オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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159 告げぬ思惑

鬼に変身した状態の人間は高い回復能力を備える為、例えば肩の筋肉が少し溶解液で溶かされたくらいの負傷なら何もせずにじっと我慢しているだけでもその内に治る。

治るのだが、それが魔化魍の退治が完了していない状況であればどうだろう。

グロンギにおいても似たような状況はある。

ゲゲルに支障を来す様なダメージを負っていたとして、制限時間内にゲゲルを完了させる事ができなければ自爆してしまう以上、無理を押してでもゲゲルを完遂させるために動くしか無い。

 

例えば童子と姫は鬼と対峙した場合、必ずしもこれを抹殺しておこうとしない。

故に、鬼が魔化魍の捕食行動を邪魔しない場合、隠れ潜んで回復に専念する事は難しくない。

だが、そうしている間、魔化魍は完全に野放しで人を食らう。

鬼に大ダメージを負わせる程度には成長した魔化魍が、だ。

人里から遠く、移動速度も遅い、などの好条件が重ならない場合、被害は大きなものになる。

或いは鬼に怪我を負わせたのが童子と姫で魔化魍はまだ自力で餌を捕獲できない程度に未熟であれば時間的余裕もあるだろうが……。

 

理屈の上で言えば、じっとしていても治る傷を早く治そうとするなら、負傷を回復する為に必要なエネルギーを外部から取り込めば済む話だ。

だが、食事というものはそう単純なものではない。

ものを食べて取り込み体内で分解する、という工程でも人間の肉体はエネルギーを消費するし、その間は内臓にエネルギーが回される事で思考能力にも運動能力にも多少なり支障が出る。

そして、急いで負傷を直さなければならない状況となればそれは安全な状況ではない。

負傷を治すための食事で命の危機に直面するなどという事になれば本末転倒だ。

 

故に、猛士の鬼が負傷を早急に回復させる為に食事を挟むとすれば、無防備な状態の自分を守る何かしらが必要になる。

それは古い時代においては呪いで作り出した強力な式神であり、鬼のなり手の多かった時代ならそのまま別の鬼だったかもしれない。

現代においては弟子やサポーターなどがそれに当たる。

鬼ならずとも、魔化魍を清める技術を持たずとも鬼を守るだけの力を得られるこの時代だからこその選択肢と言えるだろう。

 

だが、実際のところ負傷の回復の為の食事、というものはそれほど重要視されていない。

理由は簡単で、現代では戦闘続行が困難な鬼が回復を急いでまで魔化魍を追う、という事態があまり無い為である。

これはディスクアニマルや携帯電話の普及が理由に挙げられる。

もしもの時は他の鬼に助けを求める事が可能になったのだ。

 

鬼に変身した状態で携帯電話を始めとした通信機器を持ち歩くことは破損の可能性を考慮して少ないとしても、鬼が長時間連絡もなしに拠点に戻らなければサポーターから最寄りの支部へと連絡が向かう。

或いは、弟子もサポーターも居ない一匹狼タイプの鬼だとしても、本人が定期的に支部に連絡を行う習慣をつけていれば、もしもの時に支部の方で手隙の鬼を手配してくれる。

特に単独で魔化魍退治を行うタイプの鬼は支部との連携を密にする様に常から指導されている為、ディスクアニマルでの探索が完了し魔化魍や童子と姫を発見しこれを討伐に向かう際、支部に一報入れておく事になっている。

 

そういう事になっている、という事は。

つまり、しっかりとした報告はおろそかになりがち、という事である。

事後報告として清め終えた後に報告を纏めて行う事案が増え始めたのだ。

電話一本、メール一本入れる間に魔化魍によって人間が食い殺されている可能性を考えれば、鬼の側がそういう現場判断を下してしまう事もむべなるかな、という弁護もできなくはない。

故に現在では、単独行動の鬼には最寄りの支部から定期連絡が行われる事で状況を把握する形に落ち着いている。

 

しかしこの形式の場合、鬼の行動不能を支部が把握するまでに結構なタイムラグが発生する。

定期連絡を行う間隔は長すぎても短すぎてもいけない。

短い間隔で連絡を行っても魔化魍や童子と姫との戦闘中にあたってしまう事もあるだろうし、その誤報で本来のシフトでは休みのはずの鬼が駆り出されていてはまともに休めず体を壊し、その内シフトそのものが成り立たなくなる。

逆に間隔が長すぎれば不測の事態が起きていた時に対応に遅れが出る。

専門の連絡要員でも居れば良いのだろうが、そもそもこの時代には鬼のなり手どころか猛士そのものの人材も豊富とは言い難い。

魔化魍の性質上、下手な人間を雇って情報漏洩など起こしてしまえばそこから事態が急速に悪化していく事もありえる。

人手が足りずとも、厳選されたメンバーで回すしか無いのだ。

 

通常の怪童子と妖姫とは異なる強化種、武者童子と鎧姫。

これとの戦闘中に不覚を取った鋭鬼が偶然にも外部協力者と合流できたのは幸運だったとしか言いようがない。

鬼は負傷した場合にある程度までの怪我を安静にしているだけで自然に治す事ができるが、大きな骨折などの場合は、常人と同じ様に添え木などを行い、折れた骨が適切な位置で修復される様にしなければいけない。

あくまでも鬼の回復能力は人間の持つ治癒能力の延長線上にあるものでしかないからだ。

飛行中の劒冑の破損による墜落で運悪く腕の骨を砕いてしまい難儀していた所に遭遇できなければどうなっていたか。

 

童子と姫は音撃でなくとも物理的に殺すことはできるが、両手が無事、劒冑のアシストありでも苦戦した相手、武器どころか腕がまともに使えない状態で戦える相手ではない。

魔化魍が出てきてしまえばより致命的で、音撃武器無しでは何もしようがない。

複雑骨折からの高速治癒による骨格の変形は、場合によっては鬼の引退理由にもなる程の怪我だ。

構造が複雑でない骨であれば、変形後に一度折って再整形する事で戻る事もあるが……。

 

巨大な石を切り出した跡の洞穴で、降りしきる雨を横目に、ばちばちと音を立てる焚き火の上からこんがりと焼かれた塊肉を手に取る。

外部協力者が捕まえて捌いた猪の脚。

普通に考えれば中まで火が通るのに何時間かかるのか、というそれに、鬼に変身したままの鋭鬼が齧り付く。

鬼面に空いた口から覗く鋭い牙が、気持ち程度に火が入った塊肉をミチミチと音を立てて引きちぎる。

咀嚼も程々に再び齧りつく。

ばき、ぼき、という音と共に肉の中ほどにあった骨までもがかみ砕かれていく。

 

首から上の変身を解いた状態であったならできない芸当だ。

砕けた腕の骨は既に外部協力者の手によって形を整えられ、ある程度のものを持てる程度にまでは修復されたが、戦闘に耐えうる程の強度にまで戻っているかというとそうでもない。

人間として十分な強度にまでは戻っていても、鬼としての戦闘に耐えうるものではないのだ。

常人に換算して五百人分の剛力を発揮する鬼は、その力を支える為に当然それに見合った強度の骨格を備える。

 

故に、破損した部位を手早く戻す為に、修復に必要な栄養素を急遽取り込んでいるのだ。

鬼闘術以外で鬼面に口を作りそのまま食事をするこの技術は古い時代では珍しいものでは無かったが、飛車などのサポーターの補助が手厚くなり、携行食などが発達した現代では廃れつつある。

鋭鬼もサポーターや弟子を連れずに単独行動を行う為に便利そうな技術を片端から覚えていなければ知りもしなかっただろう。

見習いとして活動していた時期に、古い時代の神秘的な術を使う鬼が現役で活動しており、それに教えを請う機会があったのも大きい。

 

咀嚼されて嚥下された猪の脚が鋭鬼の胃の中で驚くべき早さで消化吸収されていく。

大腿骨を鬼の牙で噛み砕いた音に勝るとも劣らない、硬いものが砕ける、或いは無理矢理に変形していく鈍い音が鋭鬼の腕から鳴り響く。

治りかけていた骨が急速に修復されていく音だ。

消化吸収の為に消費されたエネルギーを除けば、鋭鬼は程なくして完全に元の調子を取り戻せるだろう。

 

そして、鋭鬼の食事風景を撮影する幾つかの機材。

よく見れば、鋭鬼の体表にも幾つかの器具が取り付けられている。

肉体の修復度を客観的に確認するための装置である、と、鋭鬼は聞いていた。

今は鋭鬼が乗り捨てた劒冑の修復を行っている外部協力者の提案で取り付けられたものだ。

 

鬼への変身を維持したままの食事、それによる急激な肉体の修復のデータを取りたい。

その協力者の願いを断る理由は無い。

珍しいケースではあるが、緊急時にこの手段が取れるに越したことはない。

それをこれから生まれてくる鬼の全てに伝えるというのは現実的ではないが、誰かがその手段を手に入れたいと思った時に技術として情報が残っていれば話は早い。

日々開発され続けている鬼の新装備も頼もしくあるが、古い技術の中にも使いでのあるものは多く存在している。

それを後進が学びやすい形でデータとして残しておくのは、今後の猛士の為にもなるだろう。

 

猪の足一本を食べ切り、横になる。

取り込んだ栄養が肉体を完全に回復させるまでにそう時間は掛からない。

日付が変わる頃には傷が治り切るだろう。

既にディスクアニマルも放っているという。

リベンジマッチだ。

薪の爆ぜる音と雨音を耳にしながら、鋭鬼は短い微睡みへと沈んだ。

 

―――――――――――――――――――

 

午前様になるとは思わなかったが良い気分転換ができた。

最近は会社経営とか、そういう小賢しいことばっかりしていたから現場で使われている劒冑の整備やら鬼の自己再生能力のデータ取りとか、戦いに近い場所での出来事に新鮮味が感じられる。

ヨロイツチグモとその童子に関してはそれほど見るべき点も無かったが、鬼としての戦闘力のみで戦う分には良い運動になった。

やはり体を動かしている方が性に合っている気がする。

 

体を動かして戦って思うが、やはり戦いの技術を磨く道に終わりは無いのだろう。

俺が保有する力は一部を除いて他の人間でも再現できるものでしかなく、仮に俺より長い時間、より高密度な修行や実戦経験を積んだ相手が居れば普通にそっちの方が強い場合も多い。

鬼としての戦いの慣れというか、洗練され具合に関しては特にそう思う。

最も、これは俺に限らず他のアギトなど、特殊な力を根拠とした攻撃手段を持っている戦士であれば似たようなものなのだろう。

 

鬼の戦闘力は掛け算式であり、生身の肉体が強ければ強いほど変身後の力に開きが出る。

卒業前の見習い弟子の変身体が童子や姫にあっさり撃退されてしまうのは元の鍛え方が足りないからだ。

だが逆に、元の肉体が如何に鍛えられていても鬼としての戦いの技術を磨かなければ鬼……音撃戦士としての一人前には程遠い。

一通りお師さんから鬼としての技術は教わり、稀に『もうお前に教えることは無いから来るな……いや、まだ危ういな、偶に来い』と言われる程度に鬼としての技術を習得している俺ではあるが、鬼として魔化魍と戦う経験が十分かと言えばそうでもない。

魔化魍と戦った経験で言えば、地元で魔石の戦士とアギトの力を使って無理やり魔化魍と戦っていた時期のほうが長いのだ。

何なら赤心寺で修行の一環として魔化魍と戦った回数の方が多いのではないか、という可能性もあるし、新設した臨獣殿ではカリキュラムとして人造魔化魍との戦いも組み込む予定なので直ぐに弟子や同門達に追い抜かれる可能性すらある。

 

無論、戦闘能力を幅広く一般の方々に付与する事で俺の心の安心を得る計画は続けていかなければならないが、習得した技術を正当に、より効率的に扱えるように鍛えていく事をおろそかにしてはいけないのだ。

その事を、援護ありとはいえ、深夜の視界の悪い中でもヨロイツチグモを清めてみせた鋭鬼さんは俺に教えてくれた。

しかも劒冑の修理と援護のお礼にたちばなで菓子を奢ってくれるという。

 

「夏物ってお持ち帰りできないのもあるんですね」

 

日を改めて、互いに空いた時間、なおかつ平日昼間で人も少なめなタイミング、たちばなにて落ち合う。

技術交流の関係でこの場に訪れる事は多いがそれほど表の店で食事を取ることは無い。

当然どれがお気に入りということも無いので、メニューを見ながら適当に、とも思えば、その場で食べるには良いが、お持ち帰りできる品はそれほどバリエが無い。

無い訳では無いが、それこの店じゃなきゃ駄目? みたいな気分にはなる。

ジルとグジルへの土産、休みの日にも製作所で頑張っている難波さんへの差し入れ、喫茶で働くFAGどもや占い師へのお駄賃代わり、後輩の指導やイクサスーツの調整に熱を上げているなごみさんへのプレゼントなどに期間限定のものなどあればと思ったが。

まぁたちばなは通年の商品も悪くないのでそれでいいか。

フルーツ大福とか無いんか、冷やしたやつ。

 

「まー、冷菓とかになるとな。店で食べて貰えるのが一番だから」

 

そういうものだろうか、と、疑問に思うも、この近辺で活動する鬼はすべからくちゃんと店で菓子を作って出してるとこの関係者なのだ。

実際に作る側かどうかはともかく、なんとなく客が何を好んで食べているか、みたいなのはわかったりするのかもしれない。

 

「しかし、俺も奢ってもらって良かったんですか?」

 

同席している仲村くんが申し訳無さそうにしているのを、肘で突いて黙らせる。

なんだよ、とでも言いたげな視線を無視。

 

「良いんですよね、お会計任せちゃって」

 

「勿論、ナゲキくんは最近頑張ってるから」

 

と、快く了承する青年から中年に差し掛かったくらいの男性、えーきっきこと鋭鬼人間態のエイキさん。

最近頑張ってる、の真相はと言えば、ナゲキこと仲村くんがシフト休みの日に積極的にヘルプに入っている事を指す。

ただでさえ殺人的な文字通りの鬼シフトにも関わらず、その隙間の僅かな休みに態々他の鬼の仕事の手伝いに顔を出す様子が度々見られているのだという。

しかもその情報にしたって、あおの方から来た、最近ナオが捕まんなーい! パパなんか知らないのー? という告げ口が無ければ発覚しなかった。

 

因みに、別に友人の仲村くんが職場で酷使されているからといって俺は別に憤慨したりはしない。

聞けばここ最近、現役の鬼の半分程が仲村くんと同じムーブをしているらしい。

ワーカホリックは良くない。

なお、仲村くんと同じムーブをしていない残り半分の鬼は体調を鑑みてサポーターやお弟子さんが無理矢理に休ませているらしい。

ワーカホリックは本当に良くない。

 

つい先日、関東支部のエースと名高いヒビキさんがお弟子さん候補らしい少年とキャンプに行ったのもその一環で、戦闘力のない少年の保護者として振る舞わせる事で魔化魍退治の現場に突入させないように、という差配であったらしい。

ついでに、お弟子候補っぽい少年との絆が深まって本当に師匠と弟子の関係になったら猛士としても嬉しいな、との事だ。

 

その上でなんでえーきっきが仲村くんにも奢ってくれるかと言えば、先輩としてのあれこれとかそういうのもあるが、えーきっきは世にも珍しい休みの日にちゃんと必要な分だけ休む鬼だからだ。

これは実に偉い。

先輩が率先して休日出勤とかサービス残業とかをすると、後輩もそれに倣いがちになる。

組織全体に健全な労働環境を作ろうと思ったら、まずは上司や先輩が率先してきちんと休む姿を見せる。

これがちゃんとできる組織は長持ちする。

短く見積もっても数百年単位で長持ちしている猛士がそれをできなくなりつつある現状は異常、という事だ。

 

「しかし最近、変種が多いですね」

 

全員が一通りの注文を終えた辺りで、仲村くんがそんな事を口にした。

俺がもとから持っていた知識の中には魔化魍の変種が作られている理由は存在していなかった。

無理矢理にこの世界の状況とすり合わせて考えれば、オロチ現象が発生する程に高まった穢を正常に清めるため、鬼がギリギリ倒せる範囲で魔化魍を強くする事で一度に清められる量を増やそうとしていたのではないか、と考える事もできる。

いわゆる、敵だと思っていた魔化魍側の黒幕も根っこでは猛士と目的を同じくする存在だった場合の説だ。

 

が、魔化魍は自然発生もする。

ヨロイツチグモやナナシ、オトロシなどの単純な強化体であればまだ良いが、下手をすれば猛士が捕捉する前に成長し切る可能性がある隠蔽性の高い都市伝説型などの発生は単純に脅威度が高い。

これははっきり言えば対処しきれるものではない。

ジェットババア類などの、噂の取っ掛かりを捕まえられれば大規模作戦でどうにかできるものならともかく、ウラセカイ、それも特定個人をターゲットにし、それの巻き添えを作る事で餌を捕食するタイプはそもそもの発見が難しい。

 

ウラセカイの発生原因と目されるウルマなる人物が実在するかどうかはともかく、異界系の都市伝説型魔化魍の発生理由は目星がついているのだ。

原因はマッドアークの大量発生と、その後一年以上の表向きの平和だろう。

表向き、というのが味噌で、この平和であるとされた一年もアンデッドによる人的被害がそれなりに発生している。

しかし、アンデッドという人類敵対種族の情報は一般どころか大概の組織に対して秘されており、正体不明の怪人、謎の怪我人、理由不明の失踪などが相次いで起きていたという事実だけが残されてしまった。

 

その恐れから生まれた穢はその大半が通常の魔化魍や未確認モチーフ、マッドアークモチーフの魔化魍へと生まれ変わり、しかし、それら過去に実在した脅威を連想する事すら恐れた人たちが、ある種の都市伝説に()()()しまったのだ。

ある種の法則性や手順、その結果だけが知られている、異界へと迷い込むタイプの都市伝説。

異界へ迷い込む、移動する、という一点のみに特化し、その後に惨たらしく死ぬ、などのオチが無い都市伝説に。

未確認は復活していない。

人を食らう白い虫の怪物も再び現れていない。

居なくなった人々は異世界に迷い込み、戻ってこれていないだけなのだ、と。

 

魔化魍の発生は、ある種の信仰のようなものだ。

知らないものの原因を思い浮かべ信じる事でそれを生み出してしまう。

人を殺す怪物、人を食らう怪物を恐れ、その復活を否定したいがために、死から目を背け、その死を隠蔽する怪異を生み出してしまう事もある。

既知の恐怖を否定する為に未知の危険を生み出し、確実に存在する災いから目を逸らす。

合理的ではないが、脅威に対抗する力を持たない人間は、最後まで穏やかな気持ちで居られる事を安全よりも優先してしまう。

というのが、アームドセイバー開発の為に足を踏み入れた吉野で少しだけお話をする事ができた現役の術者の見解である。

 

無論、他言はするな、あくまで個人的見解だ、という話なのだが。

組織としての見解でなく個人の考えで、それでいて他言するな、と、厳重な術的護りを持つ吉野のお抱え術者がその護りの中でようやく口にできた情報だ。

積み重ねた信頼が実を結んだと見るか。

されども本心も知れない外部の術者であっても腕利きであれば情報を多少なり共有しておきたい程の状態なのか。

 

「人間を襲うのが魔化魍だけじゃなくなってきてるからなぁ、魔化魍の側も、そういうのを意識せずにはいられないんじゃないか?」

 

とぼけたような、実際ありえなくもない様な事を口にするえーきっきも、どこまで本心を口にしているか。

口は災いの元、というが、魔化魍周りの出来事はそれが正しく現実になる。

原因に心当たりがあったとして、それをおいそれと口にすればそれは不安として伝播していき、新たな魔化魍を生み、或いはより強い力を与えかねない。

だから、魔化魍の発生理由とかその原因をはっきりと口にするものは猛士の中でも少ない。

研究職、或いは技術職の一部が一種の閉心術の様なものを施した上で、迂遠な言い回しやイメージし難い古い言い回しなどで情報が共有され、或いは現場一筋、という場合はそのメカニズムを知らない、という場合すらある。

 

「まぁそもそも、次に何が出てくるか、全部知った上で戦える方がおかしい訳ですし」

 

このままでは確実に破綻する未来が来る。

それを皆が薄々察しながら、はっきりと口にしないまま、それぞれに緩やかに対策を練り上げていく。

表面上緩い空気で動いている猛士という組織は、そうやって長年魔化魍から人々を守ってきた。

その背後には、やはりこの星を裏から支配する組織が絡んでいるのかもしれないが、彼らの奮闘も本物だ。

 

「出たとこ勝負で勝てるよう、備えを積んでいくだけの話です」

 

残暑の暑さを誤魔化す様にお冷を一口。

よく冷えた水と共に、彼らの助けにもなる、ちょっとした企みを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 





☆まだまだ教えることは山ほどあるぞと言ってくれる素敵なお師さん
勢いで鬼としての知識のおおよそすべてを叩き込んでしまったアホにちゃんとした倫理観をどうにかこうにか教え込むまでは死ぬに死ねないし下手に目も離せないのでもう来るなとは言い切る事ができない
そんな手のかかる弟子だがこいつを経由して現在の猛士がどう動いているかもわかるので全くメリットが無いわけでもないのも困りもの
今の弟子がシュキ最後の弟子か……みたいに噂になると困る

☆ワーカホリックの疑いのあるナゲキこと仲村くんとその他鬼の方々
まぁなんでそういうムーブになっているかって言えば、夏の魔化魍の増加具合を見るといつぞやの東京大襲撃(二回)とか同時多発マッドアーク襲撃とかを思い出してしまうため
戦えずにトラウマを負った人も居れば守れなかった事を心の傷とする人も、それを胸に戦いに挑む人も居るのだなぁ
お弟子さんも基本的にそういう場面に立ち会っているので本当にそろそろ危ないな、という状態にならない限り止めない
因みに別にほかの鬼のヘルプが無くても大丈夫だが、結果的に魔化魍が清められる速度は早くなって鬼の負担は減っている
減っているが休みの鬼がしっかり休みきらないので最終的な負担度としてはトントン
仲村くんはこの後あおちゃんに連れて行かれて強制的に一回休み
ヒロイン度数を高めておけば自分を人質に相手の行動を阻害する事ができるのだ

☆単独行動が許されているだけあって実は自己管理能力の高い鋭鬼さん
休めるときは休むのが最大のパフォーマンスを発揮する秘訣
……ということになっているが、本編中に披露した様に特殊な術を多少心得ているため、休暇の間も自分の負担にならない範囲で他の鬼のサポートをしていたりする
飛行能力を備えた装甲服である劒冑を普段遣いしているので、体を休めるための小旅行で遠出するのも楽だし、その先で現地の鬼と偶然出くわして少し力添えをしたりする
多分ディスクアニマルとか無くても御札で式神を作れる程度の術は使えるくらいのマルチプレイヤー
あまりにも情報が、というか設定が無いのでスーツ流用の縁で現役時代の朱鬼に少し技を教わっていた、ということにした
ので、今作内では斬鬼さんと同門

☆本作魔化魍の特性の関係で対ミーム関連部署みたいな事を普段からしないといけなくなってしまっている猛士とかいう大組織
そんな職務環境で最低数百年続いてるんだからすごい
真面目にやれよ、みたいな緩めの雰囲気なのは真面目で硬い雰囲気で仕事してるとそれが魔化魍にどんな影響を齎すかわからんからという一面がある
薬を使わずに生来の気性とか教育とかでゾナハ病の施設職員みたいな事をしていると考えればどれだけ過酷な職場かわかるだろう
鬼出発の時の火打ち石カチカチの切火とかもこの世界だとマジ魔除け作法なので欠かしてはいけない
宗家の鬼である天然くんとかを見るに多分先祖代々猛士の構成員とかな連中は意図してネアカな人と結婚して遺伝子レベルでネアカだったりするのかもしれない

どうにかこうにか時間を進めたので、次回からはほぼ対オロチ準備になるかな
響鬼編のオチというかまとめ方は完全に決まったのであとはスムーズに進むはず
まぁでもサンブレイクがクッソ面白い上にバトルアライアンスの発売日もマジ迫ってきたのでそんなに速度は上がらないと思います
すごいよねモンハン、一つ武器に集中してプレイしてると他武器を始めた時に別ゲーを始めたみたいな新鮮さ出るのほんとすごい
そんでバトルアライアンスはもう言わずもがなだよね……
ブレイカー3の時に散々SD操作させろやって言ってたのをGジェネばりの機体数でやらせてくれるのに期待しない人とか居ないでしょ
そんなのがもう発売まで二週間とかワクワクしかしねぇー!
みんなもやろうね……うりあげは続編にえいきょうするからね……
ガンダムブレイカーの悲劇を繰り返しちゃあいけないよ……
そんな感じでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい

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