オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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二人で突き抜けるノンストップ!仮面ライダーSPIRITS その十六

夕暮れ、闇に包まれ始めた赤心寺に、人ならざる影が蠢く。

地獄谷五人衆、ゾゾンガー、ストロングベア。

先のヘビンダーと同じく、市街戦でのどさくさに紛れて黒沼流の拳士と入れ替わり侵入を果たしていたのだ。

 

彼らに与えられた任務は何か。

仮面ライダーの抹殺か。

スーパー1一人に殲滅させられる怪人達の劣化コピーだけで?

黒沼流の殲滅か。

毒の一つも撒けば容易く滅ぶ相手をわざわざ怪人で?

或いは、明確な使命無く、魂無き人形に過ぎない筈の彼らの首領に宿った怨念に突き動かされているだけなのか。

武人として、拳法家としての魂を失い、しかし、その優れた身体能力を駆使し、薄暗がりに紛れてその凶刃が黒沼流の拳士達を一人、また一人と引き裂いていく。

 

赤心少林拳黒沼流は殺人拳。

しかし実際にその手を血に染めた、殺人経験のある人材は少なく、また、人間を超える力を持つ怪人との戦闘経験などは当然望むべくも無い。

予め、怪人との戦いを想定した修行を積んでいる訳でもない彼らの中に、実際に怪人と相対して生き残れるだけの実力を備えている者は殆ど存在しないと言ってもいいだろう。

この時点での彼らの大半は、簡易な改造を施された戦闘員を相手にするのが精一杯という程度の実力しか持たない。

まして、自分たちの根城に敵が忍び込む、という状況を想定して常から警戒などしていよう筈も無く。

鍛え上げた技と力で抵抗する事すらできない。

ゾゾンガーとストロングベアにしてみれば、戦闘とも言えないだろう。

 

「──」

 

滝の下、力任せに捻り潰した黒沼流拳士の死体を水に沈めるゾゾンガーの耳に、ざり、と、砂を踏む足音が響く。

武人としての記憶も何も無い、しかし、それ故に機械的な探知能力に優れるゾゾンガーには、それが人間の出す足音でない事が即座に理解できた。

襲いかかるでも無く、未だ距離のある足音の主に振り返る。

そこにあるのは、二つの人影。

 

瞬間、ゾゾンガーの全身が高圧電流によって焼かれる。

滝の下、川の中に居たゾゾンガーは予備動作の一つも無く放たれた()()に対応する事もできない。

川の下流から流れてきた強力な、数百万アンペアの超高圧電流だ。

それは、二つの人影とは全くの別方向からの不意打ち。

ゾゾンガーの体がぐらりと蹌踉めく。

 

さもありなん。

一般的な怪人……奇械人であれば一撃で粉砕される程の一撃を喰らえば、如何にドグマ怪人といえど無傷とはいかない。

むしろ、この一撃で仮初の命を失っていないだけでもゾゾンガーのタフネスの強さは驚嘆に値すると言えるだろう。

そして、恐れという感情を持たない為に、死の寸前に成っても闘志を失うことはない。

高圧電流により機能停止寸前にまで破壊された機械的な意識が敵の場所を求めて視線を彷徨わせる。

蒸発した川の水が高熱の蒸気としてもうもうと辺りに立ち込める中、ゾゾンガーの視線は確かに敵の姿を捉えた。

 

手足と角の生えた達磨。

そう表現するのが一番早いだろうか。

アメフトのショルダーパッドを思わせる赤い装甲に青い差し色の入った黒いボディ。

胸元にはSの書き文字。

首のない頭部にはクワガタを模した様な二本角。

角の下には、横長のディスプレイ。

 

《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》

 

安っぽい居酒屋の看板の如く流れるLEDサイン。

それはオリジナルの名乗りの一部を機械的に繰り返す。

 

《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》

《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》

《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》

《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》《天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ》

 

立ち込める蒸気の壁の奥から、足音すら無く次々と現れる。

夕闇の中、煙る蒸気すら貫き示されるのは彼らの作戦目的(殺意)

 

《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》

《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》

《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》

《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》《敵を倒せ》《悪を倒せ》

 

正義ならず、義憤ならず。

熱を持たない、敵を排除する無機質な意思のみを湛えた機械仕掛けの兵士達。

ゾゾンガーが反射的にバズーカを放つ。

だが、前面に立つ兵士達が一斉に展開した電磁波のバーリアを貫く事もできない。

二本角の兵士達は流れるようにゾゾンガーを取り囲み、頭上に眩いばかりの稲妻の槍を掲げ、

 

《プラズマサンダー》

 

一斉にゾゾンガーへと投擲。

断末魔の悲鳴すら無い。

機密保持の為の自爆すら無く、ゾゾンガーだったものは滝の一部を巻き込みながら跡形もなく原子に分解された。

 

兵士達はその様子に視線を向け直す事すらしない。

ゾゾンガーの消滅を見届けると、次々にその体を浮かび上がら、飛翔。

その行く先は、青森市街。

 

―――――――――――――――――――

 

流星の如く空を駆ける無数の兵士を見送るのは、スーパー1への変身を果たした沖一也と義経師範だ。

双方ともに肉体的には表面上に無数の傷を拵えながら、まるでパワースポットで十全に瞑想を行った後の様に気力が充実している。

複数のインフィニティ・パワーユニットが直結された実験室は、気を操る拳士にとっては常にエネルギーを充填されながら戦っている様に錯覚する程だったろう。

無論の事、如何に体外から気を取り込む事ができてもそれを運用するのが生身の肉体である関係上、時間経過、極端に高効率な気の循環による肉体の疲弊を無視する事はできないのだが。

 

肉体的な疲弊が気にならない程、彼らの気力は充実している。

例えるなら徹夜明けで眠気が一周回って目が冴えている様な状態だろうか。

常人ならば目が冴えているようで不調が出始める段階ではあるが、気の運用を極めた赤心少林拳の優れた使い手である二人にとっては、ここからがむしろ絶好調、という具合だろう。

 

「あれは?」

 

変身状態で義経師範の肩を支えるスーパー1の問い。

 

「この場の最大戦力である沖さんと師範を閉じ込めていた訳ですからね、穴埋めとして用意させて貰っていた兵隊ですよ」

 

ストロングロボタフ。

この世界で手に入れた技術の中からストロンガーの技術をメインに組み上げた量産型殺怪人ドロイド。

繊細な構造のストロンガーを、一回り大きなボディで再現する事で内部の細やかなパーツを大型化、良好な生産性を保ちつつ物理的な性能はそのままに仕上げている。

トライアルシリーズ技術で培養した強化奇形動物の脳細胞を改造してCPUとして搭載しており、ハッキング対策もばっちり。

イオノクラフト効果で飛行も可能。

オリジナルのストロンガー分解時には構造の解析しかできなかった謎パーツの謎ダイナモも搭載!(動くかは未知の領域)

名前はロボタフ・ジョーとかリベルタスと韻を踏む形でシゲルタフとかでもシンプルで良かったと思うが、あくまで模したのは城茂じゃなくてストロンガーだし流石に怒られそうだし。

 

「あれがお前の余裕の秘密か?」

 

ふん、と、気に食わなそうに鼻息を鳴らす師範。

見た目のボロボロさとは裏腹に気力は充実してるから普通に立てる筈なのに沖一也に肩を貸してもらってるような人間が何か言ってますね……。

このイクサメットのカメラ機能にシャッター音が無い事を忘れないで頂きたい。言ってないけど。

 

「我ながら良くできた兵器だと思いますけど、あんなものは本物の戦士の前では蟷螂の斧、時間稼ぎに使えれば御の字というもの。重要なのは、お二人が戦士としてしゃんとして頂くことです」

 

できれば優秀な次世代も欲しいのでこの場は全て無視して沖一也には師範を孕ませて頂きたい所ではあるのだけど、冷静に考えれば今の沖一也が今の師範を孕ませたところで俺の世界にはなんの恩恵も無いからね。

こっちの沖一也の神経を少し頂いてクローン培養して精子採取して元の世界の師範に『沖一也の精子を調達してきましたよ! そして此方が人工受精装置です! どうぞ!』ってやるのもなんか違うしな。

仮に遺伝子的に同一だったとしても似た世界の似た人間でしか無い訳だし。

 

「なら、君はこれでお別れか」

 

「ああ……そうなりますね、そういえば」

 

俺が同道するのは沖一也のバダンシンドローム完治まで、という期間限定。

それまでには玄海流の戦闘データ、というか、梅花の型のデータが十分量確保できるだろうという皮算用だった為だ。

そしてそれは地獄谷五人衆との戦いではなく、直接梅花の型で桜花の型を受け流されるという実体験、そして観測機器が十分に備わった兵装実験室で十分すぎる程に叶った。

赤心少林拳拳士沖一也の力を全て測れたとは間違っても言えないが、玄海流の技術データは十分に蓄積できた。

実利の面で言えばもう十分過ぎると言って良いだろう。

先のストロングロボタフだけでも風船配りのマスコットに偽装して日本中に配置すれば治安の維持には十分過ぎるというもの。

だが……。

 

「もう少しお付き合いしますよ。出かけるなら夜より朝の方が気分も良い」

 

「それは丁度いい。人様に散々文句をつけて来たんだ。多少なり仕事をして行って貰おうか」

 

こき、と、拳を鳴らす師範。

 

「あれを倒せと?」

 

「いや、後で慣らしに付き合って貰おう」

 

「よござんす」

 

ロボタフが飛び去った後の空を切り裂き、まっすぐに此方に飛んでくる人影。

頭部から胸元までを引き裂かれたサタンホークだ。

ケケケケと高笑いをしながら飛ぶ姿はスプラッターではあるが、天井の高さがそれほどでも無い建物内部に突っ込んできている時点で飛行型怪人としての強みは死んでいる。

そして飛び道具を持たないサタンホークは格闘戦の距離に来なければならず、この場の誰に突っ込んだとしてもカウンターで殺されるのが落ちだろう。

相手が自分が仕留めそこねた獲物であるという事を遠目にも理解しただろう師範が構える。

飛行速度を落とさずに繰り出される、嘴か蹴りか爪撃か。

その相対速度と威力がそのまま師範の、黒沼流にとっての武器に転化される。

師範がやる、と、そう確信したスーパー1は一歩下がる。

 

ここまで来れば、サタンホークはクレー射撃の的の様なもの。

打たれるのを待つばかり。

師範必殺の桜花の型。

矢である手刀が弓を引く様に構えられ──サタンホークの軌道がズレる。

その割れた頭部の側面に弾痕。

 

横合いからの狙撃。

いや、極まった空気弾の様なものか。

その正体は刺突。

黒沼流鉄指嘴。

しかし、サタンホークを撃ち抜いたのは指ではない。

まるで鋭さの概念が弾丸の如く飛翔して突き刺さったかのようだ。

刺突の勢いに気が外気を巻き込み物理的破壊力として射出されているのだろう。

これ程の絶技は黒沼流においても元の世界のオールド師範でもできるかどうか。

 

横合いからふわりと跳躍するように現れたのは荒々しく髭を蓄えた僧服の男。

腕を軽く引き、突き出す。

その一動作で堅牢な作りのはずのドグマ怪人の肉体に容易く穴が空いていく。

瞬く間、という言葉がふさわしい速度で、サタンホークの体は無数の刺突痕によりボロ布と化し……爆発。

鉄指嘴の威力で一撃ごとに押し出されていた為か爆発時点での位置は遠く、爆炎には誰も巻き込まれていない。

 

「なんて強さだ……」

 

変身が叶ったスーパー1から見ても、髭の男の技は次元の異なるものだ。

それはそうだろう。

沖一也は今でこそ玄海流最後の伝承者ではあるが、玄海流が残っている頃に再修行を受けるまでは奥義すら使いこなせない未熟者だったのだ。

その後にドグマ、ジンドグマとの死闘を経て熟練の拳士になったとはいえ、長い時間を拳法につぎ込んだ武人と比べれば技術面で見劣りするのは仕方がない。

 

「……黒沼総帥」

 

まして、それが黒沼流の創始者、黒沼外鬼ともなれば比べるべくも無いだろう。

爆風に髪を靡かせながら、師範がぽつりと呟く。

振り返る黒沼外鬼。

お髭も逞しい巌のような男だ。

白髪で前髪の後退も激しかった玄海老師と比べれば段違いに若く見える。

烏の濡羽色とも言えるような黒々とした毛髪も若く見える原因だろうか。

それとも、元から地球人と同じ速度で老いる生き物で無いか。

 

「よく、ご無事で帰ってきてくれました」

 

スーパー1が、フラフラと黒沼総帥に近付く義経を手で制しようとするが、師範はそれを避けて歩み寄っていく。

頬が上気しているのは、十数年ぶりに再開した師匠への感動からだろう。

或いは寺や民衆の危機に戻ってきてくれた、自らが知る最大戦力への感謝か。

 

「今、僧達は市街で戦っています。ドグマという組織から民を守るために」

 

或いは、自分たちが師の居ない間にも力を磨き人々を守るために戦っていたのだ、と、誇らしく報告できているからか?

今時間は僧達……兄弟子達も普通に寺に引っ込んでいるのだけど、そこは言葉の綾というものだろう。

 

「それと、総帥の留守の間に、玄海流と老師が、そのドグマによって殲滅させられました」

 

そして。

予備動作すら無い手刀、刺突。

技ですらない一撃が師範の体を貫く。

気が幾ら充実していようと、師範の体は生身だ。

技を受ける、という意識が無い限り、その強度は生身相応でしかなく。

目の前に居るのが敵だ、と、そう意識しない限り、警戒心すら抱く事はできない。

 

「知っておるわ。玄海はワシが殺したのだからな」

 

黒沼外鬼が何やらごちゃごちゃと喋っているが、内容自体は別に知っているから良いとして。

しかし、何故スーパー1は師範を力づくで止めようとしなかったのだろうか。

俺の話は沖一也の方には伝えられなかったのだろうか。

信じて貰えたら話は早かったな、とは思うが、無理に信じてもらう必要もなかったが。

話は伝わったが一笑に付したであろう師範とは別に、テラーマクロが既に死んでいる、既に殺した、という意識が拭いきれなかったか。

或いは、テラーマクロが黒沼外鬼であった場合、義経師範の師匠を殺してしまったという事になるため、負い目から信じる事ができなかったか。

人情から来る警戒心や分析能力の低下というのは何時の時代も大きな問題だと思う。

それを、例えば脳みそごと頭の中から掻き出せば最強の戦士ができる訳でもない、というのが難しい。

平静である事と冷静である事は違う。

エラーを恐れて感情による力の振れ幅を失ってしまえば本末転倒だ。

 

正体を現したテラーマクロが師範の胸から腕を引き抜く。

腕一本分の太さの大穴。

これが重要な内臓を避けた一撃でも大体死ぬが、軌道と血液の噴出量、テラーマクロの指に付着した細胞組織から見て心臓、肺のどちらも重大な損傷を負っている。

酸欠のカウント開始をするまでもない。

常人なら既に死んでいる。

師範の恐るべき生命力が無ければ、この後に訪れるであろう奇跡の生還はありえなかっただろう。

 

「義経ぇー!!」

 

力なく倒れ込む義経を支えに行くスーパー1。

冷静な視点で見ればこの時点で師範を助ける術はスーパー1に無い。

そして目の前には仇敵であるテラーマクロが居る。

なんとなれば師範をどうにかできる相手に託すと考えても、まずはテラーマクロを殴るなどしてテラーマクロと師範の物理的距離を離す方が先決と見て良い。

だが、この時点でのスーパー1は理屈で動いている訳ではないのだ。

感情のままに動いた結果、敵を倒す、ではなく、旧友を守る、という動きを体が取った。

 

変身をこなし、宇宙開発用サイボーグS-1としての形態を取りながら、あまりにも無防備に師範の体を受け止めようと晒されるスーパー1のボディ。

その土手っ腹に放たれるテラーマクロの打ち上げる様な掌底。

無意識で動いたスーパー1と比較して、余りに冷静なテラーマクロの一撃。

テラーマクロもまた非変身状態でスーパー1の肉体を一撃で破壊できる程の威力は出せない。

しかし地面から離す一撃であればどうか。

重力を操作する装備があっても、スーパー1は自在に空を飛べるという程ではない。

どうしようもない滞空時間。

咄嗟に重力を強くすればどうにかなっただろうか。

だが、テラーマクロの行動は迅速だ。

震脚の様な踏み込み。

師範の首に振り下ろされる。

 

首の骨の折れる音。

というのは表現が上品過ぎるか。

それははっきりと肉を断つ音だ。

水風船を潰すような音。

そこに骨の()()()音が混じっている。

師範の手からはっきりと力が抜けていく。

ギリギリで死んでいなかったのが、確実に死んだ。

首の骨を折られたのではない。

首を踏み抜かれた。

首から上と下が繋がっているのは皮膚だけ。

圧搾されたからか、その死に顔は俺の知る死に顔より遥かに壮絶で、走馬灯すら見えていないだろう。

これは、生命力を増幅したところで治りようが無い。

 

赤心少林拳黒沼流師範、義経はどうしようもなく死んだのだ。

 

「テラー……マクロォォォ!」

 

雄叫びと共に、スーパー1が空中から蹴りを入れる。

半ば自然落下に任せるような蹴り。

無数の特殊能力を持つスーパー1だが配置が悪い。

ここで形振り構わず冷熱、電撃、重力増幅などを使えば、テラーマクロが踏んでいる義経の遺体もバラバラに砕け散ってしまう。

或いは雄叫びは意識を自分に向けさせる為か?

 

テラーマクロの体が煙に包まれる様に、蒸気を放ちながら変形していく。

後に現れるのは烏型宇宙生命体、ドグマ超A級怪人カイザーグロウ。

無論、ほぼ自由落下しているだけのキックなどでどうにかなる相手ではない。

蹴り足を振り払われ吹き飛び、リベルタスのビームで破壊された箇所から転落し寺の外に落ちていく。

カイザーグロウがそれを追いかける……のか、と思えば、その顔が此方に振り向く。

鼻先ならぬ嘴に空いた三つの穴から矢のような何かが放たれた。

どうやらこの場の全てを殲滅していくつもりらしい。

現時点での黒沼流は正直バダンの計画の障害どころか砂利にすらならない程度の練度だと思うが……。

 

嘴から出すのはロケット弾であるという情報もある為これを大きく回避。

しかし、カイザーグロウは撃った時点で此方を仕留めたものと思ったのか、落ちていったスーパー1を追う様に落ちていく。

僅かな時間の攻防。

だがその音を聞きつけたのか、屋根の上でチンタラしていたゼクロスがカイザーグロウを追いかけていく。

 

残されたのは、師範の死体と俺。

首が潰れ、頭部に残った体液が圧縮された為か、所々の穴から出てはいけない体液が溢れ出し、その死に様は決して見栄えの良いものではない。

端的に言って、これを再生能力だの治癒能力で治そう、というのは無理のある話だ。

何しろどうあがいても死んでいる。

強靭な生命力がどうこう、という話ではない。

ここから奇跡的に蘇生できたところで、脳細胞が殆ど死滅しているので、義経師範としての記憶は殆ど残っていないだろう。

 

「間に合わなかったか……」

 

Xライダーが崩れた辺りから飛び込んできた。

見ればその向こうにはスカイライダーが地面に向けて急降下しているところから、残された人員を助けに来たのだろう。

沖一也と師範に所謂特訓を施す、という話は事前にしていたので、沖一也だけがスーパー1に変身してカイザーグロウと戦っている、という状況からここに師範が何らかの形で残されている事を察して来たのだろう。

タイミング的にどうしても師範の抹殺を確実なものにしたかったのか、カイザーグロウは残された地獄谷五人衆を投入するタイミングを調整していたらしい。

別の棟でストロングベアをスカイライダーとタッグで抹殺してきたようだが、戦闘開始のタイミングは殆ど変わらなかったのかもしれない。

 

夕日が沈む。

山の影に光源が完全に沈みきり、燃え盛っている訳でもない赤心寺は薄暗がりの中。

それでも、Xライダーから見ても師範の状態は手の施しようがないものに思えたのだろう。

ライダーの内蔵式の通信機能を駆使し、SPIRITSの分隊に師範の死亡を通達している。

外からは黄金の輝き。

ヘリの照明でも勿論夜明けでもない。

 

龍が滝壺から登っていく。

眩く輝く黄金の龍。

青森到着と共に消えていたバダンの龍は赤心寺付近の滝壺の中に潜んでいたのだ。

或いは、ゾゾンガーやストロングベアが赤心寺の拳士を殺して回っていたのは、龍の再起動の為という側面もあったのかもしれない。

照らされる師範の無残な死体。

その顔に手を当て、とりあえずまぶたと口を閉じさせる。

 

さて。

ここからが本題だ。

 

「Xライダーさん、そのままSPIRITSの方々との通信を繋ぎっぱなしにして欲しいのですが」

 

「何?」

 

「本当なら沖さんに聞くのが一番かな、とは思うのですが、戦闘中の人の集中を削ぎたくないので」

 

龍を見て飛び出そうとしていたXライダーが立ち止まる。

 

「此方の義経師範、このまま死なせてしまうか、どの様な形であれ生き延びさせるか、選んで頂きたいのです」

 

「それ、は」

 

俺が何を言っているか、いち早く気づいたのは通信を仲介するXライダー自身だろう。

彼は身を以て知っている。

過去にそれが行われた事も、自分の後にも似たような事が行われた事も。

そして、俺がそれをできるだけの技術がある事も。

 

師範は死んでいる。

生命力がどうこう、回復能力がどうこう、という話ではない。

記憶も記憶に根ざした人格も揮発している。

この世界の現行人類では彼女をどうすることもできない。

 

だが、俺にとって見れば違う。

この師範だったもの。

()()使()()()

 

「答えはお早く。猶予はそれ程ありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





☆大好きな大好きな師範の若い頃の異次元同位体みたいな人間が居るじゃん?そいつが死ぬ運命があるとするじゃん?似た別人みたいなもんだから尊敬の念も親愛の情も殆ど無いじゃん?好奇心は残るじゃん?旅先故に倫理観は薄れてるじゃん?
何をするかなんて決まっているんだよなぁ……
こっちの世界だと主人公でもン人公でもラ人公でもなくヌ人公の気質が強く現れている
知っては居たけど強くてキレイな年上の経験豊富な女性が大好き
師範も良いタイミングがあれば好き勝手したかった(意味深)
別にカップリングに割り込みたい訳ではなく純粋に師範の肉体に好き勝手したかっただけなんです!強い戦士の身体目当てなだけなんです!信じてください!
だから好き勝手しまーす♡
最初からこうなることを前提にチャートを組んでいたが外見では突然の事態に呆然としていたとも、自らの技術で命を救うかどうかをとりあえず人に判断委ねたりしているようにも見えるかもしれない
医療行為にかこつけて大好きな師匠の身体を隅々まで調べ尽くすし後戻りのできないレベルで染め上げる(細胞レベルでの話)
倫理観なんてどこかに置いてきて久しい
けど母ちゃんの腹の中に置いてきたぜって訳でもない
置いてきたならママンの方には倫理観がある事になるからね
一般的な主婦のママンにはちゃんとした倫理観が備わっているに決まってるだろいい加減にしろ!
ちゃんと持ち物欄に倫理観が含まれてるぞ!
持ち物欄の倫理観は装備しないと効果を発揮しないから売り買いした後はちゃんと装備を確認しよう
多分装飾品枠だから装備欄を圧迫して戦闘では不利になったりする
だから実は登場人物殆ど全員とりあえず倫理観を持って()いる
何を装備して戦いに挑むかは君次第!
そういう話

☆どこで死にたいかみたいな回想もできないし星も見えないし安らかな死に顔ではない師範の惨殺死体
まぁ同門っぽいやつだけど総帥は宇宙人とかデタラメもいいとこだろ、しかもその宇宙人って一也に殺されとるやんけ
という事は戻ってきたらこいつの言うことはデタラメだし総帥は地球人で悪人でないのでこいつは殴ろう
とか思っていた相手にこれから好き勝手されてしまう
まぁ妥当な判断だけど同人エロCG集とかで好き勝手されてる被害者達だって大体特に行動選択に問題がある訳ではないし被害者になる人間ってそういうものよね
オールド師範なら予備動作無しのテラーマクロの突きが皮膚に当たる瞬間に気を腹部に重点させて硬度を増しつつ後ろに思いっきり飛んでかすり傷で済んでた
まぁカイザーグロウとしての不死性が人間態でもあるとすると反撃できる分手とかにダメージ負っただろうけども
未熟ながら黒沼流の激しい修行を乗り越えた熟練の拳士が、これから如何なる処置を肉体やら命やらに施されてしまうのか
これはエッチなやつですね間違いない

☆頭部が引き裂かれた状態でも特に問題なく稼働している様に見えるサタンホークちゃん
問題なく稼働している様に見えるけど作中ではケケケ笑いしながら飛んできただけなので実は正常に動作している訳ではない
多分飛ぶだけなら遠隔操作とかで動ける程度のレベルなんじゃないだろうか
DMM電子書籍版六巻76ページでは前巻と比べておっぱいが大きく描かれていて血でぬらぬらしているとこも含めてエッチ
頭部が割れた鳥型怪人の血まみれおっぱいで精通する子供が出たらどうするどうするどうする君ならどうするつもりなんだ
77ページは師範のお尻がこぶりながらエッチなのでこの見開きだけはエロ漫画
ヒロインの身体をヒーローの目の前で貫くやつの登場シーンでもあるから陵辱漫画の導入部分ですねこれは

☆何でかテラーマクロから義経を守れなかった沖一也
そも一度殺しているし、ここまでの戦闘見る限り一度殺した筈の幹部怪人が現れるシーンって結構どのライダーも驚いてはいたりする
ので、こころのどこかで一度殺した相手、という意識が染み付いてしまっているのではないだろうか
だから生きて現れた黒沼外鬼がテラーマクロとイコールで繋げられなかった
でも繋げられないなりに一応良すぎるタイミングで現れた黒沼外鬼に多少警戒してみせた辺りは偉い
というか自分も師匠が死んでしまっている関係上、義経が師匠と十数年ぶりに顔を合わせて感激しているところに水を差しにくかったというのもあると思われる
まぁ水を刺さなかったばっかりに師範の方が手に刺されてしまったんですけどね(笑)
防ごうと思えば防げていたという点で原作よりも自己嫌悪度数は高め

☆主人公の事は実際変わった姿の黒沼流拳士程度にしか思っていなかった傀儡か怪しいくらい過去の話をするテラーマクロ
実際、バダンの作った再生怪人がどれくらい記憶なり記録なりを共有しているかっていうと怪しいので本当に変な被り物をした僧服の男としてしか見ていなかった
それが後に致命的な事になる……かどうかは、SPIRITS編で恐らく一番書きたかった赤心少林拳編を書き終わった後にその後のエピソードを書く事があればわかること

☆ストロングシゲルタフ・ジョー
全長3メートルくらいの角が生えてストロンガーっぽい塗装のされたロボタフ
大きめロボ
ウソ、大きめサイボーグ
中身は部品サイズを見直したストロンガーとロボタフのミックス
機械的な性能は強化済みストロンガー準拠だけど、そもそもライダーの強さの殆どは変身者の脳みそとか魂に重きが置かれているから性能的にはそんなに
応用とか機転は効きにくいけど一切の情け容赦の無いストロンガー程度の性能しかない
オリジナルの持たない幾つかの電気技を持つが別にオリジナルの持つ電気技だけでも全然戦える
基本戦法は空を飛びながら空を飛べない怪人にエレクトロな技を投げつける事
なお近寄ると赤心少林拳黒沼流を駆使した電パンチやら電キックやらが飛び出してくる
ピンチになると敵に抱きついてウルトラサイクロンする
チャージアップは部品の個体差によって成功したりしなかったりする
顔面部のモニターを利用して懐かしの決め台詞の一部を流したりできるぞ!
それ以外の文章を表示できたりは基本的にしない
限定的に決め台詞のモザイクで別の文章を作ったり、敵、抹殺、殲滅、自爆、休憩中、準備中、営業中、臨時休業などの特定単語を混ぜ込んだりはできる

師範が死ぬとこまで来たから長かった赤心少林拳編というかSPIRITS編連続更新もあと一回か二回
もう少しだけ続くので次回も気長にお待ち下さい

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