オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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152 備える組織

人間大の大きさのものが倒れ込むと、存外大きな音が響く。

それは獣や虫がざわめき、木々が風に揺れて木の葉を擦れ合わせる森の中であってもそう変わりはしない。

汚れた布切れの如き色合いの糸に絡め取られ、その場に立ち続ける事すら出来ずに倒れ伏したのは、魔化魍の親代わりである怪童子と妖姫。

木々の中に紛れるように聳えるのは、樹木と牡蠣を合わせたようなグロテスクな巨体、魔化魍・ヌリカベ。

人間や動物を喰らい育つ、自然界においては鬼を除いて天敵らしい天敵も存在しない怪物である筈のそれは、その場を微動だにしていない。

 

いや、できない。

物理的に拘束されているヌリカベの怪童子や妖姫と異なり、その身体には行動を封じる為の拘束具らしきものは一切取り付けられていない。

あるいは、そのようなものが取り付けられたとして、今のヌリカベの巨体であれば大凡の拘束は力づくで振り払われ意味をなさないだろう。

 

何かが、森の風景に溶け込む何かが居る。

並外れて優れた知覚能力か、第六感でも持っていない限りは、僅かに存在する風景とのズレを認識する事すらできないだろう。

ちょっとした一軒家程度はあろうかという巨体を持つヌリカベ。

その足元に立ち、無造作にその身体に触れている何者か。

 

ヌリカベの肉体に、目に見える様な拘束具は存在しない。

姿すら見せぬ何者かに触れられた箇所、見えない何者かの手によって隠された手のひらに収まるサイズの輝く印。

封印の紋章。

その印は確かに、魔化魍であるヌリカベの行動を、いや、現状からの変化全てを封じていた。

 

封印の紋章を隠す手から光が漏れる。

紋章の輝きが増しているのだ。

しかし、それはより強い拘束を意味するものではない。

如何なる作用か、ヌリカベの肉体はまるでテレビのチャンネルを連続で切り替える様にその姿を次々に変化させていく。

僅かに蠢き、色が変わり、様々な鳴き声が漏れ、或いはヌリカベですら無くなり……。

ぶつん、と、電源を落とした様にその姿を消した。

枯れ葉や土塊に戻りすらしていない。

 

「む」

 

ぬりかべを拘束していた何者かの輪郭が、その場にしゃがみ込む様に揺れる。

 

「何でも試してみるものだ」

 

拾い上げたそれは、持ち主が見えないが為に宙に浮いている様に見えただろう。

グロテスクな外観のヌリカベ。

それをシンプルな線でレリーフとして刻んだ、一枚のメダル。

きん、と、弾かれる様に宙を舞い、消える。

見えない何者かが掴み取ったのだろう。

同時、鈍い音とうめき声。

武者童子でも鎧姫でも無かった童子と姫が、まるで見えない獣に噛み砕かれる様にして絶命したのだ。

下手人の姿はやはり見えず、僅かにその足跡だけが痕跡として残るのみ。

 

痕に残るのは童子と姫が潰された体液のみ。

それも僅かな時間で土に紛れて消える。

深い森の中で人知れず行われた、魔化魍を利用した実験。

その成果が、何らかの形で人前に晒されるには、しばしの時間を必要とするだろう。

 

―――――――――――――――――――

 

街を一人歩く。

移動に使用したロードインパルスは光学迷彩を起動した状態で民家の上をノシノシと歩いて付いてきている。

忍び足モードで歩かせている間、こいつは少し浮いて自重を誤魔化している為に、一般住宅の屋根を歩いても破損させる事はない。

 

信号待ちの間、目の前を人を乗せた一機のヘキサギアが横切る。

緑色に暗めの赤いラインが入ったボディカラーのそれは、中型バイク程度の大きさしか無いが確かにボルトレックスだ。

当然、その搭乗者は俺の知らない他人。

俺の身内や友人知人の中で、あの普及型にわざわざ乗っている奴は居ない。

 

信号が青になる。

スクランブル交差点を歩く中、薄い稼働音と共に俺よりもかなり目線の高い老人とすれ違った。

足を患っているのか、或いは単純に横着しているだけなのか、その老人は青いボディを持つ二足歩行機械、スケアクロウに乗り、小さく上下にゆすられながらうつらうつらと船を漕いでいる。

 

少し離れた路肩にパトカーと乗用車が止まっている。

パトランプに爪を立てるようにして留まっているのは、ちょっとした猛禽類くらいはある機械の鳥、スニークサイト。

試験運用中なのだろう、スピード違反を上空から見つけたりしたのか。

使い方は色々あるだろうが、それを考えるのはお客様それぞれの創意工夫にかかっている。

 

しばし歩く。

目的地は猛士の関東支部……ではなく、カフェ・マル・ダムール。

俺も素晴らしき会の一員であるので、たまにはなごみさん以外にも顔を見せに行かなければならないのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

基本的には徹頭徹尾人類の為に活動する組織が二つも存在している辺り、東京は実は治安が良いのではないだろうか。

まぁ実態は、常から魔化魍退治だけで手一杯の猛士と、本格的な戦力が結局の所イクサしか存在しない素晴らしき青空の会なので、頼りになるかと言えばそれほどでも無かったのだが……。

だが、最近ではBOARD製ライダーシステムの適合者が二人(片方は研究に専念して貰っているので実働は一人のみ)も増えた。

素晴らしき青空の会だけで見れば戦力三倍……いや、二倍の戦力である。

 

馬鹿がよ、とは言ってはいけない。

イクサは量産しようと思えば量産可能だが、即応性を考えて使用者の認証システムを搭載していないので盗難されたりすると大事になりかねない。

俺の知る未来においてボタンむしり妖怪の犯行を幾度となく揉み消していた素晴らしき青空の会ではあるが、基本的に社会的混乱を招くような活動はしていないのである。

イクサを増産するにしても、持たせる相手は慎重に選ばなければならない。

 

「君はカウントしないのか」

 

「ぼかぁイクサである前にその他諸々の戦士でありますから。あくまで予備人員と考えて貰えば」

 

問うてきた嶋さんに砂糖たっぷりのカフェ・オレを口に運びながら答える。

実際、嶋さんの権力財力含めて便利使いさせて貰ってこそいるが、それに見合うだけのリターンは返しているつもりだ。

潰れた他組織から優秀な研究者と戦闘員にオペレーターまで連れてきた。

それに伴いイクサシステムのアップデートも行われ、BOARD製ライダーシステムやデッキシステムと同じくベルト部分を省略した作りにしたお陰で持ち運びが非常に楽になった。

少なくとも鞄の中に入れておいたはいいが、取り出す時にもたついてしまって変身が遅れる、なんて事態は避けられるだろう。

肉体の頑丈さを活かしてイクサシステムのOSのアップデートにも付き合ったし、なごみさんの心身ともにケアをする事で戦士としての寿命を大幅に伸ばすことにも成功している。

 

「大体、ウォーメイジシリーズはどうしたんです。設計図も基礎理論を纏めた資料も渡してるじゃないですか」

 

「今、量産検討中ではあるんだが……基本的に、戦闘員をそれほど集めていなくてね。技術検証の為に作ったものを新人の訓練に使用しているくらいかな。一定の実力が付いたら貸与するかもしれない」

 

涼しい顔で答えられてしまったが、何をそんなに能天気にしているのか。

 

「難しい話なのさ。イクサやヘッツァーを警察に提供しよう、という話もあったが、警察の採用している装甲服にしたところで大幅に性能が違う訳ではないし、あちらは盗難防止の為の認証システムがガチガチに組まれている。用途が違う訳だ。対ファンガイアシステムとしてはイクサの方が先を行っているが……」

 

「絶対数が少ないし、強い個体は目撃例すら稀ですからね」

 

「ならば自衛隊に、とも思うが、自衛隊は数年前の不祥事があるから大規模な装備の更新も難しい。資金をこちら持ちにしたとしてもね」

 

「あー……」

 

自衛隊に所属していた悪のマッド才媛が警察から新型装甲服の設計図を盗み出した挙げ句、非道な人体実験を繰り返し、最後には研究施設ごと跡形もなく消滅した、とかいう、そこらの都市伝説も真っ青な、自衛隊発足以来最大級の汚点とも言える事件だ。

これのお陰で一時は自衛隊の存続すら危ぶまれた、などという噂がまことしやかに語られている。

 

研究所らしき場所も資料も焼失、G3やG1の戦闘記録上にのみ関係者の証言が残っている程度で、マッド才媛がやらかした非人道的人体改造手術や脳開発などの証拠は出てこなかった為に、どうにかこうにか幹部一人の暴走、という事で話がついたらしいのだが……。

これのお陰で、警察どころか山岳警備隊にすら装甲服が配備されている様なこの時代に、自衛隊には何故か動力付き装甲服すらまともに配備されていない、とかいうおかしな状況がまかり通ってしまっているのだ。

まったく、迷惑な怪人物も居たものである。

 

「戦闘員が必要なら言っていただければ派遣しますよ」

 

「あの会社のように、かね?」

 

ちら、と、嶋さんの視線がカフェの外に向けられる。

玄関先、客の出入りの邪魔にならない場所で静かに伏せている紺色の装甲を持つ四足歩行の機械……というか、はっきりと機械の犬。

スケールとしては成犬のドーベルマン、見た目もメカドーベルマンといったところだろうか。

スニークサイトと同シリーズ、いわゆる機能限定版とでもいうべきヘキサギアの一種、ヘキサギアオルタナティブシリーズのトラックダウンだ。

 

「使ってもらえているようで」

 

「出資させて貰っているからね、形ばかりだが」

 

「面倒な手続きを手伝って貰っているだけでも十分ありがたい」

 

「順調なようじゃないか、ブレインスクラッチは」

 

「浦賀社長の手腕ですよ」

 

まぁ研究室に籠もってるから社長としての業務なんてしてないけどなあの博士。

ヘキサギアが売れていると言っても買い手は殆ど俺。

浦賀研究員に提供した会社──ブレインスクラッチを立ち上げる時についでに立てた小規模な会社──ロボットレンタル株式会社、通称RRKKでヘキサギアを買い付け、これを格安でレンタルして一先ずヘキサギアという存在の知名度を上げている段階に過ぎない。

 

実際、ヘキサギアのレンタル事業はブルーオーシャンと言っても良いし、情勢も味方している。

それは巷で定期的に現れる魔化魍や最近は減った野良オルフェノクに対する自衛、時代を先取りした自動運転車両としての側面などもそうだが、ある程度の命令を聞いて勝手に仕事をしてくれる機械というのは需要が高い。

既に一年以上前の話ではあるが、マッドアークの襲来で多量の死者が出たのが原因だ。

 

あの事件での死者は国内では25万人程度で済んだが、あの事件の被害者、という視点で見るとその倍は居るとされている。

単純に遭遇しなかった連中はそうでもないのだが、遭遇こそしたが生き残った人の中には、色々な理由で人間との接触が難しい状態にある場合があるのだ。

逃げ延びる為に誰かを囮にしたとか、見捨てて逃げたとか、そういう場面を見てしまったとか。

 

人間不信、或いはそういう事実が無くともそういう事をしたと見られての迫害。

元いた地域には住むことすら出来ないし、転居先でも人の目が怖い、人と接する事ができない、という人に対して、ヘキサギアはうってつけ、という訳だ。

なので、今一番需要があるのは二足歩行で普通に歩道を歩けてマニピュレータを利用して買い出しなどができるスケアクロウのレンタルだったりする。

家事全般の実働データが実家で運用していた時期のものをまるごと運用できるので、実質なんでもできる家政婦の様に扱えて、これを一台購入すれば利用者は外に出る必要すら無い。

 

次点は警察で試用中のスニークサイトだろうか。

これは自律式の監視カメラ兼警備ドローンの様な運用を試されている。

目玉のつもりで出したロードインパルスやボルトレックスの普及型に関しては若者や新しいもの好きの金持ちが面白がって遊んでいる程度か。

 

商売として成り立てば普通の一般人としての生活が楽になる。

そうでなくても、最低限危機から逃れる事ができる程度の技術を世間にばらまく事もできた。

普及型がもっと広まれば、ミラーワールドを拠点として運用しているオリジナルの戦闘用ヘキサギアをおおっぴらにこっち側で運用できるようにもなろう。

 

「それで、今日は何をしに? 会の体制批判をしに来た訳ではないだろう」

 

「ええ、ファンガイア関連でないのは恐縮なのですが」

 

「良いさ。もう連中だけが我々の脅威ではない事は理解しているつもりだ」

 

「助かります、実はですね……」

 

―――――――――――――――――――

 

とりあえず、青空の会の方では今訓練中の新人君ちゃん達にヘッツァーの変身デバイスであるヘルメットを常時持ち歩いてもらう、という形で落ち着いた。

今は魔化魍の出現頻度が上がっている、程度の話で済んでいるが、夏の魔化魍がどうなるかはわかったものではない。

人間サイズの魔化魍であるが故に、今よりも余程高頻度に出現し始めたりしたら、対抗する戦力はいくらあっても足りないし、未熟な戦士を未熟なまま死なせる訳にもいかない。

ウォーメイジシステムは必殺キックやビームなどの無い射撃機ではあるが、拘束弾などを中心に足止めしながら逃げる、或いは時間を稼ぐのに最適だ。

未熟な戦士でも死なない程度に戦えるだろう。

 

──ところで、夏の魔化魍、という存在がある。

通常の魔化魍と比べて小さく人間大のサイズだが、自然発生やクグツによる養殖によらず、自らの断片を媒介に増殖する能力を備えるという。

それ故に音撃弦や音撃管などの斬撃刺突、銃撃を鬼側は封じられてしまう為に、得意の音撃武器が何であるかによらず、夏の魔化魍を相手に戦う場合は音撃鼓を用いて戦わなければならない。

 

「そういう訳で、ブッキーはお借りしていきますね」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

「あの、小春さん、その呼び方はちょっと……」

 

立花支部長に見送られ、抗議の声を上げるイブキ、もといブッキーとその助手を伴い、ハイエースに乗り込みいざ鎌倉。

鎌倉ではない場所に向かう途中、後部座席でニーくんを膝に乗せた助手ちゃんにも声をかけておく。

 

「天美ちゃんもトラスターはちゃんと使えてるかな?」

 

「はい、お陰様で」

 

「そりゃあ良かった。今回の作戦はブッキーが主役ではあるけど、イレギュラーが起きる場合を考えればUギアの使い手が一人は居た方が良いからね。本当はブッキーが劒冑を使えてれば良いんだけど」

 

嫌味のつもりは無かったのだが、助手席のブッキーは責められているように聞こえたのだろうか、反論が返ってくる。

 

「あれ、やっぱり使うの難しいですよ。一輪ですし」

 

「二輪を普段遣いしてる人は特にねー。仕方ないっちゃ仕方ないか」

 

そこは練習次第だが、実のところを言えばオートバランサーのお陰で普通の一輪車に乗れなくても乗れたりするのだが、やはりエンジンの力で高速走行する乗り物が一輪、というのは恐ろしいものがあるのかもしれない。

量産型は製造と整備を簡易にする為にバリエを増やさない方針だったが、二輪型や四輪型も検討するべきだろうか。

ちょっとしたバギーくらいのサイズの方が大出力にできるけど、小回りを考えると単輪車くらいが丁度いいと思うんだけどな。

 

「えーきっきは面白がって使ってくれてるけど」

 

「あの人は……器用な人なので」

 

言葉を濁したが、えーきっき──鋭鬼さんは他の鬼に比べて少し小柄なので、変身後の肉体を更に延長できる劒冑は具合が良いのだろう。

元は170くらいしかない身長も劒冑を着込めば他の鬼に並ぶかな、くらいまで伸びるし、単純に生身変身に最新式の変身ツール(難波さんの所で更に新しいものも出たが、俺の作って提供している中では最新式だ)で重ねて変身しているので身体能力も並の鬼のそれとは比べ物にならない。

元から一匹狼的に活動している人なので一人で色々と使いこなしており、Uギアなども大量導入された直後に猛士メンバーの多くが戸惑っていた中で真っ先に使い熟していた、変化に強い鬼の一人だ。

 

Uギアを纏った状態で量産型の劒冑、○四式竜騎兵の待機形態である原動機付き単輪装甲車に跨り、魔化魍を発見するや否や劒冑を装甲して鬼に変じ、目標まで文字通り飛んでいく姿は正に最先端を行く新時代の鬼の象徴とも言えるだろう。

一人だけ放送時間帯も媒体も何もかもが酒に酔った大学生の悪ノリ闇鍋みたいな絵面になっているが、日々混迷の度合いを増していく時代の中にあってはこれくらいのためらいの無さが欲しいところだ。

鬼になっていなかったらアクガタの拳士としてスカウトしていたかもしれない。

 

今後増えてくる新しい鬼は、こういう変化に強いものになるだろう。

ブッキーは鬼の中でも段違いに若い部類だが、彼自身が鬼の宗家出身であるために鬼としてのあり方という点で見ればとても古い方に分類される。

これは年齢がどうこうというより、新しい価値観を取り入れる能力の違いというか。

鬼になってまもなく魔化魍以外と戦う場面が多くあった、とか、鬼でなくとも戦えている戦士を知っているとか、そういう部分が大きく関わっているのではないだろうか。

 

「新しい道具を使い熟す修行も必要だよ。劒冑は外部……というか俺の持ち込みだけど、猛士だって新装備の開発は日々続けてるんでしょ? いざという時に、新しい武器は慣れてないので使いこなせませんってなったら悔しくない?」

 

元々猛士は()()()()()()()()()()()()の開発にも熱心だ。

結果としてこれを使いこなせたのはヒビキさんだけだったが、もっと早い段階で似たような装備に慣れておけば、これを使いこなせる鬼は増えたのではないだろうか。

 

「出ますか、猛士純正装備」

 

「俺よりブッキーのが詳しいでしょ」

 

ミスター小暮は、保存されていた『猛士之刀』の解析と再現に勤しんでいる。

こればっかりは猛士が長年研究解析を繰り返してきたものである為に俺にもその存在が秘されているので一枚噛む事すらできていない。

というか……。

記憶にある限りだとこの現代式アームドセイバー、猛士側で作られた時にはその内包する波動が強大すぎる故にヒビキさんですらまともに使い熟す事ができず、洋館の男女が特製のウニを食わせる事でその強大な波動を抑え込ませ、結果として制御が可能になった、みたいな顛末だった筈だ。

 

再びアームドセイバーが猛士の元に戻って来るまでにヒビキさんやトドロキさんがミスター小暮に気の制御の特訓を受けていたが、これがどこまで影響していたものか。

言ってしまうとG3Xと似たような経緯を経て完成したのだ。

一応、ミラーワールド越しに製造工程を見ているのでレプリカは作れるが、制御可能な完成品を作ろうと思ったら魔化魍側……というか、洋館の男女側の技術を手に入れるか、さもなければ別アプローチで内包する波動を抑制する必要があるだろう。

 

「難しいことじゃないよ。管の鬼でも弦や鼓の練習をするのと同じ、鍛錬の一種だと思ってくれれば。今回の事もね」

 

―――――――――――――――――――

 

「交路?」

 

勝手知ったる警視庁。

その内部で、昼食を終えて休憩時間にも関わらず資料を読み込んで渋い顔をしていた中年男性が、こちらを見て小さく驚きの声を上げた。

見慣れた……というには、ここ数年では顔を合わせる機会も少なかったその顔に、片手を上げて挨拶を返す。

 

「はぁい父さん、元気してた?」

 

「悪くはないが……なんだ、また届け物か?」

 

「ぼかぁ今東京暮らしだよ。届け物なら母さんが直接来るんじゃない?」

 

「ああ、そうだった。どうも、厄介事が立て続けで、時間の感覚が無い」

 

疲れたように目元を揉む。

東京と一言で言っても、狭いようでまぁまぁ広く、そこで起きる未確認扱いの事件は多く存在する。

奥多摩の方まで行けば魔化魍の発生地域になるし、野良オルフェノクの起こす事件も物騒さはともかく数はそれなりだ。

最近では野良アギトなどが軽犯罪を起こしたなどという話が上がってきているらしく、それに対応する部署として半ば固定されてしまった未確認生物対策班は大忙しであるという。

もう少しすればアギト部隊と装甲服部隊が融合した専門部署が設立され、長らく地方から出向していた対策班メンバーも一部を除いて地元に帰れるのではないか、という話もあるのだが……。

申し訳ない事に今年も全国各地で魔化魍が大量発生するのだ、スマンな。

マッドアークと続けて全国区での事件となれば、今度こそ対策班メンバーも各種装備と対応ノウハウを地元に持ち帰る形で戻される事になるだろうからもう少しの辛抱だ。

 

「それで、その後ろの二人は? 新しい弟と妹か? 義理の息子か義理の娘か? ちゃんとした人間に見えるが」

 

「やだなぁそんな頻繁に家族が増える訳ないじゃないか。このお二人は、今回の合同作戦でお呼ばれした専門家さんだよ」

 

ぺこり、と、頭を下げるブッキーと助手ちゃん。

それに小さく会釈を返して、何かを思い出す様に指を弾く。

 

「合同作戦……ああ、そうだった。……いや、待て、なんでそんな事をお前が?」

 

「まぁまぁまぁ、そこはおいおい説明する事になるから」

 

昼休憩の時間が終わり、次第に部屋の中に、対策班本部の中に人が満ちてくる。

アギト部隊や装甲服部隊の人達も居るため、結構部屋はぎゅうぎゅう詰め。

父さんに手を振ってその場を離れ、班長(松倉本部長ではない。彼は少し前に無事生きたまま定年退職を迎えることができたのである。良かったね)の横に控える。

 

関係するメンバーが集まり、会議が始まる。

ここ最近、首都高を始め、各地の高速道路に出現する謎の高速移動物体への対策会議だ。

オルフェノクや魔化魍、稀に現れるファンガイアのどれとも異なり、見た目だけで言えば人間の老婆や老爺、子供などで構成されてる為に、すわ未確認生命体の再来か、と噂されているらしい。

これに関しては対策班ではなく別の組織が専門で扱う事件ではあったのだが、今回に限り警察の助力無くして市民の安全を確保した状態での事態の収束が難しいという事で、組織の垣根を越えた合同作戦を行う運びとなった。

ついては、今回の作戦の為に出向してきた人員の紹介と、合同作戦を契機に導入される事になる諸々の新装備の仕様説明と実地での使用に関するアドバイザーをお連れしている、という。

促され、前へ。

多くの警察官の方々の視線が集まる。

怪しむような視線はあるが、この場に居るには若すぎる事への疑惑であり、それも助手ちゃんと比べればまだマシなので薄い。

少なくとも、二十二号であると看破されている様子もない。

咳払いをして、挨拶。

 

「えー、この度、皆様の使用する新装備を提供させていただきました。ブレインスクラッチ開発班主任補佐、兼、ロボットレンタル株式会社、略称RRKK代表の小春交路です。よろしくおねがいします」

 

 

 

 

 

 

 






いろいろやるのだ



☆妖怪のせいなので法的根拠が無く無罪な謎の光学迷彩戦士
技術的進歩により眼だけが光ってるなんて事も無く背景に溶け込んだままある程度の戦闘機動が可能
チェーンガンをバックから出されても安心
魔化魍ウォッチもオーズドライバーも無いので現状魔化魍メダルも研究材料程度の意味合いしかない
しかし、ウォッチと言われるとライダー世界では意味深なものに聞こえてしまうのは難しい話
メダルと言われるとオーズにも絡むしメダルを運用する為のウォッチと言われるとん我が王案件に繋がってしまう……
夏が控えているので色々やる
原作での諸々の魔化魍の実験などは全力スルーだ
どうせ鬼の処理能力でどうにかなる程度の実験だろうしね

☆謎の大富豪嶋さんと謎の新興企業ブレインスクラッチ
実はそれほど資金面での援助は行わず会社を起こす手続きを少し手伝った程度なんだけど、嶋さんが絡んだ会社だぞ、という周囲への威嚇の意味もある
これでD&Pが絡んで因縁つけてきてくれれば反撃でぐしゃぐしゃにできる
社名は社屋の元の持ち主スマートブレインから半分、ゲキレンのスクラッチをくっつけて
スマブレのロゴの下半分の下にスクラッチのロゴがくっついた様なロゴで、スマートブレインとの関連性が疑われているがそんな事を現社長に聞かれても一切知らない
最終的な目標の一つとして電子移民なる構想を掲げており、社外秘だが社員の人格データを定期バックアップしているサーバーに一つの仮想都市を築くのを小目的としている
電子世界なら怪人の襲われてうっかり死んだりもしないからね……メガヘクス?そうねぇ……
青空の会では男女の新人が一人づつ、戦闘もできそうなのが入ったけど、長い戦闘経験と全盛期の肉体を何故か取り戻したイクサの人が居る為予備兵装のウォーメイジ・ヘッツァーの装着者にしか今の所なれていない
イクサ一人とヘッツァー二人の組み手などが行われているが、この時点で新人ちゃん達は元の鼻がどれだけ伸びていようともバキバキに圧し折られているだろう

☆変わりつつある街の景色
ブレインスクラッチが皆様にお届けする新時代のデバイス、ヘキサギアはその存在を脳髄に爪痕の如く刻み込む
みたいな触れ込みで出回っているけど、現在の最多出荷は高速移動とかもできない生活補助型OSを組み込まれたスケアクロウのみ
人型からかけ離れているから人間恐怖症になった人達も気安く使えて人間にできる大半の事はできる便利なお手伝いロボとして大人気
シニアカー……電動カートや電動車いすの一種としておじいさんおばあさんへのプレゼントとしてもオススメです
実物ヘキサギアのスケアクロウに大きい方のFAGを乗せたくらいのサイズ感だが、緊急時にはリミッターが外れて搭乗者と共に高速で逃走したりと安全性はばっちり
メガヘクス?そうねぇ……
とはならない安全装置が搭載されているが、この部分は表向き発表されている設計図には搭載されていないので他社が解析して作った複製までは知らない

☆ブッキーと助手ちゃん
基本鍛えている鬼には親近感からかやや気安い上、ブッキーことイブキはたぶん同い年くらいなので余計気安い
流石に十も年上のヒビキさんをビッキーとか呼ぶのははばかられるからね……
ただしザンキさんは同門という事もあり親密度が上がるとザッキー呼びになる
宗家の鬼である為にイブキ自身は外部協力者から提供された装備に対して反応鈍目、というか、そもそも単輪自動車という形状が良くなかったね……二輪の愛車があるので二輪型の装備とかあると良いかもしれない
天美あきらは復讐者なので鬼になれない段階でも魔化魍と戦える装備は基本的にばっちこい
ばっちこいは良いんだけど、特定の魔化魍に対する復讐心じゃなくて魔化魍全体に対する復讐心なので最終的にこれを維持できず他の道を見つけ出す原作ルート濃厚
ハリケーンに家族を奪われたからハリケーンに復讐します、でも家族を奪ったハリケーンは雲散霧消したし新しく発生したハリケーンは当然家族と関係ないし……みたいな話なので当然といえば当然

☆主人公の父親も所属している対策本部だか対策班だか
クウガ時点では対策本部だけどアギトくらいの時期におそらく対策班としてまとまったと思われる
一年事件が無い年とかあるからそこで解散しろよという話もあるが龍騎の年にはまだオルフェノクが蔓延っていたしそれ以外の年にもファンガイアがちょくちょく目撃されてるし被害を出すし、油断してたらマッドアークが25万人くらい食い殺すし……
去年もなんだかんだアンデッドが出てたけどこの時は警察が圧力かけられて、逆に圧力をかけられたからこそ何かある……!みたいに現場が抵抗して残ってた
もうそろそろ東京にばかり注力もしていられない、みたいな形になって一部警察の象徴みたいになってる一条さん以外はたぶん地方に戻れる
戻ったら?現地警察の中で独自に装甲服部隊を作る上での中核にならんといかんよ
その前にちょっと魔化魍について学んでって現地鬼と協力できるようになろうね



次回は少し本筋から離れている気もするけど出した以上放置もできない都市伝説魔化魍に対してチームで対抗するぞ!
みたいな話
なんでこのタイミングで、みたいな話は次回
そういう訳で次回も気長にお待ち下さい

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