オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
たしっ、と、創世王と交路の死体の間に、一つの小さな影が降り立った。
──るるるるるる……!
戦闘、というにはあまりにも短い蹂躙劇を、遠くから見つめていた小さな獣、トライアルシリーズの傑作、ニー。
あらゆるアンデッドの特徴を受け継ぎ、最終的に猫そのものな姿のまま、雨に濡れた毛並みを逆立て、創世王を威嚇している。
交路が自らに付与していた利用方法から近くに待機し、しかし、創世王の気配を感じると共に音速で其の場から離れていた獣は、決定的な決着が付いた後に、交路を背にかばう様にして創世王の前に立ちはだかったのだ。
実際の所、ニーには自由意志が与えられてはいるが、交路はやろうと思えばニーを手元に引き寄せ、本来の想定通りに強力な武器に作り変えて使用することも可能だったろう。
想定する性能に達したニーであれば、サタンサーベル相手に二合ほど打ち合う事すら可能だった筈だ。
あるいは、ニーを自爆させて目くらましに使い、逃走の為の時間を作る事も可能だったろう。
ニーには実際、それが可能な程の力が内包されている。
それを行わなかったのは、交路があまりの危機的状況故に機転を利かせられなかったのか、ニーを利用しても其の場を逃れるには不十分だと判断したのか。
それは、現状では誰にもわからない。
しかし。
──おぁぁぁぁぁぁん
周囲の岩が、木々が浮かび上がる。
念動力、そして、植物を操る力。
アンデッド全ての力、というのは伊達ではない。
しかし、それは本来キングストーンフラッシュの無効化を乗り越える程の出力では有り得ない筈だ。
だが、それはニーの出力が上回った結果ではない。
既に創世王のベルトからキングストーンの輝きが失せている、というだけの話。
それに気付かず、ニーは創世王にありったけの遠距離攻撃を浴びせかけ、素早く身を翻して交路の死体に噛みつき、其の場を駆け出す。
連続で飛び降りるようにして下山する中、川面から顔を出したロードインパルスに飛び乗る。
ロードインパルスの背にある座席には交路の切断された下半分。
創世王に攻撃を浴びせかけると同時に、彼の爪の表面から顔を出したロードインパルスが回収していたものだ。
自らの全長ほどに伸ばした両前足で挟んだ交路の上半分を、下半分へと押し付ける。
傷口は瞬時に治る事こそ無いものの、切断面がズレる事も無く、しかし、動き出す事も無い。
未だ、ロードインパルスの走行に合わせて身体がガタガタと揺られるままに動いている。
──やうぅ
ニーが、交路の身体に身体をこすりつける。
じゃれるような動き。
しかし、それを行う度に確実に、押し付けられただけに見える断面の接合が強くなっていく。
ざり、ざり、と、舌でグルーミングを行う様に傷口を舐める度、鋭利に斬り裂かれた断面が薄れ、代わりにとでも言う様にニーの身体が縮んでいく。
暫しの後、交路の身体の断面が外から見て深い傷程度にまで接合された頃、ニーは交路の身体に寄り添う様に意識を失った。
―――――――――――――――――――
「よろしかったんで?」
創世王の背後から、ジャケットを着込んだ黒い飛蝗の異形、ブラックダミーが声をかける。
創世王は振り向きもせず、虚空にサタンサーベルを消し去る。
「構わん」
創世王の護るべき人と
あれはこれまで決定的な敗北を経験してこそいないが、それで折れる程やわではない。
これを有効な経験として糧にできる、と、創世王はそう確信していた。
バトルファイトに、統制者。
次代の創世王の種族候補選抜プログラムとも言うべきものは、今の時代には不要なものだ。
人類こそが、この星を統べるに相応しい。
それは、何年も前に証明されている。
あらゆる命は、テオスの決めた
そして、それを証明してみせた、テオスを退けたのは、他ならぬ創世王にとっての……
「ふふふ」
笑う。
創世王としての笑いか、私人としての笑いか。
或いは、その両方か。
ブラックダミーはただ、その背に向けて膝を付き、頭を垂れた。
―――――――――――――――――――
ハカランダで元気に働く天音を見て、剣崎達は安堵していた。
ハカランダ宛に、というより、天音達宛に始から手紙が届いたのだ。
アフリカの景色を写した一枚の写真と共に、新しい環境での諸々を書いた丁寧な手紙。
剣崎達に対するものでもあったそれを読み、出会って最初の頃に時折見せていたツンツンした態度からは考えられないその穏やかな文面に、皆顔を綻ばせていた。
何時まで離れていなければならないかもわからない。
アンデッドサーチャーは、アンデッドが戦闘状態にならなければその所在を確認する事はできない。
残ったアンデッドが非戦派なのか、それとも、ライダーというイレギュラーな戦士たちがいなくなるのを待っている慎重なタイプなのかはわからない。
これから、剣崎達は始に会う事はもう無いのかもしれない。
しかし、それでも死んだ訳ではない。
人間として生きていけるなら、笑っていられるなら、この星の上で共に生きていけるなら。
それは、剣崎達にとっての、或いは、相川始にとっての勝利だ。
そう思う事ができる。
「でも、無職にならなくて良かったね」
ハカランダを離れる車を運転する小太郎が気楽そうに言う。
後部座席に座る剣崎は、苦笑いをしながら答えた。
「ライダーが必要な状況が続く、ってのは、あんまり良くも無いけどな。仕事なんて、他に探せば見つからない訳でもないんだし、人助けだってライダーじゃなくてもできるしさ」
なんとなれば、剣崎はライダーとしての仕事がなくなって、清掃業なりなんなり、人の役に立つ仕事に付けたならそれで十分だとも考えていた。
誰かを助けるヒーローになりたい、ライダーとして、人を助ける仕事に誇りを持っているというのは嘘ではないが、助ける人がいない、という状況が実際は一番望ましいのだ。
「そうは言っても、BOARDとしての職歴が考慮される再就職先なんてめったに無いんだから、運は良かったわよ」
剣崎の隣に座る栞が溜息まじりに答える。
BOARDの研究員、という立場は一般企業の面接時にも使えるが、その研究内容などは口外できるものではない。
橘が持ってきてくれた再就職先……素晴らしき青空の会、という組織はその点、BOARDの活動内容もある程度把握しており、研究者として、そしてライダーとしての職歴を正しく認識してくれている。
「今後は、アンデッドの追跡に従事するあまり、人命救助に駆けつけられない、という事も無い。もっとも、実戦の機会は今ほど多くは無いだろうが」
助手席に座る、サングラスをかけた橘が戒めるように言う。
「有事に備えて、やることは多い、ですよね」
「ああ。アンデッドの殆どが封印されて、対アンデッドの活動が半ば休止状態だとしても、人類の敵は多いからな」
BOARDは事実上の解体、アンデッドの封印管理などの業務は素晴らしき青空の会へと移行されるに至るが、それでも世界が平和になった訳ではない。
人間同士の争いというなら専門の、警察やら自衛隊やらが出てくるだろうが、そうでない相手であれば、未だ、仮面ライダーという力が必要になる。
「今度は給料も良くなるんでしょ?どうする?引っ越す?」
「どうかなー、引っ越すったって、新しい物件探すのだって時間が居るだろうし、しばらくは世話になるかも……あ、寮とかあったらいいな。仕事が忙しくても今度こそ家賃の払い忘れ無くて済むし」
「いい加減そういうのは通帳からの引き落としにしなさいよ」
「給料が出てから考えますって」
にぎやかに話を続ける剣崎達。
それをバックミラー越しに見ながら、橘は考えていた。
アンデッドが
そして、明確な敵で無かったとしても、行動方針でぶつかることになる組織は多くあるのだろう。
数日前に、橘の自宅に投函された封筒。
その中に手紙と共に入れられた一枚のラウズカード。
クラブのカテゴリーキング、エボリューションタランチュラ。
『運営より』
『バトルファイトは今回で終了です』
『火種を残さないように』
『渡すべき所に渡すように』
渡すべき所。
今の橘にとって、それは素晴らしき青空の会の会長である嶋護だろう。
しかし、アンデッドに関する物品に関して、嶋護に一任されている、そして、橘を素晴らしき青空の会に誘った人物が、ふと頭に過る。
実のところを言えば、橘は彼から多くの事実を聞かされていた。
嶋登が既にこの惑星上には存在しないこと。
研究の為に、バトルファイトの管理外の場所でコミュニティを作って貰っているということ。
相川始は然るべき順序で封印される、ということ。
だが、現状は彼の説明からズレて来ている。
素晴らしき青空の会の方にも顔を出していない、という。
それは取りも直さず、封印の予定の無かったタランチュラアンデッドを封印した別勢力が存在する、という事だ。
「運営、か」
それが如何なる勢力なのかわからない。
しかし、橘は直感していた。
未だ、仮面ライダーの戦いは、終わっていないのだ。
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ある朝目が覚めると、小春交路は自らが巨大な包帯で出来た芋虫になっている事に気がついた。
というのは誇張表現だが。
睡眠以外から『目が覚める』というシチュエーションは何時以来だろうか。
身体を起こそうとして、痛みを感じる。
筋肉痛……とは違う。
足先から反対の肩口まで、身体を斜めに走る痛み。
久しく感じなかった、傷が治りきっていない、という状態の痛みだ。
──んぁぅ……
身体を起こす為に両手を両脇につくと、むにゅりという感触と共に右手側から猫の鳴き声。
見ればニー君が手の下で潰れたまま眠っている。
並の猫なら骨格がイッてると言っても差し支えのない程に押しつぶされ、しかし、仰向けで一文字に伸び切ったまま起きる気配が無い。
いや、目覚める為の力が足りない、というところだろうか。
見たところ、ほぼ無尽蔵の体力を誇るはずのトライアルシリーズの究極系とも呼べるニー君のライフエナジーは極度に消耗しきっている。
何かしらの出来事で力を使い果たしたのだろう。
「あ、起きた」
ドアの開く音と共に声。
視線を向ければ、心做しか普段より一回り小さくなった(幼くなった?)グジルが盆を持って入ってきた。
口を開こうとして、口が上手く動かない事に気がつく。
「無理すんなって、さっきまで殆ど死んでたんだから」
ま、私も似たようなもんだけどな。
と言いながら、カリオストロの城のお見舞いシーンばりに大量の食べ物が載せられた盆をテーブルに置く。
ベッドの横に置かれた椅子に座り、小さめのグジルがニー君を撫でる。
「私達のとこにもさ、来たぜ、黒いやつ。あ、勝てねぇな、ってなって逃げに徹して……奥の手使って、ジルの方はバタンキューだ。オメガリアクターで寝てて、私を出すにもこんな省エネモード」
奥の手。
アギトの力を文字通りエネルギーとして捉えた、シャイニングフォームの解釈違いの亜種の様な形態。
人間大の一つの太陽と化すそれは、生半可な相手であれば抵抗も出来ず焼き滅ぼせる威力を備える筈だが……。
仮にRXであれば、それこそキングストーンフラッシュで凌がれて逃げられない筈だ。
「ブラック・ダミーか」
ゆっくりと、噛みしめる様に口にする。
「ゴみたいなもん?」
「元は……赤心寺のロボタフみたいな。使い捨ての」
今では多少レストアされているのだろうが、それでも元は標的機でしか無かったという事実は揺るがない。
通常の怪人になぶり殺しにされる為の個体ですら、進化具合では一二を争う位置に居るグジルに勝ちの目を見せない強さにできる、ということだろう。
「うへぇ」
嫌そうな顔をしながら、グジルが食べ物の山からりんごを取り、ナイフでサクサクと彫刻を始めた。
「……つえーのはわかるんだけどさ」
「うん」
唇を尖らせながら、愚痴るように告げるグジルの言葉に頷く。
「最後の最後に出てきて、わけわからん横殴りされるのって、ムカつく」
「俺はいいのか」
「交路は割と最初から参加してたじゃん。私は知らんけど、ラとかゴの連中にはむしろ歓迎されてたんじゃねーの? なんか独自ルールで動いてるように見えたし、ルールが理解できない馬鹿なコウモリ野郎みたいのも居たからな」
「そうか」
「そうだ、よっと」
掛け声と共に完成したのは、赤いりんごの表面を削って作られた見事なクウガの生首の彫刻。
それが容赦なく六つ切りに斬り裂かれ、ナイフで突き刺したままグジルの口元に運ばれていく。
自分で食うのか。
「負けはしたけど生きちゃいるんだ。生きてれば次がある。死んでも生き返れば次があるみたいに。だから、今はゆっくり休もうぜ。次に会った時、舐めたマネされないように」
そいじゃね、と、グジルは立ち上がり、部屋から出ていった。
ばたん、と閉じる戸を確認し、手のひらを見る。
「……」
創世王側にどんな思惑があって、最後の最後で邪魔をしに来たかはわからない。
だが。
相手の思惑の正当性とか、俺のやったことの良し悪しなんてものは、関係ない。
力を積み重ねて、技術を積み重ねて。
それでも、より強い相手とぶつかってしまえば、負ける。
当然の話だ。
誰かの想いを背負っていたとか、そういう言い訳じみた事ができる状況ですらない。
結果的に見逃されはしたが……。
何時でも殺されてもおかしくない、というレベルで、俺は負けたのだ。
生き残れはしたが、それは、創世王の何らかの思惑があったからか、或いは、ただの気まぐれか。
気まぐれであれなんであれ、見逃してもらえるなら、生き残れたというのなら、良い筈だ。
長期的にはそれも乗り越える必要があるが、短期的に見れば、運が良かった方と言っても良い。
言っても良い筈だ。
「あ、あー……」
口が上手く回らない。
あの程度の会話しかしていないのに口周りの筋肉がぷるぷると震えている。
活動に最低限必要な力しか回していないのだろう。
積んであった食料がいつの間にか消えているのも、再生を優先して人間的機能を省略しているからだ。
周辺から身体の材料を取り込んでいるのだろう。
瞬間的に大気中のチリとかなんなら大気そのものを材料にするほどモーフィングパワーも本調子ではないのだ。
咀嚼して消化する、という過程すら惜しんで、身体は全力で治ろうとしている。
だから余計な部分は動かない。
ニー君を下敷きにしていない方の手で、ベッドの布部分を殴る。
「……くそぉ」
おかげで、涙だけは出なかった。
―――――――――――――――――――
「交路君治ったの?!」
ばん、と、戸を開けて入ってきた難波の頭部をとりあえず一発引っ叩く。
「いたい!」
「治ってねぇ、病み上がりだ、静かにしろぉ」
頭を抑えて抗議の視線を向ける難波を無視し、ソファに座り込む。
かくいう私だって満足に動ける身体ではない。
力を使い果たして眠るジルから、どうにかこうにか一人分に足りるだけの身体を作れたが、普段の身体を考えればこの身体はどうにも疲れる、半病人みたいなものだ。
「お見舞い……は、だめ?」
「今は一人にしといてやれよ。そういうタイミングだろうが」
「そうかな……」
「こういう機微はリントが作ったもんだろ。あたしに言われちゃホントにおしまいだぞ」
と、そういう言い訳で交路から遠ざけてはいるが、今、フルパワー状態のこいつを交路に近づけるのは不味い。
今、交路の肉体は飢餓状態にある。
それは睡眠状態の中でも変わりなく、眠っている間ですら近づけた食べ物が消滅して交路の肉体に取り込まれていた程だ。
だけど、今さっき起きてからはその速度がぐんと上がった。
視界の端においていた差し入れの山がみるみるうちに消滅していくのを見たのだ。
魔石とアギトの力……ギルスの力?で強化され、しかも交路から得た生命力を極端に溜め込んだこいつが近くに行ったなら、交路の意思とは関係なく、餌として吸収されかねない。
こいつの溜め込んだ生命力が元は交路のものである為、外付けのエネルギータンクとして認識されかねない。
殆ど絞りカスみたいな状態の私だから、ちょっとぐったりするぐらいで済んでいるのだ。
恐らく、ニー君が交路の側を離れなかったのも
ほぼ不死身と言っても差し支えないニー君が、衰弱して起き上がれない程になったのは、ニー君の生命力とか構成物質が分解されて交路に吸収されているからだろう。
真っ二つになりかけた交路を咥え、ロードインパルスと一緒に息も絶え絶えで戻ってきたところからもわかるけど、あいつは意外と飼い主を大事にするのかもしれない。
ニー君は構造上死ぬことは無いと思うし、難波ほど交路も入れ込んでいない筈だが、交路だって親しい友人を食ってまで傷の治りを早くしたいとは思わないだろう。
「強くなんねぇとな」
言ってしまうと、私も少しばかり平和ボケしていたのかもしれない。
交路やジル、難波と一緒にダラダラと、一緒に勉強とか修行とかしては居たけど、心構えが足りなかった。
不足していた、というのは首をひねるけれど。
心構えが足りていた筈の交路ですらああなった。
強くなったと思っていた私とグジルも、言ってしまえば敵の雑兵を相手に成すすべが無かった。
「今よりもっと?」
向かいのソファに座る難波に頷く。
しかし、それは難しい話になる。
今回交路は死にかけた……恐らく、一度死んだと言っても過言でない状態にまではなっている筈だ。
だが、現状で交路は結構時間を切り詰めて自己強化にあてている。
そして、少なくとも交路は私や難波に対して、日常の時間を限界まで切り詰めて自己強化に当たるようには望まないだろうし、自分でもそこまではしない、筈だ。
「修行の密度が高くなるのか、或いは今まで控えていた様な方法も取り始めるのか」
私は、新型のベルトで改めて魔石の戦士になった今の状態でも、それほど深く自己強化に関して考えを巡らせたりはしない。
実際に交路がどういった方法を取るのか、というのは分からないが、これまでとは違う形になっていくのかもしれない。
或いは、普通のリントの生活からズレたものになるか。
「……頑張ろう」
「難波は無理に頑張らんでもいいんでない?」
一緒に戦う、という心構えでいるとは聞いているし、戦いぶりも知っている。
でも、交路は本質的に難波を戦力としてカウントしているかというと微妙だ。
一線級の戦士として鍛えているのも、新たな知識を吸収する度に教え込んでいるのも、半端な戦闘力ではふとした瞬間に被害者の側に周りかねないからだ。
一緒に戦ってくれる、という心構えを持っていてくれる、守るべき大切な友人、くらいの立ち位置なのではないだろうか。
「やだ」
子供のような端的な否定。
「……変に出しゃばったりはしないけど……それでも、後ろじゃなくて、隣にいたいもん」
次いで語られる言葉は、強い決意を秘めている様に見える。
これだ。
最近は脳みその代わりにピンクの媚薬入酒ゼリーが頭蓋骨の中に詰まっている様な有様だったけど、こいつの決意は硬いし、たぶん、こういうタイプのリントの戦士は強い。
それはグロンギのムセギジャジャの殺し方の拘りとは違う、グロンギが滅びて、リントが栄えた理由の一つ。
私が知りたい、身につけたい、リントの持つ美しさの一つだ。
「まあ、言っても? 私らは修行時間を増やすくらいしか思いつかねーけどな」
「それなんだけど」
難波が、肩掛けバッグから一つの紙束を取り出した。
「私の方で、何かできないかなって思って、交路くんから教わった技術とか、色んな論文とか見て」
紙束は、まるでプレゼンで使用するかのように綺麗にまとめられている。
魔石の戦士になる前から勉強はまぁまぁできたらしいけど、大学に通っている間に色々と進歩しているのかもしれない。
「親戚の機械とか作ってる工場で、商品化して一般流通させられたら、交路くんの負担が減らせるかなー、って」
「乗るかぁ?流通」
この国って武器所持とか結構厳しかったと思うんだけど。
「今は難しいかなって思うけど……最近、テーザーガンとか売ってるとこが増えてるんだって」
「誰に教えて貰ったんだよそんなこと」
「飲み会で使ってくる人が居て、その人を動けなくしてから教えてもらったの」
はえー、リントは飲み会でテーザーガン使うんか。
酒を飲む時って普通武器使わないと思うんだけど、やっぱうちらを滅ぼすだけの事はあるよね。
「材料は安めの金属なんだけど、合金化すれば強度はクリアできるし、非武装状態なら法には反しない形で出荷できるだろうって」
片方は、要するに機械人形だ。
アップデートされたヘキサギアやらロボタフには劣るけど、それでも常人の盾になる程度の事はできるだろう。
「こっちの……銃?はどうなんだよ」
「いいでしょ、自信作。出荷時には殺傷力の無いエアガンみたいにすればいいし、護身用の鎧としては十分に使えると思う。今は物騒だから売れるって太鼓判押してもらったよ!」
「うわぁ」
「うわあってことは無いじゃん。改造してフルスペックに直しても警察の装甲服部隊のそれには及ばないんだよ?」
「いや、なんか、難波さぁ……やっぱお前、交路の女だわ、マジで」
私が半ば呆れながらそう告げると、難波は初めて会った時に比べて肥大化した胸を張り、ふふんと笑った。
「そうだよ、私、交路くんの女なんだから! …………こ、交路くんの女……へへへ」
自信満々、という具合の表情は数秒も持たずにだらしなくくにゃくにゃとした笑顔に歪んで消えてしまった。
良い意味で言った訳ではないんだけど。
まぁ、良い。
ヘキサギアの更新やら街の巡回やらを減らせれば、交路が頭を悩ませる要因を一つ減らせる。
そしてできた余裕を使って、何かしらの案が浮かぶように祈っていよう。
いや、祈るだけでは駄目か。
「なぁ、この話って、私も一枚噛めるか?」
「今は無理だけど、ジルちゃんがちゃんと元に戻って、グジルちゃんの身体もしっかりしたのに戻ったら、テスターになって欲しいかなって。製作所の人だと、身体動かせる人が居ないんだよね。仲村くんなんかは交路くんの方でテスターしてるみたいだし」
「今まで交路に頼まなかったのは?」
「サプライズにしたくて……」
えへへ、と、鼻を擦る難波。
犬は飼い主に似るというか、なんというか。
やっぱり、結構お似合いなんじゃないか、こいつら。
さて、これから交路はどうするか、私にゃ検討もつかないが。
こっちはこっちで、ぼちぼちやっていくか。
今度こそブレイド編完結なのだ
以下捕捉
☆猫の恩返し
野良猫は飼いならされはしないが恩も決して忘れないってミーくんが言ってたからね
でも別に放置しても殺されたりはしなかったんじゃないかなって
なぶり殺しとかなら猫的にわかるけど殺してから止めを刺さない、というのは理解できないのでとりあえず助けた
☆元BOARD関係者
というか原作ブレイド組
橘さん以外は始、ジョーカーがまだこの星のどこかで始として暮らしていると信じている
これからは疑似ラウズカードを使う事になるのか、別システムに移行するのかは不明
橘さんだけが不穏さを感じている
感じているのでグラサンをかけはじめたが、橘さんが何か面白いことをするのはいつものことなのでブレイド組はそれに気付く事はできない
☆バトルファイト管理運営委員会ゴルゴム
たぶん感想でも書かれてたけどアンデッドという種族とバトルファイトそのものがゴルゴムの仕込み
前創世王の心臓が明らかに人間のサイズではないので、5万年前には別種族の双子が戦って創世王になっていた、たぶんタイミング的にはマンモスかな?氷河期にもあたるし
別の悪の組織に創世王の肉体部分が渡されてて、みたいな話も某書には推論として書かれていたけど多分この世界ではドラゴンの身体と頭脳と心臓で別々の組織を運営していたとかは無い
人間が主役のこの時代でテオスが一応人間に敗れるという形でお隠れになったので今後の創世王候補は人間から出てくる
もう魚とか魚怪人が5万年に一度の日食の日に双子で生まれてもワンチャンもないのだ
というか、たぶんテオスの写しである人間が一番可能性高いだろうという事でゴルゴムの怪人は大まかに人間のフォルムを取っていた、という可能性が高い
☆負けた人
めっちゃくやしい
悔しいので今まで避けてきた諸々の自己強化方法とかを取り始める
そこんとこは幕間で
☆画面外で負けた人
まぁ生きてりゃどうにかなるのはわたしを見れば明らかだよな
という事でそんなに気にしてはいないように見えるけど次は勝つつもり
どう勝つかは予定に無いけどそこんとこはグロンギ時代の脳筋が残っているのかもしれない
メインメンバー三人の中で一番理性的だし文明的だけど剛力自慢のゴリラ(クジラ)だという過去は消しきれない
☆朱に交わって交わり過ぎてもう真っ赤ッ赤
負けた二人が負けてた頃、親戚の経営する製作所で人類用の武装とか護衛とかを作る打ち合わせをしていた
将来的にこの製作所の経営権を乗っ取れば交路くんの力になれるよね、えいえいむん!(破壊のカリスマ)
経営だって魔石の戦士の学習能力で速攻覚えて将来的に大企業にしてしまうかもしれない
主力商品はメカメカしい合体とかもする人型ロボットと銃型変身アイテム(人体に安全)
実際小説版クウガだと社会にめっちゃ溶け込むグロンギが居たしどっちも成功していたからね
テーザーガンを使ってきた飲み会に来た人は一時的に二度と動けなくなって貰ったがその後はなんとか練習したモーフィングパワーを駆使する事でいちおう動くように直せた
直す時の事を直された側は覚えていないが徹底的に破壊された痛みと巻き戻しの様に無理やり治る時の痛みでトラウマになって表に出てこれない
☆創世王with再改造ダミーズ
原作では死んでた連中も居るので七番以前のナンバーもちょっと残ってる
キングストーンこそ搭載していないものの、疑似ストーンを内蔵することでバイタルチャージが可能
ジルとグジルが勝てないと判断したのは少し打ち合ってからで経験なども含めたものになる
アンデッドの時と異なりゴルゴム製のしっかりとした武器を持ってグジルの足止めに来ていた
しかし創世王の正体は謎で一切経歴も不明なのだ
赤いのはSICで登場したアナザーシャドームーンから
だから、系列としてはシャドームーンみたいに追加改造された最新式のボディであると思われる
☆それはともかく最近のママンと実家に置き去りメカと送られたニャンニャンアーミーの一体
やっぱり猫可愛いわよね……飼っちゃおうかしら
あーどこかのわたしの息子が猫を多頭飼いしてて預け先に困ってたりしないかしら!
なお後日実家の追加護衛として送られてくるもよう
実家の家事手伝いとして置かれている小さめのスケアクロウがオプションとして猫を上に乗せる事になる
買い物に出た時に猫の可愛さを駆使してお店の人からおまけを勝ち取る技能を得たぞ!
護衛は本能的に不要と判断して猫としての振る舞いしかしない
海が近くに無いので魚が取りにいけないのだけが悲しい
でも偶に山で鹿やイノシシを狩猟して家計に貢献している
そういう訳であれやこれやと右往左往していたブレイド編のエピローグでした
難波さんを登場させないのもあれかなって事で出したらへんな事しはじめた
女としての好みはお姉さんかもしれないけど頼りになる相手はわたしなんだから!という変な方向性でのアピールなのかもしれないが、実際はほんとにいっしょうけんめいなだけ
という彼女が今後どうなるかとか、主人公がこの敗北に何を思ってどう動くかは次回移行
響鬼編は友人枠が出張る事になるかな?
どうなるかは本格的に決まっていない
いっそ幕間的な話になるかも
魔化魍のあり方から見たこの世界、みたいな話になるか?
どうなるかは明日以降のぐにょりが決めます
それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい