かりの落とされた倉庫の一角、通路の端にゴミでも避けるかのように転がされた人影があった。

服装からして警備員だろうか、半透明の奇怪な粘膜、乱雑に束ねられた糸で拘束された彼は、外傷こそ無いものの、首をありえない方向に捻じ曲げられ圧し折られている。

その顔は非常灯の青白い光に照らされるまでもなく赤みを失っていた。

死体だ。

 

今のご時世、東京で死体が珍しいということはない。

ほんの数ヶ月前までは街中で怪死した市民の死体が布を掛けられたまま放置されている、という事はまま見られる話でもあった。

なんとなれば、原型を留めない壊され方をしていたそれらに比べれば、まだ人間的な死に方をしていると言っても過言ではないだろう。

 

だが別の人影がその事実を否定していた。

倒れた死体と瓜二つの顔、背格好、服装。

無表情に倉庫の中を徘徊するそれは、双子の兄弟などでは断じてない。

今、それの持ち物を確認すれば倒れ伏す死体の所持品をそのまま持ち、指紋を確認すれば死体のそれと一ミリのズレもない同一の指紋を採取できるだろう。

 

死体のコピー、それとも、死体こそがこの動く何者かのコピーなのか。

動くそれが真っ当な人間である、という事はありえない。

常人であれば自分と瓜二つの死体が転がっていれば多少なりとも困惑するものだ。

死体と変わらぬ顔を持つそれは、転がる死体に何一つ問題を感じていない。

倫理観の問題か、しかしそれの中には自分と同じ顔を持つ死体が転がっていることを訝しむべきであるという知識は存在している。

 

それは紛れもなく死体の何もかも、物理的にもあるいは記憶までをも全て写し取った存在なのだろう。

だが代わりを演じることはできない。

成り代わろうと思うのであれば死体をまずは処理するべきだ。

だがそれの行動は死体の全てを写し取ったという時点で終了してしまっている。

あるいは コピー元の死体が見つかることで起きる問題を全て自力で解決できると考えているが故だろうか。

 

明朝、死体は発見される。

写しとった顔姿を使って人間社会に潜り込むということは難しいだろう。

或いは、写し取った記憶を元に、益のある行動に移すだけの主体的な人格を持たないのか。

産まれたばかりの赤子に突然知識を与えたとして、その知識を上手く使いこなす事が可能なのか。

生態のまるで異なる生き物の記憶を得たとして、即座にその通りに振る舞うことができるようになるのか。

 

それの行動の理由を誰が知ろう。

或いはそれ自身すら死体の男を殺し、姿と記憶を写し取った理由を理解していないのかもしれない。

本能に根ざした行動を理屈建てで説明することは難しい。

より専門的な知識が必要となるだろうし、死体の元となった男から写し取った知識にも、元から備えていた知識にも、該当するものは存在しない。

 

そういった意味で言えば、それは間違いなく理性でなく動物的本能で動く獣であった。

他者の姿形と記憶を写し取る行為はそれらがこれまで増えてきた中では有効な戦略だったのだろう。

それをしてきた個体が生き残り子孫を増やし、その子も孫も同じ行動を繰り返してきた。

そこに深い理解は無い。

そうすることが生き残る上で優位に立てるから。

どうして優位に立てるかは理解していなくとも、それを行う。

或いは浅い理解すらなく、虫が光に吸い寄せられる様なレベルでの反応なのか。

 

確かに、それは有効な戦術なのだろう。

その土地を支配する生き物の身体的特徴と知識を丸写しすることで、その環境に適応する。

それでいて生物としての地力、例えば腕力や成長速度、繁殖能力などで上回っていれば、その土地の支配的地位をそっくり奪い取ることは容易い。

 

今は写し取った記憶を持て余しているそれも、僅かな時間で盗んだ記憶、知識を持って、自らが生き残り増えていくのに最適な行動を取り始めるだろう。

それが産まれたばかりの個体であると考えた場合、恐るべき学習速度であると言える。

他者が数年、十数年、数十年とかけて獲得した知識を写し取り、それを一日と掛けずに自らの意志で運用し始めるのだ。

 

この生き物が寄り集まって文明社会を築いているとしたのなら、想像もできないほどに高度な発展を遂げているのではないだろうか。

或いは逆に、一瞬でそれが可能であるがために知識の蓄積を放棄して、土地から土地へ渡り歩き、他者の文明を乗っ取り、喰らい尽くし、また別の文明を探して寄生する様な、悍ましい生き物になるか。

この場での振る舞いを見れば、この生き物がどちらであるかは明白だろう。

 

生気のない顔で徘徊するそれが、ピクリと顔の筋肉を動かし、振り返る。

死体の傍らに、新たな人影があった。

人、と言って良いものか。

硬質の装甲で鎧われているそれは、誤解を恐れずに言うのであれば、武者であった。

全身を飾り気のない、無骨な軍用バイクにも似た浅い曲線の装甲で覆った武者は、長く鋭く研ぎ澄まされた棒を手に下げている。

刀だ、と、死体から写した記憶が告げる。

 

それが取った反応は激的であった。

死体から写し取った姿を捨て、人間に擬態していない、本来の姿を現した。

敵である、そう判断した理由は無数にあった。

武器を構えている、自分が殺した相手の死体を見られた、それらの状況から、写し取った知識に当て嵌めればそれを敵であると導き出す事ができる。

しかし何より、もっと本能的な理由があった。

それ……人の髑髏にも似た顔を持つ、巨大な人型の虫にとって、看過すべきでない事実。

自分の命を脅かす脅威である理由がある。

 

擬態先の成人男性のそれと比べて異様に肥大化した上半身、太く奇怪な膨らみを無数に備える肢体。

その見た目からは想像もできないほどの俊敏さを持って、緑色の虫、ワームのサナギ体が武者に襲いかかる。

 

何の術理も持たない、走り寄り腕を振り回すだけの攻撃行動。

だが、機関銃の一斉掃射にも耐える強靭な甲殻と、人一人ならば腕の一振りで吹き飛ばせる程の膂力を持ってすれば、大抵の外敵はこれで排除が出来る。

そうして、節くれ立った腕の先にある、腐った血の色をした禍々しい鉤爪が、大凡の生き物の肉体を容易く引き裂いてしまうのだろう。

武者はその爪による一撃を前に防ぐことも避けることもしていない。

ワームにとって、その敵の未来を予想することはとても容易い事だった。

次の瞬間に目の前に有るのは鎧を砕かれ肉を引き裂かれた哀れな死体だ。

 

そんな未来を見たワームの爪が空を切る。

目測を誤って当てそこねた、という話ではない。

ワームの腕は振り下ろされ、しかし、ワームの鉤爪はあらぬ方向に向けて切り飛ばされている。

 

そのワームにとっての不幸があったとすれば、まず一つ。

ワームが今日殺した警備の男が、殺されるまでの一生をそれなりの幸運と共に生きてきた事だろう。

男は運悪く未確認に襲われる事もなければ、アンノウンに狙われる超能力者でも無かった。

鏡の世界の戦いに選ばれることもなく、オルフェノクとすれ違う事もない。

そして、各地で現れていた魔化魍も、遠目に見かけた事はあれど直接的な被害にあった事もない。

当然、それらに対抗する人類側の戦力に関して、知識としては知っていても、実際にその目で見たことは殆ど無い。

新型の倍力服を着た土木作業員がどつきあって簡易避難所の壁に穴を空けてしまった、などのニュースを笑いながら観ていた側の人間なのだ。

当然、それらが人間にどれくらいの力を与えるものかを実感したことも無かった。

 

そしてもう一つの不幸があるとすれば。

それは目の前の武者か。

この星に来てしまった事か。

ワームとしてこの世に生を受けてしまった事か。

 

腕を振り抜いたワームの体がころりと背中側に転倒した。

爪を刀で切り飛ばされ、前のめりになった身体を、武者が脚で押すように蹴り飛ばしたのである。

重心の高いサナギ体であったとしても、それなりの膂力が無ければその身体を突き飛ばして転げさせる事などできない。

刀を手に転けたワームを見下ろす武者に息切れしたような様子はない。

ワームを蹴り転がす程度の動作は武者にとって特別力を入れる必要のある動きでもないのだろう。

 

ワームの、コピーした人間の知識しか詰まっていない頭に血が上る。

人間の知識を元に感じたのは、武者からワームへの激しい侮りだ。

蹴り飛ばすのでなく、手にした刀で斬り付けていれば、ワームは死にかねない傷を受けていただろう。

そもそも、それは蹴ると言うよりも脚で押すような動きで、ワームの身体を不必要に壊さないような気遣いすら感じて取れた。

まさに、潰さないように虫を踏む為の動きだ。

武者の顔は全面を兜と面頬に覆われていて、半透明の目に見える意匠の様な覗き穴がある程度。

しかし、倒れるワームを見下ろすその姿は、まるで脚をもいだ虫が転げるのを観察しているかの様な。

 

そう見えたのは、はっきりと言ってしまえば写し取った警備員の男の感性に影響されているに過ぎない。

情緒という面で見て、このワームはそこまで感情豊かではない。

故人であればこう思っただろう、その程度の話でしかなく、ワーム本来の思考領域はそれほど強く何かを思った訳でもない。

 

だが、エミュレートした死人の心が、何かの切掛けになったのだろう。

ワームの体が蒸気を上げて赤熱する。

 

脱皮、変態、或いは羽化。

本来ならば数ヶ月掛けて行うような変化を僅か数秒の間に短縮するそれは、過程で発生する熱をも短時間で放出するため、肉体の老廃物を熔解させるようにして行われる。

原理としては彼らワームの成虫が行うタキオン粒子操作能力による時間加速、クロックアップと似たようなものだ。

長期間の放熱を短時間に圧縮する事で高熱を発するのはタキオン制御が不十分であるためだろう。

重力場の変動、それに伴う電磁波の乱れ。

幾つもの余波を伴いながらサナギ体の甲殻が崩れ落ち、中から細身の成体ワームが現れる。

 

青紫をベースに、前進に斑に赤が横切り、一部には変態前の髑髏顔を思わせる模様。

肩口からは副腕が伸び、口腔部と腕部には糸の噴出口。

地球上の蜘蛛と似た特性を備えながら、明らかに人型の体格で動くことを想定して設計された様な、自然界には有り得ない肉体。

効率という点で見ればそのまま同じサイズの蜘蛛の方が優れているだろう。

だが、その真価はただの巨大蜘蛛では及びもつかない部分にある。

 

成体──アラクネアワーム・ルボアが武者から一旦離れる様に駆け出す。

比較対象が存在しない為に解りにくいが、今のルボアは通常の時間流とは別の流れで活動している為、通常の時間流の上で活動するものからは超高速、物理法則を無視した動きをしている様に見えている。

音速の数倍の速度で走り、跳躍、跳躍からの落下までが全て超高速。

 

その速度で跳躍しておきながら明後日の方向に吹き飛んでいかないのは、クロックアップ中のルボアは流れの速い時間流の中で通常通りの速度で動いている為だ。

等速で流れる時間から見れば、百倍の速さで流れる時間の中で動いている存在は百倍の速さに見える。

クロックアップは物理的な加速ではなく、同じ画面の中で通常再生と早送りが同時に動いていると考えればそう間違いはないだろう。

 

その為、このルボアは相対的に高速移動をしている様に見えても蓄えた運動エネルギーは通常の時間流で動いている時と違いが無い。

相手を殺そうと思えば、相手の強度を考えた上で殺すための威力を備えた攻撃を行わなければならない。

それは、クロックアップした時点で何一つ問題になる話ではない。

ルボアから見れば武者はまるきり停止して見え、先のように爪の一撃にカウンターを合わせる事は速度的に不可能になる。

敵を強制的に棒立ちにできるようなものだ。

 

糸を吐き出して動きを抑え込む必要すらない。

じりじりとした動きでルボアの初動を追おうとする武者の無防備な首をへし折ろうと、生え変わった爪を備えた手を振るう。

装甲と装甲の隙間、柔軟な素材が使われているであろう関節部を狙う一撃は、突き刺されば間違いなくその首を撥ね飛ばすもの。

 

喜悦に甲殻内部を走る顔面の筋肉が引き攣る。

人間の知識の写しが生んだバグか、或いはワームそのものが持つ本能的な残虐性か。

一方的に獲物を狩る喜び、爪の先にその柔い素材が触れる感触を予感し。

 

「お」

 

ぎゅん、と、加速した時の中で武者の上体が捩じられる。

ルボアの爪が触れての結果ではない。

遠ざかってすらいる。

武者の刀を持っていない方の手も。

 

「り」

 

違和感から爪を引く。

その動きが阻害される。

引き寄せられる。

風、いや、衝撃波だ。

速度で劣る通常の時間流の中で発生した衝撃波にルボアの身体は絡め取られている。

動く速さ、時間の流れが異なるだけで所有するエネルギー量に差異がない為に起こる現象だ。

通常の時間流上に存在する破壊エネルギーに衝突した際、物理的な影響は同じ時間流上で齎されるそれと変わりなく作用する。

 

「ゃ」

 

何が起きているか。

写し取った警備員の人生経験でも、ルボアが元から備えていた僅かな知識や本能では理解しきれない。

だが、答えとしては単純だ。

単純すぎるが故にその答えにたどり着くよりも先に、物理的な破壊力がルボアの肉体に到達する。

貫く捻りの効いた拳。

寸止めではない、標的に当ててその向こうまで伸ばすように振るわれた一撃。

それは比喩を抜きにして、ルボアの顔面に突き刺さる。

 

「っ!」

 

遥かに遅い時間流の、スローモーションである筈の敵の、こちらを上回る速度の拳がルボアの顔面に突き刺さり、ゆっくりと、その頭部を粉砕していく。

並の威力ではないのだろう。

ルボアが感じた痛みはせいぜい顔面の甲殻を砕かれた瞬間まで。

或いはそれすら脳に届くことは無かったか。

痛みの信号が高速化した時間流上でルボアの頭脳に届くよりも早く、武者の振るった拳が頭蓋を貫き、脳を破砕し、発生した衝撃波すらも突き抜けて後頭部より貫通する。

次いで、頭部を中心に、いや、武者の全身の各部から放たれた強烈な衝撃波がルボアの残る肉体を粉砕。

その衝撃波は周囲の倉庫を巻き込む……事無く、見えない力場の壁に抑え込まれ反響し、粉砕され微塵と化したかつてルボアの死体だったものを撹拌する。

血霞ですらない、細胞片すら残らない分子の塵と化した。

 

『クロックアップ』

 

武者の鎧にそれらが降り掛からんとした瞬間、時間流がルボアのそれと等速にまで引き上げられ、さっと身を躱す。

ぱたぱたと降りかかりもしなかった塵を払うような仕草をしながら、一体のワームを粉砕させた拳を見つめ、幾度か握り直す。

 

「破損は無し、と」

 

腰に下げていたカンテラを掲げると、塵の山から何かが浮かび上がり吸い込まれていく。

ルボアの持つ魂魄だ。

僅かな光の灯ったそれを腰に戻しながら、武者が倉庫内に向けて声を上げる。

 

「出てきなよ。さっきのトリック、気になるだろ」

 

何者かが居る、と、そう確信した上での声掛け。

無論、それは味方となり得る相手などではない。

倉庫内部に隠れ潜む、他のワームサナギ体へのもの。

 

格の低い、或いは未成熟なワームは、電磁波と重力場へと異常を垂れ流し続けてしまう。

また、サナギから成体へと変態する過程でそれらの数値は上昇するため、見えないワームが成体かどうか、という点もある種のセンサーさえあれば事前にわかってしまうのだ。

まして、それらをセンサーなしで視認できる相手にとってみれば、ここに居るぞ、と、常に叫んでいるも同然だ。

 

「教えてあげるから、出ておいで、見ての通り、痛くはしないから」

 

ワームにとっての小規模な巣箱であった筈の倉庫。

それは今や、彼らを閉じ込める虫籠へと変貌していた。

 

―――――――――――――――――――

 

夜明け前、ワームの反応を察知したZECTによって、警備員の死体が一人分発見された。

死体の状態からワームによる殺害であると目されたものの、現場には小規模な破壊痕が残るのみ。

ZECTは警備員を襲ったワームが現在の潜伏中であると見て、擬態元の姿を元にワームの捜索を続けている。

 

 

 

 

 

 

 





今年は希少動物を採集していく年になるねたぶんね
一年かけた昆虫採集なので実質ぼくのなつやすみ
虫じゃないやつが結構居る?
虫相撲はザリガニまでレギュレーションでオッケーだからワームは大体昆虫枠だよ
ザリガニがありなら多分カニも虫だろうしね
虫の鎧で虫を殺す話になるので実質一年使って虫相撲し続ける話です
虫相撲って負けた方はバラバラにされるんでしょ虫皇帝で見たよ
ボーグバトルでもバラバラになったりするしおー激し
つまり人生の縮図で男のロマンである!
陛下もバトル!
叔母は出ない
※今のところ父親側の親族に関しての設定が無いのでそのうち何かの間違いで出るかもしれないけど叔母は悦司ではない




☆今回特に書くこと無いから謎の鎧さん
プロトムラマサ時代からのアップデートにより超強化された量産型劒冑
ムラマサを使っていないのは最新アプデ版の性能を実地で確かめるため
以前の説明の通りパッシブクロックアップシステムが採用されていて、基本的にリミッターを解除しない限りはワームのクロックアップに反応してクロックアップする親切仕様
使用素材の根本的見直し、ヤマタノオロチシステムの解析、強い念動力の併用により、クロックアップ無しでクロックアップ並の速度でぶん回しても自壊する事がなくなった
それくらいの無茶をしないなら念動力を保たない戦士でも十分性能を発揮できる
待機状態は原動機付き一輪自動車
最新のオートバランサーを備え、使用者登録を済ませておけば乗っていなくても後ろからトコトコ自走して着いてきてくれる
一部装甲をジョウントで呼び寄せる形式に変更している為コンパクト化が進んでおり、中型~大型ヘキサギアのタイヤ付近のユニット交換で組み込む事が可能
使用者への負担は初期からそれほど軽減されていないが、オロチ現象直前の魔化魍大量発生、ヤマタノオロチ騒動を経て生き残りの鬼の方々の物理及び精神耐久限界が大幅に引き上がった為、抵抗は少なくなった
ある程度使用者の意図を汲んで動いてくれる為、仕事での移動が四輪駆動車の助手席な鬼の方々や自動二輪に不慣れな鬼の方々が最近では愛用している
不知火レベルの四駆であれば天板の上に搭載でき、大変便利

☆それはそれとして頭越しに殺しの案件を掻っ攫われていった警察の方はどうにかなってるの?
みたいな話はしていきたい
しかし二十二号がいなくなった今、何者が警察への事情説明を行うのか……
もしかしたら警察内部にもワームの魔の手が及んでいるかもしれない!
(※ヒント、アギトの超越感覚)


前の話のあとがきでも言ったけどワームの種族的特徴とか文化形態とかの話をしていきたい
こいつら発展しようと思えば無限に発展できる下地がある、あった筈
なのにできなかったのには相応の理由があるのだ、みたいなやつ
つまりいつも通り、主人公が戦闘以外で延々モノローグで語る様な話になるんではないんでしょうか
でもそれって平成ライダーを振り返るというメインテーマには沿っているので寧ろ問題ないのでは?
それ以外はまぁ凄惨な場面を映すことになるのではないでしょうか
ここまで来ると主人公出さなくても味方サイド全員対ワームは終盤のフリーズとか使う相手とかくっそ硬いシオマネキとか以外はどうにかなっちゃうし
それでいて主人公が戦闘を控える理由が無いし
あんまりな様ならファイズでいにゅいにヒロインをあてがった様にマスコットでも原作キャラにあてがっていくか
カブトはどいつもこいつも後戻りできる筈なのに勝手に地獄に転げ落ちていったりするからな……
どいつ(パーフェクト)
こいつ(ハーモニー)
そいつ(現状確定でワーム殲滅の為の生贄として確定死)
そうは言いつつマスコット増やすと描写が増えるので勝手に地獄に落ちてろペッ!みたいに原作そのままなぞるルートにいくかもしれません
色々都市伝説とかやるやる言ってた響鬼編もスケール感増しただけで言ってしまえば原作の大枠には沿っていましたからね
うちのSSは昔からストーリーラインが大体王道であることで有名無実なんです
嘘だと思うならこれからのこのSSの展開をようっくご覧になっていてみてくださいよ
それでどうなるかなんて書いてる方にもわからないんですからね!いいですか!
まぁそれでもいいよ、みたいな人もそうでない人も、次回を気長にお待ち下さい

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