オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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ふむ。

 

「ジル、この服いる?」

 

ハンガーに吊るした先日の仮装一式をジルに見せる。

こくりと頷き、受け取った衣装に顔を埋め、くんくんと匂いを嗅ぐと、首を傾げた。

 

「もうきないの?」

 

一応一般的なクリーニング屋ではできないくらいにがっつり消毒消臭したのだが、まあアギトには超越感覚があるから仕方がない。

 

「ああ……やっぱり、普段遣いのボディに比べると出力がな」

 

常人とは異なる分子構造、骨格、筋組織で強化された肉体と言えど、結局は物理法則を始めとした諸々の法則に縛られてしまう。

同じ理屈で強化された肉体であれば、ある程度まではより太い方が都合よく力を引き出せる。

鍛えていない文化系高校生ベースのガイバーⅠが鍛え上げた秘密組織監査官ベースのガイバーⅡに勝てないのと同じ事だ。

MCUのアイアンマンスーツが対ハルクを見据えた結果一作目の敵役であるアイアンモンガーの様に巨大なものに成らざるを得なかったのと同じ理屈だ。

言ってしまえばナノマシンスーツだって普段は犬に擬態させるとかで傍らに控えさせてマテリアルをもっと多量に使った構成にしていれば良かったし、もしかすれば生き残る目もあったかもしれないのにと思うのだが……。

話が逸れたか。

 

その点、最近発覚した難波さんの特異体質はそれらの問題点を一気にブレイクスルーできる可能性があったのだが、これが中々再現が難しい。

というより、あれが難波さんの中の力が選んだ進化の方向性なのだとすれば容易く再現できる方がおかしいのだが……。

呪術的な細工まで含めれば似たような真似ができるのでは、という目論見は見事に崩れ去った。

科学、呪術、超能力、モーフィングパワー。

これだけ揃えても中々どうして、万能とすら言い難い。

 

アギトの力、そして、魔石の力。

これらはすべて人間の可能性をより深めていく力だ。

望みを叶える力、と言えるかもしれない。

望みを叶え続け、内包する可能性を突き詰め続けていけば神にも至る……かも、しれない力。

多くの人間はそこに辿り着く前に寿命で死んでしまうかもしれない。

或いは、多くのアギトはその過程で寿命を克服する形に収束していくかもしれない。

それはどんな形のアギトだろうか。

 

不老のアギト、というのはなんとも後ろ向きなアギトだ。

老いたくない、というのは普遍的な願いではあるが、死の拒絶、劣化への拒絶だ。

考え方の違いかもしれないが、進化を促すものか、と言われると首を傾げる。

可能性の扉を押し開く願いというのは、『何々したくない』ではなく『何々したい』というものになると思う。

 

否定形の願い、というのは、どうしても迂遠になりがちだ。

死にたくない、老いたくない、だから、老いない形になりたい。

嫌なものがあり、それを否定する。

これで2つの思考プロセスが生まれる。

 

仮に、不老長寿、あるいは老化しない形の進化を成すアギトが生まれるとすれば。

それは、もっと先の時代を見たい、とか、もっともっと世の中を見ていたい、とか。

何かを得たい、という欲望からの進化になるだろう。

 

アギトの力、というのは、細やかな注文ができる魔法のランプではない。

アギトの力はきっかけなのだ。

燃料に点火する種火だ。

だから、シンプルな願いこそが一番伸びやすいし……。

現時点のアギトの多くが、攻撃的な形で進化を続けているのはそれが原因だろう。

 

外敵が居る、だから守りを固める為により硬く、より素早く。

そういうものよりも、外敵が居る、喰らえー!

という方が瞬発的な対応としては自然だ。

複雑な、奇妙な進化を遂げるアギトは当然のごとく奇妙な経緯を経て進化を行う。

そも、それとわかるほどに分岐した進化を遂げたアギトのサンプル数が少ないので諸々断言できるものではないのだが……。

 

例えば時のアギト。

これは、実のところを言えば占い師一人の力で成し遂げた進化ではない。

いや、元を辿れば一人なのだが、これは要するに、予知により接続された分岐世界に存在する無数の占い師からアギトの力が収束した結果なのではないか、という予測が立てられる。

時間を操る、というのは、無限に等しい並行世界から種火と願い、エネルギーと方向性を与えられなければ自然発生し得ない特殊な力なのだと言えるだろう。

 

実のところを言えばジル、グジルの現状も特殊な進化と言えば特殊な進化なのだが……。

これは例外が過ぎるから一先ず置いておく。

 

とまれ、占い師さんはかつて自分だった無数の未来人からの願いを収束する事で進化を果たした。

元手一人で作った元気玉のようなものだ。

システム的には地球上あらゆる命の集合無意識であるとされている統制者と、或いはこの世界における各種族の代表であるアンデッドとも似たシステムだろう。

 

意思の力を集めて強くなる、というのは、ある意味ではこういう世界での定番とも言える。

人類の光を集めたグリッターティガ。

或いは風都の人々の祈りを受けたサイクロンジョーカーゴールドエクストリーム。

意志の力、というのは存外馬鹿に出来たものではない。

それを正しく受け止める器があれば、どの様な形であれ意思は受け止められる。

 

繰り返しになるが、統制者の正体が割れている以上、これを消滅させ、バトルファイトを二度と開催させない事自体は極めて簡単だ。

メガヘクスやブラッド族を直接相手取らない為に以前から研究していた、対侵略的異星体破壊兵器を製造し、それを地球に叩き込んでやれば良い。

無意識集合体というのなら、その元となる意思を全て消滅させてしまえば良いのだ。

だが、当然ながらこれは無し。

どうせ妨害されるからなどという消極的な理由ではなく、手段と目的が逆転してしまっているからだ。

人死に……俺にとって死ぬと悲しい人、死ぬと不便な他人、それらすべてを殺してしまうのでは意味がない。

 

もう少し難しいやり方になるが、この惑星に住まう生物すべての脳と魂を改造し、他の種よりも多く増え優れた存在になりたい、という意識を消し去ってしまうという手もある。

が、これは現状の持ち札では非常に時間がかかり恐らくだが確実に妨害される。

更に言えば、今思いつく改造方針だと、この条件を満たした生き物は競争意識、生存意欲の多くを欠損してしまう。

それは生き物すべてを殺して代わりに人形を立たせているようなものだ。

実現性の低さ、という点を置いても、心情的に却下。

 

できるものならやっている、恐らく知る限りの力を使っても実現できないだろう、一番穏当な解決法は、言語以外のあらゆる霊的意思疎通方法を遮断する事だ。

統制者があらゆる生き物の集合無意識というのであれば、あらゆる生き物の無意識を束ねられない様に、遠隔地にある意識を接続できないようにすれば良い。

言ってしまえばバラルの呪詛の様なものを地球にバラ撒いてしまえば少なくとも統制者は消滅しバトルファイトは発生しなくなるだろう、という目論見だ。

恐らくは現状人類が言語の外でなんとなく行っているやり取りが完全に封じられ、分かりあえていた人々も命も相互不理解から相争う事になると思う。

が、そんな呪詛が無くても人も生き物も最終的には争うように出来ているのだからこの副作用に関しては一切気にしなくて良い。

問題点は一つだけ。

呪術に関して既にそれなり以上に学べている今の俺でも、そこまで大規模かつ複雑な無線意識交換阻害術は到底考えつかない、という事だろう。

つまり、無理ということだ。

 

恐らくだが、この集合無意識であるという統制者、殺しにくさ、排除しにくさにおいては歴代ライダーシリーズの中での随一のものだろう。

自分含めてこの世の何もかもがどうなっても構わない破滅主義者でも無ければ排除するのは難しい。

力で上回り殺せばいい、というだけの連中とはわけが違う。

殺せる殺せない、排除できる排除できないの問題ではなく、排除する訳にはいかない、というのが非常に厄介だ。

 

敵は安全安心の為に排除する。

大体の場合それは殺すという事で、殺せずとも封印するなどして無力化するなど手段は多くある。

統制者は群を抜いてこの無力化が難しい。

実際のところ、俺はこの問題を先送りにしても問題は無い。

なんとなれば、無理やりヒューマンアンデッドをリモートして生き残らせ、その上ですべてのアンデッドを封印、ヒューマンアンデッドに現状維持という形で人類を繁栄させて貰っても良い。

それが許されたなら、もう一万年だけ、バトルファイトについて考える必要のない時間が生まれる。

 

俺が何時まで生きているかは知らないが、もしもそこまでに寿命などで死んでいれば後は知らんぷりだってできる。

もしも、魔石なりアギトの力なりの作用で一万年後まで生きていたとしても、一万年もあれば新しい選択肢を作り出す事もできるだろうし、何なら一万年もあれば無線意思疎通遮断装置なり術なりを開発できていても良いだろう。

そういう意味で言えば、勝者無しの無効試合は不都合とも言える。

まぁ、そもそもこの戦い自体、ヒューマンアンデッドが速攻で自ら封印されるとかいう真似をせず人間として持てる力をすべて費やして戦うなり逃げるなりしてくれていればここまで身の振り方を考える必要も無い話だったのだが……。

 

だが、ヒューマンアンデッドは自ら封印されたのだ。

やつの思惑がわからない以上、取り敢えず現状で行えるベターな選択を行うしかない。

 

統制者を排除できず、一万年の先延ばしもできない。

やはりゴルゴムが何を企んでいるかはわからず、そのままヒューマンアンデッドの思惑通りに話を進めるべきかもわからない。

となれば、取れる手は限られてくる。

 

「こうじ、これ、むねはいらない」

 

と、ジルが渡した服に首と腕だけ通した状態でつっかえている。

柔軟性は格闘戦ができる程度にはあるのだが、ジルの割と冗談みたいなサイズの乳房を無理矢理に押し込める程のものではない。

それでも無理に押し込めば、服が破けて終わりだろう。

 

「それくらい自分で直しなさい」

 

胸元の生地をそのまま複製するような形で伸ばせば良いのだから、生き物の傷を治すより余程簡単だ。

この程度ならジルにだってグジルにだって、なんなら旧グロンギのゴあたりなら誰でもできたかもしれない。

ゴ連中の衣装にしても、そもそもゴくらいのモーフィングパワー熟練度があれば適当にそこらの布とかから製造できたろうし。

 

「こうじやって」

 

が、ジルはぐいと胸元をこちらに押し付け言うことを聞かない。

 

「しょうがねぇなぁ」

 

こいつがこういう時のワガママは譲らなかったりする。

いっちょやってみっか。

モーフィングパワーを通し、胸の上で無残につっかえている布地部分を引っ張る。

元がスレンダー向けのおしゃれ着風デザインなので激しい体の動きを阻害しない程度の柔軟性しか持たせていないので、まずは素材を弄って柔らかくする。

で、胸元の生地を水増しすれば完成、なのだが……。

 

「胸元どうする」

 

「ちちぶくろ! そっちのほうがおしゃれ!」

 

に、と、屈託のない笑顔で笑う。

おしゃれにも気を使うお年頃なのだ。

成長著しい。

 

「そうだな、その方が良いか」

 

もともとシャッとしたデザインなので、胸元を起点にお腹周りにテントができるとデザイン的に不格好になるから、それしか無いだろう。

……今でこそ、こうして何も警戒する事無く喋れているが、始めはジル……ズ・グジル・ギに対しては非常に強く警戒していた時期がある。

本当に何も覚えていないのか、復讐心は無いのか、或いは記憶が無くともオルフェノクとしての本能で襲いかかってこないか。

 

正確にはそれは殺す前のグジルであり、今のグジルとも、ましてやジルともまるで別の存在ではあるのだが。

だが、それは時間を掛けて完全に解決し、こうして本当の家族か、或いはペットの一種の様に親しみを持って接する事ができるようになった。

今まさに服の下に隠れたブラにしても、この時代ではまだ設立されていない未来の下着会社が製造していた巨乳でも肩こりをしなくて済む構造のものに、ジルが好むような可愛らしいであろうデザインを組み合わせて自作してやっているものだ。

グジルなどはこのブラの構造を参考にセクシー下着を自作して夜や休日に見せびらかしてきたりもするが、それは置いておく。

 

かつては敵だったものの成れの果てと、こうして共に暮している。

極めて限定的な条件下での話ではあるのだが。

それを毎度毎度あちこちの方面に期待するのは筋違いなので勘違いしてはいけないのだが。

敵、或いは、無力化するべき対象と、和解、の様な形を取る事は、決して不可能ではない。

大体の場合不可能だし可能であるという前提で動くと痛い目を見るし最悪痛い目では済まないので結局の所は可能な限り少ない手順で目撃者を出すこと無く証拠も残さず殺したりして始末してしまうのが最善ではあるのだが、一応、不可能と断言する程ではない。

まして、相手は集合無意識。

そこには俺の中の無意識すら含まれているのだ。

できるかできないか、で、言えば……。

 

―――――――――――――――――――

 

都会の空は四角く区切られている。

高層ビルの立ち並ぶ街を、下から見下ろした時に誰かが言った言葉だ。

だが、区切られている、というだけで、地下なり建物の中なりに入らない限り、見上げれば空がある。

だが、空を見上げる人はそれほど多くもない。

生きていく上では色々なものが必要で、それを得る為の金が必要で、それを稼ぐためには働かなければならない。

ふと空を見上げる事があったとしても、長時間空を眺め続ける人というのはそう居ない。

 

だからこそ、空の上、というのは、どこからでも見えるにも関わらず、意識的には死角になる。

地べたを歩いて生きていく中で、目の前にある障害物を避ける事はできても、空から降ってくるものには対応しきれる者は少ない。

或いは、視力や反射神経に優れた人間であっても、空から落ちてくるものには反応できる方が稀だ。

 

それは、たとえ人間を超越したアギトであっても変わらない。

街を警邏する使徒再生アギトの警官も、やはり気付かない。

それが能力行使に慣れ、ある程度は人間態でも超越感覚に近い能力を備えていたとしても変わらないだろう。

一般人にとって、そして警察官にとって、この日、街は平和そのものだった。

彼らを責める事はできない。

数年前にメ・バヂス・バが起こした狙撃事件を覚えていようがいまいが、遥か数千メートル上空に不審物や不審者が無いか確認する義務は、警察官には存在しないのだ。

 

それは、かつてバヂスが居たような高所から、じっと外界を見下ろしていた。

複眼を用いて常人とクウガを色で見分けていたバヂスと異なり、それの視界にはどこまでもクリアに地上が映し出されている。

滑るような黒い装甲を身に纏う、機械の翼を備えた戦士、甲虫武者。

 

しかし、普段であればジェットエンジンの如き噴射炎を放つ合当理は一切の音を立てず、機能を停止していた。

短時間のフライトとは異なる、長時間高所に居座る状況であれば、合当理を用いた加速は危険だ。

一般人とて無能ではない。

下手な真似をしてレーダーの類に捉えられない為の工夫だろう。

今の彼は持ち前の念動力で自分を持ち上げている様な状態にある。

 

ずらり、と、甲虫武者が刃を抜く。

大太刀ではない、長すぎず、反らず、真っ直ぐな、しかし切っ先には鋭さが存分にある鋭利な刃。

空中に立っていた姿が逆さまに、頭から地面に落ちていく。

ふと、姿が消える。

加速したのだ。

タイムベントか、クロックアップか、或いはアクセルベントも使っているかもしれない。

停止した時の中、自らの時を加速させ、肉体の限界を試すかの如く、疾く。

 

甲虫武者が落ちていく。

真っ逆さまに。

落ちる。

 

視線の先にあるのは標的の姿のみ。

数千あった距離は数百、百、数十、というところまで来ている。

振りかぶる。

変則的な投擲術。

手の中にある刃……いや、鋭く研がれた長大な針を、抉り込むように投げる。

 

―――――――――――――――――――

 

びす、と。

キングが耳にしたのはそんな間抜けな音だけだった。

音の方を振り返れば、停止した時の中でこっそりと移動させていたスカラベアンデッドが居るのみ。

人間に化けることもできない下級アンデッドを洗脳し、しかし人間に知られる事無く動かすにはとても難しい。

特に、人間に擬態している間にアンデッドを侍らせていたなら、このご時世ではすぐさま仕事熱心な警察が飛んでくる。

 

スカラベアンデッドと行動を共にしているのは、キングなりの警戒だった。

現代における人間の進化は凄まじい。

決して油断できるような相手ではないし……或いは、自分たちでも戦えば危ういと思える敵は多く居る。

そして、下級とはいえ変身する事も鎧を身に纏う事も無くアンデッドを一方的に屠ることのできる人間が居ると知れたなら、余裕というものも崩れるものだ。

 

スカラベアンデッドの能力は実に優秀で、攻防共に応用がしやすい。

時を止めている最中に行う攻撃は相手にダメージを与える事ができないとはいえ、それは攻撃が直撃する寸前に時間停止を解除してしまえば良く、万一受け止めきれない攻撃が行われた時にも時を止めてしまえば容易く避ける事ができる。

人目を避けられない、という問題もスカラベアンデッドならば殆ど問題なく解決できる。

人目のある場所では時間を止めて移動すれば良いだけの話だ。

目撃者が出るのは人目のない場所で時間停止をしていない時に目撃された場合だけだろう。

 

今もやはり、時を止めての移動中だった。

今の人類はアンデッド達の戦いを知らない。

しかし、現代の人類はアンデッドの戦いを知らずとも、無数の敵との戦いを乗り越え、強い警戒心と戦力を兼ね備えている。

それどころか、かつてヒューマンアンデッドが見せた戦闘態に似た姿に変じるようなものまで現れ始めていた。

スカラベを適当なところに押し込めて一人で好きに散策をする程に間抜けではない。

だが。

 

ばさ、と、鳥が飛び立つ。

じぃじぃというセミの鳴き声。

周囲から生き物の生きている音が聞こえだす。

時の止まった世界ではありえないことだ。

時間は動き出している。

スカラベがキングの支配から逃れて能力を解除したのである。

 

「おい」

 

精神支配を掛け直す。

が、スカラベは動かない。

キングの視線の先、バックルが開いていた。

身じろぎ一つせず、渦を巻くように、スカラベの肉体が収束していく。

後に残るのは、スペードのカテゴリー10、タイムスカラベを手に持った、甲虫武者。

 

カードを装甲の隙間に滑り込ませながら、武者は周囲を見回す。

 

「協力者は居ないのか?」

 

「何?」

 

「せっかく人間はアンデッドにとって脅威になる、って、分かりやすく見せてやったんだ。スカラベ以外は居ないのか」

 

「居るわけ無いだろ」

 

キングがせせら笑う。

確かに、人間は侮りがたい力を得た。

目の前のライダーもどきは、恐らくペッカーアンデッドをバラバラにして持ち帰った人間なのだろう。

しかし、それでも所詮は下級アンデッドを倒せる、というだけの話だ。

 

「僕はキングだ」

 

「カテゴリーキングだからな」

 

「いや……一番強いから、キングなのさ」

 

それはキングの中では絶対に揺るぐことの無い事実だ。

特異な能力を備えている訳ではない。

鉄壁の盾であるソリッドシールドに、いかなるものも切り裂くオールオーバー。

あとは怪力がある程度だろうか。

だが、キング──コーカサスビートルアンデッドは、その全てがシンプルに強い。

或いは人間に擬態したままでも多くのアンデッドを完封できるだけの力がある。

こうして、ライダーもどきを前にしても擬態を解かないのも余裕の現れだ。

スカラベアンデッドを先んじて封じられたとして、彼の自信は揺るぐ事は無い。

何をされたとして、目の前のライダーもどきは自分に触れる事すらできない。

 

甲虫武者が、背後からずらりと金属音を鳴らしながら、大太刀を引き抜く。

肩に担ぐ様な構え。

対するキングは構えもしない。

構える必要すら無い。

彼が何をするでもなく、ソリッドシールドは敵からの攻撃を防ぐ。

大仰な武器を持ち出されたとして、大した意味はないのだ。

 

《Exceed charge》

 

小さく、構えた大太刀から電子音声が流れ、刀身が割れる。

血流しから展開した大太刀に、鍔付近に搭載されたブラッドサーバーより、赤いフォトンブラッドが流れ込み……お手本のように綺麗な一太刀が振るわれた。

明らかに刀の届く距離ではなく、しかし、当然のように大太刀からは赤い斬撃が飛翔。

それを珍しい玩具でも見るようにしていたキング。

その耳が切り飛ばされた。

 

「は、あ?」

 

どく、と、一拍遅れて緑色の血が耳の断面から溢れ出す。

痛みからくる絶叫。

 

「お前……!」

 

キングが耳を抑えながら、その姿を黄金の二足歩行する甲虫、カテゴリーキングとしての真の姿へと変じさせた。

手にはオールオーバー、そして、絶対の守りであるはずだったソリッドシールド。

先までの油断の一切を感じさせない、余裕のすべてを怒りに変換したような気迫を放つコーカサスビートルアンデッド。

その迫力は、正しくキングの名に相応しいものだ。

 

「本気で一匹だけか」

 

激高するキングを前に、溜息を吐く甲虫武者。

こういう日もあるか、と、小さく呟く。

 

「プロトムラマサ改め、ムラマサ壱型、戦闘試験を開始する。ニー君、記録よろしく」

 

答えるように茂みから聞こえる猫の声を合図にするように、激情を滾らせたコーカサスビートルアンデッドが走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 





戦闘フィールドはたぶん市街地の中にあるちょっとした大きめの公園とかじゃないすかね

☆ムッキーがレンゲルで暴れてないからあんまりやることがないキング
でも一応現代社会の事は調べてたりするので、警察の中にヒューマンアンデッドもどきを集めた組織がある事は知ってる
でも人間怖……とはならず、なかなかやるじゃん、くらいに思ってる
つまりそれだけヒューマンアンデッドがヤバかった、という事になる、なった
この世界で人間の始祖?で、なおかつこのSSだと組織までついてるからね
なんだ、ヒューマンアンデッドもどきも居るけどあのゴルゴムとか言うの居ないじゃん!
でも一応スカラベは定石として取っておくか……
くらいのものだと思われる
一応の警戒としてスカラベを連れている設定になったが、原作の登場初期の頃にタイムスカラベ発動中に人間態で剣崎を殴って痛い!ってやってるからもしかすれば始めて捕まえたポケモンを嬉しくて適当な言い訳をして連れ回しているだけなのかもしれない
真の姿を発揮するまえに滅茶苦茶スカラベを使いまくってまるで瞬間移動しているみたいな素振りを見せたりしている辺り、前のバトルファイトで他の連中にスカラベを取られて悔しい想いをしていた疑惑はある
封印解除されたのがテオス退場前だったらもっと危機感を持てていたかもしれない

☆戦闘シーンなんて必要ないスカラベアンデッド
公式様の記述によると、カード化した後のスカラベは一定範囲の時間停止
で、原作でキングの発言、面倒だからこの辺りまとめて止めた
つまり範囲限定時間停止になるわけだけど
これは一定間隔で探知機配置してそれの反応を地道に確認していけば時間が止まっている範囲、つまりスカラベの位置がわかるよね?
という事で位置特定された上で絶対範囲外であろう直上から、同じく時間停止状態を作り出し、もしも指定対象のみ時間停止みたいなAVか同人CG集みたいな能力を持っていた場合を考えて更に停止した時間の中でも速度で上回れるようにクロックアップとアクセルベントを重ねがけ
空気抵抗の少ない針形に変形させたニー君に封印エネルギーを纏わせて高高度からの位置エネルギーすら付与した投擲で不意を打たれて死んだ
死んだ、というか、脳天を貫かれて思考するパーツを破壊された上に封印エネルギーによって無理矢理に動かされる可能性も封じられ、あえなく封印
ラウズカード?
もうBOARDの技術を手に入れてから何ヶ月経ってると思ってるんですか……
ウルトラマンに変身できなくなった闇落ちダンも使えるんだから当然主人公もブランクカードは使える
謎の布を取る取らないの駆け引きとか考えようと思ったけど、そも不意を打てば別に関係ないよねという事で省略された
範囲時間停止って時点でたぶん理屈はともかく規模的にはタイムベントとさしてかわりないだろうという事でシステム処理的には世界に入門するスタプラみたいな扱いとなった
時止め無しのスカラベで主人公と戦闘シーンできるかってなると難しいからね

☆投擲武器ニー君
猫は投擲武器と胸の薄い魔女も言っている
たぶん投げてた……射出してた?読んだのだいぶ昔なので覚えてない
通常の投擲武器と異なり自己加速が可能なので武器としての性能も高い
作戦を説明された時は逃げようとしたが、チュールタワーなる謎概念兵器を提示された為に今自分にできる最高の投擲槍に変化してみせた
どれだけ高いところから落とされても綺麗に着地できる猫の為、バヂスの針のように地面に突き刺さらず、スカラベを貫通した直後に変身解除、すべての衝撃を殺して即座にその場を離脱した
あとはカメラマンしてるだけでチュールの塊とかいうワクワクバベルの塔が手に入るんだから安いもんだぜ

☆高高度からのエントリーは一回はやってみたかった甲虫武者
どうも、コーカサスビートルアンデッドさん
ムシャビートルです
殺戮者のエントリーでした
よろしくおねがいします
趣味回
見た範囲ではスカラベしか確認できなかったが、キングが残りの全アンデッドと組んでいて、敵が現れたらスカラベが時間停止させて他のアンデッドを自力で運んで集結させるみたいな戦法を取ってくる事を想定してニー君以外のニャンニャンアーミーも装備している
が、キングが結局キングだった為に複数の猫をゼクターの中に収めたまま戦闘開始
強度問題と火力問題を解決した完全版のムラマサゼクターの試し切りを始める
おっぱいは大きいものが好きだが、女性の好みはシャッとしたシルエットの大人の女性
そういう意味では確かに義経師範もめっちゃ好みではあるがそもそも義経師範はスーパー1のお嫁さんだろ!カップリングに割り込むんじゃあない!という強いこだわりが珍しくある
作中で描写は無く、恐らく幕間まで描写は待たねばならないが、本編裏でも着々と大好きな大人のお姉さんのしなやかなボディラインを崩さないままに女性ホルモンなどを利用した巨乳化を行っている
欲しいものは自らの手で掴み取らなければならない(作成・改造)
統制者とは和解ルートを選ぶ
最高に高めたフィールで最高の和解を見せてやるぜ!

☆兄的立場の人間からその人の匂いのする女性ものっぽい服を渡されても大して疑問に思わない巨乳ペット枠
出番が無く、戦っていないように見えるかもしれないが、別に画面に出ていないだけで昼間一人の時に郊外に行って魔化魍と戦っていたりしない訳ではない
そもそもアギトの力を持っている連中は放っておいてもパワーアップを続けるので唐突に戦線復帰しても戦力的に置いていかれるとかは無いと思われる
英才教育でなんなら今からでも一人暮らしができるくらいに自活能力があるが、成長初期段階でめっちゃ主人公に世話されていたので世話して貰えるところは全部任せたいという欲求がある

☆サブリミナルホモ
出番もセリフも無いが、知り合いのアギトがまず少ないのでたとえ話をする場合は引き合いに出されやすい
今では美少女の集まる隠れた名店喫茶寿の占い結果を濁す事を知らない事で有名な名物クソ占い師ではあるが、その根本には接続の切れた未来から託された無数の願いがあったりする
現状龍騎ラストバトル時のサバイブ三枚おでん形態にはなれないが、時間を操る能力を持ってる人間の現状は一切あてにならないし、なんなら現在のホモが変身できなくても未来から来かねないので監視する意味も無い
基本的に世界か主人公が致命的なまでに破滅の世界線に近づかない限り無害なクソ占い師なのでご安心
今日も楽しく占いとイケメンを楽しみにしてきた貴重な女性客に不幸の占いを押し付けているぞ




注意点として
ここで調子に乗って残りのアンデッドを片っ端から封印すると天のおじさん大勝利ルートにも繋がり兼ねないので
最低一体はアンデッドを残しておかないといかんということ
まぁ……そもそもケルベロスⅡが勝利者として認識されるかは微妙なところではあるんですが、念の為
敵を全部倒せばオッケー(できるとは言ってない)みたいなこれまでと比べて、討伐順が割と重要になるのがなんともゲーム的ではありますな
一歩間違えるとガバ付きRTAみたいになるというか
長いシリーズをまとめて二次創作にするんだからそういう年もあるということです
それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい

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