オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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他愛のない与太話
139 強化の為の準備の為の強化の準備、或いはなんでも無い与太話の枕


悔しいと言えば悔しい。

が、しかし。

見方を変えれば、俺が負けるのは当然の話ではあるのだ。

積み重ねた歴史、というのは、決して軽いものではない。

こちとら、せいぜい百年そこらの時間で積み重ねた程度の事前知識だけでやりくりしているだけの野良戦士だ。

対して、創世王の積み重ねた歴史とはどれくらいのものだろうか。

 

あの創世王が、仮にブラックさんかシャドームーンのどちらかだとしても、俺と比べれば親と子程に時間に違いがある。

実時間でたかだが倍かそれくらい、と侮るなかれ。

知識というのは積み重ねた試行錯誤で得た結果を無駄なく精錬したもの。

今の人類にしても、数千年か数万年の歴史の果てに、ここに至るまでの歴史をぎゅっと十年そこらである程度学べる程度には効率化した結果の産物なのだ。

なんとなれば、秘密結社ゴルゴムの成り立ちを考えれば、人類の歴史に含まれないそれ以前の知識、それ以前から積み重ねられた知識が存在し……。

シャドームーンに施された洗脳などを考えれば、それこそ知識に関しては脳に直接刷り込む事でより効率的に学ぶ事もできるだろう。

 

改造人間技術にしてもそうだ。

創世王周りを除けばグロテスクな見た目の怪人の多いゴルゴムではあるが、人間を改造、或いは、人間以外を人間風に改造、はたまた、人間以外を人間以外に改造……。

それが最低でも、少なく見積もっても5万年分。

5万年周期での代替わり、というのが誇張で無ければ、十万か、その倍か……、とても計り知れるものではない。

少なくとも、俺は5万年途絶えること無く存在し続けて技術を継承し続けた組織、などというものを知らないので、それがどれほどの技術的積み重ねを持てるものなのか、想像することすらできない。

 

時間というものは酷く残酷だ。

誰しもに平等に流れ、生まれの早い遅いは決定的な違いを生む。

先に生まれたものは、後から生まれたものを一方的に害する機会を確実に多く長く持っているのだ。

かの、母親に授乳を強制させた範馬勇次郎ですら、生誕直後に母親がビビって従うのでなく、単純に驚いて地面に投げ捨てて固くて重いものを叩きつけるなどすれば死んでいた筈だ。

 

今回の事例もそういうものの一種だ。

俺は旧グロンギのンを打倒し、テオスのかけらを取り込み、ミラーワールドの技術を学び、クロックアップ技術を再現し、呪術、陰陽術などを学んではいるが……。

ゴルゴム程の巨大で長い歴史的積み重ねを持つ組織から見れば、よちよち歩きの赤ん坊が三輪車を乗り回し始めた、程度の位置にしか居ない。

呪術などの神秘的な技術は言わずもがな、ゴルゴム怪人は標準的なものですら光速戦闘対応型であるという疑惑すらある。

それに比べ、俺の歩みのなんと緩慢なことか!

 

うさぎとかめ、アキレスと亀?

どちらにせよ、どちらもが休むこと無く前に進み続けている以上、後から走り出した側が追いつく事は無い。

 

いいや、悪は滅びるものだ、という意見は夢物語だ。

少なくともこの世界において、悪の大組織というものの壊滅原因は身から出た錆であり、外部勢力がぶつかってこれを打倒できた試しというものは殆ど存在しない。

いや、この、内部で製造された傑作機が反旗を翻して組織を打倒する、という流れも、実は生物の新陳代謝の一種であり定められた流れに過ぎない、という見方すらある。

或いは、既に今のゴルゴムは悪と言い切れない様な状態であるとも取れる。

 

ショッカー、ゲルショッカー、デストロン、GOD、ゲドン、ガランダー、ドグマ、ジンドグマ、バダン、そして恐らくは、XもBもつかない財団も……。

これらは残らず滅んでいる。

しかし。

その上で、ゴルゴムは残っているのだ。

支配体制を替えて、或いは組織としての方針すら変えて。

全ては壮大な実験だった、なんて落ちが待っていても可笑しくはない。

実験室のフラスコ、なんて例えをした男も居たが、別段、それはメタ的な意味で無くとも、世界そのものを実験室とできる巨大な存在がいれば起こりうる可能性でもある。

 

世界を覆い尽くすような、或いは、人類社会すら最初から手中にある巨大組織。

積み重ねた時間は数万、数十万、数百万、あるいはもっと、億という可能性だってある。

それほどの歴史の積み重ねを、後から踏み越えていくというのは。

それは、この世界で生きていく上では決して乗り越えることのできないどうしようもない相手だ。

今の俺で対抗できようはずもない。

 

つまり。

相手がこれから更に進化、或いは知識技術の積み重ねを行うよりも早く、数万、数十万、数百万、億という年月の研鑽を、人類社会ではない彼らの手の届かない場所で積み重ねて、取り込み、新たな俺にバージョンアップしてしまえば生き残れる。

という事になる。

 

 

そうすれば良い、というのなら、あとは手順を整えるだけだ。

物凄い早さで時間が流れて文明が発展する場所を用意し、そこで得たものを吸収する。

これで、俺単騎の能力やら技術力も、或いはゴルゴムに届き得るか、易々と蹂躙されない程度にはなる筈だ。

それが可能な技術を俺は既に所持している。

現状、準備に時間こそかかるが、決して不可能な計画ではない。

原始的単細胞生物を発生可能で、それを知的生命体に進化可能な条件の惑星がある恒星系を見つける。

そして、この恒星系を、大規模なクロックアップシステムで加速させてしまえば、時間的積み重ねはどうにでも消化できる。

無論、生命の進化にも手を加え、文明を形成し、有益な技術を開発できるように誘導をしながら、修行だって積む必要があるし、定期的な収穫も必要となるだろう。

 

この計画のメリットは、アギトの力……光のテオスの力の増幅も同時にこなせる、という点だろう。

原始的単細胞生物自体は他惑星で見つけているので、これにアギトの力を植え付けて増殖させる。

これを定期的に滅亡させて、増幅したアギトの力を回収していく。

一粒で二度三度と美味しい。

 

残念な話ではあるのだが。

これを実行に移せるのは、恐らくゴルゴムが決定的に俺を敵であるとみなしていない現状に甘える、という形に成らざるを得ない。

そもそも、あのサタンサーベル装備創世王は、殺そうと思えばもっと呆気なく俺を殺す事ができた筈だ。

あのバサバサとかっこよくはためいていたマントだって装備している意味は無かっただろうし、あの戦闘での創世王はサタンサーベル縛りとでも言うような状態だった。

もっと簡単に殺す方法はあったのだ。いくらでも。

 

だから、今の俺は見逃されている。

取るに足らない相手と見做されている。

無論、現時点でゴルゴムは積極的敵対者ではない。

人類側の優秀な科学者が行方不明になっている、なんて情報は入っていない。

オリンピックの強化選手などが攫われた、などという話もだ。

当然だろう。

昭和時代の悪の組織が非合法な手段を取っていたのは人類社会を掌握していなかったからだ。

完全に掌握した状態であれば攫う必要も無く、何ら不自然無く必要な人員を必要な場所に配置できる。

 

……そういう観点で見れば、創世王が俺の人類ちょっとアップデート計画を阻止したのだって、俺を斬り倒したのだって理由がはっきりしている。

現状管理できているものをいきなり何の事前告知もなしに別物に改造しよう、なんて、管理側からすればたまったものではない筈だ。

俺だって、ミラーワールド側で擬似的な生態系を形成させているヘキサギアやゾイド達を勝手に改造されたら怒るし、実行犯の場所がわかっていたなら殺す。

おじさんの言葉を信じるなら、その人類の中に創世王の家族とやらも含まれていたのだろうから怒りもひとしおだ。

むしろ、殺さずに真っ二つで済ませたのは穏便だと言っても良い。

 

俺だって反省している。

というか、真っ二つに分割されて小春/交路などという、サイクロン/ジョーカー、ラビット/タンク、やすし/きよし、オール阪神/巨人、とり/みきみたいな有様になってまで反省できないというのはどうかしている。

人間が人間をビルドみたいな形に分割するのはよほど怒りを抱いた時だけだろう。

俺は倫理的な部分がしっかりした文明人なのだ。

勝手に人の庭の枯山水の上で暴れだしたらそれは怒られて当然だろう。

俺がやるべきことは、それぞれに自由意志のあるこの星の人類を勝手に改造するなんて事では無かった。

俺が好き勝手にして良い箱庭と実験体の群れ、或いは畑を作る事だったのだ。

 

未だに、俺には正義の戦士が怒り出し、特定の相手に敵対を決意し行動に移す基準ははっきりとはわからない。

それは無辜の被害者の血と汗と涙の混合液の総量が何mlに達した時だ?

だが、わかる事が一つある。

彼らは、彼らの所属する世界の中でこそ被害者と加害者を決め、自らの干渉し得ない異世界、他星系の危機にまでは関心を持つことが()()()()、という事だ。

 

それは既に、封印されてしまった嶋さん……タランチュラアンデッドに与えた惑星でもって証明されている。

彼の眷属、臣民として用意したタランチュラベースの人工的に進化させた原始的な知的生命体、類人猿ならぬ類人蜘蛛とも呼べる彼らは、既にすっかり滅亡してしまった。

まぁ、放置して変な進化した挙げ句に侵略者になる可能性を考えて始末に行っただけなのだが、彼らの進化に使ったアギトの力と魔石の戦士化の霧は、しっかりとリターンを齎してくれた。

小さな惑星、地球よりも少し重力も小さい惑星で、規模としても一国あるかどうか、進化の度合いもきっぱりと原始的と呼ぶに相応しい状態だったが、確かに強化の実感はあったのだ。

そして、俺は勝手に生み出した罪もない生き物の群れを食い物にした訳だが、ライダー達から文句を言われていない。

つまり、ライダー的に他惑星でこういう事をする分には……セーフ、ということだ。たぶん。

 

これは間違いなく次に繋がる強化になる。

なるのだが……。

間違いなく時間がかかる。

まず、現状のクロックアップシステムを大幅にアップデートする必要がある。

今のクロックアップシステムは劒冑という大型ゼクターを必要とし、内部の装着員に対してのみ、限定的な時間だけ作用する機能縮小版だ。

大型化した理由もこれにあり、呪術で結界を作り、外界と分ける、一種の異界を作り出す事で異なる時間の流れに載せやすくしているのだ。

現状、ゼクターの装備範囲外を加速させる方法は存在しない。

数百年数百万年と星系規模で別の時間の流れに乗せるような規模にするには、数年や十数年で済まない程に時間がかかるだろう。

これは実は解決策がある。

リ・イマジのカブト世界における、加速したまま戻らない、という症状を人工的に発生させてやれば良い。

元の時間の流れに戻る方法も作中にクロックダウンシステムという形で示されている。

 

なので努力目標その一。

クロックアップしたまま戻ってこられない程度に星系規模でクロックアップを繰り返し可能な装置を製造する。

 

で、可能であれば、まだ未発見の生命進化可能惑星である事が望ましい。

タランチュラアンデッドに与えたのは割と地球から近しい惑星だった為か、ゴルゴムでも到達可能な位置だったのだろう。

そして、少なくとも一度ゴルゴムの庭を荒らした俺は、ゴルゴム側から庭を荒らされても文句が言いにくい。

この際だから、技術的な発展は諦めて、生命であるとアギトの力が認識できるタイプの生命が生存できる場所であれば良い、くらいに目標を引き下げても良い。

全体で見て生命であると分類できる惑星、或いは、プラズマと塵の結合によって生命的な振る舞いを見せるもの、でも良しとする。

それで最低限アギトの力の強化は可能になる筈だ。

 

努力目標その二。

知的生命が生存可能な惑星、或いは生命である惑星、或いは惑星無しで一定範囲で活動するアギトの力を植え付けて養殖可能な生命風の存在を発見、或いは製造する。

 

「と、いう訳だ」

 

「はえー、すっごい」

 

「きぼがでかい」

 

これからの活動方針をホワイトボードに書き出しながら解説し終えると、グジルとジルは呆気にとられた様にぺちぺちと拍手をしてくれた。

 

「まぁ……実行に移すのに十年どころではない時間は必要になると思うが」

 

「駄目じゃね?」

 

「考えただけで即座に問題を解決できる、ということの方が本来稀なんだよ」

 

「じゃあ、準備ができたら地球からは引っ越しかぁ」

 

「付いてくるのか?」

 

俺の疑問に、ジルがぐっと力こぶを作り頷く。

 

「うちゅうのうみはわたしのうみだよ」

 

「海っていうなら私達の出番だろ」

 

「俺にとってお前らの海要素って初対面の時に海から上がってきた時とネズミの国の海の方の年パス持ってる事程度なんだけど」

 

俺の言葉に目を逸らすグジル。

しかし、ジルは目を輝かす。

 

「せんぱくめんきょとったよ」

 

「マジかよ」

 

あー、でも、ジルの戸籍上の年齢でももう取れる年齢だったか。

身体能力も知識面も問題無いだろうし、昼間は暇だろうし、そういうこともあるか。

でも海はやっぱり関係なくない?

 

「宇宙船を乗り回したいんだってさ」

 

「お前は?」

 

「私は助手席で良いよ」

 

ひらひらと手を振るグジル。

意欲は無いようだが、まぁ、付いてくるなら何かしらの役には立つだろう。

一人で行くのは寂しいしな。

 

―――――――――――――――――――

 

まぁ、将来的には実行に移すにせよ、現時点では与太話の粋を出ない。

今の俺にできる範囲での強化、となると、これも限られる。

手元の狭い範囲でのアギトの力の養殖と、俺の中のアギトの力の強化だ。

 

まず、アギトの力は時間経過でも勝手に、緩やかにではあるが強化されていく。

そして負荷を与えればそれはより加速する。

これはオルフェノクから作った使徒再生アギトで実験済みだ。

初期のアギトの力の株分けはこれにより行われていた。

 

これを、俺自身に施す。

無論、日中に小春交路個人として活動する時間にムラマサゼクターリペアを装備しっぱなし、というのは難しいので、睡眠時間を少し削る形になる。

睡眠時間を削ってひたすらクロックアップを繰り返す。

可能であればこの状態で修業を積む。

もともとクロックアップシステム自体が連続使用すると人体に対してそれなりに負荷があるシステムだ。

アギトの力を育成するにはもってこいだろう。

慣れればクロックアップしながら睡眠を取る事も可能になるかもしれない。

そうなったら負荷が少なくなってアギトの力の伸びは悪くなるかもしれないが。

クロックアップしたまま元に戻れなくなった場合は、そのまま加速した時間の中でクロックダウンシステムの開発を始めれば良い。

 

これは結構効きが良い。

今ならサタンサーベルで切断されるまでのタイムをもう少し延長する事ができる。

一息分だけ余裕が出来たから、最悪今ならまっぷたつになる前に周囲を巻き込んで自爆くらいはできるだろう。

計算上、このままの成長曲線を保てれば、十年後くらいには完全切断される前にサタンサーベルの軌道上から逃れる事ができる強度が手に入るだろう。

その前に、キングストーンフラッシュの弱めのものならどうにか防げるようになる……かもしれない。

 

そして。

サタンサーベルに相当する武器の開発に関しては極めて難航している。

ニー君をベースに、と考え、回収した全てのラウズカードの要素を組み込んだ上で、新型の魔石ベルトも与えてみたのだが……。

まぁ、こればっかりはインチキのしようも無い。

サタンサーベルに斬られた事で、何となく、どういう物体なのか、というのはわかるのだが。

それを再現、或いは凌駕しよう、となると全く話にならない。

目標は遥か高くにある。

しかし、それがわかった所で、できることというのは限られているのだ。

 

だが、歩みは遅くとも間違いなく前には進んでいる。

新たな知見を外から得られる、というのは大きい。

 

とうとう猛士関東支部との直接の接触が成った。

角……鬼の追加武装に関してのディスカッションの為だ。

俺の提供した、ウルトラギアと劒冑。

これは鬼の機動力、行動範囲、という点で猛士に革命を起こしたらしい。

怪我などの関係上で長時間の鬼としての戦いが難しい引退寸前の鬼がウルトラギアを補助として使用し、止めの場面でのみ鬼化して浄化する、という戦法。

或いは、本来なら活動範囲外で発生した魔化魍に対し、一時的に劒冑を装着して現地に文字通り飛んで駆けつける、という運用。

こちらの想定するものではないが、鬼のサポーターが使用するだけではない独自の運用法が編み出され始めているのだとか。

 

「でも不思議よね、ウルトラギアの方が量産はしやすいんでしょう? なのに技術は出せないの?」

 

こちらの白衣を着て分解済みウルトラギアの一つを弄る妙齢の女性は滝澤みどり。

お菓子が好きという可愛らしいところもあるが、恐ろしく優秀な工学博士で、最近では鬼の鎧の新型開発にも関わっているという、猛士におけるジョーカーと言っても良い人材である。

生まれてくるのがあと十年も早ければ彼女もゴルゴムの研究に一枚噛まされていた可能性を考えれば、御年30歳というのは実に絶妙な年齢だったと言えるだろう。

 

「時間をかければコア部分を培養して増やす事はできると思いますよ。まぁ、注文して貰えば格安で卸しますからそっちの方が早いと思いますけど」

 

実際、ウルトラギアの解析はほぼ完了している筈だ。

何しろ猛士には元から魂を弄る技術が存在しているのだ。

ウルトラギアに微量のアギトの力が含まれている、というのも、何らかの魂魄片をエネルギー源にしている、というところまでは突き止めている筈だ。

だが、自然界にこれに類するものを見出すのは難しい。

無論、これから永遠に解析できない、という事はあるまい。

アギトの総数は理屈の上では増え続ける筈だし、そうなればアギトの力を解析する機会も増える。

 

「企業秘密、って事?」

 

バラバラになったウルトラギアの乗った机の上に顔を突き出し、ささやく様に聞いてくる。

それに合わせるように顔を近づけ、挑発的に笑って返す。

 

「解析する分にはご自由に、という事で」

 

権威ある、というか、実力、技術力の伴う優秀な工学博士、エンジニアとも呼べる相手にこれを言うのは、はっきり言って挑戦だ。

だが、そうした方がこういう人は能力を強く発揮する。

 

「かわいくないなぁ、君は」

 

ぎし、と、椅子の背もたれを軋ませて伸びをする滝澤さん。

かわいい成分に関しては、周囲に十分それを備えた人員が居るので、俺がかわいいを遂行する必要はない。

 

「で、どうです、この設計」

 

ずい、と押し出すのは、俺が設計した音撃管、の、分解済みのパーツだ。

古い時代に存在した横笛型の物を再設計したもので、先端部に装着した金色の刃を用いてある程度の近接戦闘も可能なスグレモノだ。

強度も音撃に使用可能な要素もしっかり備えている。

 

「突き刺して吹く訳じゃないのよね」

 

ごち、と、重い音と共に机に置かれた音撃管を転がしながら、眉間にシワを寄せて唸る。

 

「お師さんの弦と似た思想で作りましたから」

 

「その割に、新しい設計っていうか……割とシンプルだし、正常には動くと思うけど」

 

よしよし。

音撃管としても使える、というのならまずは良し、だ。

始めの一歩。

まずは構造から似せていく、というのは重要だからな。

 

「でもこれ、清めの音っていうより」

 

「おぉい、小春くん」

 

滝澤さんの言葉を遮る様に、猛士関東支部、甘味処たちばな地下にある隠し部屋、開発室の入り口を開けて、ここのボスである中年男性、立花勢地郎さんが顔を出す。

 

「仲村くんが迎えに来たよ」

 

「ありゃ」

 

「ありゃではないぞ」

 

立花さんの背後から、少し眉を立てた仲村くんが顔を出す。

時計を見れば、いつの間にか待ち合わせの時間を少し過ぎてしまっていた。

ついつい長居をしてしまったらしい。

滝澤さんに頭を下げる。

 

「今日はお時間を取って貰ってありがとうございました」

 

「いいのよ、私も参考になったから。またいらっしゃい」

 

ひらひらと手を振って見送ってくれる滝澤さんに背を向け、通路を歩く。

狭い通路で内緒話、という訳でもないが、何となく大きな声で話す感じでないと思い、仲村くんに近づき声を潜めて謝罪する。

 

「悪いね待たせて」

 

つられてか、仲村くんも表情を戻して、声を低くして答えた。

 

「いや……お前が約束に遅れる、というのも珍しいからな、何事かとも思った」

 

「最近ちょっと体調不良だった、ってのもあるかなぁ。ま、時間に遅れたのは技術交流が楽しかったからなんだけど」

 

「悪びれろ少しは」

 

「許してヒヤシンス」

 

べち、と頭部を叩かれた。

 

―――――――――――――――――――

 

実際、仲村くんとは良く会う訳だが、それは大体が猛士に流す武器類の話をする時か、同性同士で遊びに行く時くらいのもの。

で、そういう何らかの互いの理由で会う時というのは時間の融通が効く。

片方に外せなさそうな、或いは時間の伸びそうな用事がある時は別の日に改めて、という事になるのだが……。

 

「で、なんでまた今日いきなり会えるかって話になった訳さ」

 

二人で遊びに行く、という名目でたちばなを後にし、内緒話御用達の喫茶寿へ向けてのんびり歩く。

 

「俺だけではどうしようもない話があってな、力を借りたい……というか、お前が相談に乗るのが早い、というか」

 

難しい顔をして、どう表現するか苦心している様子。

 

「また知り合いの知り合い、みたいな場所からなんか頼まれてんの?」

 

「後輩から頼りにされては仕方あるまい」

 

最近の仲村くんはなかなかのもので、修行の成果か、ちょっとしたチンピラ程度なら『破ァッ!』とばかりに一喝するだけで蹴散らせる程度の実力を持つ。

首から上は委員長で首から下はコナン・ザ・グレートとの評判は伊達ではない。

真面目なタイプの後輩からすれば頼りになるし頼りにしたくなる先輩なのだろう。

 

「大変だねぇ」

 

「……今回の話、やもすればお前が原因という可能性もある」

 

「ほん?」

 

俺が原因のトラブル……?

平和に生きていく為に、ついに全力を越えた全力を出すために限界を越えようとしている俺がトラブルを?

そんな馬鹿な。

 

「あ、先輩!」

 

寿の前にたどり着くと、入り口の前で不安そうな表情で店内を見ていた女性が、仲村くんに対して声をかけて走り寄ってきた。

Tシャツワンピにメンズっぽいアウターを重ねた、ボーイッシュなショートの垢抜けた印象の子だ。

俺と共にお上りさんである仲村くんも、二年も大学に通えばこういう後輩ができるのだろう。

体幹がしっかりしているし、手を見れば関節が太く、少し骨が頑丈そうに見える。

カラテカだ。

かわいい度ではあおの方が上なので、浮気という線は無いだろう。

いや、まだ付き合っていないからあおが振られる可能性が無いではないが。

 

「そちらの方が?」

 

「ああ、専門家だ」

 

「俺は専門家を名乗れる程熟練した技術は身につけられていないぞ」

 

「いいや、間違いなくお前の専門だ」

 

お前が原因だ、或いは原因かもしれない、と言わないのは目の前の空手女子を気遣っての事か。

 

「まぁ、お役に立てるかはわかりませんが……立ち話もなんですんで」

 

中に、と、ドアノブに手をかけようとすると、その腕を掴まれた。

 

「危ない!」

 

袖を掴む、とかでなく、がっつり腕を掴んでの制止。

鍛えていない人間だったらむしろ痛みすら感じるのではないか。

抗議しようと目を向けると、空手女子は真剣な目でこちらを見つめている。

 

「あの、ですね、これは、今回相談しようとした話にも関係があるかもしれないんですが、この店、おかしいんです」

 

お前ひとの店を……。

いや、確かに標準的な喫茶店とは言えないかもしれないが。

そこまで言うか。

仲村くんも空手女子の後ろでうんうんと頷くんじゃない。

 

「いいですか、私、こんなことを言うと変に思われるかもしれないですけど、薬とか、そういうのもやってないですし、頭の病気とかでもなくて、本当のお話なんですが」

 

 

 

 

「最近、猫の忍者に狙われてるんです」

 

 

 

 

そう告げる空手女子の背中を、掃除用具を持ったニャンニャンアーミーが怪訝そうな表情で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

──にやあぁぁお

 

 

 

 

 

 

 





まくあいの他愛のない話

☆特殊エンド解放
養殖星系エンドが解放されました
これが阻止された場合、じゃあ星を直でならいいんだろ、という事で恒星喰らいルートが発生します、宇宙怪獣化とも言う
まぁ俺達の戦いはこれからだエンドをする時の選択肢の一つとして、収穫を何度か重ねた時点で当然のようにライダー相当の存在が生まれてなんで……とは成らずに悪役笑いして物語が閉じる感じで
あと目標が恒星系の話ってだけで、もっと小規模な養殖と収穫は積極的に行う事になります
歴史ある大組織のトップが強い?
じゃあこっちも歴史と大組織と掌握した文明用意しなきゃ……くらいの話
今まで目標にしなかったのはそもそも対ゴルゴムで創世王が直で出てくる事を想定していなかったからだよ

☆やっぱリントもわたしらと同じくなるんすねぇと感心する推定メインヒロインとノリノリで宇宙船を欲しがる無邪気宿主系メインヒロイン
まぁカビ養殖してペニシリン作るようなもんでしょ、くらいに考えてる
これ否定するならなんでリントって家畜とか育ててんの?
という文明をしっかり学んだが故の答えにくいやーつ
実際人間っぽい文明で無ければ少なくとも地球産正義の味方は反応しにくいのではないだろうか
第9地区のエビくらい見た目離れてればセーフ
見た目エビの現地産ライダーっぽいのが生えてくるけどな
実は既に船のパーツは自作して、輸送はニャンニャンアーミーに任せ、一緒に沖合に出て魚を仲良く取ったりしていたりする
宇宙船が手に入ったら宇宙漁だね!
プラズマ宇宙マグロくらい居るだろこの世界

☆後輩系カラテカ女子
最近原作小説の最新刊が出たからつい
ゲストキャラ
ついつい忘れがちだが主人公は相手の名前を覚えても脳内でも口ででも普通に呼ぶ事はあんまり無かったりするぞ
次回で出番は終わりだからそのまま消えます
ほぼ最初から認識されてた仲村くん?
波長が合ったんじゃないかな

☆名誉毀損で訴えても勝てるマッチョ委員長
委員長ではない
訴訟も辞さないけど、波長が合う、という部分は否定できない程度に付き合いやすいなとも思っている
そも高校卒業してまで付き合いが続けられている時点でこいつも常識人の中では大概
立ち回り次第ではヒロインが増えるかもだけどそんなにキャラ増やしてどうすんの
でもヒロインではないけどなついてくるわんこ系後輩キャラは美味しいけど主人公に生やすのは処理が増えるのでそういうのがこいつに生えたりするかもしれない

☆忠義っぽいのを見せたけど再改造はやっぱりされるニー君
目指せサタンサーベルと互角に打ち合える武器
やっぱ人間は駄目なのでは……?
自主と自立の精神で活動を続けている
次回スポットあてられる
猫の忍者なんて知らない
しらないよ
ほんとうだよ


こっから少しだけ響鬼要素を含む与太話してから響鬼変に入ります
魔化魍というものの性質を考えると妖怪ネタ都市伝説ネタが使えるからね
自然から減って都市部に増えてるって言うし
でも都市部で狐火が出るとはこれいかに?
ネットミームの魔化魍化は普通にありそうだからやった
私は好きにした
君たちも好きにしろ
でもゴジラSPは現状マジで名作の雰囲気ビンビンだから見よう
よく考えたらAIが進化した結果正義の心に目覚めて何故か巨大化するって元のジェットジャガーは色々先取りしていたんだなぁ
ゴジラSPを見る人も見ない人も、まだ続きを読んでやろうというなら、次回も気長にお待ち下さい

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