オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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二人で突き抜けるノンストップ!仮面ライダーSPIRITS その九

じ、と、睨み合う様に、或いは見つめ合う様に視線を交わすスーパー1とブラックイクサ。

ふと、ブラックイクサがイクサカリバーを引き抜き、背後に向けて発砲。

遠くの空で爆発が起きる。

オニビビンバの放つ砲弾だ。

無論、それはスーパー1であれば直撃する事もなくレーダーで察知できたのだろうが……。

 

「だからごゆるりと、と、言いましたのに」

 

呆れるような嘆息。

常のスーパー1であれば、5ハンドの内のどれかを用いて上空で迎撃できただろうし、レーダーで察知するにしてももう少し早く済んだだろう。

だが、今のスーパー1はメンテナンスを途中で切り上げて出てきている為、先までの機能停止寸前と比べればましだが、フルスペックで戦闘ができるほどではない。

無論、スーパー1だけであればそれも梅花の型で対応できるが、この場には防護装備を一切着用していない生身の人間が二人居る。

スーパー1を追う四幹部……一人減って三幹部の狙いがただスーパー1を倒す事だけであるために人質に取られるという事は無いが、爆発に巻き込まれた場合に、スーパー1で庇うにも限界がある。

 

「君たちは」

 

問う言葉が途切れる。

オニビビンバのバズーカが連続して放たれ、地上からはサタンドール、ゴールドゴーストが迫るのを察知した為だ。

スーパー1、ブラックイクサ、レッドイクサが同時に構える。

そして、二人のイクサの構えを横目に、スーパー1は確信を深めた。

 

「任せても良いかな」

 

「お任せ下さいな。──グジル」

 

「はいはい」

 

ブラックイクサが一歩踏み出し、レッドイクサが生身の二人を……というより、二人の背後にある廃寺、その中のチェックマシンを庇う。

それを確認し、ブラックが三幹部の迫る方向へと手を向け、握り込む。

きし、という音と共に、空間が静止した。

鬼闘術による……というよりも、鬼闘術とモーフィングパワーによる合せ技による、熱量の簒奪だ。

世間体の関係で、巻き込んでは不味い一般人などが存在する市街では使用できない最大出力。

その威力、範囲は凄まじく、ブラックイクサのハンティンググラスで捉えられる範囲一帯を完全静止させている。

視界の中の医王山の半ば程が完全に凍結し、その範囲内に居た動植物には致命傷となる。

その余波で、熱を奪われていないブラックイクサの背後すら瞬く間に気温が低下し、レッドイクサが熱量を操作して庇っていなければ、生身の二人はあっという間に低体温症で倒れていただろう。

無論、宇宙生物であるジンドグマの四幹部はその大半が強い冷気耐性を持つ為、ここまでやっても動きを僅かに鈍らせる程度の効果しか無いが……。

 

ブラックイクサが、レッドイクサが、スーパー1が駆ける。

ブラックイクサはコマ落としの画像の様に加速し、一番奥のオニビビンバへ。

レッドイクサはイクサカリバーのカリバーモードを展開しながらサタンドールへ。

スーパー1は矢のような跳躍でゴールドゴーストへ。

 

宇宙空間のそれを下回る冷気によりダメージを受け、動きの鈍ったオニビビンバ。

それでも真っ直ぐに自らに迫る敵を相手に抵抗できないという訳ではなく、如何に与えられた目的がスーパー1の抹殺だとしても、同胞の一人を抹殺可能な程の戦力を備えた相手を無視する程愚かではない。

一瞬で距離を詰めてくるブラックイクサを相手に砲撃を放つ。

直撃すればスーパー1ですら只では済まない威力の一撃。

それが見えているのか見えていないのか、避けもせずに突っ込むブラックイクサ。

その顔面に砲弾が直撃。

することも無く、砲弾がブラックイクサの頭部をすり抜け、その身体がオニビビンバに肉薄。

必殺の一撃を避けもせずに無力化されたオニビビンバの視界には、手刀を振り上げたブラックイクサ。

 

「なにぃ?!」

 

避ける間も迎撃する間も無く、死の間際、ただ疑問が喉から漏れる。

ブラックイクサはそれに答えず無言で、疾駆の勢いを載せた手刀をオニビビンバの脳天へと振り下ろす。

四幹部の中で、宇宙生物でありながら唯一明確に冷気を弱点とするオニビビンバ。

半ば凍結したその肉体が、真っ二つに引き裂かれた。

その肉体が爆散するのを見届け、ブラックイクサが首を傾げながら呟く。

 

「トンネル効果をご存じない」

 

真っ先に一体を撃破したブラックイクサが視線を向ける先、レッドイクサがサタンドールの頭部、目元を半ば切断し、その眼球を破壊していた。

サタンドールの催眠攻撃は視覚を媒介にして行使される。

念動力で物理攻撃を行う事もあるが、スーパー1との戦いの中で明らかに生前の人格を半ば復元させていた事が仇となる。

物理攻撃よりも、催眠術で意識を奪い弄ぶ、という意識が前に出てしまったのだ。

そしてレッドイクサはブラックイクサから、事前にサタンドールを始めとした四幹部の能力を知らされている為、最初から視界をシャットダウンしている。

無論、そのために視覚情報無しでの戦いという事になるのだが……。

五感を頼りにしなければ戦えない戦士は、少なくともレッドイクサが学んだ赤心少林拳の戦士としては未熟者のみ。

そして、人造サイオニック戦士(脳開発済み使徒再生アギト)でもあるレッドイクサは、当然の如く六感以上の感覚を解放済みだ。

 

「ギヤァァァァァ!」

 

サタンドールの絶叫。

しかし、その絶叫も途絶える。

イクサカリバーのブラッディエッジ。

対ファンガイア用ではない、フォトンブラッドを刀身として使用したそれが鞭の様にしなり、サタンドールの肉体へと巻き付く。

全身に巻き付いたむき出しのフォトンブラッド。

その色が赤から黄、白、銀、黄金へと変化し……。

内部のサタンドールはその頭頂部と足先だけを残し、跡形もなく粉砕された。

 

「足す、一……と」

 

手首に存在しない腕輪を弄るような動作を見せながら、視線はスーパー1へ。

当然の様に、その蹴りはゴールドゴーストの顔面に突き刺さっている。

頭部に対して脚部が比喩ではなく完全に突き刺さり、その内部構造は致命的に破壊されているのだろう。

 

「スーパーライダー、月面キック」

 

残心と共に唱えた技名に合わせるように、ゴールドゴーストの残された肉体が爆散する。

余りにもあっけない最後。

ゴールドゴーストを始めとした四幹部が弱い訳ではない。

しかし、どの幹部にも言える事だが、ジンドグマの四幹部は既に一度スーパー1によって倒されているのだ。

左目から投射する幻影も、左腕のロケット弾も、既に種は割れている。

そして、如何に強固な肉体を持っていたとしても……。

その強度が知れているのであれば、破壊する術がスーパー1には備わっている。

それは、ブラックイクサにも、レッドイクサにも言える。

四幹部は仲間割れ、足の引っ張り合いなどをしたとしても、最後まで力を出し切って負けた。

故に、そのスペックは完全に見破られているのだ。

 

四幹部は、スーパー1を一晩かけて追い詰めていた、と、そう思っていたのだろう。

持久戦を仕掛け、メンテナンス不足で機能停止の寸前まで持っていった。

或いは、スーパー1は一晩中逃げ回っていた、と。

だが、事実は違う。

四幹部は、一晩という時間をかけて、直属の暗殺部隊である夜光虫を駆使しても、スーパー1を弱らせる事しかできなかった。

四人揃って、曲がりなりにも連携を取って、それでも、スーパー1を仕留めきれなかった。

ただ、それだけの話なのである。

 

―――――――――――――――――――

 

4対1で勝てないのに3対3で勝てるわけが無いんだよなぁ?

拳法も駆使せず特殊武器や能力だけで戦うのはメタられた時に危険という事がよく分かる戦いだった。

火力問題でワンチャングジルが危険かもしれないオニビビンバを俺が。

六感以上あれば問題なく殺せるサタンドールをグジルが。

という振り分けではなく、実は未知の黄金黴が怖いゴールドゴーストを撃破経験がありチェックマシンがあれば普通に治療できるスーパー1に押し付ける算段だったのだが、上手く行ってなにより。

 

変身を解かないスーパー1に向き直る。

 

「改めまして、我々は赤心少林拳を操る流しの謎の戦士です」

 

「名乗ってはいないね」

 

「名乗るほど大した者ではございませんので」

 

「そうか……俺の名は沖一也」

 

差し出された手を握る。

一応共闘した訳だからエレキハンドとかで不意打ちしてくる事はあるまい。

パワーハンドで握りしめられても手の表面の摩擦係数を弄ればどうにか逃げられる。

 

「君たちはどうしてここに?」

 

「市街地で怪人が暴れていたのですが、そちらが一段落ついた風だったので、近場で戦闘中のこちらに……というと、言い訳ですね」

 

「言い訳」

 

「そ。私らとしては気になる訳よ。赤心少林拳の源流に近い、赤心少林拳玄海流最後の拳士、その技の冴えって奴が」

 

「貴方を助けに来た、というよりは技術を守りに来た様なものなので」

 

という訳で、手を放す。

 

「玄海流最後の拳士、か」

 

ぽつり、と、一言

変身を解いていない為にスーパー1、沖一也の表情は見えない。

こういう時に変に回想シーンを挟むのが昭和の男の悪い癖だ。

落ちこぼれが偶然生き残って、後に伝えるべき技術が殆ど失われた、というのなら嘆き悲しむのもわかるが。

彼は改造手術後に再修行が必要な程度ではあったが、その甲斐もあって一端の玄海流拳士になっている。

友や同門や師が失われた事を除けば特に悲しむ事も無いと思うが。

 

「謝礼の類は後ほど請求させていただきますので、今は富山湾に向かいましょう」

 

「ああ、行こう」

 

「私はちょっと遅れるわ。おっさんらとチェックマシンも運び出さんといかんし」

 

生身二人、グジルがサタンドール倒すのにその場離れちゃったから、ちょっと低体温症起こしてぶっ倒れてるしな……。

 

―――――――――――――――――――

 

足代わり兼マシントルネイダーの依代として生成したロードインパルス密林仕様(未契約魂非搭載トリックブレード二丁型)に跨り、富山湾に向かう。

富山湾では未だスピリッツとXライダーが捜索を続けているようだが、磁場すら発見できていないようだ。

まぁ……発見できたとして、流石にXライダー単体では悪魔元帥はともかく龍に関してはどうしようも無いし、向かっているスピリッツの部隊もちょっとアレなので、暫くは右往左往していて欲しい。

 

そうこうしている内に、遠くに海水を依代に実体化を果たした惑星間航行用の龍が出現してしまった。

少し早い?

思ったよりこっちを仕留めるのに時間を掛けてしまったか。

或いは森の中で四幹部と追いかけっこしながら走っている訳ではないから安全運転が過ぎたか。

空に浮かぶ龍はやたら巨大でビカビカ光っている為にとても視認しやすい。

 

《急ごう!》

 

《はぁい》

 

望遠機能のあるDAを遠隔で海上に生成してばら撒きながら先を走るVジェットの背を追う。

追い越しても良いのだが可能であれば同道した方が色々と都合も良い。

海上のDAの視覚を視界にワイプで写し、現状を把握。

スピリッツのヘリが龍に機銃掃射を繰り返しているが、やはり表面に一時的に穴をあけるだけでダメージにはならない。

超再生能力持ちというわけではなく、そもそも物理破壊が意味を成すタイプの構造をしていないのだ。

下手にエネルギー系の攻撃手段で迎え撃つとそのエネルギーを食われる可能性があるので、邪魔にはならないのだが。

そもそもあの龍があのサイズ感の生物の類だとして、あの口径の弾丸はダメージを与えられるのだろうか……?

 

この龍、JUDOらが宇宙旅行をする為の移動手段なのだが、定期的に生命エネルギーの充填が必要である、搭乗スペースが無いので上に仁王立ちするか中身に潜っておくしかない、生活空間とかは用意されていない、と、色々と問題のある乗り物ではあるのだが、長期間の航行であると考えるとまぁ理に適っていると言えなくもない。

実体は無くエネルギー体が適当な質量で身体を形成しているので、スペースデブリなどとの衝突による破損も無く、燃料が切れる以外での航行上のトラブルが少ない。

 

長期間航行する宇宙船につきものなのは故障と修理、そして修理に必要な資材の調達方法になる。

だから、目的地まで宇宙船内部の資材でメンテナンスが可能だと断言できる程度の道のりならともかく、あてのない旅であったりすると外部から資源を調達して加工する工作艦などをくっつけていく必要が出てくる訳だが……。

この龍はその問題の一切を考えなくて良い。

いや、惑星が近くに無い場合は立ち往生する事もあるかもしれないが、それは移動ルートを考えて進めば問題はない。

或いは宇宙空間なら暗黒物質とかも資源にできる構造なのかもしれない。

しかし、そこまでできるなら燃料も人類の生体エネルギーを回収するのではなく、近場の恒星の一つも喰らえばよかろうと思うのだが、改造とかはしないのだろうか。

とはいえ、単純に移動に特化したシンプルな構造だからこそ成立している糞の様な乗り物ではあるが、それ故に長年JUDOによって愛用されていたのだろう。

これを少し改良すれば良い宇宙船になると思うので、これもぜひ一本くらい貰っていきたいところ。

 

海に出る。

既にDAの視界を借りなくとも龍がデカデカと見える位置に来た。

制御不能に陥ったスピリッツのヘリがめっちゃ伸びる剣でローターを切り落とされ、今にも墜落しそうなところを、深海探査用である筈のXライダーがバイクの機能も使って頑張って墜落しないようにしている。

衝撃で死なない程度にゆっくりと海面に下ろす、とかした方が安全だと思うのだがどうだろうか。

ライダーXも脳みそは生だから、突然の巨大な龍の出現とかに混乱して判断力が鈍っているのかもしれない。

 

《沖さん、ヘリを救助しますのでXライダーに通信を入れて下さい》

 

《できるんだな?!》

 

《もう射程内です》

 

足元の海中から烏賊の群れと蛸の群れの位置を割り出し、魂魄をグリップ。

魂魄をざっくりと改造、複数個体を合体させ、元の烏賊蛸の肉体と周囲の岩や海水から作り変えた特殊金属の塊で新たな機械の肉体を形成。

結果として海中から現れるのは無数の烏賊とも蛸とも付かぬ異形の機械。

ヘキサギア、ハイドストームの簡易版だ。

DAの技術を応用して作られたもので、簡単に作れる割には多少の判断能力を持つ。

元から蛸は高い知能を持つので改造素体としてはとても優れた種族なのだ。

数の少なさは烏賊で補った。

 

それらはふわふわとした動きで足を動かし、海中の烏賊の様に一直線にスピリッツのヘリへと突撃する。

八本の、いや、無数の機械の足がスピリッツのヘリに絡みつく。

ヘリをライドルで吊り下げていたXライダーが一直線に降りていき、ヘリを確保していたハイドストームの一体にキックが直撃し、身体をバラバラにしながら海面に向かって落ちていく。

ああっ!

 

《通信して下さいって言ったじゃないですか!!》

 

《あれが救助なのか!?すまん!》

 

ヘリの上に降り立ったXライダーがライドルを振り回しハイドストームの頭部っぽく見える部分を切断した所で戸惑ったように動きが止まる。

スーパー1が通信を入れてくれたのだろう。

元々救助用のヘキサギアなんて作っていないので、ハイドストームは数が無ければヘリを抱えて浮遊する事はできない。

海中からさっきの残骸を元に再びハイドストームを生成し、ゆっくりと落下するヘリへと絡みつかせる。

なんとか間に合った。

が、今度はヘリの中から隊員が一人飛び出してきた。

錯乱した人だ。

この戦闘におけるノイズである。

どけなきゃ。

 

―――――――――――――――――――

 

無数のハイドストームの脚が絡みつくヘリの上で、Xライダーはそれを見た。

海面を走り近づくバイクから跳躍し、龍の身体を瞬く間に駆け上がる黒い戦士。

 

「! あいつは……」

 

先の市街戦にて、ロボットスーパー1を捕獲していった謎の戦士。

重力を感じさせない足取りで駆け上り、あっという間に龍に向かって飛び降りたスピリッツ第九分隊隊長、目黒の元に駆け寄ったかと思えば、手に持ったマシンガンを奪い投げ捨て、首根っこを掴んで地面に伏せさせた。

取り押さえた……いや、目黒の身体は半ば龍の胴体にめり込み埋まっている。

しかし、それをされた目黒は苦しげに呻きはするものの血を吐くなどしていない。

謎の戦士、ブラックイクサは龍の肉体を構成する分子に干渉し、先の悪魔元帥がそうした様に、目黒の身体を単純に埋没させたのである。

無論、この状態で龍が激しく身じろぎでもすれば目黒の身体は龍の肉体の動きに合わせて捻じ曲げられるのだが、龍の巨体故に、余程奇妙な動きをしない限りは怪我をすることも無いだろう。

最も、その余程の事が起きたとしてもブラックイクサは一切悪びれる事も無いだろうが……。

 

「Xライダー! そのヘリはそいつらに陸地まで運ばせますからはやくこっち来て! スーパー1に加勢するんですよ! 今なら三人で寄ってたかって袋叩きにすれば悪魔元帥を殺せます! 早く早くXライダーはやく! 急いで! just do it!」

 

「言い方」

 

間違いではないがあんまりな言い方に、場違いに呆れながらクルーザーを飛ばすXライダー。

龍に目黒を埋めたブラックイクサはXライダーが近づいてくるのを確認し、悪魔元帥に向き直る。

距離は詰めず、悪魔元帥を遠巻きに眺めている。

急ぎすぎたが故に錯乱した目黒が悪魔元帥の注意をマシンガンで引きつける前に到着してしまった。

が、龍を駆け上がる中で、そして龍に目黒を埋めるという特異な能力によって悪魔元帥の注意はブラックイクサに向いている。

ブラックイクサはイクサカリバーをくるりと手の中で回すと、一本の笛とも剣とも付かぬ凶器へと手品のように変じさせる。

右手に構えたそれを肩に担ぎ、往年のカンフー映画の如く、左手でちょいちょいと手招きをしてみせた。

悪魔元帥が憎々しげに顔を歪め、手に下げた稲妻電光剣を振り上げ、刃が激しく放電現象を起こす!

 

「ひ」

 

海を割る斬撃が自分に向けられている。

そう錯覚した目黒が悲鳴を上げかけ、上からブラックイクサの足で踏みつけられ口元まで龍の身体に埋め込まれた。

鼻から下を全て龍の身体に埋め込まれ、今まさに自らの文字通り目前で人知を超えた戦いが始まり、それに逃げも隠れもできない状態で巻き込まれんとしている目黒の恐怖は如何程のものだろう。

目を瞑り逃避する事すらできない程の恐慌!

その目黒の視線の先で、振り下ろされんとしていた稲妻電光剣を持つ悪魔元帥の手首にライドルが巻き付く。

クルーザーに跨ったXライダー。

まだライドルを伸ばさねば届かない位置ながら、Xライダーという明確な脅威に悪魔元帥の注意が向く。

 

重苦しいエンジン音と共に龍の周囲を竜巻の如く駆け上がる銀の戦士。

Vジェットに跨るスーパー1。

それを追う様にブラックイクサも龍の胴体を、悪魔元帥目掛けて真っ直ぐに駆け上がる。

力任せに電光剣を振り下ろそうとする悪魔元帥。

クルーザーごと腕の動きに引っ張られるXライダー。

だが、振り上げた電光剣の切っ先が振り下ろすよりも早く下に向く。

悪魔元帥周辺の重力が数十倍に増幅されている。

思わず空を見上げれば。

真昼の月。

そして、月を背負うスーパー1。

 

「打ちえぬ瞬間(とき)に……繰り出す。それが極意だ」

 

ぐん、と、一層強い重力波が悪魔元帥を押しつぶす。

空から迫るスーパー1を迎え撃たんと、重力に逆らい電光剣を天に掲げ、気付く。

軽い。

無い。

守り刀たる稲妻電光剣が。

いや、それを構える、手首から先が……!

 

「お荷物お持ちしますね」

 

悪魔元帥の視線が声に釣られる。

その視線の先には、血とオイルに塗れた凶器と共に稲妻電光剣を抱え、柄を握りしめる悪魔元帥の手首を引き剥がしてぽいと投げ捨てるブラックイクサの姿。

瞬間、魂を持たぬ傀儡であるはずの悪魔元帥の脳裏に浮かぶ怒り、屈辱。

それが致命的な隙となる。

 

「スーパー」

 

下を向いてしまい、重力波の強さから瞬時に顔を上げる事もできない。

 

「ライダー」

 

上空からの声は一単語の間にすら近づいてきている。

 

「月面キイック!」

 

胴体でなく、首を後ろから打ち据えるような一撃。

 

「やった!」

 

Xライダーが撃破を確信し、しかし、悪魔元帥は予想を遥かに下回るスーパー1のキックの威力に、思わず笑いを上げる。

スーパー1のキックが突き刺さったままの悪魔元帥の姿が蒸気に包まれ、その正体を表す。

全身を機械化した悪魔元帥の、宇宙生物としての真の姿。

8つの首を持つヘビ型宇宙生命体、ジンドグマ超A級怪人。

 

「それがキサマの最後の攻撃か、スーパー」

 

さく、という、切断音。

言葉が途切れ、発生源を変えて、続きが紡がれる。

 

(ワン)!」

 

8つの首を持つ、いや、持っていた7つ首の宇宙生命体の視線が下を向き……7つの視界が6つの視界へと変化する。

遅れて、切り落とされた首の痛みがサタンスネークを襲い、絶叫が響き渡る。

6対にまで減った蛇の目から破壊光線が乱れ打ちされ、スーパー1とブラックイクサがサタンスネークから距離を取る為に飛び退いた。

重力に引かれ海へ、龍の身体の下へと落ちていくスーパー1とブラックイクサ。

 

「ここで仕留めます」

 

ブラックイクサが小さく声を掛け、どこからか取り出した片刃剣、フレイムセイバーを手渡す。

それをしっかり握り込み、感慨深げに頷く。

 

「分かたれた流派が、再び一つに……」

 

「それ今やられると俺が師範とカプ厨に殺されてしまうのでやめて貰えると──あ」

 

間抜けな単音。

ブラックイクサの視線の先。

痛みと屈辱から破壊光線を乱れ撃つサタンスネークの背後、龍が顎門を擡げる。

半開きに、海水で構成された唾液を垂れ流しながら、その怪しげに光る視線は、しっかりと、龍の身体の上に居座るスーパー1とブラックイクサ、そして龍に埋まる目黒を捉え……。

JUDOの刻んだ呪いが、二人の人間の意識を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 





とりあえず、スピリッツの赤心少林拳編までならメイン現行の主人公が出してる能力で乗り切れそうで安心

☆別段トンネル効果で砲弾を避けたわけではない、各地のライダーから目撃情報が得られている怪しげな人間か人間でないかと言われると怪しい黒い戦士
ただまぁ本編最新話時点で真っすぐ飛んでくる砲撃なんて真正面から突っ込んでも余裕で避けられるから仕方がない
恨むならオニビビンババズーカ砲の弾速を昭和盛りにしなかった当時の少年誌の編集者たちを恨むといい
あと現状ずっと戦闘中なので変身を解いていないけど、実は完全なエイプリルフール企画だった時点で滝さん相手に素顔晒して名前まで出しちゃってるので変身解除が必要な場面になれば素顔も晒すかもしれない
そこら編は番外編だからまぁ許して欲しい
恐らく本編が終わるか終わらないかくらいの、DCD前後の時系列で飛んだのでまぁまぁ危険を跳ね除ける自信があるのだ

☆あっさり目に撃破されたジンドグマ四幹部
提示された戦闘力が想定を遥かに下回っていたのでこうもなる
黄金黴にしてもたぶん実際直撃しても主人公はモーフィングパワーで分解できるし、グジルも感染発症しても最悪肉体そのものを再構成するなりすればリセットされるし魔石の効力で普通に治る可能性もある
その他の幹部はまぁ……

☆医王山withおやっさんとチョロ
死の山と化したしそれで起きた資源被害は大きいけどまぁ人命救助の為だから仕方ない
おやっさんとかチョロも巻き添えでちょっと低体温症でぶっ倒れてるけどまぁそこは昭和ライダーの人間なので死にはしないんじゃないかな……
一般人を軽く上回る戦闘力を持つ戦闘員を相手にまぁまぁ戦える人間が低体温症で死んだりはしないでしょ
まぁ死ぬ時は死ぬのも昭和なんだけど

☆もうすぐ援軍が来る!と援軍に来たスーパー1に言われた直後に支えているヘリが海中から現れたヘリと同等くらいのサイズのメカ烏賊マシンの群れに群がられて常識的な対応をしたXライダー
なんも悪くない
スピリッツのお守り役
なんでかってもう旧スピリッツでメインエピ消化しちゃってるから実質スパロボで言う居るだけ参戦みたいになってるから

☆対バダン戦闘の為に集められた集団だけどバダンを目の前にすると正気を失う分隊長
なるほど戦える人間をとりあえずかき集めてきたんだなって感じがひしひしと伝わる人
こういう人の下に付きたくはない
後に目をかけていた人が出てくるけど、そっちもまぁ似たような人
なんか部隊の方のスピリッツに関して言及すればするほど辛口になるけど、それは後々スピリッツ編で理由を言及する事になると思う
赤心少林拳編で触れるかは不明
本編だと触れないからこっちでやるしかないんだけど
触れるも何も本編で主人公がやってる事を思えばスピリッツの理念とか行動とかは思うとこあるよねって
本当はマシンガンを乱射する目黒分隊長と沖一也のやり取りを目の前にした主人公がぽつりと口を挟む展開とかやりたい感はあったけど
実際戦闘中なのに錯乱されたらまず無力化するよね
味方誤射とかするやつならなおさら
やりたい展開とそうなるだろうという展開が重ならないのだ

☆なんだかんだ流派の詳しい自己紹介とかしてないからまだ色々勘違いして展開を先取りしようとしてしまう沖一也
でも一読者だった事もあるし実際にスピリッツ以上に待たされている師範に師事している主人公はどうにもこうにもカップリングを成立させたいのだ
新スピリッツのあの辺りの展開は義経師範のモノローグが結果的に乙女過ぎるからこのSSで行われる台無し展開を見るよりも先に読んでおいて欲しい
その上でこのSSではたぶん台無しにしてしまうから……

☆ドゲンジャーズナイスバディ
ついに最終回ですね……
公式通販で買った主題歌CDが届いたすぐ後に新挿入歌を出すとかやめてくだち!
公式通販さん送料高いのね!
買うけど
買うから早くCD出して♡出せ(豹変)
あとパワーアップというかほぼ登場メンバーリニューアルした割に戦闘シーン一話だけなの、いわゆる悪の秘密結社としてのPRを兼ねてるみたいな感じでそりゃ儲かるよなって感心するけど最終的に今シリーズも良きヒーローものだったのでみんなもニコニコ動画とかで見ると良いと思います
福岡民はこれをニチアサに見れるの幸せすぎん?
と思うけどコメありで見るのもまた味わい深いのだ
ごめんたいこでくらすぞ☆
柔らかい言い方してるけど、この状態でも
みんな、スマホは袋に入れたな?
録音、録画できるような機材は無いな?
よし
これから、先生はお前たちをごめんたいこでくらす!
って言うとある種の闇が垣間見える
AtoZで一回りしたから新たなスタートで2、これまでを背負って新しくやっていくっていう決意に相応しいヒーローでしたね
とんがっていたZが丸くなって2とも取れるのが良い
いろんな解釈ができるのは懐の深さにつながる
宇宙の力(物理)
まぁ……言うて昔からヤンキー気味のヒーローってのは子供ウケが良いのも事実なので前途は明るいのだ
親御さんからは苦情が来るけどね


次回予告
龍の発動したぶっとびカードで青森まで飛ばされた主人公とスーパー1と眼鏡
熱いラブコメの予感を感じた主人公は、口八丁手八丁で沖一也と共にどさくさに紛れてまんまと赤心寺へと潜入を果たすのだが……?
「今のお二人のやり取りのどこが尊みにあふれているかと言うとですね……!」
「あっ、今の一撃! 実質プロポーズですよこれは!」
「申し訳ないのですが貴方は負けヒロインの匂いがするのでちょっと画角から出てもろて」
本編世界ではありえない、若き師範とその想い人の死闘(イチャラブ)に、元の世界の黒沼流門弟を代表して、熱いCP語りが炸裂する!
次回、二人で突き抜けるノンストップ!仮面ライダーSPIRITS第十話

『突入! アナザー赤心寺!』


書き始めないとそもそも口八丁手八丁で赤心寺に潜入できるかすらわからない上に予告のセリフも出るか不明ではあるのですが、それでも宜しければ、次回も気長にお待ち下さい

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