オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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160 目覚めの兆し

古地図などと見比べてみるとわかるのだが、現代の街並みにも古い時代の町並みが重なるようにして残されている。

大きな川の流れがそのまま道として残っていたりだとか、或いは建物は変わっていても区画などの入れ物はそのままだったり。

当然、生きた人間が暮らす都市なので一斉に住民を立ち退かせて作り変える事が難しい以上そうなるのは自然なことだ。

 

だが、残された町並みや建物、道の流れ、そして変化にも理由が存在する。

かの有名な南光坊天海が敷いた江戸の大結界などもその一種で、その結界は時代ごとにアップデートが重ねられている。

基本的に、一斉アップデートではなく部分部分を組み替えてパッチを当てていく様な修正が主になるか。

古くから残されている建物や地形などは結界の基礎部分と見て良い。

 

東京の結界にも大規模アップデートの痕跡が存在する。

最近の更新日はおそらく1944年から1945年くらい。

結界の管理運営の大本からすれば、一番コストが掛からない更新方法だ。

増えすぎた穢製造器を減らし、猛士含む現地組織の古参を一掃する事で体質を大幅に切り替えたりもしたのだろう。

 

人間に限らず、生き物の思念は束ねる事で大きな力として成立するが、この世界の人間の発生由来を考えれば潜在能力という一面で人間のそれは他を圧倒する。

人口爆発に伴う雑多な思念の増加はそのまま穢の増加へと繋がり、穢の浄化システムをオーバーフローさせてしまう。

より処理しやすい形として魔化魍が生まれたのだとしても、それを処理する鬼の仕事が追いつかなくなる。

 

大前提として、俺が東京都の……というか、日本の幾つかの主要都市の地図から読み取れる結界というのは、外敵を完全に防ぐだとか、内部に侵入した敵を弱体化するとか、そういう類のものではない。

大きな力の流れを細かく分散、それを細切れにして排出する為の流れ……言ってしまうと配管の一種だ。

仮に、このシステムに手を加えて穢が魔化魍として結実しないようにした場合、魔化魍の大量発生などとは比べ物にならない大災害が起きるだろう。

 

なので、この魔化魍と鬼のシステムは多少の犠牲を良しとしている。

一度地上に広く敷かれた文明が崩壊する事を考えれば誤差のようなものなのだろう。

恐らく、この時代においてこのシステムの大本を管理している連中もそれは変わらない筈だ。

大都市、日本の首都である東京の市街地のど真ん中にすら、無数に小さな安全弁が設置されている。

都市部にいきなり大型魔化魍が生えてこないのは、被害を良しとしながらその被害をなるべく抑えようという技術者の思いやり。

……というか、大規模な被害が出ればそれを元に更に穢が発生して悪循環を生む為、被害をある程度容認しながら二次被害が発生しない為のギリギリのラインを求めた結果だろう。

 

都市部に現れたカシャなどはその技術者の苦慮がよく現れている。

分裂はせず、しかし夏の魔化魍の如き小さな体躯。

ディスクアニマルを燃やし尽くす程の火力を備えるが火を使う為に非常に発見しやすい。

鬼に清めさせたいタイミングまでは目撃者を増やすこと無く育つ隠密性。

 

特に隠密性に関してはことさらに気を使ったのだろう。

これを完璧にする為に全身にびっしりと姿隠しの術がそのまま刻まれている。

育つまで、弱い人間をこっそり食らう段階では問題にならないが、体表に刻まれている為に成長しきって強気になり鬼との正面戦闘を行う段階になると明確な弱点となる。

術を本人が使うでもなく見えないところに刻むでもなく、遠目でも読めるくらいの文字サイズで刻んでいるので、鬼闘術で体表の文字をいくらか破損させてやれば姿を消せなくなる。

今は建物がそれほど燃えやすくないのでそうでもないが、木造建築の時代であればカシャが高速移動形態で逃げた後には火事が発生するので足取りを追うのも容易だ。

大型の魔化魍が生まれる為の穢が人間大にまで圧縮されているので少し頑丈だが、複数の鬼で囲んで音撃を叩き込めば普通に清められる程度の強さでしかない。

 

つまり、倒す為の筋道が用意された魔化魍なのだ。

都市部以外で見られる大型魔化魍もある程度相性の悪い音撃は存在するが、もはやこれはソースの袋のマジックカットかと見紛うほどである。

問題として、現代の鬼はそれほど不思議な術に明るくなく、そもそもこのカシャ自体がそれほど頻繁に現れるタイプのものではない為に、普通の小型の魔化魍として扱われていることだろうか。

この一面のどこからでも切れますマークを無視してハサミを使って開けている様なもので、結果としてはそれでも問題は無いのだが……。

 

結局のところ、手間を余計に増やしている。

小さな負担でしかない。

しかし、それは確実に積み重なる。

それを積み重ねさせない為の設計なのだが、時代と合っていない。

都市部の安全弁が開く程の状態なのだから負担を少なく倒せるように、数をこなせるように、という気遣いが無駄になっている。

つまり、

 

「破綻するだろうな」

 

べん、と、手慰みに音撃斬を爪弾くお師さんが断言した。

華道教室が終わった後のお師さんからの鬼としての技術指導の中で、やはり東京の守り……というか、魔化魍出現の頻度の高さと鬼の人手不足が話題に上がる。

どうにも、お師さんの普段の行動範囲の中にすらカシャに類似した魔化魍が現れ、それを成り行きから清める事になったらしい。

一応、お師さんは猛士からは正式に除名されて鬼としての資格を剥奪されているので、猛士に鬼として活動している所を見られるのはまぁまぁ問題なので、戦いよりもむしろ人目の確認にこそ気を使ったというが、それでも本来は、それくらいに他に気を回した状態でも清められる魔化魍なのだ。

 

「清められなくても、撃退だけなら警察でもできなくは無いですよ」

 

「清められなければ幾ら壊しても意味はない。下手に警察が苦戦して強敵だった、とでも印象付けられてみろ」

 

「むむ」

 

アギト部隊が出会い頭に紋章キックをぶちこんでしまえば済む話ではあるのだが、警察アギトはそれもなかなか難しい。

密かに増えつつある、殺される前に変身を解いて降参するオルフェノクなどのお陰で、人を襲う異形を見つけ次第即殺できなくなりつつあるのだ。

 

無論、ケツモチであったスマートブレインが消滅した結果、大胆に犯罪を犯すオルフェノクの数は大幅に減ったが、何もオルフェノクのバックにつくのはオルフェノクだけではない。

強大な身体能力を活かしてこそ泥を働く様な輩はスマートブレインとは関係なく生き残っているだろうし、なんとなればオルフェノクは変身しなくともコンクリの壁を殴って大きな亀裂を入れる事ができる程度の身体能力があったりする。

人間態で発揮できる身体能力を駆使して肉体労働に汗水を流すオルフェノクが居る一方、ヤクザものに雇われて用心棒の先生などをしているオルフェノクすら存在した。

オルフェノクの存在を隠蔽する組織が存在しない以上、遠からず人に危害を加えたオルフェノクに関しては新たな取り扱い方が定められるだろう。

 

で、そういうものが増えつつある為に、警察では人間が変身しているかも……くらいにシルエットが人間に近い相手に関しては威嚇射撃から入るし、口頭による警告を行うようにしているらしい。

それで襲いかかってくる魔化魍などであれば良いのだが、餌を捕食できないと見て逃げる魔化魍であれば話は変わってくる。

逃すまでに得られた魔化魍の情報は警察内部で共有され、イメージが固定されてしまう可能性がある。

 

カシャに威嚇射撃をして取り逃がしたとしよう。

姿を自在に消したりできる。

体表の呪文によるものだがそれが知られない場合呪文と関係の無い機能として獲得しかねない。

銃火器でダメージが通らない。

表面上変化が無くとも物理的な肉体機能を弱体化できていたかもしれないが誤解から強度が増しかねない。

体を自在に炎に変える事ができる。

無論炎をある程度操るが基本的には逃走か突撃の為の形態でしかないところに变化能力が付与されかねない。

 

「梅雨頃だったか? 彼らには首都高で魔化魍の大規模発生に対応して貰ったのだろう?」

 

「増えるかぁ……」

 

脅威と言えば脅威だ。

あの警察との合同作戦は必要なことだったとはいえ、警察内部に『自分たちの知らない、知らされていない脅威』の性質を一部周知させてしまっているのも痛い。

カシャは夏の魔化魍ではない為に増えないが、では何故カシャは夏の魔化魍分類ではなく増える性質を持たないか、というのを理屈だって伝える事は難しいし、伝えたら伝えたで警察内部に魔化魍の性質がより深く周知されてしまう。

 

「心配するな、少なくともカシャに関しては倒す手順を改めて伝えてある。手間取りはすまいよ」

 

「斬鬼さんに?」

 

びょいん、と、気の抜けた音が音撃斬から響く。

 

「……鋭鬼だ」

 

「直弟子に伝えてあげればいいのに」

 

「もう師弟ではないからな」

 

お師さんの視線は手元の音撃斬に向いているが、焦点は合っていない。

音撃斬を通して遠くを見ているようにも見える。

死期が近い訳でもないのにお師さんは年寄りみたいに過去に目を向ける癖がある。

まぁ、お師さんの長生きは目的らしい目的が見えないので生きる気力がそんなに無いのかもしれない。

 

「そういえば、そろそろノツゴの季節のようですが、どうします? 先に見つけておきます?」

 

「いらん気を回すな。……いや、気を使ってくれたのは良いことだ。偉いぞ、褒めてやろう。そうやって普段から人に気を使う事を忘れるな」

 

「じゃあご褒美になんか新しい術とか教えてくれません?」

 

「お前はそういうところが良くないな、遠慮というものを覚えろ」

 

手厳しい。

新しい術は教えてもらえなかったが、出現する魔化魍の種類を変更する術に関してはアドバイスを貰えた。

当然禁術扱いになったが、まぁ師範の言葉とかと照らし合わせて考えれば使い所を考えて使え、くらいの意味だろうから、ちゃんと使って良いタイミングを見計らう事にしよう。

 

―――――――――――――――――――

 

そんなこんなで街中にポツポツ現れるカシャを始めとした小型魔化魍を潰してまわっている内に、そろそろ季節も秋に差し掛かってきた、というところで、一本の電話が掛かってきた。

 

「あー、小春くん? ちょっと大丈夫かな」

 

猛士関東支部の支部長からだ。

 

「要件によりますけど、新装備のお求めならできれば一度仲村くんか、さもなければ社の方を経由して貰えると助かります」

 

「あいや、そうじゃないんだ。ちょっと、うん、あのさ、前にきみ、轟鬼くんと斬鬼さんに新装備のテストとか、手伝って貰ってたじゃない? あれってまだあるかな」

 

「ああ……当時品はもう設計図しか残ってないですけど、後継機ならありますよ」

 

「持ってこられるかい?」

 

「今からですかぁ? というか、今更ですかぁ?」

 

実際、負荷をある程度外部装置に逃がして誰でも変身できる程度にまで調整したバージョンの設計図を送ったのだから、猛士で使う分は吉野の方で作ってくれてるものと思っていたのだが。

 

「来るんだよ……」

 

「はぁ」

 

「小暮さんが!」

 

「暇なんですかね」

 

完成した新兵器の輸送なんて宅急便とは言わないけど他の手隙の人にやらせれば良いものを。

前から思ってたけど、フットワークが軽いっていうのとは少し違うよな。

卒業したのに古巣に来たがるOBみたいな。

やっぱり鬼としての活動に未練があるんだろうか。

 

「開発に貢献してくれた外部協力者を、ねぎらいの意味も込めて呼びたいんだそうだけど……」

 

支部長さんの声が申し訳無さそうに尻すぼみになっていく。

正しく言葉尻を濁しているという口調だ。

それ以上口にすると答えを口にしてしまうのだろう。

 

「それでなんでこっちの海賊版みたいなのを持っていく必要があるんですかねぇ……」

 

あまりにも白々しすぎて後期プロデューサーになったわね。

完成品を見せつけてやる! なのか、海賊版を叩き潰してやる! なのか知らんが、まぁ、コンペをしたいのだろう。

その情熱は嫌いではないが、本来想定している性能を維持したままで万人に使用できるようになっているならそれで良いのではないだろうか。

関東支部の鬼全員が装甲形態になれるなら大体の魔化魍を安定して始末できるようになると思うのだが。

まぁ、そういう負けず嫌いというか、偏屈なところがあのボロくずの様な身体を引きずりながら鬼の仕事に関わり続ける秘訣なのだろう。

ああいうタイプは仕事から離れると一気に老け込んでしまうからな。

これくらいの面倒臭さがちょうどいいのかもしれない。

あれで優秀な技術者だ。

最後の最後まで働きながら職場で燃え尽きて死ぬ、くらいには働いてほしいので、老人の偏屈にも少し付き合ってやろう。

 

―――――――――――――――――――

 

そういう訳で、ブツを持って関東支部に。

準備中の札が下げられた玄関を通り、猛士関東支部としての機能を持つ地下室へ。

 

「どうもぉ、小暮さんもう来てますぅ?」

 

「遅い!」

 

小暮中年が一喝してくるも、警策やら竹の切れ端やらが飛んでこない辺り、今日は比較的精神が落ち着いている日なのだろう。

高級そうな桐箱に入れられた、恐らくは吉野で作られたであろう完成品のアームドセイバーを前に不機嫌そうな顔で腕組みをしている。

 

「いきなりの呼び出しで来たのにそりゃ無いでしょ」

 

アームドセイバーの開発に付き合っていた時、鬼になれるのなら実力を見てやる、的に仕掛けてきた罠や投擲や不意打ちを全部本人に返した事をそんなに根に持っているのだろうか。

俺はあの時共同開発と技術交流に行ったのであって他所の組織のOBの後輩いじりの対象になりに行った訳では無いから長々とイジケられても困る。

 

「完成品を見たがっているだろうという気遣いだろうが」

 

「いや、もう完成形は想像できるくらいにはなってましたし、お披露目会なんてする暇があるならさっさと量産して配備してあげりゃあいいじゃないですか」

 

俺のその言葉に、小暮さんは眉根を寄せ、鼻を鳴らし、背もたれに背を預けてふんぞり返った。

 

「使い熟せる鬼が居なければ意味はない。最近の鬼は甘やかされ過ぎだ」

 

「『最近の』とか、現役の鬼全部確認した訳でも無いでしょうに適当なレッテル貼りですね。そういうの最近は老害って言うんですけど知ってました? 肉体と脳細胞のリフレッシュをオススメしますよ」

 

開いている席に座りアタッシュケースをテーブルの上に下ろす。

周囲の関東支部メンバーはアワアワとしているが、轟鬼さんと響鬼さんはそうだそうだ言ってやれ、みたいな顔をしている。

 

「ほう、言うじゃないか。私のお眼鏡にかなう鬼が居ると?」

 

「そこの響鬼さんは良い鬼です」

 

「確かに、豆腐も崩さなかったし」

 

「俺? 結構鍛えてますから、ははは」

 

笑う響鬼さんは、最後の一つは躱せませんでしたけどね。と謙遜してみせる。

それに、そうだったな、と、ここだけは嬉しそうに返す小暮さん。

響鬼さんは十代から鬼として活動し続けているベテランなだけあって経験豊富だ。

だからこそ生半可な不意打ちは全て捌く事ができるし、害のない、害意の無い攻撃に大して注意を向け続けない、という事ができる。

ダメージを選んで受ける事ができるのだ。

 

致命傷や後遺症になるレベルの攻撃だけを避けて、鬼の皮膚で受けきれる、或いは再生能力で直し切れるリカバリの効く攻撃は無理に避けずに反撃に集中するスキルは、現役を長く続けようと思うなら必須レベルであるとも言える。

それを知っているから、小暮さんは響鬼さんが不意打ちを全て避けきれなかった事を変に叱責しないのである。

 

「まぁ、いきなり来て抜き打ちで見るのは限界がありましょう。今、一番熱い鬼はシフトの関係でお休み中です」

 

「少し魔化魍を退治した程度で休む様な未熟者の中に見るべきヤツなどいるか」

 

はぁ~?

仲村くんこと新進気鋭のホープである嘆鬼を見ずに新人批判とか名前の通り嘆かわしい。

疾風鋼の鬼ももはや過去の人だな。

古い鬼の修行と最新式の殺怪人拳法修行。

継戦能力を上げるための各種オプションを使い熟しながら鬼としての練度も決して劣る訳では無い。

彼こそがこの世代の鬼の中では時代の最尖端を行く最新最高最善の鬼になる予定の男なのだ。

 

そして仲村くんは特別な設備が無くともできる古流と最新式を併せた鍛錬法を若手の中で少しずつ共有している。

今はまだ芽吹いていないが、まだ鬼でない見習い達だって決して層が薄い訳では無い。

そして、それら鍛錬は当然の話ではあるが休暇の中で行われる。

身体を休める、というだけではなく、自らをより高みに導くために磨く自由時間としての意味合いだってあるのだ。

そういう事もあって、今シフト表を作っている人は少ない人員の中で頑張ってみんなに休みが行き渡るように頭を悩ませていると聞く。

 

「シフト通りに休みを取る鬼を未熟者とか言う労働環境を当たり前のものにしていたから鬼のなり手が想定より増えないって、現場の人はわかっているのになぁ。後方で開発ばっかりしているとわかんなくなっちゃうんですねぇ? 現役で居られないってのは悲しいなサム……」

 

「ふんっ、決められた通りにしか動かない連中がどれほど役に立つ。猛士の鬼でも無いのに随分と吹くじゃあないか。それとも猛士の鬼程魔化魍と戦っていないから余所見ができる余裕があるのかなぁ?」

 

ふうやれやれ、と、わざとらしく肩をすくめて見せる俺に、額に青筋を浮かべながら厭味ったらしい笑顔を向ける小暮さん。

 

「あっ、あの、俺とかも鍛えてますよ! 結構!」

 

と、何故か轟鬼さんが決意を秘めた表情で横から口を挟んできた。

言っている事とは裏腹に別に自己アピールをしている風ではない。

見れば開発の滝澤さんとか支部長は椅子を引いてテーブルから離れている。

きっと轟鬼さんは空気が悪くなったと思って勇気の紋章とか光らせたのだろう。

響鬼さんなんかは面白そうにこちらの事を見ているが。

 

「悪くはないが、落ち着きが足りないな。精神修養をしなさい」

 

「そんなぁ……」

 

轟鬼さんは少しほっとした様子を隠す様に大げさに項垂れてみせている。

ただ、俺の知る轟鬼さんの評価とは少し違うので、轟鬼さんも悪くない程度には鍛えられているのだろう。

 

「そもそも轟鬼さんはもっと鬼としての知識を身に着けた方が良いんじゃないですか?」

 

弦、管、太鼓の三種の音撃を一定上のレベルで使えるようになるのは理想的だが難しいとしても、一種類の音撃では全ての魔化魍に対抗できないという程度の知識は教えておくべきだろう。

知識だけでも、自分では倒せない魔化魍だ、と判断した上で他の鬼にヘルプを出すという選択ができるようになるわけだし。

 

「そ、そりゃ、そうですけど、斬鬼さんも忙しくしてるし……」

 

鬼としての知識がしっかりと身についていないと知れた為か、小暮さんから轟鬼さんへの視線が僅かに鋭くなる。

が、昨今の鬼の状況を知っている為に中々しっかりと鬼を育てきってから巣立たせる事が難しい事も理解しているのか、その点について言及する様子も無い。

 

「それは兎も角。……君も完成させたそうだね」

 

「ええ、見ますか?」

 

「是非」

 

アタッシュケースに入ったアームドセイバーを小暮さんに渡す。

手に取ったアームドセイバーをしげしげと見つめ、戻した。

溜息。

 

「やはり同じ結論に至ったか……」

 

「特定個人専用カスタムと同じ結論に……?」

 

セキュリティとか関係なく、強化率だけ考えて調整した幹部級怪人が使っても反動で死ぬやつなんだけど……。

 

「いや、そうではない。量産品も当然作ってはある。だが、それだけで済む状況ではない。精鋭はより強い力を身に着ける必要が出てくる」

 

「それほどの魔化魍が?」

 

支部長の問いに、小暮さんが静かに首を振り、しばしの沈黙の後、口を開いた。

 

(オロチ)が目覚める」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





☆魔化魍と鬼システム(永遠にβ版)
現在運用している側も全容を把握しているかは不明
人間を食らって成長する形になっているのは魔化魍という存在が自然発生できる程度に人間の間に魔化魍への恐れを刻み、穢が魔化魍に変化しやすくする為のもの
自然災害、自然現象の原因を魔化魍だと思わせることで穢が防ぎようのない強大な自然災害として発現する事を予防している
ついでに人間を食らう事で穢の発生源を減らす事もできる
総体としての人間や現状安定している自然環境をある程度安定させるためのシステム
ほぼ偉い人の趣味で人食い種族にされたアマゾンよりは意味がある食人だったりする
まぁ地球総人口は一時的なものを除けば増え続けてるのでシステムとしては破綻しつつある
オロチ現象は最終安全装置であり、魔化魍の大量発生はダムの放水の様なもので想定通りの動作でしかない

☆市街地で緊急戦闘をする機会が増えつつある何の変哲もない華道教室の先生
原作のように鬼の鎧を盗んだり鬼と戦ったりしていないので実は猛士に見つかってもそれほど問題はないし鬼祓いを差し向けられたりもしない
が、猛士に鬼として戦っているとこを見つかると音錠の出どころを聞かれるし、そうすると外部の問題を起こしてやめた元鬼に鬼として活動する為の装備を渡したという事で弟子の立場が悪くなるかもしれないから割りと過剰に気を使ってくれている
気を使っているというか音錠の出どころを正直に吐いたら吐いたで弟子も鬼の技術やそれ以外の諸々の人に知られたら本来アウトな技術や所業の数々が芋づる式に外に広まってろくなことにならないだろうから頑張って秘匿してくれている
一方弟子は警察署に配布する用の臨獣殿入門者募集チラシを作っていたしアウト気味な技術で改造された猫含む野生動物は既に世に放たれている

☆元締めが居なくなったお陰で人間の裏社会とのつながりが生まれつつある野良オルフェノク界隈
スマブレ潰した弊害の一つ
スマブレ外部オルフェノクも最初は実は国内スマブレ生き残りの可能性を考えて大人しくしていたが本社ビルが別会社によって使われ始めた事で密やかに力を振るう方向に傾く個体が増えてる
先生、お願いします!
どぉれ(変身)
みたいなやりとりが極道者の中で流行っていた
同じ種類の用心棒が居ない限り突撃された時点で事務所の一つが文字通り消し飛び、後には焼けた事務所と人数分の灰が残るのみ
忘れがちだが暴力を躊躇わないオルフェノクの戦闘力は武装した一般人を相手にする分には十分高い
大量に人を食い殺してた怪物のミニチュア版みたいなのを雇うバカとか居るの?
逆にスジモンのみなさんはかえって箔がつくわいガハハみたいに大物アピールをキメてた
あぶねーもんを手元においておく事でそんなものすら傘下におけるほどの器なんだ、みたいに周囲に喧伝できるのでありっちゃありなのかもしれない
なお、この手で敵対する組を潰した場合、近日中にその用心棒も含めて関係者一同一族郎党行方不明になるのでスジモンオルフェノクの存在はそれほど広まってはいない
彼らは風になったのさ……(物理)
巻き込まれて常人が風になっているがまぁ世間的には失踪扱いなのでヨシ
家族とか残しとくと逆恨みで復讐とか考え始めるからね
プラズマ化ではないのでなんか焦げてるな……みたいなのも無くマリーセレスト号事件みたいな事になってたが大半は夜逃げ扱いで済まされている

☆小暮のおじさんと生意気な余所者技術者
別段口喧嘩をしているつもりは双方無い
吉野でアームドセイバーの開発とかを手伝ってた時もこんな感じでバチバチにやり合いながらやってた
というのを響鬼さんは見抜いて、ああ偏屈だけど悪い人じゃないんだな、くらいに理解をした
主人公の印象も何故か上がる
猛士の親組織みたいなとこの偉い人とかいう信頼できる人とここまで気兼ねなくやりあえてるんだから悪いやつじゃないっしょ
みたいな認識のバグ

☆なんでか学びが足りないけど鍛え方は割りと原作よりも足りてる轟鬼くん
魔化魍の発生率が原作より高いからってのと、警察として仕事してる時(未確認&アンノウン関連事件)とか警察やめた前後(マッドアーク大量発生)とかに諸々の大事件があったので鍛え方は原作と比較して格段に高い
特に後者の事件は当時現役だったら力不足を実感したろうし、引退して鬼に弟子入りしていたら警察としての装備も使えずまともに人を助ける事もできなくて弟子入りを早まったかと悔やんでしまったりするだろうし
そういう事もあって手っ取り早く力を増幅する為の装備とかがあったら一も二もなく飛びついてしまうのだ
全ては守るためだからしょうがないね
斬鬼さんが持ってる朱鬼さん仕込の呪術を伝えられてないのはこの世界においては教えたら確実に安易な力を求めて道を踏み外してしまう可能性が無いでもないから
知識不足のまま促成栽培で巣立ちを迎えたのはそういう轟鬼くんの基礎力を見込んで、あるいはこれ以上は轟鬼くんの健全な鬼生を守るために教えられないのものというところもある
なんなら斬鬼さんが古傷含めてゼンカイしているので知識不足から見当違いな事をしたら後付で教えていけばいいし
なんなら同じ組織の鬼の中で呪術に関する習得率が異なる辺り、弟子を卒業して鬼として巣立っても生涯鬼として鍛え学び続けるのが正規ルートという事もあるかもしれない

☆アームドセイバー(小暮スペシャルカスタム)
負荷軽減装置を吉野の総力を結集して小型化し、並以上の鬼であれば変身できるように調整された普及型
……を、更に一歩推し進めて作られた精鋭専用の一振り
負荷軽減装置を前提に更に出力を上げており、その強化倍率は普及型のアームドセイバーを遥かに上回る
テストに参加した普及型の起動に成功してアームド形態にウッキウキだった弾鬼さんと勝鬼さんは今変身を解かずに寝込んでいる
全身が強力な波動によってバキバキになっているので変身状態で首から上だけ人間に戻り栄養食と流し込まれている様な状態
が、要求性能を満たしていない鬼が使っても死なない事がわかったので小暮さん的にはオッケー

☆海賊版自分専用カスタムアームドセイバー
妖刀魔剣の類
上記小暮スペシャルのアッパーバージョンで主人公の肉体限界に合わせた出力になっている
いわゆる収斂進化の一種
作ってる人の完成が似ていてしまったのかもしれない
人型の敵にうまいこと使わせる事ができれば大幅な弱体化が望める辺りやはりこやつイクサの事を気に入り過ぎている
安全装置ではないが構造的に常人では間違っても起動できない(起動する為の身体能力が足りない)ので一般ホモサピが間違って触れたり盗もうとしても安心

(オロチ)の目覚め
そういう訳で原作よりも早く予兆を察知して対策が進んでいる
本来ならオロチの前触れとして現れるコダマの出来損ないみたいな魔化魍(空間タイプの都市伝説型)がぽつぽつ現れている辺り原作よりも事態は早く進んでいるのかもしれない
こんな状況で新たに弟子を鍛える余裕とかがあるかは知らないし、なんなら弟子入り話は諸々が終わってからとかの方がいいんじゃないすかね
でもそれを弟子入りを希望する側が考慮するかって言うとうーん……
と、いう事を悩む必要がないのが非猛士の鬼の気楽なところなのだ


そういう訳で原作で起きる諸々を省略しつつオロチ戦に向けて進みます
朱鬼さんは鎧を盗まず普通にノヅチを倒すし弟子周りの話には主人公が目を向ける理由がないしね
轟鬼くんの踏み潰されイベントだけが心配だけど肉体の代わりなどいくらでもあるのだ
そんなふうに恐らく響鬼編もつつがなく終幕に向かう事になりそうですが、そんな退屈なお話でも良ければ次回も気長にお待ち下さい

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