オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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二人で突き抜けるノンストップ!仮面ライダーSPIRITS その十

JUDOにとってどうであれ、バダンにとって龍というのはよくわからないものだ。

上意下達な組織で(JUDO)の命令に疑問を抱かないからこそ、どういうものかをふんわりとしか理解できていないままに、バダンはこれらを回収し、JUDOの旅立ち、そして魂の収集に備えようとしている。

その無理解さは、この龍の制御装置を製造していながら、その制御装置を操る人員を敵の中に求める程である。

今、バダンシンドロームを発症させる為の光を放った龍は、その形態を緩やかに崩しながら一直線に青森に向かっている。

移動方式は空間を歪める、超常型の宇宙船としては割とスタンダードなものだ。

文字通りの完全ステルスにより観測者の居ない存在となり物理法則から逃れるタイプなどの存在を考えれば極めてシンプル。

この方式でも単純に出力を上げて、搭乗員が全員頑丈で寿命などの時間制限の無い人種なら惑星間、銀河間航行もできないではないタイプだと思う。

しかし現状、その速度は宇宙空間を飛ぶ宇宙船として見た場合は低速にも程がある。

やはりまだエネルギー不足なのだろう。

 

「もしもし、もちもーち」

 

足元に埋まった目黒の頭部を軽く足で小突き、手渡したフレイムセイバーを取り落して立ち尽くすスーパー1の肩を掴んで激しく揺さぶるも、双方ともに何の反応もしない。

ただ、目黒は自発的な呼吸は続いているし、焦点こそ結ばれていないものの眼球運動が確認される。

スーパー1はフレイムセイバーを取り落しているものの、激しく揺さぶっても倒れる気配は無くバランスを取り続けている。

トランス状態というものだろうが……。

 

霊的視覚で見ると、目黒とスーパー1では少し状態が異なる。

目黒は一方的に体内のスイッチを押されて単独で完結した変性意識状態になっているが、スーパー1の意識は僅かに龍と双方向で接続されているように見える。

術者と式神、というより、アンデッドと元種族の動物の繋がりに近い。

主従ではなく、入力元と出力先に近いというか……。

これでもっとスーパー1が自らの精神とリンクした霊的動体を操る術に長けていれば、ワンチャン龍の行動を意識的に操れているのではないだろうか。

ややこしいのは、その状態でバダンシンドロームはしっかりと発症している事だろう。

行き先はスーパー1の無意識に委ねられた結果、縁の地である青森に行くという尊味(とうとみ)深い結果が得られてしまった。

 

そんな訳で、スーパー1はさっきからこちらの言葉や行動に対するリアクションは無いのに、死人の名前を情感たっぷりに呟いたりしている。

足元の目黒もモガモガ言っている。

これは、神経発脳行きの指令で、所謂死のイメージを脳に投影している、と推測されるのだが……。

 

「ふむ」

 

有象無象のオルフェノク。

布に包んだおっさん二人とチェックマシンを紐で括って頭上に掲げてわっせわっせと運ぶグジル。

首から上を焼き飛ばしたネズモ。

同じく首なしで胴体を裂いたギイガ。

比較的綺麗な切断面で首を落としたベルト無しガドラ。

お喋りクソ緑。

ガリマの開き。

初ゴの亀ちゃん。

ムセギジャジャじゃないやつ。

巨乳メガネOLコスプレの鮫。

獰猛な珍しい白カブトムシ。

ダグバの下半身。

技術解説と引き継ぎを担当してくれた親切なバラのおねいさん。

有象無象の天使(マラーク)と有象無象のオルフェノク。

水のエルロードの進化したやつ。

穴の空いた白い方のテオス。

腕組しつつ革張りの椅子に座って前のめりにこちらをじっと見つめる黒い方のテオス。

敗退したミラーライダーの皆さん

野良ファンガイア。

喫茶店で店番しながらこっちに視線向けてるホモ。

機能停止済み神崎士郎ユニット。

趣味の悪いファンガイア。

アークオルフェノク。

外人の子供のオルフェノク。

アークオルフェノクの出来損ないと子供のモザイク。

その他諸々。

うっすらではあるが視界を埋め尽くさんばかりのそれらが浮かび上がろうとしたので、視界の端っこにワイプでまとめておく。

黒いテオスとホモだけ何故か別枠になった。

ホモの背後から喫茶寿の制服であるメイド服を着たアーキテクトがお盆を持って現れ、縦にしたお盆でホモの頭部を叩き、アーキテクトがこちらにぺこりと会釈をしてワイプが消える。

テオスは真顔のまま暫くこちらを、というより、こっちの世界を見た後に消えていく。

意味深ムーブやめてよね。

そういうの創世王のやつで間に合ってるから。

 

ともかく、あの光はバダンシンドロームスイッチではあるものの、一種の投影型テレパスでもあるため、種族としての規格が違ってもある程度の作用が見込めるようだ。

それはそうだろう。

そも、地球に来て猿をまず改造したのだから、知らない星の知らない種族の精神にまずは接触して改造する事が可能なのだ。

つまり、この龍はスイッチを入れる為の命令しかできないとしても、JUDOは生命体の遺伝子や精神を弄る技術を持っている、という事になる。

可能であればJUDOの知識も持ち帰りたいところではあるが、あまり欲張りすぎても良くはないだろう。

惑星破壊で燃料枯渇立ち往生勝利が可能としても、直接対決では下手をこく可能性は普通にあるのだ。

テオスパワー全開光線やテオスパワー八つ裂き光輪、テオスパワーギロチンなどの周辺環境を考慮しない大威力攻撃にだって、宇宙を旅していたなら対応可能である可能性だってある。

負けない秘訣は、負ける可能性のある戦いは避ける事、これは勝負の鉄則である。

 

しかし。

死のイメージやらを見せられても、トランス状態で無ければ、結構やることが無い時間が続く。

先も言った通り、現在の龍は宇宙船として見るととても遅い。

仕方ない。

 

「ちょっとごめんなさいね」

 

トランス状態で無防備なスーパー1の頭部を少しモーフィングパワーで開いて、内部の回路に無理やりケーブルを繋いで、脳みその収まっている付近の配線を弄って、ちょっと通信機能を拝借する。

イクサメットにもう片方をぷすりと刺して、Xライダーへと通信を送る。

 

「一也! 無事か?!」

 

ワンコール程も待たずにXライダーが応答する。

この人は既読無視とかしなさそうで安心できるね。

昭和ライダーは後発になればなるほどコミュ力が高い気もしてくる。

 

「俺です。スーパー1はちょっとバダンシンドロームしてるので、通信機能だけお借りしてます」

 

「君はあの時の」

 

「そう、あの親切な男です。スーパー1と錯乱した人は一応無事なんですが、どうにもこの龍は青森行きの特急みたいなんですよ。先に現地の協力者の方々に事情を説明しておいて貰えると助かります」

 

「君は大丈夫なのか」

 

「ええ、青森は高校時代から毎年行ってますから土地勘はあります」

 

「いやそういう意味ではなくて」

 

「あ、見えてきましたね。では、降車の準備もありますのでこれで」

 

通信機能をオフにし、ケーブルを切断。

開いていたスーパー1の頭部も閉じて。

これでライダー共通の通信帯もわかった。

使うかは知らんけど何かお願いする時は使わせてもらおう。

 

「次はぁ、終点ん、青森ぃ、青森とぉ、なりぃ、ます。乗車券をお持ちになり、龍が停止してから、席を、お立ち、下っ、さいっ」

 

なんつって。

龍が減速……はせず、輪郭を薄めていく。

消滅するというよりも実体化を解くと言えば良いのだろうか。

それでいて肉体を形成していた海水が残る訳でもないらしい。

ううむ、そう考えると、大量の資源を龍のボディに取り込ませておけば、場所を取らずに保管しておけるという事になるのだろうか。

宇宙船を何処に停泊させておくか問題は宇宙へ出るほどの文明を持つ星に行く時には必ず付きまとう問題だ。

これは宇宙船として見た場合のプラスポイントだな。

 

でも、このまま投げ出されたら、スーパー1はちょっとスクラップではすまない損傷を負うし、錯乱し続けてる人なんかは道路に散らばる肉片とかになってしまうのではないだろうか。

龍が消えると何故か慣性とかも消滅して空中に静止した状態で落ちる、とか?

いかんな、これじゃ生まれて始めてバスに乗ったから降り方の手順がわからない人じゃないか。

スーパー1は抱えていけば良いとして、生身さんはどうするかな。

相対速度を打ち消す形で反対側に投げて、適当な背の高い木の枝の上にでも落とすか?

 

「お」

 

青森県内の市街地で、ドグマの尖兵を倒した後風の僧服集団が彷徨いている。

赤心少林拳黒沼流の拳士なら、空からメガネの錯乱したおっさんが落ちてきてもいい感じにキャッチできる筈だ。

足元に埋めていたおっさんを引きずり出し、龍の進行方向から反対の方に投げる。

 

「すまん、すまんなみんなぁぁぁぁぁぁぁ………………」

 

まだ幻覚に向けて謝っていたおっさんの声がドップラー効果で低くなりながら遠ざかっていく。

既に遠くに居る赤心寺のアナザー兄弟子達が空を見上げてわちゃわちゃしている。

可愛いね。

そして、既に足元の龍はほぼ消え、真下には市街地が広がっている。

このまま減速しないなら、俺とスーパー1は青森を破壊する砲弾になるわけだが。

スーパー1を持ち上げ小脇に抱える。

さて。

 

「沖一也、君は何処に落ちたい?」

 

精神リンクした龍の行き先が青森、って時点で、答えなんて聞くまでもない訳だが。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

「わぁ」

 

龍が消失すると、ある程度の慣性を残して緩やかに投げ出された。

こうなった場合、慣性を打ち消していい感じに落としたおっさんはキャッチされた状態からいきなり龍が来た方向に吹っ飛んでしまうのだろうか。

小脇に抱えたスーパー1はいつの間にか変身解除され、沖一也の人間態に戻っている。

龍とのリンクが切れたからか、或いは幼い頃に技を学んだ土地の匂いを感じて脳が安堵したからか。

そもそも、可逆変身機構持ちの改造人間が死んで死体が残った場合はどういう形で死体が残るのだろうか。

死んだ時点での形態を維持するのか、或いはどちらかがデフォルトとして設定されており、変身態として登録されている形態で死んだ場合はデフォの状態に戻るのか。

興味は尽きない。

 

ゆるゆると、投石機に乗って投げ出された様な速度で、現在は使われていないビルに突っ込んでいく。

窓ガラスなどは無い。

丁度良く立体駐車場の中に飛び込める。

車など設置してあればそれをクッションに雑に着地できたのだが……。

中身は何故かそれなりに綺麗に整頓されていた。

念動力で減速し、静かに着地。

 

ビル内をチェック。

生体反応複数。

この惑星産の、猿祖先型のテオス似姿ではない人類の反応複数。

素の人間、の、子供か。

周辺市街には、機械型の戦闘員が彷徨いてる。

まだ遠いが……。

同じくらいの位置にちょっと鍛えた、整った気の人間の群れ。

赤心少林拳の拳士だ。

少しくらい放置しても良いだろう。

 

スーパー1、沖一也の身体を床に横たえる。

表面上の、人間態の表面を飾る人工皮膚にも結構な傷。

こんなものはチェックマシンにちゃんと通してしまえば直ぐに治るのだが。

問題は神経と脳だ。

今の所、俺がなにかしてバダンシンドロームの患者を治すには、脳のバックアップを取った上で脳と神経の構造を俺たち側の人類のものに作り換えるのが一番なのだが……。

沖一也は変身機能の不調のみで、錯乱したりはしない為にバダンシンドローム治療は緊急性の高いものではない。

なんなら、ここで俺がすっとフェードアウトして元の流れに任せれば普通に克服する人だ。

そも克服出来なくても死にはしないし、最悪、赤心少林拳を修行し直して変身せずに戦えるようになれば良い。

 

「あの」

 

声がかけられた。

物音に気付いて、少し前からこちらを遠巻きに警戒していた原住生物ちゃん達だ。

確か、ねぶた祭り部とか、そういう感じの。

 

「その人、怪我してるんですか」

 

「ああ、ちょっとだけね。医療品の類があれば少し分けて貰えると助かる。無ければハサミと針と糸だけでもいいんだけど」

 

当然、異能を持たず、意識を失いまやかしを祓う赤心少林拳を行使できないサイボーグ程度なら無手でも外見上の傷くらいは直せるし、逆に内部メカはここに無い設計図でも無ければ元通りには直せないし、バダンシンドロームは自力で克服させたい。

人間に擬態する為の外装とて、生物ではないのでそれこそ軽度の損傷なら適当に放置していても修復できるというのは城茂やそのプロトタイプ、或いはショッカーライダーの構造を見た時点で確認している。

が。

怪我をしているのに放っておいても勝手にじわじわ直っていくわけわからん人型の何かより、意識を失い治療を必要としている人間を相手にした方が、対応する相手は警戒心を持ちにくい。

此方は少し困ったことがある、貴方達の力を貸してもらえないだろうか。

これこれこういうものが必要なのだけど、と、要求した後に、少しランクを下げたものでも良い、と、困窮している様を見せるのもセットでやってみよう。

こういう形で弱みを見せられると、人間はどうするか。

 

「それなら、こっちに連れてきてよ。そこからだと、ドグマの連中に見つかるかも」

 

「ああ、ありがとう」

 

相手側にも本気で余裕がない、というので無ければ、相手の人の良さによっては運が良ければこういう対応が得られる。

今は手元の負傷した沖一也を利用したが、単独だった場合はけが人に見える機械人形でも用意してやれば、相手の警戒心を緩める事はそう難しくない。

彼等の、世界が悪の組織にリアルに蹂躙されてるけどねぶたの力でみんなを元気づけようぜという無謀極まりない自殺行為はこの世界においてはバダンシンドロームへの対抗策のヒントになったりする。

まともに考えたら頭がおかしいが、これもバダンシンドロームに対抗しようとする人間の本能的な部分が働いた結果なのかもしれない。

ここは少し交流しておいても損はない。

ジモティと普通に交流する姿を見せれば、ライダー側の警戒心を緩める事もできる。

正に一石二鳥どころか三鳥くらいの良策という訳だ。

 

―――――――――――――――――――

 

ちゃちゃっと沖一也の人工皮膚の破損部分を治療に見せかけて包帯とガーゼで覆い隠す。

せっかくスーパー1の本物が意識を失った状態で横たわっているのに、ロボットスーパー1を横に並べて分解調査しながら比較できないという不満はあるが。

 

「へー、これ自作なんだぁ」

 

「すごいっしょ、ま、本物に比べたら小さいけどさ」

 

「いやいや、立派なもんだよ。躍動感がある造形ってなこういうのを言うんだろうね」

 

「いやぁ、へへへ……照れるな」

 

ねぶた制作部であるらしい学ランの下にパーカーを着た原住民くん(ノッポと呼ばれている)が鼻をこすりながら答え、それに、ふん、とメガネを掛けた肥満体型の原住民くん(フジケンというらしい)が鼻を鳴らして口を挟んだ。

 

「本物に比べりゃまだまだだよ。頑張って作った集大成だけど」

 

「そっか、本物も見てみたいなぁ」

 

「青森には初めて?」

 

「こっちの方には良く来るけど、大体他にやることがあったりでね」

 

「じゃあ、本物を見てもらえたらいいんだけど……」

 

原住民ちゃん(雛乃って言うんだって)が言葉尻を濁す。

確か父親だか祖父だかのねぶた職人がバダンシンドロームにかかっているんだったか。

そんな中でこんな、小ぶりながら立派なねぶたを作り上げて……。

壊されちゃうっていうんだから可哀想に。

まぁでも、東北の寒さに耐え続けた青森県民ならそのくらいでへこたれはしないだろう。

親兄弟をマッドアークに殺された直後に復讐を志して手がかり無しで赤心少林拳を学びに行こうとする様な子が結構居る土地なのだ。

 

「そのねぶたさ、もう少しで完成するんでしょ? 今度妹が来るから、そしたらちょっと見せてあげてくれない? あいつもたぶん実物は見たこと無いと思うからさ」

 

「喜んで!」

 

「比較対象に夢の国のエレクトリカルパレードとか持ち出しても怒らないであげてね」

 

年パス買い続けて数年って具合のランドシンパだからなあいつ……。

 

「ほ、本物のねぶたなら負けないし!」

 

張り合う様に答える原住民ちゃん。

周囲からワハハと笑い声が起き、和やかな空気が形成される。

なお、この間にも俺は一切変身を解いていないが、ある程度の話術と人間の脳内物質の分泌に作用するマインドトリックを併用すれば、不審なパワードスーツ姿でもこの程度の交流が可能になるのだ。

優秀な戦士や兵士はセルフコントロールが上手いので脳作用に手を加えられると一気に警戒心を高めてくるのでSPIRITSの隊員やライダーなどには通じないが、自らの肉体の作用を掌握していない一般人などはこのようなものだ。

やはり技術力。

技術力こそが懐柔においてものを言う……。

 

―――――――――――――――――――

 

まぁ。

ブラックイクサは基本的には正義の戦士と言って差し支えないデザインをしている。

仮面ライダーイクサとカラーリングと細部デザイン以外ほぼ同じ見目なので、怪しい言動や行動をしなければそれほど警戒はされないという事情もある。

平成ならばともかく、この世界では割と敵と味方のデザインラインがはっきりと別れている為、コマンドロイドとクリソツ!みたいなデザインで無ければ、パワードスーツはどれも受け入れられる見た目だろう。

 

未だ気を失っている沖一也を原住民達の元に置いて、周囲を見回ってくるという名目でビルの外に出た。

デザインラインが敵味方はっきり別れてると言ったが、世間一般の人は大体中川くらいの無理解さなので、人間じゃない見た目のものはとりあえず警戒から入る。

ので、こちらに向く視線を念動力で歪め、シーフカメレオンの疑似ラウズカードで厚着をした人間っぽい見た目に整える。

トレンチコート、赤のブレザー、スラックス、ハンチング帽の何処に出しても怪しくない一般公権力コーデで怪しむ人間はそう居ないだろう。

 

ドグマ戦闘員の配置と赤心少林拳拳士達の気配から察するに、もうそろそろ沖一也も目覚める筈だ。

その時に一緒に戦場に出ても良かったのだが、そうすると義経師範と沖一也の再会に水を差してしまう形になる。

故に、先んじてドグマ戦闘員の破壊を始めて敵ではないアピールを済ませておかねばならない。

 

少し先から無数の機械の駆動音。

ドグマ戦闘員──ドグマファイターだ。

これらも恐らくはピラミッドの改造人間素体から作られたのだろう。

何故貴重な素体を利用して戦闘員を作ったのかは永遠の謎だ。

謎だが……スーパー1の技術解析と、玄海流の技の記録の為に、礎になってもらおう。

 

―――――――――――――――――――

 

赤心少林拳黒沼流は殺人拳ではあるものの、暗殺者の養成所でも無ければ何かの武装組織の兵士育成所でもない。

時代錯誤とも取れる求道者の群れではあるが、彼等は修行のために山に籠もり決して人里と交流を行わない、という訳でもなく、生活必需品を手に入れる為に人里に降りる事も、一般人と交流する事もある。

数十人にも登る修行僧達の群れが生活する上で、人の手の入った山から取れる資源だけで生活するというのは無理があり、その点で言えば彼等は俗世から完全に切り離された存在ではないとも言える。

 

バダンの出現後、彼等は頻繁に人里に降りることとなった。

それは彼等の生活基盤を守るためでもあり、磨き上げた殺人技を試す絶好の機会でもあり、修行の一環でもあり……。

究極的に言えば純粋な人助けであった。

常であれば山の中で修行を続ける偏屈な坊主達でしかなく、鍛え上げた技が直接何かの役に立つ事も無い。

交流のある街の人間からしても、彼等へのイメージはがっしりした体格のお坊さん程度のものでしか無かったが、それは普段の拳士達にとってもさして変わらない。

赤心少林拳黒沼流は殺人拳にして邪拳、などと言うが、別段それを積極的に振るう機会を常から探している訳ではない。

常の彼等は文字通り求道者であり、その技に誇りこそ持っているが、血に飢えた殺人者でもなんでもない。

 

拳士同士の組み手などであれば遠慮は無いが、人間を元にした改造人間であれば、思わず遠慮が生まれる。

元が人間であった命であれば、その大半が程度の差さえあれど攻撃に躊躇いが生まれかねない程度の良識と常識を備えているのだ。

 

機械人形に過ぎないドグマファイターを前にしても、それが人型をしているというだけで、徹底的な破壊、というものを躊躇ってしまう。

しかし、そんな戦い方では逆に危険だ。

赤心少林拳黒沼流は本流から離れた殺人拳。

究極の守りである梅花の型を奥義とする玄海流と異なり、究極の攻め、或いは究極のカウンターである桜花の型を奥義とする黒沼流は仕留める時に仕留めきれないと、敵の反撃であっけなく死にかねない脆さを持っている。

黒沼流の師範である義経はそのため、門下生達に攻撃を躊躇わせない為に定期的に叱咤しながら戦いを進めていた。

 

獣の様に俊敏に駆けながらドグマファイターの身体を次々と引き裂くのは、自らに多方から攻撃が或いは攻撃の意思が集中する状況こそが攻めの機を得るのに最適だからだ。

そして、より効率的に敵を倒せば倒すだけ、常から世話になっている俗人達を助ける事にも繋がり、攻めに、戦い方にまだ迷いのある門下生を生かす事にも繋がる。

戦場において俯瞰した視点を持ち、門下生にも敵にも注意を向け続ける、多くの門下生を導くに相応しい振る舞い。

 

だからこそ。

当然の帰結として、()()に最初に気付いたのは、やはり義経だった。

ドグマの攻め気が緩くなった。

撤退しようとしている、という訳ではない。

決定的にそれとわかるまで気づけ無い程自然に、ドグマファイター達の注意が一点に誘導されている。

義経の視線すら。

直感的に、それが気を用いた技の一種である事に気付き、振り払う。

 

気、というのは超能力の類ではない。

人間の本来持つ生体作用にも重なる部分のあるものだ。

故に、通常は自らの体内を巡回する気を制御する事こそが黒沼流においても基本となる。

 

だが、技術として存在しない、という訳ではない。

先人たちの試行錯誤の中には、攻めのタイミングを自ら作り出す為に、相手の攻め気を誘導しようという試みも存在する。

動作による視線誘導の先に見いだされるものであったり、或いは、自らの気を制御する事で分泌した体液に含まれる香り成分を利用しようというものだ。

これらは一見して気の運用とは関係ないものに思われるかもしれない。

だが、何も不自然なことではない。

痛みを覚える部分に手を当てられ体温を感じることで痛みが和らいだり、アロマテラピーが精神に齎す作用を考えれば理屈としては通る。

生理作用を自己操作しても限界がある為に、実用に足る技として成立しなかったものだが……。

 

義経の視線の先。

襲いかかるドグマファイターの中を、時代掛かったトレンチコートの人型が歩く度、ごろん、ごろん、と、地面にドグマファイターの首が落ちる。

襟元から赤いブレザーの覗く、ハンチング帽を被った鉄仮面。

機械人形ではない、ドグマ怪人か、という考えが浮かび、否定する。

自然体過ぎる故に数秒気づけなかったが、鉄仮面は歩きながらも時折腕を伸ばし何かしらの技を振るっている。

獣、猛禽の爪の如く揃えられた指先が弧線を描き、周囲のドグマファイターを破壊している。

その技は、見紛う筈も無い。

赤心少林拳。

それも、殺人拳である黒沼流のそれに、非常に酷似している。

異様なほどに先鋭化され、最早相手にぶつけられる事もなく、素通りしていく様な破壊の意思。

精密機械の様な、いや、臨死の集中力を必要とするような……。

 

「あ」

 

濃厚な死の気配をそのままに、鉄仮面が間抜けな声をあげる。

次の瞬間、義経の肩に猛禽の爪が突き刺さり、空中へと勢いよく引き上げていく。

ドグマ怪人、地獄谷五人衆リーダーのサタンホークだ。

当然、飛行能力などを持たない生身の人間である義経にとって高高度へと連れ去られるのは単純に危険なのだが……。

義経の視線の先、鉄仮面が口元を隠して肩を震わせている。

笑っているのだ、義経を見て。

 

(何か知らんが、後で殴ろう)

 

何故なのか、義経の頭の中に浮かんだのは見ず知らずの戦士に嘲笑された怒りや屈辱ではなく、嫌に馴染みのある、反射的な攻撃の意思であった。

 

 

 

 

 

 

 

 






☆こっちの師匠空からの攻撃に反応できないとか未熟過ぎてカワイイ♡
と、思わずヤング義経師範の未熟ぶりに笑ってしまっただけで嘲っている訳ではない
元の世界の師匠はなんならステルス状態での主人公の転移攻撃にも対応可能
SPIRITS世界は元の昭和ライダーとも異なる世界なので正確な年代の話ってのもおかしな話だが
バダンの活動時期をゼクロスが雑誌やら映像やらで展開されていた時期と考えるとこのSSで主人公が遭遇した未来の義経師範はSPIRITS時代から20年修行を積み続けた状態なので技量に差があるのは当然の話
なお元の世界元の時代では宇宙開発に改造人間が関わっていて月面基地が作られた、なんて話も無い上で一度も赤心寺に顔を出していないので
義経師範は夢のために赤心少林拳を捨てた一也が宇宙開発で活躍しているという話すら聞かないという状態で20年放置され続ける中で修行を続けているので
恐らくSPIRITS側の義経師範よりも内心の執着は重くドロドロと濃密になっているか
年齢的にもう結構なお年なので逆に少し落ち着いている可能性もある
落ち着いてる可能性もあるが沖一也の話と結婚話を絡めた話を稽古中にすると殺人拳の奥義が飛んできたりはする
一切怪しいところのない機械刑事スタイルは周囲の心理的影響を考えてのこと
年代的に未来にあたる機動刑事ではないところがポイント

☆ヤング義経師範
ヤングと言っているが沖一也のテレビ原作版の年齢は27歳なので同年代と考えるとアラサー……
というか、弟の弁慶が一也を弟の様に思っている、という部分から考えると弟の弁慶すら27以上である可能性が高く、普通にこの時点で30は超えてる可能性もある
まぁでも絵柄の関係で若く見えるからいいんじゃないですかね
年齢に関して言及されてないしそもTV版では登場しないSPIRITSオリキャラなので沖一也ともども年齢は引き下げられている可能性もあるし
なんなら気の制御とかの関係で赤心少林拳の使い手は実年齢より若々しい肉体を保つ的なあれがあるかもしれない
老いらくの恋とか言っても殺人拳が飛んでくるぞ
でも30絡みとなると逆にえっちさは増す気がしません?
というか、SPIRITSに出てくる女キャラが全員軒並み実年齢よりも明らかに若いので年齢は調整されてるのかもしれない
ハルミちゃんとかあの見た目で成人してるっていうけどあの絵柄だと振る舞い言動も含めて良いとこ高校生にしか見えん
まぁ年齢問題考えるとアマゾンの振る舞いをアマゾンの年齢でされると結構キツイものがあるから年齢に関してはファジーにね
この世界のアマゾンはシーズン通してあの喋りとスタイルで通していた可能性がワンチャンあるし……

☆ライダー用電話ボックスと化したスーパー1
そもそもSPIRITSとかいうサポート部隊が居るのにライダー同士の通信は完全に別に分けられてるのも問題
そんなんだから改造人間同士の内緒話とか言われるんだぞ
まぁ言うてさらわれて改造された勢とかはともかく自発的に改造してもらったとか改造する側だったとかの連中はSPIRITSにライダーと通信する為の技術提供くらいしていいんでない?
という、昭和ライダーがどうかはともかくSPIRITSに出てくるライダーの持つ身内意識とその範囲問題は書きたいけど書いたらアンチとか言われそうで迷いどころ
組織とがっちり連携したらライダーっぽくないんだけど、スーパー1ですら同門に対して《守る》ってスタンスなのは見ててんーってなる

☆バダンの龍が見せる死のイメージ
死んだけど生き返ったグジル
死んだけど無かったことになったホモ
死んだってより倒しただけど本体は生きてて断片を通して接続されてるような状態の黒テオス
こいつらは例外
そもそもスーパー1とか目黒は死人の生きてた頃をイメージしているが、これは多分死人の生きていた頃のイメージが残っていたからそっちが再生されるか、或いは厳密には主人公側の人類とこっち側の人類が別種族である為に起きたバグかもしれない
なんなら死んだ相手は死んだという形で記憶してあるのでこうなった可能性が高い
覚えていますか昔は確か、殺した相手が苦しみながら無念の表情を浮かべるのをみて精神的に追いやられてたのでそれを回避するのに全力を出した(顔面焼却)
まあでも誰かの為に生きてるか、それを忘れているかって聞かれればそっちは現状でもしっかり意識の中にある(家族友人知人と今の文明とインフラ可能な限り守るマン)
それが失われない限り戦力の拡充は決して止まらないかんね
なお白テオスは完全に取り込まれたもよう

☆尖鋭化された黒沼流
死に臨む中で発生する臨気のおかげで強い死の気配を用いてヘイト管理ができるので実はアクガタ同士は連携が意外と得意なのだ
なお同じ現場にアクガタでない戦士が居た場合そちらの意識も寄せてしまうので他流派との連携はそんなに得意じゃない
なんなら意外と得意ってだけで元は復讐者だったりする拳士も居るので好き好んで連携はしない
でもあくまで異種族を効率的に殺すための技なので多人数での連携や合体技も履修できる
当然死の気配っぽいものを隠す修練も行っているし習得しないと一人前として扱われないぞ!
サイレントキルできない戦士なんてね、いかんからね
異種族殺すなら赤心少林拳黒沼流アクガタ!
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くらいには気軽な流派
修行自体は気軽どころかある程度の欠損前提ではある
主人公が居れば即座に欠損部分をより強靭な肉体で埋め合わせられるが、実は居なくても赤心寺地下基地の設備を使えば修復できる
欠損を修復した門下生達が正常に稼働してるから副作用の心配も基本的には無いからご安心!
法的問題?
そうねぇ……

☆原住民ちゃん達
殺人マシンや怪人があふれる市街にお手製ねぶたで突撃する勇猛さっていうかあの場面笑顔なの普通に狂気
ジョー・ヤブキは死ぬことが怖くないのかー……
言うてバダンシンドロームではないにせよ周囲の大人がみんなバダンシンドロームとかなったら少し頭がおかしくなって判断力が低下していてもおかしくはないし責められない
でもこの原住民ちゃん達が死ぬとバダンシンドロームへの対抗策の発見が遅れていた可能性があるため重要なピースでもある
なおコイツラが死んだ場合はン人公による煙ばらまき全人類劣化グロンギ怪人化による超物理型アンチバダンシンドロームが発動する
オペレーショングロンギシンドロームとでも言うのか
パット見では地獄かもしれんけど別にグロンギ化自体は凶暴性を増したりする訳でもないから安心してくれ
うっかり死人も怪人化して起き上がってくるけど基本的に自由意志は保証されてるんだ
力を持て余した人々が何を始めるかまでは知らない
それは自由意志の元でおこることなんだから個人個人の責任じゃろがい
なんで本編世界でやらないかって言えば元の世界でこれをやると普通に母数の関係で野良ダグバみたいなのが生えてくる可能性があるから
ンレベルまで行ったら学習能力も高くなって収集つかなくなるからね
こっちの世界の人間は怪人化しても魔石すら満足に発生しないので基本無害
神の似姿でなんなら将来的に野良神とかがポンポン生えてくる可能性のある人類と猿が進化とJUDOの改造で成立した人類ではポテンシャルが違うのだ
なおそのポテンシャルも改造手術と特訓で覆ったりするから雑に敵対はできない
でも元の世界の人類と分けて考えるので原住民呼びとかする
表立ってはしない
なんならうっかり死んでも原住民ちゃん達はこいつに蘇生させられてねぶたをやらされる事になるのでグロンギシンドロームとかは起きない
なんだったんだこの上の長々とした説明は……
少なくともねぶたで青森を復活させるまでは命の保証(死なない訳ではなく蘇らされるという意味で)はあるので幸運ではあるのか




一瞬書かれて消えた感想の中に本編に居るオリキャラを求める声があった気がした
というか、書いてて思ったより赤心少林拳編が長くなりそうな気もするのでどっちを一気に書いちゃうってより思いついた方から書いていく、みたいな形にするかも
というか中間部分を書いていたせいで予告した部分まで書けなかった
けどまあそういう事もあると予告してるからいいよね
主人公の火力と手札が増えて戦闘がワーディングみたいになってしまっていたから、幹部なり首領なりをあてがって格闘戦書きたいなぁとも思うし
いや元の世界でも試行錯誤とか変身別バリエーションとかで色々書けるけど、次は響鬼だから実質モンハンだからね……
実質モンハンというか、実質ULTRAMANか実質装甲悪鬼村正になる可能性もあるけど
実質裏世界ピクニックという可能性も見えたから未来も真実も見えない
書けたとこから無計画に投稿してきますので、それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい

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